説明

航空機推進システム

ナセルによって取り囲まれるバイパスターボジェットエンジンと、エンジンを航空機のパイロン(16)に取り付ける手段(80)とを備える航空機の推進システム(10)であって、ナセル(12)は、エンジンの中間ケーシング(38)に取り付けられる上流側環状フレーム(50)と、エンジンの排気ケーシング(40)を支持する下流側環状フレーム(52)と、これらのフレーム(50、52)を接続する長手方向アーム(54、56、58、60)とで形成される剛性の骨組を有する回転対称性を呈する内部構造を備え、下流側環状フレーム(52)は弾性または関節式の懸架手段によってパイロン(16)に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも圧縮機、燃焼室、タービン、および、圧縮機の上流側に取り付けられ、タービンによって回転駆動されるファンを有するバイパスターボジェットエンジンを備え、エンジンは、ファンの下流側で、圧縮機、燃焼室、およびタービンのケーシングまわりの2次空気流のための環状流部を画定するナセルによって取り囲まれており、2次流は推力の主要部分を供給する、航空機の推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
推進システムは、推進システムがそのさまざまな操作段階中にエンジンにより発生する力を前記構造要素に伝達することのできる手段によって、航空機の翼など航空機の構造要素に取り付けられる。
【0003】
現代の民間機のターボジェットエンジンは、特に騒音害を低減させ、このようなエンジンの燃料消費量を減少させるために、大きなバイパス比、すなわち5を超え、9または10でもあってもよい2次流量を1次流量で割った比によって特徴づけられる。これによって、ファンとタービンとの間のターボジェットエンジンの横寸法が減少することになり(「くびれたウエスト」効果)、本体の曲げ強さが減少する。
【0004】
ターボジェットの本体の曲げ変形自体によって、ロータのまわりでケーシングが変形することになり、ケーシングが卵形となって、それによって、ある位置でケーシングとロータとの間の隙間が減少し、他の位置で隙間が増大する(「ケーシング歪み」効果)。
【0005】
特に、ブレードの先端部により大きな隙間を設けることが必要となるので、この効果によってターボジェットの性能が減少する。
【0006】
推進システムを取り付ける手段は、概して、パイロンまたはストラットと一般に呼ばれる強力で大きな塊状の部分と、エンジンをパイロンに接続する懸架手段とを備える。このような懸架手段は従来、まずエンジンの1つ以上のケーシング、たとえば中間ケーシングの上流側と、排気ケーシングの下流側とに、次に、2次流部に延び、2次流を案内するために全体として壁で取り囲まれているパイロンの底部に固締され、したがって、時には「12時の仕切り」と呼ばれているものを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それらの知られている固締手段は、いくつかの欠点を示す。
【0008】
ケーシングに固締される懸架手段を介して推進システムを航空機のパイロンに取り付けることによって、ケーシングを締め付けることとなり、歪み効果が高まり、エンジンのさまざまな回転要素の心がずれて、それによって、効率損失となり、燃料消費量が増加する。
【0009】
さらに、下流側の懸架装置を介してエンジンの回転要素が回転することによって引き起こされる捻りトルクを吸収するには、大きな取付け手段を使用する必要があり、パイロンが2次流部に少なくとも部分的に貫入する場合には、極めて幅の広い12時の仕切りが必要である。
【0010】
したがって、所与のバイパス比のためにナセルの半径方向寸法を増加させる必要があり、それによって抗力が増大し、大きなバイパス比を有するターボジェットを組込むことが困難になる。
【0011】
本発明の特定の目的は、先行技術の欠点を回避するのに役立ちながら、それらの問題への簡潔で、廉価で、効果的である解決案を提供することである。
【0012】
本発明の特定の目的は、ナセルが、エンジンを強化しその機械的な歪みを制限する構造上の役割をし、航空機からエンジンを懸架する手段が、さらにエンジンと航空機との間に力を良好に伝達しつつ、エンジンの本体での締め付けとあらゆる集中した力の吸収とを制限し、パイロンのまわりの12時の仕切りの寸法を制限するのに役立つ、航空機の推進システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、2次流のための環状流空間を画定するナセルで取り囲まれるバイパスターボジェットエンジンと、航空機の構造要素に固締するためのパイロンにエンジンを取り付ける手段とを備え、ナセルの下流側部分は、エンジンの本体のまわりにある2次流のための流れ部の内側を画定する回転体を形成する内部構造を備える航空機の推進システムを提供し、該システムは、ナセルの下流側部分の内部構造が、エンジンの中間ケーシングにボルト固定することによって固締される上流側環状フレームによって形成される剛性の骨組と、エンジンの排気ケーシングを支持する支持手段を含む下流側環状フレームと、これらのフレームを互いに接続している長手方向アームを備えることを特徴とし、内部構造の下流側環状フレームが、可撓性またはヒンジ結合された懸架手段によってパイロンに固締されることを特徴とする。
【0014】
ナセルの下流側部分の内部構造の剛性な骨組によって、前記構造がエンジンとパイロンとの間に力を伝達するのに寄与し、それによって、エンジンにおけるケーシングの歪み現象を制限するように構造上の役割をする。
【0015】
前記骨組の下流側環状フレームをパイロンに固締することは、前記パイロンへの排気ケーシングの従来の固締に代わるものであり、排気ケーシングでの締め付けを回避することができる。
【0016】
したがって、本発明は、特に、ブレードの先端部での隙間を減少させ、かつ一般的な観点から推進システムの性能を向上させるのに役立つ。
【0017】
本発明の別の特徴によると、排気ケーシング支持手段は、エンジンの軸まわりに一様に分配される連接部を含み、これらの半径方向内端部がボール継手を介して剛性の排気ケーシングの円筒形壁にヒンジ結合されており、これらの半径方向外端部が、ボール継手を介してナセルの内部構造の下流側環状フレームにヒンジ結合されており、連接部は、好ましくは排気ケーシングに対して実質的に接線方向に、エンジンの軸に対して直角な面に延びている。
【0018】
これらの連接部によって、力が排気ケーシングとパイロンとの間に伝達されることができる。この力の伝達は、エンジンの軸まわりに分配され、それによって、ケーシングで局所的に締め付けるリスクを制限しつつ、下流側環状フレームの構造特性をもうまく利用する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において:
下流側環状フレームを懸架する懸架手段が、ボール継手を介してヒンジ結合され、下流側フレームの上部にパイロンを接続する連接部と、推力を吸収する接続ロッドとを備え、
下流側環状フレームは、半径方向外側に開口し、懸架連接部のヒンジ手段を含む環状チャンネルを形成するチャネル形断面リングを備え、
懸架連接部は、長い分岐部の一端がボール継手を介して下流側環状フレームにヒンジ結合されており、短い分岐部の一端が別の連接部の一端にヒンジ結合されて、その他端がボール継手によって下流側環状フレームにヒンジ結合されている、L字形の3点連接部を含む。
【0020】
下流側フレームをパイロンに懸架する連接部は、弾力的な懸架をもたらし、過剰な応力のリスクを制限し、さらに、簡潔であるという利点を示す。なぜなら、特に、これらが下流側フレームのチャネル内に部分的に延びてもよいからである。
【0021】
推力を吸収する接続ロッドは、下流側フレームの上部から下流側に軸方向に好ましくは向けられている。
【0022】
この構成によって、ナセルの内部構造を通過する推力を吸収する接続ロッドを用いらなくてもよくなる。
【0023】
本発明の別の特徴によると、パイロンは、エンジンの中間ケーシングまで延び、中間ケーシングの上部にヒンジ結合されている3つの連接部によって接続される上流部を有し、連接部のうちの2つは実質的に半径方向に延びるとともに、第3の連接部は中間ケーシングに対して実質的に接線方向に延びる。
【0024】
これらの連接部は、エンジンの回転要素の回転によって誘導される横方向および縦方向の力、さらには捻りトルクを吸収するのに役立つので、下流側の懸架手段はもはや捻りトルクを吸収する必要がない。
【0025】
このことによって、下流側の懸架手段の外周範囲とパイロンまわりの12時の仕切りの寸法とを著しく減少させることが可能となり、したがって、所与の全寸に対するエンジンのバイパス比を増大させるか、または一定のバイパス比に対するその全寸を減少させることが可能となる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、ナセルの内部構造の上流側および下流側の環状フレームは、エンジンの軸を含む垂直面に延びる2つ長手方向アームと、エンジンの軸を含む水平面に延びる2つの横方向の長手方向アームとによって互いに接続される。
【0027】
本発明の別の特徴によると、フェアリング板が、ナセルの内部構造の骨組に固定され、パイロンのまわりで2次流を案内するための実質的に長手方向の剛性な壁を含む。これらの壁は、パイロンおよび、好ましくはエンジンの付帯設備(services)にアクセスするハッチにこれらを接続する可撓性手段を含む。
【0028】
これらはパイロンに接続されているので、これらの長手方向壁は、ナセルの内部構造とパイロンとの間の力を伝達することに寄与する。
【0029】
フェアリング板は、エンジンのための付帯設備まわりに2次流を案内するために、パイロンから直径方向に反対にある2次流のための流れ空間の一部に延びている、実質的に長手方向の壁を含んでいてもよい。
【0030】
フェアリング板は、有利には、エンジンの保守作業を容易にするために着脱可能なアクセスハッチを含む。
【0031】
下流側環状フレームおよび少なくともナセルの内部構造の長手方向アームのいくつかは、これらに良好な剛性と機械的強度、さらには高温に耐える良好な能力を与えるべく、ニッケルを含む合金から作られる。
【0032】
上流側環状フレームおよびナセルの内部構造のフェアリング板は、好ましくはチタンから作られる。
【0033】
チタンを選択することによって、ナセルの内部構造のこれらの要素の重量を減少させることが可能となる。なぜなら、これらは剛性および強度に関して同じ性能を示す必要がないからである。
【0034】
一変形例では、内部構造の重量をさらに減少させるために、フェアリング板のアクセスハッチ、上流側環状フレーム、長手方向アーム、およびフェアリング板から選択される少なくともいくつかの要素が、複合材料でできている。
【0035】
非限定的な例としての以下の記載を読み、添付の図面を参照すると、本発明をより十分に理解することができ、他のその詳細、利点、および特徴がより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の推進システムの上流側から見た概略斜視図である。
【図2】本発明の推進システムの上流側から見た部分概略斜視図であり、ナセルの下流側の外側ジャケットの2つの半円筒形のシェルが開位置で示されており、ナセルの内壁の整流板が除去されており、ナセルの上流側の整流板が部分的に切断されて示されている。
【図3】図1の推進システムを示している下流側から見た部分概略斜視図であり、そのナセルの内壁の整流板を含み、ナセルの外壁が切断されている。
【図4】ナセルの内壁の下流側の環状構造の平面における断面による、図1の推進システムの部分概略図である。
【図5】図1の推進システムの側面の部分概略斜視図であり、ナセルの内壁の整流板がそこから除去され、前記ナセルの外壁が切断されている。
【図6】エンジンをパイロンに懸架する上流側の懸架手段を示している、図1の推進システムの断面での部分概略図である。
【図7】エンジンをパイロンに懸架する下流側の懸架手段を示している、図1の推進システムの下流側から見た部分概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および図2に概略的に示されている航空機の推進システム10は、全体として円筒形のナセル12を備え、航空機の翼の下にこれを固締するためのパイロン16から懸架されているバイパスターボジェットエンジン14が中に取り付けられている。
【0038】
エンジン14は、前面に、その下流端で中間ケーシングの外側円筒形壁20に接続されているファンケーシング18内で回転駆動するファンホイールを有する。
【0039】
ナセル12が、その上流端から、中間ケーシングのファンケーシング18および外壁20を取り囲む半円筒形の整流板22(時には空気入口スリーブと呼ばれる)および半円筒形の整流板24と、その下流端に、中間ケーシングの外壁20に固締され、任意選択的に逆推力装置を知られている方法で含む2つの半円筒形のシェル28から構成される外側ジャケット26(時には外側固定構造(OFS)と呼ばれる)とを備える。外側ジャケット26の半円筒形のシェルは、パイロン16にヒンジ(図面に示さず)を介してヒンジ結合されており、これらは、互いにパイロン16から遠いそれらの端部で、ラッチ(図示せず)と協働するフックによってヒンジ結合され、これらは、推進システム10のまわりに空気流の連続性をもたらすために、カバーパネル30によって覆われる。
【0040】
図3に概略的に示されているように、上流側から下流側まで、圧縮機と、燃焼室と、タービンとを備えるエンジン14を通過する1次流32と、エンジン14の本体とナセルの外側ジャケット26との間を流れ、タービンから排気される燃焼ガス32によってもたらされる推力に加えて、主要な推力をもたらす2次流34との間で、ファンによって吸引される空気流がファンから下流側で共有される。
【0041】
中間ケーシングの下流側で、2次流34のための流れ部が、ナセルの外側ジャケット26によって外側に、時には内側固定構造(IFS)として知られており、エンジンの本体を取り囲み、ステータ静翼39によってその外壁20に接続されている中間ケーシングの内側円筒形壁38から、タービンからの出口に位置する排気ケーシング40まで延びている回転体36を形成するナセルの内部構造によって内側に画定され、排気ケーシング40は、半径方向アーム46によって互いに接続される2つの同軸の円筒形壁、それぞれ外壁42および内壁44を、従来の方法で含む。
【0042】
ナセル12の内部構造36は、フェアリング板48が固締されている剛性の骨組を有する。
【0043】
以下により明らかに理解されるように、骨組が、エンジンの軸を含む垂直面で延びる2つのアーム54および56と、エンジンの軸を含む水平面で延びる2つの横方向のアーム58および60とを備える4つの長手方向アームによって相互接続されている2つの環状フレーム、それぞれ上流側フレーム50および下流側フレーム52を備える。
【0044】
骨組に固締されているフェアリング板48は、たとえば、長手方向アーム54、56、58、および60を1対ずつ相互接続し、保守作業中にエンジンの本体にアクセスするために着脱可能なハッチによって閉じるのに適している開口部62を含むシリンダの一部の形としての4つのパネルを含む。一変形例では、フェアリング板48は、たとえば、長手方向アーム54および56を相互接続する2つの半円筒形のパネルを含んでいてもよい。
【0045】
前記アーム54に接続される2つのパネル48それぞれが、エンジンの頂部に沿って延びている長手方向アーム54に固締されているその端部に、パイロンの周囲に2次流34を案内するためにパイロン16に向かって長手方向に延びる壁64を含む。したがって、これらの2つの案内壁64は、2次流34がパイロン16を通過した場合に2次流34のヘッドロスを制限するのに役立つ仕切り(時には12時の仕切りと呼ばれる)を形成する。
【0046】
類似した方法で、前記アーム56に接続される2つのパネル48が、パイロン16と直径方向に反対にある長手方向アーム56に固締されるこれらの端部に、エンジン機器および付帯設備が通過可能である閉空間(時には6時の仕切りと呼ばれる)を形成する2次流を案内するための壁66を含む。
【0047】
上流側環状フレーム50は、中間ケーシングの内壁38にボルト固定することによって固締される。
【0048】
図4に示すように、排気ケーシング40は、エンジンの軸70のまわりに一様に分配され、半径方向内側の端部が排気ケーシングの外壁42にヒンジ結合され、これらの半径方向外側の端部が下流側環状フレーム52にヒンジ結合されている力伝達連接部またはロッド68によって、ナセルの内部構造36の下流側環状フレーム52に接続される。
【0049】
ここに示した例では、6つの連接部68があり、そのすべてが共通の水平面にあり、連接部は、これらの半径方向内側の端部と排気ケーシング40との間にあるヒンジ点72で1対ずつ共に接合されており、これらのヒンジ点72は、たとえば並置された2つのフォーク74を備えている。連接部68の半径方向外側の端部は、下流側環状フレーム52の内面で形成されるか固締され、各対の2つの連接部が、排気ケーシングの外壁42に対して実質的に接線方向にヒンジ点72で前記壁とともに延びるような方法で配置されるフォーク76に取り付けられる。
【0050】
連接部68の端部は、連接部68が、排気ケーシング40を支持して心合わせをすると同時に、前記ケーシングとナセルの内部構造36の骨組との間の軸方向および半径方向の膨張差に対応するのに役立つように、ボール継手によってフォーク74および76に取り付けられる。
【0051】
ナセルの内部構造36のフェアリング板48が除去された後の推進システム10を示す図5においてより明らかに理解されるように、パイロン16は、エンジンの中間ケーシングまで延び、前記中間ケーシングの外壁20の上部にヒンジ結合されている懸架手段80を支える上流部78と、ナセルの内部構造36の下流側環状フレーム52にヒンジ結合されている懸架手段84に接続される下流部82とを有する。
【0052】
上流側の懸架装置手段80は、図6にさらに詳細に示されており、これらは、中間ケーシングの外壁20の頂部に対して横断方向に接線方向に延びるパイロン16の上流部78に固締される接続部材86を含み、この部材86は、中間ケーシングの壁20に接続されている3つの連接部90、92および94に固締するために、フォークまたは類似したタイプの固締手段88を含んでいる。各連接部90、92および94は、その一端が接続部材86の固締手段88の1つにボール継手を介して取り付けられ、その他端も同様にボール継手を介して、中間ケーシングの壁20の外面で形成されるか固締されるフォーク96に取り付けられている。接続部材86の端部にヒンジ結合されている2つの連接部90および92は、実質的に半径方向に延びると同時に、接続部材86の中間部にヒンジ結合されている第3の連接部94は、中間ケーシングの壁20に対して実質的に接線方向に延びているので、上流側の懸架装置手段80は、横方向および縦方向の力、さらにはエンジンによって及ぼされる捻りトルクを吸収するのに適切である。
【0053】
図7に示すように、ナセルの内壁36の下流側環状フレーム52は、2つの半径方向の環状壁、それぞれ上流壁98および下流壁100を有し、そのチャネルのフランジを形成し、軸方向に延びてチャネルのウェブを形成する環状壁102によって、これらの半径方向内側の端部で共に接続されるチャネル形断面リングを含む。半径方向の環状壁98および100のそれぞれは、それぞれ99または101で示され、軸方向外側に環状チャネルから延びる環状リムを有する。
【0054】
下流側の懸架装置手段84は、長い分岐106の一端が下流側環状フレーム52のチャネルにヒンジ結合されており、短い分岐108の一端が別の連接部110の一端にヒンジ結合されて、その他端が下流側環状フレーム52のチャネルにヒンジ結合されている、L字形の3点の連接部104を含み、3点の連接部104の頂部は、パイロン16の下流部82の半径方向の固締タブ112にヒンジ結合されている。
【0055】
下流側の懸架装置手段84はまた、環状フレーム52の下流側の半径方向壁100のリム101の上部で形成されるか固締され、前記端部から下流側に延びるフォーク116に、その一端でヒンジ結合され、連接ロッドの他端はパイロン16に固締されるフォーク118にヒンジ結合されている、推力を吸収する接続ロッド114を含む。
【0056】
先行技術では、排気ケーシングがパイロンに直接接続され、推力を吸収する接続ロッドが、中間ケーシングのハブにパイロンを接続し、それによって、エンジンの性能上の負の効果を有するこれらのケーシングの局所的な締め付けを引き起こす。
【0057】
本発明によると、排気ケーシング40は、ナセルの内壁36の下流側環状フレーム52で、エンジンの軸の周囲に分配されている連接部68によって支持され、パイロンに接続されるのは下流側フレーム52である。
【0058】
下流側フレーム52は、ニッケルを主成分とする超合金などの剛性材料から作られており、それによって、排気ケーシング40の周縁に力を拡散することができるようになり、したがって、そのあらゆる局所的な締め付けを回避する。
【0059】
下流側の懸架装置手段84は、特にコンパクトであるという利点を示している。なぜなら、これらは特に下流側フレーム52のチャネルに部分的に延びているからであり、したがって、12時の仕切りの寸法を減少させることができ、したがって2次流34の流れ空間を増大させる。
【0060】
下流側フレーム52にパイロン16を接続する推力を吸収する接続ロッド114の配置によって、接続ロッド114がナセルの内部構造36を通過するのを回避することが可能になる。
【0061】
ボール継手のために、下流側の懸架手段84の構成は、下流側の懸架装置を介するあらゆる過剰な応力のリスクを制限するのに役立つ可撓性を示す。
【0062】
一変形例では、可撓性に関して匹敵する利点を達成するために、下流側の懸架手段がエラストマ要素を含んでいてもよい。
【0063】
本発明によると、ナセルの内部構造36は、構造上の機能を実行し、ケーシングが歪曲し、エンジン内で回転要素の心がずれる現象を制限するのに役立つ。
【0064】
この目的のために、下流側フレーム52に加えて、ナセルの内部構造36の長手方向アーム54、56、58および60も同様に、ニッケルを主成分とする超合金などの剛性材料から作られる。
【0065】
中間ケーシングの内壁38にボルト固定されるので、上流側フレーム50は、チタンなど軽量の材料から作られてもよい。
【0066】
ナセルの内壁36のパネル48もまた、2次流34のための流れ部に仕切りを形成するこれらの長手方向壁64および66のように、チタンから作られる。
【0067】
パイロン16のまわりに2次流を案内する12時の仕切りの壁64は、それ自体、可撓性の接続手段によってパイロンに接続され、これらは構造上の役割をする。
【0068】
パネル48のハッチ62と、長手方向パネル64および66のハッチとは、複合材料から作られてもよく、重量の節減を達成し、エンジンの保守を行うときにこれらの設置、除去がより簡単になる。
【0069】
一変形例では、上流側フレーム50、横方向の長手方向アーム58および60、ナセルの内部構造36のパネル48、ならびに2次流を案内するこれらの長手方向壁64および66が、重量をより多く節減するために複合材料から作られてもよい。
【0070】
それにもかかわらず、ナセルの内部構造36の構造上特性を保存し、火災または熱風ダクトの爆発などの事象の場合にエンジン自体を含まない力の経路をもたらすために、それぞれ12時および6時にある下流側フレーム52と長手方向アーム54および56が、上述のようにニッケルを主成分とする超合金など、高温に対して大きな耐性を備える材料から作られ続けることが好ましい。
【0071】
ついで、剛性の金属部と複合材料でできている部分との間の接合部が、材料の膨張差に対応する可撓性の接続部を介して設けられる。
【0072】
保守作業中、ナセルの内部構造36にアクセスするために、ナセルの外側ジャケット26の2つの半円筒形のシェルが、パイロン16にこれらを接続するこれらのヒンジを中心として旋回する。ついで、開口部62を閉止するハッチが除去されて、エンジンの本体にアクセスしてもよい。
【0073】
必要な場合、外側ジャケットがパイロンに取り付けられたまま、エンジンがパイロン16から、かつナセルの外側ジャケット26から分離されてもよい。
【0074】
概して、本発明の推進システムは、ケーシングの歪曲現象を制限することによって、これらの現象の影響をエンジンの燃料消費量の少なくとも50%まで低減させることができる。
【0075】
12時の仕切りの寸法を減らすことによって、2次流部が妨害される範囲を減少させるのに役立ち、したがって、エンジン性能を増大させ、かつ/または、ナセルの全直径を制限するのに役立つ。
【0076】
本発明は、これらのケーシングに与えられる締め付け現象を著しく減少させることによって、エンジンのケーシングの摩耗を遅らせることもまた可能となり、それによって、推進システムの保守コストが低減することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次流(34)のための環状流空間を画定するナセル(12)で取り囲まれるバイパスターボジェットエンジンと、航空機の構造要素に固締するためのパイロン(16)にエンジンを取り付ける手段(80、84)とを備え、ナセル(12)の下流側部分が、エンジンの本体のまわりにある2次流(34)のための流れ部の内側を画定する回転体を形成する内部構造(36)を備える、航空機の推進システム(10)であって、システムは、ナセルの下流側部分の内部構造(36)が、エンジンの中間ケーシング(38)にボルト固定することによって固締される上流側環状フレーム(50)によって形成される剛性の骨組と、エンジンの排気ケーシング(40)を支持する支持手段(68、76)を含む下流側環状フレーム(52)と、これらのフレーム(50、52)を互いに接続している長手方向フレーム(54、56、58、60)とを備えることを特徴とし、内部構造(36)の下流側環状フレーム(52)が、可撓性またはヒンジ結合された懸架手段(84)によってパイロン(16)に固締されることを特徴とする、航空機の推進システム(10)。
【請求項2】
排気ケーシング支持手段が、エンジンの軸まわりに一様に分配される連接部(68)を含み、これらの半径方向内端部がボール継手を介して排気ケーシング(40)の剛性の円筒形壁(42)にヒンジ結合されており、これらの半径方向外端部が、ボール継手を介してナセルの内部構造(36)の下流側環状フレーム(52)にヒンジ結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の推進システム。
【請求項3】
連接部(68)が、排気ケーシング(40)に対して実質的に接線方向に、エンジンの軸に対して直角な面に延びていることを特徴とする、請求項2に記載の推進システム。
【請求項4】
下流側環状フレーム(52)を懸架する懸架手段(84)が、ボール継手を介してヒンジ結合され、推力を吸収する接続ロッド(114)と共にパイロン(16)を下流側フレーム(52)の頂部に接続する連接部(104、110)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項5】
下流側環状フレーム(52)が、半径方向外側に開口し、懸架連接部のヒンジ手段を含む環状チャンネルを形成するチャネル形断面リング(98、99、100、101、102)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の推進システム。
【請求項6】
懸架連接部が、長い分岐部(106)の一端がボール継手を介して下流側環状フレーム(52)にヒンジ結合されており、短い分岐部(108)の一端が別の連接部(110)の一端にヒンジ結合されて、その他端がボール継手を介して下流側環状フレーム(52)にヒンジ結合されている、L字形の3点連接部(104)を備えることを特徴とする、請求項4または5に記載の推進システム。
【請求項7】
推力を吸収する接続ロッド(114)が、下流側フレーム(52)の上部から下流側に軸方向に向けられていることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項8】
パイロン(16)が、エンジンの中間ケーシング(20、38、39)まで延び、中間ケーシング(20)の上部にヒンジ結合されている3つの連接部(90、92、94)によって接続される上流部(78)を有し、連接部のうちの2つ(90、92)が実質的に半径方向に延びるとともに、第3の連接部(94)が中間ケーシング(20)に対して実質的に接線方向に延びることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項9】
ナセルの内部構造(36)の上流側および下流側の環状フレーム(50、52)が、エンジンの軸を含む垂直面に延びる2つ長手方向アーム(54、56)と、エンジンの軸を含む水平面に延びる2つの横方向の長手方向アーム(58、60)とによって互いに接続されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項10】
フェアリング板(48)が、ナセルの内部構造(36)の骨組に固定され、パイロンのまわりに2次流れ(34)を案内するための実質的に長手方向の剛性な壁(64)を含み、これらの壁(64)が、パイロン(16)にこれらを接続する可撓性手段を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項11】
フェアリング板(48)が、エンジンのための付帯設備まわりに2次流を案内するために、パイロン(16)から直径方向に反対にある2次流(34)のための流れ空間の一部に延びている実質的に長手方向の壁(66)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の推進システム。
【請求項12】
下流側環状フレーム(52)と、ナセルの内部構造(36)の長手方向アーム(54、56、58、60)のうちの少なくともいくつかとが、ニッケルを含む合金から作られることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項13】
上流側環状フレーム(50)およびナセルの内部構造(36)のフェアリング板(48)が、チタンから作られることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項14】
フェアリング板(48)のアクセスハッチ、上流側環状フレーム(50)、長手方向アーム(58、60)、およびフェアリング板(48)から選択される少なくともいくつかの要素が、複合材料から作られることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の推進システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−525955(P2011−525955A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515520(P2011−515520)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000737
【国際公開番号】WO2010/007226
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)