説明

航空機移送装置

【課題】 航空機を移送する時に、航空機の車輪のタイヤに応力を与えないで、適切に車輪を車輪を保持したまま航空機を移送できる航空機移送装置を提供する。
【解決手段】 航空機の車輪を保持しながら移動することにより航空機を移送する航空機移送装置であって、航空機の車輪1のホイールに係合する係合部11と、係合部11を挟持する挟持部13と、挟持部が取り付けられた自走可能な車体2と、車体と共に挟持部を車体内側へ引き込む引込シリンダ14と、引き込まれた挟持部を車体と共に持ち上げるリフトシリンダ15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,航空機の誘導路、格納庫内、航空機搭載艦の甲板上などで機体の車輪を保持しながら航空機を移送する航空機移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、飛行機やヘリコプターなどの航空機を地上で移送するのに航空機移送装置(aircraft handler)が用いられている。
図10は従来の航空機移送装置を示す平面図である。図10に示されるように、航空機移送装置40は、例えば航空機の前輪1をクランプパッド41により締め付けるシリンダ42aやこの前輪1を持ち上げるシリンダ42bなどによるクランプ/リフト機構42と、自走するためのバッテリー、自走モータ43及び駆動輪44を有する。クランプ/リフト機構42により航空機の車輪1を持ち上げた状態で、バッテリーにより自走モータ43が回転させられると、自走モータ43から駆動輪44にトルクが伝達されて、航空機と共に航空機移送装置40が走行する。これにより、航空機を所望の位置に移動した後に、クランプパッド41による車輪1の締め付けを解除して、車輪1を地上へ下ろし移動を完了する。
【0003】
航空機移送装置40の高さは航空機の車輪1の高さ程度であり、その幅も航空機の幅と同程度かそれ以下であるので、広さの制限された場所で航空機を移動させるのに特に有益である。
【0004】
このような航空機移送装置の例は、特許文献1及び2に記載されている。
【特許文献1】特開2004−34896 「飛行機用拘束台車、及び飛行機用拘束移送装置」
【特許文献2】特開2004−34897 「飛行機用自走式移送車、及び飛行機用拘束移送装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の航空機用移送装置40では、航空機のタイヤの形状に合わせた形状のクランプパッド41でタイヤの両側を挟んで持ち上げ、タイヤがクランプパッド41に挟まれたまま航空機を移送している。タイヤの空気圧がクランプパッド41の挟み込み押圧力よりも大きい場合には問題はなかったが、タイヤの空気圧がクランプパッド41の挟み込み押圧力よりも小さい場合には、クランプパッド41のエッジ部分の押圧により、タイヤの円周方向に沿った部分又はタイヤ側面の局所的部分などでタイヤ変形が引き起こされる。この場合、移送中にタイヤの変形状態が維持されるので、タイヤの永久変形が引き起こされタイヤの劣化を招く恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、航空機を移送する時に、航空機の車輪のタイヤに応力を与えないで、適切に車輪を保持したまま航空機を移送できる航空機移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明によると、航空機の車輪を保持しながら移動することにより航空機を移送する航空機移送装置であって、航空機の車輪のホイールに係合する係合部を有し、該車輪を保持する保持手段と、車輪を保持した保持手段を車輪と共に持ち上げるリフト手段と、前記保持手段とリフト手段が取り付けられ自走可能な車体とを備えることを特徴とする航空機移送装置が提供される(請求項1)。
【0008】
これにより、車輪のホイールを利用して車輪と係合するので、タイヤに応力を与えることなく車輪を適切に保持できる。従って、航空機の移送によってタイヤの変形が引き起こされる問題が解決される。
【0009】
好ましくは、前記係合部はホイールの中心部に形成された穴に差し込まれる(請求項2)。
【0010】
これにより、車輪を車体に引き込む場合に、航空機の車輪を回転させながら引き込むことなどが可能になり、車輪の取り扱いが容易になる。
【0011】
また、好ましくは、前記係合部は、車輪の両側のホイール穴にそれぞれ差し込まれる一対の差込部と、該一対の差込部を車輪幅方向に移動可能に支持する支持部材とを有し、該支持部材に支持された一対の差込部を車輪幅方向に移動させて車輪の両側から前記ホイール穴に差し込むことで、係合部が車輪に取り付けられる(請求項3)。
【0012】
これにより、航空機の種類によりその車輪の幅が異なっていても、係合部に設けられた差込部が車輪幅方向に移動可能なので、適切に係合部を車輪のホイールに係合させることができる。即ち、車輪幅方向の位置調整機能により、異なる幅の複数の種類の車輪に対応できる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、前記差込部は、雄ネジが切られた差込ピンを有し、前記支持部材には、係合部を車輪に取り付ける時に車輪のホイール穴に対向する位置にネジ孔が形成され、該ネジ孔には前記差込ピンの雄ネジが螺合する雌ネジが切られている(請求項4)。
【0014】
また、本発明の別の実施形態によると、前記支持部材は、一方の差込部を支持し車輪幅方向に対応する方向に挿入孔が形成された第1の係合部材と、他方の差込部を支持し車輪幅方向に対応する方向に挿入孔が形成された第2の係合部材と、第1の係合部材の挿入孔と第2の係合部材の挿入孔に両側が挿入される位置調整ボルトとを有し、前記位置調整ボルトを右回り又は左回りに回転させることで第1の係合部材と第2の係合部材との間の距離を増加又は減少させるように、第1の係合部材の挿入孔と第2の係合部材の挿入孔にはそれぞれ所定の向きに雌ネジが切られ、位置調整ボルトには所定の向きに雄ネジが切られている(請求項5)。
【0015】
また、好ましくは、前記係合部は車体から分離されており前記保持手段は、前記車輪に取付けられた係合部を両側から挟持する挟持部をさらに有し、該挟持部は前記車体に取り付けられている(請求項6)。
【0016】
これにより、係合部は車体から分離しているので、その取り扱いが便利になる。
【0017】
本発明の実施形態によると、前記挟持部は、車輪に係合した前記係合部を挟持する一対のアーム部材と、該一対のアーム部材を車輪幅方向に移動させてアーム部材に係合部を挟持させるアーム部材駆動部とを有し、アーム部材の係合部を挟持する部分には縦長孔が形成されており、前記係合部には、アーム部材により挟持された時に前記縦長孔に挿入される突出部が車輪幅方向に形成されている(請求項7)。
【0018】
この突出部の高さは車輪の高さに対応している。即ち、車輪の高さが異なる場合には突出部の高さも異なるが、この高さの違いに対応するためアーム部材に形成されている孔は縦長にしてある。従って、突出部の高さが異なっていても、突出部を縦長孔内の異なる位置に挿入でき、係合部とアーム部材を適切に結合させることができる。
【0019】
また、本発明によると、航空機の車輪を保持する車輪保持装置であって、前記車輪のタイヤ部分に押圧力を与えないようにホイール部分に係合する係合部と、該係合部を両側から挟持する挟持部とを有することを特徴とする車輪保持装置が提供される(請求項8)。
【0020】
航空機を移送するためにその車輪を保持する場合に、この車輪保持装置を用いれば、車輪のホイールに係合して車輪を保持するので、車輪のタイヤに応力を与えずにすみタイヤ変形を引き起こす問題を解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態による航空機移送装置の平面図である。この航空機移送装置10は、大まかに車体2に車輪保持装置4が結合されてなる。図1において、y軸の正の方向が航空機の前方側であり、航空機移送装置10の前方側でもある。なお、図2は、後述するように航空機の前輪1が航空機移送装置10の内側へ引き込まれた状態を示す平面図である。
【0023】
まず、航空機移送装置10の車体2について説明する。図1に示されるように、車体2の前方部には一対の延出部5が設けられている。各延出部5には駆動輪7と自走モータ8が組み込まれており、自走モータ8の出力がトルク伝達軸により駆動輪7に伝達されて車体2を走行させる。車体2の走行方向を変更する場合には、一対の駆動輪7の回転数が異なるように自走モータ8を制御する。なお、自走モータ8は車体2に内蔵されたバッテリーにより駆動させられてよいが、本発明はこれに限定されない。
【0024】
また、車体2の後側中央には、一対の補助輪9が設けられている。この補助輪9は、駆動輪7による走行に伴って水平な車輪軸心を中心に自在に回転し、車体2の進行方向の変化に伴って、垂直な旋回軸心を中心に自在に回転できるように構成されている。
【0025】
次に、航空機移送装置10の車輪保持装置4について説明する。
【0026】
この車輪保持装置4は車体2の一対の延出部5の間に設けられる。また、車輪保持装置4は、航空機の前輪1である車輪1のホイール穴に係合する係合部11と、航空機の車輪1に係合した係合部11を両側から挟持する挟持部13と、挟持部13を車体内側へ引き込む引込シリンダ14と、引き込まれた車輪1を地上から持ち上げるリフトシリンダ15とを有する。即ち、車輪保持装置4は、航空機の車輪1を挟持して車体2の内側へ引き込み地上から持ち上げるための装置である。このように、航空機の車輪1を持ち上げた状態で車体2が自走することで、航空機の移送が可能になる。なお、航空機の前輪1の代わりに後輪などに係合して移送を行ってもよい。
【0027】
車輪保持装置4の各部について詳しく説明する。
【0028】
図3は係合部11の構成を示すための平面断面図である。図3に示されるように、係合部11は、航空機の車輪1の中央に形成されたホイール穴に差し込まれる雄ネジが切られた一対の差込ピン18と、これらの差込ピン18を車輪1の幅方向に移動可能に支持する支持部材20とからなる。支持部材20は平面図コの字型であり、その両端部20a,20bには、図3においてそれぞれ車輪1の幅方向に貫通し雌ネジが切られたネジ孔が形成されている。このネジ孔の雌ネジと差込ピン18の雄ネジにより、差込ピン18が支持部材20のネジ孔に螺合し、差込ピン18をその軸心の周りに回すことで差込ピン18を車輪1の幅方向に移動可能にする。これにより差込ピン18の位置調整が可能になる。
【0029】
上述の構成を有する係合部11を車輪1に係合させる手順について説明する。
【0030】
この係合部11を車輪1に係合させる場合には、図3のように支持部材20の両端部20a,20bで車輪1を挟むように配置して、差込ピン18をそれぞれ支持部材20の両端部部20a,20bに形成されたネジ孔に螺合させて差込ピン18を回していく。これにより、各差込ピン18の先端側を車輪1のホイールの中心部に形成されたホイール穴に差し込ませる。このように一対の差込ピン18が車輪1の両側からホイール穴に差し込まれて、係合部11が車輪1と係合させられた状態となる。この係合状態は、差込ピン18を回して車輪1の幅方向外側へ差込ピン18を移動させない限り確実に維持される。
【0031】
本発明の実施形態によると、この支持部材20の長さL(図3参照)を、異なる車輪1の幅に対応できるように設定しておく。即ち、異なる幅の車輪1が支持部材20の両端部20a,20b間に入るように支持部材20の長さLを設定しておけば、単に差込ピン18を回して車輪1の幅方向にその位置を調整することで、差込ピン18を異なる幅の車輪のホイール穴内に差し込んで係合部11を車輪1に適切に係合させることができる。さらに、異なる幅の車輪1に係合させるために長さの異なる差込ピン18を複数用意しておいてもよい。
【0032】
このように、本発明の実施形態によると、差込ピン18の位置調整をすること、及び/又は、長さの異なる差込ピン18を複数用意しておくことで、車輪1の幅が航空機の種類によって異なっても、係合部11を車輪1に係合させるのに不都合は生じない。
【0033】
なお、上述では車輪1のホイールの中心部に形成されたホイール穴に差込ピン18を差し込む場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、車輪1のホイールに係合させ、かつ、車輪1の幅方向に位置調整できる他の適切な手段を用いることができる。例えば、車輪1のホイールの中心部の周りに形成されたホイール穴に差込ピンなどの差込部を差し込むようにしてもよい。
【0034】
また、図4に示されるように、車輪1のホイールの窪み全体に差し込まれて車輪1に係合する係合部材21,22を用意し、これを車輪1のホイールの窪みに差し込んで係合させることもできる。この場合には、例えば図4に示されるように、一対の係合部材21,22を位置調整ボルト23で結合させる。図4の例では、両方の係合部材21,22に雌ネジが切られた挿入孔を形成しておき、全体に雄ネジが切られた位置調整ボルト23の両側をそれぞれ係合部材21,22の挿入孔に螺合させて、回転操作部24を回して位置調整ボルト23を回転させることで一対の支持部材20の間の距離を調節することができる。即ち、例えばこの位置調整ボルト23を右回りに回したら位置調整ボルト23がどちらの挿入孔の内部へも進んでいき、左回りに回したらどちらの挿入孔からも出てくる方向に進むように、両方の挿入孔の雌ネジの方向と位置調整ボルト23の雄ネジの方向を設定しておく。なお、図4において、係合部材21,22のうち、車輪1のホイールの窪み全体に差し込まれている部分は差込部に対応する。なお、係合部材21,22は上述の支持部材20に対応する。
【0035】
また、本発明の実施形態によると、係合部11は車体2から分離しているので、取り扱いが便利である。
【0036】
次に航空機の車輪1に係合させられた係合部11を挟持する挟持部13について説明する。
【0037】
図5は図1の車輪保持装置4の拡大図である。図5に示されるように、挟持部13は、係合部11を挟持するための一対のアーム部材26と、該アーム部材26を駆動するためのアーム部材駆動シリンダ27と、各アーム部材26の中心部付近を回転可能にピン28で固定する固定部材29とを有する。それぞれのアーム部材26の駆動端部をアーム部材駆動シリンダ27で結合している。これにより、アーム部材駆動シリンダ27を例えば油圧装置で伸縮させてピン28による固定部を中心に各アーム部材26を回転させる。一方、図6の側面図に示されるように、アーム部材26の挟持端部には貫通孔30が形成されている。なお、アーム部材駆動シリンダ27はアーム部材駆動部を構成するが、他の適切なものでアーム部材駆動部を構成してもよい。
【0038】
上述の挟持部13の構成により、アーム部材駆動シリンダ27を伸長させると、図5の破線で示される位置から図5の実線で示される位置まで一対のアーム部材26がそれぞれピン28を中心に係合部11の両端部20a,20bに向かって回転する。この回転により、各アーム部材26の挟持端部の貫通孔30に差込ピン18の頭部側(図4の例では、突出部31)が差し込まれる。これにより、係合部11と挟持部13が図1のy方向に関して結合され、かつ、係合部11が挟持部13により挟持された結合挟持状態になる。一方、この状態から、アーム部材駆動シリンダ27を縮めて、一対のアーム部材26を図5の破線のアーム部材26の位置まで回転させると、挟持部13による係合部11の挟持を解除することになる。なお、本発明によると、アーム部材26の挟持端部に形成される孔は貫通孔30に限定されず、代わりに、差込ピン18又は突出部31が差し込まれる凹部が形成されていてもよい。なお、図3の差込ピン18の頭部側が突出部31に対応する。
【0039】
本発明の実施形態によると、各アーム部材26の挟持端部の貫通孔30又は凹部は縦長に形成されている。これにより、航空機の車輪1の高さが異なっていても、それらの車輪1に対応して車輪1を挟持できる。即ち、車輪1が係合部11に係合させられている状態において、図3の例では差込ピン18の頭部側が係合部11から突出しており、図4の例では突出部31が突出しており、車輪1の高さに従って差込ピン18又は突出部31の高さも異なることになるが、貫通孔30又は凹部が縦長であれば、差込ピン18又は突出部31の高さが異なっていても差込ピン18の頭部側又は突出部31を貫通孔30又は凹部に挿入させて結合挟持状態にすることができる。
【0040】
上述では一対のアーム部材26を回転駆動させたが、水平方向に平行移動させるようにしてもよい。例えば、一対のアーム部材26が水平移動するようにガイドレールを車輪1の幅方向に設けておき、アーム部材駆動シリンダ27と同様なシリンダの伸縮により、一対のアーム部材26をガイドレールに沿って車輪1の幅方向に平行移動させて係合部11を挟持するようにしてもよい。
【0041】
なお、係合部11及び挟持部13は保持手段を構成するが、上述した係合部11及び挟持部13と同様の機能を果たす他の適切なもので保持手段を構成してもよい。
【0042】
このように、係合部11を挟持部13が挟持することにより車輪1を挟持したら、引込シリンダ14により車輪1を車体2内部方向へ引き込む。
【0043】
図1に示されるように、この引込シリンダ14の一端部は、車輪1の幅方向に延びている挟持部13の固定部材29に固定され、引込シリンダ14の他端部は車体2に固定される。図6及び図7は、引込シリンダ14の引き込み動作を示した側面図である。
【0044】
引込シリンダ14を図1又は図6の状態から縮めることで、挟持部13の固定部材29が引込ガイド34(図1参照)に案内されて係合部11及び挟持部13とともに車輪1を図1又は図6の位置から図2又は図7の位置まで車体内側へ引き込む。この引き込み動作により、車輪1は車輪1の下面と同一高さにあるリフト台35に載せられる。なお、この引き込み動作により、航空機の側が移動して車輪1がリフト台35に載せられてもよく、航空機移送装置10の車体2が移動して車輪1がリフト台35に載せられてもよい。
【0045】
次に、車輪1が載せられたリフト台35を持ち上げるリフトシリンダ15について説明する。
【0046】
図1に示されるように、一対のリフトシリンダ15は、それぞれ車体2の延出部5に設けられている。図8は図1のA−A矢視図である。図8に示されるように、リフトシリンダ15を伸ばすことにより回転軸36に一体的に形成された回転部材36aが矢印方向に破線で示される位置まで回転し、これにより、例えば回転軸36に一体的に形成された引込ガイド34と、さらに固定部材29とを介して(図5参照)、図9のように車輪1を載せたリフト台35が係合部11及び挟持部13と共に一体的に回転させられ持ち上げられる。
【0047】
このように、図7の位置から図9の位置まで係合部11、挟持部13及び車輪1が一体的に回転して持ち上げられる。なお、引込シリンダ14の一端部が挟持部13の固定部材29に取り付けられているが、その取り付け箇所は、リフトシリンダ15によるリフト台35、挟持部13及び車輪1の一体的な回転の中心軸36上に位置するようにしておき、かつ、引込シリンダ14の一端部がリフト台35、挟持部13及び車輪1の一体的な回転の中心軸36の回りに回転可能にしておく。これにより、リフトシリンダ15による回転、持ち上げ動作に支障が生じなくなる。なお、リフトシリンダ15はリフト手段を構成するが、リフトシリンダ15と同様の機能を果たすものでリフト手段を構成してもよい。
【0048】
このように航空機の車輪1をリフト台35に載せて地上から持ち上げたら、上述した車体2の自走機能により車体2を移動させて航空機を所望の位置へ移動させることができる。
【0049】
なお、航空機移送装置10を走行操作や、アーム部材駆動シリンダ27、引込シリンダ14及びリフトシリンダ15の操作などは、操作者がリモコンによって行うことができる。または、車体2に取り付けたられた操作レバーやパネルなどを操作して航空機移送装置10を操作してもよい。
【0050】
上述した本発明の実施形態によると、航空機を移送するために、係合部11の差込ピン18を車輪1のホイールを利用して、例えば、ホイールの穴やホイール全体の窪みに係合部11を係合させて、この係合部11を両側から挟持部13により挟持し、引込シリンダ14により車輪1を係合部11及び挟持部13と共にリフト台35上に引き込みさらにこのリフト台35を持ち上げて、その後航空機を移送する。これらの動作は車輪1のホイール穴やホイールの窪み全体に係合部11を係合させて行われることにより、航空機の車輪1と車体2の結合を実現している。従って、車輪1のタイヤには余計な応力を一切与えていないので、航空機移送時にタイヤの変形を引き起こすという弊害を確実に回避することができる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態による航空機移送装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1の航空機移送装置が航空機の車輪を引き込んだ状態を示す平面図である。
【図3】図1の航空機移送装置の車輪保持装置の係合部が車輪に係合している状態を示す平面断面図である。
【図4】図3の係合部の別の例を示す平面断面図である。
【図5】図1の車輪保持装置の拡大図である。
【図6】図1の航空機移送装置のアーム部材により係合部を挟持している状態を示す側面図である。
【図7】図6の状態から引込シリンダにより航空機の車輪を引き込んだ状態を示す側面図である。
【図8】図5の車輪保持装置のリフトシリンダを示す側面図である。
【図9】図7の状態からリフトシリンダにより車輪を持ち上げた状態を示す側面図である。
【図10】従来の航空機移送装置の構成を示す平面図である。
【符号の簡単な説明】
【0053】
1 航空機の車輪
2 車体
4 車輪保持装置
5 延出部
7 駆動輪
8 自走モータ
9 補助輪
10 航空機移送装置
11 係合部
13 挟持部
14 引込シリンダ
15 リフトシリンダ
18 差込ピン
20 支持部材
20a,20b 支持部材の両端部
21,22 係合部材
23 位置調整ボルト
24 回転操作部
26 アーム部材
27 アーム部材駆動シリンダ
28 ピン
29 固定部材
30 貫通孔
31 突出部
34 引込ガイド
35 リフト台
36 回転軸







【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の車輪を保持しながら移動することにより航空機を移送する航空機移送装置であって、
航空機の車輪のホイールに係合する係合部を有し、該車輪を保持する保持手段と、
車輪を保持した保持手段を車輪と共に持ち上げるリフト手段と、
前記保持手段とリフト手段が取り付けられ自走可能な車体とを備えることを特徴とする航空機移送装置。
【請求項2】
前記係合部はホイールの中心部に形成された穴に差し込まれることをとする請求項1に記載の航空機移送装置。
【請求項3】
前記係合部は、車輪の両側のホイール穴にそれぞれ差し込まれる一対の差込部と、該一対の差込部を車輪幅方向に移動可能に支持する支持部材とを有し、
該支持部材に支持された一対の差込部を車輪幅方向に移動させて車輪の両側から前記ホイール穴に差し込むことで、係合部が車輪に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の航空機移送装置。
【請求項4】
前記差込部は、雄ネジが切られた差込ピンを有し、
前記支持部材には、係合部を車輪に取り付ける時に車輪のホイール穴に対向する位置にネジ孔が形成され、該ネジ孔には前記差込ピンの雄ネジが螺合する雌ネジが切られていることを特徴とする請求項3に記載の航空機移送装置。
【請求項5】
前記支持部材は、一方の差込部を支持し車輪幅方向に対応する方向に挿入孔が形成された第1の係合部材と、他方の差込部を支持し車輪幅方向に対応する方向に挿入孔が形成された第2の係合部材と、第1の係合部材の挿入孔と第2の係合部材の挿入孔に両側が挿入される位置調整ボルトとを有し、
前記位置調整ボルトを右回り又は左回りに回転させることで第1の係合部材と第2の係合部材との間の距離を増加又は減少させるように、第1の係合部材の挿入孔と第2の係合部材の挿入孔にはそれぞれ所定の向きに雌ネジが切られ、位置調整ボルトには所定の向きに雄ネジが切られていることを特徴とする請求項3に記載の航空機移送装置。
【請求項6】
前記係合部は車体から分離されており
前記保持手段は、前記車輪に取付けられた係合部を両側から挟持する挟持部をさらに有し、
該挟持部は前記車体に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の航空機移送装置。
【請求項7】
前記挟持部は、車輪に係合した前記係合部を挟持する一対のアーム部材と、
該一対のアーム部材を車輪幅方向に移動させてアーム部材に係合部を挟持させるアーム部材駆動部とを有し、
アーム部材の係合部を挟持する部分には縦長孔が形成されており、前記係合部には、アーム部材により挟持された時に前記縦長孔に挿入される突出部が車輪幅方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の航空機移送装置。
【請求項8】
航空機の車輪を保持する車輪保持装置であって、前記車輪のタイヤ部分に押圧力を与えないようにホイール部分に係合する係合部と、該係合部を両側から挟持する挟持部とを有することを特徴とする車輪保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−192989(P2006−192989A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4687(P2005−4687)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)