説明

船外機

【課題】排気ガスの通路面積の確保が容易であり、かつ排気音が空中に洩れ難く騒音を低減することが可能である。
【解決手段】ロアケース14内にプロペラシャフトが軸支され、プロペラシャフトにプロペラが固定されるとともに、エンジン12の駆動力が動力伝達機構20を介してプロペラシャフトに伝達されプロペラが回転する船外機6において、ロアケース14に排気ケース600を設け、排気ケース600は、プロペラシャフトの上方に位置してエンジン12からの排気ガスを導く上方排気通路610と、プロペラシャフトの後方に開口する排気出口620と、上方排気通路610と排気出口620とを連通する連通排気通路630とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンからの排気ガスを水中に排出する船外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船外機にはエンジンからの排気ガスを水中に排出するための排気通路が設けられるが、通常、排気通路はプロペラのボス部内に形成され、排気ガスはそのプロペラボス部内の排気通路を通ってプロペラの後方から排出されている(特許文献1,2)。ところで、排気通路は船外機の出力に応じた大きさのものである必要があり、例えば高出力の船外機にあっては、エンジンから排出される排気ガス量が多いため、断面構の大きな排気通路が必要である。このため、例えば、プロペラをロアケースの前側に配置したり(特許文献3)、アッパケースからプロペラの後方に排気ガスを排出するものがある(特許文献4)。
【特許文献1】特許第2747725号公報
【特許文献2】特開平7-144695号公報
【特許文献3】特許第2717975号公報
【特許文献4】特公平7-74033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の特許文献1,2の排気構造においては、プロペラのプロペラボス部内に排気通路を形成しており、プロペラボス部によって通路面積を確保するには制限があり、しかも通路断面積によって排気抵抗が大きくなる。
【0004】
また、特許文献3においては、プロペラがロアケースの前側に配置されているために、海中の障害物にプロペラが接触する虞がある。
【0005】
さらに、特許文献4においては、プロペラの上方に排気出口が形成されており、排気出口が水面上に露出する場合があり、排気音が空中に洩れ易い。
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、排気ガスの通路面積の確保が容易であり、かつ排気音が空中に洩れ難く騒音を低減することが可能な船外機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
ロアケース内にプロペラシャフトが軸支され、前記プロペラシャフトにプロペラが固定されるとともに、エンジンの駆動力が動力伝達機構を介して前記プロペラシャフトに伝達され前記プロペラが回転する船外機において、
前記エンジンからの排気ガスを水中に排出する排気ケースを備え、
前記排気ケースは、
前記プロペラシャフトの上方に位置して前記エンジンからの排気ガスを導く上方排気通路と、
前記プロペラシャフトの後方に開口する排気出口と、
前記上方排気通路と前記排気出口とを連通する連通排気通路とを有することを特徴とする船外機である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記プロペラをプロペラボス部に設け、
前記プロペラボス部と前記プロペラシャフトとの間にダンパーを配置したことを特徴とする請求項1に記載の船外機である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記排気ケースの前記排気出口が形成された部分は、
前記プロペラシャフトの後方を回転可能に支持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船外機である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
前記動力伝達機構は、変速機を備え
前記変速機は、
入力シャフトがエンジン側と接続され、
出力シャフトがプロペラシャフト側と接続され、
前記入力シャフトと前記出力シャフトとの間の変速比を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の船外機である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
第1プロペラを回転する第1プロペラシャフトと、
第2プロペラを回転する第2プロペラシャフトと、
前記第1プロペラと前記第2プロペラを互いに逆方向に回転するプロペラ2重反転機構とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機。
【0012】
請求項6に記載の発明は、
前記排気ケースは、上側が前記ロアケースに設けられ、
前記上方排気通路が、アッパケースの排気通路と連通していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、
前記排気出口は、前記プロペラのプロペラボス部と略同じ径であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の船外機である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、
前記排気ケースの前記連通排気通路が形成される部分の左右幅は、
前記ロアケースのトーピード部の左右幅より小さくしたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の船外機である。
【発明の効果】
【0015】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0016】
請求項1に記載の発明では、プロペラシャフトの上方に位置してエンジンからの排気ガスを導く上方排気通路と、プロペラシャフトの後方に開口する排気出口と、排気通路と排気出口とを連通する連通排気通路とを有することで、大きな通路面積を容易に確保することができ、またプロペラボス部の外径を小さくできるので、ロワーケースからプロペラボス部までの水の抵抗を低くできる。また、プロペラ後方の水の流れで排気ガスの吸出しによりさらに排気抵抗が下がり、排気ガスの巻き込みも防止できる。また、排気音が空中に洩れ難く騒音を低減することが可能である。
【0017】
請求項2に記載の発明では、プロペラボス部内に排気通路を設けないからダンバーを配置でき、海中障害物にプロペラが接触してもダンバーが緩衝となる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、排気ケースの排気出口が形成された部分は、プロペラシャフトの後方を回転可能に支持し、プロペラシャフトを両持ちにすることで、動力伝達機構のギヤの負担が小さくなりギヤ径を小さくすることができ、トーピード径が小さくなりロワ―ケースの抵抗が抑えられる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、動力伝達機構が入力側と出力側の変速比を変化させる変速機とを備えることで、特に低速時に高変速比を選択することで、十分な駆動トルク特性を得ることができ、そのプロペラ性能を最大限発揮させることで、発進加速性能及び逆制動停止性能を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明では、第1プロペラと第2プロペラを互いに逆方向に回転するプロペラ2重反転機構を有し、トータルのプロペラ翼面積が推力を得るプロペラが1つ設けられているシングルプロペラに比較して大きくなることから、プロペラキャビテーション性能が非常に優れている。
【0021】
請求項6に記載の発明では、排気ケースの上側をロアケースに設けることで、上方排気通路を簡単にアッパケースの排気通路と連通することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、排気出口がプロペラのプロペラボス部と略同じ径であり、水の抵抗を低下することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、排気ケースの連通排気通路が形成される部分をロアケースのトーピード部の左右幅より小さくしたから、水の抵抗を低下することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の船外機の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0025】
図1は船舶に備えた船外機の側面図、図2は船外機の動力伝達機構、プロペラ2重反転機構及び排気通路を示す断面図、図3はプロペラ2重反転機構の一部拡大図、図4は船外機のケーシングを進行方向後方から見た図、図5は図3のV−V線に沿う断面図である。矢印Frは船舶1の進行方向前方を示し、なお、後記する左右とは、前記前方に向っての方向をいうものとする。
【0026】
この実施の形態では、図1に示すように、船舶1の船体2には船尾板2aにクランプブラケット4が固定され、このクランプブラケット4にはスイベルブラケット5が上下方向に回動可能に取り付けられている。このスイベルブラケット5には船外機6が左右方向へ回動可能に取り付けられている。船外機6には前後に第1プロペラ7と第2プロペラ8が備えられている。
【0027】
船外機6はアッパカウル9、ボトムカウル10及びケーシング11を有している。このアッパカウル9及びボトムカウル10内にはエンジン12が配置されている。ケーシング11はアッパケース13及びロアケース14から構成され、アッパケース13の上部はエプロン15で覆われている。
【0028】
ケーシング11を構成するアッパケース13及びロアケース14の内部には、エンジン12の動力を第2プロペラ8及び第1プロペラ7へ伝達する動力伝達機構20と、前進、後進及び中立の切換を行なう前後進切換機構30と、第1プロペラ7と第2プロペラ8を互いに逆方向に回転するプロペラ2重反転機構40とが備えられている。
【0029】
動力伝達機構20には、変速機50が備えられている。この変速機50は、図2に示すように、入力シャフト50aがアルミ合金製の排気ガイド500を貫通してエンジン側と接続され、出力シャフト50bがプロペラシャフト側と接続され、入力シャフト50aと出力シャフト50bとの間の変速比を変化させるようになっている。入力シャフト50aのエンジン側とは、エンジン12のクランク軸に直接接続されてもよいし、ギヤ機構を介して減速して接続してもよい。また、出力シャフト50bのプロペラシャフト側は、ドライブシャフト202の上部202aに接続され、ドライブシャフト202はロアケース14に軸受63を介して回動可能に支持され、変速機50の出力をプロペラ2重反転機構40に伝達する。変速機50はエンジン回転速度やエンジン運転条件に応じて入力側と出力側の変速比を変化させる。
【0030】
プロペラ2重反転機構40は、第1プロペラ7と第2プロペラ8をそれぞれ駆動するための2つの被駆動ギヤ401,402と、この2つの被駆動ギヤ401,402を同時に駆動するピニオンギヤ403とを有している。第1プロペラシャフト404には、第2プロペラシャフト405が回転可能に支持されている。ピニオンギヤ403は、ドライブシャフト202の下部202bに一体回転可能に固定され、変速機50の出力側をピニオンギヤ403に結合している。被駆動ギヤ401,402と、ピニオンギヤ403はそれぞれベベルギヤが用いられ、水平に配置されたピニオンギヤ403には対向して配置された2つの被駆動ギヤ401,402が噛み合っている。
【0031】
2つの被駆動ギヤ401は、第1プロペラシャフト404に支持され、この第1プロペラシャフト404は後方の第2プロペラ8まで延びている。また、被駆動ギヤ402は第2プロペラシャフト405に支持され、この第2プロペラシャフト405は前方の第1プロペラ7まで延びている。
【0032】
第2プロペラシャフト405のロアケース14から後方へ延出する後端部には第1プロペラ7が一体回転可能に設けられており、この第1プロペラ7の後方であって、かつ、第1プロペラシャフト404の第2プロペラシャフト405から後方へ延出する後端部には第2プロペラ8が一体回転可能に設けられている。
【0033】
第1プロペラ7と第2プロペラ8は、それぞれプロペラボス部7a,8aに設けられ、第1プロペラシャフト404の後端部404aにはワッシャ900を介してナット901が締め付けられ、プロペラボス部7a,8aの抜け止めとなっている。
【0034】
プロペラボス部7a,8aの内側には内筒7b,8bが設けられている。プロペラボス部7aの前側には内側向きのフランジ部7a1が形成され、プロペラボス部8aの後側には内側向きのフランジ部8a1が形成されている。また、内筒7bには、後側に外側向きのフランジ部7b1が形成され、内筒8bには前側に外側向きのフランジ部8b1が形成されている。
【0035】
プロペラボス部7a,8aと内筒7b,8bとの間には、ダンパー7c,8cがそれぞれに焼き付けて設けられている。ダンパー7cは、プロペラボス部7aの内側向きのフランジ部7a1と、内筒7bの外側向きのフランジ部7b1によってプロペラ軸方向の移動が規制され、ダンパー8cは、プロペラボス部8aの内側向きのフランジ部8a1と、内筒8bの外側向きのフランジ部8b1によってプロペラ軸方向の移動が規制されている。このようにして、プロペラボス部7aと第2プロペラシャフト405の間に、内筒7bを介してダンパー7cが配置され、プロペラボス部8aと第1プロペラシャフト404の間に、内筒8bを介してダンパー8cが配置されている。この実施の形態では、プロペラボス部7a,8a内には排気通路を設けないからダンバー7c,8cを配置でき、海中障害物に第1プロペラ7と第2プロペラ8が接触してもダンバー7c,8cが緩衝となる。
【0036】
一方、第1プロペラシャフト404の前端部の外周には軸受408によって回転自在に支承された被駆動ギヤ402が一体回転可能に配されており、この被駆動ギヤ402の後方であって、かつ、第2プロペラシャフト405の前端部の外周には軸受409によって回転自在に支承された被駆動ギヤ401が一体回転可能に配されている。
【0037】
また、第1プロペラシャフト404と、第2プロペラシャフト405の前端外周部との間であって、かつ前後一対の被駆動ギヤ401,402の内側部分には、クラッチ410が前後方向に摺動自在にスプライン嵌合されている。
【0038】
更に、第1プロペラシャフト404の先端部の中心にはプランジャ412が前後方向に摺動自在に嵌装されている。このプランジャ412には、第1プロペラシャフト404に貫設された軸方向に長い長孔494aに挿通するピン413が軸直角方向に挿通されている。クラッチ410はピン413によってプランジャ412に連結されている。
【0039】
従って、プランジャ412が第1プロペラシャフト404の中心軸孔内を移動し得る範囲内で、クラッチ410は、ピン413を介して前後方向に摺動可能であり、前側に移動して被駆動ギヤ401と噛み合い、後側に移動して被駆動ギヤ402と噛み合う。
【0040】
第1プロペラシャフト404の前側には、スライダ415が設けられている。第1プロペラシャフト404の先端部に貫設された軸方向に長い長孔494bに挿通するピン416が軸直角方向に挿通され、このピン416の両端部はスライダ415に固定されている。スライダ415の上方に配されるシフトロッド424の下端部にはシフトカム426が結着されており、シフトカム426の下部には、シフトロッド424の軸中心(回動中心)に対して偏心した偏心ピン426aが突設されており、この偏心ピン426aは、スライダ415の外周に係合している。
【0041】
不図示のシフトレバーを操作してシフトロッド424をその軸中心周りに回動させれば、シフトカム426の偏心ピン426aが回動してスライダ415をプランジャ412と共に一体的に前後方向に摺動せしめる。
【0042】
この船外機6では、エンジン12が駆動されると、このエンジン12の動力は変速機50により変速され、ドライブシャフト202を回動して変速機50の出力をプロペラ2重反転機構40に伝達する。ドライブシャフト202が一方向に回転駆動されると、このドライブシャフト202の回転はピニオンギヤ403を介して前後一対の2つの被駆動ギヤ401,402に伝達され、両2つの被駆動ギヤ401,402が互いに逆方向に常時回転駆動される。
【0043】
ここで、不図示のシフトレバーを「中立位置」にセットすると、図3に示すように、スライダ415とプランジャ412は、クラッチ410が共に2つの被駆動ギヤ401,402に噛み合わない中立状態に保たれ、このとき、両被駆動ギヤ401,402は自由回転(空転)し、ドライブシャフト202の回転は第1プロペラシャフト404及び第2プロペラシャフト405に伝達されない。従って、この中立状態では前後の第1プロペラ7と第2プロペラ8は共に回転せず、推進力は発生しない。
【0044】
次に、シフトレバーを「前進位置」にセットすると、シフトロッド424とシフトカム426が所定角度だけ回動せしめられ、シフトカム426の偏心ピン426aが回動してスライダ415をプランジャ412と共に一体的に後方へ摺動し、クラッチ410は後側の被駆動ギヤ402に噛合し、前側の被駆動ギヤ401から離れる。
【0045】
従って、ドライブシャフト202の回転はピニオンギヤ403と被駆動402及びクラッチ410を経て第2プロペラシャフト405に伝達されるとともに、ピニオンギヤ403と被駆動ギヤ401を経て第1プロペラシャフト404に伝達され、第2プロペラシャフト405及びこれに結着された第1プロペラ7と、第1プロペラシャフト404とこれに結着された第2プロペラ8とが互いに逆方向に回転駆動される。このように、前進時においては、前後の第1プロペラ7と第2プロペラ8が互いに逆方向に回転駆動される二重反転方式が実行されるため、これらの第1プロペラ7と第2プロペラ8には高い推進効率が得られる。
【0046】
次に、不図示のシフトレバーを「後進位置」にセットすると、シフトロッド424とシフトカム426が所定の方向に所定角度だけ回動せしめられ、シフトカム426の偏心ピン426aが回動してスライダ415をプランジャ412と共に一体的に前方へ摺動し、クラッチ410は前側の被駆動ギヤ401に噛合し、後側の被駆動ギヤ402から離れる。即ち、クラッチ410が後側の被駆動ギヤ402から離脱して前側の被駆動ギヤ401に噛合する。
【0047】
このため、ドライブシャフト202の回転はピニオンギヤ403と前側の被駆動ギヤ401及びクラッチ410を経て第1プロペラシャフト404のみに伝達され、第2プロペラシャフト405には伝達されないため、第1プロペラシャフト404とこれに結着された第2プロペラ8のみが前進時とは逆方向に回転駆動される。
【0048】
上述のように、後進時に第2プロペラ8のみが回転駆動されると、静止している第1プロペラ7が第2プロペラ8の回転の障害にならないため、第2プロペラ8に高い推進効率が確保されて十分な推進力が得られる。また、プロペラ2重反転機構40を有し、トータルのプロペラ翼面積が推力を得るプロペラが1つ設けられているシングルプロペラに比較して大きくなることから、プロペラキャビテーション性能が非常に優れている。
【0049】
エンジン12は、排気ガイド500上に載置固定され、排気ガイド500の下面にはアッパケース13内に配置されるオイルパン505が垂下して取り付けられ、オイルパン505の中央部には排気管502が取り付けられている。また、オイルパン505の下方には、膨張室504が設けられている。エンジン12からの排気ガスは、排気ガイド500の排気通路501及び排気管502の排気通路503を介して膨張室504に流入する。
【0050】
膨張室504の外側面及びオイルパン505の外側面には、上端から下方に向かって冷却水ジャケット510が形成されている。冷却水取入口520から吸い込まれた船外機6の外の水すなわち冷却水は、冷却水ポンプ521で汲み上げられて、パイプ522などを介してエンジン12などに供給され、エンジン12などを冷却している。その後、エンジン12などを冷却した冷却水は、船外機6の外に排出され、また冷却水の一部が冷却水ジャケット510の上端部に流入し、オイルパン505の外側面、膨張室504の外側面を冷却し、その後、冷却水ジャケット510の下端から排出される。
【0051】
アッパケース13の下部13aには、ロアケース14の上部14aが上方からボルト530により締め付け固定され、ロアケース14の後方には、排気ケース600が設けられている。排気ケース600は、アルミ合金、あるいは強化樹脂などで一体成形され、エンジン12からの排気を導く上方排気通路610が形成される部分600aと、プロペラシャフトの後方に開口する排気出口620が形成される部分600bと、上方排気通路610と排気出口620とを連通する連通排気通路630が形成される部分600cを有する。
【0052】
この排気ケース600は、その上側をロアケース14の上部14aに当てがって上方からボルト700により締め付け固定して設けられ、上方排気通路610が形成される部分600aが船舶1の進行方向に延びてプロペラシャフトの上方に位置している。上方排気通路610の前側がアッパケース13の排気通路である膨張室504と連通し、上方排気通路610を簡単にアッパケース13の排気通路と連通することができる。
【0053】
排気ケース600の排気出口620が形成された部分600bは、円筒形に形成され、排気出口620が後方に排気ガスを排出するように開口している。この排気出口620が形成された部分600bには、円形凹み部600b1が形成され、円形凹み部600b1に第1プロペラシャフト404の後端部404aがスベリ軸受710を介して回転可能に支持され、プロペラシャフトの後方を回転可能に支持する構造になっている。このように、排気ケース600の排気出口620が形成された部分600bは、第1プロペラシャフト404の後方を回転可能に支持し、第1プロペラシャフト404の前端部をロワ―ケース14に支持し、第1プロペラシャフト404を両持ちで確実に支持している。第1プロペラシャフト404を両持ちで確実に支持することで、ロワ―ケース14の第1プロペラシャフト404の前端部を支持する部分14iが従来より薄肉にでき、しかも動力伝達機構のピニオンギヤ403などのギヤの負担が小さくなるためギヤ径を小さくすることができる。また、ロワ―ケース14の第1プロペラシャフト404の前端部を支持する部分14iが薄肉にでき、第1プロペラシャフト404の前端部を支持する部分14iに連続するトーピード部14dの左右幅を小さくすることができて水の抵抗が抑えられる。
【0054】
排気出口620の外径L1は、図4に示すように、プロペラシャフトのプロペラボス部7a,8aの外径L2と略同じ径であり、水の抵抗を低下することができる。
【0055】
排気ケース600の連通排気通路630が形成される部分600cは、ロアケース14の後方に位置し、上方排気通路610が形成される部分600aと連通排気通路630が形成される部分600cとで第1プロペラ7と第2プロペラ8の上方を囲む空間を形成している。また、連通排気通路630が形成される部分600の左右幅L10は、図5に示すように、ロアケース14のトーピード部14dの左右幅L20より小さくしており、水の抵抗を低下することができる。
【0056】
この実施の形態では、ロアケース14に排気ケース600を設けているが、排気ケース600をアッパケース13にも設けてもよい。このように、排気ケース600を備え、プロペラシャフトの上方に位置してエンジン12からの排気ガスを導く上方排気通路610と、プロペラシャフトの後方に開口する排気出口620と、上方排気通路610と排気出口620とを連通する連通排気通路630とを有し、排気ガスが上方排気通路610から連通排気通路630を通り排気出口620から水中に排出され、従来のようにプロペラボス部7a,8aには排気通路が形成されない。したがって、プロペラボス部7a,8aに左右されることなく大きな通路面積を容易に確保することができる。また、プロペラボス部7a,8aに排気通路が形成されない分、プロペラボス部7a,8aの径を小さくできるので、ロワーケース14からプロペラボス部7a,8aまでの水の抵抗を低くできる。また、プロペラ後方の水の流れで排気ガスの吸出しによりさらに排気抵抗が下がり、排気ガスの巻き込みも防止できる。また、プロペラ後方に排気出口620が位置し、この排気出口620から水中に排気ガスが排出されるため、排気音が空中に洩れ難く騒音を低減することが可能である。
【0057】
また、図4に示すように、排気出口620の外径L1をプロペラボス部7a,8aの外径L2以下にすることで、さらに水の抵抗を下げることができる。また、排気出口620の外径L1を、プロペラシャフトまわりのロワーケース14の左右幅L3より小さくすることで流水抵抗を下げることができる。また、上方排気通路610はプロペラシャフトに略平行に配置されており、第1プロペラ7と第2プロペラ8とを略同じ大きさに形成することができる。また、上方排気通路610の後方位置から下方に延びる連通排気通路630がプロペラシャフトに直交する方向で配置されており、第1プロペラシャフト404の後方をコンパクトな構造で確実に回転可能に支持することができる。
【0058】
なお、動力伝達機構20に備える変速機50の位置は、この実施の形態ではドライブシャフトに配置しているが特に限定されず、例えばエンジン12のクランク軸を伸ばして伸ばした部分に配置してもよい。このように、変速機50を備え、特に低速時に高変速比を選択することで、十分な駆動トルク特性を得ることができ、そのプロペラ性能を最大限発揮させることで、発進加速性能及び逆制動停止性能を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0059】
また、変速機50はシンプルプラネタリ式、デュアルプラネタリ式など各種遊星歯車機構が適用でき、さらに遊星歯車機構に限定されない。また、動力伝達機構20にトルクコンバータ装置を備えてもよい。さらに、プロペラ2重反転機構40は特開平6−221383号公報、特開平9−263294号公報などに記載の構造のものにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明は、エンジンからの排気ガスを水中に排出する船外機に適用でき、排気ガスの通路面積の確保が容易であり、かつ排気音が空中に洩れ難く騒音を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】船舶に備えた船外機の側面図である。
【図2】船外機の動力伝達機構、プロペラ2重反転機構及び排気通路を示す断面図である。
【図3】プロペラ2重反転機構の一部拡大図である。
【図4】船外機のケーシングを進行方向後方から見た図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0062】
6 船外機
7 第1プロペラ
8 第2プロペラ
12 エンジン
13 アッパケース
14 ロアケース
20 動力伝達機構
40 プロペラ2重反転機構
50 変速機
600 排気ケース
610 上方排気通路
620 排気出口
630 連通排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアケース内にプロペラシャフトが軸支され、前記プロペラシャフトにプロペラが固定されるとともに、エンジンの駆動力が動力伝達機構を介して前記プロペラシャフトに伝達され前記プロペラが回転する船外機において、
前記エンジンからの排気ガスを水中に排出する排気ケースを備え、
前記排気ケースは、
前記プロペラシャフトの上方に位置して前記エンジンからの排気ガスを導く上方排気通路と、
前記プロペラシャフトの後方に開口する排気出口と、
前記上方排気通路と前記排気出口とを連通する連通排気通路とを有することを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記プロペラをプロペラボス部に設け、
前記プロペラボス部と前記プロペラシャフトとの間にダンパーを配置したことを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記排気ケースの前記排気出口が形成された部分は、
前記プロペラシャフトの後方を回転可能に支持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記動力伝達機構は、変速機を備え
前記変速機は、
入力シャフトがエンジン側と接続され、
出力シャフトがプロペラシャフト側と接続され、
前記入力シャフトと前記出力シャフトとの間の変速比を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項5】
第1プロペラを回転する第1プロペラシャフトと、
第2プロペラを回転する第2プロペラシャフトと、
前記第1プロペラと前記第2プロペラを互いに逆方向に回転するプロペラ2重反転機構とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項6】
前記排気ケースは、上側が前記ロアケースに設けられ、
前記上方排気通路が、アッパケースの排気通路と連通していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項7】
前記排気出口は、前記プロペラのプロペラボス部と略同じ径であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項8】
前記排気ケースの前記連通排気通路が形成される部分の左右幅は、
前記ロアケースのトーピード部の左右幅より小さくしたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の船外機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−149944(P2008−149944A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341327(P2006−341327)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)