説明

航空機の脱出経路標識

【課題】
【解決手段】
いくつかの要素に床面で設置される残光性フォトルミネセンス材料を有する航空機の脱出経路標識であって、少なくとも1つの要素が湾曲形状を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空機の脱出経路標識に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機内の脱出経路標識として、フォトルミネッセンスストリップを航空機の床面に配置することが知られており、これはまた非常用標識としても示されるものである。フォトルミネッセンスは、時として、残光および/またはリン光としても示される。安全要件は、たとえばドイツ工業標準規格DIN 67 510に特定されている。ストリップは床面に直線状に敷設され、非常事態の場合に搭乗者および乗組員をドアおよび非常口まで誘導する。従来、フォトルミネッセンスストリップは、上記のストリップがフェイルセーフであって電源なしで作動し得るため、航空機の設計においてますます受け入れられてきている。
【0003】
非常用照明装置は、たとえば国際特許公開第96/33093A1号から知られており、ここでは、フォトルミネッセンスストリップが透過性の支持要素に配置されている。この場合、支持要素は、1つ、2つまたは、3つの部分に構成されてもよい。各支持要素は、長形で矩形の形状をしており、したがって、さらなる支持要素に対して90度および180度の向きで敷設されてもよい。
【0004】
フォトルミネッセンス反射性シートが、国際特許公開第94/17766A1号から知られている。平面的な材料から長形のストリップを作製することが提案されている。
【0005】
長形のストリップからなるフォトルミネッセンス脱出経路標識が、米国特許第4,401,050号から知られている。矢印が、方向性を示す標示された脱出経路の表示器として設けられている。
【0006】
方向性を示す脱出経路の表示器は、国際特許公開第87/02813A1号から知られており、床面上の別々の分離した矢印として航空機の通路に沿って配置されるフォトルミネッセンス手段によって作動する。
【0007】
耐久性蛍光層が、欧州特許公開第0 489 561A1号から知られており、ここでは着色顔料がポリマーマトリックスに組み込まれている。この場合、蛍光物質が支持部に組み込まれていてもよく、さらなるフィルタを用いて蛍光光線に異なる光学特性を与える。
【0008】
フォトルミネッセンス材料で裏打ちされた安全標識が、仏国特許公開第2 308 155A1号から知られている。
【0009】
米国特許第4,208,300号は、階段や道路交通状況で使用されることができるような、フォトルミネッセンス材料のためのアセンブリを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許公開第96/33093A1号公報
【特許文献2】国際特許公開第94/17766A1号公報
【特許文献3】国際特許公開第87/02813A1号公報
【特許文献4】欧州特許公開第0 489 561A1号公報
【特許文献5】仏国特許公開第2 308 155A1号公報
【特許文献6】米国特許第4,208,300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
今日では、客室の家具を設計する要件が変化していることが認められ得る。特に、矩形の家具を設ける傾向はもはやなく、曲線状の輪郭を備えた家具を設ける傾向にある。たとえば曲線状の外部輪郭を備えたシート席や、供給域の食器棚およびカウンタなどの曲線状の家具の審美的効果に加えて、曲線状の家具にはまた、たとえばたやすく負傷しないであろうなど、搭乗者にとって安全面での利点がある。客室のより複雑な設計の家具によって、柔軟な方法で脱出経路標識を家具に適合できるようにすることもまた必要となる。
【0012】
本発明の目的は、簡潔な方法によって航空機の客室の様々な要件および設計に適合可能な脱出経路標識を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、本目的は、請求項1の特徴を含む脱出経路標識によって達成される。有利な実施形態は、サブクレームの主題を形成するものである。
【0014】
本発明による脱出経路標識は、航空機に設けられ、残光性フォトルミネッセンス材料を有する。フォトルミネッセンス材料は、非常事態の場合に搭乗者および乗組員に非常口までの最短路を示すために床面に設置される複数の要素からなる。本発明によると、敷設された要素のうちの少なくとも1つは、湾曲形状をしている。湾曲形状を有する要素は、曲線路を有し、この曲線路によって、脱出経路を直線状にかつ/または直角に敷設することが可能になるだけでなく、脱出経路標識が円弧および曲線に延びることが可能になる。その結果、脱出経路標識は、航空機室内の設計に個々に適合されることができ、したがって、所定の輪郭に付随することができる。要素の湾曲形状を用いて、あるいは湾曲要素を用いて、直線状に延びずにこれらが敷設される面に円弧を描くストリップ状の要素を表す。
【0015】
好ましい実施態様において、フォトルミネッセンス材料は、透過性の支持材料に、かつ/または支持材料の中に設けられる。たとえば、フォトルミネッセンス材料は、ポリマーマトリックスに組み込まれているフォトルミネッセンス色素からなっていてもよい。代替として、たとえば、フォトルミネッセンス色素はまた、透過性の支持材料に印刷されてもよい。
【0016】
好都合な実施形態では、要素の格納ができるように、湾曲要素が所定の曲率半径を有する。さらに、それぞれ所定の曲率半径に応じて長さが異なる少なくとも2つの要素を設けてもよい。同じ曲率半径を有し異なる長さの要素によって、上記の要素を結合させ、対応する曲率半径を備えた円弧を形成することが可能となる。
【0017】
代替の実施形態において、均一でない曲率半径を有する少なくとも1つの湾曲要素を設けることもまた可能である。したがって、たとえば、湾曲要素は、複数の部分を有し、このうち少なくとも2つがそれぞれ異なる曲率半径を有していてもよい。異なる曲率半径を有する湾曲要素はまた、航空機室内の家具およびビルトイン式の構成部品の形状に特に適合されることができ、したがって、曲率半径を連続的に変更することもまた可能である。
【0018】
好ましい実施態では、湾曲要素が透過材によって覆われている。カバーは、フォトルミネッセンス材料を損傷から守る保護カバーを備える。
【0019】
湾曲材料を覆う種々の実施形態が可能である。好ましい実施態様では、湾曲要素が、透過性プラスチック材料に流し込まれる。代替実施形態では、湾曲要素は透過材によって完全に囲まれず、透過材から作られた湾曲カバー要素が、湾曲要素を支持するのに設けられる。したがって、カバー要素は、その形状がフォトルミネッセンス材料から作られる湾曲要素に対応している。好ましい実施態様では、カバー要素が、実質的にU字形の断面を備えており、その肢部は、フォトルミネッセンス材料の側面または下に保持されている。カバー要素の肢部は、湾曲要素に接合され、カバー要素を湾曲要素に固定する。
【0020】
改善された取り扱いのために、フォトルミネッセンス材料がU字形の支持要素に配置され、カバー要素が支持要素に固定されるのが好ましい。
【0021】
さらに可能な実施形態では、カバー要素が、湾曲した中空の輪郭部として構成されている。ついで、湾曲要素が湾曲した中空の輪郭部に挿入される。湾曲した中空の輪郭部は、断面に閉止した形状を有していてもよく、または、たとえばその下面に沿って中断部を有していてもよい。
【0022】
湾曲要素上に縮小する透過性の熱収縮性チューブで湾曲要素を包むこともまた可能である。熱収縮性チューブは、少なくとも一面で透過するように構成されているので、フォトルミネッセンス材料が通り抜けて輝くことができる。熱収縮性のチューブの肉厚は、0.1から0.8mmであり、便宜上、0.3から0.5mmの範囲内にあるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
好ましい実施態様を、図面を参照しつつ以下により詳細に説明する。
【図1】客室およびコックピットを備えた航空機胴体の前面領域を示す概略図である。
【図2】フォトルミネッセンス材料がカバーに組み込まれている脱出経路標識を示す図である。
【図3】図2のフォトルミネッセンス要素を示す斜視図である。
【図4】フォトルミネッセンス材料を備えた湾曲要素を示す平面図である。
【図5】図4の要素を示す斜視図である。
【図6】図4のフォトルミネッセンス材料を備えた要素を示す断面図である。
【図7】カバーに組み込まれることのできる湾曲したフォトルミネッセンス要素を示す図である。
【図8】フォトルミネッセンス材料のカバーの3つの異なる実施形態を示す図である。
【図9】熱収縮性チューブを備えた湾曲したフォトルミネッセンス材料を示す上から見た図である。
【図10】図9の湾曲要素を示す斜視図である。
【実施例】
【0024】
図1は、客室10およびコックピット12を備えた航空機の前側部分を示す。客室10の前側領域では、2つのドア14が側部に設けられており、非常口の役割もする。
【0025】
客室10とコックピット12との間の領域には、1列の家具およびビルトイン式構成部品16が設けられている。家具およびビルトイン式構成部品16は、出口ドア14の前に配置されている。家具およびビルトイン式構成部品16の前縁部が、脱出経路標識18によって標示されている。脱出経路標識18は、湾曲部22と交互する1列の直線部20を有する。
【0026】
脱出経路標識18は、以下により詳細に説明する直線要素を接合する要素で構成されている。
【0027】
中央の食器棚要素24はまた、曲線状に延びる脱出経路標識によって特徴づけられている。航空機の長手方向において、脱出経路標識26は、互いに平行に延びる2つの直線部26を有し、曲線部28がこれに両側で接合している。前部に向かって曲がる部分28は、後部に向かって曲がる部分28と異なる曲率を有することが、明らかに視認できる。前側領域の曲線部は、均一の曲率半径ではなく、湾曲要素に沿って変化する可変曲率半径を有することもまた視認できる。
【0028】
客室の中央列32の前端部30はまた、曲線状の脱出経路標識を有する。脱出経路標識の曲線部は、側方列34に存在していてもよく、たとえばシート列と境界要素36との間の移行部に存在していてもよい。この点について、反対方向に曲がる脱出経路標識38,40はまた、脱出経路を正確に定めるために使用することもできる。また、くぼみ(図示せず)をシート間に設けてもよい。
【0029】
図2は、脱出経路標識の湾曲要素を示す概略図である。この要素は、カバー要素42に組み込まれているフォトルミネッセンス材料40からなる。脱出経路標識の所望の色を維持するために、さらなる透過性カラーフィルタ膜44をフォトルミネッセンス要素40に配置してもよい。
【0030】
図3は、図2の要素を示す斜視図であり、この場合、さらなるフィルタ膜44はカバー要素42にまだ完全に組み込まれていない。次に支持要素を使用することによって、脱出経路は実質的に1色に標示される、すなわち、フォトルミネッセンス材料40がさらなるカラーフィルタ膜44なしで使用されるか、または、すべての要素が所望の色を備えたカラーフィルタ膜44を支持する。
【0031】
図4および図5は、個別のカバーが設けられていない湾曲要素46の構造を示している。湾曲要素46は、図6に示すように2層構造を有する。この点について、たとえば、下層48は、フォトルミネッセンス材料であってもよく、上層50は、透過材から作られるカバー50であってもよい。フォトルミネッセンス材料に使用される接着剤に応じて、この層50は、プラスチック材料に組み込まれるフォトルミネッセンス材料に相当するものであってもよく、支持要素48に塗布される。2層の湾曲要素の設計は、平坦な床面のカバー(湾曲要素を接合するカバー)に特に適切である。これは、概して、脱出経路標識の湾曲要素が脱出経路標識の直線要素と同じ高さを有する場合である。
【0032】
図7は、カラーフィルタ膜60が上に配置されている湾曲要素58を示している。湾曲要素58およびカラーフィルタ膜60が、カバー62によって密封されている。図8は、カバーのための異なる実施形態の並びを示す。図8のカバー64は、透過材から作られた閉止した中空の輪郭部であり、この中に湾曲要素が組み込まれている。図8のカバー66は、U字形の輪郭部を有し、側方の肢部がスナップ接続によって突起の後方で支持要素68に係合している。支持要素68は、長手方向に延びる突起70を備えたU字形の輪郭部を有する。支持要素68は、フォトルミネッセンスの湾曲要素58を受容する。このフォトルミネッセンス要素58は、カバー66を介して支持要素68に固定される。図8のカバー70は、カバー要素が支持要素72の側方に締付けられることによって固定されるさらなる代替実施形態を示している。支持要素72はU字形の輪郭部を有し、あるいは、支持要素72はまた、長手方向に延びる突起を備えていてもよい。
【0033】
中空の輪郭部およびスナップ輪郭部62,66および70を、押出し成形中に、たとえば、押出品が完全に凝固する前に、ローラ(有利には均一の曲率半径を備えた)を用いて押出型材を撓ませることによって、あるいは、続いて直線状の押出型材を加熱し成形するによって、湾曲形状に直接作製してもよい。代替として、輪郭部をたとえば射出成形によって成形してもよい。
【0034】
図9および図10は、カラーフィルム54による代替の湾曲要素52の包みを示している。湾曲要素を滑らないように囲むために、カラーフィルタ膜54および要素52にわたって延伸され、その延長位置で縮小する熱収縮性チューブ56が設けられている。この目的のために使用される熱収縮性チューブの厚さは、3/10から5/10mmであってもよい。熱収縮性チューブは、加熱および/または赤外線の作用によって要素上で縮小する。したがって、熱収縮性チューブの材料は、湾曲要素に付着しない。熱収縮性チューブは、湾曲要素にその膜応力のみによって保持される。
【0035】
フォトルミネッセンス材料は、それが支持要素に配置されるかどうかに関係なく航空機の床面に接合される。この場合、接着が可能であるが、小さな部片は接着されずに、好ましくは内層面にねじ止めされる。湾曲形状の要素は異なる方法で製造されてもよい。すなわち、一方では、要素は、半完成の塗被プレートとして作製されてもよく(たとえばカラー塗被法、カレンダ加工または鋳造法によって)、また他方では、押出し成形し、ついで、切断されるか、打ち抜かれるか、のこぎりで切られて湾曲形状にしたプレートとして作製されてもよい。この目的のために、ウォータジェットカッタを使用するのが好ましい。
【0036】
代替として、発光素子を湾曲形状に直接作製してもよい。このことは、押出し成形中に、たとえば、押出品が完全に凝固する前に、ローラ(有利には均一の曲率半径を備えた)を用いて押出型材を撓ませることによって行われてもよい。他の方法では、たとえば、湾曲した支持ストリップをカラーコーティングすることによって、あるいは対応する型に流し込むことによって、湾曲要素を作製する。熱可塑性材料によって、たとえば射出成形や押出し成形によって直線形状に作製された発光素子を、続いて加熱して湾曲形状にしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの要素に床面で設置される残光性フォトルミネセンス材料を有する航空機の脱出経路標識であって、少なくとも1つの要素(40;46;52;58)が湾曲形状を有することを特徴とする、脱出経路標識。
【請求項2】
前記フォトルミネッセンス材料が、透過性の支持材料に、かつ/または支持材料の中に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の脱出経路標識。
【請求項3】
各湾曲要素が所定の曲率半径を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の脱出経路標識。
【請求項4】
各所定の曲率半径に応じて長さが異なる少なくとも2つの要素が存在することを特徴とする、請求項3に記載の脱出経路標識。
【請求項5】
少なくとも1つの湾曲要素(28)が、均一でない曲率半径を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の脱出経路標識。
【請求項6】
前記湾曲要素が複数の部分を有し、このうち少なくとも2つが異なる曲率半径を有していることを特徴とする、請求項5に記載の脱出経路標識。
【請求項7】
前記湾曲要素が透過材によって覆われていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項8】
前記湾曲要素が透過性プラスチック材料に流し込まれることを特徴とする、請求項7に記載の脱出経路標識。
【請求項9】
透過材から作られた湾曲カバー要素(42;64;66;70)が、前記湾曲要素に設けられていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項10】
前記カバー要素(66;70)が、実質的にU字形の断面を備えており、その肢部が、前記フォトルミネッセンス材料の側面または下に保持されていることを特徴とする、請求項9に記載の脱出経路標識。
【請求項11】
前記フォトルミネッセンス材料がU字形の支持要素(68,70)に配置されていることを特徴とする、請求項10に記載の脱出経路標識。
【請求項12】
前記カバー要素が、湾曲した中空の輪郭部(64)として構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の脱出経路標識。
【請求項13】
前記湾曲要素が、前記湾曲要素上に縮小する透過性の熱収縮性チューブ(56)によって包まれていることを特徴とする、請求項7に記載の脱出経路標識。
【請求項14】
前記熱収縮性のチューブの肉厚が、0.1から0.8mmであることを特徴とする、請求項13に記載の脱出経路標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−520836(P2010−520836A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553068(P2009−553068)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001928
【国際公開番号】WO2008/110344
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503371373)ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
【Fターム(参考)】