説明

航空エンジンを含むガスタービンのための改良型レーザ点火装置

【課題】内燃機関、より具体的にはガスタービンエンジンのためのレーザ点火装置を提供する。
【解決手段】レーザビーム14を生成するように構成される少なくとも一つのレーザ光源12と、光ビーム案内要素16とを含む。前記光ビーム案内要素16は、燃焼室内に供給された含酸素燃料混合物に対して、着火性の最も高い領域においてレーザビーム14を照射するように、レーザビーム14を送出して、火炎領域内に燃焼器火炎を生成するように構成される。本装置は、光放射の少なくとも一部を検出するように構成されて、検出した光放射に少なくとも部分的に基づいて一つ以上の燃焼パラメータを制御する動作が可能である統合型の制御診断要素を更に含む。本装置は、追加の向上した点火制御構成を更に含む。内燃機関内で燃焼混合物に点火する方法も提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して内燃機関の点火装置に関する。より詳細には、本発明は、レーザ点火装置に関し、内燃機関用にレーザ点火装置を最適化することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に関して、燃料は、燃焼室内で酸化剤(通常は空気)と共に燃焼される。結果的に得られる高温高圧の気体が膨張することで、タービン翼などのエンジンの可動構成要素に力を印加してタービンを駆動する。燃焼は、間欠的(例えば、自動車に適用される場合など)又は連続的(例えば、ガスタービン及びジェットエンジンにおける場合など)であり得る。
【0003】
内燃機関用の従来の点火装置では、火花放電によって混合気に点火するために、燃焼室の壁面に固定された点火プラグに高電圧が印加される。ただし、この種の点火装置では、点火プラグが燃焼室に直接露出しているため、炭素が点火プラグに付着して、点火プラグが放電し難くなる。更に、点火プラグの電極の熱損失のせいで、放電によって生成された炎のトーチ又は核が冷やされて、火炎になる前に消滅してしまう。また、壁面において、又は壁面のごく近くで着火するため、壁面から燃料を燃やすことに関わる困難さにより、混合が不十分になることが多い。
【0004】
例えば、ガスタービンエンジン及び他の内燃機関など、可燃性燃料を用いるエンジンは、例えば、燃焼器や気筒などの燃焼領域と、燃焼のエネルギの機械エネルギへの変換を促進するピストンアセンブリとを含む。燃料ノズルを利用して、燃焼領域内に噴霧燃料を導入する。噴霧燃料は、点火装置によって点火される。点火装置としては、例えば、噴霧燃料の近くに火花を発生させる電気点火装置、噴霧材料に熱を導入する加熱素子、及び燃焼領域に炎を導入する点火装置が挙げられる。混合及び炎の安定化を向上させる試みにおいて、レーザ光によって、このレーザを利用した霧化及び前期イオン化を最適化することが求められている。
【0005】
また、燃焼機関の従来の診断システムでは、火炎化学発光による光放射の光学的測定が、慣例的に予混合ガス燃焼器内で利用されて、このような燃焼器内のエネルギや熱の発生率及び燃料空気混合比などの各種のパラメータを特定している。通常、光検出器の前面に波長フィルタを配置することを利用して、全光放射のうちの、励起状態の特定の化学種それぞれの部分寄与率を識別する。この後、一つ以上のこれらの化学種の信号比率は、燃料空気混合比、熱発生率、及びガス温度などの各種の燃焼器パラメータに、既知の方式で相関させることができる。この測定技術の以前の適用方式は、単純な光センサ構成とカメラシステムとを利用したものであった。
【0006】
通常、点火装置と診断装置は、燃焼機関内の独立した個別の構成要素を利用する個別のシステムとして構成される。ただし、これらの成果は、各燃焼容器内で光学技術を利用する最適化された点火構成及び診断処理を提供することによって改善され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7421166B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、統合型の診断装置と組み合わされて、混合及び火炎の安定化を改善するために最適化されたレーザ点火が提供される、内燃機関のための斬新で向上した最適な点火装置及び点火方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、内燃機関のためのレーザ点火装置が提供される。このレーザ点火装置は、レーザビームを生成するように構成される少なくとも一つのレーザ光源と、燃焼室に供給された含酸素燃料混合物への照射が最も着火性の高い領域において行われるようにレーザビームを送り出して、火炎領域内に燃焼器火炎を生成するように構成される光ビーム案内要素とを含む。
【0010】
本発明の他の実施形態は、内燃機関における燃料混合物の点火方法を対象としたものである。本方法は、少なくとも一つのレーザ光源を用いて少なくとも一つのレーザビームを生成し、少なくとも一つの光ビーム案内要素を介して前記少なくとも一つのレーザビームを送り出し、前記内燃機関の燃焼室内に供給された前記燃料混合物上に、最も着火性の高い領域において前記少なくとも一つのレーザビームを集束させ、集束したレーザビームで前記燃料混合物に点火して、火炎領域に燃焼器火炎を生成することを含む。
【0011】
前述したもの、ならびに他の利点及び特徴は、付属の図面に関連付けて提示される、本発明の実施形態についての下記の詳細な説明からより適切に理解されるであろう。
【0012】
前述したものを含め、本開示の他の態様、特徴、及び利点は、後述する詳細な説明を付属の図面と組み合わせて検討することでより明白になるであろう。図面は次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係るレーザ点火装置を含むガスタービンの模式図である。
【図2】一実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図3】一実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図4】一実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図5】一実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図6】一実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図7】一実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図8】他の実施形態に係るレーザ点火装置のグラフ表現である。
【図9】他の実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図10】他の実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図11】他の実施形態に係るレーザ点火装置の模式図である。
【図12】実施形態に係るレーザ点火装置のために最適化されたパルス形状を示すグラフ図である。
【図13】実施形態に係るレーザ点火装置の向上したエネルギ伝達のために最適化されたパルス列のグラフ図である。
【図14】実施形態に係るレーザ点火装置のために最適化された空間パルス形状のグラフ図である。
【図15】実施形態に係るレーザ点火装置のために最適化されたレーザビームのグラフ図である。
【図16】実施形態に係るレーザ点火装置のために最適化されたレーザビームのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、付属の図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。下記の説明では、不必要な細部の中で本開示が不明瞭になることを避けるため、周知の機能や構造については詳述しない。
【0015】
図1に、本発明の一実施形態に係る向上したレーザ点火装置10の模式図を示す。本発明の各実施形態において、レーザ点火装置10は、レーザビームを生成して誘導し、チャンバの中、例えば、ガスタービンエンジン201などの内燃機関200の燃焼室202の中などに集束させて、その内部の含酸素燃料混合物などの可燃性媒体に点火するように構成される。また、レーザ点火装置は、燃焼室202内の点火及び火炎生成を検出して、局部的混合物組成、火炎の伝播、及び放射を診断する放射診断を提供するように構成される。本明細書において、「内燃機関」という表現は、連続的燃焼を伴うエンジンと、間欠的燃焼を伴うエンジンとを包含する。内燃機関200の非限定的な例としては、往復機関、ガスタービンエンジン、ジェットエンジン、ディーゼルエンジン、及びロータリエンジンが挙げられる。
【0016】
図1に示すように、レーザ点火装置10は、レーザビーム14を生成するように構成される少なくとも一つのレーザ光源12と、前記少なくとも一つのレーザ光源12と光通信する光ビーム案内要素16とを含み、この光ビーム案内要素16は、(i)少なくとも一つのレーザ光源12からレーザビーム14を案内して内燃機関200の燃焼室202内に集束させて向上した点火を提供すると共に、(ii)生成された火炎からの放射を火炎診断のために送り出すという二重の目的を果たすように構成される。また、レーザ点火装置10は、少なくとも一つのレーザ光源12に連結されて、その少なくとも一つのレーザ光源12からのレーザビーム14の生成を制御する点火制御装置18と、送出された燃焼器火炎の放射を検出して、レーザビーム14に関連する燃焼パラメータを制御する火炎センサ付き制御診断部20とを含む。
【0017】
図示した構成において、点火制御装置18は、少なくとも一つのレーザ光源12から独立している。これに代えて、点火制御装置18は、少なくとも一つのレーザ光源12と一体であってもよい。また、本開示は、本発明の処理作業を実行するいずれか特定の制御装置に限定されるものではないことに留意されたい。本明細書において用いられる「制御装置」の用語は、本発明の作業を実行するために必要な計算、又は演算を実行できる各種のマシンを意味することが意図される。この「制御装置」の用語は、当業者に理解されるとおり、体系化された入力を受け入れ、所定の規則に従ってその入力を処理して出力を生成できる各種のマシンを意味することが意図される。また、点火制御装置18は、少なくとも一つのレーザ光源12に電力を供給する。
【0018】
一部の用途において、点火制御装置18は、パイロットからの点火要求を受け取れることに加え、又はこれに代えて、クランク角、速度、エンジン動作温度、加速位置、排気品質、及び測定された燃料変化量などのエンジン動作パラメータに基づいて駆動可能である。従って、いくつかの例において、この分野において周知の光検出器(図示せず)など、一つ以上の検出ユニットを設けて、内燃機関200の動作パラメータを検出できると共に、対応する情報を点火制御装置18に中継して、レーザビーム14の生成と集束の少なくともいずれかを制御する。
【0019】
非限定的な一例において、点火制御装置18は、レーザ制御回路及び点火タイミング制御回路の少なくともいずれかを含む。この分野において知られているように、レーザ制御回路は、レーザ発振を点火タイミングに同期させ得る。点火タイミング制御回路は、制御回路を含み、この制御回路は、検出したエンジン動作状態に基づいて点火タイミングを算出する点火タイミング算出回路を含む。このような制御ユニットの例の更なる説明については、「Laser ignition apparatus for an internal combustion engine(内燃機関のレーザ点火装置)」という名称の米国特許第4,416,226号を参照することができ、本願と同一の譲渡人に譲渡されたこの米国特許を、本願明細書の一部として援用する。特定の用途において、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)は、点火制御装置18として、又は点火制御装置18と組み合わせて利用される。
【0020】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのレーザ光源12は、内燃機関200の燃焼室202内に集束して、その内部の燃料や、燃料空気混合物や、予め混合された混合物などの可燃性媒体に点火できる十分なエネルギを放射できるものであれば、この分野で知られている任意のレーザ装置であってよい。少なくとも一つのレーザ光源12の例としては、特に限定するものではないが、ネオジウムタイプのレーザや、エルビウムタイプのレーザや、他の個体レーザや、半導体レーザなどの他の適切なレーザが挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、レーザ点火過程は、少なくとも3つの点火メカニズムのうちのいずれか一つ、又はその任意の組み合わせによって生じ得るもので、この3つの点火メカニズムは、特に限定するものではないが、光化学的点火、熱点火、レーザ誘起火花点火を含む。光化学的点火では、レーザ光子が、燃料又は燃料空気混合物内の標的分子を高反応性ラジカル種に分離する。そして、これらのラジカルが、高速の化学的連鎖反応、すなわち燃焼を開始する。この分野において知られるとおり、光化学的点火は、分離を実現するために、レーザ励起波長と標的分子の吸収波長とがほぼ一致していることを必要とする。
【0022】
熱点火は、レーザを利用して、標的分子の平行移動形式、回転形式、又は振動形式の運動エネルギを増大させる。この結果、分子結合が崩壊して、連鎖反応が生じ得る。このメカニズムは、固相、液相、及び気相が組み合わされた可燃性物質の点火に利用することができる。この技法での原料の加熱は、赤外レーザを用いて実行される。
【0023】
レーザ誘起火花点火では、レーザビームが集束して、プラズマ核、すなわち火花を生成する。このような火花は、周囲の媒体に光、熱、及び衝撃波を放射して、燃焼を開始するためのエネルギを供給する。レーザ誘起火花点火は、主として熱化学過程を構成することができ、この熱化学過程では、レーザ火花と衝撃波の両方から生成された熱が点火に利用される。
【0024】
図1に示すように、光ビーム案内要素16は、内燃機関200に配置されて、燃焼室202と連通する。具体的には、光ビーム案内要素16は、燃焼室202の燃焼器壁面に配置され、光の窓(現在説明中)を含む。少なくとも一つのレーザ光源12からのレーザビーム14は、光ビーム案内要素16を通り抜け、光ビーム案内要素16内に収容された一つ以上のレンズやプリズムなど、一つ以上の光学部品17を用いて、レーザビーム14を集束させる、結像させる、又は変形することができる。本発明の例示的実施形態によれば、一つ以上の光学部品17は、レーザビーム14の集束及び方向制御の少なくともいずれかを行うために移動可能である。従って、少なくとも一つのレーザ光源12からのレーザビーム14は、光ビーム案内要素16によって燃焼室202内に誘導されて集束され、その内部の燃料及び燃料空気混合物に点火する。
【0025】
図1のレーザ点火装置10は、燃焼器バーナ火炎から空間発光、一時発光、及びスペクトル発光の少なくともいずれかを選択的に検出することによって、内燃機関200の燃焼室202内で、燃焼パラメータを測定する手段を更に含む。具体的には、火炎センサ付き制御診断要素20が、光ビーム案内要素16から送出された光放射に応答して、一つ以上の燃焼パラメータを制御するように動作する。本発明の実施形態によれば、測定された燃焼パラメータは、この後、特に限定するものではないが、亜酸化窒素排出、動圧力振動、及び燃料効率を最適化するための燃料流量、燃料空気比、及び燃料の流れ分布を含む、内燃機関200の各種パラメータや、空気/燃料比や、燃焼火炎振動や、燃焼火炎消失や、熱発生率や、火炎温度の制御に利用することができる。
【0026】
本発明の例示的実施形態によれば、内燃機関200内の一つ以上の火炎からのケミルミネッセンス放射は、火炎センサ付き制御診断部20の一部として形成される一つ以上の光検出器を用いて監視される。光ビーム案内要素16を介して受け取った光エネルギ放射をスペクトルフィルタにかけて、OH*、CH*、C2*、及びCO2*などの特定の励起状態種からの、光放射全体に対する部分寄与度を特定する。これら測定された信号の比は、燃料空気比、熱発生率、及び温度に関連付けることができる。例示的実施形態によれば、光検出器からの時間分解出力を分析して、燃焼に関連のある非定常現象を明らかにすると共に、この時間分解出力を利用して、燃焼−音響振動(燃焼力学)、初期火炎吹き出し、及び火炎消失を示すことができる。また、出力信号は、閉ループ燃焼制御システム(現在説明中)において利用されるフィードバックとして用いられる。本発明の実施形態に係る、燃焼制御用途に対応した各種センサの光学部品及び構成について、付属の図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示すレーザ点火装置10は、本発明の例示的実施形態に係る、内燃機関200の燃焼室202に関連のある燃焼パラメータを制御する火炎センサ付き制御診断部20を含む。図示した構成において、火炎センサ付き制御診断部20は、燃焼室202に隣接して配置又は取り付けることができ、(図に示すように)点火制御装置18とは別に形成され得る。これに代えて、火炎センサ付き制御診断部20は、点火制御装置18と少なくとも一つのレーザ光源12の両方、又はそのいずれかと一体化されてもよい。火炎センサ付き制御診断部20は、燃焼室202の火炎領域24の近くで、燃焼室202内の火炎22からの光放射を選択的に検出する。火炎22の少なくとも一部からの光放射は、光ビーム案内要素16を通り抜け、その光放射は、一つ以上の光学部品17を用いて集束させる、結像させる、又は変形することができる。本発明の例示的実施形態によれば、既に説明したように、一つ以上の光学部品17は、移動可能であり、光学系の視野を変えることができる。
【0028】
本発明の例示的実施形態に従って、引き続き図1を参照して説明すると、火炎センサ付き制御診断部20は、対象とする波長スペクトル窓内で応答するように選択される少なくとも一つの光検出器26を更に含む。例えば、炭化ケイ素(SiC)光検出器は、波長スペクトルの紫外部に感度を有することから選択可能であり、また、その感度故に、300nmの波長範囲内の励起状態のOH*ラジカルからの放射を検出するのに適したものになり得る。このOH*放射は、化学反応強度(放熱)の主要指標であり得るため、300nm領域内の波長を利用して、気体温度を特定する。他の実施形態によれば、シリコン(Si)光検出器を利用して、CH*(約430nm)及びC2*(約514nm)を含む、400〜1000nmスペクトルの化学種からの放射を監視する。これらの火炎ラジカルは、予混合火炎の放熱と局部的燃料空気比とに比例することが判明している。例示的実施形態によれば、火炎センサ付き制御診断部20内の関連する検出器電子部品は、少なくとも一つの光検出器26からの信号を調整、増幅、フィルタリング、及び処理するように動作する。検出器電子部品は、光学部品17を含む光ビーム案内要素16内の光学構成要素の位置決めの制御も提供する。検出器電子部品からの出力信号は、火炎センサ付き制御診断部20及び点火制御装置16の制御信号として利用される。例えば、本発明の一実施形態によれば、測定されたCH対OHのケミルミネッセンス比(CH*/OH*)は、火炎センサ付き制御診断部20におけるフィードバックとして利用することができ、燃料/空気比を動的に調整する制御を提供できる。このような燃焼制御診断の更なる説明については、「Optical Sensors for Cumbustion Control(燃焼制御のための光学センサ)」という名称の同時継続中の米国特許出願第12/484,447号(ドケット番号234852−1)を参照されたい。この米国特許出願は、本願と同じ譲渡人に譲渡されたものであり、本願明細書の一部として援用する。
【0029】
次に、図2〜図5を参照すると、模式図に、各種実施形態に係るレーザ点火装置が示されている。説明を簡単にするため、同一の参照番号を用いて、各図における同様の要素を示す。図2〜図5に記載した構成は、単なる例示であることに留意されたい。図2〜図5に示すレーザ点火装置30及び34は、いずれも図1を参照して説明したレーザ点火装置10とほぼ同様の構成であるが、燃焼室側面壁に形成されて、レーザビーム14を通過させる開口を有する。この開口は、2つの実施形態における異なる光集束方式を例示するために、燃焼器壁面上の異なる場所に配置されている。
【0030】
図示した実施形態において、内燃機関200(図1)には複数の燃料ノズル28が設けられているが、図にはそのうちの一つのみが記載されている。燃料ノズル28は、燃焼室202内に、可燃性媒体すなわち燃料混合物31の噴霧と共に、レーザビーム14の点火位置を示して記載されている。図示したレーザ構成において、ノズル28は、レーザ光源12と光学的に整列するように構成されており、放射されたレーザビーム14を受け取る。図1に関して既に説明したように、光ビーム案内要素16は、燃焼室202の外側ライナ204の近くに構成される。
【0031】
向上した点火を提供するため、レーザビーム14は、燃焼室202内に供給された含酸素燃料混合物、すなわち可燃性媒体31に照射され、レーザ火花32によって、着火性33の最も高い領域において火炎領域内に燃焼器火炎を生成するように送出される。図2及び図4に明瞭に示されるように、レーザビーム14は、通常の動作状態において着火性33の最も高い領域に対応する場所にレーザ火花32を生成するように、光ビーム案内要素16によって誘導される。悪天候状態などの危険なエンジン動作状態中は、図3及び図5に最もよく示されるように、レーザビーム14は、ノズル28の先端部により近い、着火性33の最も高い領域内にレーザ火花32を生成するように、光ビーム案内要素16によって誘導される。レーザビーム14がノズル28の近くにレーザ火花32を生成するように誘導された場合、レーザビーム14は、燃料の霧化を補助して含酸素燃料混合物31を前期イオン化し、火炎の安定性を改善すると共に、火炎吹き消え事象を防止する。レーザ火花32の位置は、異なる燃料装荷モードに応じて変化してよい。
【0032】
非限定的な一例において、光ビーム案内要素16内に収容された光学部品17は、動作中、レーザビーム14が燃焼室202内に進入して、ノズル28から噴霧された含酸素燃料混合物31に、着火性33の高い所望の場所で着火するように、ノズル28に向けてレーザビーム14を集束及び伝播させる。光ビーム案内要素16内に収容された光学部品17は、回折部品、移動プリズム、移動ミラー、光音響スイッチ、及び偏光ベースの光学部品のうちの少なくともいずれかを含む。具体的には、光ビーム案内要素は、燃焼室202内の着火性33の最も高い領域において可燃性媒体31に着火するようにレーザビーム14を中継するのに適する、高効率で集束性に優れた従来のレンズ、又は任意のレンズを含む。
【0033】
前述したように、危険な動作状態中、レーザ火花32は、着火性33の最も高い領域に誘導される。図4に記載した例示的実施形態において、着火性33の最も高い領域は、燃焼室内部の再循環区域41の近くに示されている。より詳細には、着火性33の最も高い領域は、再循環区域41の輪郭部におけるせん断層42に近接した、燃料ノズル28の先端部付近である。レーザ火花32の大きさは、ノズル28の先端部の出口断面の面積と同程度で、噴射された燃料の容積にほぼ匹敵する。レーザ火花32のエネルギ密度が高いため、パイロット燃料は、噴射位置の近くで実質的に加熱される。また、レーザ火花32は、ノズル28の先端部の近くで混合物を分解して、放射状に伝播する衝撃波を発生させる。図2〜図5の実施形態において、着火性33の最も高い領域にレーザ火花32を集めることによって、燃料の粘度が低下し、燃料気化量が増え、燃料の霧化が、予熱、及び衝撃波との相互作用の両方によって支援され、更に、燃料空気混合物が、レーザ火花32によって局部的に前期イオン化されて、高反応性ラジカルとイオンとが放出される。全体的な効果として、混合及び火炎安定度が向上するため、吹き消え事象を防止することができる。
【0034】
次に、図6及び図7を参照すると、模式図に、実施形態に係るレーザ点火装置が示されている。図6及び図7に記載した構成は、単なる例示であることに留意されたい。図6及び図7に記載したレーザ点火装置40及び45は、いずれも図1を参照して説明したレーザ点火装置10とほぼ同様の構成であるが、ポンプ光によって改善された点火部を有する。
【0035】
図示した実施形態において、内燃機関200(図1)には、複数の燃料ノズル28が設けられているが、図にはそのうちの一つのみが示されている。燃料ノズル28は、燃焼室202内に、可燃性媒体31の噴霧と共に、レーザビーム14の点火位置を示して記載されている。図示したレーザ構成において、ノズル28は、レーザ光源12と光学的に整列するように構成されて、放射されたレーザビーム14を受け取ることができる。図1に関して既に説明したように、光ビーム案内要素16は、燃焼室202の外側ライナ204に近接して構成される。
【0036】
図6のレーザ点火装置35において、レーザ光源12は、レーザダイオードポンプ光源13である。動作中、ポンプ光源13の放射光(近赤外ポンプレーザ光)36の一部は、熱として消失されずにレーザ空洞37から取り出され、燃焼室202内に案内されて点火を支援する。この放射光36を燃焼室202内に案内することによって、レーザ点火装置35のレーザ部分に必要とされる冷却要件が緩和される。
【0037】
図7に記載したレーザ点火装置38において、レーザ光源12は、フラッシュランプ型ポンプ光源15である。動作中、ポンプ光源15の放射光(最大400nmの波長の光)39の一部は、熱として消失されずにレーザ空洞37から取り出され、燃焼室202内に案内されて点火を支援する。この放射光39を燃焼室202内に案内することによって、レーザ点火装置39のレーザ部分に必要とされる冷却要件が緩和される。
【0038】
次に、図8〜図11を参照すると、一体に組み込まれる燃焼診断装置を備える、最適化されたレーザ点火装置の実施形態が示されている。より具体的に見ると、図8には、一実施形態に係るレーザ点火装置40の模式図が記載されている。図8の構成は単なる例示であることに留意されたい。レーザ点火装置40は、図1を参照して説明したレーザ点火装置10とほぼ同様に構成される。図示した実施形態において、内燃機関200内の複数のノズル、又は燃焼器カップ30は、燃焼室202内に、可燃性媒体の噴霧と共に、レーザビーム14の点火位置を示して記載さている。図示した多重レーザ構成において、複数のノズル30は、それぞれレーザ光源12と光学的に整列するように構成されて、放射されたレーザビーム14を受け取ることができる。図1に関して既に説明したように、光ビーム案内要素16は、燃焼室202の外側ライナ204の近くに構成される。図8に記載したような内側ライナ206が、燃焼室202を更に画定している。
【0039】
この例示的実施形態において、レーザ点火装置40は、点火制御装置18と、火炎センサ付き制御診断部20とを更に含む。図示した構成において、点火制御装置18及び火炎センサ付き制御診断部20は、燃焼室202に近接して配置又は取り付けられて、少なくとも一つのレーザ光源12に連結される単一の一体型構成要素として形成することができる。これに代えて、点火制御装置18及び火炎センサ付き制御診断部20は、独立した構成要素として形成されてもよい。また、更に他の代替実施形態において、点火制御装置18及び火炎センサ付き制御診断部20は、少なくとも一つのレーザ光源12と一体に形成されてもよい。
【0040】
図8に示すように、内燃機関200、より具体的には外側ライナ204に、複数の開口部(参照番号なし)が画定される。複数の各光ビーム案内要素16は、ハウジング19と必須光学部品17とを含む。各ハウジング19は、その一方の端部が複数の開口部のうちの一つに収容されるため、各ハウジング19は、内燃機関200に保持された状態で、燃焼室202と連通している。特定の用途において、各光ビーム案内要素16は、2つ以上のレンズ、2つ以上のプリズム、回折光学部品、光音響スイッチ、及び他の光学部品のうちの少なくともいずれかを含む。ハウジング19は、必須光学部品17を保持するのに適した任意の形状であってよい。
【0041】
非限定的な一例において、各光ビーム案内要素16内に収容された光学部品は、動作中、レーザビーム14が燃焼室202内に進入して、ノズル30から噴霧される可燃性媒体に所望の位置で着火するように、それぞれのノズル30に向けてレーザビーム14を集束及び伝播させる。一部の構成において、光ビーム案内要素16内に収容された光学部品17は、レーザビーム14を中継して、燃焼室202内の点火位置において可燃性媒体に着火するのに適する、効率が高く集束性に優れた従来のレンズや任意のレンズを含む。各光ビーム案内要素16は、火炎22からの光放射を受け取る光学部品17を含み、火炎センサ付き制御診断部20による後の検出を行うように更に構成される。
【0042】
動作中、火炎22の少なくとも一部からの光放射は、各光ビーム案内要素16を通り抜け、その光放射は、一つ以上の光学部品17を用いて、各火炎センサ付き制御診断要素20内に収容された少なくとも一つの光検出器27上に集束させる、結像させる、又は変形することができる。図8の多重レーザ構成は、個別に制御可能なレーザ放射を提供すると共に、各燃焼器バーナ火炎24からの空間発光、一時発光、及びスペクトル発光のうちの少なくともいずれかを選択的に検出することによって、個別のレーザビーム14ごとに燃焼パラメータを測定する手段を提供する。本発明の実施形態によれば、測定された燃焼パラメータを更に利用して、内燃機関200の各種のパラメータ、特に限定するものではないが、個別のノズル30それぞれの燃料流量、燃料空気比、及び燃料の流れ分布を含む各種パラメータを制御し、亜酸化窒素排出、動圧力振動、及び燃料効率を最適化することができる。
【0043】
図9は、他の実施形態に係るレーザ点火装置45の模式図である。図9の構成は単なる例示であることに留意されたい。レーザ点火装置45は、図8を参照して説明したレーザ点火装置40とほぼ同様であるが、本例示的実施形態では、ノズル30のうちの一部のみが、それぞれのレーザ光源12からレーザビーム14を受け取るように連結される。具体的には、図9に記載した多重レーザ構成において、複数のノズル30のうちの一部である、アクティブノズルとも呼ばれる各ノズル30は、光ビーム案内要素16、レーザ光源、及び火炎センサ付き制御診断部20と光学的に整列するように構成される。各アクティブノズル30は、それぞれ対応する光ビーム案内要素16から放射されたレーザビーム14を受け取る。また、各光ビーム案内要素16は、火炎センサ付き制御診断部20による後の検出のために、各火炎22からの光放射を受け取って伝播させる光学部品17を含んで構成される。
【0044】
図10は、本発明の更に他の実施形態に係るレーザ点火装置50の模式図である。図10に記載した構成は単なる例示であることに留意されたい。このレーザ点火装置50は、図8を参照して説明したレーザ点火装置40とほぼ同様に構成されるが、本例示的実施形態において、点火制御装置18及び火炎センサ付き制御診断要素20には複数のノズル30が連結される。具体的には、図10の多重レーザ構成において、各ノズル30は、光ビーム案内要素16及びレーザ光源12と光学的に整列するように構成される。前の実施形態とは対照的に、単一の火炎センサ付き制御診断要素20に複数のノズル30が連結される。各ノズル30は、それぞれ対応するレーザ光源12から個別の光ビーム案内要素16を通って放射されたレーザビーム14を受け取る。また、各光ビーム案内要素16は、電源ケーブル52を介して火炎センサ付き制御診断要素20によって行われる後の検出のために、個別の火炎22からの光放射を受け取って伝播させる光学部品17を含んで構成される。
【0045】
動作において、各光ビーム案内要素16は、光学部品17を含んで構成され、この光学部品17は、連結されているノズル30に向かってレーザビーム14を伝播及び集束させると共に、連結されている火炎センサ付き制御診断要素20による後の検出のために、火炎22からの光放射を受け取る。具体的には、動作の診断段階において、火炎22の少なくとも一部からの光放射は、連結された光ビーム案内要素16を通り抜け、その光放射は、一つ以上の光学部品17を用いて、各点火制御装置18に収容された少なくとも一つの光検出器27上及び火炎センサ付き制御診断要素20上に集束させる、結像させる、又は変形することができる。図10に記載した多重レーザ構成は、個別に制御可能なレーザ放射を提供すると共に、各燃焼器バーナ火炎22からの空間発光、一時発光、及びスペクトル発光のうちの少なくともいずれかを選択的に検出することによって、個別のレーザビーム14ごとに燃焼パラメータを測定する手段を提供する。本発明の実施形態によれば、測定された燃焼パラメータを更に利用して、内燃機関200の各種のパラメータ、特に限定するものではないが、個別のノズル30それぞれの燃料流量、燃料空気比、及び燃料の流れ分布を含む各種パラメータを制御し、亜酸化窒素排出、動圧力振動、及び燃料効率を最適化することができる。
【0046】
図11は、本発明の更に他の実施形態に係るレーザ点火装置55の模式図である。図11に記載した構成は単なる例示であることに留意されたい。このレーザ点火装置55は、図8を参照して説明したレーザ点火装置40とほぼ同様に構成されるが、本例示的実施形態において、ノズル30は、単一の点火制御装置18及び単一の火炎センサ付き制御診断要素20に連結される。具体的には、図11の多重レーザ構成において、各ノズル30は、それぞれ対応する光ビーム案内要素16と光学的に整列するように構成される。前の実施形態とは対照的に、単一のレーザ光源12が、各光ビーム案内要素16に連結されて、そのそれぞれが対応する各ノズル30にレーザビーム14を放射するように構成される。また、ノズル30は、単一の火炎センサ付き制御診断要素20に連結される。図示した構成において、火炎センサ付き制御診断要素20は、点火制御装置18と一体に収容される(図示した状態)。これに代えて、火炎センサ付き制御診断要素20は、燃焼室202に隣接して配置又は取り付けられて、点火制御装置18とは別に形成されてもよい。各ノズル30は、少なくとも一つのレーザ光源12からビーム分散ユニット56を介して放射されたレーザ光を、それぞれ対応する光ビーム案内要素16から受け取る。また、各光ビーム案内要素16は、電源ケーブル52を介して火炎センサ付き制御診断要素20によって行われる後の検出のために、個々の火炎22からの光放射を受け取って伝播させる光学部品17を含んで構成される。
【0047】
動作において、各光ビーム案内要素16は、光学部品17を含んで構成され、この光学部品17は、連結されているノズル30に向かってレーザビーム14を伝播及び集束させると共に、連結されている火炎センサ付き制御診断要素20による後の検出のために、火炎22からの光放射を受け取る。具体的には、動作の診断段階において、火炎22の少なくとも一部からの光放射は、連結された光ビーム案内要素16を通り抜け、この光放射は、一つ以上の光学部品17を用いて、点火制御装置18に収容された少なくとも一つの光検出器27上、及び火炎センサ付き制御診断要素20上に集束させる、結像させる、又は変形することができる。図11に記載した多重レーザ構成は、個別に制御可能なレーザ放射を提供すると共に、各燃焼器バーナ火炎22からの空間発光、一時発光、及びスペクトル発光のうちの少なくともいずれかを選択的に検出することによって、個別のレーザビーム14ごとに燃焼パラメータを測定する手段を提供する。本発明の実施形態によれば、測定された燃焼パラメータを更に利用して、内燃機関200の各種のパラメータ、特に限定するものではないが、個別のノズル30それぞれの燃料流量、燃料空気比、及び燃料の流れ分布を含む各種パラメータを制御し、亜酸化窒素排出、動圧力振動、及び燃料効率を最適化することができる。
【0048】
一般的なレーザシステムにおいて、レーザ出力は、調整されておらず、図2〜図11の上記のレーザ点火装置に開示したような点火用途に対して最適化されたものではない。エンジンなどの内燃機関200のためのより強力で効果的かつ融通の利く点火装置を開発する試みでは、時間と空間の両方の領域におけるレーザパルス形状、少なくとも一つのレーザ光源12によって生成される一連のパルス、及びレーザビーム14のパルスのエネルギ含量を含め、レーザパルス調節に対処しなければならない。このようなレーザ調節を表すグラフ図を示した図12〜図16を参照して、より具体的に説明する。
【0049】
ここで、図12を参照すると、時間62に対するレーザパルス強度61によって表されるグラフ図60に、レーザ点火源、より具体的には、装置10(図1)などのレーザ点火装置の実施形態に係るレーザビーム14にとっての最適なパルス形状(時間領域)が記載されている。この例示的実施形態において、図示したようなレーザビーム14にとっての最適な時間プロファイルを有するレーザ点火器は、短い高強度ピークを有する初期火花63を生成し、その後で、パルスの長い低強度テイル64によって火炎核を加熱することによって向上した着火性を提供するように最適化される。
【0050】
次に、図13を参照すると、時間62に対するレーザパルス強度61によって表されるグラフ図65に、装置10(図1)などのレーザ点火装置の実施形態に係る、レーザビーム14のための火花66の最適なパルス列が記載されている。火花66の期間68を延長して火花66、ひいては火炎核へのエネルギ伝達を向上させる試みにおいて、燃焼室202内の点火のための火花66のパルス列は、図示したように最適化される。この例示的実施形態において、延長された火花期間68は、火花66及び対応する火炎核へのエネルギ伝達を向上させる。
【0051】
次に、図14を参照すると、装置10(図1)などのレーザ点火装置の実施形態に係るグラフ図70に、レーザパルス強度71及び73によって表される空間レーザビームプロファイル(ドーナツ形状)72が記載されている。通常、高出力レーザのレーザビームプロファイルは、ピーク強度が、レーザビーム14などのレーザビームの中央に位置することを意味するGuassian状である。レーザ点火を最適化するために、空間レーザビームプロファイル72のようなドーナツ状のプロファイルは、レーザエネルギに晒される気体のリングによって囲まれた中心容積74内に燃料混合物の一部を閉じ込めることによって、着火性を向上させる。各レーザパルスにおいてリング内の気体が分解されて、火炎22(図1)などの火花を生成する。対応する衝撃波は、正と負の両方向に放射状に伝播して中心容積74内に閉じ込められた気体を圧縮することで、分解作用を活性化し、より強力なプラズマを生成する。従って、空間レーザビームのドーナツ状プロファイル72を生成する、供給部12(図1)などのレーザ光源は、最適な点火用途を提供する。
【0052】
次に、図15を参照すると、時間77に対するレーザパルス強度76、及び時間77に対する火炎核放射率78によって表されるグラフ図75に、装置10(図1)などのレーザ点火装置の実施形態に係る、閉ループ点火制御を含む、可変レーザパルスエネルギ80が記載されている。例示的実施形態では、レーザ点火を最適化する試みにおいて、閉ループシステムは、火炎核放射率78を測定して、信頼できる点火のためのエネルギ需要を最小化するように、少なくとも一つのレーザ光源12(図1)からのレーザパルスエネルギを適合させる。図15に示されるように、動作中、検出器26(図1)及び火炎センサ付き制御診断部20(図1)は、火炎核放射率78を検出及び監視して、その放射率78が閾値82を満たしているかどうかを判定する。図15に、検出した火炎核放射率78が閾値82に達していなかった失敗事象83と、検出した火炎核放射率78が正常に閾値82に到達していた成功事象84とを示す。レーザ点火、より具体的には火炎核放射率を最適化することで、レーザ出力及びレーザ冷却についての要件を低減できることに加え、メンテナンス期間を短縮し、最終的には点火装置の寿命を延ばすことができる。また、このことは、点火制御装置18(図1)、火炎センサ付き制御診断部20(図1)、及びパワーエレクトロニクスの小型化にもつながる。
【0053】
また、図16に最も明瞭に図示するように、時間77に対するレーザパルス強度76、及び時間77に対する火炎放射率86によって表されるグラフ図85に、装置10(図1)などのレーザ点火装置の実施形態に係る、閉ループ点火制御を含む、可変レーザパルスエネルギ80が記載されている。図15に関連して説明したように火炎核放射率78を測定することに加え、閉ループシステムは、火炎放射率86も測定し、火炎の足を(例えば、荒れ模様の天候状態の間)持続させるエネルギ需要を最小限に抑えるように、少なくとも一つのレーザ光源12(図1)からのレーザパルスエネルギを適合させることができる。図16に示すように、動作中、検出器26(図1)及び火炎センサ付き制御診断部20(図1)は、火炎放射率86を検出及び監視し、その放射率86が閾値87を維持しているかどうかを判定する。図16に、検出した火炎放射率88が安定して、閾値87を維持する火炎安定状態88、及び検出した火炎放射率86が安定せず、閾値87を維持できない火炎不安定状態89を示す。レーザ点火、より具体的には火炎放射率を最適化することで、レーザ出力及びレーザ冷却についての要件を低減できることに加え、メンテナンス期間を短縮し、最終的には点火装置の寿命を延ばすことができる。また、このことは、点火制御装置18(図1)、火炎センサ付き制御診断部20(図1)、及びパワーエレクトロニクスの小型化にもつながる。
【0054】
従って、記載したのは、内燃機関、具体的にはガスタービンエンジンのためのレーザ点火装置及びレーザ点火方法であり、特に、光ビーム案内要素を利用して、着火性の最も高いポイントにおけるレーザ点火、及び燃焼診断の両方に対応した二重の機能を実行するものである。また、開示したレーザ点火装置において、レーザビームの最適化が提供される。開示した統合システムは、より低いNO*排出、信頼性と着火性の向上、即時再点火能力という形での燃え上がり応答時間の短縮、及び非常に偏った状態における燃焼制御の改善と、その結果の火炎安定性を提供することができる。
【0055】
本開示について、典型的な実施形態において例示及び説明したが、提示した細部に限定されることを意図するものではなく、本開示の精神から逸脱することなく各種の変更及び置き換えを行うことができる。従って、本明細書に開示した本開示の更なる変形物及び等価物は、通常の範囲の実験を利用して当業者が想当し得るものであり、このようなすべての変形物及び等価物は、付属の請求項に定義される本開示の精神及び範囲に入るものと確信する。
【符号の説明】
【0056】
10 レーザ点火装置
12 レーザ光源
13 レーザダイオードポンプ光源
14 レーザビーム
15 フラッシュランプ型ポンプ光源
16 光ビーム案内要素
17 レンズ
18 点火制御装置
19 光学要素のハウジング
20 火炎センサ付き制御診断部
22 火炎
24 火炎領域
26 少なくとも一つの光検出器
28 ノズル又は燃焼器カップ
30 レーザ点火装置
31 可燃性媒体
32 レーザ火花
33 着火性の最も高い領域
34 レーザ点火装置
35 レーザ点火装置
36 放射光(近赤外ポンプレーザ光)
37 レーザ空洞
38 レーザ点火装置
39 放射光(紫外線ポンプレーザ光)
40 レーザ点火装置
41 再循環区域
42 せん断層
50 レーザ点火装置
55 レーザ点火装置
56 ビーム分散ユニット
60 グラフ図
61 レーザパルス強度
62 時間
63 初期火花
64 長い低強度テイル
65 グラフ図
66 火花
68 期間
70 グラフ図
71 レーザパルス強度
72 空間レーザビームプロファイル(ドーナツ形状)
73 レーザパルス強度
74 低強度火花テイル
75 グラフ図
76 レーザパルス強度
77 時間
78 火炎核放射率
80 可変レーザパルスエネルギ
82 閾値
83 失敗事象
84 成功事象
85 グラフ図
86 火炎放射率
87 閾値
88 火炎安定状態
89 火炎不安定状態
200 内燃機関
202 燃焼室
204 燃焼室の外側ライナ
206 燃焼室の内側ライナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(202)を備える内燃機関(200)のためのレーザ点火装置(10、30、34、35、38、50、55)であって、
レーザビーム(14)を生成するように構成される、少なくとも一つのレーザ光源(12)と、
前記燃焼室(202)に供給される含酸素燃料混合物(31)を、着火性(33)の最も高い領域において照射するように前記レーザビーム(14)を送出して、燃焼領域(24)内に燃焼器火炎(22)を生成するように構成される光ビーム案内要素(16)とを含む、レーザ点火装置。
【請求項2】
前記光ビーム案内要素(16)は、回折部品、プリズム、ミラー、光音響スイッチ、及び偏光ベースの光学部品のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項3】
前記着火性(33)の最も高い領域は、燃焼室(202)内部の再循環区域(41)の近くである、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項4】
前記レーザ光源(12)は、ポンプレーザ光源(13)を含み、放射されたポンプ光(36、39)の一部は、レーザ空洞(37)から取り出されて、燃焼室(202)内に誘導される、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項5】
前記光ビーム案内要素(16)は、燃焼器火炎(22)からの光放射を協働的に送出するように更に構成される、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つのレーザ光源(12)は、前記少なくとも一つのレーザビーム(14)の時間プロファイルを最適化して、短い高強度ピーク(63)を有する初期レーザパルス火花を生成し、続いて、生成された火炎核を、前記レーザパルス火花よりも長く低強度のテイル(64)によって加熱するように構成される、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つのレーザ光源(12)は、前記少なくとも一つのレーザビーム(14)のパルス列を最適化して、レーザパルス火花(63)の期間を延長し、レーザパルス火花(63)及び対応する火炎核(78)へのエネルギ伝達を改善するように構成される、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つのレーザ光源(12)は、前記少なくとも一つのレーザビーム(14)の空間パルス形状を最適化するように構成される、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項9】
前記内燃機関(200)はタービンエンジン(201)である、請求項1に記載のレーザ点火装置。
【請求項10】
内燃機関(200)内の燃料混合物の点火方法であって、
少なくとも一つのレーザ光源(12)を用いて少なくとも一つのレーザビーム(14)を生成し、
少なくとも一つの光ビーム案内要素(16)を介して、前記内燃機関(200)の燃焼室(202)内に供給された前記燃料混合物(31)に対して、着火性(33)の最も高い領域において前記少なくとも一つのレーザビーム(14)を集束させるように、前記少なくとも一つのレーザビーム(14)を送り出し、
前記集束されたレーザビーム(14)で前記燃料混合物(31)に点火して、火炎領域(24)内に燃焼器火炎(22)を生成すること、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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