舗装構造
【課題】地面の掘削深さが浅くても保水能力が高く、道路冠水や河川の氾濫を確実に防止できるとともに、施工が容易で施工コストを低く抑えることができる舗装構造を提供する。
【解決手段】舗装部表面に降った雨水が保水されるポーラスコンクリートからなる保水層2を備えるとともに、保水層2内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部5aを有する。
【解決手段】舗装部表面に降った雨水が保水されるポーラスコンクリートからなる保水層2を備えるとともに、保水層2内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部5aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装表面に降った雨を内部に一時的に貯水状態に保水するとともに、徐々に排水あるいは蒸発させて、豪雨時の道路冠水を効率よく防止することができる舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の影響であろう記録的な豪雨(1時間に50〜100mm程度)が各地で発生し、都市部においても道路冠水、住宅浸水、地下街、地下鉄等への浸水などにより機能がマヒする事態も頻発している。
そこで、豪雨時に道路冠水や住宅浸水を防止する方法として、排水路の大規模化および増設整備、地下排水管の設置、堤防の増強等が行われる。また、例えば、特許文献1にみられるように、ポーラスコンクリートからなる保水層を備えた透水舗装が既に提案されている。
そして、この透水舗装の場合、集中豪雨時などで、ポーラスコンクリートの保水層のみでは十分に保水できない場合、ポーラスコンクリート層の上部から、道路の側溝に雨水が流れ込み、道路冠水を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−295212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排水路や堤防の増強等には莫大なコストがかかることはいうまでもなく、ポーラスコンクリートからなる保水層を備えた透水舗装においては、保水している部分と側溝との関係が豪雨の排水対策を想定した構造ではないために、側溝の氾濫を招きやすく、浸水被害等が発生しやすいという問題は解消されない。
また、ポーラスコンクリートからなる保水層の厚みを増して、保水能力を上げることが考えられるが、保水層の厚みを増すには、道路を深く掘り下げなければならず、施工日数がかかるとともに、施工コストも高いものとなってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、地面の掘削深さが浅くても保水能力が高く、道路冠水や河川の氾濫を確実に防止できるとともに、施工が容易で施工コストを低く抑えることができる舗装構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる舗装構造は、舗装部表面および周辺地域に降った雨水が流入して内部に一時的に貯水状態に保水するとともに、徐々に排水あるいは蒸発させることができるポーラスコンクリートからなる保水層を備えるとともに、保水層内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部を有することを特徴としている。
【0007】
本発明において、保水層を形成するポーラスコンクリートとしては、特に限定されないが、骨材の粒径が5mm以上、空隙率が25〜35%、連続空隙率が20%以上、透水係数が1〜10cm/s、圧縮強度が10〜25 N/mm2であることが好ましい。
【0008】
すなわち、骨材の粒径が5mm未満では、保水層内を水位の低い方に向かって流れにくくなり、雨の降った部分のみで、保水層内の水位が高くなり、結果、表層上に溢れ出てしまうおそれがある。
空隙率が25%未満では、十分な保水容積を確保できないおそれがあり、空隙率が35%を超える程度になると透水機能からは望ましくても、製造、施工および管理が困難となりやすい。
連続空隙率が20%未満では、ポーラスコンクリート層内に貯水される水量が少なくなるうえ、夏期炎天時等における水の蒸発速度が遅く路面温度の上昇の低減効果が低下するおそれがある。
透水係数が1cm/s未満では、路面表面からの水の進入が遅く、水害対策に要求されるレベルとしては不足する。
透水係数が10cm/sを超える程度になると透水機能からは望ましくても、高い空隙率が必要であるため、製造、施工および管理が困難となる一面が現れる。
圧縮強度が10N/mm2未満では、その上を自動車が通行する場合に損傷しやすくなる。
25 N/mm2を超える圧縮強度は、望ましいものであるが、一般的にはコスト高の要因にもなる。
【0009】
本発明において、骨材の粒径は、JIS A 1102(骨材のふるい分け試験方法) を用いて測定される。
空隙率及び連続空隙率は、容積圧力法(日本建築学会構造系論文集第75巻第650号、p1043-1050、2008年7月)、JCI(コンクリート工学協会)から提起されている規準案(ポーラスコンクリートの空隙率試験方法(案))に記載されている容積圧力法を用いて測定される。
透水係数は、上記JCI規準案の(ポーラスコンクリートの透水試験方法(案))に記載の透水試験方法を用いて測定される。
圧縮強度法は、JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) を用いて測定される。
【0010】
空洞部は、上記空間形成部材を保水層内に連続的に設けて形成することも、間欠的に配置させて設けることもできる。また、空洞部は、保水層内に複数平行に設けるようにしても構わない。また、舗装部が道路である場合、空洞部を道路の道なりに連続して設けることが好ましい。
【0011】
上記空間形成部材としては、必要な透水性貫通孔を備え、使用時に周囲からかかる荷重に耐えることができれば、特に限定されないが、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどニルの合成樹脂製の有孔管、FRPなどの複合材料からなる有孔管、有孔の鋼管、有孔のヒューム管などの有孔の筒状体が挙げられる。
透水性貫通孔の数は、空間形成部材が周囲からかかる荷重によって周壁が破損しない強度が確保することができれば特に限定されないが、空洞部内への雨水の透水性を考慮すると、できるだけ多く設けることが好ましい。
【0012】
また、上記空洞部は、上部側にのみ透水性貫通孔を設け、下面側を樋状の非透水部とした構造をしていても構わない。すなわち、上部側にのみ透水性貫通孔を設け、下面側を樋状の非透水部とした空洞部を所定の排水勾配にして設けるとともにその下流側が排水路または排水管、河川、貯水池、海のいずれかに臨ませるとともに、住宅などの建物敷地から雨水配管の下流側の端部を空洞部に接続するようにすれば、建物敷地から排出される雨水の排水路としても用いることができる。そして、上記雨水配管を介して建物敷地内から雨水とともに、落ち葉などが流れ込んでも、落ち葉などは、樋状の非透水部に受けられて雨水とともに下流側に排出される。勿論、豪雨などで空洞部内の雨水の水位が増してくると、上部の透水性貫通孔から保水層側に排水され、空洞部の下流から雨水が一気に排水路または排水管、河川、貯水池、海に排水されることがない。
また、空洞部は、その一端が、道路等の舗装部に隣接して設けられた排水溝に臨むとともに、排水溝側端部に止水弁を備えている構成としてもよい。
【0013】
本発明において、特に限定されないが、保水層は道路の道なりに連続して設けられている構成としてもよい。
また、保水層は、下流側が、排水路または排水管、河川、貯水池、海のいずれかに臨んでいる構成としてもよい。
【0014】
また、保水層は、保水層内の雨水の流速を制御するために透水係数の異なる部位を複数備えている構成としてもよい。
すなわち、雨水は、保水層内で水位の低い方に流れていくが、地形などの条件に合わせて場所によって、透水係数の異なる部分を設けて、保水層内を流れる雨水の流速をその場所の条件に適応した流速に制御することができる。そして、保水層を介して排水路または排水管、河川、貯水池、海などに流れ込む雨水の量を精密にコントロールすることができる。
たとえば、保水層が、下流側に向かって透水係数が段階的に大きくなっている複数の透水係数の異なる部位を備えている構成とすれば、速やかな排水とすることができる。逆に排水路または排水管、河川、貯水池、海などに流れ込む直近部分のみを、透水係数を小さくして急激な雨水の流れ込みを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の舗装構造は、複数の保水部と、保水部と保水部との間に介在し、保水部より透水係数の低く、隣接する一方の保水部から他方の保水部側への急激な雨水の流れ込みを抑える緩衝部とを備えている構成としてもよい。すなわち、緩衝部によって隣接する保水部への急激な雨水の流れ込みを抑えることができる。
さらに、空洞部を構成する有孔管の口径や、傾斜、あるいは、透水性貫通孔の径を変化させて排水路または排水管、河川、貯水池、海などに流れ込む雨水の流量をコントロールするようにしてもよい。
【0016】
本発明の舗装構造は、特に限定されないが、舗装表面の意匠性向上、舗装表面の多様性確保、舗装表面の使用感、舗装表面の強度向上などを目的として、必要に応じて保水層の表面を覆うように透水性を備えた表層を設けてもよい。
上記表層は、表層上に降った雨水が、スムーズに保水層側に透過すれば、特に限定されないが、樹脂+天然石、熱緩和塗装、砕石、インターロッキングブロック等の二次製品、リサイクル材、透水性アスファルト(ポーラスアスファルト、開粒度アスファルトともいう)などで形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる舗装構造は、以上のように路面に降った雨水が浸透しやすい表層と、この表層から浸透した雨水が、保水されるポーラスコンクリートからなる保水層とを備えるとともに、保水層内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部を有するので、地面の掘削深さが浅くても保水能力が高く、道路冠水や河川の氾濫を確実に防止できるとともに、施工が容易で施工コストを低く抑えることができる。
すなわち、保水層内の水位が上昇してくると、保水層で保水しきれない雨水が透水性貫通孔を介して空洞部内に流れ込み、空洞部内に貯まる。したがって、保水層の厚みを薄くしても保水能力が高いものとなる。しかも、空洞部が周壁に透水性貫通孔を有し筒状をした空洞形成部材をポーラスコンクリート製の保水層内に埋設するだけでよい。そして、保水層の厚みを薄くすることによって、地面の掘り下げ深さも浅くすることができ、結果として施工時間の短縮を図ることができるとともに、ポーラスコンクリート材料の使用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる舗装構造の第1の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明にかかる舗装構造の第2の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明にかかる舗装構造の第3の実施の形態をあらわす地下街の横断面図である。
【図6】本発明にかかる舗装構造の第4の実施の形態をあらわす高速道路の中央分離帯部分の横断面図である。
【図7】本発明にかかる舗装構造の第5の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図8】本発明にかかる舗装構造の第6の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図9】本発明にかかる舗装構造の第7の実施の形態の保水部部分を模式的にあらわす図である。
【図10】本発明にかかる舗装構造の第8の実施の形態をあらわす道路部分の縦断面図である。
【図11】本発明にかかる舗装構造の第9の実施の形態をあらわす道路部分の縦断面図である。
【図12】本発明にかかる舗装構造の第10の実施の形態をあらわす道路の保水部の平面図である。
【図13】図12の保水部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明にかかる舗装構造の第1の実施の形態をあらわしている。
【0020】
図1及び図2に示すように、この舗装構造Aは、道路に設けられ、表層1aと、保水層2と、底層3とを備え、幅方向の両側に縁石4が設けられるとともに、保水層2内に空洞部5aが複数形成されている。
そして、図示していないが、保水層2の一部が、河川、貯水池などに臨んでいる。
【0021】
表層1aは、透水性アスファルトで形成されていて、透水性を備えている。
保水層2は、図2に示すように、透水係数が1〜10cm/sとなるように骨材21と骨材21との間に隙間22が形成され、骨材21と骨材21とがその接触面においてセメント(図ではあらわしていない)によって接合されているポーラスコンクリートからなる。
【0022】
底層3は、例えば、透水係数が0.1〜0.5cm/s程度の透水性を備えたコンクリート材料で形成されている。なお、底層3の透水係数は、路床に対して地下浸透と排水のバランスを考慮した上で適宜決定され特に限定されない。
各空洞部5aは、空洞形成部材としての有孔管51と、この有孔管51の長手方向両端を塞ぐように設けられた蓋(図示せず)とからなる。
【0023】
上記有孔管51は、塩化ビニル樹脂等から形成されていて、透水性貫通孔52が全周に多数穿設されている。
透水性貫通孔52は、後述する保水層2を構成するポーラスコンクリートの骨材が内部に入り込まない大きさに形成されている。
【0024】
また、有孔管51の透水性貫通孔52および蓋の透水性貫通孔は、図示していないが、保水層2を構成する骨材及びセメント成分の有孔管51内への入り込みを防止するための網によって覆われている。なお、網の網目は、骨材及びセメント成分が有孔管51内に入り込まなければ、できるだけ粗いことが好ましい。
【0025】
つぎに、この舗装構造の施工方法を説明する。
まず、既存の道路の縁石4と縁石4との間を掘削し、底層用のコンクリート材料を掘削部の底に流しこんで透水性の底層3を形成する。
【0026】
つぎに、保水層用のポーラスコンクリート材料を有孔管51の下端位置まで底層3上に流し込んで、ポーラスコンクリート材料を硬化あるいは半硬化させたのち、透水性貫通孔52の部分を網で覆った有孔管51を所定の位置に並べ、その後ポーラスコンクリート材料を保水層2の上端の高さまで流し込んでポーラスコンクリート材料を硬化させて保水層2を形成する。
最後に、公知の透水性舗装の場合と同様に透水性アスファルト材料を載せて転圧することによって表層1aを形成する。
【0027】
上記舗装構造Aは、上記のように構成されているので、以下のような優れた作用効果を備えている。
(1)既存の道路を掘削し保水層2を設けると同時に空洞部5aを設けるようにしたので、施工が容易であるとともに、安価に施工できる。
(2)表層1a上に降った雨水は、表層1aが透水性アスファルトで形成されているので、スムーズに表層1aを透過して保水層2に流入する。
また、豪雨時などのように、急激に保水層2内の水位が増してきても空洞部5aがあるので、透水性貫通孔52を介して空洞部5a内にも雨水が保水され、保水能力が高く表層1aを超えて路面冠水に到ることがない。
【0028】
(3)保水層2に流入した雨水は、保水層2内を水位の低い方向に向かって流れて行くが、保水層2の骨材によってその流れが減速されるため、急激な流れにならない。
したがって、排水路または排水管、河川、貯水池などに対して、急激に流れ込むことがなく、河川や貯水池の氾濫や堤防の決壊を招くことがない。
また、局地的な豪雨の場合でも、雨が降っていない地域の保水層2側に流れていくため、河川や貯水池まで到達せず、保水層2内でそのまま保水される場合もある。
しかも、雨水が保水層2を通って河川や貯水池に排水されるため、従来の道路に沿って設けられた側溝をなくして道路幅を広げることも可能となる。
因みに、道路幅w=3m、保水層2の厚さt=30cm、保水層2の空隙率Rv=30%なら、保水層2の排水路相当断面積C = w・t・Rv=0.27m2となり、従来の側溝(幅30cm×深さ50cm)の2倍程度の流路面積が得られる。
【0029】
(4)雨が上がると、保水層2には、雨水の一部が残り保水状態となっている。そして、この保水層2に保水された雨水は、外気温によって温められて徐々に蒸発し、路面温度を下げる。すなわち、ヒートアイランド現象の防止を図ることができる。
(5)保水層2を介して河川や貯水池に排水できるので、道路に沿って側溝を設ける必要がなくなり、道路幅を拡張することができる。
(6)雨水が流入する面積が大きいため、落ち葉やごみ等で閉塞する心配がない。
【0030】
(7)表層1a上に降った雨は、すぐに保水層2に浸透するので、表層1aに水溜りなどが生じず、快適に通行できる。
(8)広い面積で貯水し、水位は高くないため、安全であり、保水層2に水を内包しても周辺の土砂の安定性にも影響がない。
(9)底層3が透水性を備えているので、保水層2に保水された雨水の一部が底層3を通って土中に浸透する。したがって、保水層2を介して河川や貯水池等に流れ込む雨水の量をより少なくすることができる。また、地下水の枯渇を防ぐこともできる。
【0031】
(10)保水層2が水路を兼ねるため、特定の貯水池に誘導するための水路、配管等が不要(舗装の全表面から透水)である。また、水路となる保水層2への流入口が道路表面全体であるので、水路や配管の流入口のように落ち葉、ゴミ等で閉塞する心配がない。
(11)表層1aの透水性アスファルトが、一般の透水性アスファルト舗装構造のように、夏場の高温時に柔らかになり、変形しやすいアスファルト製の不透水層に受けられるのではなく、変形抵抗の大きいポーラスコンクリートの保水層2によって受けられるため、耐久性の高い道路構造となる。また、表層1aが透水性アスファルトであるため、骨材の剥脱が発生しにくく、滑らかで低騒音の走行路面が実現できる。
【0032】
(12)保水層2がポーラスコンクリートで形成されているので、掘削が容易で、また、保水部2の掘削部以外の部分以外は、そのままの強度を維持した状態に残るので、道路下に例えば排水管の埋設の必要が生じた場合においても、配管施工時に周囲の土留めなどを行わなくても済み、作業を容易に行える。
(13)側溝を設けなくとも済むようになり、段差を少なくしてバリアフリー化を図ることができる。
【0033】
なお、上記縁石4は、必要に応じて透水性を備えたものに変更することも可能である。また、空洞部5a内には、例えば、不織布からなる袋状体内に吸水性高分子を充填した吸水材を配置しておいてもよい。すなわち、このような吸水材を配置しておけば、空洞部5a内に侵入してきた雨水が吸水性高分子に一旦吸収されて空洞部5a内に保持される。そして、雨がやむと、この吸収性高分子に吸収された雨水が徐々に蒸発する。したがって、より長時間路面温度の上昇を抑えることができる。
【0034】
図3及び図4は、本発明にかかる舗装構造の第2の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この舗装構造Bは、以下に述べる構成以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0035】
すなわち、この舗装構造Bは、上記の舗装構造Aより既存の道路を深く掘り下げ、普通コンクリート製の土留め壁6を道路に沿って設けるとともに、この土留め壁6に透水性を有する縁石4を設けるようにした。
また、複数の空洞部5bを上下2列に水平方向に並ぶように配置した。
【0036】
そして、各空洞部5bは、図4に示すように、弧角約90度の管軸に平行に設けられた円弧部分にのみ透水性貫通孔52が穿設され、上記円弧部分の管軸に平行な中心線が直上を向いた状態にするとともに、有孔管53を上流側から下流側に向かって連結することによって形成されている。すなわち、透水性貫通孔52が上側にのみ配置され、空洞部5bの下面側は非透水構造となっている。
さらに、各空洞部5bは、図示していないが、上流側の端面の少なくとも透水性貫通孔52より下側部分が蓋によって閉じられている。また、河川や貯水池に臨む下流側の端面が開閉弁付きの蓋によって閉じられている。
【0037】
この舗装構造Bは、上記舗装構造Aと同様に表層1a上に雨が降ると、表層1aを介して保水層2内に雨水が浸透する。そして、保水層2内の水位が、下段の空洞部5bの上側に設けられた透水性貫通孔52より低い場合は、保水層2に沿って雨水が下流側に徐々に流れ河川あるいは貯水池に流れ出る。一方、豪雨などで水位が上がってくると、空洞部5bの透水性貫通孔52から空洞部5b内に雨水が流れ込み空洞部5b内に貯水される。そして、保水層2内の雨水は、下流側で河川あるいは貯水池に流れ出る。他方、下流側の保水層2内が雨水で満杯となり、表層1aを越えて道路冠水のおそれが生じた場合、開閉弁を開放して空洞部5b内に貯水された雨水を河川あるいは貯水池に放流し、保水層2内の水位を下げることができる。
【0038】
そして、雨がやむと、保水層2内の雨水は、河川あるいは貯水池に徐々に流れ出るとともに、一部が底層3を介して土中に浸透するとともに、保水層2に保水されて残った一部が表層1aを介して蒸発する。また、空洞部5a内に残った雨水は、上部の透水性貫通孔52を介して蒸発する。
また、この舗装構造Bにおいては、空洞部5aの底に排水管を接続し、この排水管に接続したポンプによって、空洞部5a内に貯まった雨水を地上にくみ上げる構造を付加すれば、空洞部5a内に貯まった雨水を緑化用に用いることもできる。
【0039】
なお、図3中、上記舗装構造Aと同様の材料で形成された同様の構成部分は上記舗装構造Aと同様の番号を付している。
【0040】
図5は、本発明にかかる舗装構造の第3の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この舗装構造Cは、地下街の柱71を支える壁状をした地中梁7と地中梁7との間が掘削され、この掘削部の底に透水性の底層3が設けられている。
【0041】
そして、この底層3の上に上記舗装構造Aと同様にして有孔管51を埋設することによって形成された空洞部5aを備えた保水層2の上に表層1bが設けられている。
表層1bは、多数のタイルブロック11と、このタイルブロック11とタイルブロック11の間の目地を埋める目地材12とから形成されている。
目地材12は、保水層2に近い透水性を備えたコンクリート材料(保水層2と同じポーラスコンクリートでもよい)で形成されている。
【0042】
保水層2と隣接する保水層2との間に設けられた地中梁7に通水孔72が間欠的に設けられている。
また、この舗装構造Cを備えた地下入口の階段8は、ステップ部分81が保水層2と同じポーラスコンクリートで形成されている。
【0043】
この舗装構造は、上記のようになっており、豪雨などで側溝等からあふれ出た雨水が地下入口から地下に流れ込んでも、表層1bの目地材12が透水性を備えているので、目地材12部分を介して直ちに保水層2側に浸透し、保水層2内に貯められる。また、保水層2内に空洞部5aが設けられているので、十分な保水能力がある。しかも、地中梁7を挟んで隣接する保水層2が地中梁7に設けられた通水孔72によって、連通しているので、雨水が流入する地下入口直下の保水層2内の雨水が、通水孔72を介してつぎつぎに隣接する保水層2に流れ込む。したがって、地下床面が冠水することを長時間防ぐことができ、地下にいる人々の地下からの脱出時間を十分に確保することができる。
また、階段8のステップ部分81がポーラスコンクリートで形成されているので、地下入口から流れ込む雨水は、ステップ部分81の内部を通って地下へ流れ込む。したがって、地下にいる人がこの階段8を利用して地上へ脱出する場合、ステップ部分の表面の雨水の流れで足を取られることがなく安全に脱出できる。
【0044】
図6は、本発明にかかる舗装構造の第4の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、この舗装構造Dは、高速道路9の中央分離帯部分91を溝状に掘削し、この掘削部に溝状に底層3を形成したのち、上記舗装構造Aと同様の空洞部5aを備えた保水層2を設け、保水層2の上方に表層1aを設けなかった以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0045】
図7は、本発明にかかる舗装構造の第5の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、この舗装構造Eは、保水層2の周壁が、保水層2より透水性が低いコンクリート材料の底層3、縁石4およびコンクリート壁(図示せず)で囲まれている。
【0046】
空洞部5cは、弧角約90度の管軸に平行に設けられた円弧部分にのみ透水性貫通孔52が穿設された有孔管53を連結することによって形成されているとともに、上記円弧部分の管軸に平行な中心線が直上を向いている。
また、空洞部5cは、上記舗装構造Bと同様の有孔管53を連結して形成されていて、その下流側が上記保水層2の周壁の一部を貫通して河川あるいは貯水池に臨んでいる。
【0047】
さらに、空洞部5cの一部には、建物の雨水配管54が接続されており、建物敷地内に降った雨がこの雨水配管54を介して雨水が流入するようになっている。
【0048】
この舗装構造Eは、雨が降ると、表層1aを介して雨水が保水層2に浸透する。そして、保水層2内の雨水の水位が透水性貫通孔52より上昇すると、透水性貫通孔52を介して空洞部5c内に雨水が流れ込み、その下流側から河川や貯水池に排水される。また、雨水配管54を介して空洞部5c内に流れ込んだ雨水も同様に空洞部5cを介して河川や貯水池に排水される。
空洞部5c内に流れ込む雨水の量がその排水能力を超えると、雨水配管54を介して空洞部5c内に流れ込んだ雨水は、透水性貫通孔52から上方の保水層2に溢れ出て、空洞部5cより上方の保水層2に保水される。
【0049】
雨が上がると、透水性貫通孔52より上方にある雨水は、徐々に透水性貫通孔52から空洞部5c内に入り込み空洞部5cの樋状をした非透水部を介して下流に向かって流れ、河川や貯水池に排水される。
一方、透水性貫通孔52より下方の保水層2に貯まった雨水は、底層3及び周壁から土中に徐々に浸透するとともに、表層1aを通り蒸発する。
【0050】
図8は、本発明にかかる舗装構造の第6の実施の形態をあらわしている。
図8に示すように、この舗装構造Fは、以下に述べる構成以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0051】
すなわち、この舗装構造Fは、図示していないが、その空洞部5dが道路に直交するように所定ピッチで設けられている。
空洞部5dは、上記舗装構造Aと同様の有孔管51を保水層2に埋設するとともに、その一端が開閉弁55aを備え、開閉弁55aが側溝41内に臨み、他端部が縁石4を貫通して保水層2内に臨む短管55に接続されて形成されている。
【0052】
この舗装構造Fは、上記舗装構造Aと同様の効果を備えているとともに、上記のように、空洞部5dの一端が、道路に隣接して設けられた側溝41内に臨み、この側溝41の出口側に開閉弁が設けられているので、保水層2内に雨水が十分に保水された状態で、上記開閉弁を開放すれば、水害等により保水層2内に泥などを洗い流して、保水層2の保水能力を維持させることができる。
【0053】
図9は、本発明にかかる舗装構造の第7の実施の形態をあらわしている。
図9に示すように、この舗装構造Gは、側道が多数接続された幹線道路の保水層2を構成する骨材を下流側に向かって段階的に粗くするようにした以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0054】
例えば、図9に示すa区間(上流部)では、骨材の粒径を5〜20mm、b区間(中流部)では、骨材の粒径を20〜40mm、c区間(下流部)では、骨材の粒径を40〜150mmのポーラスコンクリートで形成する。
なお、図9中、Rは川である。
【0055】
この舗装構造Gは、上記舗装構造Aと同様の効果を備えているとともに、上記のように保水層2を構成する骨材を下流側に向かって段階的に粗くするようにしたので、側道の保水層などから幹線道路の保水層2に合流して流れ込み、幹線道路の下流側で雨水の流入量が増えても保水層2から雨水が溢れることなくよりスムーズに河川や貯水池などに排水できる。
【0056】
図10は、本発明にかかる舗装構造の第8の実施の形態をあらわしている。
図10に示すように、この舗装構造Hは、保水層2と保水層2との間に保水層2より透水係数が小さい緩衝部22を間欠的に設けた以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0057】
この舗装構造Hは、透水係数の小さい緩衝部22を間欠的に設けたので、緩衝部22がオリフィス機能を発揮して下流側で隣接する保水層2に向かって流れる雨水の流下速度を低下させて、域内降雨の急速な河川への流下を防止することができる。
なお、緩衝部22は、配置される場所によっては、必要に応じて骨材の大きさを変化させて透水係数を変えたりしてもよい。
【0058】
図11は、本発明にかかる舗装構造の第9の実施の形態をあらわしている。
図11に示すように、この舗装構造Iは、保水層2と保水層2との間に、緩衝部22に代えて、緩衝部23を間欠的に設けた以外は、上記舗装構造Hと同様になっている。
すなわち、緩衝部23は、略非透水性の材料で形成され、一部に保水層2と保水層2とを連通する小孔23aが設けられている。
【0059】
この舗装構造Iは、緩衝部23を間欠的に設けたので、保水層2に保水された雨水がこの緩衝部23に設けた小孔23aからしか隣接する保水層2へ流入することがない。すなわち、緩衝部23によって下流側で隣接する保水層2に向かって流れる雨水の流下速度を低下させて流下速度を制御することができる。
したがって、河川に流れ込む排水の流量調節が可能となるため、域内降雨の急速な河川への流下を防止することができる。
なお、緩衝部23は、配置させる場所によっては、小孔23aの孔径を必要に応じて変化させて隣接する保水層2への雨水の流量を変化させるようにしてもよい。
【0060】
図12及び図13は、本発明にかかる舗装構造の第10の実施の形態をあらわしている。
図12及び図13に示すように、この舗装構造Jは、保水層2aが、例えば、建物敷地内の所望部分を掘削し、掘削部の底に上記舗装構造Aと同様にして底層(図示せず)を設けたのち、この底層の上に保水層2aの一部を構成するポーラスコンクリートを所定高さまで充填し、保水層2aに基礎部24を形成する。そして、この基礎部24上に空洞部となる貫通孔26aを複数備えたポーラスコンクリートからなるカルバートブロック26を図12に示すように連結状態で敷き並べたのち、カルバートブロック26の側面と、掘削部の側壁との間にポーラスコンクリートをその上面がカルバートブロック26の上面に一致するまで充填することによって形成されている。
この舗装構造Jは、上記のようになっているので、空洞部となる有孔管を埋設する作業が不要となり、施工性がよくなる。
【0061】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、底層が透水性を備えていたが、底層は非透水性であっても構わない。
上記の実施の形態では、空洞部内に何も充填されていなかったが、不織布からなる袋状体内に吸水性高分子を充填した吸水材を空洞部内に配置させてもよい。すなわち、このようにすれば、空洞部内に浸入してきた雨水が、吸水性高分子に一旦吸水されて空洞部内に保持される。そして、雨が上がって好天となると、吸収性高分子に吸収された水は、徐々に蒸発して表層から放出される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明にかかる舗装構造は、車道、歩道などの道路、公園、駐車場、事業場の構内、一般家庭の外構、建物の床、地下街の床、屋上などに用いられる。
【符号の説明】
【0063】
A,B,C,D,E,G,H,I,J 舗装構造
1a,1b 表層
2,2a 保水層
22,23 緩衝部
26a 貫通孔(空洞部)
5a,5b,5c,5d 空洞部
51,53 有孔管(空洞形成部材)
52 透水性貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装表面に降った雨を内部に一時的に貯水状態に保水するとともに、徐々に排水あるいは蒸発させて、豪雨時の道路冠水を効率よく防止することができる舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の影響であろう記録的な豪雨(1時間に50〜100mm程度)が各地で発生し、都市部においても道路冠水、住宅浸水、地下街、地下鉄等への浸水などにより機能がマヒする事態も頻発している。
そこで、豪雨時に道路冠水や住宅浸水を防止する方法として、排水路の大規模化および増設整備、地下排水管の設置、堤防の増強等が行われる。また、例えば、特許文献1にみられるように、ポーラスコンクリートからなる保水層を備えた透水舗装が既に提案されている。
そして、この透水舗装の場合、集中豪雨時などで、ポーラスコンクリートの保水層のみでは十分に保水できない場合、ポーラスコンクリート層の上部から、道路の側溝に雨水が流れ込み、道路冠水を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−295212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排水路や堤防の増強等には莫大なコストがかかることはいうまでもなく、ポーラスコンクリートからなる保水層を備えた透水舗装においては、保水している部分と側溝との関係が豪雨の排水対策を想定した構造ではないために、側溝の氾濫を招きやすく、浸水被害等が発生しやすいという問題は解消されない。
また、ポーラスコンクリートからなる保水層の厚みを増して、保水能力を上げることが考えられるが、保水層の厚みを増すには、道路を深く掘り下げなければならず、施工日数がかかるとともに、施工コストも高いものとなってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、地面の掘削深さが浅くても保水能力が高く、道路冠水や河川の氾濫を確実に防止できるとともに、施工が容易で施工コストを低く抑えることができる舗装構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる舗装構造は、舗装部表面および周辺地域に降った雨水が流入して内部に一時的に貯水状態に保水するとともに、徐々に排水あるいは蒸発させることができるポーラスコンクリートからなる保水層を備えるとともに、保水層内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部を有することを特徴としている。
【0007】
本発明において、保水層を形成するポーラスコンクリートとしては、特に限定されないが、骨材の粒径が5mm以上、空隙率が25〜35%、連続空隙率が20%以上、透水係数が1〜10cm/s、圧縮強度が10〜25 N/mm2であることが好ましい。
【0008】
すなわち、骨材の粒径が5mm未満では、保水層内を水位の低い方に向かって流れにくくなり、雨の降った部分のみで、保水層内の水位が高くなり、結果、表層上に溢れ出てしまうおそれがある。
空隙率が25%未満では、十分な保水容積を確保できないおそれがあり、空隙率が35%を超える程度になると透水機能からは望ましくても、製造、施工および管理が困難となりやすい。
連続空隙率が20%未満では、ポーラスコンクリート層内に貯水される水量が少なくなるうえ、夏期炎天時等における水の蒸発速度が遅く路面温度の上昇の低減効果が低下するおそれがある。
透水係数が1cm/s未満では、路面表面からの水の進入が遅く、水害対策に要求されるレベルとしては不足する。
透水係数が10cm/sを超える程度になると透水機能からは望ましくても、高い空隙率が必要であるため、製造、施工および管理が困難となる一面が現れる。
圧縮強度が10N/mm2未満では、その上を自動車が通行する場合に損傷しやすくなる。
25 N/mm2を超える圧縮強度は、望ましいものであるが、一般的にはコスト高の要因にもなる。
【0009】
本発明において、骨材の粒径は、JIS A 1102(骨材のふるい分け試験方法) を用いて測定される。
空隙率及び連続空隙率は、容積圧力法(日本建築学会構造系論文集第75巻第650号、p1043-1050、2008年7月)、JCI(コンクリート工学協会)から提起されている規準案(ポーラスコンクリートの空隙率試験方法(案))に記載されている容積圧力法を用いて測定される。
透水係数は、上記JCI規準案の(ポーラスコンクリートの透水試験方法(案))に記載の透水試験方法を用いて測定される。
圧縮強度法は、JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法) を用いて測定される。
【0010】
空洞部は、上記空間形成部材を保水層内に連続的に設けて形成することも、間欠的に配置させて設けることもできる。また、空洞部は、保水層内に複数平行に設けるようにしても構わない。また、舗装部が道路である場合、空洞部を道路の道なりに連続して設けることが好ましい。
【0011】
上記空間形成部材としては、必要な透水性貫通孔を備え、使用時に周囲からかかる荷重に耐えることができれば、特に限定されないが、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどニルの合成樹脂製の有孔管、FRPなどの複合材料からなる有孔管、有孔の鋼管、有孔のヒューム管などの有孔の筒状体が挙げられる。
透水性貫通孔の数は、空間形成部材が周囲からかかる荷重によって周壁が破損しない強度が確保することができれば特に限定されないが、空洞部内への雨水の透水性を考慮すると、できるだけ多く設けることが好ましい。
【0012】
また、上記空洞部は、上部側にのみ透水性貫通孔を設け、下面側を樋状の非透水部とした構造をしていても構わない。すなわち、上部側にのみ透水性貫通孔を設け、下面側を樋状の非透水部とした空洞部を所定の排水勾配にして設けるとともにその下流側が排水路または排水管、河川、貯水池、海のいずれかに臨ませるとともに、住宅などの建物敷地から雨水配管の下流側の端部を空洞部に接続するようにすれば、建物敷地から排出される雨水の排水路としても用いることができる。そして、上記雨水配管を介して建物敷地内から雨水とともに、落ち葉などが流れ込んでも、落ち葉などは、樋状の非透水部に受けられて雨水とともに下流側に排出される。勿論、豪雨などで空洞部内の雨水の水位が増してくると、上部の透水性貫通孔から保水層側に排水され、空洞部の下流から雨水が一気に排水路または排水管、河川、貯水池、海に排水されることがない。
また、空洞部は、その一端が、道路等の舗装部に隣接して設けられた排水溝に臨むとともに、排水溝側端部に止水弁を備えている構成としてもよい。
【0013】
本発明において、特に限定されないが、保水層は道路の道なりに連続して設けられている構成としてもよい。
また、保水層は、下流側が、排水路または排水管、河川、貯水池、海のいずれかに臨んでいる構成としてもよい。
【0014】
また、保水層は、保水層内の雨水の流速を制御するために透水係数の異なる部位を複数備えている構成としてもよい。
すなわち、雨水は、保水層内で水位の低い方に流れていくが、地形などの条件に合わせて場所によって、透水係数の異なる部分を設けて、保水層内を流れる雨水の流速をその場所の条件に適応した流速に制御することができる。そして、保水層を介して排水路または排水管、河川、貯水池、海などに流れ込む雨水の量を精密にコントロールすることができる。
たとえば、保水層が、下流側に向かって透水係数が段階的に大きくなっている複数の透水係数の異なる部位を備えている構成とすれば、速やかな排水とすることができる。逆に排水路または排水管、河川、貯水池、海などに流れ込む直近部分のみを、透水係数を小さくして急激な雨水の流れ込みを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の舗装構造は、複数の保水部と、保水部と保水部との間に介在し、保水部より透水係数の低く、隣接する一方の保水部から他方の保水部側への急激な雨水の流れ込みを抑える緩衝部とを備えている構成としてもよい。すなわち、緩衝部によって隣接する保水部への急激な雨水の流れ込みを抑えることができる。
さらに、空洞部を構成する有孔管の口径や、傾斜、あるいは、透水性貫通孔の径を変化させて排水路または排水管、河川、貯水池、海などに流れ込む雨水の流量をコントロールするようにしてもよい。
【0016】
本発明の舗装構造は、特に限定されないが、舗装表面の意匠性向上、舗装表面の多様性確保、舗装表面の使用感、舗装表面の強度向上などを目的として、必要に応じて保水層の表面を覆うように透水性を備えた表層を設けてもよい。
上記表層は、表層上に降った雨水が、スムーズに保水層側に透過すれば、特に限定されないが、樹脂+天然石、熱緩和塗装、砕石、インターロッキングブロック等の二次製品、リサイクル材、透水性アスファルト(ポーラスアスファルト、開粒度アスファルトともいう)などで形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる舗装構造は、以上のように路面に降った雨水が浸透しやすい表層と、この表層から浸透した雨水が、保水されるポーラスコンクリートからなる保水層とを備えるとともに、保水層内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部を有するので、地面の掘削深さが浅くても保水能力が高く、道路冠水や河川の氾濫を確実に防止できるとともに、施工が容易で施工コストを低く抑えることができる。
すなわち、保水層内の水位が上昇してくると、保水層で保水しきれない雨水が透水性貫通孔を介して空洞部内に流れ込み、空洞部内に貯まる。したがって、保水層の厚みを薄くしても保水能力が高いものとなる。しかも、空洞部が周壁に透水性貫通孔を有し筒状をした空洞形成部材をポーラスコンクリート製の保水層内に埋設するだけでよい。そして、保水層の厚みを薄くすることによって、地面の掘り下げ深さも浅くすることができ、結果として施工時間の短縮を図ることができるとともに、ポーラスコンクリート材料の使用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる舗装構造の第1の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明にかかる舗装構造の第2の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明にかかる舗装構造の第3の実施の形態をあらわす地下街の横断面図である。
【図6】本発明にかかる舗装構造の第4の実施の形態をあらわす高速道路の中央分離帯部分の横断面図である。
【図7】本発明にかかる舗装構造の第5の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図8】本発明にかかる舗装構造の第6の実施の形態をあらわす道路部分の横断面図である。
【図9】本発明にかかる舗装構造の第7の実施の形態の保水部部分を模式的にあらわす図である。
【図10】本発明にかかる舗装構造の第8の実施の形態をあらわす道路部分の縦断面図である。
【図11】本発明にかかる舗装構造の第9の実施の形態をあらわす道路部分の縦断面図である。
【図12】本発明にかかる舗装構造の第10の実施の形態をあらわす道路の保水部の平面図である。
【図13】図12の保水部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明にかかる舗装構造の第1の実施の形態をあらわしている。
【0020】
図1及び図2に示すように、この舗装構造Aは、道路に設けられ、表層1aと、保水層2と、底層3とを備え、幅方向の両側に縁石4が設けられるとともに、保水層2内に空洞部5aが複数形成されている。
そして、図示していないが、保水層2の一部が、河川、貯水池などに臨んでいる。
【0021】
表層1aは、透水性アスファルトで形成されていて、透水性を備えている。
保水層2は、図2に示すように、透水係数が1〜10cm/sとなるように骨材21と骨材21との間に隙間22が形成され、骨材21と骨材21とがその接触面においてセメント(図ではあらわしていない)によって接合されているポーラスコンクリートからなる。
【0022】
底層3は、例えば、透水係数が0.1〜0.5cm/s程度の透水性を備えたコンクリート材料で形成されている。なお、底層3の透水係数は、路床に対して地下浸透と排水のバランスを考慮した上で適宜決定され特に限定されない。
各空洞部5aは、空洞形成部材としての有孔管51と、この有孔管51の長手方向両端を塞ぐように設けられた蓋(図示せず)とからなる。
【0023】
上記有孔管51は、塩化ビニル樹脂等から形成されていて、透水性貫通孔52が全周に多数穿設されている。
透水性貫通孔52は、後述する保水層2を構成するポーラスコンクリートの骨材が内部に入り込まない大きさに形成されている。
【0024】
また、有孔管51の透水性貫通孔52および蓋の透水性貫通孔は、図示していないが、保水層2を構成する骨材及びセメント成分の有孔管51内への入り込みを防止するための網によって覆われている。なお、網の網目は、骨材及びセメント成分が有孔管51内に入り込まなければ、できるだけ粗いことが好ましい。
【0025】
つぎに、この舗装構造の施工方法を説明する。
まず、既存の道路の縁石4と縁石4との間を掘削し、底層用のコンクリート材料を掘削部の底に流しこんで透水性の底層3を形成する。
【0026】
つぎに、保水層用のポーラスコンクリート材料を有孔管51の下端位置まで底層3上に流し込んで、ポーラスコンクリート材料を硬化あるいは半硬化させたのち、透水性貫通孔52の部分を網で覆った有孔管51を所定の位置に並べ、その後ポーラスコンクリート材料を保水層2の上端の高さまで流し込んでポーラスコンクリート材料を硬化させて保水層2を形成する。
最後に、公知の透水性舗装の場合と同様に透水性アスファルト材料を載せて転圧することによって表層1aを形成する。
【0027】
上記舗装構造Aは、上記のように構成されているので、以下のような優れた作用効果を備えている。
(1)既存の道路を掘削し保水層2を設けると同時に空洞部5aを設けるようにしたので、施工が容易であるとともに、安価に施工できる。
(2)表層1a上に降った雨水は、表層1aが透水性アスファルトで形成されているので、スムーズに表層1aを透過して保水層2に流入する。
また、豪雨時などのように、急激に保水層2内の水位が増してきても空洞部5aがあるので、透水性貫通孔52を介して空洞部5a内にも雨水が保水され、保水能力が高く表層1aを超えて路面冠水に到ることがない。
【0028】
(3)保水層2に流入した雨水は、保水層2内を水位の低い方向に向かって流れて行くが、保水層2の骨材によってその流れが減速されるため、急激な流れにならない。
したがって、排水路または排水管、河川、貯水池などに対して、急激に流れ込むことがなく、河川や貯水池の氾濫や堤防の決壊を招くことがない。
また、局地的な豪雨の場合でも、雨が降っていない地域の保水層2側に流れていくため、河川や貯水池まで到達せず、保水層2内でそのまま保水される場合もある。
しかも、雨水が保水層2を通って河川や貯水池に排水されるため、従来の道路に沿って設けられた側溝をなくして道路幅を広げることも可能となる。
因みに、道路幅w=3m、保水層2の厚さt=30cm、保水層2の空隙率Rv=30%なら、保水層2の排水路相当断面積C = w・t・Rv=0.27m2となり、従来の側溝(幅30cm×深さ50cm)の2倍程度の流路面積が得られる。
【0029】
(4)雨が上がると、保水層2には、雨水の一部が残り保水状態となっている。そして、この保水層2に保水された雨水は、外気温によって温められて徐々に蒸発し、路面温度を下げる。すなわち、ヒートアイランド現象の防止を図ることができる。
(5)保水層2を介して河川や貯水池に排水できるので、道路に沿って側溝を設ける必要がなくなり、道路幅を拡張することができる。
(6)雨水が流入する面積が大きいため、落ち葉やごみ等で閉塞する心配がない。
【0030】
(7)表層1a上に降った雨は、すぐに保水層2に浸透するので、表層1aに水溜りなどが生じず、快適に通行できる。
(8)広い面積で貯水し、水位は高くないため、安全であり、保水層2に水を内包しても周辺の土砂の安定性にも影響がない。
(9)底層3が透水性を備えているので、保水層2に保水された雨水の一部が底層3を通って土中に浸透する。したがって、保水層2を介して河川や貯水池等に流れ込む雨水の量をより少なくすることができる。また、地下水の枯渇を防ぐこともできる。
【0031】
(10)保水層2が水路を兼ねるため、特定の貯水池に誘導するための水路、配管等が不要(舗装の全表面から透水)である。また、水路となる保水層2への流入口が道路表面全体であるので、水路や配管の流入口のように落ち葉、ゴミ等で閉塞する心配がない。
(11)表層1aの透水性アスファルトが、一般の透水性アスファルト舗装構造のように、夏場の高温時に柔らかになり、変形しやすいアスファルト製の不透水層に受けられるのではなく、変形抵抗の大きいポーラスコンクリートの保水層2によって受けられるため、耐久性の高い道路構造となる。また、表層1aが透水性アスファルトであるため、骨材の剥脱が発生しにくく、滑らかで低騒音の走行路面が実現できる。
【0032】
(12)保水層2がポーラスコンクリートで形成されているので、掘削が容易で、また、保水部2の掘削部以外の部分以外は、そのままの強度を維持した状態に残るので、道路下に例えば排水管の埋設の必要が生じた場合においても、配管施工時に周囲の土留めなどを行わなくても済み、作業を容易に行える。
(13)側溝を設けなくとも済むようになり、段差を少なくしてバリアフリー化を図ることができる。
【0033】
なお、上記縁石4は、必要に応じて透水性を備えたものに変更することも可能である。また、空洞部5a内には、例えば、不織布からなる袋状体内に吸水性高分子を充填した吸水材を配置しておいてもよい。すなわち、このような吸水材を配置しておけば、空洞部5a内に侵入してきた雨水が吸水性高分子に一旦吸収されて空洞部5a内に保持される。そして、雨がやむと、この吸収性高分子に吸収された雨水が徐々に蒸発する。したがって、より長時間路面温度の上昇を抑えることができる。
【0034】
図3及び図4は、本発明にかかる舗装構造の第2の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この舗装構造Bは、以下に述べる構成以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0035】
すなわち、この舗装構造Bは、上記の舗装構造Aより既存の道路を深く掘り下げ、普通コンクリート製の土留め壁6を道路に沿って設けるとともに、この土留め壁6に透水性を有する縁石4を設けるようにした。
また、複数の空洞部5bを上下2列に水平方向に並ぶように配置した。
【0036】
そして、各空洞部5bは、図4に示すように、弧角約90度の管軸に平行に設けられた円弧部分にのみ透水性貫通孔52が穿設され、上記円弧部分の管軸に平行な中心線が直上を向いた状態にするとともに、有孔管53を上流側から下流側に向かって連結することによって形成されている。すなわち、透水性貫通孔52が上側にのみ配置され、空洞部5bの下面側は非透水構造となっている。
さらに、各空洞部5bは、図示していないが、上流側の端面の少なくとも透水性貫通孔52より下側部分が蓋によって閉じられている。また、河川や貯水池に臨む下流側の端面が開閉弁付きの蓋によって閉じられている。
【0037】
この舗装構造Bは、上記舗装構造Aと同様に表層1a上に雨が降ると、表層1aを介して保水層2内に雨水が浸透する。そして、保水層2内の水位が、下段の空洞部5bの上側に設けられた透水性貫通孔52より低い場合は、保水層2に沿って雨水が下流側に徐々に流れ河川あるいは貯水池に流れ出る。一方、豪雨などで水位が上がってくると、空洞部5bの透水性貫通孔52から空洞部5b内に雨水が流れ込み空洞部5b内に貯水される。そして、保水層2内の雨水は、下流側で河川あるいは貯水池に流れ出る。他方、下流側の保水層2内が雨水で満杯となり、表層1aを越えて道路冠水のおそれが生じた場合、開閉弁を開放して空洞部5b内に貯水された雨水を河川あるいは貯水池に放流し、保水層2内の水位を下げることができる。
【0038】
そして、雨がやむと、保水層2内の雨水は、河川あるいは貯水池に徐々に流れ出るとともに、一部が底層3を介して土中に浸透するとともに、保水層2に保水されて残った一部が表層1aを介して蒸発する。また、空洞部5a内に残った雨水は、上部の透水性貫通孔52を介して蒸発する。
また、この舗装構造Bにおいては、空洞部5aの底に排水管を接続し、この排水管に接続したポンプによって、空洞部5a内に貯まった雨水を地上にくみ上げる構造を付加すれば、空洞部5a内に貯まった雨水を緑化用に用いることもできる。
【0039】
なお、図3中、上記舗装構造Aと同様の材料で形成された同様の構成部分は上記舗装構造Aと同様の番号を付している。
【0040】
図5は、本発明にかかる舗装構造の第3の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この舗装構造Cは、地下街の柱71を支える壁状をした地中梁7と地中梁7との間が掘削され、この掘削部の底に透水性の底層3が設けられている。
【0041】
そして、この底層3の上に上記舗装構造Aと同様にして有孔管51を埋設することによって形成された空洞部5aを備えた保水層2の上に表層1bが設けられている。
表層1bは、多数のタイルブロック11と、このタイルブロック11とタイルブロック11の間の目地を埋める目地材12とから形成されている。
目地材12は、保水層2に近い透水性を備えたコンクリート材料(保水層2と同じポーラスコンクリートでもよい)で形成されている。
【0042】
保水層2と隣接する保水層2との間に設けられた地中梁7に通水孔72が間欠的に設けられている。
また、この舗装構造Cを備えた地下入口の階段8は、ステップ部分81が保水層2と同じポーラスコンクリートで形成されている。
【0043】
この舗装構造は、上記のようになっており、豪雨などで側溝等からあふれ出た雨水が地下入口から地下に流れ込んでも、表層1bの目地材12が透水性を備えているので、目地材12部分を介して直ちに保水層2側に浸透し、保水層2内に貯められる。また、保水層2内に空洞部5aが設けられているので、十分な保水能力がある。しかも、地中梁7を挟んで隣接する保水層2が地中梁7に設けられた通水孔72によって、連通しているので、雨水が流入する地下入口直下の保水層2内の雨水が、通水孔72を介してつぎつぎに隣接する保水層2に流れ込む。したがって、地下床面が冠水することを長時間防ぐことができ、地下にいる人々の地下からの脱出時間を十分に確保することができる。
また、階段8のステップ部分81がポーラスコンクリートで形成されているので、地下入口から流れ込む雨水は、ステップ部分81の内部を通って地下へ流れ込む。したがって、地下にいる人がこの階段8を利用して地上へ脱出する場合、ステップ部分の表面の雨水の流れで足を取られることがなく安全に脱出できる。
【0044】
図6は、本発明にかかる舗装構造の第4の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、この舗装構造Dは、高速道路9の中央分離帯部分91を溝状に掘削し、この掘削部に溝状に底層3を形成したのち、上記舗装構造Aと同様の空洞部5aを備えた保水層2を設け、保水層2の上方に表層1aを設けなかった以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0045】
図7は、本発明にかかる舗装構造の第5の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、この舗装構造Eは、保水層2の周壁が、保水層2より透水性が低いコンクリート材料の底層3、縁石4およびコンクリート壁(図示せず)で囲まれている。
【0046】
空洞部5cは、弧角約90度の管軸に平行に設けられた円弧部分にのみ透水性貫通孔52が穿設された有孔管53を連結することによって形成されているとともに、上記円弧部分の管軸に平行な中心線が直上を向いている。
また、空洞部5cは、上記舗装構造Bと同様の有孔管53を連結して形成されていて、その下流側が上記保水層2の周壁の一部を貫通して河川あるいは貯水池に臨んでいる。
【0047】
さらに、空洞部5cの一部には、建物の雨水配管54が接続されており、建物敷地内に降った雨がこの雨水配管54を介して雨水が流入するようになっている。
【0048】
この舗装構造Eは、雨が降ると、表層1aを介して雨水が保水層2に浸透する。そして、保水層2内の雨水の水位が透水性貫通孔52より上昇すると、透水性貫通孔52を介して空洞部5c内に雨水が流れ込み、その下流側から河川や貯水池に排水される。また、雨水配管54を介して空洞部5c内に流れ込んだ雨水も同様に空洞部5cを介して河川や貯水池に排水される。
空洞部5c内に流れ込む雨水の量がその排水能力を超えると、雨水配管54を介して空洞部5c内に流れ込んだ雨水は、透水性貫通孔52から上方の保水層2に溢れ出て、空洞部5cより上方の保水層2に保水される。
【0049】
雨が上がると、透水性貫通孔52より上方にある雨水は、徐々に透水性貫通孔52から空洞部5c内に入り込み空洞部5cの樋状をした非透水部を介して下流に向かって流れ、河川や貯水池に排水される。
一方、透水性貫通孔52より下方の保水層2に貯まった雨水は、底層3及び周壁から土中に徐々に浸透するとともに、表層1aを通り蒸発する。
【0050】
図8は、本発明にかかる舗装構造の第6の実施の形態をあらわしている。
図8に示すように、この舗装構造Fは、以下に述べる構成以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0051】
すなわち、この舗装構造Fは、図示していないが、その空洞部5dが道路に直交するように所定ピッチで設けられている。
空洞部5dは、上記舗装構造Aと同様の有孔管51を保水層2に埋設するとともに、その一端が開閉弁55aを備え、開閉弁55aが側溝41内に臨み、他端部が縁石4を貫通して保水層2内に臨む短管55に接続されて形成されている。
【0052】
この舗装構造Fは、上記舗装構造Aと同様の効果を備えているとともに、上記のように、空洞部5dの一端が、道路に隣接して設けられた側溝41内に臨み、この側溝41の出口側に開閉弁が設けられているので、保水層2内に雨水が十分に保水された状態で、上記開閉弁を開放すれば、水害等により保水層2内に泥などを洗い流して、保水層2の保水能力を維持させることができる。
【0053】
図9は、本発明にかかる舗装構造の第7の実施の形態をあらわしている。
図9に示すように、この舗装構造Gは、側道が多数接続された幹線道路の保水層2を構成する骨材を下流側に向かって段階的に粗くするようにした以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0054】
例えば、図9に示すa区間(上流部)では、骨材の粒径を5〜20mm、b区間(中流部)では、骨材の粒径を20〜40mm、c区間(下流部)では、骨材の粒径を40〜150mmのポーラスコンクリートで形成する。
なお、図9中、Rは川である。
【0055】
この舗装構造Gは、上記舗装構造Aと同様の効果を備えているとともに、上記のように保水層2を構成する骨材を下流側に向かって段階的に粗くするようにしたので、側道の保水層などから幹線道路の保水層2に合流して流れ込み、幹線道路の下流側で雨水の流入量が増えても保水層2から雨水が溢れることなくよりスムーズに河川や貯水池などに排水できる。
【0056】
図10は、本発明にかかる舗装構造の第8の実施の形態をあらわしている。
図10に示すように、この舗装構造Hは、保水層2と保水層2との間に保水層2より透水係数が小さい緩衝部22を間欠的に設けた以外は、上記舗装構造Aと同様になっている。
【0057】
この舗装構造Hは、透水係数の小さい緩衝部22を間欠的に設けたので、緩衝部22がオリフィス機能を発揮して下流側で隣接する保水層2に向かって流れる雨水の流下速度を低下させて、域内降雨の急速な河川への流下を防止することができる。
なお、緩衝部22は、配置される場所によっては、必要に応じて骨材の大きさを変化させて透水係数を変えたりしてもよい。
【0058】
図11は、本発明にかかる舗装構造の第9の実施の形態をあらわしている。
図11に示すように、この舗装構造Iは、保水層2と保水層2との間に、緩衝部22に代えて、緩衝部23を間欠的に設けた以外は、上記舗装構造Hと同様になっている。
すなわち、緩衝部23は、略非透水性の材料で形成され、一部に保水層2と保水層2とを連通する小孔23aが設けられている。
【0059】
この舗装構造Iは、緩衝部23を間欠的に設けたので、保水層2に保水された雨水がこの緩衝部23に設けた小孔23aからしか隣接する保水層2へ流入することがない。すなわち、緩衝部23によって下流側で隣接する保水層2に向かって流れる雨水の流下速度を低下させて流下速度を制御することができる。
したがって、河川に流れ込む排水の流量調節が可能となるため、域内降雨の急速な河川への流下を防止することができる。
なお、緩衝部23は、配置させる場所によっては、小孔23aの孔径を必要に応じて変化させて隣接する保水層2への雨水の流量を変化させるようにしてもよい。
【0060】
図12及び図13は、本発明にかかる舗装構造の第10の実施の形態をあらわしている。
図12及び図13に示すように、この舗装構造Jは、保水層2aが、例えば、建物敷地内の所望部分を掘削し、掘削部の底に上記舗装構造Aと同様にして底層(図示せず)を設けたのち、この底層の上に保水層2aの一部を構成するポーラスコンクリートを所定高さまで充填し、保水層2aに基礎部24を形成する。そして、この基礎部24上に空洞部となる貫通孔26aを複数備えたポーラスコンクリートからなるカルバートブロック26を図12に示すように連結状態で敷き並べたのち、カルバートブロック26の側面と、掘削部の側壁との間にポーラスコンクリートをその上面がカルバートブロック26の上面に一致するまで充填することによって形成されている。
この舗装構造Jは、上記のようになっているので、空洞部となる有孔管を埋設する作業が不要となり、施工性がよくなる。
【0061】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、底層が透水性を備えていたが、底層は非透水性であっても構わない。
上記の実施の形態では、空洞部内に何も充填されていなかったが、不織布からなる袋状体内に吸水性高分子を充填した吸水材を空洞部内に配置させてもよい。すなわち、このようにすれば、空洞部内に浸入してきた雨水が、吸水性高分子に一旦吸水されて空洞部内に保持される。そして、雨が上がって好天となると、吸収性高分子に吸収された水は、徐々に蒸発して表層から放出される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明にかかる舗装構造は、車道、歩道などの道路、公園、駐車場、事業場の構内、一般家庭の外構、建物の床、地下街の床、屋上などに用いられる。
【符号の説明】
【0063】
A,B,C,D,E,G,H,I,J 舗装構造
1a,1b 表層
2,2a 保水層
22,23 緩衝部
26a 貫通孔(空洞部)
5a,5b,5c,5d 空洞部
51,53 有孔管(空洞形成部材)
52 透水性貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装部表面に降った雨水が保水されるポーラスコンクリートからなる保水層を備えるとともに、保水層内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部を有することを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
保水層は、保水層内の雨水の流速を制御するために透水係数の異なる部位を複数備えている請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
保水層は、下流側に向かって透水係数が段階的に大きくなっている複数の透水係数の異なる部位を備えている請求項2に記載の舗装構造。
【請求項4】
保水層は、複数の保水部と、保水部と保水部との間に介在し、保水部より透水係数の低く、隣接する一方の保水部から他方の保水部側への急激な雨水の流れ込みを抑える緩衝部とを備えている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項5】
保水層の透水係数が1〜10cm/sである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項6】
保水層の下流側が、排水路、排水溝、河川、貯水池、海のいずれかに臨んでいる請求項1〜請求項5のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項7】
空洞部が、下面側に非透水部を樋状に備えている請求項1〜請求項6のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項8】
空洞部の一端が、舗装部に隣接して設けられた排水溝に臨むとともに、排水溝側端部に開閉可能な止水弁を備えている請求項1〜請求項7のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項9】
保水層の上面を覆うように、透水性を有する表層を備えている請求項1〜請求項8のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項10】
表層が透水性アスファルトで形成されている請求項9に記載の舗装構造。
【請求項1】
舗装部表面に降った雨水が保水されるポーラスコンクリートからなる保水層を備えるとともに、保水層内に、周壁に透水性貫通孔を有し管状または筒状をした空洞形成部材によって形成された空洞部を有することを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
保水層は、保水層内の雨水の流速を制御するために透水係数の異なる部位を複数備えている請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
保水層は、下流側に向かって透水係数が段階的に大きくなっている複数の透水係数の異なる部位を備えている請求項2に記載の舗装構造。
【請求項4】
保水層は、複数の保水部と、保水部と保水部との間に介在し、保水部より透水係数の低く、隣接する一方の保水部から他方の保水部側への急激な雨水の流れ込みを抑える緩衝部とを備えている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項5】
保水層の透水係数が1〜10cm/sである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項6】
保水層の下流側が、排水路、排水溝、河川、貯水池、海のいずれかに臨んでいる請求項1〜請求項5のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項7】
空洞部が、下面側に非透水部を樋状に備えている請求項1〜請求項6のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項8】
空洞部の一端が、舗装部に隣接して設けられた排水溝に臨むとともに、排水溝側端部に開閉可能な止水弁を備えている請求項1〜請求項7のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項9】
保水層の上面を覆うように、透水性を有する表層を備えている請求項1〜請求項8のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項10】
表層が透水性アスファルトで形成されている請求項9に記載の舗装構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−92607(P2012−92607A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242041(P2010−242041)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(597151699)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(597151699)
【Fターム(参考)】
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