説明

船舶の操船装置

【課題】エンジンのローアイドル回転数よりも低い回転数でプロペラを回転させて容易に操船することができる船舶の操船装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、微速航行モードを有し、制御装置には、微速航行モードを実行するか否かを決定する微速航行モードボタンが接続され、微速航行モードの実行が決定された場合、制御装置は、ジョイスティックレバーの操作量が基準操作量Ms以下であるときは、エンジン回転数Nをローアイドル回転数Nlowとするとともに、ジョイスティックレバーの操作量に応じて所定の周期におけるメインクラッチが入りとなる時間の割合であるデューティ比Dを100%以下の範囲内で変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の操船装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンと、エンジンの動力によって回転するプロペラを有するアウトドライブ装置と、エンジンからプロペラへの動力伝達を入・切するクラッチと、を具備する船舶が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の船舶は、エンジンがローアイドル回転数で回転することにより、プロペラが低回転して低速で航行(いわゆるトローリング航行)するように構成されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、クラッチを滑らせること(いわゆる半クラッチ)によるトローリング航行ができない。つまり、エンジンのローアイドル回転数での航行速度よりも遅い速度で航行することができないため、操船者によっては航行速度が速すぎて操船が困難となることがある。例えば、船舶を離着岸させる場合、操船に不慣れな未熟練の操船者にとっては、航行速度が速すぎて離着岸時の操船が困難となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−285486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、エンジンのローアイドル回転数での航行速度よりも遅い速度で航行して容易に操船することができる船舶の操船装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、エンジンと、前記エンジンの動力によって回転するプロペラを有するアウトドライブ装置と、前記エンジンから前記プロペラへの動力伝達を入・切するクラッチと、前記アウトドライブ装置を作動させる操作手段と、前記エンジン、前記クラッチ及び前記操作手段が接続される制御装置と、を具備する船舶の操船装置において、前記制御装置は、微速航行モードを有し、前記制御装置には、前記微速航行モードを実行するか否かを決定する決定手段が接続され、前記微速航行モードの実行が決定された場合、前記制御装置は、前記操作手段の操作量が基準操作量以下であるときは、前記エンジンの回転数をローアイドル回転数とするとともに、前記操作手段の操作量に応じて所定の周期における前記クラッチが入りとなる時間の割合であるデューティ比を100%以下の範囲内で変化させるものである。
【0008】
請求項2においては、前記制御装置は、前記操作手段の操作量が前記基準操作量を超えているときは、前記デューティ比を100%とするとともに、前記操作手段の操作量に応じて前記エンジンの回転数を前記ローアイドル回転数から増加させるものである。
【0009】
請求項3においては、前記制御装置は、前記基準操作量に対する前記操作手段の操作量の増加量が基準増加量を超えていないときには、前記エンジンの回転数がローアイドル回転数に維持されるものである。
【0010】
請求項4においては、前記制御装置には、前記基準操作量を変更する変更手段が接続されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、微速航行モードが実行されることにより、エンジンがローアイドル回転数で回転しているときにクラッチが入・切されるため、エンジンのローアイドル回転数での航行速度よりも遅い速度で航行して容易に操船することができる。また、操作手段の操作量に応じてデューティ比が変化することにより航行速度も変化するため、航行状況に応じて航行速度を調整して容易に操船することができる。
【0013】
請求項2においては、操作手段を操作することによりエンジン回転数がローアイドル回転数から増加するため、航行状況に応じて航行速度を速くしてさらに容易に操船することができる。
【0014】
請求項3においては、操作手段の操作量が基準操作量を超えてしばらくは、エンジン回転数がローアイドル回転数に維持されるため、エンジン回転数の急な変化によって操船者があわてることがなくさらに容易に操船することができる。
【0015】
請求項4においては、航行状況に応じて基準操作量が変更されることにより、さらに容易に操船することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】操船装置を示す図。
【図2】船舶及び操船装置を示す図。
【図3】アウトドライブ装置を示す側面断面図。
【図4】ジョイスティックレバーを示す斜視図。
【図5】船舶の操船方法の制御フローを示す図。
【図6】(a)通常航行モードにおけるジョイスティックレバー倒し量とエンジン回転数との関係を示す図。(b)微速航行モードにおけるジョイスティックレバー倒し量とエンジン回転数との関係を示す図。
【図7】微速航行モードの制御フローを示す図。
【図8】微速航行モードにおけるジョイスティックレバー倒し量とデューティ比及びエンジン回転数との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0018】
先ず、操船装置1の全体構成について、図1から図4により説明する。
【0019】
操船装置1は、アウトドライブ装置2を二台備えた、いわゆる二軸(二基)推進方式のものである。操船装置1は、アウトドライブ装置2、油圧シリンダ3及び制御装置4等で構成される。
【0020】
アウトドライブ装置2において、入力軸5の一端部は、ユニバーサルジョイント6を介してエンジン7の図示しない出力軸と動力伝達可能に連結される。エンジン7と入力軸5との間には、メインクラッチ23が介設される。エンジン7から入力軸5への動力伝達は、メインクラッチ23によって入・切(接・断)される。また、入力軸5の他端部は、切換クラッチ8を介して駆動軸9の上端部と動力伝達可能に連結される。駆動軸9の回転方向は、切換クラッチ8によって切り換えられる。また、駆動軸9の下端部は、出力軸10の一端部と動力伝達可能に連結される。出力軸10の他端部には、プロペラ11が設けられる。
【0021】
また、アウトドライブ装置2は、ジンバルリング12を介して船体13に左右舷方向に回動可能に軸支される。ジンバルリング12には、操舵アーム14の一端部が連結される。なお、アウトドライブ装置2の回動角度は、例えば、左舷方向に30度、右舷方向に30度、合計60度とされる。
【0022】
油圧シリンダ3において、シリンダスリーブ15内には、ピストン16が摺動可能に設けられる。ピストン16には、ロッド17の一端部が連結される。ロッド17の他端部には、操舵アーム14の他端部が連結される。なお、図示しない作動油タンク内の作動油がシリンダスリーブ15に送油されることにより、ピストン16が摺動する。
【0023】
制御装置4は、船舶22の航行モードとして通常航行モード及び微速航行モードを有している。なお、通常航行モード及び微速航行モードについては、詳しくは後述する。また、制御装置4には、アウトドライブ装置2(プロペラ11)の回転数を検出する回転数センサ19、油圧シリンダ3のピストン16の位置(摺動位置)を検出する位置センサ18、油圧シリンダ3への作動油の送油方向を変更する電磁弁25、エンジン7の回転数を変更するスロットルアクチュエータ27、ジョイスティックレバー20、操作ハンドル24、アクセルレバー26、微速航行モードボタン28及び変更ダイヤル29が接続される。また、制御装置4には、デューティ比D並びにジョイスティックレバー20の操作量に関する基準操作量Ms及び基準増加量ΔMsが記憶される。
【0024】
デューティ比Dは、所定の周期におけるメインクラッチ23が入りとなる時間の割合のことをいう。つまり、所定の周期をT、メインクラッチ23が入りとなる時間をT1とすると、デューティ比Dは、メインクラッチ23が入りとなる時間T1を所定の周期Tで除した値(T1/T)である。
【0025】
ジョイスティックレバー20は、X軸、Y軸及びZ軸回りに回転自在に構成される。つまり、ジョイスティックレバー20は、X軸(左右)方向及びY軸(前後)方向に傾倒可能に構成されるとともに、Z軸回りに捩り可能に構成される。なお、ジョイスティックレバー20は、操作しない時には上下方向となるように中立位置に付勢される。
【0026】
このような構成により、エンジン7の動力がメインクラッチ23、ユニバーサルジョイント6、入力軸5、切換クラッチ8、駆動軸9、出力軸10に伝達されることにより、プロペラ11が回転する。こうして、プロペラ11が回転することにより、アウトドライブ装置2の推進力が発生する。
【0027】
そして、制御装置4は、ジョイスティックレバー20の操作方向に応じて切換クラッチ8を介して駆動軸9の回転方向を切り換える。駆動軸9の回転方向が切り換えられることにより、船舶22の前後進が切り換わる。
【0028】
また、制御装置4は、ジョイスティックレバー20の操作量(倒し量、捩り量)に応じてスロットルアクチュエータ27を介してエンジン7の図示しないスロットルの開度を変更する。前記スロットル開度が変更されることにより、エンジン回転数が変更されるため、アウトドライブ装置2の推進力が変更される。なお、同様にアクセルレバー26の操作量に応じてエンジン7の回転数が変更される。つまり、一方のアクセルレバー26が操作されることにより、左舷側のエンジン7の回転数が変更されるとともに、他方のアクセルレバー26が操作されることにより、右舷側のエンジン7の回転数が変更される。
【0029】
さらに、制御装置4は、ジョイスティックレバー20の操作量(倒し量、捩り量)に応じて、電磁弁25を介して油圧シリンダ3のピストン16を摺動させる。ピストン16が摺動することにより、ロッド17及び操舵アーム14を介してアウトドライブ装置2が回動される。つまり、アウトドライブ装置2の回動角度(舵角度)が変更される。なお、同様に操作ハンドル24の操作量に応じてアウトドライブ装置2が回動される。
【0030】
次に、操船装置1を用いた船舶22の操船方法について、図5から図8により説明する。
【0031】
図5に示すように、微速航行モードボタン28がONであれば(ステップS1、YES)、航行モードが微速航行モードとなる(ステップS2)。一方、微速航行モードボタン28がOFFであれば(ステップS1、NO)、航行モードが通常航行モードとなる(ステップS3)。なお、航行を続行する場合は(ステップS4、YES)、ステップS1以降の手順が繰り返される。
【0032】
ここで、通常航行モードの場合、図6(a)に示すように、メインクラッチ23のギアシフトがニュートラル(Neutral)であるときは、ジョイスティックレバー20の倒し量Mにかかわらず、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowとなる。そして、メインクラッチ23のギアシフトが前進(Forward)であるときは、ジョイスティックレバー20の倒し量Mに応じて(比例して)エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowから最大エンジン回転数Nmax1の範囲内で変化する。なお、ローアイドル回転数Nlowとは、エンジン7のアイドリング時のエンジン回転数のことをいう。
【0033】
一方、微速航行モードの場合、図6(b)に示すように、ジョイスティックレバー20の倒し量Mの範囲内において基準操作量Msが設定される。なお、基準操作量Msは、詳しくは後述する変更ダイヤル29により変更可能とされる。そして、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Ms以下であるときは、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowに維持されるとともに、ジョイスティックレバー20の倒し量Mに応じて(比例して)デューティ比Dが0%以上100%以下の範囲内で変化する。そして、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Msを超えているときは、デューティ比Dが100%となるとともに、ジョイスティックレバー20の倒し量Mに応じて(比例して)エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowから最大エンジン回転数Nmax2の範囲内で変化する。ただし、基準操作量Msに対するジョイスティックレバー20の倒し量Mの増加量(以下単に「増加量」という)ΔM(=M−Ms)が基準増加量ΔMsを超えていないときには、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowに維持される。
【0034】
具体的には、図7に示すように、微速航行モードの場合(ステップS2)、ステップS5において、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Ms以下であるか否かが判断される。
【0035】
そして、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Ms以下であるときは(ステップS5、Yes)、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowとなるとともに(ステップS6)、ジョイスティックレバー20の倒し量Mに応じて(比例して)デューティ比Dが0%以上100%以下の範囲内で変化する(ステップS7)。
【0036】
一方、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Msを超えているときは(ステップS5、No)、デューティ比Dが100%となるとともに(ステップS8)、増加量ΔMが基準増加量ΔMsを超えているか否かが判断される(ステップS9)。
【0037】
そして、増加量ΔMが基準増加量ΔMsを超えているときには(ステップS9、YES)、ジョイスティックレバー20の倒し量Mに応じて(比例して)エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowから最大エンジン回転数Nmax2の範囲内で変化する(ステップS10)。
【0038】
一方、増加量ΔMが基準増加量ΔMsを超えていないときには(ステップS9、NO)、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowに維持される(ステップS11)。
【0039】
次に、微速航行モードにおけるジョイスティックレバー20の倒し量Mとデューティ比D及びエンジン回転数Nとの関係について、図8により説明する。
【0040】
図8に示すように、ジョイスティックレバー20の倒し量MがM1であるとき(ジョイスティックレバー20が倒されていないとき)は、デューティ比Dが0%であるとともに、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowである。そして、ジョイスティックレバー20が倒し量M1の位置から倒されるのに従って、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowに維持されて、デューティ比Dが0%から増加する。そして、ジョイスティックレバー20の倒し量MがM2(基準操作量Ms)であるときは、デューティ比Dが100%であるとともに、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowである。
【0041】
つまり、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Ms以下であるときは、ジョイスティックレバー20の倒し量Mとデューティ比Dとが比例する。このため、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが小さいほど、デューティ比Dが小さくなって航行速度が遅くなるとともに、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Msに近づくほど、デューティ比Dが大きくなって航行速度が速くなる(エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowであってメインクラッチ23が入りであるときの航行速度に近づく)ことになる。なお、ジョイスティックレバー20の倒し量Mが基準操作量Msであるときの航行速度は、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowであってメインクラッチ23が入りであるときの航行速度とされる。
【0042】
そして、ジョイスティックレバー20が倒し量M2の位置から倒されるのに従って、デューティ比Dが100%に維持されて、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowから増加する。なお、前述のように増加量ΔMが基準増加量ΔMsを超えていないときには、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowに維持される。そして、ジョイスティックレバー20の倒し量MがM3であるとき(ジョイスティックレバー20が最大限倒されたとき)は、デューティ比Dが100%に維持されて、エンジン回転数Nが最大エンジン回転数Nmax2となる。
【0043】
つまり、ジョイスティックレバー20の倒し量MがMs+ΔMsからM3の範囲内では、デューティ比Dが100%に維持されて、ジョイスティックレバー20の倒し量Mに応じて(比例して)エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowから最大エンジン回転数Nmax2の範囲内で変化する。なお、ジョイスティックレバー20の倒し量MがMs+ΔMsからM3の範囲内でのエンジン回転数Nの増加量(加速)と、ジョイスティックレバー20の倒し量MがM1からM2の範囲内での増加量(加速)とを略同じとなるようにして、スムーズに加速できるようにしている。
【0044】
ここで、基準操作量Msは、変更ダイヤル29により変更可能とされる。これにより、基準操作量MsがM1側(ジョイスティックレバー20の倒し量Mが小さい側)に変更されると、デューティ比Dの変化量(ジョイスティックレバー20の単位倒し量当たりのデューティ比Dの変化量)が大きくなって加速が大きくなるため、微速航行モードにおける最高航行速度が速くなる。これとは逆に、基準操作量MsがM3側(ジョイスティックレバー20の倒し量Mが大きい側)に変更されると、デューティ比Dの変化量(ジョイスティックレバー20の単位倒し量当たりのデューティ比Dの変化量)が小さくなって加速が小さくなるため、微速航行モードにおける最高航行速度が遅くなる。
【0045】
以上のように、エンジン7と、エンジン7の動力によって回転するプロペラ11を有するアウトドライブ装置2と、エンジン7からプロペラ11への動力伝達を入・切するクラッチであるメインクラッチ23と、アウトドライブ装置2を作動させる操作手段であるジョイスティックレバー20と、エンジン7、メインクラッチ23及びジョイスティックレバー20が接続される制御装置4と、を具備する船舶22の操船装置1において、制御装置4は、微速航行モードを有し、制御装置4には、微速航行モードを実行するか否かを決定する決定手段である微速航行モードボタン28が接続され、微速航行モードの実行が決定された場合、制御装置4は、ジョイスティックレバー20の操作量が基準操作量Ms以下であるときは、エンジン回転数Nをローアイドル回転数Nlowとするとともに、ジョイスティックレバー20の操作量に応じて所定の周期Tにおけるメインクラッチ23が入りとなる時間T1の割合であるデューティ比Dを100%以下の範囲内で変化させる。
【0046】
このような構成により、微速航行モードが実行されることにより、エンジン7がローアイドル回転数Nlowで回転しているときにメインクラッチ23が入・切されるため、エンジン7のローアイドル回転数Nlowでの航行速度よりも遅い速度で航行して容易に操船することができる。また、ジョイスティックレバー20の操作量に応じてデューティ比Dが変化することにより航行速度も変化するため、航行状況に応じて航行速度を調整して容易に操船することができる。例えば、船舶22を離着岸させる場合、操船に不慣れな未熟練の操船者にとって、航行速度が速すぎて離着岸時の操船が困難となることがない。つまり、操船に不慣れな未熟練の操船者であっても、容易に離着岸することができる。
【0047】
そして、制御装置4は、ジョイスティックレバー20の操作量が基準操作量Msを超えているときは、デューティ比Dを100%とするとともに、ジョイスティックレバー20の操作量に応じてエンジン回転数Nをローアイドル回転数Nlowから増加させる。
【0048】
このような構成により、ジョイスティックレバー20を操作することによりエンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowから増加するため、航行状況に応じて航行速度を速くしてさらに容易に操船することができる。
【0049】
また、制御装置4は、基準操作量Msに対するジョイスティックレバー20の操作量の増加量ΔMが基準増加量ΔMsを超えていないときには、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowに維持される。
【0050】
このような構成により、ジョイスティックレバー20の操作量が基準操作量Msを超えてしばらくは、エンジン回転数Nがローアイドル回転数Nlowに維持されるため、エンジン回転数Nの急な変化によって操船者があわてることがなくさらに容易に操船することができる。
【0051】
さらに、制御装置4には、基準操作量Msを変更する変更手段である変更ダイヤル29が接続される。
【0052】
このような構成により、航行状況に応じて基準操作量Msが変更されることにより、さらに容易に操船することができる。つまり、基準増加量ΔMsが変更されることにより、操船者の操作フィーリングに合わせることができる。
【0053】
なお、本発明に係る決定手段は、本実施形態に係る微速航行モードボタン28に限定されるものではない。例えば、本発明に係る決定手段は、レバーであってもよい。
【0054】
また、本発明に係る変更手段は、本実施形態に係る変更ダイヤル29に限定されるものではない。例えば、本発明に係る決定手段は、レバーであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 操船装置
2 アウトドライブ装置
4 制御装置
7 エンジン
11 プロペラ
20 ジョイスティックレバー(操作手段)
22 船舶
23 メインクラッチ(クラッチ)
28 微速航行モードボタン(決定手段)
29 変更ダイヤル(変更手段)
D デューティ比
Ms 基準操作量
N エンジン回転数
Nlow ローアイドル回転数
ΔM 増加量
ΔMs 基準増加量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの動力によって回転するプロペラを有するアウトドライブ装置と、
前記エンジンから前記プロペラへの動力伝達を入・切するクラッチと、
前記アウトドライブ装置を作動させる操作手段と、
前記エンジン、前記クラッチ及び前記操作手段が接続される制御装置と、を具備する船舶の操船装置において、
前記制御装置は、微速航行モードを有し、
前記制御装置には、前記微速航行モードを実行するか否かを決定する決定手段が接続され、
前記微速航行モードの実行が決定された場合、
前記制御装置は、前記操作手段の操作量が基準操作量以下であるときは、前記エンジンの回転数をローアイドル回転数とするとともに、前記操作手段の操作量に応じて所定の周期における前記クラッチが入りとなる時間の割合であるデューティ比を100%以下の範囲内で変化させることを特徴とする船舶の操船装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記操作手段の操作量が前記基準操作量を超えているときは、前記デューティ比を100%とするとともに、前記操作手段の操作量に応じて前記エンジンの回転数を前記ローアイドル回転数から増加させることを特徴とする請求項1に記載の船舶の操船装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記基準操作量に対する前記操作手段の操作量の増加量が基準増加量を超えていないときには、前記エンジンの回転数がローアイドル回転数に維持されることを特徴とする請求項2に記載の船舶の操船装置。
【請求項4】
前記制御装置には、前記基準操作量を変更する変更手段が接続されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の船舶の操船装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−10396(P2013−10396A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143443(P2011−143443)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)