説明

臭気が低減されたタマネギ飲料組成物

【課題】不快な臭気の発生が抑制されたタマネギ飲料組成物を提供する。
【解決手段】天然タマネギ成分を含むタマネギ飲料組成物であって、シクロアリインを含有し、且つアスコルビン酸を飲料全量に対して0.5〜2.0重量%含有するタマネギ飲料組成物。なお、天然タマネギ成分は、タマネギ鱗茎部を加熱処理して酵素を失活させた後、該鱗茎部を粉砕し、得られた粉砕物の液状部分を濃縮することを含む方法により調製されるタマネギエキスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然タマネギ成分を含むタマネギ飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タマネギには(+)−S−(1−プロペニル)−L−システインスルフォキシド(PeCSO)が含まれており、タマネギを粉砕したとき、タマネギ中の酵素アリイナーゼの作用によりPeCSOから硫黄含有催涙性物質L−プロペニルスルフェン酸及びチオプロパナール−S−オキシドが生成される(特許文献1)。硫黄含有催涙性物質は更に化学的に変化して、メチルメルカプタン等の種々の含硫黄化合物を生成する。メチルメルカプタン等の含硫黄化合物は不快臭を生じる。
【0003】
タマネギエキス等の天然タマネギ成分が配合された飲料(タマネギ飲料)を長期保存した場合には強い不快臭が発生し、飲用が困難である。この不快臭の原因の一つが上述の含硫黄化合物の生成であると考えられる。
【0004】
タマネギ飲料等の野菜飲料の保存後の異臭を抑制する技術として種々の技術が提案されている。
【0005】
特許文献2では臭気が少なく高温保存下でも異臭が生じにくい野菜透明搾汁の製造方法が開示されている。この方法では、原料野菜を食塩水に浸漬した後、アスコルビン酸存在下で粉砕、搾汁し、得られた野菜搾汁の酵素を失活させ、清澄化処理して透明野菜搾汁を得る。透明野菜汁に更にシクロデキストリンを添加することも記載されている。この文献によれば原料野菜としてタマネギも利用可能である。
【0006】
特許文献3には有機酸を用いて無臭化及び清澄化したタマネギ飲料の製造方法が開示されている。この方法は、具体的には、脱皮、水洗、切断したタマネギ片を有機酸溶液に浸漬して不快臭を除去した後、脱臭されたタマネギを分離する段階と、脱臭されたタマネギを有機酸が添加された熱水で抽出してタマネギ抽出物を得る段階と、前記タマネギ抽出液に飲料組成物と飲用水を混合し1次殺菌してから濾過し、タマネギ飲料を容器に充填した後、2次殺菌し冷却させて貯蔵する段階とから構成されることを特徴とする。この文献では飲料組成物に配合する一般的な成分の一つとしてアスコルビン酸を添加することが記載されている。
【0007】
一方、特許文献4において本発明者らは、タマネギ鱗茎部を加熱処理して酵素グルコシダーゼを失活させた後、該鱗茎部を搾汁し、得られた搾汁液を濃縮することを含む方法により、ケルセチン配糖体を多く含むタマネギエキスを製造する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−295373号公報
【特許文献2】特開平8−9939号公報
【特許文献3】特開2001−269148号公報
【特許文献4】特開2010−75168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2、3等に提案された方法ではタマネギの強い臭気を実際に抑制することは困難である。
【0010】
特許文献4に記載された、タマネギ中の酵素を予め加熱失活した後に粉砕して調製されたタマネギエキスでは、アリイナーゼ活性も失活されていることから、このタマネギエキスを飲料中に配合すれば不快臭の発生が抑制される。しかしながら、実際にこのタマネギエキスを配合した飲料を調製する場合、単に上記エキスを配合しただけでは、飲用時に不快臭を生じるという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、さらに不快な臭気の発生が抑制されたタマネギ飲料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、シクロアリインを含有し、且つアスコルビン酸を飲料全量に対して0.5〜2.0重量%含有する、天然タマネギ成分を含むタマネギ飲料組成物では、長期保存後も不快な臭気が抑制されていることを見出した。本発明は以下の発明を包含する。
(1)天然タマネギ成分を含むタマネギ飲料組成物であって、シクロアリインを含有し、且つアスコルビン酸を組成物全量に対して0.5〜2.0重量%含有することを特徴とするタマネギ飲料組成物。
(2)メチルメルカプタンを含有しない(1)記載のタマネギ飲料組成物。
(3)更にシクロデキストリンを含有する(1)又は(2)記載のタマネギ飲料組成物。
(4)天然タマネギ成分が、タマネギ鱗茎部を加熱処理して酵素を失活させた後、該鱗茎部を粉砕し、得られた粉砕物の液状部分を濃縮することを含む方法により調製されるタマネギエキスである、(1)〜(3)のいずれかに記載のタマネギ飲料組成物。
(5)天然タマネギ成分及びシクロアリインを含有するタマネギ飲料組成物に対して、アスコルビン酸を、添加後の組成物全量に対して0.5〜2.0重量%となるように添加することにより、含有されている天然タマネギ成分による臭気の低減を行う方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、不快な臭気の発生が抑制されたタマネギ飲料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタマネギ飲料組成物はシクロアリインを含有することを特徴とする。ここで「シクロアリインを含有する」とは実施例において説明する手順によりシクロアリインが検出可能であることを意味する。具体的には、飲料組成物を適宜蒸留水で希釈し(好ましくは、シクロアリイン濃度が0.1mg/g程度になるように蒸留水で希釈し)、これを0.45μmフィルターでろ過し、ろ液を表2に示す条件の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供する。タマネギ飲料組成物中のシクロアリイン濃度は、飲料組成物全量に対して、好ましくは0.1mg/g以上であり、より好ましくは0.5mg/g以上である。シクロアリイン濃度の上限は特に限定されないが通常は飲料組成物全量に対して3.0mg/g以下、好ましくは2.0mg/g以下である。
【0015】
例えば下記する不快臭の発生が抑制され、かつシクロアリインを含有する加熱タマネギエキスと、アスコルビン酸を配合して、シクロアリイン濃度が前記範囲となる飲料組成物を調製することで、生理活性があるといわれるシクロアリインを一定量含んで、かつ臭気が低減された新規形態のタマネギ飲料組成物を供することができる。
【0016】
シクロアリインは、タマネギに含まれる(+)−S−(1−プロペニル)−L−システインスルフォキシド(PeCSO)が、アリイナーゼ不活性条件において加熱されたときに生成する成分である。アリイナーゼはタマネギ鱗茎部(バルブ)に含まれる。タマネギ鱗茎部を粉砕し、粉砕物を搾汁し、搾汁液を濃縮する通常の方法により調製されたタマネギエキスでは、調製中にPeCSOがアリイナーゼの作用を受けるため、シクロアリインは含まれない。そこで本発明では、天然タマネギ成分として、タマネギ鱗茎部を加熱処理して酵素(アリイナーゼ等)を失活させた後、該鱗茎部を粉砕し、得られた粉砕物を必要に応じて適宜固液分離し、粉砕物の液状部分を適宜濃縮することを含む方法により調製されるタマネギエキス(以下、「加熱タマネギエキス」と称することがある)を用いることが好ましい。加熱タマネギエキスはシクロアリインを含有する。その濃度は通常は加熱タマネギエキスの固形分全量に対して1〜50mg/g、好ましくは5〜20mg/gである。
上記の加熱タマネギエキスは、特許文献4記載の方法により調製することができる。
【0017】
エキス製造のためのタマネギは、品種は限定されず、また皮むきされているか否かは問わない。タマネギ鱗茎部とは通常食用される球の部分を指す。本明細書では特段の断りのない限り「タマネギ」とは「タマネギ鱗茎部」を指す。
【0018】
加熱タマネギエキスの製造方法は、タマネギを破砕するよりも前に、タマネギ中に含まれるアリイナーゼ等の酵素を失活させる酵素失活工程を特徴とする。
【0019】
本工程に用いるタマネギは、酵素活性によるPeCSOの分解が実質的に生じない限り、どのような寸法、形状にカットされたものでもよい。例えばタマネギ全体、タマネギを1/2〜1/8程度の大きさにカットしたもの等が使用できる。
【0020】
酵素を失活させる方法としては、加熱による蛋白質変性があげられる。加熱方法としては、電子レンジ加熱、ボイリング、蒸しなどがある。アリイナーゼ等の酵素の活性が実質的に喪失する程度まで、好ましくは未加熱の場合の酵素活性に対して約0.5%以下の酵素活性になるまで、加熱処理を行う。
【0021】
電子レンジによる加熱は例えば皮をむいたタマネギ1個(約300g)に対し500Wの電子レンジで7.5〜10分加熱する。上述の通り適宜カットされたタマネギも使用できる。
【0022】
ボイリングによる加熱は例えば沸騰したお湯800gに対しタマネギ1個(約300g)を投入し15分〜60分加熱する。上述の通り適宜カットされたタマネギも使用できる。
【0023】
蒸しによる加熱は例えば市販の蒸し器に適当量の水を入れ加熱し発生した蒸気中にタマネギ1個(約300g)を投入し15分〜60分加熱する。上述の通り適宜カットされたタマネギも使用できる。
【0024】
酵素失活後のタマネギを粉砕する破砕工程は、タマネギをミキサー、コミトロール、ミクロマイスター、圧搾機等を用いて、粉砕したり圧搾する等して破砕する工程である。シクロアリイン等の有用成分を細胞内から外部へ溶出させるために水、0〜80%エタノール溶液等の溶媒とともに破砕を行うことが好ましい。
【0025】
タマネギの破砕物は有用成分が溶出した液状部分と、細胞壁等の固体部分とからなる。そこで必要に応じて破砕物から液状成分を分離する(搾汁する)。固液分離は遠心分離、ろ過(例えば珪藻土ろ過)等の通常の方法により行うことができる。尚、固液分離工程は、圧搾するなど破砕工程と同時に行うこともできる。
【0026】
続いて、粉砕物の液状部分を適宜濃縮する。ここで濃縮とは、液状部分の水分を減少させて最終糖濃度を50%以上とすることを指す。糖濃度は市販の糖度計で測定することができる。
【0027】
濃縮方法としては例えば真空蒸発濃縮、膜濃縮が採用できる。真空蒸発濃縮は一般的に減圧濃縮と呼ばれる。濃縮時の真空度は最終品を糖度50%以上とすることができる範囲で選択でき、特に限定されない。膜濃縮は、例えば逆浸透膜(RO)、限外濾過膜(UF)などの膜を使用して行うことができる。使用する膜の種類は糖度50%以上とすることができる範囲で選択でき、特に限定されない。
【0028】
加熱タマネギエキスをタマネギ飲料組成物に配合する場合の加熱タマネギエキスの配合量は、飲料組成物にシクロアリインが含まれるように適宜決定することができる。通常は、飲料組成物全量に対してBrix糖度50%エキス換算量として1〜30重量%の加熱タマネギエキスが配合される。
【0029】
天然タマネギ成分は、上記の加熱タマネギエキスには限定されず、シクロアリインを供給することが可能な成分を使用することができる。例えば熟成黒タマネギが挙げられる。また、天然タマネギ成分に適宜活性炭等の脱臭処理を行ってもよい。
【0030】
本発明のタマネギ飲料組成物は、アスコルビン酸を組成物全量に対して0.5〜2.0重量%、好ましくは1.3〜1.7重量%含有することを特徴とする。アスコルビン酸濃度が0.5重量%未満である場合、製造後乃至保存中に硫黄臭が強くなり、腐敗臭が発生する(比較例2)。アスコルビン酸濃度が2.0重量%を超える場合には、アスコルビン酸に由来する異臭が発生するという問題がある(比較例3)。
【0031】
上記範囲のアスコルビン酸濃度は、飲料中に抗酸化剤等の形態で通常含まれるアスコルビン酸濃度と比較して非常に高濃度である。この濃度範囲とすることによりタマネギ飲料の硫黄臭、腐敗臭等の不快臭を効果的に抑制することができる。アスコルビン酸は添加物として飲料組成物中に配合される形態には限定されず、植物原料の一部として飲料組成物中に配合されてもよい。アスコルビン酸の含有量は通常の分析法により分析可能である。なお、通常天然タマネギ成分にはアスコルビン酸は含まれない。
【0032】
本発明のタマネギ飲料組成物は、好ましくは、メチルメルカプタンを含有しない。ここで「メチルメルカプタンを含有しない」とは実施例において説明する手順によりメチルメルカプタンが検出されないことを意味する。具体的には、あらかじめ水5g及び塩化ナトリウム2gを入れた20ml容バイアル瓶に飲料組成物1〜2gを採取して密栓した後、該バイアル瓶中のヘッドスペースガスをガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)に導入し、表3及び4に示す条件により分析する。タマネギ飲料組成物中のメチルメルカプタン濃度は、この方法による検出限界未満の濃度であり、典型的には飲料組成物全量に対して0.05ppm未満である。メチルメルカプタンが検出可能な程度に含まれるタマネギ飲料組成物は硫黄臭、腐敗臭等の不快臭が強い傾向がある。
【0033】
既に述べたとおり、メチルメルカプタンはPeCSOがアリイナーゼの作用を受けて生じる硫黄含有催涙性物質が変化して生じると考えられる。上記加熱タマネギエキスの製造工程ではPeCSOがシクロアリインに変換されるため、メチルメルカプタンの生成が生じにくい。このため上記加熱タマネギエキスを天然タマネギ成分として配合することが好ましい。
【0034】
本発明のタマネギ飲料組成物は更にシクロデキストリンを含有することが好ましい。シクロデキストリンは硫黄臭の強度を弱め、腐敗臭の発生を抑制する効果を奏する。シクロデキストリンは環状構造を有する多糖類であり、環状構造の内部は他の比較的小さな分子を包接できる程度の大きさの空孔となっている。空孔の内径はα体で0.45〜0.6nm、β体で0.6〜0.8nm、γ体で0.8〜0.95nm程度である。本発明では空孔の大きいβ体(βシクロデキストリン)が特に好ましい。
【0035】
シクロデキストリンの含有量は特に限定されないが、飲料組成物全量に対して好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。この範囲のときに硫黄臭を弱め、腐敗臭の発生が抑制される効果が顕著である。
【0036】
本発明のタマネギ飲料組成物は水を主成分とし、上記の所定の成分を含有するが、他の成分を更に含有することも可能である。
【0037】
他の成分は飲料として許容される成分である限り特に限定されない。
他の成分としては、果糖ブドウ糖液糖、環状オリゴ糖、酸味料、増粘剤、イノシトール、香料、ナイアシン、酸化防止剤、ビタミン類、甘味料等が挙げられる。
【0038】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、或いはこれらの塩等が挙げられる。
【0039】
増粘剤としては、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。
【0040】
甘味料としては、果糖、ブドウ糖、液糖等の糖類、はちみつ、スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム等の高甘味度甘味料が挙げられる。
【0041】
酸化防止剤としては、ビタミンC、酵素処理ルチン等が挙げられる。
ビタミン類としては、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンE等が挙げられる。
【0042】
本発明のタマネギ飲料組成物は所定の成分を常法により配合することにより製造することができる。
【0043】
<臭気の低減を行う方法>
本発明は、天然タマネギ成分及びシクロアリインを含有するタマネギ飲料組成物に対して、アスコルビン酸を、添加後の組成物全量に対して0.5〜2.0重量%となるように添加することにより、含有されている天然タマネギ成分による臭気の低減を行う方法にも関する。なお、シクロアリインは、好ましくは天然タマネギ成分に由来するシクロアリインである。
【0044】
即ち、後述する実施例において示すとおり、天然タマネギ成分及びシクロアリインを含有するタマネギ飲料組成物に対して、アスコルビン酸を特定量用いることにより、天然タマネギ成分に由来する硫黄臭、腐敗臭等の不快臭を低減し、タマネギ飲料組成物を摂取しやすいものとする効果を有する。
【実施例】
【0045】
試験飲料の調製
試験飲料として実施例1〜4、比較例1〜3を下記の手順に従って調製した。
【0046】
表に示す配合に従って全ての原料を計測し、スタンディングパウチに100g充填し、密閉した。充填後のパウチを沸騰水中に2分間浸し、次いでパウチを取り出して室温で6分間放置した。6分間経過後、パウチ内容物を瓶50本に充填し、各瓶にキャップを閉めて密閉し、85℃にて、4分間ホットパック殺菌処理した。殺菌処理後、室温で1時間放置した。
【0047】
保存試験
上記の通り調製された瓶入り試験飲料を40℃で2ヶ月間保存した。
比較のために、市販されているタマネギ飲料についても同様の条件で保存し、評価した。
【0048】
【表1】

【0049】
シクロアリイン及びメチルメルカプタンの含有量(※1、※2)の分析は後述する手順に従い行った。
【0050】
クエン酸(※3)は、比較例3のpH値(3.56)と同一のpH値となるように実施例1〜4及び比較例1〜2に添加した。
【0051】
加熱オニオンエキス(※4)は以下の手順で調製した。まず、タマネギの鱗茎部(バルブ)を、できるだけカットされていない状態で加熱(条件:550W電子レンジ7.5分間)し、タマネギ鱗茎部に含まれるアリイナーゼを失活させた。失活後のタマネギ鱗茎部をミキサーで粉砕し、粉砕物を固液分離し、液状部分を取得した。液状部分を、Brix糖度が50%になるまでエバポレーターにより濃縮し、濃縮物を加熱オニオンエキスとした。
【0052】
生オニオンエキス(※5)は以下の手順で調製した。まず、生のタマネギの鱗茎部(バルブ)をミキサーで粉砕し、粉砕物を固液分離し、液状部分を取得した。液状部分を、Brix糖度が50%になるまでエバポレーターにより濃縮し、濃縮物を生オニオンエキスとした。
【0053】
シクロアリイン含有量
シクロアリイン含有量は以下の手順により分析した。
【0054】
サンプル調製
試験飲料サンプルをシクロアリイン濃度が0.1mg/g程度になるように蒸留水で希釈し、これを0.45μmフィルターでろ過し、下記条件の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。
【0055】
シクロアリイン分析条件:HPLC(島津製作所製)
【表2】

【0056】
メチルメルカプタン含有量
メチルメルカプタン含有量は以下の手順により分析した。
【0057】
サンプル調製
あらかじめ水5g及び塩化ナトリウム2gを入れた20ml容バイアル瓶に試験飲料サンプル1−2gを採取して密栓した後、ヘッドスペースサンプラーを用いてバイアル瓶中のヘッドスペースガスをガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)に導入し定量した。分析条件を以下に示す。
【0058】
メチルメルカプタン分析条件
<ヘッドスペースサンプラー操作条件>
【表3】

【0059】
<GC−MS操作条件>
【表4】

【0060】
官能評価
作成直後及び40℃2月保存後の試験飲料の硫黄臭の強さを10段階で評価した。数字が大きいほど硫黄臭が強いことを示す。「全体的な硫黄臭の強さ」、「トップの硫黄臭の強さ(臭いをかいだ直後の硫黄臭の強さ)」、「あと残りの硫黄臭の強さ」について評価した。
【0061】
作成直後及び40℃2月保存後の試験飲料の臭いの質についても併せて評価した。
評価結果を表1下段に示す。実施例1〜4の試験飲料は長期保存後も腐敗臭やタマネギ特有の硫黄臭が感じられないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然タマネギ成分を含むタマネギ飲料組成物であって、シクロアリインを含有し、且つアスコルビン酸を組成物全量に対して0.5〜2.0重量%含有することを特徴とするタマネギ飲料組成物。
【請求項2】
メチルメルカプタンを含有しない請求項1記載のタマネギ飲料組成物。
【請求項3】
更にシクロデキストリンを含有する請求項1又は2記載のタマネギ飲料組成物。
【請求項4】
天然タマネギ成分が、タマネギ鱗茎部を加熱処理して酵素を失活させた後、該鱗茎部を粉砕し、得られた粉砕物の液状部分を濃縮することを含む方法により調製されるタマネギエキスである、請求項1〜3のいずれか1項記載のタマネギ飲料組成物。
【請求項5】
天然タマネギ成分及びシクロアリインを含有するタマネギ飲料組成物に対して、アスコルビン酸を、添加後の組成物全量に対して0.5〜2.0重量%となるように添加することにより、含有されている天然タマネギ成分による臭気の低減を行う方法。