説明

船舶の船首部形状及び船首部形状の設計方法

【課題】中高速度で航行する船舶が発生させるスプレー状の薄い波(スプレー波)を剥離すること。すなわち、スプレー波の粘性抵抗成分を低減させて船舶の消費エネルギーを抑え、効率の良い航行を実現させること。
【解決手段】船舶1の船首部形状は、船舶1の船体の船首部に、この船舶1の中高速航行時に船首部から発生し該船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離手段2−2を設け、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことを特徴とする。このとき、スプレー剥離板2−2が、波面の上昇過程で船体を前方に推進する分力を生じる3次元形状に形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば船舶の船首部形状及び船首部形状の設計方法に係り、特に船舶の航行により発生するスプレー波の防止、抑制、剥離及び発散を可能とする船舶の船首部形状及び船首部形状の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶が実海域で遭遇する波浪による抵抗増加は、運航時の燃費増の主要な原因であり、これまで種々の船型開発が実施されてきた。しかし、いずれも反射波を抑制することをその目的としてきたため、反射波が卓越する低速肥大船が対象であった。
【0003】
一方、船舶が航行するとき、船首部分との衝撃により砕波が発生する。特に、20ノツト以上で移動する中高速船では、砕波に加えて船首部分に係る船体の外板に沿って船体表面を覆うスプレー状の薄い波(以下、「スプレー波」ともいう。)が発生する。スプレー波は、船体の突出した部材に衝突したり船体外板上をすべり摩擦を生じるため、船舶の航行の妨げとなる。このため、エネルギー損失が発生し、船舶の運航上効率が悪い。
【0004】
すなわち、波浪中の抵抗成分には、大きく分けて二つあり、その一つは、波浪による衝撃的な圧力成分であり、もう一つは、船首部後方まで船体表面を覆うスプレー波による粘性抵抗であると考えられるところ、中高速船の場合には、後者に示すスプレー波による粘性抵抗成分が卓越していることが推測される。したがって、スプレー波の発生の防止、抑制及び剥離、或いは発生したスプレー波の抵抗エネルギーの低減若しくは発散が必要となる。
【0005】
スプレー波の発生を防止及び抑制し、発生したスプレー波を発散させる船首部形状として、例えば、下記特許文献1及び2に開示されているものがある。
【0006】
特許文献1は、船舶が航行するとき発生するスプレー波の発生を防止する装置であって、船首から左右舷の喫水線近傍に可動式のスプレー波防止フィンを設けた技術思想を開示している。しかし、特許文献1に開示される思想は、可動式のフィンによってスプレー波の発生を単に抑制するためのものであり、スプレー波がフィンに下方向から衝突させることのみを目的としている。さらに構造的には、船体外板に格納室を形成した上で、スプレー波防止フィンを分割体としてこの格納室から張り出す構造としたもののため、後付できないなどの制約が存在する。
【0007】
特許文献2は、船体自体に、左右船側に発生する飛沫(スプレー)の上昇或いは飛散を抑制するために、水面と並行な平面部を設けた技術思想を開示している。しかし、特許文献2に開示される思想は、スプレー波の発生を単に抑制するためのものであり、スプレー波を船舶の推力に利用することができない。また、船体の左右側板を成す船側に水面と平行な平面部を備えさせつつ、この平面部を、上下方向においては満載時の載貨喫水線の直近上位から積荷軽少時の喫水線の直近下位までの間に、前後方向においては船首から肩部近傍までの間に、それぞれ形成するという構造的な特徴から必然的に、後付できないなどの制約が存在する。
【特許文献1】特開2001−247075号公報
【特許文献2】特開2004−237952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中高速船の航行を効率良く行うためには、スプレー状の薄い波による粘性抵抗を低減させることが必要であるところ、上記特許文献1及び2に係る技術思想では、スプレー波の発生の防止及び抑制を行うことのみを目的とするフィンや船底の形状を開示しているにすぎず、最適に粘性抵抗が低減しているとは認められない。すなわち、これらの文献に開示されたフィンや船底の形状ではスプレー波を船体から剥離させることができないため、効率の良い航行が実現していないものと考えられる。
【0009】
本願は、こうした従来技術の問題点を解決するもので、スプレー波の粘性抵抗を効率よく低減させる船舶の船首部形状及び船首部形状の設計方法を提供することを目的とする。また、スプレー波を船体から剥離させるときに、スプレー波から航行に対して推力を発生させることにより、効率良く運行させ、船舶全体の省エネルギー化の実現が図れる船舶の船首部形状及び船首部形状の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、本願に係る船舶の船首部形状は、船舶の船体の船首部に、この船舶の中高速航行時に前記船首部から発生し前記船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離手段を設け、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことを特徴とする。
【0011】
ここで、スプレー剥離手段(以下、「スプレー剥離部」ともいう。)とは、船舶の船首部の一部として構成され、スプレー波の船体外板へのへばりつきを切り離す機能を持つ構造体、形状、装置を含む概念をいい、たとえば、一定の形状(たとえば突起状、鋸歯状、弧状、三日月状等)により形成される構造体、スプレー波のまとわりつきを遮断する素材(金属、合成樹脂、セラミック、ゴム等)による構造体、まとわりつきを粉砕する機構、流体を噴射する装置等であってもよい。形状的な詳細としては、スプレー剥離手段の(側面視)後端部は、平断面視において、船舶の船体の外板との間で段差を形成するか、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を有することが好ましく、後端部の面が垂直であっても所定の傾斜角を持っていてもよい。
【0012】
また、スプレー剥離手段の下端部は、船舶の横断方向の縦断面において、船舶の船体に収束するか、もしくはわずかな段差をもった形状を有し、船舶の進行方向の縦断面において、下端部の面が水平であっても所定の傾斜を持っていてもよい。
【0013】
さらに、スプレー剥離手段の側面部は、平面の一体型構造或いは曲面の一体型構造、もしくは平面及び曲面が連接された構成であって平断面視において顕著な変曲点を形成する構成であることが好ましいが、場合によっては曲面、曲面もあり得る。この側面部は、個々の平面もしくは曲面部材が連接された構成或いは一体となっている構成のいずれでもよいが、部材連接構造の場合の部材間の接合点或いは一体型構造における屈折点は所定の角度からなる傾斜を持ち、スプレー波の発生の防止、抑制及び剥離、或いはスプレー波の有するベクトルの分力から船舶の推進力を獲得するのに適した角度を成していることが好ましい。ここで、変曲点とは、側面部の外郭線が不連続でない曲線で表される場合に内側に凹凸が入れ替わる点のことをいい、屈折点とは側面部が折曲線を形成する複数の面(平面もしくは曲面)で連接される構造の場合の連接点をいう。
【0014】
また、スプレー剥離手段の上端部は、平面或いは曲面であって、船舶の船体の外板と段差を有し、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を形成することが好ましく、上端部の面が水平であっても所定の傾斜を持っていてもよい。さらに、スプレー剥離手段の先端部(以下、「前端」ともいう。)は、船舶の船首部分よりも鈍角でなく、先端部は船首垂線位置よりも前方であることが好ましいが、船首垂線位置上であってもよい。すなわち、先端部が突出していてもしていなくてもよい。この先端部は、平断面視において平面或いは曲面によって形成されてもよく、曲面の場合は外側に対して膨らんだ形状であっても、或いは逆に抉った形状であってもよい。スプレー剥離手段の全長は、船舶全体の船長の略3%以内程度であってもよく、特に限定はない。
【0015】
スプレー剥離手段の上下方向の設置・構成位置は、満載喫水線(船舶が貨物を積載するときの適切な予備浮力の許容範囲内における許容可能な限界値)より上方が好ましく、満載喫水線とスプレー剥離手段の下端部とが略接する程度が好ましい。また、スプレー剥離手段の材質は硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック、ゴム等であることが好ましいがこれに限定されることはない。ゴム製を用いる場合には船首部の保護の効果をも奏することができる。
【0016】
なお、スプレー剥離手段は可動式であってもよく、中高速航行時の速度や積載量を感知して自動的に最適なタイミングで最良の位置に駆動する構成であってもよい。かかるスプレー剥離手段は、喫水に応じて位置を変えることにより、船首部抵抗を増やすことなく、スプレー抵抗が低減できるメリットがある。したがって、より周囲の環境・状況に適合したスプレー抵抗低減をより効率よくかつ経済的に実現することができる。
【0017】
なお、上記記載の「段差」とは、船舶の船体の外板とスプレー剥離手段の後端部との成す角が略直角もしくはこれに近接する所定の角度を持ちつつ、もしくはスプレー剥離手段が空洞状を為し後端部が塞がれない状態で、船舶の船体の外板表面とスプレー剥離手段の後端部表面とがスプレー波の巻き込みを切るのに必要な程度の寸法だけ少なくとも離隔している状態であることを示す。また、「変曲点」とは、プレー剥離手段の後端部が平断面において曲線を形成する場合に、かかる曲線の、上に凸の状態と上に凹の状態との変わり目が存在すること、或いは、当該曲線を関数 y=f(x)(2回連続微分可能とする)上の点 (x, y) として表せるとした場合に、2次導関数 f' ' (x) の符号が変化する点が存在することを示す。「顕著な変曲点」とは、この変わり目或いは上記符号が変化する点がなだらかなものではなく、スプレー波を剥離させるのに充分な程度の凸を与える一定の範囲の値であることを示す。さらに、「船首垂線位置」とは、満載喫水線と船舶の船首前面との交点を通る鉛直線の位置を示す。
【0018】
こうした構成を備えることにより、船舶の中高速航行時に船首部から発生したスプレー状の薄い波が船体表面を覆おうとしても、スプレー剥離手段の剥離形状(すなわち、段差もしくは変曲点の存在)によりかかる波は船体表面から剥離する。すなわち、中高速航行時に発生するスプレー波は、船舶の速度が上がることにより波面の最高到達点も上昇し、船舶の後方への飛距離も増加するところ、スプレー波はスプレー剥離手段に衝突し、この衝突した波が船体に巻き込む動作が遮断されるため、スプレー波の波面形成を防止或いは抑制し、スプレー波を剥離する役割を果たす。したがって、船舶の航行中にスプレー波は船体の外板にへばりつくことなく、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させることができる。
【0019】
また、本願に係る船舶の船首部形状は、船舶の船体の船首部に、この船舶の中高速航行時に前記船首部から発生し前記船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離手段を装着物として装着して設け、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことを特徴とする。
【0020】
ここで、装着物とは、船舶の船首部分に装着させ、スプレー波の船体外板へのへばりつきを切り離す機能を持つ後付型構造物、形状体、装置を含み、たとえば、一定の形状(たとえば突起状、鋸歯状、弧状、三日月状等)により形成される後付型構造体、スプレー波のまとわりつきを遮断する素材(金属、合成樹脂、セラミック、ゴム等)による後付型構造体、まとわりつきを粉砕する後付型機構、流体を噴射する後付型装置等であってもよい。形状的な詳細としては、装着物の(側面視)後端部は、平断面視において、船舶の船体の外板と段差を有し、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を形成することが好ましく、後端部の面が垂直であっても所定の傾斜角を持っていても、また後端部が塞がれない状態で外板と離隔し後端部が垂直であっても所定の傾斜角を持っていてもよい。
【0021】
また、装着物の下端部は、船舶の横断方向の縦断面において、船舶の船体に収束するか、もしくはわずかな段差をもった形状を有し、船舶の進行方向の縦断面において、下端部の面が水平であっても所定の傾斜角を持っていてもよい。
【0022】
さらに、装着物の側面部は、平面或いは曲面、若しくは平面及び曲面の組合せであって平断面視において顕著な変曲点を形成する構成であることが好ましいが、場合によっては曲面、曲面もあり得る。この側面部は、個々の平面もしくは曲面部材が連接された構成であっても、或いは一体となっている構成のいずれでもよいが、部材連接構造の場合の部材間の接合点或いは一体型構造における屈折点は所定の角度からなる傾斜を持ち、スプレー波の発生の防止、抑制及び剥離、或いはスプレー波の有するベクトルの分力から船舶の推進力を獲得するのに適した角度を成していることが好ましい。ここで、変曲点とは、側面部の外郭線が不連続でない曲線で表される場合に内側に凹凸が入れ替わる点のことをいい、屈折点とは側面部が折れ線を形成する複数の面(平面もしくは曲面)で連接される構造の場合の連接点をいう。
【0023】
また、装着物の上端部は、平面或いは曲面であって、船舶の船体の外板と全部もしくは一部において接合されることが好ましく、上端部の面が水平であっても所定の傾斜角を持っていてもよい。さらに、装着物の先端部は、船舶の船首部分よりも鈍角でなく、先端部は船首垂線位置よりも前方であることが好ましいが、船首垂線位置上であってもよい。この先端部は、平面或いは曲面によって(平断面視において直線もしくは曲線の折れ線によって)形成されてもよく、曲面の場合は外側に対して膨らんだ形状であっても或いは逆に抉った形状であってもよい。すなわち、先端部が突出していてもしていなくてもよい。装着物の全長は、船舶全体の船長の略3%以内程度であってもよく、特に限定はない。
【0024】
装着物の上下方向の設置位置は、満載喫水線より上方が好ましく、満載喫水線と装着物の下端部とが略接する程度が好ましい。また、装着物の材質は硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック、ゴム等であることが好ましいがこれに限定されることはない。ゴム製を用いる場合には船首部の保護の効果をも奏することができる。
【0025】
さらに、装着物は、船舶の船首部に後付けするものであり、その装着方法は、溶接を含む脱着不能な状態であっても、ネジを含む接合部材を用いて脱着可能な状態であってもよい。なお、装着物は可動式であってもよく、中高速航行時の速度や積載量を感知して自動的に最適なタイミングで最良の位置に駆動する構成であってもよい。かかる装着物としてのスプレー剥離手段は、喫水に応じて位置を変えることにより、船首部抵抗を増やすことなく、スプレー抵抗が低減できるメリットがある。したがって、より周囲の環境・状況に適合したスプレー抵抗低減をより効率よくかつ経済的に実現することができる。
【0026】
なお、上記記載の「段差」とは、船舶の船体の外板と装着物の後端部との成す角が略直角もしくはこれに近接する所定の角度を持ちつつ、もしくはスプレー剥離手段が空洞状を為し後端部が塞がれない状態で、船舶の船体の外板表面とスプレー剥離手段の後端部表面とがスプレー波の巻き込みを切るのに必要な程度の寸法だけ少なくとも離隔している状態であることを示す。また、「顕著な変曲点」とは、プレー剥離手段の後端部が平断面において曲線を形成する場合に、かかる曲線の、上に凸の状態と上に凹の状態との変わり目、或いは、当該曲線を関数 y=f(x)(2回連続微分可能とする)上の点 (x, y) として表せるとした場合に、2次導関数 f' ' (x) の符号が変化する点がなだらかなものではなくスプレー波を剥離させるのに充分な程度の凸を与える一定の範囲の値であることを示す。さらに、「船首垂線位置」とは、満載喫水線と船舶の船首前面との交点を通る鉛直線の位置を示す。
【0027】
こうした構成を備えることにより、装着物は、船舶の中高速航行時に船首部から発生したスプレー状の薄い波が船体表面を覆おうとしても、スプレー剥離手段の剥離形状(すなわち、段差もしくは変曲点の存在)によりかかる波は船体表面から剥離する。すなわち、中高速航行時に発生するスプレー波は、船舶の速度が上がることにより波面の最高到達点も上昇し、船舶の後方への飛距離も増加するところ、スプレー波は装着物に衝突し、この衝突した波が船体に巻き込む動作が遮断されるため、スプレー波の波面形成を防止或いは抑制し、スプレー波を剥離する役割を果たす。したがって、船舶の進行中にスプレー波は船体の外板にへばりつくことなく、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させることができる。
【0028】
上記の場合、前記船舶は、下記数式1で定義される前記船体の船首部入射角αが30°以内で、かつ設計フルード数が0.18以上であるように構成することもできる。

【0029】
ここで、「Cp:船体の柱形係数」とは、船のやせ具合を示すための係数であるファインネス係数(肥せき係数)であって、
Cp=船の体積/ ( 船の長さ*船の最大断面積)
で求められるものをいい、船体の容積(ボリューム)が小さい値ほど該柱形係数は小さい値となる。
【0030】
こうした構成を備えることにより、数式1に所定の数値が代入されることで、船体の船首部入射角αが30°以内で、設計フルード数が0.18以上である船舶は、いわゆる中高速船であって、この中高速船に上記記載のスプレー剥離手段或いは装着物を用いることによれば、上記の説明によるように、船舶の航行中にスプレー波が船体の外板にへばりつくことなく、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させることができる。
【0031】
また、本願に係る船舶の船首部形状は、船舶の船体の船首部形状において、前記スプレー剥離手段は、前記船体の計画喫水線近傍より上部に設けたスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状であって、このスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の少なくとも後端部或いは側板部の後遊端が前記船体の外板と段差を有し、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を有したことを特徴とする。
【0032】
こうした構成を備えることにより、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状は、少なくともスプレー剥離手段の後端部と船体の外板とが段差を有し、或いは側板部の後遊端が船体外板から一定距離離隔し、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を形成するため、船舶の航行により発生したスプレー波がスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の側面部に衝突し、スプレー波の波面は船体の外板と離れるように分散されため、スプレー波を剥離することができる。したがって、船舶の航行中にスプレー波は船体の外板にへばりつくことなく、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させることができる。
【0033】
また、本願に係る船舶の船首部形状は、前記スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の前端は前記船体の前端を越えない範囲で、船首垂線位置よりも前方としたことを特徴とする。
【0034】
ここで、「船体の前端を越えない範囲」とは、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の前端が、船体の前端からの垂線に達しない範囲内であることを示し、その範囲内であればいずれの位置にあってもよい。
【0035】
また、「船首垂線」とは、設計喫水線と船体との交わる点を通る垂線をいう。
【0036】
こうした構成を備えることにより、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の前端は船体の前端を越えない範囲で、船首垂線位置よりも前方にあり、前端は船舶の船首部分よりも鈍角でない形状を有する。したがって、法令を遵守した上で、船舶の進行中にスプレー波の船体の外板へのへばりつきを防止し、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させる船首部形状が実現される。
【0037】
また、本願に係る船舶の船首部形状は、前記スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の長さを、前記船体の全長の略3%以内としたことを特徴とする。
【0038】
こうした構成により、船体の全長の略3%以内にスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の長さを設定されるため、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状自体がスプレー波以外の波の抵抗体になることを実質的に防ぐことができる。また、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の重量も制限されるため、貨物の積載量を最大限まで可能とする。
【0039】
また、本願に係る船舶の船体の船首部形状は、前記スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状が、波面の上昇過程で前記船体を前方に推進する分力を生じる3次元形状に形成されたことを特徴とする。
【0040】
スプレー波の形状は船舶の速度によって異なるが、高速度ほど波面の最高到達点は高く、後方への飛距離は長くなる。したがって、船首部で盛り上がるように生ずるスプレー波の上昇過程におけるベクトルは、上方向の成分と水平方向の成分との分力によって形成されると考えられる。
【0041】
ここで、「船体を前方に推進する分力を生じる3次元形状」とは、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の側面部の上側及び下側で構成され、かかる上側及び下側が平面の一体型構造或いは曲面の一体型構造、もしくは一方が平面で他方が曲面のものが連接される組合せ、双方とも曲面が連接される組合せでもよいところ、例えば、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の側面部が曲面及び曲面の組合せ或いは曲面の一体型構造であって、該側面部の部材連接構造の場合の部材間の接合点或いは一体型構造における屈折点が所定の角度で前傾となっているもの(前後方向に対して左右方向には傾斜されていてもいなくてもよい)を示し、スプレー波が上昇過程において該側面部に衝突することで、前進する方向の推進力に係る分力を獲得することができる形状すべてを指し、特に上記に限定されない。ここで、変曲点とは、側面部の外郭線が不連続でない曲線で表される場合に内側に凹凸が入れ替わる点のことをいい、屈折点とは側面部が折り曲げ線を形成する複数の面(平面もしくは曲面)で連接される構造の場合の連接点をいう。
【0042】
こうした構成を備えることにより、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状を3次元形状のうちの一定部分(たとえば上記例では前傾部分を持つ面)に対してスプレー波が衝突することで、かかる一定部分が推進エネルギーを受け、これが船体を前方に推進する分力を生じさせるため、船舶は分力により推進力を得ることができる。
【0043】
また、本願に係る船舶の船首部形状の設計方法は、船舶の中高速航行時の抵抗増加成分の低減設計方法であって、下記数式1で定義される船首部入射角αを30°以内とするステップと、設計フルード数を0.18以上とするステップと、船首部あるいは船首装着物を中高速航行時に前記船首部から発生し前記船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離形状とするステップとを備え、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことを特徴とする。

【0044】
こうした構成で、(数式1)で定義される船首部入射角αを30°以内とするステップと、設計フルード数を0.18以上とするステップとを有することにより、いわゆる中高速船において本願に係る上記設計方法を活用することができる。また、船首部あるいは船首装着物を中高速航行時に船首部から発生し船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離形状とするステップを有することで、船舶の航行中にスプレー波は船体の外板にまとわりつくことなく、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させることができる。なお、この設計方法は、各ステップを実現するプログラム、ソフトウェア、かかるソフトを実行可能形式にして記録媒体に搭載したもの、ROM、アルゴリズムを電子回路化したものを含んで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0045】
本願によれば、船舶の船体の船首部に、この船舶の中高速航行時に船首部から発生し船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離手段を設け、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことで、スプレー波がスプレー剥離手段に衝突すると、スプレー波の後方への広がりを防止或いは抑制し、スプレー波を剥離することができる。すなわち、スプレー波は船体の外板を這うように波面を形成することができなくなるため、船体側面に衝突したりへばり付いたりすることもなく、粘性抵抗成分の発生を低減させることができる。したがって、中高速船が消費するエネルギーも低減し、効率の良い航行を図ることができる。これにより、船舶全体の燃料費の3〜5%の削減が実現し得る。
【0046】
また、本願によれば、船舶の船体の船首部に、この船舶の中高速航行時に船首部から発生し該船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離する装着物を設け、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことで、スプレー波が該装着物に衝突すると、スプレー波の後方への広がりを防止或いは抑制し、スプレー波を剥離することができる。すなわち、スプレー波は船体の外板を這うように波面を形成することができなくなるため、船体側面に衝突したりへばり付いたりすることもなく、粘性抵抗成分の発生を低減させることができる。したがって、中高速船が消費するエネルギーも低減し、効率の良い航行を図ることができる。これにより、船舶全体の燃料費の3〜5%の削減が実現し得る。
【0047】
また、本願に係るスプレー剥離手段を装着物として構成した場合、既存船と存在している多くの中高速船に後付で、当該装着物のとり付け効果を発揮できる。したがって、船舶を最初から建造するよりも廉価で本願に係るスプレー波剥離の効果を享受できる。さらに、装着物として船舶の上記船首部形状を提供するため、船舶の形状、機能及び用途の変更に応じて所望の効果を発揮する装着物を都度選択して装着することができる。したがって、例えば、海流が激しいところを航行する船舶や波が立たず穏やかな海洋を航行する船舶に適した形状を有する装着物を所定の位置に装着することで、スプレー波の波面形成を防止或いは抑制し、スプレー波を剥離することが可能となり、エネルギー消費量を低減させた最適な航行を実現することができる。
【0048】
また、本願によれば、船舶が上記数式1で定義される船体の船首部入射角αが30°以内で、かつ設計フルード数が0.18以上であることから、いわゆる中高速船にスプレー剥離手段或いは装着物を用いることにより、船舶の航行中にスプレー波は船体の外板にまとわりつくことなく、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させることができる。すなわち、船首部入射角αが30°以上で、かつ設計フルード数が0.18未満である、いわゆる肥大船は航行時にスプレー波を発生させることはないため(発生させたとしても影響はない)、肥大船にスプレー剥離手段或いは装着物を用いることは船舶の航行における抵抗体となる可能性があるが、船首部入射角αが30°以内で、かつ設計フルード数が0.18以上であれば抵抗増加成分よりはるか大きくスプレー成分を低減させることができる。したがって、肥大船にスプレー剥離手段或いは装着物を用いることはエネルギー消費量が増加すると推測されるため、上記条件を満たす中高速船であることを事前に判別することで、無駄な構築費用の発生を防ぐことができる。
【0049】
さらに、本願によれば、スプレー剥離手段は、船体の計画喫水線近傍より上部に設けたスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状であって、このスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の少なくとも後端部が船体の外板と段差を有し、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を形成するか、もしくはまた後端部が塞がれない状態で外板と離隔したことで、スプレー剥離手段によるスプレー波の波面形成を防止或いは抑制させる効果に加え、少なくとも後端部が船体の外板と段差を有し、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を形成するか、あるいは後端部が塞がれない状態で外板と離隔したことで、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状により、波面形成が妨げられたスプレー波をさらに船体の外板と離れるように分散させることができる。すなわち、船体の外板からスプレー波を剥離し、波面形成が妨げられたスプレー波による粘性抵抗成分の発生を抑制することができる。したがって、中高速船が消費するエネルギーをより低減し、さらに効率の良い航行を実現することができる。また、スプレー剥離板もしくは船体形状のその機能を有する内部を空洞とし、後端部が塞がれない状態で外板と離隔させることにより、一層の軽量化が図れる。
【0050】
また、本願によれば、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の前端は船体の前端を越えない範囲で、船首垂線位置よりも前方としたことで、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の前端は船体の前端よりも鈍角でない形状を有するため、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状自体が船舶の航行を妨げる抵抗体になることを防ぐことができる。すなわち、前端が突出していれば航行中に発生するスプレー波以外の波が衝突する面積が限られる。したがって、中高速船が消費するエネルギーをより低減し、法令を遵守した一層効率の良い航行を実現させることができる。
【0051】
さらに、本願によれば、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の長さは、船体の全長の略3%以内としたことで、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状自体がスプレー波以外の波の抵抗体になることを防ぎ、重量も制限することができる。すなわち、スプレー波は船首部において発生するため、船舶の速度によって変化するスプレー波の最高到達点や後方への飛距離に拘らず、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状を船首部に設けるだけで効果が期待できる。従って、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の長さは船体の全長の略3%以内であっても、最適にスプレー波の波面形成を防止或いは抑制し、船体の外板からスプレー波を剥離することができる。したがって、中高速船が消費するエネルギーをより低減し、効率の良い航行を実現することができる。
【0052】
また、本願によれば、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状が、波面の上昇過程で船体を前方に推進する分力を生じる3次元形状に形成されることで、船舶は該分力から推進力を得ることができる。すなわち、船首部で生じたスプレー波の波面が盛り上がる上昇過程においてスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状に衝突するところ、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状が船体を前方に推進するベクトルを生じさせる。したがって、スプレー波のベクトルから船舶の進行方向の分力を獲得でき、船舶の推進力を得ることができる。こうして、中高速船が消費するエネルギーをより一層低減し、極めて効率の良い航行を実現することができる。
【0053】
さらに、本願によれば、船舶の中高速航行時の抵抗増加成分の低減設計方法であって、(数式1)で定義される船首部入射角αを30°以内とするステップと、設計フルード数を0.18以上とするステップと、船首部あるいは船首装着物を中高速航行時に該船首部から発生し該船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離形状とするステップとを備えることで、中高速船においてスプレー波による抵抗粘性成分の低減を実現させ、中高速航行時に消費するエネルギーを低減し、効率の良い航行を実現し得る中高速船を設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0055】
図1は、船舶1の船首部に本発明の一実施形態に係る装着物2−2を装着させた状態を示した図である。同図(A)はその平面を、同図(B)はその側面を示す。船舶1は、船首部入射角が30°以内で、かつ、設計フルード数が0.18以上である、いわゆる中高速船であることが好ましい。
【0056】
同図に示される装着物2−2は、スプレー波の船体1の外板へのへばりつきを切り離す機能を持つ後付型構造物もしくはその機能を持った形状体である。同図の例では、上板40、後板10、側板30(30−1、30−2)の各面が連接されたものが示されているが、これに底板20がさらに含まれる構成でもよく、またこれらの面板が連接される構成でも、或いは一体形成される構成であってもよい。各面板はスプレー波のまとわりつきを遮断する素材(金属、合成樹脂、セラミック、ゴム等)によることが好ましい。また、面板は平面或いは曲面にて構成される。また、各面板は代替的に、たとえば、一定の形状(たとえば突起状、鋸歯状、弧状、三日月状等)により形成される後付型構造体、或いは、まとわりつきを粉砕する後付型機構、もしくは流体を噴射する後付型装置等であってもよい。
【0057】
形状的な詳細に関しては、装着物2−2の(側面視)後端部10は、平断面視において、船舶の船体の外板と段差を有している。後端部10と側板30(30−1、30−2)との取り合い箇所は、後端部10及び側板30(30−1、30−2)が屈折点をもって折れ線接合される形態でもよいし、或いは両者が連続的に連接される(屈折点のない)非折れ線接合形態でもよい(以下、30−1と30−2との取り合いについて同様)。折れ線接合形態の場合には、両者のなす角が垂直であっても所定の傾斜角を持っていてもよく、非折れ線接合形態の場合には、後端部10と側板30(30−1、30−2)との連接部分の平断面の外郭線が顕著な変曲点を形成することが好ましい(以下、30−1と30−2との取り合いについて同様)。このような屈折点をもった折れ線接合形態によれば、船体の外板との間で段差が生じるから、スプレー波の船体への巻き込みが防止され、スプレー剥離効果を奏する。また、代替的に、屈折点を持たない非折れ線接合形態であってもその平断面における外郭線が顕著な変曲点を形成することから、スプレー波の船体への巻き込みが防止され、スプレー剥離効果を奏する。
【0058】
装着物2−2の長さは、船舶1の船体の全長の略3%以内とし、装着物2−2の下端部20と喫水線とが接する程度の高さに位置することが好ましいが、特に限定はない。装着物2−2は船舶1の外板に溶接や接着剤により固定されていてもよく、ネジを含む接合部材で取り外し可能に固着されている形態であってもよい。なお、同図では、装着物2−2の後端部10が船舶1の船体の外板とで段差を形成したものを示す。
【0059】
側板30は上側面部30−1及び下側面部30−2が一定の角度をもって接合されて構成される。上側面部30−1及び下側面部30−2はそれぞれ、平面もしくは曲面で構成される。一定の角度とは、上側面部30−1でスプレー波をベクトル分解した成分の一方を受けて、これを船舶の推進力に転換するために充分な角度をいう。この詳細については後述する。
【0060】
このように、装着物2−2を船舶に装着することで、スプレー波による抵抗を低減する効果を発揮できる。しかも、後付装着形態をとることによって、建造当初から装着されていない既存の船舶に対しても、抵抗低減による効果を後発的に達成させることが可能となる。さらに、上側面部30−1の存在により、スプレー波の一部を船舶の推進力に変換でき、省エネ性は向上する。
【0061】
なお、上記の説明では、スプレー剥離手段の一実施形態として装着物2−2を例にとって説明したが、上記の説明については、その事後的な装着に関する記載を除けば、総て、当初建造型のスプレー剥離手段2−1においても、適用されるものである。
【0062】
図2A、図2Bは、本発明の別の一実施形態に係る装着物2−2の形状を示す図である。図2Aでは、下端部(底板を含む場合もある)20が船舶1の船舶の船体の外板と一定の角度で接合される。かかる底板20と側板下部30−2との取り合いには折り曲げ線を介する連接でも、或いは折り曲げ線のない連続的な連接でもよい。後者の場合には、縦断面の外郭線たる曲線に顕著な変曲点が形成される。図1及び図2Bでは、下端部20が船舶1の船舶の船体の外板に収束している場合、すなわち底板20の全部もしくは一部が存在しない場合の例を示している。また、図2Aは上側面部30−1が平面で、下側面部30―2も平面で構成され上側面部30−1と下側面部30-2の接合部において、縦断面における外郭曲線が屈折点を形成する形状のものを示す。また、下端部20が船舶1の外板とで段差を設けた形状のものを示す。図2Bは上側面部30−1と下側面部30-2が側面視で窪みを形成する形状のものを、それぞれ示す。図2A及び図2Bに示すとおり、装着物2−2は、後端部10、下端部20、上側面部30−1、下側面部30−2及び上端部40に係る面と先端部を備えて構成され、それが船首部を挟んで左右略対称に形成される。図2A及び図2Bに示す装着物2−2についての説明としては、下記に特筆するところ以外は上記図1に関する説明をもってこれに換える。
【0063】
図2A及び図2Bにおける後端部10は、平断面において船舶の船体の外板と段差を有するように形成されている場合(屈折点をもった折れ線接合形態)の例を示しているが、後端部10の平断面の外郭線である曲線に顕著な変曲点が存在するように形成してもよい(屈折点を持たない非折れ線接合形態)。上述したように、屈折点をもった折れ線接合形態の場合でも、屈折点を持たない非折れ線接合形態においてその平断面における外郭線が顕著な変曲点を形成する場合でも、スプレー波の船体への巻き込みが防止され、スプレー剥離効果を奏する。また、装着物2−2自体が船舶航行の抵抗体とならないか、もしくは最小限の抵抗体であることが好ましい。なお、図1、図2A及び図2Bでは、後端部10と船舶1の船体の外板とで段差を形成し、後端部の面が垂線から略30°程度傾斜している場合の例を示している。この後端部10は必ずしも傾斜していなくてもよく、また傾斜角に限定はない。
【0064】
また、下端部20に関しては、図2Aではその船舶の船体に対して収束せずに一定の角度をもって交わる形態を示し、図2Bでは、逆に船体に対して収束する形態を示している。
【0065】
下端部20の段差は、特に装着物2−2とした場合に、材質によってはやむなく段差を付けざるを得ない場合があるため、上記のような形態が発生し得るものである。しかし、船体から突出するように段差を設けるか、或いはその縦断面の外郭線たる曲線に顕著な変曲点が存在するような形状であって、しかもそれ自体が船舶航行の抵抗体とならないか、もしくは最小限の抵抗体である構成を採用することによる副次的効果も存在する。たとえば、上記の段差或いは顕著な変曲点を形成する形状である場合、スプレー波は下端部20にも衝突するため、スプレー波の上昇過程における防御壁の役割も果たし得る。顕著な変曲点が存在するような形状である場合は、変曲点に係る曲面にスプレー波が衝突することで、反射の原理により、より効率良く剥離効果を奏することができると考えられる。
【0066】
上側面部30−1は、平面で構成される形状或いは曲面であってその平断面における外郭曲線が顕著な変曲点を形成する形状であってよく、しかもそれ自体が船舶航行の抵抗体とならないか、もしくは最小限の抵抗体であることが好ましい。上側面部30−1は下方に傾斜する面であることからその縦断面が直線(すなわち上側面部30−1が平面)であってもスプレー波の抑制効果を生じるが、当該縦断面が上側に凸の曲線(すなわち上側面部30−1が側面視で窪んだ曲面)である場合には内側に抉った湾曲面を構成するため、かかる湾曲面内での乱反射効果を期待でき、スプレー波の衝突によって拡散する飛沫の発散を抑制する効果をより一層生じ、平面の場合よりもさらに粘性抵抗成分を低減させ得ると考えられる。なお、図1、図2A及び図2Bでは、下側面部30−2は平面である場合の例を示しているが、これが一定の曲面であってもよい。
【0067】
また、上側面部30−1及び下側面部30−2は個々の部材であっても一体となっていてもいずれでもよい。個々の部材である場合は、溶接を含む所定の接合方法で接合されていればよく、クラック防止、漏水防止等の所定の処置が施されているのが好ましい。個々の部材である場合或いは一体となっている場合のいずれにおいても、接合点或いは屈折点と水平面とで所定の角度を成すことが好ましく、角度に限定はないが、好適には略20°程度であって、スプレー波の発生の防止及び抑制に適した角度を成していることが好ましい。なお、図1、図2A及び図2Bでは、上側面部30−1と下側面部30−2との接合点或いは屈折点と水平面との成す角が20°であるものを示している。この角度は必ずしもなくともよい。
【0068】
上端部40は、平面或いは曲面のいずれでもよく、船舶1の船体の外板とで段差を構成し、或いはその縦断面の外郭線たる曲線が顕著な変曲点を形成する形状であってもよい。また、上端部40は、水平であっても所定の傾斜を有していてもよく、好適には略10°程度の傾斜角を有し、しかもそれ自体が船舶航行の抵抗体とならないか、もしくは最小限の抵抗体であることが好ましい。なお、図1、図2A及び図2Bでは、船舶の前方向に向かって下り斜面を有する上端部40を示している。
【0069】
先端部は、好適には船舶1の船体の前端を越えない範囲で、船首垂線位置よりも前方とすることがよいが、船首垂線位置上であってもよい。すなわち、先端部が突出していてもしていなくてもよい。また、先端部は、平面或いは曲面であってよく、曲面の場合は膨らんだ形状(外に凸の状態)であっても抉った形状(外に凹の状態)であってもよい。なお、図1及び図2Aでは、先端部が船舶1の船体の前端を越えない範囲で、船首垂線位置よりも前方であり、平面の形状である場合の例を示し、図2Bでは、同じ状況で上側面部30−1が曲面の形状である場合を示している。
【0070】
図3は、本発明の一実施形態に係る装着物2−2にスプレー波が衝突した場合の本願発明に係る原理を説明するための図である。同図(A)では、装着物2−2にスプレー波が衝突した場合の原理を説明するものである。同図において、船舶1は中高速度で航行中、スプレー波が発生する。スプレー波の波面の最高到達点及び後方への飛距離は速度に比例し、高速度ほど波面の最高到達点は高く、後方への飛距離は長くなる。所定の速度時に発生したスプレー波は、装着物2−2の上側面部30−1或いは/及び下側面部30−2に衝突するが、装着物2−2の後端側が船体外板と一定の距離をなしていることにより、或いは顕著な変曲点の存在により、スプレーの巻き込みが防止されるため、スプレー波の波面形成が防止或いは抑制される。こうして、装着物2−2の存在によって、スプレー波を剥離することができる。また、後端部10は、装着物2−2の外面と船舶1の船体の外板とで段差を形成し、あるいは装着物2−2の平断面の外面線である曲線に顕著な変曲点が存在するため、衝突したスプレー波は船舶1の外板から離れるように(外板にまとわりつかずに)発散する。したがって、スプレー波は船舶1の船体から剥離される。
【0071】
また、図3(B)では、スプレー波の持つベクトルと分力の関係を示す。同図に示すとおり、船首部で盛り上がるように生ずるスプレー波の上昇過程においてベクトル40−1を有する場合、上側面部30−1に衝突することで、ベクトル40−1は船舶1の進行方向に係る分力40−2と上向き成分に係る分力40−3とを生じさせるため、分力40−2により船舶1は推進力を得ることができる。逆に、上側面部30−1の前後(及び左右)方向の傾斜角は、このようなスプレー波のベクトル成分40−1を有効に受け得るものとすればよい。
【0072】
図4A、図4Bは、本発明の更に別の実施形態に係る船舶1の船首部にスプレー剥離手段(スプレー剥離部)2−1を設けた状態図である。図4Aはその平面を、図4Bはその側面を示す。図1では装着物2−2を船舶1の船体に装着している場合を示しているが、図4A、図4Bにおいては船舶1の船体の一部(船体一体型)となるスプレー剥離手段(スプレー剥離部)2−1であるため、その特徴が異なる。詳細には、スプレー剥離手段(スプレー剥離部)2−1は船体一体型であるため、装着物2−2よりも、さらに後端部10及び/または上端部40が船舶1の船体の外板とで(その断面の外郭線が)顕著な変曲点を形成することが可能となる。また、先端部も船体の一部となるため、顕著な変曲点を形成する。特に、後端部10と側板部30との取り合い部の平断面の外郭線における顕著な変曲点は、外板と段差を有した場合と同等の効果を有する範囲で設定されており、スプレー波の剥離効果については遜色のないものである。
【0073】
次に、本願に係る船舶の船首部形状の設計方法について、図1、図2及び図3を適宜用いてステップ毎に説明する。第一のステップ、第二のステップ及び第三のステップを備える設計方法により、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ることを特徴とする。なお、設計方法は、各ステップをアルゴリズム化し、これをコンピュータに実現させるプログラム、ソフトウェア、かかるソフトを実行可能形式にして記録媒体に搭載したもの、ROM、アルゴリズムを電子回路化したものを含んで実現されてもよい。
【0074】
第一のステップとして、上記記載の(数式1)で定義される数式として、船首部入射角αを算出する式に、船体の幅B、船体の垂線間長さLpp及び船体の柱形係数Cpを代入し、船首部入射角αが30°以内となる船舶を選択する。この代入及び選択に当たっては、(図示しない)所定の入力装置によって外部から入力される形式でもよく、或いは、たとえばバッチ処理等によって(図示しない)記憶装置に格納されていたデータを呼び出すことで取得する形式でもよい(以下同じ)。
【0075】
第二のステップとして、上記記載の(数式1)で定義される数式として、フルード数を算出する式に、船速Vs、重力加速度g及び船体の垂線間長さLppを代入し、フルード数が0.18以上となる船舶を選択する。第一のステップと第二のステップは同時に或いは逐次行うことが好ましく、いずれのステップの条件をも満たす船舶を選択する必要がある。どちらかの条件或いは両方の条件とも満たさない船舶は、いわゆる肥大船に相当する船舶であると考えられるため、航行時にスプレー波が発生しないか、発生したとしても粘性抵抗成分を有しないものと考えられるため、スプレー波を剥離する船首部形状を装着させる対象からは除外されている。
【0076】
第三のステップとして、図1に示すような、第一のステップと第二のステップにより選択された、いわゆる中高速度船に係る船舶1は、航行時にスプレー波を発生させるため、スプレー波を剥離する船首部形状が必要となるところ、船首部を具体的にどのような形状にすればよいかを分析する必要がある。すなわち、中高速度船の条件、例えば、平均速度、最高速度、平均積載量、最大積載量及び航行場所の波浪状況、海象状況、海流状況その他中高速度船に係る条件を漏れなく検討し、最適な船首部形状を考案する。詳細には、例えば図1或いは図2A、2Bに示すとおり、スプレー剥離手段2−1或いは装着物2−2を、後端部10、下端部20、上側面部30−1及び下側面部30−2、上端部40及び先端部に分割し、各部分の形状(段差或いはその断面における外郭線が顕著な変曲点を形成する形状)や好適な角度が割り出されて、船舶1の船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離形状とする。この場合の好適形状及び/或いは好適角度の割り出しに当たっては、各部の形状や好適な角度によって、図3に示すような原理がどのように働くかをシミュレーションすることによってもよく、又は、予め当該シミュレーション及び/或いは実験を行うことによって得られた最適値をデータベース化しておき、ここからその都度適合するデータを取り出すことによってもよい。なお、この第三のステップは、既存の中高速度船においては、装着物2−2を溶接等の脱着不能な接合方法で取り付けるか、或いはボルト等の脱着可能な方法で取り付け、新規の中高速度船においては、スプレー剥離手段2−1を有する船首部形状を製造するか、或いは装着物2−2を溶接等の脱着不能な接合方法で取り付けるか、或いはボルト等の脱着可能な方法で取り付けるかのいずれでもよい。
【0077】
以上説明したように、本願によれば、船舶の中高速航行時に船首部から発生したスプレー状の薄い波が船体表面を覆おうとしても、スプレー剥離手段或いは装着物もしくはこれらの機能を果たす船体形状に係る剥離形状(すなわち、段差もしくは変曲点の存在)により、かかる波を船体表面から剥離させる効果を奏することができる。しかもこれを後発的に生み出させることも可能である。さらに、上側面部30−1及び下側面部30−2の形状によって、スプレー波の成分の一部を船舶の推進力に変換するという効果も奏される。
【0078】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。たとえば、上記に説明した実施形態、実施例では、上側面部30−1と下側面部30-2との取り合いの屈曲/連続性、上側面部30−1及び下側面部30-2の平面/曲面性、下端部20の船体との取り合いの収束性/非収束性、側面部30(上側面部30−1及び下側面部30-2)と後板部10との取り合いの屈曲性/連続性(顕著な変曲点を有する形態)、上側面部30−1と下側面部30-2との接合線の傾斜性の有無、後板部10の傾斜性の有無等について、一定の組合せを抽出して示したが、上記に示した組合せ以外の組合せであっても、スプレー波剥離効果を有するものであれば、本願の技術思想内に入る。さらに、上記に示した組合せ以外の組合せであっても、スプレー波のベクトル成分を受けて船舶推進力に変換する形態は総て本願の技術思想に入るものである。
【0079】
また、上述した説明では、スプレー剥離板(或いは装着物、スプレー剥離手段)の後端部は船体と接合されることで塞がれる場合を例にとったが、かかる後端部はその一部もしくは全部が塞がれない(オープンな)構成、或いはかかる後端部の板材が存在しない構成とすることもでき、この場合も本願の技術思想に入る。後端部の板材(プレート)が存在しない場合であっても、側板部の端部を船体から一定距離離隔させる構成を採用し、或いは側板部(30−1、30−2)の平断面が上述した変曲点を有する曲線で形成される場合には、かかる側板部を遊端部として船体から一定距離離隔させる構成を採用することにより、本願の技術的思想は同様に適用される。
【0080】
また、上述した実施例は、本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。例えば、上記では、中高速度で航行する船舶を取り上げて説明したが、本願は船舶に係る水と空気の作用に限定されることなく、二流体のうちの一方が密度の高い方から低い方に移動し、スプレー状の薄い波が発生されるものであれば、たとえば、車輌、フロート水上機、飛行艇等においても、スプレー波を剥離することで粘性抵抗成分を低減させることができ、本願の技術的思想を適用して本願による効果を奏することが可能である。
【0081】
さらにまた、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に搭載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
上述したように、本願に係る船舶の船首部形状は、船舶の船体の船首部に、この船舶の中高速航行時に船首部から発生し船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離手段を設け、或いは装着物を装着することで、船舶の速度が上がることにより波面の最高到達点も上昇し、船舶の後方への飛距離も増加する過程において、スプレー波はスプレー剥離手段或いは装着物に衝突するため、スプレー剥離手段或いは装着物がスプレー波の波面形成を防止或いは抑制し、スプレー波を剥離する役割を果たす。したがって、船舶の航行中にスプレー波は船体の外板にまとわりつくことなく、抵抗増加成分のスプレー成分を低減させることができる。
【0083】
さらに、スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の3次元形状のうちの一定部分(たとえば前傾部分を持つ面)に対してスプレー波が衝突することで、この一定部分が推進エネルギーを受け、これが船体を前方に推進する分力を生じさせるため、船舶は分力により推進力を得ることができる。
【0084】
一方、本願においては水面に浮かぶ船舶を対象とし、中高速度で航行することで高密度の水が低密度の空気中に拡散するいわゆるスプレー波を剥離するための手段や装着物を提供しているが、その適用対象は船舶に限定されるものではない。例えば、離陸するまでに低速度から中高速度に加速して上昇させる飛行機であって水面を滑走路とするものでも事情は同様の場合がある。また、水陸両用車でも同様であり、水嵩が高い土地での操行においては、車輪の回転によりスプレー波が発生するとも考えられる。さらに、船舶につなげる抵抗体であっても中高速度で移動するため、スプレー波が発生する。したがって、これらのものにも、本願の技術的思想を適用して本願による効果を奏することが可能である。
【0085】
したがって、本願の技術思想は船舶にその適用範囲を限定されることなく、水面を移動するもの或いは移動させるものに対して適用可能である。したがって、本願は、船舶、航空機、車輌といった各種産業において、省エネ効果、環境保全対策といった現代及び将来のニーズに合致し、大きな有益性をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係る船舶1の船首部に装着物2−2を装着させた状態図であり、(A)はその平面を、同図(B)はその側面を示す。
【図2A】本発明の別の一実施形態に係る装着物2−2の形状の実施例を示す図であり、上側面部30−1が平面である形状のものを示す。
【図2B】本発明の一実施形態に係る装着物2−2の形状の実施例を示す図であり、上側面部30−1の平断面における外郭曲線が顕著な変曲点を形成する形状のものを示す。
【図3】本発明の一実施形態に係るスプレー剥離手段2−1或いは装着物2−2にスプレー波が衝突した場合の原理を示す図であり、(A)は、装着物2−2にスプレー波が衝突した場合の原理を、(B)は、スプレー波の持つベクトルと分力の関係を示す。
【図4A】本発明のさらに別の一実施形態に係る船舶1の船首部にスプレー剥離手段2−1を設けた状態図であり、その平面を示す。
【図4B】本発明のさらに別の一実施形態に係る船舶1の船首部にスプレー剥離手段2−1を設けた状態図であり、その側面を示す。
【符号の説明】
【0087】
1…船舶、2−1…スプレー剥離手段、2−2…スプレー剥離手段(装着物、スプレー剥離板)、X…変曲点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船体の船首部に、この船舶の中高速航行時に前記船首部から発生し前記船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離手段を設け、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことを特徴とする船舶の船首部形状。
【請求項2】
船舶の船体の船首部に、この船舶の中高速航行時に前記船首部から発生し前記船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離手段を装着物として装着して設け、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことを特徴とする船舶の船首部形状。
【請求項3】
前記船舶は、下記数式1で定義される前記船体の船首部入射角αが30°以内で、かつ設計フルード数が0.18以上であることを特徴とする請求項1あるいは2記載の船舶の船首部形状。

【請求項4】
前記スプレー剥離手段は、前記船体の計画喫水線近傍より上部に設けたスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状であって、このスプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の少なくとも後端部或いは側板部の後遊端が前記船体の外板と段差を有し、もしくは後端部の平断面の外郭線が顕著な変曲点を有したことを特徴とする請求項1あるいは2記載の船舶の船首部形状。
【請求項5】
前記スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の前端は前記船体の前端を越えない範囲で、船首垂線位置よりも前方としたことを特徴とする請求項4記載の船舶の船首部形状。
【請求項6】
前記スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状の長さは、前記船体の全長の略3%以内としたことを特徴とする請求項4記載の船舶の船首部形状。
【請求項7】
前記スプレー剥離板もしくはその機能を有する船体形状が、波面の上昇過程で前記船体を前方に推進する分力を生じる3次元形状に形成されたことを特徴とする請求項4乃至6のうちの1項記載の船舶の船首部形状。
【請求項8】
船舶の中高速航行時の抵抗増加成分の低減設計方法であって、下記数式1で定義される船首部入射角αを30°以内とするステップと、設計フルード数を0.18以上とするステップと、船首部あるいは船首装着物を中高速航行時に前記船首部から発生し前記船体表面を覆うスプレー状の薄い波を剥離するスプレー剥離形状とするステップとを備え、中高速航行時における抵抗増加成分のスプレー成分の低減を図ったことを特徴とする船舶の船首部形状の設計方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2010−64724(P2010−64724A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235794(P2008−235794)
【出願日】平成20年9月13日(2008.9.13)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)