説明

舶用プロペラ

【課題】 推進効率の向上を図るとともに、主機にかかる負荷を低減することができる舶用プロペラを提供する。
【解決手段】 主機から回転駆動力が伝達されるボス部2と、ボス部2から回転軸線を中心とした径方向外側に延び、周方向等間隔に配置された複数のプロペラ翼3と、が設けられ、プロペラ翼3の後縁側スキュー角θSTが前縁側スキュー角θSLよりも大きく、プロペラ翼3に働く負荷に基づき、プロペラ翼3におけるピッチ角が変化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用プロペラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、舶用プロペラはNiAlBz(ニッケル、アルミニウム、ブロンズ)などの合金を材料とした一体構造として製作され、かつ、剛に製作された舶用プロペラが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
一方で、舶用プロペラのボス部とプロペラ翼とを別個に製作し、ボス部にプロペラ翼を取り付けて構成されるプロペラ翼も製作されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載された舶用プロペラでは、スキュー角を有するプロペラ翼自体を一体構造として剛に製作し、プロペラ翼のピッチ角が変化しないように、プロペラ翼をボス部に取り付けている。
【0003】
上述の舶用プロペラでは、プロペラに働く負荷の変化により、プロペラのプロペラ翼は変形しない構成、またはプロペラ翼のピッチ角は変化しない構成とされている。
もし、プロペラ翼が当該負荷の変化により変形したとしても、変形による影響が無視できるほど微小な変形にとどまるように構成されている。プロペラ翼のピッチ角についても、変化しても、変化による影響が無視できるほど微小な変化にとどまるように構成されている。
【特許文献1】特公昭60−18599号公報
【特許文献2】特表2000−500086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、上述の特許文献1におよび2に記載された舶用プロペラを備えた船舶においては、就航後に波浪中を航行するなど、抵抗が増大するとプロペラに働く負荷も増大し、主機の負荷が増大することになる。舶用プロペラは、このように主機の負荷が増大したときに備えて、予めプロペラ翼のピッチ角が低めに設計され、回転数が上がるように余裕が見込まれている。このような設計にすることにより、主機の負荷増大が防止されている。
【0005】
しかしながら、上述の方法では、船舶の航行時に使用される条件、つまり本来の設計点ではプロペラ翼のピッチ角は最適な値よりも小さくなるため、プロペラは、最も推進効率の高い条件では使用されず、それよりも効率の悪い条件で使用されるという問題があった。
【0006】
さらに、舶用プロペラにおいては、船底側でプロペラ翼が受ける負荷と、側方でプロペラ翼が受ける負荷とが異なるため、舶用プロペラが一回転する間にもプロペラ翼が受ける負荷が変化していた。すると、主機にかかる負荷も舶用プロペラの回転にともない変動し、主機に負荷がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、推進効率の向上を図るとともに、主機にかかる負荷を低減することができる舶用プロペラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の舶用プロペラは、主機から回転駆動力が伝達されるボス部と、該ボス部から回転軸線を中心とした径方向外側に延び、周方向等間隔に配置された複数のプロペラ翼と、が設けられ、前記プロペラ翼の後縁側スキュー角が前縁側スキュー角よりも大きく、前記プロペラ翼に働く負荷に基づき、前記プロペラ翼におけるピッチ角が変化することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、プロペラ翼の後縁側スキュー角が前縁側スキュー角よりも大きいため、プロペラ翼に働く負荷により、プロペラ翼にはピッチ角を小さくするトルクが作用する。そのため、例えば、プロペラ翼に働く負荷が大きくなると、プロペラ翼におけるピッチ角が小さくなるため、プロペラ翼に働く負荷が小さくなる。その結果主機に係る負荷が小さくなる。一方、プロペラ翼に働く負荷が小さくなると、プロペラ翼におけるピッチ角大きくなり元の角度に戻るため、プロペラ翼が発生する推力が大きくなり元の推力に戻る。
【0010】
以上のことから、プロペラ翼に働く負荷が小さいとき、例えば船舶が平水中を航行する場合に、プロペラ翼の推進効率が最も高くなるようにピッチ角を設定し、舶用プロペラの推進効率の向上を図ることができる。一方で、プロペラ翼に働く負荷が大きいとき、例えば船舶が波浪中を航行する場合には、プロペラ翼に働く負荷によりプロペラ翼のピッチ角が小さくなるため、主機への負荷を低減することができる。
【0011】
上記発明においては、前記後縁側スキュー角は、前記前縁側スキュー角の約2倍の角度より大きいことが望ましい。
【0012】
本発明によれば、後縁側スキュー角が前縁側スキュー角の約2倍の角度以下の場合と比較して、プロペラ翼に働く負荷が大きくなったときに、より確実にプロペラ翼のピッチ角を小さくすることができる。
【0013】
上記発明においては、前記プロペラ翼に働く負荷により、前記プロペラ翼が変形して前記ピッチ角が変化することが望ましい。
【0014】
本発明によれば、プロペラ翼が径方向に沿って延びる中心軸線回りに回動する方法と比較して、プロペラ翼自体が変形するため、より少ない構成でプロペラ翼のピッチ角を変化させることができる。
【0015】
上記発明においては、前記プロペラ翼は、前記径方向に沿って延びる中心軸線回りに回動可能に配置され、前記プロペラ翼と前記ボス部との間には、前記プロペラ翼における前記中心軸線回りの回動を規制する弾性部が配置されていることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、プロペラ翼が変形する方法と比較して、弾性部によりプロペラ翼の回動を規制するため、ピッチ角の変化をより適切に調節することができる。
つまり、プロペラ翼を変形させてピッチ角を変化させる方法と比較して、ピッチ角の変化の範囲を広く設定することができる。さらに、プロペラ翼に働く負荷に対するピッチ角の変化の割合をより適切に設定することができる。
【0017】
上記発明においては、前記前縁側スキュー角と、前記後縁側スキュー角との和であるスキュー角が、約10°から約60°の範囲内の角度であることが望ましい。
【0018】
本発明によれば、このような角度範囲とすることで、プロペラ翼を回動させてピッチ角を変更させるスピンドルトルクが発生する。その一方で、プロペラ翼に働く応力を、プロペラ翼の許容応力より低く抑えられる。
なお、スキュー角の範囲としては、上述のように約10°から約60°の範囲内の角度であってもよいし、好ましくは、約25°から約60°の範囲内の角度、より好ましくは、約30°から約60°の範囲内の角度であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の舶用プロペラによれば、プロペラ翼の後縁側スキュー角が前縁側スキュー角よりも大きいため、プロペラ翼に働く負荷が大きくなると、プロペラ翼におけるピッチ角が小さくなる一方、プロペラ翼に働く負荷が小さくなると、プロペラ翼におけるピッチ角大きくなり元の角度に戻る。そのため、プロペラ翼の推進効率が最も高くなるようにピッチ角を設定して推進効率の向上を図ることができ、同時に、プロペラ翼に働く負荷が大きい場合には、ピッチ角を小さくして主機にかかる負荷を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る舶用プロペラついて図1から図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る舶用プロペラの構成を説明する模式図である。図1は舶用プロペラを船尾側から船首側に向いて見た図である。
【0021】
本実施形態の舶用プロペラ1には、図1に示すように、主機(図示せず)から回転駆動力が伝達されるボス部2と、回転駆動されることにより推進力を発生させる複数のプロペラ翼3とが設けられている。
【0022】
ボス部2には、回転軸線を中心として径方向外側に延びるプロペラ翼3が、周方向等間隔に配置されている。本実施形態では、4枚のプロペラ翼3がボス部2に取り付けられた例に適用して説明する。
なお、ボス部2に取り付けられるプロペラ翼3の枚数は、上述のように4枚であってもよいし、それよりも多くてもよいし、少なくてもよく、特に限定するものではない。
【0023】
図2は、図1のプロペラ翼の形状を説明する模式図である。
プロペラ翼3は、図2に示すように、前縁側スキュー角θSLおよび後縁側スキュー角θSTからなるスキュー角θを有するスキュー型のプロペラ翼である。スキュー角θ、前縁側スキュー角θSLおよび後縁側スキュー角θSTの関係は以下の式(1)に示すとおりである。
θ=θSL+θST ・・・(1)
スキュー角θは、約10°から約60°の範囲内、好ましくは約25°から約60°の範囲内、より好ましくは約30°から60°の範囲内の角度で設定されている。
【0024】
ここで、前縁側スキュー角θSLは、舶用プロペラ1の回転中心線から羽幅中心線Mへ引いた接線Lと、プロペラ翼3の根元側における羽幅中心線Mの端部と舶用プロペラ1の回転中心線とを結んだプロペラ中心線Cとの間の角度である。一方、後縁側スキュー角θSTは、舶用プロペラ1の回転中心線からプロペラ翼3の翼端側の端部を結んだ線Tと、プロペラ中心線Cとの間の角度である。
【0025】
さらに、前縁側スキュー角θSLと後縁側スキュー角θSTとは以下の式(2)の関係を満たしている。
θST>2θSL ・・・(2)
【0026】
本実施形態では、プロペラ翼3が繊維強化プラスチックなど、従来の剛に製造されたプロペラ翼と比較して弾性を有する材料で形成された場合に適用して説明する。なお、プロペラ翼3の材料としては、上述の繊維強化プラスチックに限られることなく、従来から用いられているNiAlBzからなる合金であってもよく、特に限定するものではない。このような合金を用いてプロペラ翼3を製造した場合には、プロペラ翼3が負荷により変形可能な形状とすることが望ましい。
【0027】
図3は、図2のプロペラ翼に働くスピンドルトルクを説明するA−A断面図である。
プロペラ翼3は、図3に示すように、船首側(図3の上側)のフェイス面4および船尾側(図3の下側)のバック面5から構成され、回転方向(図3の左方向)に向かってピッチ角βを有するように配置されている。
ここで、プロペラ翼3に働くスピンドルトルクMSPは、図3に示すように、ピッチ角βを増減させるトルクである。
【0028】
次に、上記の構成からなる舶用プロペラ1における作用について説明する。
本実施形態における舶用プロペラ1は、主機(図示せず)により回転駆動されることにより推進力を発生させる。
プロペラ翼3に働く負荷が高くなると、プロペラ翼3における前縁側(図3の右側)に働く負荷と比較して、後縁側(図3の左側)に働く負荷が高くなる。そのため、プロペラ翼3には、ピッチ角βを小さくする(図3における時計回りに働く)スピンドルトルクMSPが働く。すると、プロペラ翼3自体が変形することによりピッチ角βが小さくなり、舶用プロペラ1に働く負荷が小さくなる。
【0029】
一方、プロペラ翼3に働く負荷が小さくなると、プロペラ翼3における前縁側および後縁側に働く負荷の差が小さくなる。そのため、プロペラ翼3に働くスピンドルトルクMSPが小さくなり、プロペラ翼3は自らの弾性により変形量が小さくなり、プロペラ翼3のピッチ角βが大きくなる、つまり元のピッチ角βに戻る。
【0030】
ここで、プロペラ翼3に働く負荷が高くなる場合とは、例えば船舶が波浪中を航行する場合や、プロペラ翼3が回転する際に船底の近傍を通過する場合などを例示することができる。一方、プロペラ翼3に働く負荷が小さくなる場合とは、例えば船舶が平水中を航行する場合や、プロペラ翼3が回転する際に船底から離れた側方などを通過する場合などを例示することができる。
【0031】
ここで、プロペラ翼3のピッチ角βの変化と、主機の馬力の変化との関係について説明する。つまり、主機にかかる負荷の変化が所定の範囲内に収まるような、プロペラ翼3のピッチ角βの変化について説明する。このようにプロペラ翼3のピッチ角βを変化させることにより、例えば、平水中を航行する場合と、波浪中を航行する場合との間で、主機の馬力の変化が所定の範囲内に収まる。あるいは、プロペラ翼3が1回転する間における主機の馬力の変化が所定の範囲内に収まる。
【0032】
以下では、船舶が平水中を航行する場合と、波浪中を航行する場合との間での、ピッチ角βの変化と、主機の馬力の変化との関係について説明する。
プロペラ翼3のピッチと、主機の馬力との間には以下の関係式(3)が成立している。
【数1】

ここで、△Pはピッチ比の増減量であり、Kは定数であり、Nは主機または舶用プロペラ1の回転数であり、BHPは主機の馬力であり、△BHPは主機の馬力の増減量である。さらに添え字のOは平水中を表し、Sは波浪中を表している。
【0033】
図4は、図3のプロペラ翼におけるピッチ角の変化量と、主機の馬力変化との関係を示すグラフである。
上述の関係式(3)をグラフにして表したのが、図4に示すグラフである。このグラフでは、主機の馬力の増減量を、平水中における主機の馬力で無次元化した値(△BHP/BHP)が増加するにともない、ピッチ比(△P)が低下している。
本実施形態では、△BHP/BHPが約+0.2から約+0.5の範囲内に収まるようにピッチ比(△P)を設定している。言い換えると、△BHP/BHPが約+0.2から約+0.5の範囲内に収まるように、プロペラ翼3のピッチ角βが変化している。
【0034】
上記の構成によれば、プロペラ翼3の後縁側スキュー角θSTが、前縁側スキュー角θSLの2倍の角度よりも大きいため、プロペラ翼3に働く負荷により、プロペラ翼3にはピッチ角βを小さくするスピンドルトルクMSPが作用する。そのため、例えば、プロペラ翼3に働く負荷が大きくなると、プロペラ翼3におけるピッチ角βが小さくなるため、プロペラ翼3に働く負荷が小さくなる。その結果、主機に係る負荷が小さくなる。一方、プロペラ翼3に働く負荷が小さくなると、プロペラ翼3におけるピッチ角βが大きくなり、元の角度に戻るため、プロペラ翼3が発生する推力が大きくなり、元の推力に戻る。
【0035】
以上のことから、プロペラ翼3に働く負荷が小さいとき、例えば船舶が平水中を航行する場合に、プロペラ翼3の推進効率が最も高くなるようにピッチ角βを設定し、舶用プロペラ1の推進効率の向上を図ることができる。一方で、プロペラ翼3に働く負荷が大きいとき、例えば船舶が波浪中を航行する場合には、プロペラ翼3に働く負荷によりプロペラ翼3のピッチ角βが小さくなるため、主機への負荷を低減することができる。
【0036】
プロペラ翼3自体が変形することによりピッチ角βが変化するため、プロペラ翼3が径方向に沿って延びる中心軸線回りに回動する方法と比較して、より少ない構成でプロペラ翼3のピッチ角を変化させることができる。
【0037】
図5は、図1のプロペラ翼に働くスピンドルトルクと、スキュー角との関係を説明するグラフである。図6は、図1のプロペラ翼に働く応力と、スキュー角との関係を説明するグラフである。
さらに、プロペラ翼3におけるスキュー角θの範囲を、約10°から約60°までの範囲内の角度、好ましくは、約25°から約60°までの範囲内の角度、より好ましくは約30°から約60°の範囲内の角度とすることで、図5に示すように、プロペラ翼3を回動させてピッチ角βを変更させるスピンドルトルクMSPが発生する。
その一方で、図6に示すように、プロペラ翼3に働く応力をプロペラ翼3の許容応力ASより低く抑えられる。
【0038】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図7から図10を参照して説明する。
本実施形態の舶用プロペラの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、ピッチ角の変更に係る構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図7から図10を用いてピッチ角の変更に係る構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る舶用プロペラの構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
本実施形態の舶用プロペラ101には、図7に示すように、主機(図示せず)から回転駆動力が伝達されるボス部2と、回転駆動されることにより推進力を発生させる複数のプロペラ翼103と、が設けられている。
【0040】
プロペラ翼103は、第1の実施形態のプロペラ翼3と略同一な形状に形成されたものであって、従来のプロペラ翼と同様に、プロペラ翼103に働く負荷によりプロペラ翼103自体が変形しない、または変形してもその影響が無視できる程度の変形となる剛性を有するものである。
プロペラ翼103には、ボス部2に対してプロペラ翼103を回動可能に支持する回動支持部110が設けられている。
【0041】
図8は、図7の回動支持部の構成を説明する部分拡大図である。図9は、図8の回動支持部の構成を説明するB−B断面図である。
回動支持部110は、プロペラ翼103の翼根側端部に配置され、舶用プロペラ101の回転軸線を中心とした径方向に沿った中心軸線C回りにプロペラ翼103を回動可能に支持するものである。
回動支持部110には、図8および図9に示すように、プロペラ翼103の翼根側端部に配置された略円柱状または円板状の台部111と、台部111とボス部2との間に配置されたバネ部(弾性部)112と、が設けられている。
【0042】
台部111は、ボス部2に対して中心軸線C回りに回動可能に配置されたものである。台部111には、バネ部112が取り付けられる接続部113が設けられている。
接続部113は、図9に示すように、中心軸線Cから径方向に離れた位置であって、図8に示すように、台部111からボス部2の内側(図8の下側)に向かって延びる柱状の部材である。
【0043】
バネ部112は、プロペラ翼103における中心軸線C回りの回動を規制することにより、プロペラ翼103に負荷が働いた際のピッチ角βの変化量を調節するものである。
回動支持部110には、一対のバネ部112が設けられている。バネ部112は、図9に示すように、接続部113における台部111の接線方向に沿って配置され、バネ部112の一方の端部が接続部113に取り付けられている。さらに、バネ部112の他方の端部はボス部2に取り付けられている。例えば、ボス部2における内壁などに取り付けられている。
【0044】
図8および図9に示すように、接続部113を挟んで一対のバネ部112を配置することで、バネ部112は、ピッチ角βが大きくなる回転方向や小さくなる回転方向の区別なく、ピッチ角βの変化量を調節することができる。
【0045】
次に、上記の構成からなる舶用プロペラ101における作用について説明する。
本実施形態における舶用プロペラ101は、主機(図示せず)により回転駆動されることにより推進力を発生させる。
プロペラ翼103に働く負荷が高くなると、プロペラ翼103には、ピッチ角βを小さくするスピンドルトルクMSPが働く。すると、回動支持部110のバネ部112が、スピンドルトルクMSPの大きさに応じて圧縮および伸張され、プロペラ翼103のピッチ角βが小さくなる。その結果、舶用プロペラ101に働く負荷が小さくなる。
【0046】
一方、プロペラ翼103に働く負荷が小さくなると、プロペラ翼103に働くスピンドルトルクMSPが小さくなる。すると、回動支持部110のバネ部112は、その弾性力により圧縮および伸張し、プロペラ翼103のピッチ角βが大きくなる、つまり元のピッチ角βに戻る。
【0047】
上記の構成によれば、第1の実施形態のようにプロペラ翼3を変形させてピッチ角βを変更する方法と比較して、バネ部112によりプロペラ翼103の回動を規制するため、ピッチ角βの変化をより適切に調節することができる。
つまり、プロペラ翼3を変形させてピッチ角βを変化させる方法と比較して、プロペラ翼103の剛性などを考慮することなくバネ部112の弾性率を選定できるため、ピッチ角βの変化の範囲を広く設定することができる。さらに、バネ部112の弾性率を適切に選定することができるため、プロペラ翼103に働く負荷に対するピッチ角βの変化の割合をより適切に設定することができる。
【0048】
図10は、図8の回動支持部の別の実施形態を説明する部分拡大図である。
なお、回動支持部110の構成としては、上述のようにバネ部112を用いた構成であってもよいし、図10に示すように、バネ部112の代わりにゴム部(弾性部)122を用いた回動支持部120であってもよく、特に限定するものではない。
この構成の場合、ゴム部122は、プロペラ翼103の中心軸線Cを中心とした略円柱状または略円板状の部材であって、台部122とボス部122との間に配置されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る舶用プロペラの構成を説明する模式図である。
【図2】図1のプロペラ翼の形状を説明する模式図である。
【図3】図2のプロペラ翼に働くスピンドルトルクを説明するA−A断面図である。
【図4】図3のプロペラ翼におけるピッチ角の変化量と、主機の馬力変化との関係を示すグラフである。
【図5】図1のプロペラ翼に働くスピンドルトルクと、スキュー角との関係を説明するグラフである。
【図6】図1のプロペラ翼に働く応力と、スキュー角との関係を説明するグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る舶用プロペラの構成を説明する模式図である。
【図8】図7の回動支持部の構成を説明する部分拡大図である。
【図9】図8の回動支持部の構成を説明するB−B断面図である。
【図10】図8の回動支持部の別の実施形態を説明する部分拡大図である。
【符号の説明】
【0050】
1,101 舶用プロペラ
2 ボス部
3,103 プロペラ翼
112 バネ部(弾性部)
122 ゴム部(弾性部)
θSL 前縁側スキュー角
θST 後縁側スキュー角
θ スキュー角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機から回転駆動力が伝達されるボス部と、
該ボス部から回転軸線を中心とした径方向外側に延び、周方向等間隔に配置された複数のプロペラ翼と、が設けられ、
前記プロペラ翼の後縁側スキュー角が前縁側スキュー角よりも大きく、
前記プロペラ翼に働く負荷に基づき、前記プロペラ翼におけるピッチ角が変化することを特徴とする舶用プロペラ。
【請求項2】
前記後縁側スキュー角は、前記前縁側スキュー角の約2倍の角度より大きいことを特徴とする請求項1記載の舶用プロペラ。
【請求項3】
前記プロペラ翼に働く負荷により、前記プロペラ翼が変形して前記ピッチ角が変化することを特徴とする請求項1または2に記載の舶用プロペラ。
【請求項4】
前記プロペラ翼は、前記径方向に沿って延びる中心軸線回りに回動可能に配置され、
前記プロペラ翼と前記ボス部との間には、前記プロペラ翼における前記中心軸線回りの回動を規制する弾性部が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の舶用プロペラ。
【請求項5】
前記前縁側スキュー角と、前記後縁側スキュー角との和であるスキュー角が、約10°から約60°の範囲内の角度であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の舶用プロペラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−67226(P2009−67226A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237814(P2007−237814)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)