説明

自転車のバーエンド型ギアシフト部の制御レバーおよび作動装置

【課題】自転車のバーエンド型ギアシフト部の作動装置に用いられる制御レバーであって、運転者の手の位置が空気力学的にベストな状態になると共にその手の位置をほぼ変えずとも迅速なギアシフトが可能である制御レバーの提供。
【解決手段】制御レバー120は、作動装置100に取り付けられる実質的に円筒状のボディ130と、自転車の走行方向において前方に向くように意図され、かつ、ボディ130の上部にほぼ正接する主軸Aに沿ってボディ130から突出するアーム140と、を備える。アーム140は、ボディ130に近位にある凹状の第1の上側圧力部141を有し、かつ、ボディ130から遠位にある第2の下側圧力部142を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のバーエンド型ギアシフト部の作動装置に用いられる制御レバー、そのような制御レバーを備える作動装置、およびそのような作動装置をハンドルバーの両端部に装着可能な一対の作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、競走用の自転車では、性能を上げるための解決策の研究が絶えず続けられている。詳細に述べると、スピードレース(典型的には、タイムトライアルなど)用の自転車では、自転車の全ての部品が空気力学的に良好な構成を有することが特に重要とされる。また、性能を上げる要因として、全制御部の効率が挙げられるが、それだけに限らず、運転者が制御部の動作に煩わされずに身体的努力に集中することを可能にする制御作動の簡単性や安全性も挙げられる。
【0003】
近年、実質上前方に向いた2つの端部を有する、スピードレース用に特化した特殊なハンドルバーの使用が普及している。このようなハンドルバーにより、運転者は、胸部を前方に大きく傾けた空気力学的に効率よい姿勢を維持することができる。
【0004】
そのようなハンドルバーの普及に伴い、特殊なブレーキ作動装置やギアシフト作動装置も普及するようになった。これらの装置は運転者が姿勢を維持したまま簡単に作動できるようにまさにハンドルバーの端部に装着されることから、バーエンド型として一般的に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人は、この種の装置(特に、ギアシフト部の作動装置)について、運転者の手の位置が空気力学的にベストな状態になるようにすると共に当該装置の作動時にその手の位置をほぼ変えずに済むように特殊設計することにより、当該装置の全体的な効率を向上できることに気付いた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上を踏まえて、本発明の第1の構成は、請求項1に記載の制御レバーに関する。好ましい構成は、請求項2から11に記載されている。
【0007】
本発明のさらなる構成は、請求項12に記載の作動装置、および請求項14に記載の一対の作動装置に関する。好ましい構成は、請求項13と請求項15に記載されている。
【0008】
詳細には、前記制御レバーは、自転車のバーエンド型ギアシフト部の作動装置に用いられる制御レバーであって、前記作動装置は、ハンドルバーの、自転車の走行方向に沿って前方に向いた端部に装着されるようになっており、前記作動装置に取り付けられる実質的に円筒状のボディと、自転車の走行方向前方に向くように意図され、かつ、前記ボディの上部にほぼ正接する主軸に沿って前記ボディから突出するアームとを備える制御レバーにおいて、前記アームが、前記ボディの近位にある凹状の第1の上側圧力部を有し、かつ、前記ボディから遠位にある第2の下側圧力部を有することを特徴とする。
【0009】
運転者は、ペダル動作の際、ハンドルバーの端部を握りながら、手を置いたハンドルバーの端部に非常に近い位置で制御レバーを握るために曲げられた親指で第1の圧力部と係合することができる。この際、制御レバーの下部に人差し指を曲げた状態にしている。これにより、前記第1の圧力部の凹形状により親指が部分的に前記制御レバーに収まるので、空気力学的に好適な位置が得られる。また、運転者は、手の位置をほぼ変えずにギアのアップシフトおよびダウンシフトを実行することができる。したがって、迅速なギアシフトを簡単に行えるだけでなく、空気力学的に好適な状態を容易に維持することができる。
【0010】
好ましくは、前記制御レバーは、さらに、前記ボディと前記第2の圧力部との間に、凹状の第3の下側圧力部を備える。この第3の圧力部により、前記制御レバーの下部において人差し指を伸ばさずに曲げる、人差し指用の代替的位置がもたらされる。この位置は、人差し指が凹状の圧力部に部分的に収まるので空気力学的に好適である。さらに、この位置により、ギアシフトを実行する際に作動装置を完全制御することができる。
【0011】
好ましくは、前記制御レバーは、さらに、前記ボディから遠位にある第4の上側圧力部を備える。この第4の圧力部により、前記制御レバーの上部において親指を曲げずに伸ばす、親指用の代替的位置がもたらされる。この位置は、親指が前方に真っ直ぐになるので空気力学的に好適である。さらに、この位置により、ギアシフトを実行する際に作動装置を完全制御することができる。
【0012】
前記第4の圧力部は、扁平でもよいが、好ましくは、若干の凹状である。凹状の形状であれば、第三指節骨(最も外側の指節骨)が第二指節骨から(他の指の方向に)少し突出する親指の典型的な骨格に適合するので、空気力学的作用が向上する。
【0013】
好ましくは、前記第2の圧力部は実質的に扁平であるか、あるいは、若干の凹状である。このような形状は、指節骨に顕著な突部を持たない人差し指の典型的な骨格に適合するので、良好な空気力学的作用がもたらされる。
【0014】
好ましくは、前記第2の圧力部は、他の圧力部よりも、前記主軸から離れて配置される。この構成であれば、ギアシフトを実行するのに必要な人差し指のストロークが減少するので、操作が容易になる。
【0015】
好ましくは、前記第1の圧力部の凹深さは、前記アームの前記主軸を基準として一方の側よりも他方の側で大きい。事実、前記制御レバーに親指が傾いて載置されることを踏まえると、走行方向を基準として内側の深さを大きくするのが好適と考えられ得る。
【0016】
好ましくは、前記第3の圧力部の凹深さは、前記アームの前記主軸を基準として一方の側よりも他方の側で大きい。事実、前記制御レバーに人差し指が傾いて当接されることを踏まえると、走行方向を基準として内側の深さを大きくするのが好適と考えられ得る。
【0017】
好ましくは、前記アームの平面形状は、前記ボディから遠ざかるにつれて先すぼまり状である。好ましくは、前記アームは、当該アームの前記主軸と前記主軸に垂直な方向とに対して傾いた、前記ボディから遠位にある端部を有する。いずれの構成も、制御レバーに良好な空気力学的作用をもたらす。
【0018】
本発明の第2の構成は、具体的には、自転車のバーエンド型ギアシフト部の作動装置であって、ハンドルバーの、自転車の走行方向前方に向いた端部に取付けられるケーシングと、前述の特徴を有する制御レバーとを備え、前記制御レバーが、当該制御レバーの円筒状のボディの軸を中心として前記ケーシングに対して回転可能に支持される、作動装置に関する。
【0019】
好ましくは、前記制御レバーの前記ボディは、前記ケーシングに対し、前記アームの前記主軸を基準として側方に偏位して、非対称に取り付けられる。この側方への偏位により、前記制御レバーを把持する手の人差し指と当該制御レバーとで構成されるユニットは、前方に向くハンドルバーの端部とほぼ整列することになるので、全体として空気力学的に有利となる。
【0020】
好ましくは、上述の特徴を有する一対の作動装置において、一方の前記作動装置において、制御レバーのボディが、一方の側に偏位して(displaced on one side)非対称に取り付けられ、他方の前記作動装置において、制御レバーのボディが、それとは反対の側に偏位して(displaced on the other side)非対称に取り付けられる。より好ましくは、前記ハンドルバーの右端部に装着される作動装置において、前記制御レバーの前記ボディが、前記ケーシングに対し、左方へ偏位して非対称に取り付けられ、前記ハンドルバーの左端部に装着される作動装置において、前記制御レバーの前記ボディが、前記ケーシングに対し、右方へ偏位して、非対称に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる作動装置および制御レバーが設けられたハンドルバーの端部の一例を上方からみた斜視図である。
【図2】図1のハンドルバーの端部を下方からみた斜視図である。
【図3】ハンドルバーの一対の端部を図1のように上方からみた斜視図である。
【図4】図1のハンドルバーの端部の側面図である。
【図5】図4において制御レバーが取り得る位置を幾つか示した側面図である。
【図6】図1に示す装置における制御レバーのみを前方からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う好ましい実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【0023】
図面に、競走(特に、スピードレース)用自転車のギアシフト部の制御ケーブル(図示せず)の作動装置100を示す。作動装置100は、いわゆるバーエンド型の装置であり、競走用自転車(特に、タイムトライアル用として特化した自転車)に使用されるタイプの自転車ハンドルバーの左側の端部(左端部)MSに装着される。このようなハンドルバーの前記左側の端部(左端部)MS[右側の端部(右端部)MDでもよい]は、自転車の前方運動方向において主軸Aに沿って前方に向いている。
【0024】
作動装置100は、ハンドルバーの端部MSに取付けられるケーシング110と、前記方向Aを横切る軸Tを中心として回転可能にケーシング110によって支持される制御レバー120とを備える。
【0025】
制御レバー120は、前記軸Tと同軸である実質的に円筒状のボディ130と、ボディ130の上部にほぼ正接する主軸Aの方向にボディ130から突出するアーム140とを備える。つまり、アーム140は、使用時に自転車の走行方向において前方に向く。制御レバー120のボディ130は、ケーシング110に対し、アーム140の主軸Aを基準として側方に偏位(特に、ハンドルバーの左端部MSに装着される作動装置100の場合、右側に偏位)して、非対称に取り付けられる。
【0026】
アーム140は、ボディ130の近位にある凹状の第1の上側圧力部141を有し、かつ、ボディから遠位にある第2の下側圧力部142を有する。好ましくは、第2の下側圧力部142は、実質的に扁平である。
【0027】
アーム140は、さらに、ボディ130と第2の圧力部142との間に、凹状の第3の下側圧力部143を備える。
【0028】
アーム140は、さらに、ボディ130から遠位にある第4の上側圧力部144を備える。好ましくは、前記第4の上側圧力部144は、若干の凹状である。
【0029】
第1の圧力部141の凹深さは、アーム140の主軸Aを基準として一方の側よりも他方の側で大きい(特に、ハンドルバーの左端部MSに装着される作動装置100の場合、左側が大きい)。詳細には、図6、符号145で示される領域に、このより大きい深さの部分を見ることができる。
【0030】
第3の圧力部143の凹深さは、アーム140の主軸Aを基準として一方の側よりも他方の側で大きい(特に、ハンドルバーの左端部MSに装着される作動装置100の場合、左側が大きい)。詳細には、図6、符号147で示される領域に、このより大きい深さの部分を見ることができる。
【0031】
第2の圧力部142は、他の圧力部よりも主軸Aから離れている。
【0032】
アーム140の平面形状は、ボディ130から始まってボディ130から遠位な端部148で終わる先すぼまり状(tapered)である。前記端部148は、アーム140の主軸Aと当該主軸Aに垂直な方向(すなわち、軸Tに平行方向)の両方に対して傾いている。
【0033】
図3は、ハンドルバーの左端部MSおよび右端部MDを上方からみた図である。他の図と同様に、左端部MSに作動装置100が設けられている。右端部MDには、作動装置100と鏡面対称な、全体が符号200で表される作動装置が設けられている。作動装置200の構成要素は作動装置100の構成要素と鏡面対称なので、それらについては以下で説明しない。
【0034】
つまり、作動装置100,200は、制御レバー120の各々のボディ130が、互いに反対側に偏位する非対称に取り付けられ、左側の作動装置100の場合には右側へ偏位し、右側の作動装置200の場合には左側へ偏位する。
【0035】
操作時に、運転者は、ケーシング110に手を載せて、ハンドルバーを2つの端部MS,MDで把持する。好ましい一形態では、運転者は、アーム140の上で、第1の圧力部141に親指を載置し、人差し指でアーム120の下部を押圧している。親指は、第1の圧力部141の凹形状により、部分的に制御レバー120に収まる。
【0036】
上記のような位置に指を置くことにより、運転者の手と作動装置100,200との組合せは空気力学的に好適な形態を取る。また、運転者は、そのような指の位置を、どのようなギアシフト時にもほぼ維持することができる。なぜなら、親指は制御レバー120を直接かつ迅速に作動させるのに適した位置に既に置かれており、そのうえ、下部の第2の圧力部142には、人差し指を前方に伸ばすだけでよいからである。
【0037】
また、第3の圧力部143により、人差し指用の一代替的位置が提供される。この領域に人差し指を置くとき、人差し指は曲げた状態にあり、そのうえ、第3の圧力部143の凹形状により、部分的に制御レバー120に収まる。この場合も、全体構成は空気力学的に好適であり、操作の操作性(manoeuvring)も前と変わらない。
【0038】
また、第4の圧力部144により、親指用の一代替的位置が提供される。この部分に載置されると親指は伸びており、第1の圧力部141に載置される場合よりも伸びており、そのうえ、第4の圧力部144の凹形状により、部分的に制御レバー120に収まる。この場合も、全体構成は空気力学的に好適であり、操作性も前と変わらない。
【0039】
事実上、運転者は、親指と人差し指のそれぞれに2種類の代替的位置を持つことができる。これは、運転者に常に同じ位置を維持することを強いらず(すなわち、引きつる恐れがない)、また、位置の変更によって空気力学的な機能性が損なわれることもないので、極めて有益である。
【0040】
当然ながら、添付の特許請求の範囲が規定する保護範囲を逸脱することなく前述の内容に様々な変更や変形を施すことも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のバーエンド型ギアシフト部の作動装置(100)に用いられる制御レバー(120)であって、前記作動装置(100)は、ハンドルバーの、自転車の走行方向に沿って前方に向いた端部(MS,MD)に装着されるようになっており、
前記作動装置(100)に取り付けられる実質的に円筒状のボディ(130)と、
自転車の走行方向前方に向くように意図され、かつ、前記ボディ(130)の上部にほぼ正接する主軸(A)に沿って前記ボディ(130)から突出するアーム(140)と、を備える、制御レバー(120)において、
前記アーム(140)が、前記ボディ(130)の近位にある凹状の第1の上側圧力部(141)を有し、かつ、前記ボディ(130)から遠位にある第2の下側圧力部(142)を有することを特徴とする、制御レバー。
【請求項2】
請求項1において、前記ボディ(130)と前記第2の圧力部(142)との間に、凹状の第3の下側圧力部(143)を備える、制御レバー。
【請求項3】
請求項1において、前記ボディ(130)から遠位にある第4の上側圧力部(144)を備える、制御レバー。
【請求項4】
請求項3において、前記第4の圧力部(144)が若干の凹状である、制御レバー。
【請求項5】
請求項1において、前記第2の圧力部(142)が実質的に扁平である、制御レバー。
【請求項6】
請求項1において、前記第2の圧力部(142)が若干の凹状である、制御レバー。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項において、前記第2の圧力部(142)が、前記の他の圧力部(141,143,144)よりも、前記主軸(A)から離れて配置される、制御レバー。
【請求項8】
請求項1において、前記第1の圧力部(141)の凹深さが、前記アーム(140)の前記主軸(A)を基準として一方の側よりも他方の側で大きい、制御レバー。
【請求項9】
請求項2において、前記第3の圧力部(143)の凹深さが、前記アームの前記主軸(A)を基準として一方の側よりも他方の側で大きい、制御レバー。
【請求項10】
請求項1において、前記アーム(140)の平面形状が、前記ボディ(130)から遠ざかるにつれて先すぼまり状である、制御レバー。
【請求項11】
請求項1において、前記アーム(140)が、当該アーム(140)の前記主軸(A)と前記主軸(A)に垂直な方向とに対して傾いた、前記ボディ(130)から遠位にある端部(148)を有する、制御レバー。
【請求項12】
自転車のバーエンド型ギアシフト部の作動装置(100,200)であって、
ハンドルバーの、自転車の走行方向において前方に向いた端部(MS,MD)に取り付けられるケーシング(110)と、
請求項1から11のいずれか一項に記載の制御レバー(120)と、を備え、
前記制御レバー(120)が、当該制御レバー(120)の円筒状のボディ(130)の軸(T)を中心として前記ケーシング(110)に対して回転可能に支持される、作動装置。
【請求項13】
請求項12において、前記制御レバー(120)の前記ボディ(130)が、前記ケーシング(110)に対し、前記アーム(140)の前記主軸(A)を基準として側方に偏位して非対称に取り付けられる、作動装置。
【請求項14】
競走用の自転車のハンドルバーの、前方に向いた2つの端部(MS,MD)に装着される、請求項12に記載の作動装置(100,200)で構成される一対の作動装置であって、
一方の前記作動装置(100)において、制御レバー(120)のボディ(130)が、一方の側に偏位して非対称に取り付けられ、
他方の前記作動装置(200)において、制御レバー(120)のボディ(130)が、それとは反対の側に偏位して非対称に取り付けられる、一対の作動装置。
【請求項15】
請求項14に記載の一対の作動装置(100,200)であって、前記ハンドルバーの右端部(MD)に装着される作動装置(200)において、前記制御レバー(120)の前記ボディ(130)が、前記ケーシング(110)に対し、左方へ偏位して非対称に取り付けられ、前記ハンドルバーの左端部(MS)に装着される作動装置(100)において、前記制御レバー(120)の前記ボディ(130)が、前記ケーシング(110)に対し、右方へ偏位して非対称に取り付けられる、一対の作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116472(P2012−116472A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−264424(P2011−264424)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(592072182)カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (94)
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA