説明

航空貨物輸送用固定具

【課題】 大型機器の使用が不可能な狭い航空機内に規定で定められているパレット固定荷重を超過するような大型貨物を運び入れて固縛する航空機輸送(Cargo liner)の荷造りに際して、少人数で短時間にしかも均質な張力で荷造りできる効率的な航空貨物輸送用固定具を提供する。
【構成】 大型貨物の移動や振動を抑制するための引っ張り力に耐え得る強固な材料からなる帯状体または紐状体を直角方向に積層してなる格子体または帯状体又は紐状体を織物構造に織ることにより形成された格子体の片面に大型貨物の前後方向および側面方向の移動を抑制する固定具と上下方向の移動を抑制する固定具を設けるとともに該固定具の端部に長さの調整が可能な緊張補助具を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は航空貨物輸送における搬送物を航空機の床面に固定する固定具に関するものである。特にこの出願の発明は航空機で大型貨物を搬送するに際し航空機の床面に少人数で短時間にしかも均質に固縛(固定)することができる航空貨物輸送用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やオートバイで荷物を積んで搬送する場合に荷崩れを防ぐために荷物を網体で被覆したり(特許文献1〜4)、紐で縛ったりすること(特許文献5)は普通に行われている。しかしながら航空貨物輸送(Cargo liner)において飛行中に荷崩れを起こした場合には荷崩れの修正が不可能であるだけでなく航空機の飛行そのものが危険になる場合もある。そのため航空貨物輸送に積載する貨物の搬送は床面にしっかりと固縛(固定)することが求められている。特に規定で定められているパレット固定荷重を超過するような大型貨物を航空機で搬送するに際してはしっかりと固縛することが必要であるが従来は図5に見られるように網体(2)を大型貨物(1)に被覆した後ベルト(3)を用いて航空機の床面(8)に固縛する方法が採用されている。
【特許文献1】実開平05− 54095号公報
【特許文献2】特開平08−258615号公報
【特許文献3】特開2007−182125号公報
【特許文献4】特開2006−315727号公報
【特許文献5】特開2006−206175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の大型貨物をベルトで航空機の床面に固縛(固定)する方法は上下方向および前後方向に多数のベルト掛けが必要であるため多くの人手と時間を必要とするだけでなくベルトで固縛する場合は一方を締めると他方が緩む等の問題があり貨物全体を均質に固縛することが困難である。また航空機の強度上の問題で大型貨物は機体の中央部である主翼の付け根に積載されるため主翼の付け根以外に積載される小型貨物を固縛する際に大きな障害となっている。この出願の発明は従来の上記課題を解決するものとして規定で定められているパレット固定(Tie Down)荷重を超過するような大型貨物を航空機の床面に少人数で短時間にしかも均質に固縛することができる航空貨物輸送用の固定具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この出願の発明は上記の課題を解決するものとして、第1には強靭な材質からなる帯状体または紐状体で形成された格子体の片面に格子体を床面に固縛するための固定具が設けられた航空貨物輸送用固定具を提供する。
第2には、格子体に設けられた固定具が帯状体または紐状体の長さ方向に、かつ互いに相反する方向に設けられた航空貨物輸送用固定具を提供する。
第3には、帯状体または紐状体で形成された格子体が織物構造をしている航空貨物輸送用固定具を提供する。
第4には、固定具の端部に長さ調整が可能な緊張補助具が係合された航空貨物輸送用固定具を提供する。
第5には、固定具が貨物の上下方向の移動を抑制する固定具と前後方向および側面方向の移動を抑制する固定具である航空貨物輸送用固定具を提供する。
第6には、固定具が大型貨物の前面、後面および両側面の少なくとも6本以上設けられた上記の航空貨物輸送用固定具を提供する。
【発明の効果】
【0005】
上記第1および第2の発明によれば、帯状体または紐状体で形成された格子体の片面に固定具が設けられた航空貨物輸送用固定具を使用することによりベルトを用いる方法に比較してベルトの長さ調整や位置決めに時間を費やすことなく少人数で短時間にしかも均質に大型貨物を床面に固縛することができる。
上記第3の発明によれば、帯状体または紐状体で形成された格子体が織物構造をしている航空貨物輸送用固定具を使用することにより上記の効果に加えて安定した格子体を保つことができ簡単に固縛することができる。
上記第4の発明によれば、固定具の端部に長さ調整用の緊張補助具が設けられた航空貨物輸送用固定具を使用することにより大型貨物を簡単に適度な長さに調整して固縛することができる。
上記第5の発明によれば、上記の効果に加えて貨物の上下方向の移動を抑制する固定具と前後方向および側面方向の移動を抑制する固定具を特定して設けることにより安定して固縛することができる。
上記第6の発明によれば、大型貨物の形状や大きさに対応して固定具の数を増すことによりさらに安定した固縛を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この出願の発明の航空貨物輸送用固定具は帯状体または紐状体で形成された格子体と該格子体の表面に固定具が設けられた構造をしており該格子体で大型貨物を被覆するとともに該格子体に設けられた固定具を航空機の機体の床面に固縛(固定)することを要旨とするものである。この航空貨物輸送用固定具は固縛のために必要な緊張力に耐える強靭な材料からなる帯状体または紐状体で形成された格子体と該格子体と航空機の床面を固縛するための固定具が設けられている点に特徴を有している。また、この出願の発明の航空貨物輸送用固定具は積載された大型貨物を固定するのに従来のような伸縮性のある網体を使用するのではなく伸縮性のない格子体を使用する点にも特徴を有している。
この出願の発明を図1〜図4にしたがって詳細に説明すると、図1は荷崩れを防ぐために大型貨物(1)の表面に網体(2)が被覆された状態を示したものである。なお、大型貨物(1)の表面を網体(2)で被覆することは大型貨物(1)を荷崩れなく航空機内に運び入れるためのものであり大型貨物(1)の表面を網体(2)で被覆することは従来から一般に行われている。
【0007】
従来の方法ではこの網体(2)が被覆された大型貨物(1)をベルトで固縛するのであるが、この出願の発明は大型貨物(1)をベルトで固縛するのではなく帯状体または紐状体で形成された格子体に設けられた多数の固定具を用いて航空機の床面と固縛するのである。図2はこの出願の発明の典型的な航空貨物輸送用固定具(4)を示した平面図である。図2における(5)は帯状体または紐状体で形成された格子体であるが、この格子体(5)は大型貨物の上面と側面を被覆できる程度の大きさが必要であるとともに格子体(5)を形成する帯状体および紐状体の材質は緊張しても伸縮しない強靭さが必要である。
この格子体(5)の構造は帯状体または紐状体を間隔をおいて並列に並べたものを直角方向に積載して重なり部分を係合したものでもよいが帯状体または紐状体を間隔をおいて並列に並べるだけでなく縦方向と横方向を織ることにより織物構造が形成されていることが強度の観点からも好ましい。また、図2における(6)は格子体(5)に設けられた格子体(5)と航空機の床面とを固縛するための固定具である。この固定具(6)は格子体(5)と航空機の床面を固縛するために格子体(5)の片面の互いに相反する方向に設けることが必要である。なお固定具(6)を格子体(5)に結合する方法は特に限定されているわけではないが大型貨物を固縛するための大きな緊張力が鋲を用いた時のように一点に集中しないように縦横の重なり部分を縫い合わせて緊張力が該重なり部分全体に分散させる手段が望ましい。
【0008】
図3はこの出願の発明の航空貨物輸送用固定具を大型貨物(1)に被覆して固定具(6)を航空機の床面(8)に固縛した時の態様を示した斜視図である。図3にも示されているように大型貨物(1)は帯状体または紐状体で形成された格子体(5)で被覆されているとともに格子体(5)の片面に設けられた固定具(6)によって航空機の床面(8)に固縛されている。図3における(7)は固定具(6)に簡単に係合できる長さ調整用の緊張補助具である。緊張補助具(7)も固定具(6)と同様に大型貨物(1)を固縛するための緊張力に耐える丈夫な材料で形成されることが必要であることはいうまでもない。図3では好適な固定手段として緊張補助具(7)を備えた固定具(6)を示したが、図3に示される態様に限定されることなく固定具(6)そのものを緊張補助具(7)と同じように長さの調整を可能にして緊張補助具(7)を省略することもこの出願の発明の別の態様として考慮することができる。
【0009】
なお、格子体(5)に設ける固定具(6)の数は多ければ多いほど貨物の形状に対応できて好ましいがコスト高の原因になるため実質的には実務に適応して固定具(6)の数は適宜選択すればよい。固定具(6)は上下方向、前後方向および側面方向の移動を抑制するためには最低限6本の固定具(6)が必要であるが、大型貨物(1)をしっかりと固縛するためには図3に示されているように少なくとも前方から見て左右対称に前方の角部に3本づつ、後方の角部に3本づつ、左右の側面方向に3本づつの合計18本の固定具(6)を用いことが好適な態様して考慮される。図4は固定具(6)と緊張補助具(7)を簡単にしかも強固に係合する典型的な構造を示したものであり、(9)は緊張補助具(7)の両端部に設けられた係止部である。そして(10)は長さ調整機構である。また(11)は固定具(6)の端部に設けられた係止部を示したものである。図4はこの出願の発明における固定具(6)と緊張補助具(7)の典型的な係止機構を例示したが簡単で強固に係合できる機構であれば特に図4に示されている構造に限定されるものではない。
【0010】
この出願の発明はこのようにして固定具(6)が設けられた格子体(5)を大型貨物(1)に被覆するとともに該格子体(5)に設けられた固定具(6)で該格子体(5)と航空機の床面(8)を固縛するだけであり従来のように多くの人手が必要なわけではなく、またベルトの組み合わせによる長さ調整や位置決めに時間を費やすことがないため大型貨物を少人数で短時間にしかも均質に航空機の床面に固縛することができる。この出願の発明はこのような優れた効果を有しているため大型貨物を積載する航空貨物輸送においても時間の超過なく正常に運行することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】貨物の表面に荷崩れを防ぐための網体が被覆された斜視図である。
【図2】本願発明の航空貨物輸送用固定具の平面図である。
【図3】航空貨物輸送用固定具の使用態様を示した斜視図である。
【図4】固定具と緊張補助具の結合手段を示した模式図である。
【図5】従来の紐を使用して固縛している態様を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0012】
1 大型貨物
2 網体
3 ベルト
4 航空貨物輸送用固定具
5 格子体
6 固定具
7 緊張補助具
8 航空機の床面
9 緊張補助具の係止部
10 長さ調整機構
11 固定具の係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状体または紐状体で形成された格子体の片面に格子体と床面を固縛するための固定具が設けられていることを特徴とする航空貨物輸送用固定具。
【請求項2】
格子体に設けられている固定具が帯状体または紐状体の長さ方向に互いに相反する方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の航空貨物輸送用固定具。
【請求項3】
帯状体または紐状体で形成された格子体が織物構造をしていることを特徴とする請求項1または2に記載の航空貨物輸送用固定具。
【請求項4】
固定具の端部に長さの調整が可能な緊張補助具が係合されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の航空貨物輸送用固定具。
【請求項5】
貨物の上下方向の移動を抑制する固定具と前後方向および側面方向の移動を抑制する固定具が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の航空貨物輸送用固定具。
【請求項6】
固定具が少なくとも6本以上設けられていることを特徴とする請求項5に記載の航空貨物輸送用固定具。
















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−166748(P2009−166748A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8746(P2008−8746)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(508019148)
【Fターム(参考)】