説明

航空標識灯

【課題】主たる配光のみならず、従たる配光も全周にほぼ一様に得ることができる航空標識灯を提供することである。
【解決手段】
主たる配光を担う第1の光源14及び主たる配光以外の従たる配光を担う第2の光源15は、透光性カバー16を有した灯体11に設けられる。点灯回路17は、交流定電流電源から周囲の明るさに応じて段階的に変化する出力電流を入力し、第1の光源14を交流定電流電源からの電流値に応じて所定の光度比率で点灯させる。また、第2の光源15を第1の光源14の光度比率と異なる光度比率で点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光源としてLEDを用いた航空標識灯に関する。
【背景技術】
【0002】
航空標識灯には、航空機の操縦者に滑走路を認識させる滑走路灯や航空機の操縦者に空港の誘導路およびエプロンの縁を認識させる誘導路灯などがある。航空標識灯として、色調の異なる光を発生する2種類のLEDを光源とし、通常時は誘導路灯として一方の色調の光源を使用し、緊急時などにおいては、色調の異なる他方の光源を使用し、特に小型の航空機に対して滑走路灯として使用できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
航空標識灯は設置される場所や目的に応じて種々の機種が存在し、それぞれに配光パターン、要求される光度が規格化されており、その要求を満たす必要がある。例えば、滑走路灯は滑走路縁に設置され、離着陸する航空機に対して滑走路の輪郭を示すことを目的としていることから高光度が要求される。
【0004】
この滑走路灯の場合は、主たる配光である光柱曲線配光は、鉛直角0〜12°、水平角±10°で形成される楕円配光曲線で、主光柱内平均光度10,000cd以上と定められ、また、主たる配光以外の従たる配光である光柱曲線外配光は、鉛直角0〜15°、水平角全周50cd以上と定められている。滑走路灯では、このような全周の配光パターンが定められている。従たる配光を必要とするのは、滑走路外にある航空機のパイロットや、作業者が地上において滑走路灯を視認できるようにするためである。
【0005】
光源に電球を使用した滑走路灯は反射鏡により配光制御を行い、主たる配光を造り出している。そして、電球は角度による強度分布はあるがフィラメントから全方向に発光するので、主たる配光の漏れ光を従たる配光として利用できる。これにより、滑走路灯で要求されている全周の配光パターンを満たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−176943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光源にLEDを使用した場合、LEDは指向性が強いため主たる配光を造り出す配光制御は容易であるが、電球のように周囲に光が広がらないので、電球で行われているような漏れ光を利用し、滑走路灯で要求されている全周の配光パターンを満たすことは期待できない。すなわち、LEDの配光は指向性が優れているため、全周方向へ照射するのが困難である。具体的には、鉛直角0°〜15°の範囲に全周にわたり50cd以上とすることが困難である。
【0008】
本発明の目的は、主たる配光のみならず、従たる配光も全周にほぼ一様に得ることができる航空標識灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の実施形態の航空標識灯によれば、主たる配光を担う第1の光源及び主たる配光以外の従たる配光を担う第2の光源は、透光性カバーを有した灯体に設けられる。点灯回路は、交流定電流電源から周囲の明るさに応じて段階的に変化する出力電流を入力し、第1の光源を交流定電流電源からの電流値に応じて所定の光度比率で点灯させる。また、第2の光源を第1の光源の光度比率と異なる光度比率で点灯させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主たる配光のみならず、従たる配光も全周にほぼ一様に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る航空標識灯の一例の構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る航空標識灯における点灯回路17の一例を示す構成図。
【図3】ハロゲン電球およびLEDの光度比−相対電流値特性を示すグラフ。
【図4】本発明の実施形態に係る航空標識灯の他の一例の構成図。
【図5】本発明の実施形態に係る航空標識灯の別の他の一例の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る航空標識灯の一例の構成図である。図1では航空標識灯として地上形の滑走路灯を示している。灯体11は地上に配置された可折接手12にボルト13により固定されている。可折接手12は、図示省略の固定部材を介して地面に固定されており、灯体11に自動車や航空機等が接触したときに折れ曲がり、自動車や航空機等の接触部位の破損などを防止するものである。
【0013】
灯体11には、主たる配光を担う第1の光源14と、主たる配光以外の従たる配光を担う第2の光源15とが配置され、第1の光源14及び第2の光源15を覆って透光性カバー16が設けられている。
【0014】
第1の光源14及び第2の光源15はLEDで構成される。第1の光源14は主たる配光である光柱曲線配光を担うLEDであり、高出力タイプの狭い範囲を照射するLEDが用いられる。すなわち、鉛直角0〜12°、水平角±10°で形成される楕円配光曲線で、主光柱内平均光度10,000cd以上を満たすLEDが用いられる。
【0015】
これに対し、第2の光源15は、主たる配光以外の従たる配光である光柱曲線外配光を担うLEDであり、低出力タイプの広い範囲を照射するLEDが用いられる。すなわち、鉛直角0〜15°、水平角全周50cd以上を満たすLEDが用いられる。また、第2の光源15は第1の光源14より上部に配置される。これにより、従たる配光を担う第2の光源15は全面に遮蔽物がないため全周に渡る配光が可能となる。
【0016】
さらに、灯体11には第1の光源14及び第2の光源15を点灯する点灯回路17が設けられている。点灯回路は、図示省略の交流定電流電源から周囲の明るさに応じて段階的に変化する出力電流を入力し、第1の光源14については交流定電流電源からの電流値に応じて所定の光度比率で点灯させ、第2の光源15については第1の光源14の光度比率と異なる光度比率で点灯させる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る航空標識灯における点灯回路17の一例を示す構成図である。交流定電流電源(CCR)18は図示省略の複数の切換タップを有し、定電流化された複数段階の出力電流を切換タップで切り換えて出力するものであり、光度比率に応じて切換タップで出力電流の切り換えが可能に構成されている。この切換タップの段階に応じて出力電流が変わり、標識灯が所定の光度比率で作動するように制御される。例えば、交流定電流電源に出力電流の切換タップを配設して、光度比率を100%、25%、5%、1%および0.2%の5段階の中から所望により選択できるように構成されている。
【0018】
図3は、ハロゲン電球およびLEDの光度比−相対電流値特性を示すグラフである。横軸は相対電流値(%)を、縦軸は光度比(%)を、それぞれ示す。曲線Aはハロゲン電球の特性曲線、曲線BはLEDの特性曲線をそれぞれ示す。図3から分かるように、ハロゲン電球は相対電流値と光度比との関係すなわち光度比−相対電流値特性が指数関数的曲線になる。これに対して、LEDは光度比−相対電流値特性がほぼ直線すなわち正比例の関係になる。
【0019】
交流定電流電源18における切換タップは、その出力電流がハロゲン電球を備えた標識灯を付勢した際に所定の光度が得られるように設定されており、例えば表1の中欄に示すとおりである。これに対して、LEDの場合には、同一光度を得るために必要な電流は、図3に示す光度比−相対電流値特性から計算すると、表1の右欄に示すとおりである。表1の右欄の電流値は例として示すものである。
【0020】
光度比率は、通常、表1の中欄に示したハロゲン電球(白熱電球)の光度比−相対電流値特性に合わせられている。従って、所定の光度比率は切換タップの切り換えによる交流定電流電源18の出力電流で表される。
【表1】

【0021】
交流定電流電源18から供給される所定の光度比率に従った出力電流は、直列接続幹線ケーブル19のゴム被覆絶縁変圧器20を介して6.6Aの定電流電力が出力されるように分岐ケーブル21に供給され、絶縁カレントトランス22aを介してLED点灯用の交流定電流出力に変換されて点灯電源回路23に入力される。それとともに、絶縁カレントトランス22bを介して制御電源回路24に入力され、同様に、絶縁カレントトランス22cを介して入力電流検出回路25に入力される。
【0022】
点灯電源回路23は、絶縁カレントトランス22aを介して入力されたLED点灯用の交流定電流出力を整流及び平滑し、第1の光源14及び第2の光源15のLEDに供給される電流を一定に調整する。また、第1の光源14及び第2の光源15のLEDに印加される電圧を一定に調整するとともに、LEDの電圧が別の所定値以上となると、LEDに印加される電圧を零とし主回路の動作を停止させる安全回路として動作する。
【0023】
次に、制御電源回路24は、交流定電流電源18から供給される電流を絶縁カレントトランス22bを介して入力し、制御電源を生成するものである。制御電源回路24は、絶縁カレントトランス22bを介して供給される電流を整流及び平滑し、出力電圧が一定となるように調整して制御電源電圧Vccを得る。制御電源電圧Vccは点灯電源回路23、入力電流検出回路25、特性変換回路26、デューティ制御回路27a、27bに入力される。
【0024】
入力電流検出回路25は、交流定電流電源18から供給される電流を絶縁カレントトランス22cを介して入力し、交流定電流電源18からの出力電流を検出する。入力電流検出回路25で検出された交流定電流電源18からの出力電流は、特性変換回路26に入力される。交流定電流電源18からの出力電流は電球の光度比−相対電流値特性で変化するので、特性変換回路26では、図3または表1に基づいて、LEDの光度比−相対電流値特性による所定の光度となる電流に変換する。
【0025】
そして、デューティ制御回路27aは、第1光源14のLEDを流れる電流が特性変換回路26で変換された電流になるようにスイッチ素子Q1をデューティ制御(PWM制御)する。これにより、主たる配光を担う第1光源14を所定の光度比率に制御し、離陸または着陸するパイロットへの光を提供する。
【0026】
一方、デューティ制御回路27bは、従たる配光を担う第2の光源15のLEDを流れる電流が50cd以上となるようにスイッチ素子Q2をデューティ制御(PWM制御)する。例えば、従たる配光を担う第2の光源15のLEDとして、水平角全周50cdのLEDを使用している場合には、100%の光度比率で点灯させる。また、水平角全周100cdのLEDを使用している場合には、50%の光度比率で点灯させる。
【0027】
これは、従たる配光を担う第2の光源15を主たる配光を担う第1の光源14の光度比率と同じ光度比率で点灯させた場合には、特に、光度比率が0.2%のタップ1の場合には、従たる配光は50cdの0.2%(0.1cd)、あるいは100cdの0.2%(0.2cd)となり、従たる配光(水平角全周50cd以上)を得ることができなくなるからである。
【0028】
このように、従たる配光の第2の光源15は、主たる第1の光源14の光度比率(TAP5〜TAP1の光度比率)と異なる光度比率で点灯される。従たる配光を担う第2の光源15のLEDとして、水平角全周50cdのLEDを使用している場合には、デューティ制御する必要がなく、デューティ制御回路27bは不要となる。また、従たる配光を担う第2の光源15のLEDとして、水平角全周50cd以上のLEDを使用し、その一定の光度比率で第2の光源15のLEDを点灯させる場合にもデューティ制御回路27bは不要となる。なお、デューティ制御回路27bを設け、水平角全周50cd以上を確保した状態で第2の光源15の光度比率を段階的に切り替えるようにしてもよい。
【0029】
前述したように、従たる配光を担う第2の光源15は、低出力タイプで広い範囲を照射できるLEDを用いるが、従たる配光を担う第2の光源15として紫外線LED(UV−LED)を用い、従たる配光を担う第2の光源15からの光が透光性カバー16を透過する部分に蛍光体を塗布するようにしてもよい。この場合、主たる配光を担う第1の光源14からの光が透光性カバー16を透過する部分には、蛍光体を塗布しない。
【0030】
これにより、灯体の全周の配光パターンが定められている第2の光源15からの光は、蛍光体で拡散し、周囲にほぼ一様に光を放出させることができ、滑走路外にある航空機のパイロットや、作業者が地上において滑走路灯を視認できる。また、第1の光源14からの光は蛍光体を透過しないので、指向性の良い主たる配光の光柱曲線配光を実現できる。
【0031】
次に、本発明の実施形態に係る航空標識灯の他の一例を説明する。図4は本発明の実施形態に係る航空標識灯の他の一例の構成図である。この他の一例は、図1に示した一例に対し、透光性カバー16の頂部に突起部28を設け、第2の光源15を突起部28内に収納して配置するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0032】
第2の光源15は、透光性カバー16の頂部の突起部28内に収納されて配置されている。これにより、第2の光源15は突起部28により保護され、全面に遮蔽物がないため全周に渡る配光が可能となる。
【0033】
次に、本発明の実施形態に係る航空標識灯の別の他の一例を説明する。図5は本発明の実施形態に係る航空標識灯の別の他の一例の構成図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。この別の他の一例は、図1に示した一例に対し、第2の光源15を透光性カバー16の円周にわたり複数配置したものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0034】
複数の第2の光源15が透光性カバー16の内面に沿って、外部へ向けて全周にわたり配置されている。これにより、全周に渡る配光が可能となる。すなわち、複数の第2の光源15を外部へ向けて透光性カバー16の全周にわたり配置するので、全周に渡る配光制御が容易となる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、それぞれの配光の目的に応じた第1の光源14及び第2の光源15を設け、主たる配光を担う第1の光源14は、高出力タイプの狭い範囲を照射するLEDを用いるので、指向性が良く、鉛直角0〜12°、水平角±10°で形成される楕円配光曲線で、主光柱内平均光度10,000cd以上を満たす配光を容易に実現できる。また、従たる配光を担う第2の光源15は、低出力タイプの広い範囲を照射するLEDが用いられるので、鉛直角0〜15°、水平角全周50cd以上を満たし、全周に渡る配光を実現できる。
【0036】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
11…灯体、12…可折接手、13…ボルト、14…第1の光源、15…第2の光源、16…透光性カバー、17…点灯回路、18…交流定電流電源、19…直列接続幹線ケーブル、20…ゴム被覆絶縁変圧器、21…分岐ケーブル、22…絶縁カレントトランス、23…点灯電源回路、24…制御電源回路、25…入力電流検出回路、26…特性変換回路、27…デューティ制御回路、28…突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性カバーを有した灯体に設けられ、主たる配光を担う第1の光源と;
前記灯体に設けられ、前記主たる配光以外の従たる配光を担う第2の光源と;
交流定電流電源から周囲の明るさに応じて段階的に変化する出力電流を入力し、前記第1の光源は前記交流定電流電源からの電流値に応じて所定の光度比率で点灯させ、前記第2の光源は前記第1の光源の光度比率と異なる光度比率で点灯させる点灯回路と;
を具備したことを特徴とする航空標識灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37964(P2013−37964A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174496(P2011−174496)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】