説明

自覚式検眼装置

【課題】コントローラの操作時の移動及び載置面からのコントローラの滑り落ちを防止することができ且つ表示部の向きを容易に変更することができる自覚式検眼装置を提供する。
【解決手段】矯正装置14及び視標呈示部13のそれぞれの作動を制御するコントローラ15の下面32bの一部に、コントローラ15が載置される検眼テーブル18の上面18aに接触する接触面42aを有し、少なくとも該接触面の最大静止摩擦係数の値が下面32bの他の部分のそれよりも大きい高摩擦部42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の視機能を被検者の自覚的な判断に基づいて検査するための自覚式検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡を作成する際に該眼鏡のレンズの屈折度数を定めるために、被検者の各眼の視機能を被検者の応答に基づいて検査するための自覚式検眼装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような自覚式検眼装置は、各種の視標を被検眼に呈示する視標呈示部と、被検眼の視機能を矯正するための光学素子である複数のレンズを保持し、被検者からの応答に応じた屈折力を有するレンズを被検眼と視標呈示部との間に選択的に配置する光学素子配置装置と、視標呈示部及び光学素子配置装置の作動を制御するコントローラとを備える。コントローラは、被検眼に呈示する視標及びレンズをそれぞれ選択するために操作される操作部と、該操作部に選択された視標及びレンズのレンズデータ等が表示される表示部とを備える。
【0004】
遠方を見た状態での被検眼の視機能を検査する際、被検者は、視標呈示部に表示された視標をレンズを通して視認し、その視標の見え具合を検者に応答する。検者は、被検者からの応答に基づいて、第一の表示モードにおかれた表示部の表示画面に表示されたレンズデータを見ながら操作部を操作することによりレンズを選択し、光学素子配置装置に配置されたレンズを他のレンズに入れ替える。
【0005】
他方、近方を見た状態での被検眼の視機能を検査する際、検者は、表示部が被検者に向くようにコントローラを回転移動させ、表示部に表示させた視標を被検者に呈示し、遠用検査と同様に、被検者からの応答に基づいて矯正レンズを被検眼の見え方に応じた矯正レンズに入れ替える。
【0006】
これにより、遠方視状態及び近方視状態での被検眼の視機能が矯正され、作成すべき眼鏡のレンズの屈折力の値を定めることができる。
【0007】
このような自覚式検眼装置では、コントローラの下面には、コントローラを支持するための複数の脚部が設けられている。各脚部は、それぞれコントローラの操作時にコントローラが移動したりコントローラが載置されたテーブルから滑り落ちたりすることを防止するために、滑り止めとしての機能を有する。これにより、コントローラの操作時にコントローラが移動することによるコントローラの操作性の悪化及びコントローラがテーブルから滑り落ちることによるコントローラの破損を防止することができる。
【特許文献1】特開2002−143092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、コントローラを支持すべく載置面に接触する各脚部がそれぞれ滑り止めとしての機能を有することから、コントローラを該コントローラが載置された載置面上を容易に引き摺ったり載置面上で容易に回転させたりすることができない。このため、近用検査を行うときに表示部が被検者に向くようにコントローラを移動させる際、コントローラを持ち上げる必要がある。従って、コントローラの表示部の向きを変更させるための作業が煩雑になる。特に、近年、カラー液晶の技術の進歩と共に表示部の大型化が進んでおり、コントローラ全体の重量が増加しているため、コントローラを持ち上げるのに大きな力が必要となり、表示部の向きを変更させるための作業がより煩雑になる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、コントローラの操作時の移動及び載置面からのコントローラの滑り落ちを防止することができ且つ表示部の向きを容易に変更することができる自覚式検眼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被検眼に呈示する各種の視標が表示される視標呈示部と、各種の光学素子を保持し、該各光学素子を通して前記視標を見た被検者からの応答に対応した種類の前記光学素子を前記被検眼と前記視標呈示部との間に選択的に配置するための光学素子配置装置と、各種の情報が表示される表示部を有し、前記光学素子配置装置及び前記視標呈示部のそれぞれの作動を制御するコントローラとを備え、該コントローラの下面の一部には、前記コントローラが載置される載置面に接触する接触面を有し、少なくとも該接触面の最大静止摩擦係数の値が前記下面の他の部分のそれよりも大きい高摩擦部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記高摩擦部は、前記下面にその所望の位置で取り外し可能に取り付けられる高摩擦部材で構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記高摩擦部材は、前記下面から前記載置面に向けて断面積が漸減する突起状をなしていることを特徴とする。

請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記高摩擦部材は、前記コントローラの重心から前記下面に下ろした垂線と前記下面との交点に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記下面には、前記載置面上で前記高摩擦部材と協働して前記コントローラを支持し、最大静止摩擦係数の値が前記下面の前記他の部分のそれよりも小さい低摩擦部材が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記低摩擦部材は、前記下面にその所望の位置で取り外し可能に取り付けられることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、前記高摩擦部材及び前記低摩擦部材の前記下面からの突出量は、ほぼ等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、コントローラの下面の一部に、コントローラが載置される載置面に接触する接触面を有し、少なくとも該接触面の最大静止摩擦係数の値が下面の他の部分のそれよりも大きい高摩擦部が設けられている。
【0017】
このことから、コントローラに該コントローラを直線的に移動させる方向に外力が作用したとき、該外力の大きさが下面の前記他の部分と載置面との間の摩擦力よりも大きい場合でも、前記外力の大部分は、高摩擦部と載置面との間に摩擦力が生じることにより高摩擦部及び載置面間で受け止められる。これにより、コントローラの直線的な移動が阻止されるので、例えばコントローラの操作時にコントローラが移動したりコントローラが載置されたテーブルから滑り落ちたりすることを確実に抑制することができる。
【0018】
また、コントローラに該コントローラの表示部の向きを変更する方向に外力が作用したとき、該外力のうち高摩擦部に向かう分力は高摩擦部及び載置面間に摩擦力が生じることによりそれらの間で受け止められるため、前記したと同様に、コントローラの直線的な移動は阻止されるが、前記外力の大きさが下面の前記他の部分と載置面との間の摩擦力よりも大きい場合には、前記他の部分は前記外力により載置面上を摺動する。これにより、前記外力はコントローラに該コントローラを高摩擦部を中心に回転させる回転力として作用するので、コントローラは高摩擦部を中心に載置面上を回転運動する。
【0019】
従って、近用検査を行うとき、コントローラに前記回転力を作用させることにより、表示部が被検者に向くようにコントローラを容易に移動させることができる。これにより、カラー液晶の技術の進歩による表示部の大型化に伴ってコントローラ全体の重量が増加した場合でも、コントローラを持ち上げる場合程の大きな力を要することなく表示部の向きを容易に変更することができるので、コントローラの移動作業を従来に比べて確実に容易に行うことができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、高摩擦部は、下面にその所望の位置で取り外し可能に取り付けられる高摩擦部材で構成されていることから、下面への高摩擦部材の取付位置を変更することにより、コントローラの回転中心を容易に変更することができる。また、高摩擦部は下面に取り外し可能に取り付けられていることから、高摩擦部材が例えば破損した場合、破損した高摩擦部材を下面から取り外して新たな高摩擦部材を下面に取り付けることができる。これにより、高摩擦部材がコントローラに一体に設けられている場合に比べて、高摩擦部材の交換作業を容易に行うことができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、高摩擦部材は、コントローラの下面から載置面に向けて断面積が漸減する突起状をなしていることから、載置面への高摩擦部材の接触面積を小さくすることができる。これにより、高摩擦部材を中心にコントローラを回転させる際、高摩擦部材の先端面が載置面から受ける抵抗を小さくすることができる。従って、コントローラをより容易に回転させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、高摩擦部材は、コントローラの重心から下面に下ろした垂線と下面との交点に配置されていることから、コントローラから高摩擦部材に作用する荷重の大きさを最大にすることができる。これにより、高摩擦部材が載置面から受ける垂直抗力が最も大きくなるので、垂直抗力に比例して摩擦力が大きくなることから、コントローラが直線的に移動する際に高摩擦部材と載置面との間に生じる摩擦力が大きくなる。従って、コントローラの直線的な移動をより確実に阻止することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、コントローラの下面には、載置面上で高摩擦部材と協働してコントローラを支持し、最大静止摩擦係数の値が前記下面の前記他の部分のそれよりも小さい低摩擦部材が設けられている。このことから、コントローラが高摩擦部材を中心に回転するとき、下面の前記他の部分が載置面を摺動することなく低摩擦部材が載置面を摺動する。これにより、コントローラの回転時に該コントローラが載置面から受ける抵抗の大きさを小さくすることができる。従って、コントローラの回転時に下面の前記他の部分が載置面上を摺動する場合に比べて、コントローラの回転をより円滑にすることができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、低摩擦部材は、下面にその所望の位置で取り外し可能に取り付けられることから、コントローラの回転中心の変更により下面への高摩擦部材の取付位置が変更したとき、下面への高摩擦部材への取付位置に応じて、下面への低摩擦部材の取付位置を載置面へのコントローラの載置状態で該コントローラにぐらつきを生じさせることがない位置に容易に変更することができる。これにより、下面への高摩擦部材の取付位置が変更した場合でも、載置面上でコントローラにぐらつきを生じさせることなく、低摩擦部材及び高摩擦部材によりコントローラを支持することができる。また、低摩擦部材は下面に取り外し可能に取り付けられていることから、低摩擦部材が例えば破損した場合、破損した低摩擦部材を下面から取り外して新たな低摩擦部材を下面に取り付けることができる。これにより、低摩擦部材がコントローラに一体に設けられている場合に比べて、低摩擦部材の交換作業を容易に行うことができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、高摩擦部材及び低摩擦部材の下面からの突出量がほぼ等しいことから、載置面からのコントローラの下面の高さ位置を該下面の全域に亘ってほぼ一定にすることができる。これにより、載置面上でコントローラに傾きを生じさせることなくコントローラを高摩擦部材及び低摩擦部材により安定して支持することができる。従って、コントローラに傾きが生じることによってコントローラの操作に支障が生じたりコントローラが容易に倒れたりすることを、確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を図示の実施例に沿って説明する。
【実施例】
【0027】
本発明に係る自覚式検眼装置10は、図1に示すように、被検者12の被検眼に呈示する各種の視標11を表示するための視標呈示部13と、被検眼の視機能を矯正するための矯正装置14とを備える。自覚式検眼装置10は、従来よく知られているように、図示しない眼鏡を作成する際に該眼鏡のレンズの屈折度数を定めるために用いられる。
【0028】
視標呈示部13は、視標11が表示される表示画面16を有する。表示画面16は、図示の例では、液晶パネルで構成されており、表示画面16に表示される視標11は、後述するコントローラ15の操作により選択される。
【0029】
視標呈示部13と被検者12との間には、検眼テーブル18が配置されており、該検眼テーブルには、該検眼テーブルからその上方へ伸びる支柱19が設けられている。支柱19の上部には横方向に伸びるアーム20が設けられており、該アームに矯正装置14が取り付けられている。検者23は、被検眼の検査時、検眼テーブル18の側方に位置している。
【0030】
矯正装置14は、左右方向に並べて配置された一対のフォロプタ21を備える。各フォロプタ21は、それぞれ検眼窓22が形成されたハウジング21aを備える。各ハウジング21a内には、図示しないが従来と同様に、互いに屈折力の異なる複数の矯正レンズが周方向に沿って設けられた環状のレンズディスクが回転可能に収納されている。すなわち、矯正装置14は、光学素子である前記矯正レンズを被検眼と視標呈示部13との間に選択的に配置する光学素子配置装置を構成している。前記各矯正レンズは、前記コントローラ15の制御下で前記レンズディスクの回転により各検眼窓22内に選択的に配置される。
【0031】
更に、本発明に係る自覚式検眼装置10は、矯正装置14及び視標呈示部13の作動を制御するための前記したコントローラ15を備える。
【0032】
コントローラ15は、検眼テーブル18の上面18a上に載置されており、図2及び図3に示すように、板状の基盤部材32と、該基盤部材上に設けられ、検者23(図1参照。)により操作される操作部24と、視標11及び操作部24の操作内容がそれぞれ表示される表示部25とを有する。更に、コントローラ15は、操作部24の操作に基づいて視標呈示部13、矯正装置14及び表示部25の作動を制御する演算制御回路26と、表示部25及び視標呈示部13に接続された画像出力部27とを有する。
【0033】
演算制御回路26は、図2に示すように、CPU28及びメモリ部29を有する。CPU28は、操作部24及び画像出力部27に接続されており、更に、矯正装置14に設けられた図示しない駆動制御部に接続されている。メモリ部29には、各種の視標11を示す視標データ30と、操作画像を示す操作画像データ31と、前記各矯正レンズの球面度数、乱視度数、軸角度、水平方向のプリズム量H及び垂直方向のプリズム量V等の屈折力を示すレンズデータ34とがそれぞれ記憶されている。
【0034】
操作部24は、図示の例では、基盤部材32にそれと一体的に設けられている。操作部24には、図3に示すように、各フォロプタ21の検眼窓22内に配置する前記矯正レンズを選択するためのダイヤル35や、後述するようにレンズデータ34が表示される第一の表示モードと視標11が表示される第二の表示モードとに表示部25を切り換えるための表示切替スイッチ36等の、検査の設定のための各種スイッチが設けられている。
【0035】
CPU28は、操作部24のダイヤル35が操作されると、該ダイヤルの操作位置に応じた屈折力を示すレンズデータ34をメモリ部29から抽出し、抽出したレンズデータ34が示す屈折力を有する前記矯正レンズを各フォロプタ21の検眼窓22内に配置する旨の制御信号を矯正装置14の前記駆動制御部に制御信号を送る。これにより、ダイヤル35の操作により選択された屈折力を有する前記矯正レンズが各フォロプタ21の検眼窓22内に配置される。
【0036】
また、CPU28は、ダイヤル35が操作されると、メモリ部29から抽出したレンズデータ34を示す信号を画像出力部27に送る。
【0037】
更に、CPU28は、表示切替スイッチ36の操作により表示部25の表示モードが第一の表示モードと第二の表示モードとの間で切り替わったとき、各表示モードに対応する操作画像データ31をメモリ部29から抽出し、各表示モード専用の操作画像データ31を示す信号を画像出力部27に送る。
【0038】
表示部25は、図2に示すように、操作部24の前記各スイッチの操作により操作画像及び視標11がそれぞれ表示される表示画面37を有する。表示画面37は、図示の例では、液晶パネルで構成されている。また、表示部25は、図3に示す例では、その下縁部25aで、操作部24の縁部24aに支持されている。表示部25は、前記したように、表示切替スイッチ36の操作により、前記した第一の表示モードと前記した第二の表示モードとが切替可能である。
【0039】
表示部25が第一の表示モードにおかれた状態では、表示画面37には、図4に示すように、操作部24のダイヤル35の操作により選択された前記矯正レンズのレンズデータ34が表示される屈折力表示欄38が設けられている。更に、図示の例では、表示画面37には、視標11の種類の一覧がそれぞれ表示される一覧表示欄39と、一覧表示欄39から選択された視標11が表示される視標表示欄40とが設けられている。
【0040】
屈折力表示欄38、一覧表示欄39及び視標表示欄40は、それぞれメモリ部29に記憶された操作画像データ31に含まれている。
【0041】
表示画面37上には、本実施例では、図示しないタッチパネルが設けられている。前記タッチパネルは、一覧表示欄39上に配置されており、図示しないが従来よく知られているように、複数の導電膜ストライプが互いに平行に形成され且つ両端部に抵抗膜が設けられた透明のフィルムやガラス等の一対のパネル部材を各導電膜ストライプが互いに直交するように貼り合わせることにより形成されている。前記タッチパネルの表面が押下されたとき、前記各パネル部材に形成された前記各導電膜ストライプが互いに接触することにより電気的に導通したとき、前記各抵抗膜に現れる電圧に基づいて、一方の前記パネル部材の複数の前記導電膜ストライプのうちのいずれの前記導電膜ストライプが他方の前記パネル部材の複数の前記導電膜ストライプのうちのいずれの前記導電膜ストライプに接触したことがタッチセンサにより検出され、これにより、前記タッチパネルの押下された位置が特定される。従って、表示画面37に表示された例えば一覧表示欄39の各視標11のうち検査に用いる視標11を示す画像を表示画面37上から押下することにより、一覧表示欄39から視標11を選択することができる。前記タッチセンサは、押下された位置を検出すると、該位置を示す検出信号をCPU28に送る。
【0042】
CPU28は、前記タッチセンサから検出信号を受けると、該検出信号に示された押下位置の視標11に対応する視標データ30をメモリ部29から抽出し、抽出した視標データ30を示す信号を画像出力部27に送る。
【0043】
他方、表示部25が、表示画面37に視標11が表示される第二の表示モードにおかれた状態では、表示画面37には、例えば図5に示すように、レンズデータ34が表示される屈折力表示欄41が表示されている。屈折力表示欄41は、図示の例では、表示画面37に表示された視標11に重ならないように、表示画面37の下部に配置されている。屈折力表示欄41には、図示の例では、前記矯正レンズのレンズデータ34のうち球面度数、乱視度数、軸角度、加入、水平方向のプリズム量H及び垂直方向のプリズム量Vの値が示されている。屈折力表示欄41は、メモリ部29に記憶された操作画像データ31に含まれている。
【0044】
画像出力部27は、表示部25が第一の表示モードにおかれた状態では、CPU28から第一の表示モード用の操作画像データ31を示す信号を受けると、第一の表示モード用の操作画像を表示画面37に表示させることを示す操作画像信号を表示部25に出力する。これにより、表示部25の表示画面37には、第一の表示モード用の操作画像データ31に含まれる屈折力表示欄38、一覧表示欄39及び視標表示欄40がそれぞれ図4に示すように表示される。
【0045】
また、画像出力部27は、第一の表示モードでCPU28からレンズデータ34を示す信号を受けると、操作画像データ31に含まれる屈折力表示欄38にレンズデータ34が示す屈折力を表示する旨の屈折力画像信号を表示部25に出力する。これにより、表示部25の表示画面37の屈折力表示欄38には、図4に示すように、ダイヤル35の操作により選択された前記矯正レンズの屈折力の値が表示される。
【0046】
更に、画像出力部27は、第一の表示モードでCPU28から視標データ30を示す信号を受けると、該視標データが示す視標11を操作画像の視標表示欄40に表示させる旨の視標画像信号を表示部25に出力する。これにより、表示部25の視標表示欄40には、図4に示すように、表示部25で選択された視標11が表示される。
【0047】
また、画像出力部27は、第一の表示モードでCPU28から視標データ30を示す信号を受けると、視標データ30が示す視標11を表示画面16に表示させる旨の視標画像信号を視標呈示部13に出力する。これにより、視標呈示部13の表示画面16には、図1に示すように、表示部25で選択された視標11が表示される。
【0048】
他方、表示部25が第二の表示モードにおかれた状態では、画像出力部27は、CPU28から視標データ30を示す信号を受けると、該視標データが示す視標11を表示画面37に表示する旨の視標画像信号を表示部25に出力する。これにより、表示部25の表示画面37には、図5に示すように、表示部25で選択された視標11が表示画面37のほぼ全域に亘って表示される。
【0049】
また、画像出力部27は、第二の表示モードでCPU28から第二の表示モード用の操作画像データ31を示す信号を受けると、第二の表示モード用の操作画像を表示画面37に表示させることを示す操作画像信号を表示部25に出力する。これにより、表示部25の表示画面37には、第二の表示モード用の操作画像データ31に含まれる屈折力表示欄41が図5に示すように表示される。
【0050】
更に、画像出力部27は、第二の表示モードでCPU28からレンズデータ34を示す信号を受けると、レンズデータ34が示す屈折力を屈折力表示欄41に表示する旨の屈折力画像信号を表示部25に出力する。これにより、表示部25の表示画面37の屈折力表示欄41には、図5に示すように、ダイヤル35の操作により選択された前記矯正レンズの屈折力の値が表示される。すなわち、第二の表示モードでは、レンズデータ34は、表示画面37に操作画像の屈折力表示欄41が表示されることにより、表示画面37に表示可能となり、屈折力表示欄41に表示されることにより該屈折力表示欄を介して表示画面37に表示される。
【0051】
コントローラ15の基盤部材32は、図3及び図6に示すように、その縁部のうち操作部24の後方側に位置する縁部32aから後方へ張り出し、表示部25の荷重によりコントローラ15が後方へ倒れることを防止するための倒れ防止部33を有する。
【0052】
本実施例では、コントローラ15の下面の一部に、コントローラ15が載置される載置面である検眼テーブル18の上面18aに接触する接触面を有し、少なくとも該接触面の最大静止摩擦係数の値が下面の他の部分のそれよりも大きい高摩擦部42が設けられている。
【0053】
高摩擦部42は、図6に示す例では、ポリウレタンからなる高摩擦部材43で構成されており、コントローラ15の基盤部材32の下面32bに設けられている。
【0054】
高摩擦部材43は、図7に示すように、基盤部材32の下面32bから検眼テーブル18の上面18aに向けて断面積が漸減する突起状をなしており、図示の例では、全体にほぼ半球状をなしている。高摩擦部材43は、その先端面43aで検眼テーブル18の上面18aに接触する。すなわち、高摩擦部材43の先端面43aが前記した接触面である。
【0055】
また、高摩擦部材43は、図示の例では、その平面43bに設けられた両面テープ44により基盤部材32の下面32bに取り付けられている。これにより、高摩擦部材43は、両面テープ44を基盤部材32に貼り付けることにより該基盤部材に取り付けられ、両面テープ44を基盤部材32から剥離させることにより該基盤部材から取り外される。すなわち、高摩擦部材43は、基盤部材32の下面32bにその所望の位置で取り外し可能に取り付けられる。図示の例では、高摩擦部材43は、基盤部材32の下面32bの領域のうち倒れ防止部33における領域に取り付けられている。
【0056】
更に、基盤部材32の下面32bには、図6に示す例では、最大静止摩擦係数の値が基盤部材32の下面32bの前記他の部分のそれよりも小さい二つの低摩擦部材45が設けられている。
【0057】
各低摩擦部材45は、図7に示す例では、それぞれ基盤部材32の下面32bから下方へ伸びる柱部46と、該柱部の先端46aに設けられた円板部47とを有する。円板部47は、図示の例では、高分子量ポリエチレンからなる。
【0058】
各低摩擦部材45は、図6に示すように、それぞれ基盤部材32の下面32bの領域のうち倒れ防止部33側と反対側すなわち下面32bの前部に配置されており、各低摩擦部材45と高摩擦部材43とで三角形の頂点を構成するように操作部24の左右方向に互いに間隔をおいて配置されている。また、各低摩擦部材45は、それぞれの円板部47がそれぞれ検眼テーブル18の上面18aに接触することにより、検眼テーブル18の上面18a上で高摩擦部材43と協働してコントローラ15を支持する。
【0059】
基盤部材32の下面32bからの各低摩擦部材45の突出量は、それぞれ高摩擦部材の突出量とほぼ等しい。これにより、検眼テーブル18の上面18aからの基盤部材32の下面32bの高さ位置を該下面の全域に亘ってほぼ一定にすることができる。
【0060】
また、各低摩擦部材45は、図示の例では、その柱部46の基端46bに設けられた両面テープ48により基盤部材32の下面32bに取り付けられている。これにより、各低摩擦部材45は、高摩擦部材43と同様に、基盤部材32の下面32bにその所望の位置で取り外し可能に取り付けられる。 コントローラ15に該コントローラを例えばその前後方向に直線的に移動させる外力が作用したとき、高摩擦部材43の接触面42aと検眼テーブル18の上面18aとの間に摩擦力が生じることにより、前記外力の大部分は高摩擦部材43及び上面18a間で受け止められる。これにより、コントローラ15の前後方向に沿った直線的な移動が阻止される。
【0061】
また、コントローラ15に該コントローラの表示部25の向きを変更する方向に外力が作用したとき、該外力のうち高摩擦部材43に向かう分力は該高摩擦部材及び検眼テーブル18の上面18a間に摩擦力が生じることによりそれらの間で受け止められるため、前記したと同様に、コントローラ15の直線的な移動は阻止されるが、前記外力の大きさが各低摩擦部材45の円板部47と検眼テーブル18の上面18aとの間の摩擦力よりも大きい場合には、各円板部47はそれぞれ前記外力により上面18a上を摺動する。従って、前記外力はコントローラ15に該コントローラを高摩擦部材43を中心に基盤部材32の下面32bを含む平面内で回転させる回転力として作用する。これにより、コントローラ15は、図8に示すように、高摩擦部材43を中心に下面32bを含む平面内で回転する。コントローラ15の回転半径は、コントローラ15の部位のうち該コントローラを平面で見たときに高摩擦部材43から最も離れた部位と高摩擦部材43との間の距離で規定され、図示の例では、高摩擦部材43と操作部24の前方側の角部との間の距離で規定される。
【0062】
遠方を見た状態での被検眼の視機能を検査する遠用検査時、表示部25が第二の表示モードにおかれている場合には、検者23は、先ず、図9に示すように、表示部25の表示画面37が検者23に向くようにコントローラ15が検眼テーブル18上に配置された状態で、操作部24に設けられた表示切替スイッチ36を操作することにより表示部25を第一の表示モードに切り替える。このとき、前記したように、CPU28の制御下で画像出力部27から表示部25に出力される操作画像信号により、第一の表示モード用の操作画像が表示部25に表示される。
【0063】
次に、検者23は、遠用検査に用いる視標11を表示部25の一覧表示欄39の操作により選択する。このとき、前記したように、選択された視標11が表示部25の視標表示欄40及び視標呈示部13の表示画面16にそれぞれ表示される。検者23は、視標表示欄40に表示された視標11を視認することにより、表示された視標11が選択した視標11に一致しているか否かを確認することができる。
【0064】
続いて、検者23は、視標呈示部13の表示画面16に表示された視標11を各検眼窓22内に配置された前記各矯正レンズを通して被検者12に見させ、その見え具合を聞く。検者23は、被検者12の応答に基づいて、各検眼窓22内に配置する前記矯正レンズを操作部24のダイヤル35の操作により切り替える。このとき、ダイヤル35の操作により選択された前記矯正レンズのレンズデータ34が、前記したように、表示部25の屈折力表示欄38に表示されるので、検者23はそのレンズデータ34を視認しながらダイヤル35を操作することができる。前記矯正レンズを切り替えることにより、被検眼の視機能が矯正され、作成すべき眼鏡のレンズの屈折度数を定めることができる。
【0065】
次に、検者23は、上記したように定めた屈折度数を有する仮のレンズが取り付けられた仮枠眼鏡49を被検者12に装用させ、近方を見た状態での被検眼の視機能を検査する近用検査を行う。
【0066】
近用検査時、検者23は、先ず、表示部25の表示画面37が被検者12に向くようにコントローラ15を移動させる。このとき、前記したように、コントローラ15に回転力を作用させることによって高摩擦部材43を中心にコントローラ15を回転移動させることにより、表示部25の表示画面37を図10に示すように被検者12に向かせる。更に、表示部25を前記軸部材の周りに回動させることにより、表示画面37を被検者12に対向させる。コントローラ15の回転作業及び表示部25の回動作業は、検者23によってのみならず被検者12によっても適宜行われる。
【0067】
続いて、検者23は、近用検査に用いる視標11を表示部25の一覧表示欄39の操作により選択し、表示切替スイッチ36の操作により表示部25を第一の表示モードから第二の表示モードに切り替える。このとき、前記したように、CPU28の制御下で画像出力部27から表示部25に出力される操作画像信号、視標画像信号及び屈折力画像信号により、表示部25の表示画面37には、第二の表示モード用の操作画像、選択された視標11及び選択された前記矯正レンズのレンズデータ34がそれぞれ表示画面37に表示される。
【0068】
検者23は、表示部25の表示画面37に表示された視標11を仮枠眼鏡49の前記レンズを通して被検者12に見させ、その見え具合を確認する。検者23は、確認の結果、被検眼による表示画面37の見え具合に問題がないと判断した場合は、被検眼の視機能検査を終了する。他方、検者23は、確認の結果、視標呈示部13及び矯正装置14を用いて再検査を行う必要であると判断した場合には、被検者12から仮枠眼鏡49を取り外し、前記したと同様に遠用検査を行う。
【0069】
本実施例によれば、前記したように、コントローラ15の基盤部材32の下面32bの一部に、コントローラ15が載置される検眼テーブル18の上面18aに接触する接触面42aを有し、少なくとも該接触面の最大静止摩擦係数の値が基盤部材32の下面32bの他の部分のそれよりも大きい高摩擦部42が設けられている。このことから、コントローラ15に該コントローラを例えばその前後方向に直線的に移動させる外力が作用したとき、高摩擦部42と検眼テーブル18の上面18aとの間に生じる摩擦力により、コントローラ15の直線的な移動が阻止される。これにより、例えばコントローラ15の操作時にコントローラ15が移動したりコントローラ15が載置されたテーブルから滑り落ちたりすることを確実に抑制することができる。
【0070】
また、コントローラ15に該コントローラの表示部25の向きを変更する方向に外力が作用したとき、該外力はコントローラ15に該コントローラ15を高摩擦部42を中心に回転させる回転力として作用するので、コントローラ15は高摩擦部42を中心に検眼テーブル18の上面18a上を回転運動する。これにより、近用検査を行うとき、コントローラ15に前記回転力を作用させることにより、表示部25が被検者12に向くようにコントローラ15を容易に移動させることができる。従って、カラー液晶の技術の進歩による表示部25の大型化に伴ってコントローラ15全体の重量が増加した場合でも、コントローラ15を持ち上げる場合程の大きな力を要することなく表示部25の向きを容易に変更することができるので、コントローラ15の移動作業を従来に比べて確実に容易に行うことができる。
【0071】
また、前記したように、高摩擦部材43は、操作部24の基盤部材32の下面32bにその所望の位置で取り外し可能に取り付けられることから、操作部24の基盤部材32の下面32bへの高摩擦部材43の取付位置を変更することにより、コントローラ15の回転中心を容易に変更することができる。また、高摩擦部42が操作部24の基盤部材32の下面32bに取り外し可能であることから、高摩擦部材43が例えば破損した場合、破損した高摩擦部材43を操作部24の基盤部材32の下面32bから取り外して新たな高摩擦部材43を操作部24の基盤部材32の下面32bに取り付けることができる。これにより、高摩擦部材43が操作部24の基盤部材32に一体に設けられている場合に比べて、高摩擦部材43の交換作業を容易に行うことができる。
【0072】
更に、前記したように、高摩擦部材43は、コントローラ15の操作部24の基盤部材32の下面32bから検眼テーブル18の上面18aに向けて断面積が漸減する突起状をなしていることから、検眼テーブル18の上面18aへの高摩擦部材43の接触面42aの面積を小さくすることができる。これにより、高摩擦部材43を中心にコントローラ15を回転させる際、高摩擦部材43の接触面42aが検眼テーブル18の上面18aから受ける抵抗を小さくすることができる。従って、コントローラ15をより容易に回転させることができる。
【0073】
また、前記したように、操作部24の基盤部材32の下面32bには、検眼テーブル18の上面18a上で高摩擦部材43と協働してコントローラ15を支持し、最大静止摩擦係数の値が前記操作部24の基盤部材32の下面32bの前記他の部分のそれよりも小さい二つの低摩擦部材45が設けられている。
【0074】
このことから、コントローラ15が高摩擦部材43を中心に回転するとき、操作部24の基盤部材32の下面32bの前記他の部分が検眼テーブル18の上面18aを摺動することなく各低摩擦部材45が検眼テーブル18の上面18aを摺動する。これにより、コントローラ15の回転時に該コントローラが検眼テーブル18の上面18aから受ける抵抗の大きさを小さくすることができる。従って、操作部24の基盤部材32の下面32bの前記他の部分が検眼テーブル18の上面18a上を摺動する場合に比べて、コントローラ15の回転をより円滑にすることができる。
【0075】
更に、前記したように、各低摩擦部材45は、それぞれ操作部24の基盤部材32の下面32bにその所望の位置で取り外し可能に取り付けられることから、コントローラ15の回転中心の変更により下面32bへの高摩擦部材43の取付位置が変更したとき、下面32bへの高摩擦部材43への取付位置に応じて、下面32bへの各低摩擦部材45の取付位置を検眼テーブル18の上面18aへのコントローラ15の載置状態で該コントローラにぐらつきを生じさせることがない位置に容易に変更することができる。これにより、基盤部材32の下面32bへの高摩擦部材43の取付位置が変更した場合でも、検眼テーブル18の上面18a上でコントローラ15にぐらつきを生じさせることなく、各低摩擦部材45及び高摩擦部材43によりコントローラ15を支持することができる。
【0076】
また、各低摩擦部材45は、それぞれ操作部24の基盤部材32の下面32bに取り外し可能に取り付けられていることから、低摩擦部材45が例えば破損した場合、破損した低摩擦部材45を基盤部材32の下面32bから取り外して新たな低摩擦部材45を基盤部材32の下面32bに取り付けることができる。これにより、各低摩擦部材45が操作部24の基盤部材32に一体に設けられている場合に比べて、各低摩擦部材45の交換作業を容易に行うことができる。
【0077】
また、前記したように、操作部24の基盤部材32の下面32bからの高摩擦部材43及び各低摩擦部材45の突出量がほぼ等しいことから、検眼テーブル18の上面18aからの操作部24の基盤部材32の下面32bの高さ位置を該下面の全域に亘ってほぼ一定にすることができる。これにより、コントローラ15を検眼テーブル18の上面18a上で傾きを生じさせることなく高摩擦部材43及び低摩擦部材45により安定して支持することができる。従って、コントローラ15に傾きが生じることによって操作部24の操作に支障が生じたりコントローラ15が容易に倒れたりすることを、確実に防止することができる。 本実施例において、高摩擦部材43を、コントローラ15の重心から操作部24の基盤部材32の下面32bに下ろした垂線と該下面との交点に配置することができる。
【0078】
この場合、コントローラ15から高摩擦部材43に作用する荷重の大きさを最大にすることができるので、高摩擦部材43が検眼テーブル18の上面18aから受ける垂直抗力が最も大きくなる。これにより、垂直抗力に比例して摩擦力が大きくなることから、コントローラ15が直線的に移動する際に高摩擦部材43と検眼テーブル18の上面18aとの間に生じる摩擦力が大きくなる。従って、コントローラ15の直線的な移動をより確実に阻止することができる。
【0079】
また、この場合、各低摩擦部材45の位置を、コントローラ15が検眼テーブル18上でぐらつくことなく安定する位置にそれぞれ変更することができる。
【0080】
更に、本実施例では、コントローラ15に該コントローラを支持するための格別な支持部材は設けられておらず、基盤部材32の下面32bに設けられた高摩擦部材43及び各低摩擦部材45によりコントローラ15が検眼テーブル18上に支持された例を示したが、例えば図11に示すように、複数の脚部材50が予め設けられたコントローラ15を本発明に適用することができる。
【0081】
図11に示す例では、各脚部材50は、それぞれ円柱状をなしたゴム部材からなり、基盤部材32の下面32bからその下方へ伸び且つ基盤部材32の周縁に沿って互いに間隔をおいて基盤部材32の下面32bに設けられている。
【0082】
また、図11に示す例では、高摩擦部材43及び各低摩擦部材45はそれぞれ図6に示す位置と同一の位置で基盤部材32の下面32bに取り付けられている。
【0083】
この場合、基盤部材32の下面32bからの各脚部材50の突出量は、基盤部材32の下面32bからの高摩擦部材43及び各低摩擦部材45のそれぞれの突出量以下に設定される。
【0084】
基盤部材32の下面32bからの各脚部材50の突出量が基盤部材32の下面32bからの高摩擦部材43及び各低摩擦部材45のそれぞれの突出量とほぼ等しい場合には、高摩擦部材43、各低摩擦部材45及び各脚部材50はそれぞれ検眼テーブル18の上面18aに接触する。このため、各脚部材50の最大静止摩擦係数の値を少なくとも高摩擦部材43のそれよりも小さい値に設定することが望ましい。各脚部材50の最大静止摩擦係数の値を高摩擦部材43のそれよりも小さい値に設定することにより、各脚部材50と検眼テーブル18の上面18aとの間に大きな摩擦力が生じることによって高摩擦部材43を中心としたコントローラ15の回転が妨げられることを、防止することができる。
【0085】
他方、基盤部材32の下面32bからの各脚部材50の突出量が基盤部材32の下面32bからの高摩擦部材43及び各低摩擦部材45のそれぞれの突出量よりも小さい場合には、各脚部材50はそれぞれ検眼テーブル18の上面18aに接触せず、高摩擦部材43及び各低摩擦部材45がそれぞれ検眼テーブル18の上面18aに接触する。この場合、各脚部材50は高摩擦部材43を中心としたコントローラ15の回転に寄与しないので、各脚部材50の最大静止摩擦係数の値は制限されない。従って、この場合、各脚部材50がそれぞれコントローラ15の滑り止めとしての機能を有している場合に好適である。
【0086】
図11に示す例では、高摩擦部材43及び各低摩擦部材45がそれぞれ図6に示す位置と同一の位置で基盤部材32の下面32bに取り付けられた例を示したが、これに代えて、各脚部材50のうち一の脚部材50の突出端面に高摩擦部材43を取り付け、他の複数の脚部材50のうちのいくつか又は全ての脚部材50の突出端面にそれぞれ低摩擦部材45を取り付けることができる。この場合、高摩擦部材43及び各低摩擦部材45を前記した両面テープ44,48により各脚部材50に取り付けることができる。これにより、高摩擦部材43及び各低摩擦部材45をそれぞれ所望の脚部材50に取り外し可能に取り付けることができる。
【0087】
また、図11に示す例において、各脚部材50をそれぞれ基盤部材32に両面テープ及びねじ部材等により取り外し可能に取り付けることができる。この場合、各脚部材50のうち一の脚部材50に代えて高摩擦部材43を基盤部材32に取り付け、他の複数の脚部材50のうちのいくつか又は全ての脚部材50に代えて低摩擦部材45を基盤部材32に取り付けることができる。このとき、前記他の複数の脚部材50のうちいくつの脚部材50が低摩擦部材45に代えられることなく残っている場合には、その残された脚部材50の基盤部材32の下面32bからの突出量を、基盤部材32の下面32bからの高摩擦部材43及び各低摩擦部材45のそれぞれの突出量以下に設定することが望ましい。
【0088】
残された各脚部材50の突出量が高摩擦部材43及び各低摩擦部材45のそれぞれの突出量とほぼ等しい場合には、前記したと同様に、残された各脚部材50の最大静止摩擦係数の値を少なくとも高摩擦部材43のそれよりも小さい値に設定することが望ましい。他方、残された各脚部材50の突出量が高摩擦部材43及び各低摩擦部材45のそれぞれの突出量よりも小さい場合には、前記したと同様に、残された各脚部材50の最大静止摩擦係数の値は制限されない。
【0089】
図1乃至図11に示す例では、コントローラ15に単一の高摩擦部材43が取り付けられた例を示したが、これに代えて、コントローラ15に複数の高摩擦部材43を取り付けることができる。この場合、検眼テーブル18の上面18aと各高摩擦部材43との間に生じる摩擦力により検眼テーブル18上でのコントローラ15の回転が妨げられないように、基盤部材32の下面32bへの各高摩擦部材43の配置位置を設定することができる。
【0090】
また、図1乃至図11に示す例では、高摩擦部材43及び低摩擦部材45がそれぞれ両面テープ44,48により操作部24の基盤部材32の下面32bに取り付けられた例を示したが、これに代えて、高摩擦部材43及び低摩擦部材45をそれぞれ例えばマジックテープ(登録商標)やねじ部材のように両面テープ44,48以外の着脱可能な締結具により基盤部材32の下面32bに取り付けることができる。
【0091】
更に、図1乃至図11に示す例では、高摩擦部材43がほぼ半球状をなした例を示したが、これに代えて、例えば円錐形状及び接頭錐台形状のようにコントローラ15の基盤部材32の下面32bから検眼テーブル18の上面18aに向けて断面積が漸減する突起状をなしていれば、半球状以外の形状をなした高摩擦部材を本発明に適用することができる。
【0092】
また、図1乃至図11に示す例では、高摩擦部材43が基盤部材32の下面32bから検眼テーブル18の上面18aに向けて断面積が漸減する突起状をなした例を示したが、突起状以外の形状をなす高摩擦部材を本発明に適用することができる。
【0093】
更に、図1乃至図11に示す例では、高摩擦部42がポリウレタンのような合成樹脂材料からなる高摩擦部材43で構成された例を示したが、これに代えて、図示しないが、高摩擦部42を例えば相対的に回転可能な一対の板部材を有する従来よく知られたターンテーブルで構成することができ、少なくとも接触面の最大静止摩擦係数の値が基盤部材32の下面32bの他の部分のそれよりも大きい部材であれば、合成樹脂材料以外の材料からなる部材で高摩擦部42を構成することができる。
【0094】
高摩擦部42を前記ターンテーブルで構成した場合、前記各板部材の一方の面を互いに対向させて配置し、一方の前記板部材を基盤部材32の下面32bに取り付け、他方の前記板部材の他方の面すなわち検眼テーブル18に接触する接触面に最大静止摩擦係数の値が基盤部材32の下面32bの他の部分のそれよりも大きい材料で形成した例えばシートを貼り付けることができる。また、この場合、前記各板部材の回転時にそれらの間に生じる摩擦力の大きさが前記シートと検眼テーブル18の上面18aとの間に生じる摩擦力よりも小さくなるように、前記各板部材の形状及び材質等を設定することができる。これによれば、回転コントローラ15を検眼テーブル18上に載置した状態で前記各板部材をそれぞれ相対回転させることにより、基盤部材32の下面32bを含む平面内でコントローラ15を回転させることができる。
【0095】
また、図1乃至図11に示す例では、高摩擦部材43及び各低摩擦部材45がそれぞれ基盤部材32の下面32bに設けられた例を示したが、これに代えて、又は、これに加えて、コントローラ15を検眼テーブル18上で支持すべく該検眼テーブルの上面18aに接触する位置であれば、高摩擦部材43及び各低摩擦部材45をそれぞれ基盤部材32の下面32b以外の箇所に取り付けることができる。
【0096】
更に、図1乃至図11に示す例では、各低摩擦部材45が、それぞれ基盤部材32の下面32bから下方へ伸びる柱部46と、該柱部の先端46aに設けられた円板部47とを有する例を示したが、これに代えて、又は、これに加えて、柱部46及び円板部47以外の部位を有する低摩擦部材を本発明に適用することができる。
【0097】
また、図1乃至図11に示す例では、コントローラ15に二つの低摩擦部材45が設けられた例を示したが、これに代えて、三つ以上の低摩擦部材45をコントローラ15に設けることができ、又は、低摩擦部材45を不要とすることができる。例えば図11において低摩擦部材45を不要とする場合には、各脚部材50のうちのいくつかは検眼テーブル18の上面18aに接触する。この場合、各脚部材50の最大静止摩擦係数の値を少なくとも高摩擦部材43のそれよりも小さい値に設定することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る自覚式検眼装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る自覚式検眼装置を概略的に示すブロック図である。
【図3】本発明に係るコントローラを概略的に示す平面図である。
【図4】本発明に係る表示部が第一の表示モードにおかれた状態を概略的に示す正面図である。
【図5】本発明に係る表示部が第二の表示モードにおかれた状態を概略的に示す正面図である。
【図6】本発明に係るコントローラを概略的に示す底面図である。
【図7】本発明に係るコントローラが検眼テーブル上に載置された状態を概略的に示す説明図である。
【図8】本発明に係るコントローラが高摩擦部材を中心に回転している様子を概略的に示す説明図である。
【図9】本発明に係る自覚式検眼装置を用いて遠用検査を行っている状態を概略的に示す説明図である。
【図10】本発明に係る自覚式検眼装置を用いて近用検査を行って状態を概略的に示す説明図である。
【図11】本発明に係るコントローラの下面に複数の脚部材が設けられている例を概略的に示す底面図である。
【符号の説明】
【0099】
10 自覚式検眼装置
11 視標
13 視標呈示部
14 光学素子配置装置(矯正装置)
15 コントローラ
18a 載置面(検眼テーブルの上面)
25 表示部
32b 下面(基盤部材の下面)
42 高摩擦部
43 高摩擦部材
43a 接触面45 低摩擦部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に呈示する各種の視標が表示される視標呈示部と、各種の光学素子を保持し、該各光学素子を通して前記視標を見た被検者からの応答に対応した種類の前記光学素子を前記被検眼と前記視標呈示部との間に選択的に配置するための光学素子配置装置と、各種の情報が表示される表示部を有し、前記光学素子配置装置及び前記視標呈示部のそれぞれの作動を制御するコントローラとを備え、該コントローラの下面の一部には、前記コントローラが載置される載置面に接触する接触面を有し、少なくとも該接触面の最大静止摩擦係数の値が前記下面の他の部分のそれよりも大きい高摩擦部が設けられていることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
前記高摩擦部は、前記下面にその所望の位置で取り外し可能に取り付けられる高摩擦部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自覚式検眼装置。
【請求項3】
前記高摩擦部材は、前記下面から前記載置面に向けて断面積が漸減する突起状をなしていることを特徴とする請求項2に記載の自覚式検眼装置。
【請求項4】
前記高摩擦部材は、前記コントローラの重心から前記下面に下ろした垂線と前記下面との交点に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の自覚式検眼装置。
【請求項5】
前記下面には、前記載置面上で前記高摩擦部材と協働して前記コントローラを支持し、最大静止摩擦係数の値が前記下面の前記他の部分のそれよりも小さい低摩擦部材が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の自覚式検眼装置。
【請求項6】
前記低摩擦部材は、前記下面にその所望の位置で取り外し可能に取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の自覚式検眼装置。
【請求項7】
前記高摩擦部材及び前記低摩擦部材の前記下面からの突出量は、ほぼ等しいことを特徴とする請求項5又は6に記載の自覚式検眼装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−45145(P2009−45145A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212128(P2007−212128)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)