説明

臭いの防止された固形医薬製剤の製造方法、及びそれにより得られる固形医薬製剤

【課題】臭いを有する有効成分を含む固形医薬組成物を用いても臭いが充分にマスキングされた固形医薬製剤を得ることを課題とする。
【解決手段】臭いを有する固形医薬組成物をセルロース系コーティング剤でコーティングして第一層を形成し、次いで、ポリビニルアルコール系コーティング剤でコーティングして第二層を形成する、臭いの防止された固形医薬製剤の製造方法により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭いの防止された固形医薬製剤の製造方法、及び該方法により得られる固形医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
システイン、メチオニン、フルスルチアミンなどの臭いを有する有効成分を含有する素錠は、臭いをマスキングして服用の際の不快感を低減させるために、コーティングされることが知られている。従来、臭いのマスキングを目的として、糖衣コーティングが行われていた。
【0003】
しかし、糖衣コーティングは、コーティングに要する時間が長い上に、臭いのマスキング効果が充分ではないという問題点があった。
【0004】
素錠のフィルムコーティングとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合したフィルムでコーティングした錠剤が知られている(特開2004−256517号(特許文献1))。また、ポリビニルアルコールとタルクとを含有するフィルムコーティング組成物が知られている(特開2006−188490号(特許文献2))。しかし、これらのコーティングによっても、臭いのマスキング効果が充分ではない場合がある。
【特許文献1】特開2004−256517号公報
【特許文献2】特開2006−188490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の現状に鑑み、本発明は、臭いを有する有効成分を含む固形医薬組成物を用いても臭いが充分にマスキングされた固形医薬製剤を得ることを目的とする。
【0006】
本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、セルロース系コーティング剤を含有する第一層、次いで、ポリビニルアルコール系コーティング剤を含有する第二層で臭いを有する固形医薬組成物をコーティングすることにより、該組成物の臭いを良好にマスキングできることを見出して、本願発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、本発明は、臭いを有する固形医薬組成物をセルロース系コーティング剤でコーティングして第一層を形成し、次いで、ポリビニルアルコール系コーティング剤でコーティングして第二層を形成する、臭いの防止された固形医薬製剤の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記の製造方法により得られるフィルムコーティングされた固形医薬製剤も提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の臭いの防止された固形医薬製剤の製造方法は、臭いを有する固形医薬組成物の臭いが長期間にわたって充分にマスクされた固形医薬製剤を得ることができる。また、本発明の製造方法は、フィルムコーティング法であるので、簡便にかつ短時間の操作で臭いがマスクされた固形医薬製剤を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の製造方法では、まず、臭いを有する固形医薬組成物を、セルロース系コーティング剤でコーティングして第一層を形成する。
【0010】
上記のセルロース系コーティング剤のコーティング量は、コーティング前の固形医薬組成物に対して、コーティング後の乾燥重量で2〜5重量%が好ましく、より好ましくは3〜5重量%である。
【0011】
上記のセルロース系コーティング剤は、医薬品として許容される、コーティング剤として従来公知のセルロース誘導体を含むのが好ましい。該セルロース誘導体としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテート サクシネートなどが挙げられる。上記のセルロース誘導体は、1種又は2種以上用いることができる。上記のセルロース系コーティング剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むのが特に好ましい。
【0012】
上記のセルロース系コーティング剤は、セルロース誘導体以外のその他のフィルム層添加剤を含むことができる。フィルム層添加剤としては、通常、フィルムコーティング層に含有される滑沢剤、隠蔽剤、分散剤、着色剤などが挙げられる。これらのその他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲の量で第一層に含まれ得る。
上記の滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム塩などが挙げられる。
上記の隠蔽剤としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。
【0013】
上記の第一層のコーティングは、セルロース系コーティング剤を適切な溶媒に溶解又は分散して得られた第一層コーティング液を、固形組成物にコーティングすることにより行うことができる。上記の溶媒としては、用いるセルロース系コーティング剤により適宜選択することができるが、水が好ましい。
第一層のコーティングは、従来公知の条件下で行うことができる。例えば、上記の固形組成物の温度を40〜50℃にしてコーティングを行うことができる。
【0014】
本発明の方法においては、上記のようにして第一層をコーティングした後に、ポリビニルアルコール系コーティング剤でコーティングして第二層を形成する。
【0015】
上記のポリビニルアルコール系コーティング剤のコーティング量は、コーティング前の固形医薬組成物に対して、コーティング後の乾燥重量で2〜10重量%が好ましく、より好ましくは5〜10重量%である。このような範囲でポリビニルアルコール系コーティング剤をコーティングすることにより、固形医薬組成物の臭いを充分にマスキングすることができる。
【0016】
上記のポリビニルアルコール系コーティング剤は、医薬的に許容されるポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上を含むのが好ましい。ポリビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール共重合体、ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0017】
上記のポリビニルアルコール系コーティング剤は、ポリビニルアルコールを含むのが好ましい。該ポリビニルアルコールは、医薬的に許容される従来公知のポリビニルアルコールであれば特に限定されない。ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールの完全けん化物又は部分けん化物のいずれであってもよい。けん化度は特に限定されず、例えば78〜100モル%程度であればよい。ポリビニルアルコールは、1種を用いてもよく、異なるけん化度のポリビニルアルコールを2種以上用いてもよい。
【0018】
上記のポリビニルアルコール系コーティング剤は、上記のポリビニルアルコールの他に、その他のフィルム層添加剤を含むことができる。フィルム層添加剤としては、通常、フィルムコーティング層に含有される滑沢剤、隠蔽剤、分散剤、可塑剤、着色剤などが挙げられる。これらのその他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲の量で第二層に含まれ得る。
これらの各成分としては、上記の第一層について述べたものと同様のものを好ましく用いることができる。
【0019】
上記の第二層のコーティングは、上記のポリビニルアルコール系コーティング剤を適切な溶媒に溶解又は分散して得られた第二層コーティング液を、第一層のコーティングの後にコーティングすることにより行うことができる。上記の溶媒としては、水が好ましい。
該第二層コーティング液としては、ポリビニルアルコールを含有する市販のコーティング剤を用いることができる。このような市販のコーティング剤としては、OPADRY AMB、OPADRY II(ともに日本カラコン社製)、Kollicoat(BASF社製)などが挙げられる。
【0020】
第二層のコーティングは、第一層がコーティングされた固形医薬組成物の温度を55〜65℃程度、より好ましくは55〜60℃、さらに好ましくは57〜60℃とする条件下で行うことが好ましい。このような温度でコーティングを行うことにより、臭いのマスキング効果の高いフィルムコーティングを得ることができる。
【0021】
上記のセルロース系コーティング剤とポリビニルアルコール系コーティング剤との乾燥後の重量比は、セルロース系コーティング剤:ポリビニルアルコール系コーティング剤=1:1〜4が好ましく、より好ましくはセルロース系コーティング剤:ポリビニルアルコール系コーティング剤=1:1〜2である。
【0022】
本発明の方法によりコーティングされる固形医薬組成物は、臭いを有する有効成分を含む。該有効成分としては、当該技術において臭いを有する医薬有効成分として知られるものであれば特に限定されず、例えばL−システイン、D−システイン、メチオニン、フルスルチアミン、オクトチアミン、ベンフォチアミン、酪酸リボフラビン、イブプロフェン、ダイオウ、ショウキョウ、カンゾウなどが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記の固形医薬組成物は、上記の有効成分を固形医薬組成物全体に対して2〜90重量%含有することが好ましく、より好ましくは5〜80重量%であり、さらに好ましくは10〜50重量%である。
【0023】
上記の固形医薬組成物は、上記の臭いを有する有効成分の他に、その他の有効成分、及び/又は通常の固形医薬組成物の製造に用いられる固形医薬組成物添加剤を含有することができる。その他の有効成分としては、ビタミン類などが挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
上記の固形医薬組成物添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などが挙げられる。
上記の賦形剤としては、例えば糖類(乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトールなど)、デンプン類、セルロース類(結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ケイ酸類、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
上記の結合剤としては、セルロース類(結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、糖類(マンニトール、白糖など)ポリビニルピロリドン、マクロゴール、デキストリンなどが挙げられる。
上記の崩壊剤としては、セルロース類(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなど)、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、デンプン類などが挙げられる。
上記の滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム塩などが挙げられる。
【0025】
上記の固形医薬組成物は、錠剤、丸剤、顆粒剤などの公知の形状であり得る。なかでも、素錠が好ましい。
上記の固形医薬組成物は、上記の臭いを有する有効成分、任意にその他の有効成分及び/又は固形医薬組成物添加剤から、従来公知の固形医薬組成物の製造方法を用いて得ることができる。
上記の固形医薬組成物が錠剤である場合、上記の各成分を混合、造粒して打錠することにより得ることができる。造粒及び打錠する方法としては、錠剤製造の分野において従来公知の方法を用いることができる。
【0026】
本発明の方法で得られる、フィルムコーティングされた固形医薬製剤は、固形医薬組成物の臭いが充分にマスクされたものとなる。よって、本発明の方法で得られるフィルムコーティングされた固形医薬製剤も、本発明の一つである。
上記の固形医薬製剤は、錠剤が好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
実施例1〜4
L−システイン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、乳糖、結晶セルロース、カルメロースを42メッシュ篩で、コハク酸d−α−トコフェロールは16メッシュ篩で篩過後、流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック社製)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース7.5%水溶液を噴霧し造粒を行った。得られた顆粒を、直打用アスコルビン酸及びステアリン酸マグネシウムとV型混合機(VI−10、徳寿工作所製)で1.5分間混合して打錠末を得た。打錠末を打錠機(VIRGO、菊水製作所製)で打錠した。得られた錠剤である固形医薬組成物の処方を表1に示す。表1において、部は重量部を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
得られた素錠(直径8.5mm、重量270mg、硬度5kp(デジタル硬度計(PTB311E、Pharma Test GmbH Germany)で計測))をフィルムコーティング機ドリアコーター(DRC−500、パウレック)に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製)の10%水溶液(表2)を用いて、素錠温度43℃(送風温度:58℃)で第一層のコーティングを行った。その後、ポリビニルアルコールを含む市販のフィルムコーティング剤OPA DRY AMB(日本カラコン社製、ポリビニルアルコールの含量約45%)の16%水溶液(表3)を用いて、第一層のコーティングに用いたのと同じフィルムコーティング機を用いて、第二層のコーティングを行った。なおコーティングは、第一層がコーティングされた素錠温度56℃(送風温度75℃)の条件下で実施した。また、フィルムコーティングは第一層、第二層共に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びOPA DRY AMBの固形分重量が素錠重量に対してそれぞれ0.9%及び1.9%(実施例1)、1.9%及び3.7%(実施例2)、2.8%及び5.6%(実施例3)、又は3.7%及び7.4%(実施例4)となるように行った。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
得られた本発明のフィルムコーティングされた錠剤180錠を10Kビンに入れ、50℃で1ヶ月保存した後の錠剤の臭いを、表4に示す評価により点数化した。評価は5人で行い、それぞれの錠剤に対する5人の点数の合計を表5に示す。表5において、表中の%は、素錠に対するヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールの重量%を示す。
なお、比較として、素錠も同様にして臭いの試験を行った。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
比較例1〜10
実施例1〜4と同様にして素錠を製造した。この素錠に、第一層としてポリビニルアルコールを含む市販のフィルムコーティング剤OPA DRY AMBの16%水溶液を用い、第二層としてヒドロキシプロピルメチルセルロースの10%水溶液を用いてコーティングを行った以外は実施例1〜4と同様にして錠剤を製造した。なお、フィルムコーティングは第一層、第二層共に、OPA DRY AMBの固形分重量及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが素錠重量に対してそれぞれ3.7%及び1.9%(比較例1)、又は7.4%及び3.7%(比較例2)となるように行った。
【0036】
また、上記の素錠に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの10%水溶液(表2)のみを用いてコーティングを行った以外は実施例1〜4と同様にして錠剤を製造した。フィルムコーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが素錠重量に対して2.8%(比較例3)、5.6%(比較例4)、8.3%(比較例5)又は11.1%(比較例6)となるように行った。
【0037】
また、上記の素錠に、ポリビニルアルコールを含む市販のフィルムコーティング剤OPA DRY AMBの15%水溶液のみを用いてコーティングを行った以外は実施例1〜4と同様にして錠剤を製造した。フィルムコーティングは、OPA DRY AMBの固形分重量が素錠重量に対して2.8%(比較例7)、5.6%(比較例8)、8.3%(比較例9)又は11.1%(比較例10)となるように行った。
【0038】
得られた各錠剤について、実施例1〜4と同様にして臭いの試験を行った。結果を表6〜8に示す。
【0039】
【表6】

【0040】
【表7】

【0041】
【表8】

【0042】
以上の結果から、セルロース系コーティング剤でコーティングして第一層を形成し、ポリビニルアルコール系コーティング剤でコーティングして第二層を形成することにより、臭いを有する成分を含有する素錠からの臭いの漏出を抑制することができることがわかった。
【0043】
実施例5〜8
塩酸フルスルチアミン、乳糖、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロースを42メッシュ篩で篩過後、撹拌混合造粒機(VG−25、パウレック社製)に投入し、精製水を17重量部注加して5分間造粒を行った。流動層造粒乾燥機(MP−01、パウレック社製)を用いて乾燥し、整粒機(コーミル、1.5mmφ、パウレック社製)で整粒して顆粒を製造した。得られた顆粒、トウモロコシデンプンをV型混合機(VI−10、徳寿工作所製)で5分間混合後、さらにステアリン酸マグネシウムを投入して2分間混合し、打錠末を得た。打錠末を打錠機(VIRGO、菊水製作所)で打錠した。素錠の処方を表9に示す。なお、表9において、部は重量部を示す。
【0044】
【表9】

【0045】
得られた素錠(直径8.0mm、重量200mg、硬度5kp(デジタル硬度計(PTB311E、Pharma Test GmbH Germany)で計測))をフィルムコーティング機ドリアコーター(DRC−500、パウレック社製)に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとタルク(日本タルク社製)を配合した水溶液(表10)を用いて、素錠温度42℃(送風温度55℃)で第一層のフィルムコーティングを行った。その後、ポリビニルアルコールを配合したフィルムコーティング剤OPA DRY II(日本カラコン社製、ポリビニルアルコールの含量約45%)の16%水溶液(表11)を用いて、第二層のコーティングを行った。なお、コーティングは、第一層がコーティングされた素錠温度57℃(送風温度75度)の条件下で実施した。また、フィルムコーティングは第一層、第二層共に、セルロース系コーティング剤及びポリビニルアルコール系コーティング剤の固形分重量が素錠重量に対してそれぞれ1.3%及び2.5%(実施例5)、2.5%及び5.0%(実施例6)、3.8%及び7.5%(実施例7)、又は5.0%及び10.0%(実施例8)となるように行った。
【0046】
【表10】

【0047】
【表11】

【0048】
得られた二層フィルムコーティング剤について、実施例1〜4と同様にして臭いの試験を行った。比較として、素錠についても試験した。結果を表12に示す。
【0049】
【表12】

【0050】
比較例11〜14
実施例5〜8と同様にして素錠を製造した。この素錠に、上記の表10に示すコーティング液を用いてコーティングした以外は、実施例5〜8と同様にして錠剤を製造した。フィルムコーティングは、セルロース系コーティング剤の固形分重量が素錠重量に対して3.8%(比較例11)、7.5%(比較例12)、11.3%(比較例13)又は15.0%(比較例14)となるように行った。
得られた錠剤について、臭いの試験を行った。結果を表13に示す。
【0051】
【表13】

【0052】
実施例9
実施例8において、第二層のコーティングを、第一層でコーティングされた素錠温度を50℃とする条件下(送風温度65℃)で行って錠剤を得た。
得られた錠剤について、臭いの試験を行った。結果を表14に示す。
【0053】
【表14】

【0054】
以上の結果より、セルロース系コーティング剤でコーティングして第一層を形成し、ポリビニルアルコール系コーティング剤でコーティングして第二層を形成することにより、臭いを有する成分を含有する素錠からの臭いの漏出を抑制することができることがわかった。また、第二層のコーティングは、第一層でコーティングされた素錠の温度を55℃以上として行うことにより、より臭いをマスキングする効果が強くなることがわかる。このようにある特定の温度でフィルムコーティングを行うことによるマスキングの改善効果の原因は明らかではないが、おそらく、この温度がポリビニルアルコールのガラス転移点近傍(60〜65℃)であること、又は乾燥強化によるフィルム形成能(密度)の向上によるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭いを有する固形医薬組成物をセルロース系コーティング剤でコーティングして第一層を形成し、次いで、ポリビニルアルコール系コーティング剤でコーティングして第二層を形成することを特徴とする、臭いの防止された固形医薬製剤の製造方法。
【請求項2】
前記セルロース系コーティング剤のコーティング量が、前記固形医薬組成物に対して2〜5重量%であり、ポリビニルアルコール系コーティング剤のコーティング量が、前記固形医薬組成物に対して2〜10重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルロース系コーティング剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコール系コーティング剤が、ポリビニルアルコールを含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール系コーティング剤を、第一層がコーティングされた固形医薬組成物の温度を55〜65℃にしてコーティングする請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記固形医薬組成物が素錠である請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法で得られる、フィルムコーティングされた固形医薬製剤。

【公開番号】特開2008−74770(P2008−74770A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256473(P2006−256473)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000161965)京都薬品工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】