船推進機
【課題】異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる、船推進機を提供する。
【解決手段】船推進機10は、電動モータ16、スロットルグリップ36の回動角度を検出するポテンショメータ46、第1停止モードセンサ54a、第2停止モードセンサ54b、およびCPU88と断線・短絡検出回路92とを含むコントローラ28を備える。断線・短絡検出回路92から所定範囲外の電圧信号が与えられている場合、CPU88は、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力変化に基づいてスロットルグリップ36が指示している運転モードを検出する。そして、前進モードを指示している場合は前進モードかつ所定出力で電動モータ16を駆動させ、また、後進モードを指示している場合は後進モードかつ所定出力で電動モータ16を駆動させる。
【解決手段】船推進機10は、電動モータ16、スロットルグリップ36の回動角度を検出するポテンショメータ46、第1停止モードセンサ54a、第2停止モードセンサ54b、およびCPU88と断線・短絡検出回路92とを含むコントローラ28を備える。断線・短絡検出回路92から所定範囲外の電圧信号が与えられている場合、CPU88は、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力変化に基づいてスロットルグリップ36が指示している運転モードを検出する。そして、前進モードを指示している場合は前進モードかつ所定出力で電動モータ16を駆動させ、また、後進モードを指示している場合は後進モードかつ所定出力で電動モータ16を駆動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船推進機に関し、より特定的には電動型の船推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前進モード、後進モードおよび停止モードを含む電動モータの運転モードと、電動モータの出力とを、スロットルグリップの回動操作に応じて制御する小型船用の船推進機が提案されている。スロットルグリップが指示する位置はポテンショメータを用いて検出され、コントローラはポテンショメータからの信号に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御する。
【0003】
このような船推進機は、ポテンショメータに断線や短絡等の異常が発生すればスロットルグリップが指示する位置にかかわらず電動モータを駆動させないように構成される。安全性を考慮してこのような構成を採用しているが、船推進機によって船体を推進(操船)できなくなるのは非常に不便である。
【0004】
特許文献1および2には、自動車の分野において、アクセルセンサによってアクセルペダルの踏み込み量を検出できなければアクセルペダルの踏み込みに応じてオン/オフされるアクセルスイッチの出力に基づいてエンジンの出力を制御することが開示されている。
【特許文献1】特開平6−249039号公報
【特許文献2】特許第3525478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2のアクセルペダルはエンジンの出力を指示するためのものである。特許文献1および2には、回動可能な指示手段によって運転モードと出力とを指示する構成において、指示手段が指示する位置を検出できない場合にどのように運転モードを制御するのか明らかにされていない。
【0006】
それゆえにこの発明の主たる目的は、異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる、船推進機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の船推進機は、電動モータ、回動可能であり前進モード、後進モードおよび停止モードを含む前記電動モータの運転モードと前記電動モータの出力とをその位置によって指示可能な指示手段、前記指示手段が指示する位置を検出する第1検出手段、前記指示手段の回動に基づいて前記指示手段が指示する前記電動モータの運転モードを検出する第2検出手段、前記指示手段が指示する位置を前記第1検出手段が検出可能か否かを判定する判定手段、ならびに前記判定手段の判定結果と前記第1検出手段および前記第2検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果とに基づいて前記電動モータの運転モードおよび出力を制御する制御手段を備える。
【0008】
請求項2に記載の船推進機は、請求項1に記載の船推進機において、前記指示手段の回動域は、前記前進モードを指示するための前進モード域、前記後進モードを指示するための後進モード域、および前記前進モード域と前記後進モード域とに挟まれかつ前記停止モードを指示するための停止モード域を含み、前記第2検出手段は、前記指示手段が前記前進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第1センサ、ならびに前記指示手段が前記後進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第2センサを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の船推進機では、指示手段が指示する位置を第1検出手段が検出可能であると判定手段が判定する場合は、少なくとも第1検出手段の検出結果に基づいて制御手段が電動モータの運転モードおよび出力を制御する。一方、指示手段が指示する位置を第1検出手段が検出不可能であると判定手段が判定する場合は、第2検出手段の検出結果に基づいて制御手段が電動モータの運転モードおよび出力を制御する。言い換えれば、第1検出手段が正常である場合は少なくとも第1検出手段の検出結果に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御し、第1検出手段に異常が発生した場合は第2検出手段の検出結果に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御する。第2検出手段の検出結果に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御する場合、指示手段が前進モードを指示していることを第2検出手段が検出することによって、制御手段はたとえば前進モードかつ所定出力で電動モータを駆動させる。また、指示手段が後進モードを指示していることを第2検出手段が検出することによって、制御手段はたとえば後進モードかつ所定出力で電動モータを駆動させる。これによって、第1検出手段に異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる。
【0010】
請求項2に記載の船推進機では、前進モード域および停止モード域の一方から他方に指示手段が回動したことを検出するための第1センサと、後進モード域および停止モード域の一方から他方に指示手段が回動したことを検出するための第2センサとを用いて、指示手段が指示している運転モードを簡単に検出できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態の船推進機10は、小型船に用いられる電動型船推進機である。なお、船推進機10は、船外機として構成されても船の一部として構成されてもよい。
【0013】
船推進機10は推進機本体12を含む。推進機本体12は、上ハウジング14aと下ハウジング14bとを有するハウジング14を含む。上ハウジング14a内には電動モータ16が設けられ、電動モータ16のロータ18にはドライブシャフト20が連結される。電動モータ16は、直流電源(ここでは後述するバッテリ30)からの電力によって駆動されるDCモータである。ドライブシャフト20は、上ハウジング14aから下ハウジング14bに亘って設けられ、かさ歯車22を介してプロペラシャフト24に接続される。プロペラシャフト24の端部にはプロペラ26が接続される。プロペラ26の回転方向は、電動モータ16の回転方向によって決定される。
【0014】
また、上ハウジング14a内にはコントローラ28やバッテリ30が設けられ、上ハウジング14aの側部には操舵ハンドル32の一端部が取り付けられる。操舵ハンドル32は略水平方向に延びるように設けられ、操舵ハンドル32を左右方向に揺動することによって推進機本体12の向きを変えて船体86(後述)の操舵を行うことができる。
【0015】
図2〜図4をも参照して、操舵ハンドル32内には軸方向に伸びる伝導シャフト34が設けられ、操舵ハンドル32の他端部には、伝導シャフト34に接続されるスロットルグリップ36が設けられる。スロットルグリップ36を周方向に回動(回転)させることによって、電動モータ16の運転モードおよびその出力の大きさを調整することができる。
【0016】
伝導シャフト34の先端部にはプーリ38が取り付けられ、プーリ38と上ハウジング14a内のプーリ40とは2本のケーブル42によって連結される。プーリ40はプーリ38の回動に伴って回動する。
【0017】
プーリ40には回転軸44が取り付けられ、回転軸44の端部にはポテンショメータ46が設けられる。ポテンショメータ46は、プーリ40,38およびスロットルグリップ36の回動角度(回転量)ひいてはスロットルグリップ36が指示する位置に応じて所定範囲の電圧信号を出力する。ポテンショメータ46の出力はコントローラ28に与えられる。この実施形態では、電源電圧が5V(ボルト)であり、ポテンショメータ46からコントローラ28に1.3V〜3.7Vの範囲の電圧信号が与えられる。
【0018】
また、プーリ40とポテンショメータ46との間において回転軸44には、略円板状のカムプレート48が取り付けられる。カムプレート48はプーリ40の回動に伴って回動する。
【0019】
図5をも参照して、カムプレート48には、停止モード検出用の切欠き50aおよび溝50bが形成される。切欠き50aは、カムプレート48の外周縁に形成される。溝50bは、カムプレート48を貫通し、切欠き50aよりもカムプレート48の中心部寄りにかつ切欠き50aに対してカムプレート48の周方向にずれるようにカムプレート48に形成される。また、カムプレート48には、カムプレート48を貫通する溝52aおよび52bが溝52cを介して連続的に形成される。溝52a,52cは溝52bよりカムプレート48の中心部寄りに形成される。
【0020】
カムプレート48の外周縁近傍には、切欠き50aを検出できるように第1停止モードセンサ54aが配置され、また、溝50bを検出できるように第2停止モードセンサ54bが配置される。第1停止モードセンサ54aは、カムプレート48を挟んで互いに対向する発光部56aと受光部58a(図3参照)とを含む。発光部56aと受光部58aとは、カムプレート48の回動に伴ってそれらの間を切欠き50aが通過するように配置される。同様に、第2停止モードセンサ54bは、カムプレート48を挟んで互いに対向する発光部56bと受光部58b(図3参照)とを含む。発光部56bと受光部58bとは、カムプレート48の回動に伴ってそれらの間を溝50bが通過するように配置される。
【0021】
第1停止モードセンサ54aの出力は、発光部56aと受光部58aとの間に切欠き50aが位置し、切欠き50aを通った発光部56aからの光を受光部58aが受けることによってHIGHレベルとなる。また、第1停止モードセンサ54aの出力は、発光部56aと受光部58aとの間にカムプレート48が位置し、発光部56aから受光部58aに向かう光がカムプレート48に遮断されることによってLOWレベルとなる。つまり、第1停止モードセンサ54aは、切欠き50aを検出することによってその出力がHIGHレベルとなり、切欠き50aを検出していないときにはその出力がLOWレベルとなる。
【0022】
同様に、第2停止モードセンサ54bの出力は、溝50bを通った発光部56bからの光を受光部58bが受けることによってHIGHレベルとなり、それ以外ではLOWレベルとなる。なお、第2停止モードセンサ54bの発光部56bと受光部58bとの間には切欠き50aも通過可能であるが、発光部56bの発光素子および受光部58bの受光素子は溝50bのみを検出可能に設けられている。したがって、第2停止モードセンサ54bによって切欠き50aが検出されることはない。
【0023】
また、カムプレート48のポテンショメータ46側主面近傍には、支持軸60に支持された略短冊状のアーム部62が配置される。
【0024】
アーム部62のやや先端側にはカラー64が取り付けられ、カラー64はカムプレート48の溝52a〜52cに挿入される。
また、アーム部62の先端部62aには図示しないばね部材が取り付けられ、アーム部62はそのばね部材によって常時上方に付勢される。これによって溝52a〜52cに対するカラー64の相対的摺動が円滑になり、追随性が正確になる。また、カムプレート48の溝52cにカラー64が入り込むときのクリック感が大きくなり、使用者がニュートラル位置を認識しやすく、操作フィーリングが良くなる。図5には、スロットルグリップ36がその回動域の中立点(0°)を指示し、カラー64が溝52cに位置している状態が示されている。
さらに、アーム部62の基端部には棒状の押し部66が取り付けられる。
【0025】
図1に戻って、下ハウジング14bの側面上部には、下ハウジング14bを支持する取り付け部(スイベルブラケット)68が形成される。取り付け部68は、その両側に配置される一対のブラケット部(クランプブラケット)70にチルト軸72を介して上下方向にチルト可能に接続される。ブラケット部70はクランプ部74を有する。また、推進機本体12が下限位置までチルトダウンした状態(図1の状態)で取り付け部68が当接するストッパ部(不図示)が、ブラケット部70に設けられる。
【0026】
また、下ハウジング14bの外周やや上寄りには、押し部66によって作用される略π字状の係止部76がチルト可能に支持される。図2〜図4をも参照して、係止部76は、下ハウジング14bの外周に沿うように湾曲しかつ船体86(後述)とは反対側に設けられる板状のレバー部78と、レバー部78から延びるアーム部80とを含む。アーム部80は、下ハウジング14bに支持軸82によって上下方向にチルト可能に接続され、図示しないばね部材によってアーム部80の先端部側が常時下方向に付勢される。一方、ブラケット部70には、アーム部80の先端部が係止される受け棒84が取り付けられる。
そして、ブラケット部70を船体86のトランサム86aに取り付け、クランプ部74を締めることによって、船推進機10が船体86に取り付けられる。
【0027】
このような構成において、スロットルグリップ36の回動に伴ってカムプレート48が回動すると、カラー64は溝52a〜52cを相対的に摺動し、溝52aと溝52bとは高さが異なることからカラー64が上下動する。カラー64の上下動に応じて支持軸60を支点にアーム部62が揺動し、それに伴って押し部66が上下動し、レバー部78に作用する。たとえば、カラー64が溝52aの位置にあるときには{図9(b)参照}、押し部66は下降しており、受け棒84に対するアーム部80の係止が解除される。これによってリバースロックが解除される。一方、カラー64が溝52bの位置にあるときには{図10(b)参照}、押し部66は上昇し、アーム部80が受け棒84に係止する。これによってリバースロックがセットされる。なお、カラー64の挿入位置が溝52aから52bまたはその逆方向に移動するとき、溝52cを経由する。このように溝52cを経由することによって、リバースロックのオン/オフが切り替えられることを使用者に報知でき、操作性をさらに向上できる。
【0028】
ついで、図6を参照して、船推進機10の電気的構成について説明する。
コントローラ28は、必要な演算を行い船推進機10の動作を制御するCPU88、船推進機10の動作を制御するためのプログラムやデータおよび演算データ等を格納する、たとえばEEPROMからなるメモリ90、ならびにポテンショメータ46の断線または短絡を検出するための断線・短絡検出回路92を含む。
【0029】
コントローラ28のCPU88には、ポテンショメータ46からの出力、第1停止モードセンサ54aからの出力および第2停止モードセンサ54bからの出力が与えられる。
【0030】
断線・短絡検出回路92にはポテンショメータ46が接続される。通常、CPU88には、断線・短絡検出回路92を介してポテンショメータ46からの所定範囲(1.3V〜3.7V)の電圧信号が与えられる。また、ポテンショメータ46に断線または短絡といった異常が発生した場合は、CPU88には断線・短絡検出回路92から所定範囲外の電圧信号が与えられる。
【0031】
ポテンショメータ46が断線した場合、断線・短絡検出回路92からCPU88に与えられる電圧信号が0Vになる。また、ポテンショメータ46が短絡した場合、断線・短絡検出回路92からCPU88に5Vの電圧信号が与えられる。
CPU88は、断線・短絡検出回路92から0Vまたは5Vの電圧信号が与えられることによって、電動モータ16を停止させるようにモータドライバ98に指示を与える。
【0032】
また、CPU88には、リレー94を介してバッテリ30が接続され、リレー94のスイッチング動作はメインスイッチ96によって制御される。図1に示すように、メインスイッチ96は操舵ハンドル34に設けられる。
また、CPU88によって、操船に関する情報等が表示される表示部100が制御される。図1を参照して、表示部100は上ハウジング14aに設けられる。
さらに、CPU88によって、操船者に異常が発生したことを報知する警報ブザー102が制御される。図1を参照して、報知手段である警報ブザー102は上ハウジング14a内に設けられる。
【0033】
記憶手段であるメモリ90には、たとえば図8の動作を実行するためのプログラムおよび各種データが格納(記憶)される。
【0034】
ついで、図7(a)〜(f)に、スロットルグリップ36の回動に対する、ポテンショメータ46の出力、第1停止モードセンサ54aの出力、第2停止モードセンサ54bの出力、モータ電流、およびリバースロック動作を示す。
【0035】
図7(a)に示すように、スロットルグリップ36を停止モードの状態(ニュートラルの状態)から、反時計廻りに回動させると前進モードとなり、一方、時計廻りに回動させると後進モードとなる。この実施形態では、スロットルグリップ36を最大±80°まで回動でき、中立点を含む±15°までの範囲が停止モードを指示する停止モード域、−15°〜−80°の範囲が前進モードを指示する前進モード域、15°〜80°の範囲が後進モードを指示する後進モード域となる。
【0036】
ポテンショメータ46の出力は、図7(b)に示すように、スロットルグリップ36が指示する位置に応じて所定範囲(ここでは1.3V〜3.7V)で直線状に変化する。したがって、ポテンショメータ46の出力に基づいてスロットルグリップ36の回動角度ひいてはスロットルグリップ36が指示する位置を検出できる。
【0037】
第1停止モードセンサ54aの出力は、図7(c)に示すように、前進モード域と停止モード域との境界よりもやや中立点側から中立点よりもやや後進モード域側の範囲でHIGHレベルとなる。具体的に、この実施形態では、スロットルグリップ36の回動角度が−14°〜1°の範囲で第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルとなる。
【0038】
第2停止モードセンサ54bの出力は、図7(d)に示すように、中立点よりもやや前進モード域側から停止モード域と後進モード域との境界よりもやや中立点側の範囲でHIGHレベルとなる。具体的に、この実施形態では、スロットルグリップ36の回動角度が−1°〜14°の範囲で第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルとなる。
【0039】
したがって、スロットルグリップ36の回動角度が中立点近傍(ここでは±1°の範囲)である場合、図7(c)および(d)に示すように、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルとなる。
【0040】
また、図7(c)および(d)からわかるように、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの少なくともいずれか一方がHIGHレベルとなる期間を停止モード域よりやや狭くしておく。このようにすれば、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの少なくともいずれか一方の出力がHIGHレベルのときにはスロットルグリップ36が停止モードを指示していることを高精度に検出することができる。
【0041】
なお、第1停止モードセンサ54aのHIGHレベル期間およびそのタイミングは、第1停止モードセンサ54aの配置や切欠き50aの長さ等で決められる。同様に、第2停止モードセンサ54bのHIGHレベル期間およびそのタイミングは、第2停止モードセンサ54bの位置や溝50bの長さ等で決められる。
【0042】
CPU88はポテンショメータ46の出力だけではなく第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力をも参酌して電動モータ16を制御する。したがって、たとえポテンショメータ46に検出誤差があっても第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力を参酌することによって、CPU88はスロットルグリップ36による停止モードの指示を精度よく認識できる。
【0043】
電動モータ16を流れるモータ電流は、図7(e)に示すように、CPU88にポテンショメータ46からの所定範囲の出力(電圧信号)が与えられている場合、ポテンショメータ46の出力に基づいて制御される。すなわち、電動モータ16の運転モードは、スロットルグリップ36が指示する位置に基づいてCPU88によって制御される。なお、スロットルグリップ36が停止モードを指示しているときモータ電流はゼロであり、電動モータ16は停止する。
【0044】
リバースロックの動作については、図7(f)に示すように、スロットルグリップ36が中立点から時計廻り方向に略10°回動した時点でロック状態となる。すなわち、スロットルグリップ36が中立点から時計廻り方向に略10°回動した時点で、カラー64がカムプレート48の溝52bに位置し、それに応じて押し部66が上昇し、アーム部80の先端部側が下降し受け棒84に係止する。このようにしてリバースロックがセットされる。
【0045】
この実施形態では、指示手段はスロットルグリップ36を含む。第1検出手段はポテンショメータ46を含む。第2検出手段は、第1センサである第1停止モードセンサ54a、第2センサである第2停止モードセンサ54bおよびCPU88を含む。判定手段はCPU88および断線・短絡検出回路92を含む。また、CPU88は制御手段としても機能する。
【0046】
ついで、図8を参照して、このような船推進機10の動作の一例について説明する。
まず、CPU88は、断線・短絡検出回路92から入力される電圧信号が、ポテンショメータ46からの所定範囲(ここでは1.3V〜3.7V)の電圧信号であるか否かを確認することによって、スロットルグリップ36が指示する位置を検出不可能か否かを判定する(ステップS1)。ポテンショメータ46が断線または短絡しており、CPU88に断線・短絡検出回路92から0Vまたは5Vの電圧信号が与えられている場合、CPU88はスロットルグリップ36が指示する位置を検出不可能であると判定する。
【0047】
ステップS1でスロットルグリップ36の指示位置を検出不可能であると判定した場合、CPU88は、現在のモータ電流の供給状態にかかわらずモータドライバ98にモータ電流を遮断させる(ゼロにさせる)とともに警報ブザー102に動作を開始させる(ステップS3)。つまり、ポテンショメータ46を用いてスロットルグリップ36の指示位置を検出不可能な場合、電動モータ16を強制的に停止させるとともに警報ブザー102からの警報音によって異常が発生していることを操船者に報知する。
【0048】
つづいて、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルになるまで待機する(ステップS5)。言い換えれば、一旦、スロットルグリップ36の指示位置が中立点近傍{図7(a),(c)および(d)参照}に戻るまで待機する。
【0049】
ステップS5で第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルになれば、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもLOWレベルになるまで待機する(ステップS7)。いずれもLOWレベルになれば、CPU88は、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順でLOWレベルになったか否かを確認する(ステップS9)。
【0050】
スロットルグリップ36が中立点近傍から前進モード域側(反時計廻り)に回動された場合、図5の状態からカムプレート48が回動し、図9(a)に示すように、まず、溝50bが第2停止モードセンサ54bの発光部56bおよび受光部58bに対してずれる。これによって、第2停止モードセンサ54bの出力がLOWレベルとなる。そして、さらにスロットルグリップ36が前進モード域側に回動されると、図9(b)に示すように、切欠き50aが第1停止モードセンサ54aの発光部56aおよび受光部58aに対してずれて、第1停止モードセンサ54aの出力もLOWレベルとなる。このことから、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順で出力がLOWレベルになっていれば、スロットルグリップ36が停止モード域から前進モード域に回動され、スロットルグリップ36が前進モードを指示していると認識できる。
【0051】
一方、スロットルグリップ36が中立点近傍から後進モード域側(時計廻り)に回動された場合、図5の状態からカムプレート48が回動し、図10(a)に示すように、まず、切欠き50aが第1停止モードセンサ54aの発光部56aおよび受光部58aに対してずれる。これによって、第1停止モードセンサ54aの出力がLOWレベルとなる。そして、さらにスロットルグリップ36が後進モード域側に回動されると、図10(b)に示すように、溝50bが第2停止モードセンサ54bの発光部56bおよび受光部58bに対してずれて、第2停止モードセンサ54bの出力もLOWレベルとなる。このことから、第1停止モードセンサ54a→第2停止モードセンサ54bの順で出力がLOWレベルになっていれば、スロットルグリップ36が停止モード域から後進モード域に回動され、スロットルグリップ36が後進モードを指示していると認識できる。
【0052】
ステップS9で、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順でLOWレベルになっていれば、CPU88は電動モータ16を前進モードかつ所定の電流値{たとえば最高値の25%:図7(e)に二点鎖線で示す}で駆動させる。つまり、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力変化に基づいてスロットルグリップ36が前進モードを指示していることを検出すれば、電動モータ16を前進モードかつ所定出力で駆動させる(ステップS11)。
【0053】
その後、第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルになるまで待機する(ステップS13)。言い換えれば、スロットルグリップ36が停止モードを指示するまで待機する。そして、第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルになれば、電動モータ16を停止させ(ステップS15)、ステップS1に戻る。
【0054】
一方、ステップS9で、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順でLOWレベルになっていなければ、第1停止モードセンサ54a→第2停止モードセンサ54bの順でLOWレベルになったこととなる。この場合、CPU88は電動モータ16を後進モードかつ所定の電流値{たとえば最高値の25%:図7(e)に二点鎖線で示す}で駆動させる。つまり、スロットルグリップ36が後進モードを指示していることを検出すれば電動モータ16を後進モードかつ所定出力で駆動させる(ステップS17)。
【0055】
その後、第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルになるまで待機し(ステップS19)、第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルになればステップS15に移る。
【0056】
一方、ステップS1で、CPU88にポテンショメータ46からの所定範囲の電圧信号が与えられている場合、上述のように、CPU88は、ポテンショメータ46からの出力、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力を用いて電動モータ16を制御する。つまり、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力をも参酌しつつスロットルグリップ36の指示位置に応じて電動モータ16を通常制御する(ステップS21)。ステップS21の間は、ステップS1の判定を繰り返し行う。
【0057】
なお、上述の動作では、ポテンショメータ46の断線または短絡後は警報ブザー102の動作を継続させるようにしたが、たとえば所定時間経過後に警報ブザー102の動作を停止させるようにしてもよい。
【0058】
このような船推進機10によれば、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力変化に基づいてスロットルグリップ36が前進モードおよび後進モードのいずれを指示しているのか検出できる。そして、前進モードを指示していることを検出した場合は電動モータ16を前進モードかつ所定出力で駆動させ、一方、後進モードを指示していることを検出した場合は電動モータ16を後進モードかつ所定出力で駆動させる。これによって、ポテンショメータ46に断線または短絡といった異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる。
【0059】
第1停止モードセンサ54aと、第2停止モードセンサ54bとを用いて、スロットルグリップ36が指示している運転モードを簡単に検出できる。
【0060】
ポテンショメータ46の断線または短絡後は、一旦、スロットルグリップ36の指示位置が中立点近傍(±1°の範囲)に戻るまではスロットルグリップ36を前進モード域または後進モード域に回動させても電動モータ16を駆動しない。このように断線または短絡後は、正常な場合よりも操作手順を多くすることによって、操船者にスロットルグリップ36を慎重に回動操作させることができる。また、断線または短絡後は、電動モータ16を駆動させるための回動操作を正常な場合よりもあえて煩雑にすることによって、修理の必要性を認識させ、修理を促すことができる。
【0061】
なお、スロットルグリップ36の回動域は、上述の実施形態に限定されず、任意に設定できる。また、スロットルグリップ36の回動域における前進モード域、後進モード域および停止モード域の割合も任意に設定できる。さらに、上述の実施形態では、停止モード域に対して、反時計廻り側を前進モード域、時計廻り側を後進モード域に設定したが、時計廻り側を前進モード域、反時計廻り側を後進モード域に設定してもよい。
【0062】
また、ポテンショメータ46からCPU88に与えられる電圧信号の範囲、およびポテンショメータ46が断線または短絡した場合に断線・短絡検出回路92からCPU88に与えられる電圧信号の値は、上述の実施形態に限定されず、任意に設定できる。
【0063】
さらに、図7(b)には、前進モード側から後進モード側にポテンショメータ46の出力が小さくなる場合が示されているが、前進モード側から後進モード側にポテンショメータ46の出力が大きくなるようにしてもよい。
【0064】
なお、スロットルグリップ36の回動に対する第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力の変化態様は、上述の実施形態に限定されない。図7(c)および(d)に示す変化態様に代えて、たとえば、図11(b)および(c)、または図12(b)および(c)に示す変化態様となるようにしてもよい。
【0065】
図11の場合、第1停止モードセンサ54aの出力は前進モード域と停止モード域との境界よりもやや中立点側から前進モード域の全域に亘ってHIGHレベルとなり{図11(b)参照}、第2停止モードセンサ54bの出力は後進モード域と停止モード域との境界よりもやや中立点側から後進モードの全域に亘ってHIGHレベルとなっている{図11(c)参照}。この場合、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもLOWレベルであれば停止モード、第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルであれば前進モード、第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルであれば後進モードであると簡単に認識できる。ひいては、前進モード、後進モードおよび停止モードのいずれであるのかを簡単に検出できる。
【0066】
また、図12の場合、第1停止モードセンサ54aの出力は前進モード域の全域および停止モード域の大部分に亘ってHIGHレベルとなり{図12(b)参照}、第2停止モードセンサ54bの出力は後進モード域の全域および停止モード域の大部分に亘ってHIGHレベルとなっている{図12(c)参照}。この場合、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルであれば停止モード、第1停止モードセンサ54aの出力がLOWレベルであれば後進モード、第2停止モードセンサ54bの出力がLOWレベルであれば前進モードであると簡単に認識できる。ひいては、前進モード、後進モードおよび停止モードのいずれであるのかを簡単に検出できる。
【0067】
なお、上述の実施形態では、DC(直流)モータである電動モータ16を用いる場合について説明したが、電動モータとしてAC(交流)モータを用いてもよい。この場合、バッテリ30からの直流電力をDC/ACインバータを用いて交流電力に変換すればよい。
【0068】
また、ポテンショメータ46に代えて、光学的な位置検出センサや磁気センサを用いてもよい。
【0069】
さらに、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bに代えて、ポテンショメータや絶対値エンコーダを用いてもよい。
【0070】
なお、上述の実施形態では、ポテンショメータ46を用いてスロットルグリップ36の位置を検出できる場合であっても、ポテンショメータ46の出力だけではなく第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力をも参酌して電動モータ16を制御する場合について説明したが、この発明はこれに限定されない。ポテンショメータ46を用いてスロットルグリップ36の位置を検出できる場合、ポテンショメータ46の出力のみで電動モータ16を制御するようにしてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、報知手段として警報ブザー102を用いる場合について説明したが、表示部100を報知手段として用いてもよい。
【0072】
さらに、ポテンショメータ46が断線または短絡している場合の電動モータ16の出力は任意に制御でき、たとえば前進モードまたは後進モードを指示している時間が長くなるにつれて電動モータ16の出力を大きくするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の一実施形態の船推進機を示す図解図である。
【図2】図1の実施形態の主なリンク構造を示す斜視図である。
【図3】図1の実施形態の主なリンク構造を示す斜視図である。
【図4】一対のブラケット部および係止部付近を示す斜視図である。
【図5】スロットルグリップが中立点を指示しているときのカムプレートと第1および第2停止モードセンサとの位置関係を示す図解図である。
【図6】この発明の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】スロットルグリップの回動に対する各部出力等を示すグラフである。
【図8】この発明の船推進機の動作の一例を示すフロー図である。
【図9】カムプレートと第1および第2停止モードセンサとの位置関係を示す図解図であり、(a)は図5の状態からスロットルグリップを前進モード域側に回動させた状態を示し、(b)は(a)の状態からさらにスロットルグリップを前進モード域側に回動させた状態を示す。
【図10】カムプレートと第1および第2停止モードセンサとの位置関係を示す図解図であり、(a)は図5の状態からスロットルグリップを後進モード域側に回動させた状態を示し、(b)は(a)の状態からさらにスロットルグリップを後進モード域側に回動させた状態を示す。
【図11】スロットルグリップの回動に対する停止モードセンサの出力の他の例を示すグラフである。
【図12】スロットルグリップの回動に対する停止モードセンサの出力のその他の例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
10 船推進機
16 電動モータ
28 コントローラ
34 伝導シャフト
36 スロットルグリップ
38,40 プーリ
42 ケーブル
44 回転軸
46 ポテンショメータ
48 カムプレート
50a 切欠き
50b,52a,52b,52c 溝
54a 第1停止モードセンサ
54b 第2停止モードセンサ
56a,56b 発光部
58a,58b 受光部
88 CPU
92 断線・短絡検出回路
102 警報ブザー
【技術分野】
【0001】
この発明は船推進機に関し、より特定的には電動型の船推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前進モード、後進モードおよび停止モードを含む電動モータの運転モードと、電動モータの出力とを、スロットルグリップの回動操作に応じて制御する小型船用の船推進機が提案されている。スロットルグリップが指示する位置はポテンショメータを用いて検出され、コントローラはポテンショメータからの信号に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御する。
【0003】
このような船推進機は、ポテンショメータに断線や短絡等の異常が発生すればスロットルグリップが指示する位置にかかわらず電動モータを駆動させないように構成される。安全性を考慮してこのような構成を採用しているが、船推進機によって船体を推進(操船)できなくなるのは非常に不便である。
【0004】
特許文献1および2には、自動車の分野において、アクセルセンサによってアクセルペダルの踏み込み量を検出できなければアクセルペダルの踏み込みに応じてオン/オフされるアクセルスイッチの出力に基づいてエンジンの出力を制御することが開示されている。
【特許文献1】特開平6−249039号公報
【特許文献2】特許第3525478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2のアクセルペダルはエンジンの出力を指示するためのものである。特許文献1および2には、回動可能な指示手段によって運転モードと出力とを指示する構成において、指示手段が指示する位置を検出できない場合にどのように運転モードを制御するのか明らかにされていない。
【0006】
それゆえにこの発明の主たる目的は、異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる、船推進機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の船推進機は、電動モータ、回動可能であり前進モード、後進モードおよび停止モードを含む前記電動モータの運転モードと前記電動モータの出力とをその位置によって指示可能な指示手段、前記指示手段が指示する位置を検出する第1検出手段、前記指示手段の回動に基づいて前記指示手段が指示する前記電動モータの運転モードを検出する第2検出手段、前記指示手段が指示する位置を前記第1検出手段が検出可能か否かを判定する判定手段、ならびに前記判定手段の判定結果と前記第1検出手段および前記第2検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果とに基づいて前記電動モータの運転モードおよび出力を制御する制御手段を備える。
【0008】
請求項2に記載の船推進機は、請求項1に記載の船推進機において、前記指示手段の回動域は、前記前進モードを指示するための前進モード域、前記後進モードを指示するための後進モード域、および前記前進モード域と前記後進モード域とに挟まれかつ前記停止モードを指示するための停止モード域を含み、前記第2検出手段は、前記指示手段が前記前進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第1センサ、ならびに前記指示手段が前記後進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第2センサを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の船推進機では、指示手段が指示する位置を第1検出手段が検出可能であると判定手段が判定する場合は、少なくとも第1検出手段の検出結果に基づいて制御手段が電動モータの運転モードおよび出力を制御する。一方、指示手段が指示する位置を第1検出手段が検出不可能であると判定手段が判定する場合は、第2検出手段の検出結果に基づいて制御手段が電動モータの運転モードおよび出力を制御する。言い換えれば、第1検出手段が正常である場合は少なくとも第1検出手段の検出結果に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御し、第1検出手段に異常が発生した場合は第2検出手段の検出結果に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御する。第2検出手段の検出結果に基づいて電動モータの運転モードおよび出力を制御する場合、指示手段が前進モードを指示していることを第2検出手段が検出することによって、制御手段はたとえば前進モードかつ所定出力で電動モータを駆動させる。また、指示手段が後進モードを指示していることを第2検出手段が検出することによって、制御手段はたとえば後進モードかつ所定出力で電動モータを駆動させる。これによって、第1検出手段に異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる。
【0010】
請求項2に記載の船推進機では、前進モード域および停止モード域の一方から他方に指示手段が回動したことを検出するための第1センサと、後進モード域および停止モード域の一方から他方に指示手段が回動したことを検出するための第2センサとを用いて、指示手段が指示している運転モードを簡単に検出できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態の船推進機10は、小型船に用いられる電動型船推進機である。なお、船推進機10は、船外機として構成されても船の一部として構成されてもよい。
【0013】
船推進機10は推進機本体12を含む。推進機本体12は、上ハウジング14aと下ハウジング14bとを有するハウジング14を含む。上ハウジング14a内には電動モータ16が設けられ、電動モータ16のロータ18にはドライブシャフト20が連結される。電動モータ16は、直流電源(ここでは後述するバッテリ30)からの電力によって駆動されるDCモータである。ドライブシャフト20は、上ハウジング14aから下ハウジング14bに亘って設けられ、かさ歯車22を介してプロペラシャフト24に接続される。プロペラシャフト24の端部にはプロペラ26が接続される。プロペラ26の回転方向は、電動モータ16の回転方向によって決定される。
【0014】
また、上ハウジング14a内にはコントローラ28やバッテリ30が設けられ、上ハウジング14aの側部には操舵ハンドル32の一端部が取り付けられる。操舵ハンドル32は略水平方向に延びるように設けられ、操舵ハンドル32を左右方向に揺動することによって推進機本体12の向きを変えて船体86(後述)の操舵を行うことができる。
【0015】
図2〜図4をも参照して、操舵ハンドル32内には軸方向に伸びる伝導シャフト34が設けられ、操舵ハンドル32の他端部には、伝導シャフト34に接続されるスロットルグリップ36が設けられる。スロットルグリップ36を周方向に回動(回転)させることによって、電動モータ16の運転モードおよびその出力の大きさを調整することができる。
【0016】
伝導シャフト34の先端部にはプーリ38が取り付けられ、プーリ38と上ハウジング14a内のプーリ40とは2本のケーブル42によって連結される。プーリ40はプーリ38の回動に伴って回動する。
【0017】
プーリ40には回転軸44が取り付けられ、回転軸44の端部にはポテンショメータ46が設けられる。ポテンショメータ46は、プーリ40,38およびスロットルグリップ36の回動角度(回転量)ひいてはスロットルグリップ36が指示する位置に応じて所定範囲の電圧信号を出力する。ポテンショメータ46の出力はコントローラ28に与えられる。この実施形態では、電源電圧が5V(ボルト)であり、ポテンショメータ46からコントローラ28に1.3V〜3.7Vの範囲の電圧信号が与えられる。
【0018】
また、プーリ40とポテンショメータ46との間において回転軸44には、略円板状のカムプレート48が取り付けられる。カムプレート48はプーリ40の回動に伴って回動する。
【0019】
図5をも参照して、カムプレート48には、停止モード検出用の切欠き50aおよび溝50bが形成される。切欠き50aは、カムプレート48の外周縁に形成される。溝50bは、カムプレート48を貫通し、切欠き50aよりもカムプレート48の中心部寄りにかつ切欠き50aに対してカムプレート48の周方向にずれるようにカムプレート48に形成される。また、カムプレート48には、カムプレート48を貫通する溝52aおよび52bが溝52cを介して連続的に形成される。溝52a,52cは溝52bよりカムプレート48の中心部寄りに形成される。
【0020】
カムプレート48の外周縁近傍には、切欠き50aを検出できるように第1停止モードセンサ54aが配置され、また、溝50bを検出できるように第2停止モードセンサ54bが配置される。第1停止モードセンサ54aは、カムプレート48を挟んで互いに対向する発光部56aと受光部58a(図3参照)とを含む。発光部56aと受光部58aとは、カムプレート48の回動に伴ってそれらの間を切欠き50aが通過するように配置される。同様に、第2停止モードセンサ54bは、カムプレート48を挟んで互いに対向する発光部56bと受光部58b(図3参照)とを含む。発光部56bと受光部58bとは、カムプレート48の回動に伴ってそれらの間を溝50bが通過するように配置される。
【0021】
第1停止モードセンサ54aの出力は、発光部56aと受光部58aとの間に切欠き50aが位置し、切欠き50aを通った発光部56aからの光を受光部58aが受けることによってHIGHレベルとなる。また、第1停止モードセンサ54aの出力は、発光部56aと受光部58aとの間にカムプレート48が位置し、発光部56aから受光部58aに向かう光がカムプレート48に遮断されることによってLOWレベルとなる。つまり、第1停止モードセンサ54aは、切欠き50aを検出することによってその出力がHIGHレベルとなり、切欠き50aを検出していないときにはその出力がLOWレベルとなる。
【0022】
同様に、第2停止モードセンサ54bの出力は、溝50bを通った発光部56bからの光を受光部58bが受けることによってHIGHレベルとなり、それ以外ではLOWレベルとなる。なお、第2停止モードセンサ54bの発光部56bと受光部58bとの間には切欠き50aも通過可能であるが、発光部56bの発光素子および受光部58bの受光素子は溝50bのみを検出可能に設けられている。したがって、第2停止モードセンサ54bによって切欠き50aが検出されることはない。
【0023】
また、カムプレート48のポテンショメータ46側主面近傍には、支持軸60に支持された略短冊状のアーム部62が配置される。
【0024】
アーム部62のやや先端側にはカラー64が取り付けられ、カラー64はカムプレート48の溝52a〜52cに挿入される。
また、アーム部62の先端部62aには図示しないばね部材が取り付けられ、アーム部62はそのばね部材によって常時上方に付勢される。これによって溝52a〜52cに対するカラー64の相対的摺動が円滑になり、追随性が正確になる。また、カムプレート48の溝52cにカラー64が入り込むときのクリック感が大きくなり、使用者がニュートラル位置を認識しやすく、操作フィーリングが良くなる。図5には、スロットルグリップ36がその回動域の中立点(0°)を指示し、カラー64が溝52cに位置している状態が示されている。
さらに、アーム部62の基端部には棒状の押し部66が取り付けられる。
【0025】
図1に戻って、下ハウジング14bの側面上部には、下ハウジング14bを支持する取り付け部(スイベルブラケット)68が形成される。取り付け部68は、その両側に配置される一対のブラケット部(クランプブラケット)70にチルト軸72を介して上下方向にチルト可能に接続される。ブラケット部70はクランプ部74を有する。また、推進機本体12が下限位置までチルトダウンした状態(図1の状態)で取り付け部68が当接するストッパ部(不図示)が、ブラケット部70に設けられる。
【0026】
また、下ハウジング14bの外周やや上寄りには、押し部66によって作用される略π字状の係止部76がチルト可能に支持される。図2〜図4をも参照して、係止部76は、下ハウジング14bの外周に沿うように湾曲しかつ船体86(後述)とは反対側に設けられる板状のレバー部78と、レバー部78から延びるアーム部80とを含む。アーム部80は、下ハウジング14bに支持軸82によって上下方向にチルト可能に接続され、図示しないばね部材によってアーム部80の先端部側が常時下方向に付勢される。一方、ブラケット部70には、アーム部80の先端部が係止される受け棒84が取り付けられる。
そして、ブラケット部70を船体86のトランサム86aに取り付け、クランプ部74を締めることによって、船推進機10が船体86に取り付けられる。
【0027】
このような構成において、スロットルグリップ36の回動に伴ってカムプレート48が回動すると、カラー64は溝52a〜52cを相対的に摺動し、溝52aと溝52bとは高さが異なることからカラー64が上下動する。カラー64の上下動に応じて支持軸60を支点にアーム部62が揺動し、それに伴って押し部66が上下動し、レバー部78に作用する。たとえば、カラー64が溝52aの位置にあるときには{図9(b)参照}、押し部66は下降しており、受け棒84に対するアーム部80の係止が解除される。これによってリバースロックが解除される。一方、カラー64が溝52bの位置にあるときには{図10(b)参照}、押し部66は上昇し、アーム部80が受け棒84に係止する。これによってリバースロックがセットされる。なお、カラー64の挿入位置が溝52aから52bまたはその逆方向に移動するとき、溝52cを経由する。このように溝52cを経由することによって、リバースロックのオン/オフが切り替えられることを使用者に報知でき、操作性をさらに向上できる。
【0028】
ついで、図6を参照して、船推進機10の電気的構成について説明する。
コントローラ28は、必要な演算を行い船推進機10の動作を制御するCPU88、船推進機10の動作を制御するためのプログラムやデータおよび演算データ等を格納する、たとえばEEPROMからなるメモリ90、ならびにポテンショメータ46の断線または短絡を検出するための断線・短絡検出回路92を含む。
【0029】
コントローラ28のCPU88には、ポテンショメータ46からの出力、第1停止モードセンサ54aからの出力および第2停止モードセンサ54bからの出力が与えられる。
【0030】
断線・短絡検出回路92にはポテンショメータ46が接続される。通常、CPU88には、断線・短絡検出回路92を介してポテンショメータ46からの所定範囲(1.3V〜3.7V)の電圧信号が与えられる。また、ポテンショメータ46に断線または短絡といった異常が発生した場合は、CPU88には断線・短絡検出回路92から所定範囲外の電圧信号が与えられる。
【0031】
ポテンショメータ46が断線した場合、断線・短絡検出回路92からCPU88に与えられる電圧信号が0Vになる。また、ポテンショメータ46が短絡した場合、断線・短絡検出回路92からCPU88に5Vの電圧信号が与えられる。
CPU88は、断線・短絡検出回路92から0Vまたは5Vの電圧信号が与えられることによって、電動モータ16を停止させるようにモータドライバ98に指示を与える。
【0032】
また、CPU88には、リレー94を介してバッテリ30が接続され、リレー94のスイッチング動作はメインスイッチ96によって制御される。図1に示すように、メインスイッチ96は操舵ハンドル34に設けられる。
また、CPU88によって、操船に関する情報等が表示される表示部100が制御される。図1を参照して、表示部100は上ハウジング14aに設けられる。
さらに、CPU88によって、操船者に異常が発生したことを報知する警報ブザー102が制御される。図1を参照して、報知手段である警報ブザー102は上ハウジング14a内に設けられる。
【0033】
記憶手段であるメモリ90には、たとえば図8の動作を実行するためのプログラムおよび各種データが格納(記憶)される。
【0034】
ついで、図7(a)〜(f)に、スロットルグリップ36の回動に対する、ポテンショメータ46の出力、第1停止モードセンサ54aの出力、第2停止モードセンサ54bの出力、モータ電流、およびリバースロック動作を示す。
【0035】
図7(a)に示すように、スロットルグリップ36を停止モードの状態(ニュートラルの状態)から、反時計廻りに回動させると前進モードとなり、一方、時計廻りに回動させると後進モードとなる。この実施形態では、スロットルグリップ36を最大±80°まで回動でき、中立点を含む±15°までの範囲が停止モードを指示する停止モード域、−15°〜−80°の範囲が前進モードを指示する前進モード域、15°〜80°の範囲が後進モードを指示する後進モード域となる。
【0036】
ポテンショメータ46の出力は、図7(b)に示すように、スロットルグリップ36が指示する位置に応じて所定範囲(ここでは1.3V〜3.7V)で直線状に変化する。したがって、ポテンショメータ46の出力に基づいてスロットルグリップ36の回動角度ひいてはスロットルグリップ36が指示する位置を検出できる。
【0037】
第1停止モードセンサ54aの出力は、図7(c)に示すように、前進モード域と停止モード域との境界よりもやや中立点側から中立点よりもやや後進モード域側の範囲でHIGHレベルとなる。具体的に、この実施形態では、スロットルグリップ36の回動角度が−14°〜1°の範囲で第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルとなる。
【0038】
第2停止モードセンサ54bの出力は、図7(d)に示すように、中立点よりもやや前進モード域側から停止モード域と後進モード域との境界よりもやや中立点側の範囲でHIGHレベルとなる。具体的に、この実施形態では、スロットルグリップ36の回動角度が−1°〜14°の範囲で第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルとなる。
【0039】
したがって、スロットルグリップ36の回動角度が中立点近傍(ここでは±1°の範囲)である場合、図7(c)および(d)に示すように、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルとなる。
【0040】
また、図7(c)および(d)からわかるように、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの少なくともいずれか一方がHIGHレベルとなる期間を停止モード域よりやや狭くしておく。このようにすれば、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの少なくともいずれか一方の出力がHIGHレベルのときにはスロットルグリップ36が停止モードを指示していることを高精度に検出することができる。
【0041】
なお、第1停止モードセンサ54aのHIGHレベル期間およびそのタイミングは、第1停止モードセンサ54aの配置や切欠き50aの長さ等で決められる。同様に、第2停止モードセンサ54bのHIGHレベル期間およびそのタイミングは、第2停止モードセンサ54bの位置や溝50bの長さ等で決められる。
【0042】
CPU88はポテンショメータ46の出力だけではなく第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力をも参酌して電動モータ16を制御する。したがって、たとえポテンショメータ46に検出誤差があっても第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力を参酌することによって、CPU88はスロットルグリップ36による停止モードの指示を精度よく認識できる。
【0043】
電動モータ16を流れるモータ電流は、図7(e)に示すように、CPU88にポテンショメータ46からの所定範囲の出力(電圧信号)が与えられている場合、ポテンショメータ46の出力に基づいて制御される。すなわち、電動モータ16の運転モードは、スロットルグリップ36が指示する位置に基づいてCPU88によって制御される。なお、スロットルグリップ36が停止モードを指示しているときモータ電流はゼロであり、電動モータ16は停止する。
【0044】
リバースロックの動作については、図7(f)に示すように、スロットルグリップ36が中立点から時計廻り方向に略10°回動した時点でロック状態となる。すなわち、スロットルグリップ36が中立点から時計廻り方向に略10°回動した時点で、カラー64がカムプレート48の溝52bに位置し、それに応じて押し部66が上昇し、アーム部80の先端部側が下降し受け棒84に係止する。このようにしてリバースロックがセットされる。
【0045】
この実施形態では、指示手段はスロットルグリップ36を含む。第1検出手段はポテンショメータ46を含む。第2検出手段は、第1センサである第1停止モードセンサ54a、第2センサである第2停止モードセンサ54bおよびCPU88を含む。判定手段はCPU88および断線・短絡検出回路92を含む。また、CPU88は制御手段としても機能する。
【0046】
ついで、図8を参照して、このような船推進機10の動作の一例について説明する。
まず、CPU88は、断線・短絡検出回路92から入力される電圧信号が、ポテンショメータ46からの所定範囲(ここでは1.3V〜3.7V)の電圧信号であるか否かを確認することによって、スロットルグリップ36が指示する位置を検出不可能か否かを判定する(ステップS1)。ポテンショメータ46が断線または短絡しており、CPU88に断線・短絡検出回路92から0Vまたは5Vの電圧信号が与えられている場合、CPU88はスロットルグリップ36が指示する位置を検出不可能であると判定する。
【0047】
ステップS1でスロットルグリップ36の指示位置を検出不可能であると判定した場合、CPU88は、現在のモータ電流の供給状態にかかわらずモータドライバ98にモータ電流を遮断させる(ゼロにさせる)とともに警報ブザー102に動作を開始させる(ステップS3)。つまり、ポテンショメータ46を用いてスロットルグリップ36の指示位置を検出不可能な場合、電動モータ16を強制的に停止させるとともに警報ブザー102からの警報音によって異常が発生していることを操船者に報知する。
【0048】
つづいて、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルになるまで待機する(ステップS5)。言い換えれば、一旦、スロットルグリップ36の指示位置が中立点近傍{図7(a),(c)および(d)参照}に戻るまで待機する。
【0049】
ステップS5で第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルになれば、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもLOWレベルになるまで待機する(ステップS7)。いずれもLOWレベルになれば、CPU88は、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順でLOWレベルになったか否かを確認する(ステップS9)。
【0050】
スロットルグリップ36が中立点近傍から前進モード域側(反時計廻り)に回動された場合、図5の状態からカムプレート48が回動し、図9(a)に示すように、まず、溝50bが第2停止モードセンサ54bの発光部56bおよび受光部58bに対してずれる。これによって、第2停止モードセンサ54bの出力がLOWレベルとなる。そして、さらにスロットルグリップ36が前進モード域側に回動されると、図9(b)に示すように、切欠き50aが第1停止モードセンサ54aの発光部56aおよび受光部58aに対してずれて、第1停止モードセンサ54aの出力もLOWレベルとなる。このことから、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順で出力がLOWレベルになっていれば、スロットルグリップ36が停止モード域から前進モード域に回動され、スロットルグリップ36が前進モードを指示していると認識できる。
【0051】
一方、スロットルグリップ36が中立点近傍から後進モード域側(時計廻り)に回動された場合、図5の状態からカムプレート48が回動し、図10(a)に示すように、まず、切欠き50aが第1停止モードセンサ54aの発光部56aおよび受光部58aに対してずれる。これによって、第1停止モードセンサ54aの出力がLOWレベルとなる。そして、さらにスロットルグリップ36が後進モード域側に回動されると、図10(b)に示すように、溝50bが第2停止モードセンサ54bの発光部56bおよび受光部58bに対してずれて、第2停止モードセンサ54bの出力もLOWレベルとなる。このことから、第1停止モードセンサ54a→第2停止モードセンサ54bの順で出力がLOWレベルになっていれば、スロットルグリップ36が停止モード域から後進モード域に回動され、スロットルグリップ36が後進モードを指示していると認識できる。
【0052】
ステップS9で、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順でLOWレベルになっていれば、CPU88は電動モータ16を前進モードかつ所定の電流値{たとえば最高値の25%:図7(e)に二点鎖線で示す}で駆動させる。つまり、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力変化に基づいてスロットルグリップ36が前進モードを指示していることを検出すれば、電動モータ16を前進モードかつ所定出力で駆動させる(ステップS11)。
【0053】
その後、第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルになるまで待機する(ステップS13)。言い換えれば、スロットルグリップ36が停止モードを指示するまで待機する。そして、第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルになれば、電動モータ16を停止させ(ステップS15)、ステップS1に戻る。
【0054】
一方、ステップS9で、第2停止モードセンサ54b→第1停止モードセンサ54aの順でLOWレベルになっていなければ、第1停止モードセンサ54a→第2停止モードセンサ54bの順でLOWレベルになったこととなる。この場合、CPU88は電動モータ16を後進モードかつ所定の電流値{たとえば最高値の25%:図7(e)に二点鎖線で示す}で駆動させる。つまり、スロットルグリップ36が後進モードを指示していることを検出すれば電動モータ16を後進モードかつ所定出力で駆動させる(ステップS17)。
【0055】
その後、第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルになるまで待機し(ステップS19)、第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルになればステップS15に移る。
【0056】
一方、ステップS1で、CPU88にポテンショメータ46からの所定範囲の電圧信号が与えられている場合、上述のように、CPU88は、ポテンショメータ46からの出力、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力を用いて電動モータ16を制御する。つまり、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力をも参酌しつつスロットルグリップ36の指示位置に応じて電動モータ16を通常制御する(ステップS21)。ステップS21の間は、ステップS1の判定を繰り返し行う。
【0057】
なお、上述の動作では、ポテンショメータ46の断線または短絡後は警報ブザー102の動作を継続させるようにしたが、たとえば所定時間経過後に警報ブザー102の動作を停止させるようにしてもよい。
【0058】
このような船推進機10によれば、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力変化に基づいてスロットルグリップ36が前進モードおよび後進モードのいずれを指示しているのか検出できる。そして、前進モードを指示していることを検出した場合は電動モータ16を前進モードかつ所定出力で駆動させ、一方、後進モードを指示していることを検出した場合は電動モータ16を後進モードかつ所定出力で駆動させる。これによって、ポテンショメータ46に断線または短絡といった異常が発生した場合であっても操船者の意思どおりに必要最低限の操船ができる。
【0059】
第1停止モードセンサ54aと、第2停止モードセンサ54bとを用いて、スロットルグリップ36が指示している運転モードを簡単に検出できる。
【0060】
ポテンショメータ46の断線または短絡後は、一旦、スロットルグリップ36の指示位置が中立点近傍(±1°の範囲)に戻るまではスロットルグリップ36を前進モード域または後進モード域に回動させても電動モータ16を駆動しない。このように断線または短絡後は、正常な場合よりも操作手順を多くすることによって、操船者にスロットルグリップ36を慎重に回動操作させることができる。また、断線または短絡後は、電動モータ16を駆動させるための回動操作を正常な場合よりもあえて煩雑にすることによって、修理の必要性を認識させ、修理を促すことができる。
【0061】
なお、スロットルグリップ36の回動域は、上述の実施形態に限定されず、任意に設定できる。また、スロットルグリップ36の回動域における前進モード域、後進モード域および停止モード域の割合も任意に設定できる。さらに、上述の実施形態では、停止モード域に対して、反時計廻り側を前進モード域、時計廻り側を後進モード域に設定したが、時計廻り側を前進モード域、反時計廻り側を後進モード域に設定してもよい。
【0062】
また、ポテンショメータ46からCPU88に与えられる電圧信号の範囲、およびポテンショメータ46が断線または短絡した場合に断線・短絡検出回路92からCPU88に与えられる電圧信号の値は、上述の実施形態に限定されず、任意に設定できる。
【0063】
さらに、図7(b)には、前進モード側から後進モード側にポテンショメータ46の出力が小さくなる場合が示されているが、前進モード側から後進モード側にポテンショメータ46の出力が大きくなるようにしてもよい。
【0064】
なお、スロットルグリップ36の回動に対する第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力の変化態様は、上述の実施形態に限定されない。図7(c)および(d)に示す変化態様に代えて、たとえば、図11(b)および(c)、または図12(b)および(c)に示す変化態様となるようにしてもよい。
【0065】
図11の場合、第1停止モードセンサ54aの出力は前進モード域と停止モード域との境界よりもやや中立点側から前進モード域の全域に亘ってHIGHレベルとなり{図11(b)参照}、第2停止モードセンサ54bの出力は後進モード域と停止モード域との境界よりもやや中立点側から後進モードの全域に亘ってHIGHレベルとなっている{図11(c)参照}。この場合、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもLOWレベルであれば停止モード、第1停止モードセンサ54aの出力がHIGHレベルであれば前進モード、第2停止モードセンサ54bの出力がHIGHレベルであれば後進モードであると簡単に認識できる。ひいては、前進モード、後進モードおよび停止モードのいずれであるのかを簡単に検出できる。
【0066】
また、図12の場合、第1停止モードセンサ54aの出力は前進モード域の全域および停止モード域の大部分に亘ってHIGHレベルとなり{図12(b)参照}、第2停止モードセンサ54bの出力は後進モード域の全域および停止モード域の大部分に亘ってHIGHレベルとなっている{図12(c)参照}。この場合、第1停止モードセンサ54aの出力および第2停止モードセンサ54bの出力がいずれもHIGHレベルであれば停止モード、第1停止モードセンサ54aの出力がLOWレベルであれば後進モード、第2停止モードセンサ54bの出力がLOWレベルであれば前進モードであると簡単に認識できる。ひいては、前進モード、後進モードおよび停止モードのいずれであるのかを簡単に検出できる。
【0067】
なお、上述の実施形態では、DC(直流)モータである電動モータ16を用いる場合について説明したが、電動モータとしてAC(交流)モータを用いてもよい。この場合、バッテリ30からの直流電力をDC/ACインバータを用いて交流電力に変換すればよい。
【0068】
また、ポテンショメータ46に代えて、光学的な位置検出センサや磁気センサを用いてもよい。
【0069】
さらに、第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bに代えて、ポテンショメータや絶対値エンコーダを用いてもよい。
【0070】
なお、上述の実施形態では、ポテンショメータ46を用いてスロットルグリップ36の位置を検出できる場合であっても、ポテンショメータ46の出力だけではなく第1停止モードセンサ54aおよび第2停止モードセンサ54bの出力をも参酌して電動モータ16を制御する場合について説明したが、この発明はこれに限定されない。ポテンショメータ46を用いてスロットルグリップ36の位置を検出できる場合、ポテンショメータ46の出力のみで電動モータ16を制御するようにしてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、報知手段として警報ブザー102を用いる場合について説明したが、表示部100を報知手段として用いてもよい。
【0072】
さらに、ポテンショメータ46が断線または短絡している場合の電動モータ16の出力は任意に制御でき、たとえば前進モードまたは後進モードを指示している時間が長くなるにつれて電動モータ16の出力を大きくするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の一実施形態の船推進機を示す図解図である。
【図2】図1の実施形態の主なリンク構造を示す斜視図である。
【図3】図1の実施形態の主なリンク構造を示す斜視図である。
【図4】一対のブラケット部および係止部付近を示す斜視図である。
【図5】スロットルグリップが中立点を指示しているときのカムプレートと第1および第2停止モードセンサとの位置関係を示す図解図である。
【図6】この発明の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】スロットルグリップの回動に対する各部出力等を示すグラフである。
【図8】この発明の船推進機の動作の一例を示すフロー図である。
【図9】カムプレートと第1および第2停止モードセンサとの位置関係を示す図解図であり、(a)は図5の状態からスロットルグリップを前進モード域側に回動させた状態を示し、(b)は(a)の状態からさらにスロットルグリップを前進モード域側に回動させた状態を示す。
【図10】カムプレートと第1および第2停止モードセンサとの位置関係を示す図解図であり、(a)は図5の状態からスロットルグリップを後進モード域側に回動させた状態を示し、(b)は(a)の状態からさらにスロットルグリップを後進モード域側に回動させた状態を示す。
【図11】スロットルグリップの回動に対する停止モードセンサの出力の他の例を示すグラフである。
【図12】スロットルグリップの回動に対する停止モードセンサの出力のその他の例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
10 船推進機
16 電動モータ
28 コントローラ
34 伝導シャフト
36 スロットルグリップ
38,40 プーリ
42 ケーブル
44 回転軸
46 ポテンショメータ
48 カムプレート
50a 切欠き
50b,52a,52b,52c 溝
54a 第1停止モードセンサ
54b 第2停止モードセンサ
56a,56b 発光部
58a,58b 受光部
88 CPU
92 断線・短絡検出回路
102 警報ブザー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ、
回動可能であり前進モード、後進モードおよび停止モードを含む前記電動モータの運転モードと前記電動モータの出力とをその位置によって指示可能な指示手段、
前記指示手段が指示する位置を検出する第1検出手段、
前記指示手段の回動に基づいて前記指示手段が指示する前記電動モータの運転モードを検出する第2検出手段、
前記指示手段が指示する位置を前記第1検出手段が検出可能か否かを判定する判定手段、ならびに
前記判定手段の判定結果と前記第1検出手段および前記第2検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果とに基づいて前記電動モータの運転モードおよび出力を制御する制御手段を備える、船推進機。
【請求項2】
前記指示手段の回動域は、前記前進モードを指示するための前進モード域、前記後進モードを指示するための後進モード域、および前記前進モード域と前記後進モード域とに挟まれかつ前記停止モードを指示するための停止モード域を含み、
前記第2検出手段は、前記指示手段が前記前進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第1センサ、ならびに前記指示手段が前記後進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第2センサを含む、請求項1に記載の船推進機。
【請求項1】
電動モータ、
回動可能であり前進モード、後進モードおよび停止モードを含む前記電動モータの運転モードと前記電動モータの出力とをその位置によって指示可能な指示手段、
前記指示手段が指示する位置を検出する第1検出手段、
前記指示手段の回動に基づいて前記指示手段が指示する前記電動モータの運転モードを検出する第2検出手段、
前記指示手段が指示する位置を前記第1検出手段が検出可能か否かを判定する判定手段、ならびに
前記判定手段の判定結果と前記第1検出手段および前記第2検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果とに基づいて前記電動モータの運転モードおよび出力を制御する制御手段を備える、船推進機。
【請求項2】
前記指示手段の回動域は、前記前進モードを指示するための前進モード域、前記後進モードを指示するための後進モード域、および前記前進モード域と前記後進モード域とに挟まれかつ前記停止モードを指示するための停止モード域を含み、
前記第2検出手段は、前記指示手段が前記前進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第1センサ、ならびに前記指示手段が前記後進モード域および前記停止モード域の一方から他方に回動したことを検出するための第2センサを含む、請求項1に記載の船推進機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−67249(P2009−67249A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238231(P2007−238231)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
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