説明

舗装体の施工方法

【課題】耐流動性及び安定性(マーシャル安定度等)を良好としつつアスファルトバインダ量を低減可能な舗装体の施工方法を提供する。
【解決手段】舗装体の施工方法は、乾燥状態の骨材と、針入度が150〜1000(1/10mm)のアスファルトバインダとを、通常に対して前記アスファルトバインダを5〜30%低減して混合し、アスファルト混合物を製造する第1工程と、アスファルト混合物を敷き均し、空隙率が6〜12%となるように締め固めて舗装体を得る第2工程と、を含む。アスファルトバインダは、ストレートアスファルトに、芳香族成分が60%以上の添加剤を添加したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常アスファルト混合物、中温化アスファルト混合物、及び、カットバックアスファルト混合物が知られている(特許文献1、非特許文献1参照)。
なお、通常アスファルト混合物は、骨材と、ストレートアスファルトや改質アスファルト等の通常アスファルトバインダとを混合したものである。中温化アスファルト混合物は、骨材と、前記通常アスファルトに中温化剤を添加した中温化アスファルトバインダとを混合し、混合温度、敷き均し温度、締め固め温度等を中温化、つまり、低下させたものである。カットバックアスファルト混合物は、骨材と、ストレートアスファルトにオイル(重油等)を添加したカットバックアスファルトとを混合したものである(非特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】寺田剛著、「中温化技術の現状」、舗装、株式会社建設図書、2001年11月、第36巻、第11号、p.9−14
【非特許文献2】金崎健児著、岡田冨男著、「アスファルト」、第4版、日刊工業新聞社、昭和42年11月10日、p.190−196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アスファルトは、限りのある資源であり、また、アスファルト混合物(舗装体)において、アスファルトバインダは最も高価であるから、その量の低減が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、耐流動性及び安定性(マーシャル安定度等)を良好としつつアスファルトバインダ量を低減可能な舗装体の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、乾燥状態の骨材と、針入度が150〜1000(1/10mm)のアスファルトバインダとを、通常に対して前記アスファルトバインダを5〜30%低減して混合し、アスファルト混合物を製造する第1工程と、前記アスファルト混合物を敷き均し、空隙率が6〜12%となるように締め固めて舗装体を得る第2工程と、を含むことを特徴とする舗装体の施工方法である。
【0007】
このような舗装体の施工方法によれば、針入度が150〜1000(1/10mm)の軟らかいアスファルトバインダを使用するので、通常に対してアスファルトバインダを5〜30%低減しつつ、アスファルト混合物において良好な混合性を確保することができる。例えば、密粒度混合物(13)では、通常、アスファルトバインダ量が約5.5%であるところ、本発明によれば、5〜30%低減し、混合物全体に対して、4〜4.5%程度にできる。
また、骨材とアスファルトバインダとの混合温度(アスファルト混合物の製造温度)や60℃粘度を下げることができ、アスファルト混合物の製造時における加熱量を少なくでき、その結果、加熱に伴う二酸化炭素の生成量を削減できる。
【0008】
また、針入度が150〜1000(1/10mm)であり、アスファルトバインダの粘度が低いので、アスファルト混合物の敷き均し温度、締め固め温度も下げることができ、良好な施工性を確保できる。
【0009】
そして、このようなアスファルト混合物を敷き均し、締め固めて得た舗装体は、空隙率が6〜12%であり、良好な耐流動性を有する。すなわち、通常に対して、アスファルトバインダ量を5〜30%低減しつつ、舗装体の良好な供用性を確保できる。
【0010】
また、針入度が150〜1000(1/10mm)であり、アスファルトバインダが軟らかいので、供用に伴う劣化により、アスファルトバインダが硬くなっても、舗装体の安定性を良好に保持できる。
さらに、このようなアスファルトバインダを使用して施工された舗装体の撓み性は高くなり、ひび割れ(クラック)が発生し難くなり、発生したとしてもひび割れの拡大を遅延できる。
【0011】
また、前記舗装体の施工方法において、前記アスファルトバインダは、ストレートアスファルトに、芳香族成分が60%以上の添加剤を添加したものであることが好ましい。
【0012】
このような舗装体の施工方法によれば、アスファルトバインダは、ストレートアスファルトに、芳香族成分が60%以上の添加剤を添加したものであるから、アスファルトバインダが劣化し難くなり、舗装体の耐候性(耐久性)を高めることができる。
なぜなら、舗装体の供用後、アスファルトバインダの芳香族成分がアスファルテンに変化すると、アスファルトバインダが脆くなり、舗装体の耐久性(耐候性)が低下するが、このようなアスファルトバインダでは、芳香族成分が多いためである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐流動性及び安定性(マーシャル安定度等)を良好としつつアスファルトバインダ量を低減可能な舗装体の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例を説明する図であり、(a)は締め固め後の供試体(ホイールトラッキング試験用の供試体)、(b)は供試体にひび割れ(クラック)を発生させた状況、(c)は供試体の全面をトラバース走行させている状況、(d)は曲げ試験状況、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
≪舗装体の施工方法≫
本実施形態に係る舗装体の施工方法は、アスファルトバインダを製造するアスファルトバインダ製造工程と、アスファルト混合物を製造する第1工程と、アスファルト混合物を敷き均し、空隙率が6〜12%となるように締め固めて舗装体を得る第2工程と、を含む。
【0017】
<アスファルトバインダ製造工程>
アスファルトバインダ製造工程は、針入度が150〜1000(1/10mm)の軟らかいアスファルトバインダを製造する工程である。
具体的に例えば、このようなアスファルトバインダは、ストレートアスファルト(60/80等)に、石油系炭化水素をベースとし芳香族成分が60%以上である添加剤を、ストレートアスファルトに外添加で、5〜25%にて添加することで製造される。
このようなアスファルトバインダの一般的性状を表1に例示する。
【0018】
【表1】

【0019】
<第1工程>
第1工程は、乾燥状態の骨材と、前記工程で製造したアスファルトバインダとを混合し、アスファルト混合物を製造する工程である。
【0020】
乾燥状態の骨材は、粗骨材(6号砕石、7号砕石等)と、細骨材(粗砂、細砂、砕砂等)と、石粉(フィラー)とが、所定の配合比で混合されたものである。具体的に例えば、表2に示す配合比で、表3に示す密粒度混合物(13)を使用できる。なお、粗骨材、細骨材は、ドライヤ等で加熱され、乾燥状態のものを使用する。
【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
また、アスファルトバインダの添加量は、通常に対して、5〜30%低減した量とする。例えば、密粒度アスファルト混合物(13)の場合、一般的な添加量(5.5%程度)から5〜30%低減し、4〜4.5%程度とする。
【0024】
<第2工程>
第2工程は、アスファルト混合物を敷き均し、空隙率が6〜12%となるように締め固めて舗装体を得る工程である。
第1工程で得たアスファルト混合物を、敷き均し機械(アスファルトフィニッシャ等)を使用して、所定の敷き均し厚さで敷き均す。その後、締め固め機械(鉄輪ローラ、タイヤローラ等)によって転圧し、空隙率が6〜12%となるように締め固めて舗装体を得る。
【0025】
≪舗装体の施工方法の効果≫
このような舗装体の施工方法によれば、次の効果を得る。
針入度が150〜1000(1/10mm)の軟らかく、粘度の低いアスファルトバインダを使用するので、アスファルト混合物の製造温度(混合温度)を下げることができる。これにより、アスファルト混合物の製造時における加熱量を少なくでき、加熱に伴う二酸化炭素の生成量を削減できる。
また、針入度が150〜1000(1/10mm)であり、アスファルトバインダの粘度が低いので、アスファルト混合物の敷き均し温度、締め固め温度を下げることができ、施工性を高めることができる。
【0026】
そして、締め固め後の舗装体は、通常に対してアスファルトバインダを5〜30%低減したことで、その空隙率が6〜12%となり、良好な耐流動性を有する。
例えば、密粒度アスファルト混合物(13)の場合、通常のアスファルトバインダ量(5.5%程度)を100%としたとき、5〜30%低減し、混合物に対して4〜4.5%のアスファルトバインダ量にすることができる。これにより、高価なアスファルトバインダの使用量が減るので、舗装体を安価で構築できる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、適宜に設計変更できる。
前記した実施形態では、アスファルト混合物を製造する第1工程の前のアスファルトバインダ製造工程において、ストレートアスファルトに添加剤を添加し、針入度が150〜1000(1/10mm)のアスファルトバインダを製造する構成を例示したが、その他に例えば、アスファルト混合物を製造する第1工程において、ストレートアスファルトと骨材を混合しつつ、添加剤を添加する構成としてもよい。すなわち、アスファルトバインダは、プレミックス型、プラントミックス型のどちらでもよい。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を参照して、さらに具体的に説明する。
【0029】
(1)アスファルトバインダ、混合物、供試体(舗装体)の作製
ストレートアスファルト(60/80)に、芳香族成分が60%以上である添加剤を添加し、表4に示すように、実施例1に係るアスファルトバインダを作製した。そして、このアスファルトバインダを使用して、アスファルトバインダ量を4%として、密粒度アスファルト混合物体(13)を作製した。なお、空隙率は7%であった。
【0030】
ストレートアスファルト(60/80)をそのまま使用し、アスファルトバインダ量5.5%で通常に密粒度アスファルト混合物体(13)を作製したものを比較例1、アスファルトバインダ量を単に減じて4.5%としたものを比較例2、とした(表4参照)。
【0031】
(2−1)試験−初期(劣化なし)
実施例1、比較例1〜2について、マーシャル試験、ホイールトラッキング試験、圧裂試験、曲げ疲労試験、曲げ試験を行った。試験結果を表4に示す。
なお、曲げ疲労試験は、4×4×40cmの供試体に対して、20℃において、4点支持方式で、400μm・5Hzにて歪みを与えた。
【0032】
(2−2)試験−劣化A
実施例1、比較例2について、練り落とし後かつ締め固め前の混合物を容器(バット)に敷き均し、乾燥炉により、110℃、72時間にて養生・劣化し、その後、締め固めて供試体を作製し、圧裂試験、曲げ試験を行った。試験結果を表4に示す。
【0033】
(2−3)試験−劣化B
実施例1、比較例2について、練り落とし後に締め固めた供試体を、真空乾燥炉を利用して、雰囲気を酸素に置換後、60℃、24時間にて放置することを1サイクルとし、これを5サイクル繰り返した後、圧裂試験、曲げ試験を行った。試験結果を表4に示す。
【0034】
(2−4)試験−ひび割れ治癒能力(ヒーリング特性試験)
実施例1、比較例2について、練り落とし後に締め固めた供試体(30×30×5cm)について(図1(a)参照)、締め固め方向の略中央にひび割れ(クラック)を形成した。ひび割れは、供試体を乾燥炉等によって適度に暖めた後、折り曲げることで形成した(図1(b)参照)。その他、前記供試体の略中央部をカッタ等で切断した後、切断面を両外側とし、供試体の締め固め方向端面(型枠で形成された面)同士を突き合わせ、この突き合せ面をひび割れとしてもよい。
【0035】
そして、ひび割れを形成した実施例1、比較例2に係る供試体に対して、ホイールトラッキング試験と同様の試験条件(載荷重、時間(1時間)等)で、ひび割れを跨ぐように車輪をトラバース(全面)走行させた(図1(c)参照)。ただし、1時間のトラバース走行は、30℃、40℃、60℃でそれぞれ行った。
なお、このようにひび割れを跨ぐように車輪をトラバース走行させるので、ニーディング作用により、ひび割れが徐々に治癒(ヒーリング)される可能性がある。
【0036】
そして、トラバース後の供試体について、曲げ試験を行い(図1(d)参照)、トラバース後の曲げ応力比(%)を算出した。トラバース後の曲げ応力(%)は、ひび割れを形成していない供試体の曲げ応力(基準曲げ応力)に対するトラバース走行後の曲げ応力の割合(%)であり、これが大きくなるにつれて、ひび割れが治癒したことになる。試験結果を表5に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
(3)考察
表4に示すように、初期値を比較すると、実施例1は、比較例1〜2に対して、アスファルトバインダ量を4%に低減しているものの、マーシャル試験による安定度は7.4kN(推奨4.9kN以上)であって、良好な動的安定度(500(回/mm))を有し、つまり、良好な安定性(マーシャル安定度等)、耐流動性を有し、軽交通量(N4交通量)程度までの施工箇所に対応可能であることが分かる。
【0040】
また、圧裂試験結果を参照すると、実施例1では、劣化A、劣化B後の歪み(1.18、1.1)が、初期歪み(0.92)と同等以上であることに対して、比較例2では「1.82」から「1.39、1.75」へと76〜96%程度に小さくなっていた。
【0041】
さらに、曲げ試験結果を参照すると、劣化A及び劣化Bのいずれにおいても、実施例1の歪みは、比較例2の歪みの2〜3倍程度大きく、仕事量も3〜4倍程度大きいことが分かる。
【0042】
次に、表5に示すように、実施例1は、比較例2に対して、トラバース後の曲げ応力比(%)が大きくなり、ひび割れが治癒されていることが分かる。また、表5は、試験時間を1時間とした場合の結果であるから、試験時間が長くなると、つまり、交通輪通過回数が増加すると、ひび割れの治癒はさらに進むと予想される。
なお、比較例2について、30℃、40℃でのトラバース後、曲げ試験前に供試体が破断したため、曲げ試験は不能であった。
【0043】
また、実施例1では、トラバース温度が30℃、40℃、60℃と高くなるにつれて、曲げ応力比が大きくなり、ひび割れの治癒が進んでいることが確認された。これにより、実施例1によれば、30℃程度の路面温度下において、交通荷重によるニーディング作用によって、アスファルトバインダが骨材に再付着し、ひび割れが治癒される可能性があると推察される。そして、このようにひび割れが治癒されると、舗装体のシール機能が回復し、舗装体内部への埃や雨水の浸入が抑制され、ひび割れの進行が抑制されると期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥状態の骨材と、針入度が150〜1000(1/10mm)のアスファルトバインダとを、通常に対して前記アスファルトバインダを5〜30%低減して混合し、アスファルト混合物を製造する第1工程と、
前記アスファルト混合物を敷き均し、空隙率が6〜12%となるように締め固めて舗装体を得る第2工程と、
を含む
ことを特徴とする舗装体の施工方法。
【請求項2】
前記アスファルトバインダは、ストレートアスファルトに、芳香族成分が60%以上の添加剤を添加したものである
ことを特徴とする請求項1に記載の舗装体の施工方法。

【図1】
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