説明

自走式駐車場

【課題】自走式駐車場において、駐車場フロア内の排水設備を簡素化することができるようにする。
【解決手段】駐車領域7Aと、駐車領域7Aに駐車するための環状の走行車路5とを有する駐車フロア10が積層された駐車場1であって、駐車フロア10が、少なくとも走行車路5を囲む四辺形領域において、その4隅の高さが、一方の対角位置で相対的に低く、他方の対角位置で相対的に高く設定され、四辺形領域内部では4隅の高さの中間の高さを有しかつ一方の対角位置のいずれかに向かう勾配が形成されることによって、略鞍形状の立体形状に形成され、四辺形領域の4隅の一方の対角位置にそれぞれ排水口26A、26Bが設けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車フロアを複数積層した層状駐車部と、それらの間を斜面で連結した昇降部とを備える自走式駐車場が知られている。
このような自走式駐車場では、駐車フロア内に各駐車区画に向かう走行車路を備え、その走行車路が、上階および下階に通じる昇降部の斜面に接続され、例えば、下階の昇降部から上った車両が駐車フロアの走行車路を周回し、上階に向かう昇降部を昇ることで、螺旋状に移動することができるようになっている。この場合、駐車区画は、走行車路の内側および外側の駐車領域にそれぞれ複数配列されるのが一般的である。
例えば、特許文献1には、このような自走式駐車場の一例である自走式立体駐車場が記載されている。この自走式立体駐車場では、平面からなる駐車フロアから昇降するための傾斜を有する直線短車路と、直線短車路の下端と駐車フロアからの所定高さまでを接続する直角コーナー車路が設けられ、駐車フロアの一部が、直角コーナー車路まで傾斜され、その中に、側方に駐車スペースを伴う直線長車路が形成されている。これにより、直線短車路の勾配を低減し、コーナリングが容易となり、車両を傾斜面にこする事故を防止できるようにしている。
一方、駐車場フロアの降水を排水するため、駐車場フロアに水勾配を設けることが知られている。このような水勾配としては、駐車場フロアを一定方向に傾斜させるか、山形に傾斜させることが一般的である。
例えば、特許文献2には、断面山形の駐車場の山形の頂部に沿って通路部を設け、山形の両側の傾斜面に駐車部を配列した無蓋舗装駐車場が記載されている。
【特許文献1】特開2005−105513号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−34972号公報(図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の自走式駐車場には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、駐車場フロアには、昇降するための傾斜面が形成されているのみで、特に水勾配が設けられていないため、駐車場フロアにおける降水は、昇降するための傾斜面に沿って、平面からなる駐車場フロアに流れ込み、その排水が良好に行えないという問題がある。
特許文献1に記載の自走式立体駐車場に、特許文献2に記載されたような山形の水勾配を設けることも考えられるが、山形の裾野部に排水溝などの排水設備を設ける必要があるため、駐車場の規模が大きくなると、排水設備の設置コストが高くつくという問題がある。
また、特許文献1に記載の自走式駐車場のように、駐車場フロアに昇降部に接続する傾斜面を含むことで、昇降部の傾斜勾配を低減している場合には、駐車場フロア内に単純な山形の水勾配を設けることができないという問題もある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、駐車場フロア内の排水設備を簡素化することができる自走式駐車場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、駐車領域と該駐車領域内に駐車するための環状の走行車路とを有する駐車場フロアが積層された自走式駐車場であって、前記駐車場フロアが、少なくとも前記走行車路を囲む四辺形領域において、該四辺形領域の4隅の高さが、一方の対角位置で相対的に低く、他方の対角位置で相対的に高く設定され、前記四辺形領域内部では前記4隅の高さの中間の高さを有しかつ前記一方の対角位置のいずれかに向かう勾配が形成されることによって、略鞍形状の立体形状に形成され、前記四辺形領域の4隅の一方の対角位置にそれぞれ排水口が設けられた構成とする。
この発明によれば、駐車場フロアが、略鞍形状の立体形状に形成され、少なくとも環状の走行車路を囲む四辺形領域の内部で、その4隅の一方の対角位置のいずれかに向かう勾配が形成されており、そして、四辺形領域の4隅の一方の対角位置にそれぞれ排水口が設けられているので、少なくとも環状の走行車路を囲む四辺形領域に降水が発生すると、それぞれ勾配に沿って4隅の一方の対角位置のそれぞれに向かって下降し、2箇所の排水口から排水することができる。
なお、環状の走行車路の外周部に駐車領域を備える場合、その駐車領域の傾斜勾配は、走行車路の外周部に四辺形領域を設定したときその四辺形領域と略同等の傾斜勾配とするか、または、四辺形領域にその駐車領域を含めたときの傾斜勾配とすることが好ましい。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の自走式駐車場において、前記積層された駐車場フロアの各階を傾斜面で連結する昇降部と、前記駐車場フロアの走行車路から前記昇降部の登り側の傾斜面の下端部に接続する登り側接続面と、前記駐車場フロアの走行車路から前記昇降部の下り側の傾斜面の上端部に接続する下り側接続面とを備え、前記登り側接続面が、前記四辺形領域の4隅の前記他方の対角位置の1つの近傍に設けられ、前記下り側接続面が、前記四辺形領域の4隅の前記一方の対角位置の1つの近傍に設けられた構成とする。
この発明によれば、登り側接続面は、四辺形領域の4隅の他方の対角位置の1つの近傍に設けられるので、四辺形領域の中で相対的に最も高い位置の1つに設けられる。また、下り側接続面は、四辺形領域の4隅の一方の対角位置の1つの近傍に設けられるので、四辺形領域の中で相対的に最も低い位置の1つに設けられる。そのため、登り側接続面が、下り側接続面よりも高い位置に位置するので、昇降部の傾斜面がつなぐ段差を1階分に比べて低減することができる。すなわち、昇降部の傾斜面の勾配をより緩やかにすることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の自走式駐車場において、前記走行車路が、前記四辺形領域の4隅の前記他方の対角位置の1つから前記一方の対角位置の1つに向かって単調に下降する傾斜面からなる構成とする。
この発明によれば、走行車路が四辺形領域の他方の対角位置の1つから一方の対角位置の1つに向かって単調に下降する傾斜面からなるので、走行車路の排水が良好となるとともに、走行車路の走行が円滑となる。
ここで、「単調に」下降するとは、傾斜面の中間部に水平部分を有する場合を含めた広義の単調性を意味するものとする。
また、傾斜面が曲面である場合は、真直な下降方向に沿う傾斜断面の勾配変化が、広義の単調性を有することを意味する。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の自走式駐車場において、前記駐車場フロアの四辺形領域が、前記4隅を結ぶ直線に沿う方向に延ばされた真直梁によって支持された構成とする。
この発明によれば、真直梁をねじれの位置に配置することにより、略鞍形状の立体形状の枠組みを形成するので、四辺形領域内の構造体を平面視で四辺形の各辺に平行な真直梁を組み合わせた簡素な構成により形成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自走式駐車場によれば、駐車場フロアが少なくとも環状の走行車路を含む四辺形領域で略鞍形状の立体形状とされることで駐車場フロア内に四辺形領域の4隅の一方の対角位置の2箇所に集中する水勾配が形成されるので、排水設備を簡素化することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る自走式駐車場について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る自走式駐車場の駐車場フロアの構成および柱配置を示す平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1のB−B断面図である。図4は、図1のC−C断面図である。図5は、本発明の実施形態に係る自走式駐車場の柱および梁の構成を示す部分平面図である。
【0011】
本実施形態の駐車場1(自走式駐車場)は、図1〜4に示すように、駐車フロア10(駐車場フロア)が、複数重ねられた自走式の立体駐車場である。
駐車場1の概略構成は、駐車フロア10が複数の柱8を介して積層された層状駐車部2と、層状駐車部2に隣接して設けられ層状駐車部2の各階を傾斜面3aで連結する昇降部3とからなる。本実施形態での各階の高さピッチは3000mmである。
このような駐車場1の構造体は、鉄筋コンクリート構造などを用いることもできるが、以下では、鉄骨構造で構成した場合の例で説明する。
【0012】
まず、駐車フロア10の平面視の配置構成について説明する。一例として、駐車場1が4階層の場合で説明する。なお、図1に示すのは、3階の駐車フロア10であるが、2階もこれと同様である。1階、4階は、それぞれ下階、上階への昇降部がない点が異なるが、それらの構成は図1に示す駐車フロア10の構成から容易に理解されるので、説明を省略する。
【0013】
駐車フロア10は、中央部に平面視略矩形状の駐車領域7Aが設けられ、その周囲に、車両を走行して移動したり、駐車領域7Aに車両を出し入れしたりするための、環状の走行車路5が設けられている。
走行車路5の駐車場外縁部側には、駐車領域7Aの外周部の各辺に面する方向に駐車領域7B、7C、7D、7Eが設けられている。
ここで、駐車領域7Bは、昇降部3に隣接する側に配置されている。駐車領域7Dは、駐車領域7Bと対向する位置に配置されており、駐車領域7C、7Eがそれらの対向方向と直交する方向において、互いに対向するように配置されている。そして、駐車領域7Cは、後述する層状駐車部2の登り口側に配置され、駐車領域7Eは、同じく降り口側に配置されている。
【0014】
駐車領域7A、7B、7C、7D、7Eは、それぞれ、車両を1台ずつ駐車するための駐車区画7が複数配列されている。
駐車区画7は、平面視略矩形とされ、矩形の短辺側が開口して入り口7cを形成した駐車区画ブロック7aと、駐車区画ブロック7aの入り口7cに対向する短辺側に形成された車止めブロック7bとからなる。
駐車区画ブロック7aは、特に図示しないが、駐車区画ブロック7aの交差方向に流れる降水を流通させることができるように、長手方向の一部に隙間や貫通孔などが設けられている。
車止めブロック7bは、フロア面を流れる降水を排水することができるように、水抜き用の隙間や貫通孔が設けられている。本実施形態では、車両の左右のタイヤを係止する位置に2つのブロックが設けられ、その間に、排水可能な隙間が設けられている。
また、各駐車領域の外縁には、車両が転落しないように、壁27が設けられている。そして、各駐車領域内の降水は、壁27の内周面に沿って移動できるようになっている。なお、壁27に接するフロア面には壁27に沿って降水を導く溝部を形成してもよい。
【0015】
駐車区画7の数は、各駐車領域の広さなどに応じて適宜数に設定することができるが、本実施形態では、駐車領域7Aには、複数の駐車区画7が、走行車路5に面する2つの長辺側に入り口7cを向けて2列に設けられている。
また、駐車領域7B、7C、7D、7Dでは、複数の駐車区画7が、走行車路5に面する側に入り口7cを向けて1列に設けられている。
【0016】
走行車路5は、図1に示すように、平面視略矩形枠で駐車領域7B、7A間に直線部5bが、駐車領域7C、7A間に直線部5cが、駐車領域7D、7A間に直線部5dが、駐車領域7E、7A間に直線部5eが設けられ、それぞれが、曲折部5f、5g、5hで接続されている。また、直線部5bと直線部5eとが曲折部5iとで接続されている。
曲折部5f、5iの昇降部3側には、それぞれ進入路4(登り側接続面)、進入路6(下り側接続面)が設けられている。
【0017】
次に、駐車フロア10の柱配置について、各駐車領域との関係を中心として説明する。
駐車領域7C、7D、7Eでは、それぞれ入り口7c側の両端に1本ずつの柱8gが設けられ、それぞれの車止めブロック7b側では、駐車区画を3つずつ収めるピッチ、本実施形態では7500mmピッチで、複数の柱8が設けられている。この柱8の数は、本実施形態では、駐車領域7C、7Eではそれぞれ4本、駐車領域7Dでは6本である。
また、入り口7c側の柱8と車止めブロック7b側の柱8とのピッチは、駐車領域7C、7Eがそれぞれ4900mm、駐車領域7Dが5000mmとされている。
一方、駐車領域7B側では、駐車領域7Bと進入路4、6を含めた領域で、駐車領域7Dの柱構造が図1の上下方向に対称移動されたような配置をとっている。すなわち、直線部5bに面する側には、進入路4、駐車領域7B、進入路6を挟む2本の柱8が設けられ、車止めブロック7b側に、7500mmピッチで6本の柱8が設けられている。そして、この6本のうち、中央の4本の間に、9つの駐車区画7が配列されて、駐車領域7Bが形成されている。
【0018】
駐車領域7Aでは、その長手方向において直線部5b、5dに面する位置にピッチ7500mmで柱8a、8b、8b、8aがそれぞれ設けられている。そして、それぞれ対向する柱8a、8aと、柱8b、8bとは、その中央に柱8eを挟んで、それぞれ7500mm、9000mmだけ離間して配置されている。
すなわち、直線部5c(5e)に面する2本の柱8aを結ぶ平面視の直線を直線L(第1の直線)とし、直線部5b(5d)に面する2本の柱8bを結ぶ平面視の直線を直線L(第2の直線)とし、これらの交点を点Pとすると、各柱は、4つの点Pを結ぶ矩形上にある。そして、柱8a(第1の柱)、柱8b(第2の柱)は、最も近い点Pに対して、それぞれ750mm、7500mmだけ離間されている。
ここで、柱8bと点Pとの離間距離は、駐車区画7の入り口7cの幅の3倍としているが、一般に整数倍とすることが、駐車効率の点から好ましい。
柱8aと点Pとの離間距離は、柱8a側の駐車区画7に駐車する車両が後述する必要走行領域30にはみ出さない寸法とする。そのため、例えば、柱8a側の駐車区画7を小型車専用としておけば、離間距離をより大きくとることができて好ましい。
【0019】
次に、駐車領域の角部近傍の梁の配置構成について説明する。いずれも角部でも同様の構成を有するため、以下では、図5に示すような、曲折部5iの近傍における柱および梁の配置について説明する。
駐車領域7Aの下面側では、隣接する柱8e同士、柱8b同士が、それぞれ平面視で直線Lに平行な方向(以下、第2方向と称する)に延びる大梁である梁12によって接合されている。
また、隣接する柱8b、8e同士は、平面視で直線Lに平行な方向(以下、第1方向と称する)に延びる大梁である梁13によって接合されている。そして、梁12同士の中間部には、第1方向に延びる2本の梁14が小梁として接合されている。
一方、隣接する柱8e、8a同士は、第1方向に延びる大梁である梁16によって接合されている。柱8e、8aのピッチに応じて、梁16は梁13より短いスパンを有する梁となっている。
そして、柱8aと、第1方向において対向する柱8cとは、大梁である梁17によって接合されている。
また、柱8aに最も近い柱8bからは、第2方向に沿って、梁15(第2の梁)が延ばされ、平面視において点Pに一致する位置で梁17の中間部と接合されている。
【0020】
直線部5dと駐車領域7Dでは、柱8a、8bと走行車路5を隔てて対向する位置には、それぞれ柱8c、8dが設けられており、直線部5dと駐車領域7Dとの下面側で、柱8a、8cが第1方向に延びる大梁である梁17(第1の梁)によって、柱8b、8dが大梁である梁18によってそれぞれ接合されている。
柱8c、8dと、柱8d同士とは、それぞれ第2方向に延びる大梁である梁12で接合されている。そして、第1方向に対向する、梁12、15、および梁12同士のそれぞれの中間部には、第1方向に延びる各2本の梁19が小梁として接合されている。
そして、第2方向の両端部のみ、柱8aと柱8cとの配置ピッチに対応する梁18、19より長いスパンを有する梁17が設置されている。
このため、直線部5dと駐車領域7Dでは、ほとんどの荷重が、柱8bと柱8dとの配置ピッチに対応する長さを有する梁18、19によって受けられている。
【0021】
曲折部5gに隣接する駐車領域7Cの下面では、柱8aと柱8gとの間に、斜め方向の大梁である梁24が接合されている。梁24と柱8f、8c間の梁12との間には、それぞれの中間部に第1方向に延びる小梁である梁23a、23bが接合されている。
また、柱8aの駐車領域7C側の対向位置には、柱8iが設けられ、それらの間に第2方向に延びる大梁である梁22が接合されている。柱8iに隣接する柱8hとの間には、大梁である梁21が接合され、梁24、21の間に第2方向に延びる小梁である梁25a、25bが接合されている。柱8gと柱8f、8hの間には、それぞれ大梁である梁20a、20bが接合されている。
ここで、梁23a、23bはいずれも梁18より短く、梁25a、25bはいずれも梁22より短いものとなっている。
【0022】
次に、駐車フロア10の高さ方向の形状について説明する。
図6(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ、図1のD−D線、E−E線、F−F線、G−G線、B−B線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。図7(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ、図1のH−H線、C−I線、J−J線、K−K線、M−M線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。
【0023】
駐車フロア10は、フロア面上の降水などを駐車フロア10の対角方向の外縁部に設けられた2箇所の排水口に導く水勾配を形成するために、略鞍形状とされている。本実施形態では、駐車領域7C、7Dが接する位置の柱8gの近傍のフロア面と、駐車領域7Eと進入路6とが接する位置の柱8gの近傍のフロア面が、進入路6を除いて最低の高さとされ、柱8gの近傍に、排水口26A、26Bが設置されている。以下では、この進入路6を除く最低高さの面を基準面11として、駐車フロア10の各位置での高さを基準面11からの高さで表す。図1に記載された数字は、この基準面11からの高さ(単位mm)を示す(以下、誤解のおそれのない限り、基準面11からの高さを、単に、高さと称する)。
【0024】
図1、6に示すように、駐車領域7Cは、駐車領域7D側から駐車領域7Bに向かう第1方向に沿って、高さが0mmから300mmまで上昇する約1.3%の一様な勾配を有し、第2方向には水平とされた傾斜面となっている。
曲折部5gは、直線部5dに接続する辺が高さ60mmとされ、直線部5cに接続する辺が駐車領域7C側から高さ100mm、60mmとされているため、それぞれの辺から、柱8gの高さ0mmまで下降する斜面により、断面V字状の谷形状が形成されている。
直線部5cは、図6(b)、(c)、(d)に示すように、曲折部5gから曲折部5fに向かって、第2方向の勾配をわずかに変化させながら、全体として、上昇する傾斜面を形成している。
曲折部5fは、直線部5cから進入路4に向かう第1方向に沿って、直線部5bに接続する辺において高さ240mmで一定であり、駐車領域7C側の辺において高さ200mmから300mmに上昇するねじれた傾斜面を形成している。
このような傾斜面により、曲折部5f、直線部5c、曲折部5gは、全体として、第1方向に沿って、最高高さ300mmから最低高さ0mmに向かう勾配が不均一な傾斜面を構成している。ただし、この傾斜面は下降方向である第2方向に沿う断面では、単調な勾配を有している。そのため、図示直線矢印の方向に水勾配が形成されている。
【0025】
曲折部5h、直線部5e、および曲折部5iの傾斜面は、曲折部5g、直線部5c、および曲折部5fの傾斜面を駐車フロア10の中心に対して180°回転移動した形状を有する。また、駐車領域7Eの傾斜面は、駐車領域7Cの傾斜面を駐車フロア10の中心に対して180°回転移動した形状を有する。
そのため、それぞれの傾斜面の形状は容易に理解されるので、詳細の説明を省略する。
【0026】
直線部5dは、図6(a)、図7(b)、(c)、(d)に示すように、駐車領域7E側から駐車領域7Cに向かう第2方向に沿って、高さ240mmから60mmに下降する平面から構成される単調かつ一様な傾斜面である。
また、直線部5bは、駐車領域7E側から駐車領域7Cに向かう第2方向に沿って、高さ60mmから240mmに上昇する平面から構成される単調かつ一様な傾斜面である。
駐車領域7Aは、平面視で直線Lに重なる部分が、それぞれ直線部5d、5bの傾斜に沿う傾斜を備えたねじれの位置関係にあり、平面視で直線L、Lに重なる部分が、直線部5c、直線部5eの傾斜に沿う傾斜を備えたねじれの位置関係にある。そのため、駐車領域7Aは、略鞍形状をなしており、駐車領域7A上に降水した場合に、曲折部5g、曲折部5iに接する2箇所の最低高さ60mmの位置に降水が集中するような立体形状をなしている。
【0027】
図7(a)、(b)、(c)、(d)、(e)に示すように、駐車領域7Dは、駐車領域7Eから駐車領域7Cに向かう第2方向に沿って、高さ300mmから0mmまで下降する0.8%の一様な勾配を有し、第1方向には水平とされた傾斜面となっている。
駐車領域7Bは、進入路4側から進入路6側に向かう第2方向に沿って、高さ240mmから60mmまで下降する0.8%の一様な勾配を有し、第1方向には水平とされた傾斜面となっている。
すなわち、駐車領域7Dは、曲折部5h、直線部5d、曲折部5gと接する部分でそれぞれと同一の勾配を有し、第2方向に傾斜する平面となっている。
また、駐車領域7Bは、直線部5bと同一の勾配を有し、第2方向に傾斜する平面となっている。
【0028】
進入路4は、図1、図7(e)に示すように、昇降部3に接続するため、駐車領域7Bに隣接する辺が、曲折部5fから昇降部3に向かう方向に、高さが240mmから665mmに上がる8.5%の勾配を備え、外縁部側が同じく、高さが300mmから375mmに上がる勾配を備えることで、全体として昇降部3に向かって上昇する傾斜面とされている。そのため、駐車領域7Bとの境界には段差が形成されている。
進入路6は、図1、図7(a)に示すように、昇降部3に接続するため、駐車領域7Bに隣接する辺が、曲折部5iから昇降部3に向かう方向に、高さが60mmから−365mm(下階の基準面11から2635mm)に下がる8.5%の勾配を備え、外縁部側が同じく、高さが0mmから−75mm(下階の基準面11から2935mm)に下がる勾配を備えることで、全体として昇降部3に向かって下降する傾斜面とされている。そのため、駐車領域7Bとの境界には段差が形成されている。
【0029】
昇降部3の概略構成は、図1、2に示すように、1つの駐車フロア10の進入路4に接続された登り口傾斜面3b(傾斜面の下端部)と、登り口傾斜面3bから上階側に延ばされた傾斜面3aと、上階側の進入路6に接続された降り口傾斜面3c(傾斜面の上端部)とが、階層ごとに設けられてなる。
図1において、傾斜面3Aは、図示された駐車フロア10の上階に向かう傾斜面3aであり、傾斜面3Bは、図示された駐車フロア10の下階に向かう傾斜面3aである。そのため、図示の降り口傾斜面3cは、傾斜面3Bものを示している。
【0030】
各傾斜面3aは、高さ665mm〜2635mmの範囲で、勾配が断面略S字状に変化する傾斜面として設けられている。本実施形態の勾配は、上下端から2500mmの範囲が6%、その中間部の勾配が9.5%となる傾斜面を採用している。
【0031】
登り口傾斜面3bは、進入路4と傾斜面3Aとの間で車両がカーブするための車路を形成するもので、カーブを下から上に登る際に、カーブ外周側が低い状態から水平な状態まで順次変化する傾斜を有する。本実施形態では、図1に示すように、内側のコーナーが高さ665mmとされ、外側のコーナーが、進入路4から傾斜面3aに向けて、高さ375mm、465mm、665mmとされている。そのため、外周部での勾配が、1.5%、2.7%と変化して、進入路4から、傾斜面3Aの下端の665mmの高さまでを接続する緩斜面が形成されている。
降り口傾斜面3cは、進入路6と傾斜面3Bとの間で車両がカーブするための車路を形成するものであり、登り口傾斜面3bと同様の緩斜面を形成している。すなわち、本実施形態では、図1に示すように、内側のコーナーが高さ−365mm(下階の基準面11から2635mm)とされ、外側のコーナーが、進入路6から傾斜面3aに向けて、高さ−65mm(下階の基準面11から2925mm)、−165mm(下階の基準面11から2835mm)、−365mm(下階の基準面11から2635mm)とされている。そのため、外周部での勾配が、1.5%、2.7%と変化して、進入路6の高さから、傾斜面3Bの上端の−365mmの高さまでを接続する緩斜面が形成されている。
【0032】
次に、駐車フロア10および駐車場1の作用について説明する。
駐車場1は、昇降部3を有するので、傾斜面3aを登り降りして、各階の駐車フロア10に、進入路4、6を通って入出車することができる。このとき、傾斜面3aの上下端にそれぞれ傾斜面3aの勾配より緩い勾配を有する登り口傾斜面3b、降り口傾斜面3cを備えるため、傾斜面3aに断面略S字状の勾配を設けていることと相俟って、登り降りの際に斜面と車体とのこすれを防止することができる。
【0033】
進入路4(6)を通って入り口から駐車フロア10に入った車両は、各駐車区画7が、走行車路5に向けて入り口7cを備えるため、走行車路5から所望の駐車区画ブロック7aに入車して駐車することができる。
あるいは、走行車路5を通って進入路6(4)から昇降部3に入り、上階(下階)に移動することができる。
【0034】
本実施形態では、駐車領域7Aにおいて、柱8が配列されている平面視の直線L、Lが形成する点Pから離間した位置に柱8が形成されているため、点Pに柱が設けられた場合に比べて走行車路5の路幅を狭くしても、各曲折部での旋回に必要な回転半径(以下、旋回半径と称する)を確保することができる。
駐車領域7Aのいずれの角部も同様の構成を有するので、以下では、曲折部5gの場合で説明する。
【0035】
曲折部5gにおいて、車両が曲がることができるためには、図5に示すように、曲折部5gの範囲に、必要な旋回半径が確保されたコーナー内周部30a、コーナー外周部30bで挟まれた円弧状にコーナー部が丸められた必要走行領域30を確保する必要がある。
本実施形態では、柱8aを、直線L上で点Pから離間し柱8eに近づく側に後退させた位置に設けることで、点Pが必要走行領域30の内部に重なるように、コーナー内周部30aを駐車領域7A側に近づけ、しかも柱8aが必要走行領域30に干渉しないような位置関係に設定することができる。
その結果、直線部5d、直線部5cにおける必要走行領域30の直線部分を、駐車領域7Aに近づけて配置することができ、走行車路5の路幅が必要走行領域30の直線部分の幅に近づける駐車フロア10のスペースの有効利用を図ることができる。
また、このように、駐車領域7Aと直線部5d、5cとの間のスペースを詰めることで、柱8bから第2方向に延びて直線部5dおよび駐車領域7Dの荷重を受ける梁18、19の長さを短縮することができる。そのため、梁の断面積を低減して小型化、軽量化を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態では、点Pに最も近い柱8aから、第1方向に梁17を延ばし、第2方向において最も点Pに最も近い柱8bから、第2方向に梁15を延ばして、梁17の中間部に接続しているため、これら柱8aと柱8bとの間に直線L、Lに交差する方向に延びる梁を設けない構成とすることができる。
そのため、駐車領域7Aの内部および、駐車領域7Aに対向する駐車フロア10の外周部で、主として、直線L、Lに平行な格子状の構造体を形成することができる。そのため、一様な傾斜面や、ねじれた傾斜面を容易に形成することができるという利点がある。
【0037】
次に、駐車フロア10に形成された水勾配について説明する。
駐車フロア10は、全体として、基準面11の高さに一致する2箇所が対角位置設けられた略鞍形状の立体形状を有する。すなわち、図1に示す対角方向の折れ線Qの中央に向かってV字状に傾斜するともに、折れ線Qをおよその境界稜線として、それぞれ排水口26A、26Bに向かう傾斜面が形成されている。
そのため、駐車フロア10に降水が発生すると、その降水は、駐車領域7C、7Dでは、一様な傾斜面に沿って導かれ、曲折部5f、直線部5c、曲折部5gでは、全体としてこの順に下降する傾斜面に沿って導かれ、曲折部5h、直線部5d、曲折部5gでは、全体としてこの順に下降する傾斜面に沿って導かれ、それぞれ排水口26Aに到達して排水される。また、駐車領域7Aでは、ねじれた傾斜面により、降水が高さ60mmの点P近傍に導かれ、曲折部5gの傾斜面を下って排水口26Aに到達し排水される。
同様に、折れ線Qの図示上側では、各領域への降水は、排水口26Bに導かれ排水される。
【0038】
また、進入路4に入り込んだ降水は、その傾斜に沿って曲折部5fに導かれ、排水口26A、26Bのいずれかから排水される。
また、進入路6に入り込んだ降水は、傾斜面3a、登り口傾斜面3bを下降し、最終的に下階の進入路4の場合と同様な外縁部から排水される。また必要に応じて、傾斜面3aの側方や、降り口傾斜面3cの外周部に排水口、排水路を設けておき、一部または全部が、傾斜面3aを下降することなく、降り口傾斜面3cの外縁部で排水されるようにしてもよい。
【0039】
このように、本実施形態では、駐車フロア10への降水が、良好に排水され、降水などが走行車路5などにたまらないようにすることができる。その際、駐車フロア10上の降水が、2箇所に集中する水勾配が設けられているので、排水設備の数を低減し、メンテナンスなどを容易化することができる。
また、このような駐車フロア10の略鞍形状の立体形状は、四辺形領域の4隅をなす柱8gの間を真直梁で接合し、対向する2辺が互いにねじれの位置に設けた構造体を形成し、その内側に格子状に配置された柱8に対して、平面視で第1、第2方向に延びる真直梁を配置して形成されている。そのため、例えば、傾斜に応じた曲がり梁などの高価な部品を用いることなく、梁の形状や長さ、継手などを共通化して部品の共通化を図ることができ、簡素な構造とすることができる。
【0040】
また、相対的な低位置の曲折部5iが進入路6に接続され、相対的な高位置の曲折部5fが進入路4に接続されているため、進入路6から進入路4に至る走行車路5が、昇降路の機能を果たしており、その高低差分だけ、昇降部3の高低差を低減することができる。そのため、昇降部3の平均的な勾配を低減し、急勾配のため車体を傾斜面にこすったりすることなく、円滑に走行して、上下階を行き来することができる。
【0041】
なお、上記の説明では、環状の走行車路を囲む四辺形領域において、降水を2箇所に集める略鞍形状の水勾配を形成した場合の例で説明したが、排水の必要に応じて、走行車路の外周側に設けた駐車領域を含む四辺形領域の対角位置に降水を集める構成としてもよい。
【0042】
また、上記の説明では、自走式駐車場の構造体が鉄骨構造である場合の例で説明したが、例えば、鉄筋コンクリート構造など他の構造体で構成してもよい。
【0043】
また、上記の説明では、登り側接続面が四辺形領域の4隅の他方の対角位置の1つの近傍に設けられ、下り側接続面が四辺形領域の4隅の一方の対角位置の1つの近傍に設けられた例で説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、自走式駐車場の大きさなどにより、昇降部の勾配を十分緩くできる場合には、登り側接続面、下り側接続面が、四辺形領域の中間位置に設けられていてもよい。また、登り側接続面と下り側接続面との位置関係を逆にしてもよい。
【0044】
また、上記の説明では、走行車路の昇降が円滑に行えるように、走行車路が、四辺形領域の4隅の他方の対角位置の1つから一方の対角位置の1つに向かって単調に下降する傾斜面からなる場合の例で説明したが、降水が最終的に一方の対角位置の1つに向かって流れるような立体的な勾配を設けることができれば、走行車路は必ずしも単調な傾斜面でなくてもよい。
【0045】
また、上記の説明では、駐車場フロアの四辺形領域が、4隅を結ぶ直線に沿う方向に延ばされた真直梁によって支持された例で説明したが、略鞍形状の立体形状を形成することができれば、このような構成に限定されない。例えば、4隅を結ぶ傾斜に近似した折れ線状に接続された真直梁で支持されていてもよいし、必要に応じて曲がり梁などを用いてもよい。
【0046】
また、上記の説明では、説明の便宜上、フロア面を幾何学的に単純化した平面などとして説明したが、実際の施工では、例えば、排水口の近傍では、排水口が最低の高さとなるように微小な水勾配が形成されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る自走式駐車場の駐車場フロアの構成および柱配置を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る自走式駐車場の柱および梁の構成を示す部分平面図である。
【図6】図1のD−D線、E−E線、F−F線、G−G線、B−B線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。
【図7】図1のH−H線、C−I線、J−J線、K−K線、M−M線に沿う断面の概略の高さ変化を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 駐車場(自走式駐車場)
2 層状駐車部
3 昇降部
3a、3A、3B 傾斜面
3b 登り口傾斜面(傾斜面の下端部)
3c 降り口傾斜面(傾斜面の上端部)
4 進入路(登り口側接続面)
5 走行車路
6 進入路(下り口側接続面)
5b、5c、5d、5e 直線部
5f、5g、5h、5i 曲折部
7A、7B、7C、7D、7E 駐車領域
7 駐車区画
7b 車止めブロック
7c 入り口
8、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i 柱
8a 柱(第1の柱)
8b 柱(第2の柱)
10 駐車フロア(駐車場フロア)
15 梁(第2の梁)
17 梁(第1の梁)
18、19、22、24 梁(走行車路側に延びる梁)
26A、26B 排水口
直線(第1の直線)
直線(第2の直線)
P 点(2直線の交点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車領域と該駐車領域内に駐車するための環状の走行車路とを有する駐車場フロアが積層された自走式駐車場であって、
前記駐車場フロアが、
少なくとも前記環状の走行車路を囲む四辺形領域において、該四辺形領域の4隅の高さが、一方の対角位置で相対的に低く、他方の対角位置で相対的に高く設定され、前記四辺形領域内部では前記4隅の高さの中間の高さを有しかつ前記一方の対角位置のいずれかに向かう勾配が形成されることによって、略鞍形状の立体形状に形成され、
前記四辺形領域の4隅の一方の対角位置にそれぞれ排水口が設けられたことを特徴とする自走式駐車場。
【請求項2】
前記積層された駐車場フロアの各階を傾斜面で連結する昇降部と、
前記駐車場フロアの走行車路から前記昇降部の登り側の傾斜面の下端部に接続する登り側接続面と、
前記駐車場フロアの走行車路から前記昇降部の下り側の傾斜面の上端部に接続する下り側接続面とを備え、
前記登り側接続面が、前記四辺形領域の4隅の前記他方の対角位置の1つの近傍に設けられ、
前記下り側接続面が、前記四辺形領域の4隅の前記一方の対角位置の1つの近傍に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の自走式駐車場。
【請求項3】
前記走行車路が、前記四辺形領域の4隅の前記他方の対角位置の1つから前記一方の対角位置の1つに向かって単調に下降する傾斜面からなることを特徴とする請求項1または2に記載の自走式駐車場。
【請求項4】
前記駐車場フロアの四辺形領域が、前記4隅を結ぶ直線に沿う方向に延ばされた真直梁によって支持されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自走式駐車場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−144542(P2008−144542A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335691(P2006−335691)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)