説明

自走式掃除機

【課題】ユーザに吸込み口具の交換等の煩雑な作業をさせることなく、確実に被清掃面のゴミをピックアップできる自走式掃除機を提供する。
【解決手段】掃除機1では、回転ブラシ装置の近傍に設けられた測距センサ18が、当該測距センサ18と床面の間の距離を計測する。そして、その距離に応じて、ブラシ9A〜9Hの中から回転ブラシ装置が当接する床面に対して最も適した毛足の長さを有するブラシが選択され、当該ブラシが床面に当接する位置に送られて、掃除が行なわれる。つまり、測距センサ18が計測する床面との距離に基づいて、ブラシ9A〜9Hの中のどのブラシを床面に対向させて清掃動作に利用するかが決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式掃除機に関し、特に、ブラシを含む掃除ヘッドを備えた自走式掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気掃除機に関し、絨毯などの掃除対象の多様化に対応するための種々の検討がなされている。たとえば、特許文献1(特開平10−243901号公報)では、自走式掃除機において、集塵室に至る塵埃(以下、ごみとも呼ぶ)の量を検知するごみセンサを備え、当該センサの検出するごみの量が多い場合には走行を停止させて確実に掃除を行なう技術が開示されている。そして、このような自走式掃除機の出現により、掃除作業が自動化されるようになってきている。また、自走式掃除機は、主にバッテリー駆動により部屋の中を自走するが、回転ブラシ等によって床の上のごみを集めてから吸引する構造を有することにより、省力化が可能とされてきている。
【0003】
自走式掃除機(掃除ロボット)に関し、上記したような掃除作業の自動化についての技術を開示したものの代表的なものとして、特許文献2(特開平5−46239号公報)が挙げられる。この文献では、具体的には、走行空間内の情報を取得して、走行空間内のマップを作成し、マップをもとに効率的に走行する技術が開示されている。マップ走行による計画走行には、走行空間内を重複することなく効率的に走行でき、走行空間内の全領域を走行する時間が少なくて済むというメリットがある。
【特許文献1】特開平10−243901号公報
【特許文献2】特開平5−46239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なお、自走式掃除機(掃除ロボット)が一般家庭内で使われ、より一層に普及するためには、ユーザからの幾つかの大きな要望に応える必要がある。
【0005】
このような要望の一つは、掃除ロボットが一方向に直進しながら掃除を進めて行く際に生じる掃除残しを解消することである。特に、フローリングの床を掃除ロボットが拭き掃除する場合、一方向に直進しながら拭き掃除するだけでは汚れが落ちにくいことがあり、また、絨毯の中に入り込んだごみをピックアップすることができない場合があった。
【0006】
もう一つの要望は、掃除ロボットが、床(被清掃面)の材質が違うなどの場合においても吸込み口具を交換することなく掃除できるようにすることである。人間が電気掃除機を使って掃除をする場合は、掃除する場所によって吸込み口具を使い分けて掃除している場合が多い。しかし、掃除ロボットの場合、本体サイズが大きく重量もあるため、吸込み口具の交換は煩雑な作業である。つまり、このような煩雑な作業をユーザにさせることなく、掃除ロボットが掃除をできるようになることが要望されている。
【0007】
本発明は係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、ユーザに煩雑な作業をさせることなく、確実に被清掃面のごみをピックアップできる自走式掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従った自走式掃除機は、ブラシを含む掃除ヘッドを備えた自走式掃除機であって、前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する前記ブラシの毛足の長さを変更する変更手段と、被清掃面との距離を計測する計測手段と、前記計測手段が計測した距離に基づいて、前記掃除ヘッドの毛足の長さを決定する決定手段とを備え、前記変更手段は、前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する毛足の長さを前記決定手段が決定した毛足の長さに変更することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に従った自走式掃除機では、前記掃除ヘッドは、軸と、前記軸に取り付けられた複数のブラシを含み、前記軸を、その長手方向に対して交わる方向に回転させる回転手段をさらに備え、前記複数のブラシは、少なくとも2種類の異なる毛足の長さを有するブラシを含み、前記軸に、前記回転手段による回転角によって異なる長さの毛足のブラシが被清掃面に対向するように取り付けられ、前記変更手段は、前記回転手段に、前記決定手段が決定した毛足の長さを有するブラシが前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する回転角だけ、前記軸を回転させることが好ましい。
【0010】
また、本発明に従った自走式掃除機では、前記掃除ヘッドは、吸引開口部を含み、前記掃除ヘッドを移動させる移動手段と、前記軸を、その長手方向に対して交わる方向に回動させる回動手段とをさらに備え、前記吸引開口部は、前記ブラシに対して、前記掃除ヘッドの前記移動手段による移動方向について後方に設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に従った自走式掃除機では、前記回動手段は、回転式ソレノイドからなることが好ましい。
【0012】
また、本発明に従った自走式掃除機は、前記吸引開口部に接続され、塵埃を捕集する集塵室と、前記吸引開口部または前記集塵室に至る経路上に備えられた塵埃を検知する検知部とをさらに備え、前記移動手段は、前記検知部が検知する塵埃の量に応じて、前記掃除ヘッドの移動速度を制御することが好ましい。
【0013】
また、本発明に従った自走式掃除機は、被清掃面の材質を判別する判別手段と、被清掃面の材質に関連付けて前記ブラシの毛足の長さを記憶する記憶手段とをさらに備え、前記変更手段は、前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する毛足の長さを、前記記憶手段において前記判別手段が判別した材質に関連付けられて記憶された毛足の長さに変更することが好ましい。
【0014】
また、本発明に従った自走式掃除機は、前記ブラシを被清掃面に向けて付勢する弾性手段をさらに備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明に従った自走式掃除機では、前記掃除ヘッドは、吸引開口部を含み、前記掃除ヘッドを移動させる移動手段と、前記吸引開口部に接続され、塵埃を捕集する集塵室と、前記吸引開口部または前記集塵室に至る経路上に備えられた塵埃を検知する検知部とをさらに備え、前記移動手段は、前記検知部が検知する塵埃の量に応じて、前記掃除ヘッドの移動速度を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自走式掃除機において、計測手段と被清掃面との距離に応じて、掃除ヘッドにおけるブラシの毛足の長さが変更される。
【0017】
これにより、自走式掃除機の本体や被清掃面が傾いている等して、掃除ヘッドのブラシの毛足の長さを変更する必要が生じても、ユーザに掃除ヘッドの交換等の煩雑な作業をさせることなく、当該必要に応じてヘッドのブラシの毛足が変更される。そして、毛足の長さを必要に応じて変更できるため、確実に、被清掃面のごみをブラシでかき集めることができる。
【0018】
したがって、ユーザに煩雑な作業をさせることなく、確実に被清掃面のごみをピックアップできる自走式掃除機を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の自走式掃除機の第1の実施の形態である掃除機の縦断面を模式的に示す図である。
【0020】
図1を参照して、掃除機1は、その外殻をカバー8に覆われている。カバー8は、たとえば合成樹脂によって構成される。図1中の矢印C1は、掃除機1の走行方向を示している。
【0021】
掃除機1の進行方向についての前面には、ウェブカメラ19と測距センサ(赤外線測距センサ)18が取付けられている。図1中の領域A1と領域A2は、それぞれ、測距センサ18とウェブカメラ19の視野の範囲を示している。
【0022】
カバー8の内部であって掃除機1の後部には、駆動輪2が設けられている。駆動輪2は、車輪駆動用モータ3により、矢印C3方向に回転駆動される。
【0023】
また、カバー8の内部であって、駆動輪2の上方には、制御基板22が設置されている。制御基板22は、充電池4から電源を供給されている。車輪駆動用モータ3は、制御基板22に電気的に接続されている。
【0024】
カバー8内には、さらに、駆動輪2より前方であって、後方側から順に、吸込モータ7、ダストケース6、当該ダストケース6に接続された吸引開口部10、および、後述する回転ブラシ装置9を覆う回転ブラシカバー91が備えられている。回転ブラシ装置(図5や図6を参照して後述する、回転ブラシ装置9)は、軸9Xと、当該軸9Xの外周に設けられたブラシ9A〜9Hを含む。
【0025】
回転ブラシ装置9は、駆動用ベルト15を介してブラシ駆動用モータ12からの駆動力を伝達されることにより、両矢印C2で示す方向に、つまり、掃除機1の進行方向および後退方向に回転駆動される。これにより、回転ブラシ装置9は両矢印C2方向に往復運動を繰返すことができるため、たとえば絨毯の中に入り込んだごみを掻き出すことができる。
【0026】
吸込モータ7は、制御基板22に電気的に接続されている。吸込モータ7が回転すると、ダストケース6の後部に設けられたフィルタ6Aを介して当該ダストケース6の中の空気がダストケース6外へ導かれる。これにより、回転ブラシ装置9によって掻き上げられたごみは、吸引開口部10を介してダストケース6内に導かれる。なお、吸引開口部10には、投光素子25と受光素子26とが設けられ、投光素子25と受光素子26とは、制御基板22に電気的に接続されている。また、受光素子26は、投光素子25の発した光を受光することができる向きおよび位置に設置されている。受光素子26の検出出力は、制御基板22に入力される。
【0027】
本実施の形態では、ダストケース6と吸込モータ7により掃除機部80が構成され、また、回転ブラシ装置9と吸引開口部10により、掃除ヘッド90が構成されている。
【0028】
図2は、掃除機1のハードウェア構成を模式的に示す図である。
掃除機1では、当該掃除機1の動作を全体的に制御する制御部50が備えられている。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、制御部50は、制御基板22に実装されている。
【0029】
制御部50は、充電池4から電力の供給を受けることにより、車輪駆動用モータ3、吸込モータ7、ブラシ駆動用モータ12、測距センサ18、および、ウェブカメラ19の動作を制御する。
【0030】
掃除機1には、さらに、記憶装置51と操作部52が備えられている。記憶装置51は、制御基板22に含まれるメモリによって構成される。記憶装置51には、制御部50が実行するプログラムが記憶されるとともに、当該プログラムの実行に際して必要なデータが記憶されている。操作部52は、外部から操作される、たとえば操作ボタン等により構成される。
【0031】
図3は、掃除機1の制御ブロック図である。
図3を参照して、駆動走行部60は、掃除機1の矢印C1方向の走行のために動作する部分であって、車輪駆動用モータ3を含む。上述したように、掃除機部80は、ダストケース6および吸込モータ7を含み、掃除ヘッド90は、回転ブラシ装置9および吸引開口部10を含む。
【0032】
床面検知部70は、測距センサ18と被清掃面(床面)との距離および床面の状態(床面の材質等)を検知するための部分であり、測距センサ18を含む。
【0033】
ごみ検知センサ91は、投光素子25と受光素子26を含む。掃除機1では、投光素子25が発した光をどれだけ受光素子26が受光するかによって、つまり、受光素子26の検出出力における受光強度によって、吸引開口部10からダストケース6に導かれるごみの量が検出される。
【0034】
画像撮像装置92は、ウェブカメラ19を含む。
制御部50には、上記した記憶装置51に記憶されるプログラムに従った演算を行なう演算部501、記憶装置51の一部であって種々のデータを記憶するデータ記憶部502、画像撮像装置92から入力される画像を処理する画像処理部503、および、画像処理部503の画像処理結果に応じて床面の材質を判定する判定部504を含む。制御部50は、電源部40から電力を供給されることにより、各部の動作を制御する。本実施の形態では、演算部501、画像処理部503、および、判定部504は、たとえばCPUが所定のプログラムを実行することにより実現されるが、各部の動作を実行する専用のLSI(Large Scale Integration)によって構成されても良い。
【0035】
電源部40は、充電池4を含む。そして、電源部40は、駆動走行部60、掃除機部80、掃除ヘッド90、床面検知部70、ごみ検知センサ91、および、画像撮像装置92の各部に電力を供給する。
【0036】
測距センサ18は、赤外線センサを含み、たとえば2cmから15cmの範囲の距離を測定できるように構成されている。
【0037】
図4は、回転ブラシ装置9の斜視図である。また、図5は、図4の矢印V方向の、回転ブラシ装置9の側面図である。なお、図4および図5では、回転ブラシカバー91の図示は省略されている。
【0038】
図4および図5を参照して、回転ブラシ装置9では、軸9Xの外周には、ブラシ9A〜9Hの8個のブラシが取付けられている。特に図5から理解されるように、各ブラシの長さは、それぞれ異なっている。ブラシ9A,9B,9C,9D,9E,9F,9G,9Hの毛足の長さをそれぞれRA,RB,RC,RD,RE,RF,RG,RHとした場合、これらは次の式(1)〜式(7)の関係にある。
【0039】
RB=RA+2[mm]…(1)
RC=RB+2[mm]…(2)
RD=RC+2[mm]…(3)
RE=RD+2[mm]…(4)
RF=RE+2[mm]…(5)
RG=RF+2[mm]…(6)
RH=RG+2[mm]…(7)
つまり、ブラシ9A〜9Hの8個のブラシの、円筒形状を有する軸9Xの底面の半径方向の寸法(毛足の長さ)は、順に2mmずつ大きくなるように、構成されている。
【0040】
なお、図4および図5中の両矢印C2は、図1等における両矢印C2方向と同じ方向を示している。
【0041】
図6は、回転ブラシ装置9とブラシ駆動用モータ12の拡大図である。
回転ブラシカバー91の一部には開口91Aが形成され、駆動用ベルト15は、当該開口91Aを介して、ブラシ駆動用モータ12と軸9Xとを連結させている。
【0042】
ブラシ駆動用モータ12が両矢印C4方向に回動することにより、その動力が駆動用ベルト15を介して軸9Xに伝達され、軸9Xは両矢印C2方向に回動させられる。
【0043】
図7は、吸引開口部10とダストケース6と吸込モータ7の拡大図である。吸引開口部10のダストケース6との接続部分には、フィルタ10Xが設けられている。吸引開口部10に導かれたごみは、フィルタ10Xを介して、ダストケース6へ導入される。吸引開口部10は、ダストケース6へ導入されるごみの経路を構成しており、当該経路の中ほどに、投光素子25および受光素子26が設置されている。なお、投光素子25と受光素子26とは、当該経路を挟んで対向するように設置されるのであれば、当該経路の先端部分、または、当該経路の後端部分(たとえば、フィルタ10Xに隣接する部分)に取付けられてもよい。
【0044】
図8は、測距センサ18による当該測距センサ18と床面との距離の計測について説明するための図である。
【0045】
本実施の形態の掃除機1では、清掃のために床面に当接するブラシ9A〜9Hと、走行のために床面に当接する駆動輪2が、その後方と前方という、比較的離れた位置に設けられている。したがって、たとえば図8に示すように駆動輪2が床面F1の高さにある場合であっても、ブラシ9Aが当接する被清掃面が床面F2で示すような、駆動輪2が当接する床面F1とは異なる高さの床面である場合が考えられる。なお、図8では、測距センサ18から床面F1までの(垂直方向の距離)がd1として示され、また、測距センサ18と床面F2との(垂直方向の)距離がd2として示されている。
【0046】
本実施の形態の掃除機1では、回転ブラシ装置9の近傍に設けられた測距センサ18が、当該測距センサ18と床面の間の距離を計測することにより、ブラシ9A〜9Hの中から回転ブラシ装置9が当接する床面に対して最も適した毛足の長さを有するブラシが選択され、当該ブラシが床面に当接する位置に送られて、掃除が行なわれる。なお、図8では、ブラシ9Aが、床面F2に対向する位置に送られて、掃除が行なわれている状態が示されている。掃除が行なわれる際、床面F2に対向する位置に送られたブラシは、両矢印C2で示される方向に、つまり掃除機1の進行方向について前後交互に摺動するように、軸9Xが駆動される。なお、掃除動作中にブラシが両矢印C2方向に摺動される角度は、たとえば5°程度とすることができる。
【0047】
掃除機1では、ブラシ駆動用モータ12は、回転式ソレノイドから構成されている。これにより、軸9Xを回転させる際に、その回転角度を正確なものとすることができる。これにより、測距センサ18によって計測された距離d2に基づいて、ブラシ9A〜9Hの中から床面に当接させるのに適したブラシが決定された際に、当該ブラシを確実に床面に対向させるように軸9Xを回転させることができる。
【0048】
また、ブラシ駆動用モータ12は、回転式ソレノイドであって、コイルに直流電圧を加えたときに発生する吸引力を回転運動に変換する構造を有しているため、軸9Xを、所望の角度だけ、瞬時に、回転駆動できる。
【0049】
次に、掃除機1が清掃動作を行なう際に制御部50のCPUが実行する処理の内容について、当該処理のフローチャートである図9および図10を参照して説明する。
【0050】
まず図9を参照して、操作部52を介して清掃を開始するための情報が入力され、または操作部52に対する操作によって清掃を開始するように指定された時刻となると、CPUは、走行開始モードとなり、ステップS2から処理を開始する。なお、制御部50はタイマを内蔵しており、当該タイマの計時時刻に基づいて、CPUは指定された時刻となったか否かを判断する。
【0051】
ステップS2では、CPUは、電源部4をON状態とし、制御部50を起動させる。
次に、ステップS3では、CPUは、駆動走行部60、掃除機部80、および掃除ヘッド90を起動させて、ステップS4へ処理を進める。なお、ここでは、CPUは、以下の処理で利用する障害物用フラグ(フラグF1)とごみ用フラグ(フラグF2)をリセットする。なお、両フラグの設定状態は、たとえば制御部50内のメモリに記憶される。
【0052】
ステップS4では、CPUは、測距センサ18(床面検知センサ)の検出信号をチェックし、ステップS5へ処理を進める。
【0053】
ステップS5では、CPUは、測距センサ18の検出信号から、床面までの距離を特定できるか否かを判断し、特定できると判断するとステップS6へ処理を進め、特定できないと判断するとステップS4へ処理を戻す。
【0054】
ステップS6では、CPUは、測距センサ18の検知信号に基づいて、床面までの距離(図8の距離d2)を決定して、ステップS7へ処理を進める。
【0055】
ステップS7では、CPUは、ステップS6で決定した床面までの距離をデータ記憶部502に記憶させて、ステップS8へ処理を進める。
【0056】
ステップS8では、CPUは、ステップS6で決定した床面までの距離に基づいて、床面に対向させるブラシを(ブラシ9A〜9Hの中から)決定し、当該ブラシを床面に対向させるために必要な軸9Xの回転角度を算出し、当該角度だけ軸9Xを回転させるためにブラシ駆動用モータ12を駆動制御して、ステップS9へ処理を進める。
【0057】
ステップS9では、CPUは、ステップS8で決定した回転角度だけ軸9Xが回転するように当該モータの駆動を停止させて、ステップS10へ処理を進める。
【0058】
ステップS10では、CPUは、回転ブラシ装置9を両矢印C2で示した方向に摺動運動をさせるようにブラシ駆動用モータ12の制御を開始して、ステップS11へ処理を進める。
【0059】
ステップS11では、CPUは、回転ブラシ装置9の摺動運動のために、軸9Xを両矢印C2方向に摺動させるため、ブラシ駆動用モータ12を正方向と逆方向とに交互に回転させるように駆動する制御を開始し、ステップS12へ処理を進める。
【0060】
図10を参照して、ステップS12では、CPUは、ウェブカメラ19が撮影する画像に基づいて掃除機1の前方に障害物があるか否かを判断し、あると判断するとステップS13へ処理を進め、ないと判断するとステップS18へ処理を進める。なお、ステップS12では、CPUは、具体的には、たとえば、画像処理部503にウェブカメラ19が撮影した画像とデータ記憶部502に記憶された障害物の画像パターンとの比較をさせ、判定部504に当該比較結果(たとえば類似度)に基づいて障害物として予め記憶された画像パターンがウェブカメラ19の撮影した画像に含まれるか否かによって、障害物があるか否かを判断する。
【0061】
ステップS13では、上述のフラグF1をセットして、ステップS14へ処理を進める。
【0062】
ステップS14では、CPUは、駆動走行部60に対する制御に制御モードを切換え、ステップS15へ処理を進める。なお、CPUは、上記したフラグF1とフラグF2がセットされているか否かに応じて、ステップS14,S19(および、図12におけるステップS118,S123)における駆動走行部60に対する制御内容(車輪駆動用モータ3の回転速度)を変更する。具体的には、フラグF1かフラグF2のいずれかがセットされていれば、車輪駆動用モータ3の回転速度を低速とし、双方がリセットされていれば、当該回転速度を通常の速度とする。なお、本明細書では、便宜上、車輪駆動用モータ3の回転速度について、「通常」と「低速」の2種類があるものとする。また、以下、適宜通常の速度を「R1」と記載し、それより速度の低い「低速」を「R2」(R1>R2)と記載する。なお、本実施の形態では、たとえば、R1を15cm/秒とし、R2を7.5cm/秒とすることができる。
【0063】
ステップS15では、CPUは、車輪駆動用モータ3を停止させて、ステップS16へ処理を進める。これにより、駆動輪2の回転が停止する。
【0064】
ステップS16では、CPUは、障害物を回避するための制御動作を実行して、ステップS17へ処理を進める。なお、障害物を回避するための行動とは、具体的には、ウェブカメラ19が撮影した画像に基づいて障害物の位置を特定し、当該位置を回避するような走行パターンを算出し、そして、算出した走行パターンで走行するように車輪駆動用モータ3の動作を制御することである。なお、図1には、掃除機1の後方左側に取付けられた駆動輪2および当該駆動輪2を駆動するための車輪駆動用モータ3のみが記載されているが、後方右側にも同様の駆動輪および当該駆動輪を駆動するためのモータが取付けられている。さらに、掃除機1では、このような左右1組の駆動輪の走行方向を制御するための機構も設けられている。ステップS16における障害物回避コードの際には、障害物を回避するために、このような機構を用いた走行方向の制御も実行される。
【0065】
ステップS17では、CPUは、車輪駆動用モータ3の回転速度を低速(R2)にして、ステップS12へ処理を戻す。
【0066】
一方、ステップS18では、CPUは、ステップS12で障害物がないと判断したことに応じて、フラグF1をリセットして、ステップS19に処理を進める。
【0067】
ステップS19では、CPUは、ステップS14と同様に、駆動走行部60に対する制御に制御モードを切換え、ステップS20へ処理を進める。
【0068】
ステップS20では、CPUは、車輪駆動用モータ3を正方向に回転させて、ステップS21へ処理を進める。これにより、駆動輪2は、図1の矢印C3方向に回転し、これにより、掃除機1は図1の矢印C1方向に走行する。
【0069】
ステップS21では、CPUは、ごみ検知センサ91の検知信号、つまり、受光素子26の検出出力をチェックし、ステップS22へ処理を進める。
【0070】
ステップS22では、CPUは、受光素子26の受光量に基づいて吸引開口部10を通過するごみの量を特定し、予め定められた規定量と比較を行なう。なお、この規定量は、たとえばデータ記憶部502(記憶装置51)に記憶されている。
【0071】
ステップS23では、CPUは、ステップS22で特定したごみの量が上記した規定量より多いか否かを判断し、そうであると判断するとステップS24へ処理を進め、そうではないと判断するとステップS26へ処理を進める。
【0072】
ステップS24では、CPUは、ステップS23でごみの量が規定量よりも多いと判断したことに応じて、上記したフラグF2をセットして、ステップS25へ処理を進める。
【0073】
ステップS25では、CPUは、車輪駆動用モータ3の回転速度を上記した低速(R2)にして、ステップS28へ処理を進める。なお、ここでの「回転速度の低下」とは、たとえば掃除機1の走行速度がそれまでの半分となるような回転速度への低下とすることができる。
【0074】
一方、ステップS26では、CPUは、ステップS23でごみの量が規定量以下であると判断したことに応じて、上記したフラグF2をリセットして、ステップS27へ処理を進める。
【0075】
ステップS27では、CPUは、車輪駆動用モータ3の回転速度を通常の速度R1にして、ステップS28へ処理を進める。ただし、ここでフラグF1がセットされている場合には、CPUは、当該回転速度をR2にして、ステップS28へ処理を進める。
【0076】
ステップS28では、CPUは、掃除機1が清掃動作を開始したときの位置(起点)に戻ったか否かを判断し、戻ったと判断するとステップS29へ処理を進め、まだ戻っていないと判断するとステップS12へ処理を戻す。なお、起点に戻ったか否かは、たとえば、ステップS2で処理を開始してからの走行パターンをデータ記憶部502などに記憶させておき、当該パターンを参照することにより判断される。
【0077】
ステップS29では、CPUは、駆動走行部60、掃除機部80、および掃除ヘッド90への電力の供給を停止させて、ステップS30へ処理を進める。
【0078】
ステップS30では、CPUは、制御部50への電力の供給を停止させ、電源部40をOFFさせて、処理を終了させる。
【0079】
以上説明した本実施の形態の掃除機1では、回転ブラシ装置9の近傍に測距センサ18が設けられ、当該測距センサ18が計測する床面との距離に基づいて、回転ブラシ装置9が備えるブラシ9A〜9Hの中のどのブラシを床面に対向させて清掃動作に利用するかが決定される。ここで、測距センサ18の検知出力が床面に対向させるブラシの決定にどのように利用されるかについて、説明する。
【0080】
たとえば、変数TXを式(8)のように設定し、式(8)中の変数d3(図8参照)を式(9)のように設定したとする。
【0081】
TX=d2−d3…(8)
d3=[測距センサの測定部位から軸表面の床面と対向する部分までの距離]…(9)
この場合、測距センサ18の検知出力(d2)に基づいて算出されるTXの値に応じて、下記のイ)〜ホ)のように、床面に対向させるブラシが決定される。なお、RA,RB,RC,RD,RE,RF,RG,RHは、それぞれ、図5に示したように、ブラシ9A,9B,9C,9D,9E,9F,9G,9Hの毛足の長さとする。
【0082】
イ)TX<RAの場合には、ブラシ9A
ロ)RA≦TX<RBの場合には、ブラシ9B
ハ)RB≦TX<RCの場合には、ブラシ9C
ニ)RC≦TX<RDの場合には、ブラシ9D
ホ)RD≦TX<REの場合には、ブラシ9E
ヘ)RE≦TX<RFの場合には、ブラシ9F
ト)RF≦TX<RGの場合には、ブラシ9G
チ)RG≦TXの場合には、ブラシ9H
また、以上説明した本実施の形態では、回転ブラシ装置9の軸9Xに、複数の、互いに毛足の長さが異なる複数のブラシを取付け、測距センサ18が検知した床面との距離に応じて清掃に利用するブラシを決定していたが、本発明に従う自走式掃除機の構成はこれに限定されない。つまり、毛足の長さが固定された複数のブラシを軸に取付ける代わりに、ブラシを軸に対して出し入れ可能に構成し、また、軸から出るブラシの長さ(毛足の長さ)を変更できるように回転ブラシ装置9が構成されていてもよい。このような場合、測距センサ18が検知した床面との距離に応じて、回転ブラシ装置9では、軸から突出させるブラシの長さ(毛足の長さ)が調整される。
【0083】
また、本実施の形態の掃除機1では、吸引開口部10は、回転ブラシ装置9よりも、掃除機1の走行方向に対して後方側に設けられている。これにより、回転ブラシ装置9によって掃き上げられたごみを確実にダストケース6へと導くことができる。
【0084】
[第2の実施の形態]
上記した第1の実施の形態では、回転ブラシ装置9は、毛足の長さの異なる複数のブラシを備え、測距センサ18と床面との距離に応じて最適の毛足の長さを有するブラシを清掃動作に利用するように構成されていた。
【0085】
本実施の形態の掃除機は、回転ブラシ装置9が、毛足の長さが異なり、かつ、材質の異なる複数のブラシを備えるように構成されている。以下、本実施の形態の自走式掃除機について説明する。なお、本実施の形態の自走式掃除機は、第1の実施の形態の掃除機1に対して、軸9Xに取付けられているブラシの内容と、CPUが実行する処理内容だけが異なるため、重複する内容については、ここでは説明を繰返さない。
【0086】
図13は、本実施の形態の回転ブラシ装置9において、軸9Xに取付けられたブラシの種類を説明するための図であり、第1の実施の形態において図5で示したような回転ブラシ装置9の右側面図に相当する。
【0087】
図13を参照して、軸9Xには、ブラシ9P,9R,9Q,9Sの4個のブラシが取付けられている。ブラシ9Pとブラシ9Rとは、毛足の長さは同じであるが、材質が異なる。具体的には、ブラシ9Pの材質は綿であり、ブラシ9Rの材質はナイロンである。また、ブラシ9Qとブラシ9Sとは、毛足の長さは同じであるが、互いに材質が異なる。ブラシ9Qの材質は、ポリエステルであり、ブラシ9Sの材質は、シリコンである。本実施の形態では、たとえば、床の材質がフローリングである場合には、清掃動作に利用するブラシの材質はシリコンが適していると判断され、また、絨毯の場合には、シリコンよりもポリエステルのブラシが適していると判断される。
【0088】
次に、本実施の形態の掃除機が清掃動作を行なう際にCPUが実行する処理について、当該処理のフローチャートである図11および図12を参照して説明する。
【0089】
CPUは、まずステップS101で、電源部4をON状態として制御部50を起動させ、次に、ステップS102で、駆動走行部60と掃除機部80と掃除ヘッド90とを起動させ、次に、ステップS103で、測距センサ18(床面検知センサ)の検出信号をチェックし、ステップS104へ処理を進める。なお、ここでは、CPUは、以下の処理で利用する障害物用フラグ(フラグF1)とごみ用フラグ(フラグF2)をリセットをリセットする。
【0090】
ステップS104では、CPUは、測距センサ18の検出信号から、床面までの距離を特定できるか否かを判断し、特定できると判断するとステップS105へ処理を進め、特定できないと判断するとステップS103へ処理を戻す。
【0091】
ステップS105では、CPUは、ウェブカメラ19に床面の画像を撮影させ、当該撮影させた画像を読込み、ステップS106へ処理を進める。
【0092】
ステップS106では、CPUは、ステップS105で読込んだ画像をデータ記憶部502に記憶させて、ステップS107へ処理を進める。
【0093】
ステップS107では、CPUは、ステップS105で読込みステップS106で記憶させた画像データについて、特徴点を抽出する処理を行なって、ステップS108へ処理を進める。
【0094】
ステップS108では、CPUは、ステップS107で抽出した特徴点を利用して画像パターンを生成し、ステップS109へ処理を進める。
【0095】
ステップS109では、CPUは、データ記憶部502に予め記憶された画像パターンとステップS108で生成した画像パターンとの比較を行ない、ステップS110に処理を進める。
【0096】
ステップS110では、CPUは、データ記憶部502に予め記憶された複数の床面の材質に対応した複数の画像パターンの中で、ステップS108で生成した画像パターンと最も一致度が高い画像パターンを特定し、ステップS111へ処理を進める。
【0097】
ステップS111では、CPUは、ステップS110の処理において、床面の材料を特定することが可能であるか否かを判断し、可能であると判断するとステップS112へ処理を進め、可能ではないと判断すると、ステップS114へ処理を進める。なお、床面の材質の特定が可能か否かは、たとえば、ステップS108で生成した画像パターンが、データ記憶部502に予め記憶された床面の材質ごとの画像パターンの少なくとも1つに対してある一定の値以上の一致度を有するか否かによって判断される。
【0098】
ステップS112では、CPUは、ブラシ9P,9R,9Q,9Sの中から、ステップS110において特定した床の材質に対応したブラシが床面に対向するようにブラシ駆動用モータ12の回転駆動を開始して、ステップS113へ処理を進める。
【0099】
ステップS113では、CPUは、床面の材質に対応したブラシが床面に対向する位置で軸9Xの回転が停止されるようにブラシ駆動用モータ12の回転を停止させて、ステップS114へ処理を進める。
【0100】
ステップS114以降の処理は、第1の実施の形態におけるステップS10以降の処理と同様である。
【0101】
つまり、CPUは、ステップS114で、回転ブラシ装置9を両矢印C2(図1等参照)で示した方向に摺動運動をさせるようにブラシ駆動用モータ12の制御を開始し、次に、ステップS115で、ブラシ駆動用モータ12を正方向と逆方向とに交互に回転させるように駆動する制御を開始し、ステップS116へ処理を進める。
【0102】
図12を参照して、CPUは、ステップS116で、ウェブカメラ19が撮影する画像に基づいて掃除機1の前方に障害物があるか否かを判断し、あると判断するとステップS117へ処理を進め、ないと判断するとステップS122へ処理を進める。なお、ステップS116では、CPUは、ステップS12と同様に、たとえば、画像処理部503にウェブカメラ19が撮影した画像とデータ記憶部502に記憶された障害物の画像パターンとの比較をさせ、判定部504に当該比較結果(たとえば類似度)に基づいて障害物として予め記憶された画像パターンがウェブカメラ19の撮影した画像に含まれるか否かによって、障害物があるか否かを判断する。
【0103】
そして、CPUは、ステップS117では、上記したフラグF1をセットし、ステップS118では、駆動走行部60に対する制御に制御モードを切換え、次に、ステップS119で、車輪駆動用モータ3を停止させ、次に、ステップS120で、障害物を回避するための制御動作を実行し、次に、ステップS121で、車輪駆動用モータ3の回転速度を低速(R2)にして、ステップS116へ処理を戻す。
【0104】
一方、ステップS122では、CPUは、ステップS116において障害物がないと判断したことに基づいてフラグF1をリセットして、ステップS123へ処理を進める。
【0105】
ステップS123では、CPUは、ステップS118と同様に、駆動走行部60に対する制御に制御モードを切換え、ステップS124へ処理を進める。
【0106】
そして、CPUは、ステップS124で、車輪駆動用モータ3を正方向に回転させ、ステップS125で、ごみ検知センサ91の検知信号(受光素子26の検出出力)をチェックし、ステップS126で、受光素子26の受光量に基づいて吸引開口部10を通過するごみの量を特定し、予め定められた規定量と比較を行なう。
【0107】
そして、CPUは、ステップS127で、ステップS126で特定したごみの量が予め定められた規定量より多いか否かを判断し、そうであると判断するとステップS128へ処理を進め、そうではないと判断するとステップS130へ処理を進める。
【0108】
ステップS128では、CPUは、ステップS127でごみの量が規定量より多いと判断したことに応じて、フラグF2をセットして、ステップS129へ処理を進める。
【0109】
ステップS129では、CPUは、車輪駆動用モータ3の回転速度を低速(R2)にして、ステップS132へ処理を進める。なお、ここでの「回転速度の低下」とは、たとえば掃除機1の走行速度がそれまでの半分となるような回転速度への低下とすることができる。
【0110】
一方、ステップS130では、CPUは、ステップS127でごみの量が規定量以下であると判断したことに応じて、フラグF2をリセットして、ステップS131へ処理を進める。
【0111】
ステップS131では、CPUは、車輪駆動用モータ3の回転速度を通常の速度(R1)にして、ステップS132へ処理を進める。なお、ステップS131において、CPUは、フラグF1がセットされているか否かをチェックし、セットされていれば、当該回転速度を低速(R2)にして、ステップS132へ処理を進める。
【0112】
ステップS132では、CPUは、掃除機1が清掃動作を開始したときの位置(起点)に戻ったか否かを判断し、戻ったと判断するとステップS133へ処理を進め、まだ戻っていないと判断するとステップS116へ処理を戻す。なお、起点に戻ったか否かは、たとえば、ステップS2で処理を開始してからの走行パターンをデータ記憶部502などに記憶させておき、当該パターンを参照することにより判断される。
【0113】
ステップS133では、CPUは、駆動走行部60、掃除機部80、および、掃除ヘッド90への電力の供給を停止させて、ステップS134へ処理を進める。
【0114】
ステップS134では、CPUは、制御部50への電力の供給を停止させ、電源部40をOFFさせて、処理を終了させる。
【0115】
[第3の実施の形態]
図14は、本発明の自走式掃除機の第3の実施の形態の掃除機における回転ブラシ装置9および当該回転ブラシ装置9の軸9Xを回転させるブラシ駆動用モータ12を模式的に示す図である。本実施の形態の掃除機では、ブラシ9A〜9Hの中の、床面に対向する位置にあるブラシを、当該床面に向けて付勢する弾性部材が設けられている。
【0116】
具体的には、図14に示されるように、本実施の形態の掃除機では、軸9Xに、一端を回転ブラシカバー91に固定されたばね99の他端が取付けられている。これにより、軸9Xは、図14中の矢印L1方向に付勢されることになる。なお、ばね99が備えられることと、回転ブラシ装置9に対するブラシ駆動用モータ12の位置が変更されている以外は、本実施の形態の自走式掃除機は第1の実施の形態で説明した掃除機1と同様の構成を有するため、重複する内容の説明はここでは繰返さない。
【0117】
本実施の形態の掃除機1では、床面上に設置された障害物OB上を掃除機1が通過する場合、回転ブラシ装置9は当該障害物OBに当接し、掃除機1の走行ができなくなる事態が想定される。しかしながら、本実施の形態の掃除機では、回転ブラシ装置9において軸9Xがばね99により矢印L1方向に付勢されていることにより、床面に当接しているブラシが障害物OBと接触した場合でも、軸9Xはばね99を縮ませることにより障害物OBと逆方向に移動することができる。これにより、掃除機1は障害物OBを容易に(少ない衝撃で)乗り越えることができる。
【0118】
なお、弾性部材は、ばね99に限らずゴム等から構成されても良い。
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以上説明した各実施の形態は、可能な限り組み合わされて適用されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の自走式掃除機の一実施形態である掃除機の、縦断面を模式的に示す図である。
【図2】図1の掃除機のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【図3】図1の掃除機の制御ブロック図である。
【図4】図1の回転ブラシ装置の斜視図である。
【図5】図4の矢印V方向の、回転ブラシ装置の側面図である。
【図6】図1の回転ブラシ装置とブラシ駆動用モータの拡大図である。
【図7】図1の吸引開口部とダストケースと吸込モータの拡大図である。
【図8】図1の測距センサによる、当該測距センサと床面の距離の計測について説明するための図である。
【図9】図1の掃除機が清掃動作を行なう際に、当該掃除機の制御部のCPUが実行する処理のフローチャートである。
【図10】図1の掃除機が清掃動作を行なう際に、当該掃除機の制御部のCPUが実行する処理のフローチャートである。
【図11】本発明の自走式掃除機の第2の実施の形態の掃除機が清掃動作を行なう際に、当該掃除機の制御部のCPUが実行する処理のフローチャートである。
【図12】本発明の自走式掃除機の第2の実施の形態の掃除機が清掃動作を行なう際に、当該掃除機の制御部のCPUが実行する処理のフローチャートである。
【図13】本発明の自走式掃除機の第2の実施の形態の掃除機が備える回転ブラシ装置の軸および当該軸に取付けられたブラシを示す図である。
【図14】本発明の自走式掃除機の第3の実施の形態の掃除機における回転ブラシ装置およびブラシ駆動用モータを模試的に示す図である。
【符号の説明】
【0120】
1 掃除機、2 駆動輪、3 車輪駆動用モータ、4 充電池、6 ダストケース、7 吸込モータ、8 カバー、9 回転ブラシ装置、9A〜9H ブラシ、9X 軸、10 吸引開口部、12 ブラシ駆動用モータ、18 測距センサ、19 ウェブカメラ、40 電源部、50 制御部、51 記憶装置、52 操作部、60 駆動走行部、70 床面検知部、80 掃除機部、90 掃除ヘッド、91 ごみ検知センサ、92 画像撮像装置、99 ばね、501 演算部、502 データ記憶部、503 画像処理部、504 判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシを含む掃除ヘッドを備えた自走式掃除機であって、
前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する前記ブラシの毛足の長さを変更する変更手段と、
被清掃面との距離を計測する計測手段と、
前記計測手段が計測した距離に基づいて、前記掃除ヘッドの毛足の長さを決定する決定手段とを備え、
前記変更手段は、前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する毛足の長さを前記決定手段が決定した毛足の長さに変更する、自走式掃除機。
【請求項2】
前記掃除ヘッドは、軸と、前記軸に取り付けられた複数のブラシを含み、
前記軸を、その長手方向に対して交わる方向に回転させる回転手段をさらに備え、
前記複数のブラシは、
少なくとも2種類の異なる毛足の長さを有するブラシを含み、
前記軸に、前記回転手段による回転角によって異なる長さの毛足のブラシが被清掃面に対向するように取り付けられ、
前記変更手段は、前記回転手段に、前記決定手段が決定した毛足の長さを有するブラシが前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する回転角だけ、前記軸を回転させる、請求項1に記載の自走式掃除機。
【請求項3】
前記掃除ヘッドは、吸引開口部を含み、
前記掃除ヘッドを移動させる移動手段と、
前記軸を、その長手方向に対して交わる方向に回動させる回動手段とをさらに備え、
前記吸引開口部は、前記ブラシに対して、前記掃除ヘッドの前記移動手段による移動方向について後方に設けられている、請求項2に記載の自走式掃除機。
【請求項4】
前記回動手段は、回転式ソレノイドからなる、請求項3に記載の自走式掃除機。
【請求項5】
前記吸引開口部に接続され、塵埃を捕集する集塵室と、
前記吸引開口部または前記集塵室に至る経路上に備えられた塵埃を検知する検知部とをさらに備え、
前記移動手段は、前記検知部が検知する塵埃の量に応じて、前記掃除ヘッドの移動速度を制御する、請求項3または請求項4に記載の自走式掃除機。
【請求項6】
被清掃面の材質を判別する判別手段と、
被清掃面の材質に関連付けて前記ブラシの毛足の長さを記憶する記憶手段とをさらに備え、
前記変更手段は、前記掃除ヘッドの被清掃面に対向する毛足の長さを、前記記憶手段において前記判別手段が判別した材質に関連付けられて記憶された毛足の長さに変更する、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の自走式掃除機。
【請求項7】
前記ブラシを被清掃面に向けて付勢する弾性手段をさらに備える、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の自走式掃除機。
【請求項8】
前記掃除ヘッドは、吸引開口部を含み、
前記掃除ヘッドを移動させる移動手段と、
前記吸引開口部に接続され、塵埃を捕集する集塵室と、
前記吸引開口部または前記集塵室に至る経路上に備えられた塵埃を検知する検知部とをさらに備え、
前記移動手段は、前記検知部が検知する塵埃の量に応じて、前記掃除ヘッドの移動速度を制御する、請求項1、請求項2、請求項6、または、請求項7に記載の自走式掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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