説明

自転車用リアスプロケット

【課題】リアスプロケットにおいて、強度を維持して軽量化を図れるようにする。
【解決手段】リアスプロケット62cは、自転車のリアハブに装着可能なスプロケットであって、スプロケット歯67cと、連結部68cと、凹部71cとを備えている。スプロケット歯67cはリアスプロケット62cの外周側に形成されている。連結部68cは、内周側に形成され、リアハブに一体回転可能に連結されている。環状の凹部71cは、スプロケット歯67cと連結部68cとの間の少なくとも一方の側面に設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプロケット、特に自転車用のリアハブに装着可能な自転車用リアスプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用リアスプロケットは、自転車のリアハブに設けられたフリーホイールに一体回転可能に装着される。リアディレーラに対応するリアハブの場合、変速段数に応じて歯数が異なる複数枚のリアスプロケットがハブ軸方向に等間隔に並べて配置されている。具体的には、歯数が最も少ない最小径のリアスプロケットが軸方向外側に配置され、軸方向内側に最も歯数が多い最大径のリアスプロケットが配置されている。この種のリアスプロケットは、外周側に形成されたスプロケット歯と、内周側に形成され、リアハブのフリーホイールの外周面に一体回転可能に連結される連結部と、を有している(たとえば、特許文献1参照)。従来のリアスプロケットでは、大径及び中間径のものでは、スプロケット歯と連結部とが大きく離れているので、軽量化を図るための複数の開口がスプロケット歯と連結部との間で回転方向に間隔を隔てて配置されている。
【特許文献1】特開平11−263281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の構成では、小径のリアスプロケットでは、複数の開口が形成されていないので、軽量化を図りにくい。そこで、軽量化を図るために大径及び中間径のスプロケットと同様な開口を形成することが考えられる。しかし、開口を回転方向に間隔を隔てて形成すると、リアスプロケットの強度が弱くなる。
【0004】
本発明の課題は、自転車用リアスプロケットにおいて、強度を維持して軽量化を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明1に係る自転車用リアスプロケットは、自転車のリアハブに装着可能なスプロケットであって、スプロケット歯と、連結部と、凹部とを備えている。スプロケット歯はリアスプロケットの外周側に形成されている。連結部は、内周側に形成され、リアハブに一体回転可能に連結されている。環状の凹部は、スプロケット歯と連結部との間の少なくとも一方の側面に設けられたものである。
【0006】
このリアスプロケットでは、スプロケット歯と連結部との間の少なくとも一面に環状の凹部が形成されている。このため、凹部の形成により軽量化を図れるとともに、貫通しない凹部により強度を維持することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環状の凹部を少なくとも一側面に設けているので、リアスプロケットの軽量化を図れるとともに強度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1において、本発明の一実施形態を採用した自転車101は、マウンテンバイクであり、フロントフォーク98を有するダイヤモンド形のフレーム102と、フロントフォーク98に固定されたハンドル104と、チェーンCNやペダルPDや前後のディレーラFD,RDや前後のスプロケット組立体44f,44r等からなる駆動部105と、フロントフォーク98及びフレーム102後部に装着され、スポーク99を有する前輪及び後輪106,107と、前後のブレーキ装置108,109とを備えている。前輪及び後輪106,107にはフロントハブ10及びリアハブ12が設けられている。
【0009】
リアハブ12は、図2に示すように、フレーム102の後部に設けられた左右1対の爪部102a(図1参照)に着脱自在に装着されるハブ軸40と、ハブ軸40の外周側に配置されたハブ体41と、ハブ体41の図2右側端部に連結されたフリーホイール43と、ハブ軸40とハブ体41及びハブ軸40とフリーホイール43との間に配置された第1及び第2軸受45a,45bと、を有している。
【0010】
フリーホイール43の外周側には、たとえば9個のリアスプロケット62a〜62iを有するリアスプロケット組立体44rが一体回転可能に装着されている。
【0011】
ハブ軸40は、たとえば、クイックレリーズ機構42を有するクイックレリーズ型のハブ軸型の軸であり、爪部102aに対して工具を用いることなく簡単に着脱できる。ハブ体41は、たとえば、アルミニウム合金製の筒状の部材である。ハブ体41は、外周面の両端部にスポーク99が係止されるハブフランジ41a,41bが形成された概ね筒状の部材である。
【0012】
第1軸受45aは、ハブ体41の一端側(図2左端側)に配置されている。第2軸受45bは、フリーホイール43の図2右端内側に配置されている。これらの第1及び第2軸受45a,45bによりハブ体41がハブ軸40に回転自在に支持されている。
【0013】
フリーホイール43は、ハブ体41に一体回転可能に連結される内側部材50と、内側部材50の外周側に配置される外側部材51と、内側部材50と外側部材51との間に配置され外側部材51を内側部材50に対して相対回転自在に装着する第3及び第4軸受52a,52bと、外側部材51の進行方向の回転のみ内側部材50に伝達する爪式のワンウェイクラッチ53とを有している。
【0014】
内側部材50は、段付き円筒状のたとえばクロムモリブデン鋼などの比較的高強度の鋼鉄製の部材である。内側部材50は、外周面にセレーション54aが形成された筒状の連結部材54によりハブ体41と一体回転可能に連結されている。連結部材54のセレーション54aに噛み合うセレーション50a及びセレーション41cが内側部材50の図2左端の大径部分の内周面及びハブ体41の右端内周面に形成されている。内側部材50は、その内周面及び連結部材54の内周面を貫通してハブ体41の内周面に螺合する筒状ボルト55によりハブ体41に固定されている。
【0015】
外側部材51は、外周にリアスプロケット組立体44rが装着されるスプロケット装着部51aを有し、内側部材50の外周部に第3及び第4軸受52a,52bにより回転自在に支持されている。スプロケット装着部51aは、たとえば周方向長さが異なる6個の突起部を有するセレーション51bにより構成されている。外側部材51の内周面には、ワンウェイクラッチ53を構成するラチェット歯60が形成されている。
【0016】
ワンウェイクラッチ53は、外側部材51の進行方向の回転のみ内側部材50に伝達するものである。ワンウェイクラッチ53は、ラチェット歯60と、内側部材50の外周面に周方向に間隔を隔てて配置されたたとえば3つのクラッチ爪61と、クラッチ爪61を付勢する付勢部材(図示せず)とを有している。
【0017】
リアスプロケット組立体44rは、図2及び図3に示すように、前述したリアスプロケット62a〜62iと、リアスプロケット62a〜62iの間に配置された6個のスペーサリング63と、リアスプロケット組立体44rをスプロケット装着部51aに固定するためのロックナット64とを有している。ロックナット64と最小歯数のリアスプロケット62aとの間には回り止めのためのワッシャ65が装着されている。なお、図2では、リアスプロケット62a〜62iは模式的に示されている。
【0018】
リアスプロケット62a〜62iは、軸方向外方から内方に向かって順に歯数が大きくなる。たとえば、この実施形態では、リアスプロケット62aの歯数は、たとえば11であり、リアスプロケット62bの歯数は、たとえば12である。この2つのリアスプロケット62a,62bはそれぞれ単独でスプロケット装着部51aに装着される。その他のリアスプロケット62c〜62iはリアスプロケット62cから挿入されてリアスプロケット62iにねじ込まれる、たとえば3本の連結ボルト66によりスペーサリング63とともに連結されて一体化されている。したがって、これらのリアスプロケット62c〜62hには、3本の連結ボルト66が貫通する貫通孔73c〜73hが形成されているとともに、リアスプロケット62iには、ねじ孔73iが形成されている。これらのリアスプロケット62c〜62iの厚みは、たとえば1.6mm程度である。リアスプロケット62cの歯数は、たとえば14であり、リアスプロケット62d〜62iの歯数は、それぞれ、たとえば16,18,21,24,28,32である。
【0019】
リアスプロケット62a〜62iは、外周側に形成されたスプロケット歯67a〜67iと、内周側に形成され、リアハブ12のスプロケット装着部51aに一体回転可能に連結される連結部68a〜68iと、をそれぞれ有している。スプロケット歯67a〜67iは、前述した歯数である。連結部68a〜68iは、セレーション51bに一体回転可能に係合する凹凸を有している。また、リアスプロケット62a,62bは、スペーサリング63に相当する筒部69a,69bが一体形成されている。リアスプロケット62d〜62iには、軽量化を図るために貫通する複数の開口70d〜70iが形成されている。
【0020】
しかし、歯数が14のリアスプロケット62cは、径が小さいため開口を形成すると強度が低下するおそれがある。そこで、リアスプロケット70cには、図4〜図6に示すように、スプロケット歯67c及び連結部68cに加えて両側面に環状の凹部71cが形成されている。また、凹部71c形成部分に複数の貫通孔72cが周方向に間隔を隔てて形成されている。リアスプロケット62cの厚みは、前述したように、たとえば1.6mmである。凹部71cは、スプロケット歯67cと連結部68cとの間の両側面に形成されており、たとえば、それぞれ深さ0.3mmで一定幅の環状溝である。このような構成のリアスプロケット62cは、貫通する開口ではなく環状の凹部71cを両面に設けているので、リアスプロケット62cの軽量化を図れるとともに強度を維持することができる。
【0021】
ロックナット64は、外側部材51の端部内周面に螺合するナットである。ロックナット64は、内周面に特殊工具が係合する工具係止部64aを有している。
【0022】
このような構成のリアスプロケット組立体44rをスプロケット装着部51aに組み込む際には、組み込み前にリアスプロケット62c〜62iまでをスペーサリング63とともに連結ボルト66により連結して一体化しておく。そして一体化したリアスプロケット62c〜62iをスプロケット装着部51aに装着した後にスプロケット62b,62aをこの順で装着する。最後にワッシャ65を装着した後にロックナット64を特殊工具を用いて所定のトルクで締め込んで装着を完了する。
【0023】
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、凹部71cをリアスプロケット62cの両面に設けたが、凹部はリアスプロケットの少なくとも一方の側面に設けられていればよい。
【0024】
(b)前記実施形態では、一定幅の環状溝で凹部を構成したが、凹部の形状は幅が一定の環状溝に限定されない。図7〜図9に示すように、リアスプロケット162cの凹部171cは、スプロケット歯67cの歯底の形状と連結部68cの形状からオフセットした形状に形成されている。このような構成の凹部171cは、面積が前記実施形態より大きいのでさらに軽量化を図ることができる。
【0025】
(c)前記実施形態では、歯数が14のリアスプロケット62cを例に本発明を説明したが、本発明のリアスプロケットの歯数は14に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるリアスプロケットが採用された自転車の側面図。
【図2】リアスプロケットを搭載したリアハブの半截断面図。
【図3】そのリアスプロケット組立体の分解斜視図。
【図4】リアスプロケットの正面図。
【図5】その背面図。
【図6】図6のVI−VI断面図。
【図7】他の実施形態の図4に相当する図。
【図8】その図5に相当する図。
【図9】図8のIX−IX断面図。
【符号の説明】
【0027】
12 リアハブ
62c,162c リアスプロケット
67c スプロケット歯
68c 連結部
71c,171c 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のリアハブに装着可能な自転車用リアスプロケットであって、
外周側に形成されたスプロケット歯と、
内周側に形成され、前記リアハブに一体回転可能に連結される連結部と、
前記スプロケット歯と前記連結部との間の少なくとも一方の側面に設けられた環状の凹部と、
を備えた自転車用リアスプロケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−120149(P2008−120149A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303597(P2006−303597)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)