説明

船舶推進装置

【課題】エネルギーのロスを低減できる船舶推進装置を提供すること。
【解決手段】船舶推進装置1は、トランサムブラケット10と、ステアリングシャフト11と、船外機2と、チルト機構19と、ステアリング機構20とを含む。ステアリングシャフト11は、トランサムブラケット10に連結されており、上下方向に延びるステアリング軸線L3まわりに回動可能である。船外機2は、ステアリングシャフト11に連結されており、チルト軸線L4まわりに回動可能であり、ステアリング軸線L3まわりにステアリングシャフト11と共に回動可能である。チルト機構19は、船外機2をステアリングシャフト11に対してチルト軸線L4まわりに回動させる。ステアリング機構20は、電動モータ37の動力をステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換する動力変換機構を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの先行技術に係る船舶推進装置は、たとえば、特許文献1に記載されている。この船舶推進装置は、トランサムブラケットと、ステアリングシャフトと、船外機と、チルト機構と、ステアリング機構とを含む。
船体のトランサムに取り付け可能であるトランサムブラケットは、ステアリングシャフトに連結されている。ステアリングシャフトは、トランサムブラケットに対して、上下方向に延びるステアリング軸線まわりに回動可能である。ステアリングシャフトに連結されている船外機は、ステアリングシャフトに対して、水平方向に延びるチルト軸線まわりに回動可能である。船外機およびステアリングシャフトは、トランサムブラケットに対して、ステアリング軸線まわりに回動可能である。
【0003】
チルト機構は、ステアリングシャフトに対して船外機をチルト軸線まわりに回動させる。また、ステアリング機構は、トランサムブラケットに対して船外機およびステアリングシャフトをステアリング軸線まわりに回動させる。特許文献1記載のステアリング機構は、油圧ポンプを含む油圧式のステアリング機構である。油圧ポンプが駆動されることにより、油圧が発生し、この油圧が、船外機をステアリング軸線まわりに回動させる。
【0004】
特許文献1記載のステアリング機構は、ステアリングアームと、ステアリングアクチュエータとを含む。ステアリングアクチュエータは、ハウジング(ステアリングアクチュエータの第1の部分)と、ロッド(ステアリングアクチュエータの第2の部分)とを含む。ハウジングおよびロッドは、左右方向に延びている。ロッドは、ハウジング内に配置されている。ハウジングは、ロッドの右端部および左端部の側方に位置する2つのキャビティ(空洞)を有している。作動油は、この2つのキャビティに供給される。キャビティは、作動油で満たされている。2つのキャビティの油圧に差が生じると、ロッドがハウジング内で左右方向に移動する。
【0005】
ロッドは、ステアリングアームに取り付けられている。ステアリングアームは、船外機に取り付けられる。2つのキャビティの油圧に差が生じて、ロッドが左右方向に移動すると、ステアリングアームは、ロッドの移動量に対応する回動角でステアリング軸線まわりに回動する。さらに、ステアリングアームがステアリング軸線まわりに回動すると、船外機は、ステアリングアームと共にステアリング軸線まわりに回動する。したがって、ロッドが左右方向に移動すると、船外機は、ロッドの移動量に対応する回動角でステアリング軸線まわりに回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6402577号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
油圧式のステアリング機構において、船外機をステアリング軸線まわりに回動させる操舵指令が入力された後に油圧ポンプが駆動されると、操舵指令の入力と船外機の回動との間にタイムラグが生じる。危険回避などの急峻な動作を行う場合には、応答性が良いことが望ましい。このため、タイムラグの発生を防止するために、船外機をステアリング軸線まわりに回動させないときでも油圧ポンプを駆動しておく必要がある。しかし、ステアリング機構を使用しない場合にも油圧ポンプを駆動しておくとエネルギーのロスが大きくなってしまう。この油圧ポンプを駆動する動力源はエンジンによって発生する電力を利用しているため、結果的にエンジンの燃費にも影響してしまう。
【0008】
さらに、特許文献1記載のステアリング機構では、ロッドの左右に2つのキャビティが配置されているため、ステアリング機構の幅(左右方向への長さ)が大きい。さらにまた、船外機は、ロッドの移動量に対応する回動角でステアリング軸線まわりに回動するから、ステアリング軸線まわりの船外機の最大回動角を増加させるには、ロッドを収容するハウジングの幅を増加させて、ロッドの最大移動量を増加させる必要がある。したがって、ステアリング軸線まわりの船外機の最大回動角度を増加させると、ステアリング機構の幅がさらに増加してしまう。
【0009】
そこで、この発明の目的は、エネルギーのロスを低減できる船舶推進装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、ステアリング機構の大型化を抑制できる船舶推進装置を提供することである。
前記目的を達成するためのこの発明は、船体のトランサムに取り付け可能なトランサムブラケットと、前記トランサムブラケットに連結されており、上下方向に延びるステアリング軸線まわりに回動可能なステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトに連結されており、前記ステアリング軸線に垂直な平面に沿って延びるチルト軸線まわりに回動可能であり、前記ステアリング軸線まわりに前記ステアリングシャフトと共に回動可能な船外機と、前記ステアリングシャフトと前記船外機とに連結されており、前記船外機を前記ステアリングシャフトに対して前記チルト軸線まわりに回動させるチルト機構と、電動モータと、前記電動モータの動力を前記ステアリング軸線まわりの前記ステアリングシャフトの回動に変換する動力変換機構とを含むステアリング機構とを含む、船舶推進装置である。
【0010】
この発明によれば、ステアリング機構が、電動モータと、動力変換機構とを含む。すなわち、ステアリング機構は、電動モータを含む電動ステアリング機構である。電動モータは、電力の供給によって駆動される。電動モータの動力は、動力変換機構によって、ステアリング軸線まわりのステアリングシャフトの回動に変換される。船外機およびステアリングシャフトは、トランサムブラケットに対してステアリング軸線まわりに回動可能である。したがって、電動モータの動力がステアリング軸線まわりのステアリングシャフトの回動に変換されることにより、船外機が、トランサムブラケットに対してステアリング軸線まわりに回動する。これにより、船舶が操舵される。
【0011】
電動ステアリング機構では、油圧式のステアリング機構に比べて、船外機をステアリング軸線まわりに回動させる操舵指令と船外機の回動との間に生じるタイムラグが小さい。したがって、船外機をステアリング軸線まわりに回動させないときに電動モータを駆動しなくてもよい。そのため、油圧式のステアリング機構を備える船舶推進装置に比べて、エネルギーのロスを低減できる。また、電動ステアリング機構は、油圧式のステアリング機構に比べて、船外機の停止位置や、船外機の回動角度を高精度で制御することができる。さらに、電動ステアリング機構は、油圧ポンプやタンク等が不要であるので、油圧式のステアリング機構を備える船舶推進装置に比べて、ステアリング機構の大型化を抑制できる。
【0012】
前記トランサムブラケットは、前記ステアリング軸線に沿って延びる筒状の収容部を含み、前記ステアリングシャフトの少なくとも一部は、前記収容部に収容されていてもよい。この場合、ステアリングシャフトが、トランサムブラケットによって確実に保持される。
また、前記ステアリング機構は、前記電動モータの回転を減速して、減速された回転を前記動力変換機構に伝達する減速機構を含んでいてもよい。この場合、減速機構が電動モータの回転を減速することにより、電動モータの動力が増幅される。したがって、大きい動力を出力する大型の電動モータがステアリング機構に備えられていなくてもよい。これにより、船舶推進装置の大型化を抑制できる。
【0013】
また、前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記ステアリング軸線まわりに回動しないように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記チルト軸線まわりに回動しないように構成されていてもよい。
また、前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化するように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化するように構成されていてもよい。
【0014】
また、前記電動モータは、前記トランサムブラケットに固定されていてもよい。具体的には、前記電動モータは、中間部材を介して前記トランサムブラケットに固定されていてもよいし、前記トランサムブラケットに直接固定されていてもよい。
また、前記動力変換機構は、前記電動モータの回転を直線運動に変換する第1変換機構と、前記直線運動を前記トランサムブラケットに対する前記ステアリング軸線まわりの前記ステアリングシャフトの回動に変換する第2変換機構とを含んでいてもよい。
【0015】
また、前記第1変換機構は、前記トランサムブラケットおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第1ボールねじと、前記第1ボールねじに取り付けられた第1ボールナットとを含んでいてもよい。この場合、前記第2変換機構は、前記第1ボールナットに連結された第1ラックと、前記第1ラックに噛み合い前記ステアリングシャフトと共に前記ステアリング軸線まわりに回動するように前記ステアリングシャフトに連結された第1ピニオンとを含んでいてもよい。前記電動モータの回転は、前記第1ボールねじおよび第1ボールナットによって、前記第1ボールねじに対する前記第1ボールナットの直線運動に変換され、前記第1ボールナットの直線運動は、前記第1ラックおよび第1ピニオンによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される。
【0016】
また、前記第1変換機構は、前記トランサムブラケットおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第1ボールねじと、前記第1ボールねじに取り付けられた第1ボールナットとを含んでいてもよい。この場合、前記第2変換機構は、前記第1ボールナットに連結された第1ピンと、前記第1ピンおよびステアリングシャフトに連結された第1アームとを含み、前記第1ボールねじに対する前記第1ボールナットの直線運動を、前記第1ピンおよび第1アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換するように構成されていてもよい。前記電動モータの回転は、前記第1ボールねじおよび第1ボールナットによって、前記第1ボールねじに対する前記第1ボールナットの直線運動に変換され、前記第1ボールナットの直線運動は、前記第1ピンおよび第1アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される。
【0017】
また、前記動力変換機構は、前記トランサムブラケットおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第1駆動ギヤと、前記第1駆動ギヤに噛み合い前記ステアリングシャフトと共に前記ステアリング軸線まわりに回動するように前記ステアリングシャフトに連結された第1従動ギヤとを含んでいてもよい。
また、前記第1駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に平行でなくかつ交わらない第1非交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、前記第1従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第1中心軸線を含み、前記第1中心軸線まわりに回動するように構成されていてもよい。
【0018】
また、前記第1駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に交差する第1交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、前記第1従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第1中心軸線を含み、前記第1中心軸線まわりに回動するように構成されていてもよい。
また、前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記ステアリング軸線まわりに回動するように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記チルト軸線まわりに回動しないように構成されていてもよい。
【0019】
また、前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化しないように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化するように構成されていてもよい。
また、前記電動モータは、前記ステアリングシャフトに固定されていてもよい。具体的には、前記電動モータは、中間部材を介して前記ステアリングシャフトに固定されていてもよいし、前記ステアリングシャフトに直接固定されていてもよい。
【0020】
また、前記動力変換機構は、前記電動モータの回転を直線運動に変換する第1変換機構と、前記直線運動を前記トランサムブラケットに対する前記ステアリング軸線まわりの前記ステアリングシャフトの回動に変換する第2変換機構とを含んでいてもよい。
また、前記第1変換機構は、前記ステアリングシャフトおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第2ボールねじと、前記第2ボールねじに取り付けられた第2ボールナットとを含んでいてもよい。この場合、前記第2変換機構は、前記第2ボールナットに連結された第2ラックと、前記第2ラックに噛み合い前記トランサムブラケットに連結された第2ピニオンとを含み、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動を、前記第2ラックおよび第2ピニオンによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換するように構成されていてもよい。前記電動モータの回転は、前記第2ボールねじおよび第2ボールナットによって、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動に変換され、前記第2ボールねじの直線運動は、前記第2ラックおよび第2ピニオンによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される。
【0021】
また、前記第1変換機構は、前記ステアリングシャフトおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第2ボールねじと、前記第2ボールねじに取り付けられた第2ボールナットとを含んでいてもよい。この場合、前記第2変換機構は、前記第2ボールナットに連結された第2ピンと、前記第2ピンおよびトランサムブラケットに連結された第2アームとを含み、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動を、前記第2ピンおよび第2アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換するように構成されていてもよい。前記電動モータの回転は、前記第2ボールねじおよび第2ボールナットによって、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動に変換され、前記第2ボールねじの直線運動は、前記第2ピンおよび第2アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される。
【0022】
また、前記動力変換機構は、前記ステアリングシャフトおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第2駆動ギヤと、前記第2駆動ギヤに噛み合い前記トランサムブラケットに連結された第2従動ギヤとを含んでいてもよい。
また、前記第2駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に平行でなくかつ交わらない第2非交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、前記第2従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第2中心軸線を含んでいてもよい。この場合、前記電動モータの回転は、前記第2駆動ギヤおよび第2従動ギヤによって、前記第2中心軸線まわりの前記第2駆動ギヤの回動に変換される。
【0023】
また、前記第2駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に交差する第2交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、前記第2従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第2中心軸線を含んでいてもよい。この場合、前記電動モータの回転は、前記第2駆動ギヤおよび前第2従動ギヤによって、前記第2中心軸線まわりの前記第2駆動ギヤの回動に変換される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置の側面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置の側面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置の平面図である。
【図4A】この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置の一部の斜視図である。
【図4B】この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置の一部の分解斜視図である。
【図4C】この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置の一部の分解図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係るチルト機構の背面図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係るチルト機構を含む第1船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図7】この発明の第1実施形態に係るチルト機構を含む第1船舶推進装置の一部の側面図である。
【図8】この発明の第1実施形態に係るチルト機構を含む第1船舶推進装置の一部の側面図である。
【図9】この発明の第1実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図10】この発明の第1実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図11】この発明の第1実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図12】この発明の第2実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図13】この発明の第2実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図14】この発明の第2実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図15】この発明の第3実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図16】この発明の第3実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図17】この発明の第3実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図18】この発明の第4実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図19】この発明の第4実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図20】この発明の第4実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図21】この発明の第5実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図22】この発明の第5実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図23】この発明の第5実施形態に係るステアリング機構を含む第1船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図24】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の側面図である。
【図25A】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の一部の斜視図である。
【図25B】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の一部の分解斜視図である。
【図25C】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の一部の分解図である。
【図26】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図27】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の側面図である。
【図28】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の平面図である。
【図29】この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置の一部の分解図である。
【図30】この発明の第6実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図31】この発明の第6実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図32】この発明の第6実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図33】この発明の第7実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図34】この発明の第7実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図35】この発明の第7実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図36】この発明の第8実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図37】この発明の第8実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図38】この発明の第8実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図39】この発明の第9実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の部分断面図である。
【図40】この発明の第9実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【図41】この発明の第9実施形態に係るステアリング機構を含む第2船舶推進装置の一部の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
具体的には、電動モータがトランサムブラケットに固定された第1船舶推進装置と、電動モータがステアリングシャフトに固定された第2船舶推進装置とについて説明する。また、以下の説明では、船外機が基準姿勢にある状態に基づいて説明する。基準姿勢とは、船外機の傾斜角度が零であり、船外機の操舵角度が零であるときの船外機の姿勢である。船外機の傾斜角度は、クランクシャフトの回転軸線(クランク軸線L1)が鉛直面に対してなす角度である。クランク軸線L1が鉛直方向に延びるときの船外機2の傾斜角度は零である。また、船外機の操舵角度は、プロペラの回転軸線(回転軸線L2)が船体の中心線に対してなす角度である。プロペラの回転軸線L2が前後方向に延びるときの船外機の傾斜角度は零である。前後方向の一方の方向(前方向)は、トランサムに近づく方向であり、前後方向の他方の方向(後ろ方向)は、トランサムから離れる方向である。
【0026】
図1および図2は、この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置1の側面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置1の平面図である。図4Aは、この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置1の一部の斜視図である。図4Bは、この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置1の一部の分解斜視図である。図4Cは、この発明の第1実施形態に係る第1船舶推進装置1の一部の分解図である。
【0027】
第1船舶推進装置1は、船外機2を含む。船外機2は、船体H1の後部に設けられたトランサムT1に取り付けられる。船外機2は、エンジン3と、エンジンカバー4と、ケーシング5とを含む。エンジン3は、エンジンカバー4内に収容されている。エンジン3は、クランクシャフト6を含む。クランクシャフト6は、クランク軸線L1まわりに回転可能である。クランクシャフト6は、図示しないドライブシャフトに連結されている。ドライブシャフトは、図示しないプロペラシャフトに連結されている。ドライブシャフトおよびプロペラシャフトは、ケーシング5内に収容されている。ケーシング5は、エンジンカバー4の下方に配置されたアッパーケース7およびロワーケース8を含む。ロワーケース8は、回転軸線L2まわりに回転可能にプロペラ9を支持している。クランクシャフト6の回転は、ドライブシャフトおよびプロペラシャフトを介してプロペラ9に伝達される。プロペラ9は、前進方向と、前進方向とは反対の後進方向とに回転可能である。プロペラ9は、エンジン3によって、前進方向および後進方向に回転駆動される。
【0028】
また、第1船舶推進装置1は、トランサムブラケット10と、ステアリングシャフト11と、チルトシャフト12とを含む。船外機2は、チルトブラケット13を含む。トランサムブラケット10は、トランサムT1に取り付け可能である。トランサムブラケット10は、トランサムT1に取り付けられる板状の取付部14と、取付部14の後方に配置された筒状の収容部15とを含む。ステアリングシャフト11は、トランサムブラケット10に連結されている。チルトブラケット13は、チルトシャフト12を介してステアリングシャフト11に連結されている。ステアリングシャフト11および船外機2は、トランサムブラケット10に対して、上下方向に延びるステアリング軸線L3まわりに回動可能である。船外機2は、トランサムブラケット10およびステアリングシャフト11に対して、水平方向に延びるチルト軸線L4まわりに回動可能である。チルト軸線L4は、チルトシャフト12の中心軸線である。
【0029】
図4Bおよび図4Cに示すように、ステアリングシャフト11は、筒状部16と、連結部17と、中間部18とを含む。ステアリング軸線L3は、筒状部16の中心軸線である。連結部17は、中間部18を介して、筒状部16の上端部に連結されている。筒状部16、連結部17、および中間部18は、この実施形態のように別体であってもよいし、一体の部材であってもよい。すなわち、ステアリングシャフト11は、複数の分割体を含む部材であってもよいし、一体の部材であってもよい。チルトブラケット13は、チルトシャフト12を介して連結部17に連結されている。ステアリングシャフト11は、トランサムブラケット10の収容部15内に挿入されている。筒状部16は、収容部15に収容されている。収容部15は、ステアリング軸線L3に沿って延びている。ステアリングシャフト11は、トランサムブラケット10に対して、ステアリング軸線L3まわりに回動可能である。
【0030】
また、第1船舶推進装置1は、チルト機構19を含む。チルト機構19は、ステアリングシャフト11と船外機2とに連結されている。チルト機構19は、トランサムブラケット10およびステアリングシャフト11に対して船外機2をチルト軸線L4まわりに回動させる。船外機2がステアリングシャフト11に対してチルト軸線L4まわりに回動するから、船外機2の傾斜角度が変化しても、ステアリング軸線L3は移動しない。すなわち、ステアリング軸線L3は、トランサムブラケット10に対して移動しない軸線である。クランク軸線L1の上端がクランク軸線L1の下端より前方に位置するように船外機2がチルト軸線L4まわりに傾く方向を正方向と定義する。船外機2の傾斜角度が小さい範囲は、トリム範囲であり、船外機2の傾斜角度がトリム範囲の上限値よりも大きい範囲は、チルト範囲である。
【0031】
図2では、船外機2の傾斜角度がトリム範囲の下限値(フルトリムイン角度)である状態を一点鎖線で示しており、船外機2の傾斜角度がトリム範囲の上限値(フルトリムアウト角度)である状態を二点鎖線で示している。また、図2では、船外機2の傾斜角度がチルト範囲の上限値(フルチルトアップ角度)である状態を実線で示している。フルトリムイン角度は、たとえば、−5°であり、フルトリムアウト角度は、たとえば、15°である。また、フルチルトアップ角度は、たとえば、65°である。チルト機構19は、トリム範囲およびチルト範囲を含む任意の位置に船外機2を保持可能である。トリム範囲は、主に船舶の前進時に船体H1の姿勢を調整するときに用いられる範囲であり、チルト範囲は、主に船舶を係留させるときや船舶が浅瀬を航走するときに用いられる範囲である。
【0032】
また、第1船舶推進装置1は、ステアリング機構20を含む。ステアリング機構20は、トランサムブラケット10とステアリングシャフト11とに連結されている。ステアリング機構20は、トランサムブラケット10に対して、ステアリングシャフト11およびチルトシャフト12をステアリング軸線L3まわりに回動させる。船外機2およびチルト機構19は、ステアリングシャフト11の回動に伴って、ステアリングシャフト11およびチルトシャフト12と共に、ステアリング軸線L3まわりに回動する。チルトシャフト12が船外機2と共にステアリング軸線L3まわりに回動するから、チルトシャフト12の中心軸線であるチルト軸線L4は、ステアリング軸線L3まわりの船外機2の回動に伴って、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。船外機2の操舵角度が零のときの船外機2の位置を操舵原点と定義する。図3に示すように、船外機2は、操舵原点(実線で示す位置)を中心に左右に回動可能である。ステアリング機構20は、最大右操舵位置(一点鎖線で示す位置)と最大左操舵位置(二点鎖線で示す位置)との間で船外機2をステアリング軸線L3まわりに回動させる。ステアリング機構20は、最大右操舵位置と最大左操舵位置との間の任意の位置に船外機2を保持可能である。
【0033】
図5は、この発明の第1実施形態に係るチルト機構19の背面図である。以下では、図4B、図4Cおよび図5を参照して、チルト機構19について説明する。
チルト機構19は、2本のトリムシリンダ21と、チルトシリンダ22と、フレーム23とを含む。2本のトリムシリンダ21は、左右方向に間隔を空けて平行に配置されている。各トリムシリンダ21は、トリムシリンダ21の上端がトリムシリンダ21の下端よりも後方に位置するように前後方向に沿って斜めに配置されている。チルトシリンダ22は、上下方向に延びている。チルトシリンダ22の上端部(チルトロッド27の上端部)は、各トリムシリンダ21より上方に配置されている。チルトシリンダ22は、前後方向から見たときにチルトシリンダ22が2本のトリムシリンダ21の間に位置するように配置されている。
【0034】
各トリムシリンダ21は、トリムシリンダ21の中心軸線に沿って延びるシリンダ本体24およびトリムロッド25を含む。各トリムロッド25は、シリンダ本体24の上端から上方に突出している。各シリンダ本体24は、フレーム23に固定されている。一方、チルトシリンダ22は、チルトシリンダ22の中心軸線に沿って延びるシリンダ本体26およびチルトロッド27を含む。チルトロッド27は、シリンダ本体26の上端から上方に突出している。シリンダ本体26の下端部は、左右方向に延びるロワーピン28を介して、フレーム23に連結されている。チルトシリンダ22は、フレーム23に対してロワーピン28まわりに回動可能である。
【0035】
各シリンダ21、22は、たとえば、油圧シリンダである。チルト機構19は、作動油を送るポンプ30と、作動油を貯留するタンク31と、ポンプ30を駆動するモータ32と、ポンプ30およびタンク31に接続された複数本の配管33とを含む。ポンプ30、タンク31、モータ32、および各配管33は、フレーム23に保持されている。ポンプ30およびタンク31は、左右方向に間隔を空けて配置されている。モータ32は、ポンプ30の上方に配置されている。ポンプ30およびモータ32は、一方のトリムシリンダ21の上方に配置されており、タンク31は、他方のトリムシリンダ21の上方に配置されている。チルトシリンダ22は、前後方向から見たときにチルトシリンダ22がポンプ30およびモータ32とタンク31との間に位置するように配置されている。
【0036】
フレーム23は、水平面に沿って配置された座部23aと、座部23aから下方に突出する一対の突起23bと、座部23aより上方で水平面に沿って配置された支持部23cとを含む。一対の突起23bは、座部23aの下方で左右方向に間隔を空けて配置されている。トリムシリンダ21のシリンダ本体24は、フレーム23に固定されている。第1実施形態では、たとえば、トリムシリンダ21のシリンダ本体24とフレーム23とは一体の鋳物である。チルトシリンダ22のシリンダ本体26は、座部23aを上下に貫通する貫通孔23d(図6参照)に挿入されている。チルトシリンダ22のシリンダ本体26の下端部は、一対の突起23bの間に配置されている。チルトシリンダ22のシリンダ本体26の下端部は、ロワーピン28を介して、一対の突起23bに連結されている。ポンプ30、タンク31、および電動モータ32は、支持部23cによって支持されている。
【0037】
ポンプ30、タンク31、およびモータ32は、チルトシリンダ22より後方に配置されている。ポンプ30、タンク31、およびモータ32の側方は、開放されている(たとえば、図1参照)。したがって、ポンプ30、タンク31、およびモータ32は、露出している。また、各配管33は、フレーム23から下方に突出している。各配管33は、フレーム23から露出している。各シリンダ本体24、26は、複数本の配管33を介してポンプ30およびタンク31に接続されている。各配管33は、各シリンダ21、22や、タンク31に作動油を導く。ポンプ30がモータ32によって駆動されると、作動油がポンプ30から各シリンダ21、22に供給される。作動油がポンプ30から各トリムシリンダ21のシリンダ本体24に供給されると、各トリムロッド25の突出量が変化する。同様に、作動油がポンプ30からチルトシリンダ22のシリンダ本体26に供給されると、チルトロッド27の突出量が変化する。
【0038】
図6は、この発明の第1実施形態に係るチルト機構19を含む第1船舶推進装置1の一部の部分断面図である。図7および図8は、この発明の第1実施形態に係るチルト機構19を含む第1船舶推進装置1の一部の側面図である。図7では、船外機2が基準姿勢をとるときのチルトブラケット13の位置を示しており、図8では、船外機2がフルチルトアップされているときのチルトブラケット13の位置を示している。
【0039】
図6に示すように、ステアリングシャフト11の中間部18は、筒状である。ステアリングシャフト11の連結部17は、連結部17を上下方向に貫通する貫通孔34を有している。ステアリングシャフト11の筒状部16の内部は、中間部18の内部を介して連結部17の貫通孔34に接続されている。チルトシリンダ22は、ステアリングシャフト11内に挿入されている。シリンダ本体26は、筒状部16内に配置されている。筒状部16の下端部は、フレーム23に連結されている。フレーム23は、ステアリングシャフト11と共に、ステアリング軸線L3まわりに回動する。前述のように、各シリンダ21、22、ポンプ30、タンク31、モータ32、および各配管33は、フレーム23に保持されている。したがって、各シリンダ21、22、ポンプ30、タンク31、モータ32、および各配管33は、ステアリングシャフト11と共に、ステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0040】
チルトロッド27の上端部は、連結部17の貫通孔34から上方に突出している。チルトロッド27の上端部は、左右方向に延びるアッパーピン35を介して、チルトブラケット13に連結されている。したがって、船外機2は、チルトシリンダ22によって支持されている。チルトロッド27は、チルトブラケット13に対してアッパーピン35まわりに回動可能である。一方、図7に示すように、船外機2がトリム範囲に位置する状態では、各トリムロッド25の先端がチルトブラケット13に設けられた接触部36に接触している。したがって、船外機2がトリム範囲に位置する状態では、船外機2は、チルトシリンダ22と、2本のトリムシリンダ21とによって支持されている。接触部36は、側方に突出している。
【0041】
チルトロッド27の突出量が増加すると、チルトブラケット13がチルトロッド27によって押し上げられて、船外機2がチルト軸線L4まわりに上方に回動する。また、船外機2がトリム範囲に位置する状態でトリムロッド25の突出量が増加すると、チルトブラケット13がトリムロッド25によって押し上げられて、船外機2がチルト軸線L4まわりに上方に回動する。チルトシリンダ22は、フルトリムイン角度(図2において一点鎖線で示す船外機2参照)とフルチルトアップ角度(図2において実線で示す船外機2参照)との間の任意の位置に船外機2を保持可能である。一方、各トリムシリンダ21は、フルトリムイン角度とフルトリムアウト角度(図2において二点鎖線で示す船外機2参照)との間の任意の位置に船外機2を保持可能である。すなわち、図8に示すように、船外機2の傾斜角度がフルトリムアウト角度を超えると、各トリムロッド25の先端がチルトブラケット13の接触部36から離れる。したがって、チルト範囲では、チルトシリンダ22によって船外機2が支持される。
【0042】
図9は、この発明の第1実施形態に係るステアリング機構20を含む第1船舶推進装置1の一部の部分断面図である。図10および図11は、この発明の第1実施形態に係るステアリング機構20を含む第1船舶推進装置1の一部の模式的な平面図である。
ステアリング機構20は、電動モータ37と、動力変換機構38と、減速機構39と、ステアリングケース40とを含む。減速機構39は、電動モータ37の回転を減速して、減速された回転を動力変換機構38に伝達する。動力変換機構38は、減速機構39によって伝達された電動モータ37の動力をステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換する。船外機2は、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に伴って、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。動力変換機構38は、電動モータ37の回転を直線運動に変換する第1変換機構41と、直線運動をトランサムブラケット10に対するステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換する第2変換機構42とを含む。
【0043】
電動モータ37は、モータ本体43と、回転軸44とを含む。回転軸44は、正転方向と、正転方向とは反対の逆転方向に回転可能である。回転軸44の回転は、減速機構39を介して動力変換機構38の第1変換機構41に伝達される。電動モータ37は、ステアリングケース40内に収容されている。電動モータ37は、たとえば、回転軸44が左右方向に延びるように配置されている。モータ本体43は、ステアリングケース40に固定されている。ステアリングケース40は、トランサムブラケット10に固定されている。したがって、電動モータ37は、ステアリングケース40を介してトランサムブラケット10に固定されている。電動モータ37は、ステアリングケース40などの中間部材を介してトランサムブラケット10に固定されていてもよいし、トランサムブラケット10に直接固定されていてもよい。
【0044】
第1変換機構41は、第1ボールねじ45と、複数のボールを介して第1ボールねじ45に取り付けられた筒状の第1ボールナット46とを含む。第2変換機構42は、第1ボールナット46に連結された第1ラック47と、第1ラック47に噛み合う第1ピニオン48とを含む。第1ボールねじ45、第1ボールナット46、第1ラック47は、ステアリングケース40内に収容されており、ステアリングケース40によって保持されている。一方、第1ピニオン48の大部分は、ステアリングケース40の外に配置されている。第1ピニオン48は、中間部18に連結されている。したがって、第1ピニオン48は、中間部18を介して筒状部16および連結部17に連結されている。第1ピニオン48は、ステアリングシャフト11と共にステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0045】
第1ボールねじ45は、ステアリングケース40内で左右方向に延びている。第1ボールねじ45の回転軸線と電動モータ37の回転軸線とは平行である。第1ボールねじ45は、電動モータ37より後方に配置されている。第1ボールねじ45の両端部は、軸受49を介してステアリングケース40に支持されている。第1ボールねじ45は、ステアリングケース40を介してトランサムブラケット10に連結されており、減速機構39を介して電動モータ37に連結されている。電動モータ37の回転は、減速機構39を介して第1ボールねじ45に伝達される。これにより、第1ボールねじ45が電動モータ37によって回転駆動される。第1ボールねじ45が第1ボールねじ45の中心軸線まわりに回転すると、第1ボールナット46が第1ボールねじ45に沿って移動し、第1ボールねじ45の回転が、第1ボールねじ45に対する第1ボールナット46の直線運動に変換される。
【0046】
第1ラック47は、第1ボールナット46の外周部に設けられている。第1ラック47は、たとえば、第1ボールナット46と一体である。第1ラック47および第1ボールナット46は、一体の部材であってもよいし、一体移動可能に連結された複数の分割体を含む部材であってもよい。第1ラック47は、第1ボールねじ45の軸方向に配列された複数の歯を含む。第1ラック47は、ステアリングケース40に設けられたステアリング開口50に対向している。ステアリングケース40の内部は、トランサムブラケット10の収容部15に設けられたトランサム開口51を介して収容部15の内部に接続されている。第1ボールねじ45が回転すると、第1ラック47は、第1ボールナット46と共に第1ボールねじ45に沿って移動する。
【0047】
第1ピニオン48は、中間部18の外周部から突出している。第1ピニオン48は、たとえば、ステアリング軸線L3上に位置する中心軸線を有する扇形である。第1ピニオン48は、たとえば、中間部18と一体である。第1ピニオン48および中間部18は、一体の部材であってもよいし、一体移動可能に連結された複数の分割体を含む部材であってもよい。第1ピニオン48は、ステアリング開口50とトランサム開口51とを通ってステアリングケース40の内部に進入している。第1ラック47が第1ボールねじ45の軸方向に移動すると、第1ラック47と第1ピニオン48との噛み合い位置が移動し、第1ピニオン48がステアリング軸線L3まわりに回動する。これにより、第1ボールナット46の直線運動が、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。
【0048】
減速機構39は、複数の減速ギヤ(第1減速ギヤ52、第2減速ギヤ53、第3減速ギヤ54、および第4減速ギヤ55)を含む。各減速ギヤ52〜55は、たとえば、外歯車である。第1減速ギヤ52は、電動モータ37の回転軸44に連結されている。第1減速ギヤ52と回転軸44とは同軸的に配置されている。第1減速ギヤ52は、回転軸44と共に回転する。第1減速ギヤ52は、第2減速ギヤ53に噛み合っており、第2減速ギヤ53は、第3減速ギヤ54に噛み合っている。第3減速ギヤ54は、第4減速ギヤ55に噛み合っている。第2減速ギヤ53および第3減速ギヤ54は、ステアリングケース40によって回転可能に保持されている。第4減速ギヤ55は、第1ボールねじ45に連結されている。第4減速ギヤ55と第1ボールねじ45とは同軸的に配置されている。第1ボールねじ45は、第4減速ギヤ55と共に回転する。
【0049】
電動モータ37の回転は、減速機構39によって第1ボールねじ45に伝達される。電動モータ37の動力は、減速機構39が電動モータ37の回転を減速することにより増幅される。第1ボールねじ45の回転は、第1ボールねじ45および第1ボールナット46によって、第1ボールねじ45に対する第1ボールナット46の直線運動に変換される。そして、第1ボールナット46の直線運動は、第1ラック47および第1ピニオン48によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。これにより、図11に示すように、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。電動モータ37の回転軸44が正転方向に回転駆動されると、船外機2は、ステアリング軸線L3まわりの一方の回転方向に回動し、電動モータ37の回転軸44が逆転方向に回転駆動されると、船外機2は、ステアリング軸線L3まわりの他方の回転方向に回動する。
【0050】
前述のように、電動モータ37は、ステアリングケース40を介してトランサムブラケット10に固定されている。したがって、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動したときに、電動モータ37は、船外機2と共に、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動しない(図11参照)。すなわち、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動すると、船外機2に対する電動モータ37の位置が変化する。一方、電動モータ37がトランサムブラケット10に固定されているから、船外機2が、トランサムブラケット10に対してチルト軸線L4まわりに回動したときに、電動モータ37は、船外機2と共に、トランサムブラケット10に対してチルト軸線L4まわりに回動しない(図2参照)。すなわち、船外機2が、トランサムブラケット10に対してチルト軸線L4まわりに回動すると、船外機2に対する電動モータ37の位置が変化する。
【0051】
以上のように第1実施形態では、ステアリング機構20が、電動モータ37と、動力変換機構38とを含む。すなわち、ステアリング機構20は、電動モータを含む電動ステアリング機構である。電動モータ37は、電力の供給によって駆動される。電動モータ37の動力は、動力変換機構38によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。船外機2およびステアリングシャフト11は、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動可能である。したがって、電動モータ37の動力がステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換されることにより、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。これにより、船舶が操舵される。
【0052】
また、電動ステアリング機構では、油圧式のステアリング機構に比べて、船外機2をステアリング軸線L3まわりに回動させる操舵指令と船外機2の回動との間に生じるタイムラグが小さい。したがって、船外機2をステアリング軸線L3まわりに回動させないときに電動モータ37を駆動しなくてもよい。そのため、油圧式のステアリング機構を備える船舶推進装置に比べて、エネルギーのロスを低減できる。また、ステアリング機構20は、油圧式のステアリング機構に比べて、船外機2の停止位置や、船外機2の回動角度を高精度で制御することができる。さらに、ステアリング機構20は、油圧ポンプやタンク等が不要であるので、油圧式のステアリング機構を備える船舶推進装置に比べて、ステアリング機構20の大型化を抑制できる。
【0053】
図12は、この発明の第2実施形態に係るステアリング機構220を含む第1船舶推進装置201の一部の部分断面図である。図13および図14は、この発明の第2実施形態に係るステアリング機構220を含む第1船舶推進装置201の一部の模式的な平面図である。この図12〜図14において、前述の図1〜図11に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、ステアリング機構20に代えて、ステアリング機構220が備えられていることである。ステアリング機構220は、電動モータ37と、動力変換機構238と、減速機構39と、ステアリングケース40とを含む。動力変換機構238は、第1変換機構41と、第2変換機構242とを含む。第1ラック47の直線運動は、中間ギヤ256によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。
【0055】
具体的には、第2変換機構242は、第1ラック47から第2ピニオン248に動力を伝達する中間ギヤ256を含む。中間ギヤ256は、円柱状である。中間ギヤ256は、上下方向に延びている。中間ギヤ256は、中間ギヤ256の中心軸線に沿って配列された第1被支持部257、第2被支持部258、第1ギヤ部259、および第2ギヤ部260を含む。第1被支持部257、第2被支持部258、第1ギヤ部259、および第2ギヤ部260は、同軸的に配置されている。第1ギヤ部259は、第1被支持部257と第2被支持部258との間に配置されており、第2被支持部258は、第1ギヤ部259と第2ギヤ部260との間に配置されている。第1被支持部257および第2被支持部258は、ステアリングケース40によって回転可能に支持されている。第1被支持部257とステアリングケース40との間の隙間は、シール部材261によってシールされており、第2被支持部258とステアリングケース40との間の隙間は、シール部材261によってシールされている。
【0056】
第1ギヤ部259は、ステアリングケース40内に配置されている。第1ギヤ部259は、第1ラック47に噛み合っている。一方、第2ギヤ部260は、ステアリングケース40の外に配置されている。第2ギヤ部260は、第2ピニオン248に噛み合っている。第2ピニオン248は、たとえば、ステアリング軸線L3上に位置する中心軸線を有する扇形である。第2ピニオン248は、連結部17に連結されている。第2ピニオン248は、連結部17と共にステアリング軸線L3まわりに回動する。第1ラック47の直線運動は、第1ラック47および第1ギヤ部259によって、中間ギヤ256の回転に変換される。そして、中間ギヤ256の回転は、第2ピニオン248および第2ギヤ部260によって、ステアリング軸線L3まわりの連結部17の回動に変換される。これにより、船外機2がトランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0057】
図15は、この発明の第3実施形態に係るステアリング機構320を含む第1船舶推進装置301の一部の部分断面図である。図16および図17は、この発明の第3実施形態に係るステアリング機構320を含む第1船舶推進装置301の一部の模式的な平面図である。この図15〜図17において、前述の図1〜図14に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0058】
この第3実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、ステアリング機構20に代えて、ステアリング機構320が備えられていることである。ステアリング機構320は、電動モータ37と、動力変換機構338と、減速機構39と、ステアリングケース40とを含む。動力変換機構338は、第1変換機構41と、第2変換機構342とを含む。第1ボールナット46の直線運動は、第1ピン362および第1アーム363によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。
【0059】
具体的には、第2変換機構342は、第1ボールナット46に連結された第1ピン362と、第1ピン362およびステアリングシャフト11に連結された第1アーム363とを含む。第1ピン362は、たとえば、第1ボールナット46から上方に突出している。第1ピン362は、ステアリングケース40内に収容されている。第1ボールねじ45が回転すると、第1ピン362は、第1ボールナット46と共に第1ボールねじ45に沿って移動する。第1アーム363は、中間部18の外周部から突出している。第1アーム363は、たとえば、中間部18と一体である。第1アーム363および中間部18は、一体の部材であってもよいし、一体移動可能に連結された複数の分割体を含む部材であってもよい。第1アーム363は、ステアリング開口50とトランサム開口51とを通ってステアリングケース40の内部に進入している。第1アーム363は、二股の噛み合い部364を含む。第1ピン362は、噛み合い部364内に配置されている。
【0060】
電動モータ37の回転は、減速機構39によって第1ボールねじ45に伝達される。第1ボールねじ45の回転は、第1ボールねじ45および第1ボールナット46によって、第1ボールねじ45に対する第1ボールナット46の直線運動に変換される。第1ピン362は、第1ボールナット46と共に第1ボールねじ45に沿って移動する。第1ピン362が第1ボールねじ45に沿って移動すると、第1ピン362と第1アーム363とが第1ピン362の中心軸線まわりに相対回動し、ステアリングシャフト11の中間部18がステアリング軸線L3まわりに回動する。したがって、第1ボールナット46の直線運動が、第1ピン362および第1アーム363によって、ステアリングシャフト11の回動に変換される。これにより、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0061】
図18は、この発明の第4実施形態に係るステアリング機構420を含む第1船舶推進装置401の一部の部分断面図である。図19および図20は、この発明の第4実施形態に係るステアリング機構420を含む第1船舶推進装置401の一部の模式的な平面図である。この図18〜図20において、前述の図1〜図17に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0062】
この第4実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、ステアリング機構20に代えて、ステアリング機構420が備えられていることである。ステアリング機構420は、電動モータ37と、動力変換機構438と、減速機構39と、ステアリングケース40とを含む。電動モータ37の回転は、第1駆動ギヤ465および第1従動ギヤ466によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。
【0063】
具体的には、動力変換機構438は、電動モータ37によって回転駆動される第1駆動ギヤ465と、第1駆動ギヤ465に噛み合う第1従動ギヤ466とを含む。第1駆動ギヤ465は、たとえば、ウォームであり、第1従動ギヤ466は、たとえば、ウォームホイールである。
第1駆動ギヤ465は、ステアリングケース40内で左右方向に延びている。第1駆動ギヤ465の回転軸線と電動モータ37の回転軸線とは平行である。第1駆動ギヤ465は、電動モータ37より後方に配置されている。第1駆動ギヤ465の両端部は、軸受49を介してステアリングケース40に支持されている。第1駆動ギヤ465は、ステアリングケース40に対して、第1駆動ギヤ465の中心軸線まわりに回転可能である。第1駆動ギヤ465の中心軸線(回転軸線)は、ステアリング軸線L3に平行でなく、かつ交わらない第1非交差軸線L405である。第1駆動ギヤ465は、ステアリングケース40を介してトランサムブラケット10に連結されており、減速機構39を介して電動モータ37に連結されている。電動モータ37の回転は、減速機構39を介して第1駆動ギヤ465に伝達される。これにより、第1駆動ギヤ465が電動モータ37によって第1非交差軸線L405まわりに回転駆動される。
【0064】
第1従動ギヤ466は、中間部18の外周部から突出している。第1従動ギヤ466は、たとえば、ステアリング軸線L3上に位置する第1中心軸線L406を有する扇形である。第1従動ギヤ466は、たとえば、中間部18と一体である。第1従動ギヤ466および中間部18は、一体の部材であってもよいし、一体移動可能に連結された複数の分割体を含む部材であってもよい。第1従動ギヤ466は、ステアリング開口50とトランサム開口51とを通ってステアリングケース40の内部に進入している。第1従動ギヤ466は、ステアリングシャフト11と共にステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0065】
電動モータ37の回転は、減速機構39によって第1駆動ギヤ465に伝達される。第1駆動ギヤ465が第1非交差軸線L405まわりに回転すると、第1従動ギヤ466がステアリング軸線L3まわりに回動して、第1駆動ギヤ465と第1従動ギヤ466との噛み合い位置が移動する。これにより、電動モータ37の回転が、第1駆動ギヤ465および第1従動ギヤ466によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。したがって、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0066】
図21は、この発明の第5実施形態に係るステアリング機構520を含む第1船舶推進装置501の一部の部分断面図である。図22および図23は、この発明の第5実施形態に係るステアリング機構520を含む第1船舶推進装置501の一部の模式的な平面図である。この図21〜図23において、前述の図1〜図20に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0067】
この第5実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、ステアリング機構20に代えて、ステアリング機構520が備えられていることである。ステアリング機構520は、電動モータ37と、動力変換機構538と、ステアリングケース40とを含む。電動モータ37の回転は、第1駆動ギヤ565および第1従動ギヤ566によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。
【0068】
具体的には、動力変換機構538は、電動モータ37によって回転駆動される第1駆動ギヤ565と、第1駆動ギヤ565に噛み合う第1従動ギヤ566とを含む。第1駆動ギヤ565および第1従動ギヤ566は、たとえば、傘歯車である。
第1駆動ギヤ565は、電動モータ37の回転軸44に連結されている。第1駆動ギヤ565と回転軸44とは同軸的に配置されている。第1減速ギヤ52は、回転軸44と共に回転する。第1駆動ギヤ565は、電動モータ37によって、ステアリング軸線L3に交差する第1交差軸線L507まわりに回転駆動される。すなわち、電動モータ37は、回転軸44が前後方向に延びるように配置されている。電動モータ37のモータ本体43は、ステアリングケース40に固定されている。電動モータ37は、ステアリングケース40を介してトランサムブラケット10に固定されている。したがって、第1駆動ギヤ565は、電動モータ37およびステアリングケース40を介してトランサムブラケット10に連結されている。
【0069】
第1従動ギヤ566は、ステアリングシャフト11の連結部17に連結されている。第1従動ギヤ566は、たとえば、ステアリング軸線L3上に位置する第1中心軸線L406を有する扇形である。第1従動ギヤ566は、ステアリングシャフト11と共にステアリング軸線L3まわりに回動する。電動モータ37の回転は、第1駆動ギヤ565を介して第1従動ギヤ566に伝達される。第1駆動ギヤ565が第1交差軸線L507まわりに回転すると、第1従動ギヤ566がステアリング軸線L3まわりに回動して、第1駆動ギヤ565と第1従動ギヤ566との噛み合い位置が移動する。これにより、電動モータ37の回転が、第1駆動ギヤ565および第1従動ギヤ566によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト11の回動に変換される。したがって、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0070】
次に、電動モータがステアリングシャフトに固定された第2船舶推進装置について説明する。以下の説明において、前述の図1〜図23に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図24は、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の側面図である。図25Aは、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の一部の斜視図である。図25Bは、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の一部の分解斜視図である。図25Cは、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の一部の分解図である。図26は、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の一部の部分断面図である。
【0071】
第2船舶推進装置601は、船外機2と、トランサムブラケット10と、ステアリングシャフト611と、チルトシャフト12とを含む。さらに、第2船舶推進装置601は、チルト機構19と、ステアリング機構620とを含む。ステアリングシャフト611は、筒状部16と、連結部17とを含む。連結部17は、筒状部16の上端部に連結されている。連結部17は、たとえば、筒状部16と一体である。筒状部16および連結部17は、一体の部材であってもよいし、一体移動可能に連結された複数の分割体を含む部材であってもよい。すなわち、ステアリングシャフト611は、複数の分割体を含む部材であってもよいし、一体の部材であってもよい。筒状部16の内部は、連結部17の貫通孔34に接続されている。チルトシリンダ22のシリンダ本体26は、筒状部16内に配置されている。筒状部16の下端部は、フレーム23に連結されている。チルトロッド27の上端部は、連結部17の貫通孔34から上方に突出している。チルトロッド27の上端部は、アッパーピン35を介して、チルトブラケット13に連結されている。
【0072】
図27は、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の側面図である。図28は、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の平面図である。図28では、船外機2が最大右操舵位置に位置する状態を実線で示している。また、図28では、船外機2が操舵原点に位置する状態を一点鎖線で示しており、船外機2が最大左操舵位置に位置する状態を二点鎖線で示している。
【0073】
ステアリングシャフト611は、連結部17に設けられた固定部667をさらに含む。ステアリングケース40は、固定部667に固定されている。したがって、電動モータ37は、ステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に固定されている。船外機2は、ステアリングシャフト611に対してチルト軸線L4まわりに回動する。そのため、図27に示すように、船外機2が、トランサムブラケット10に対してチルト軸線L4まわりに回動したときに、電動モータ37は、船外機2と共に、トランサムブラケット10に対してチルト軸線L4まわりに回動しない。すなわち、船外機2が、トランサムブラケット10に対してチルト軸線L4まわりに回動すると、船外機2に対する電動モータ37の位置が変化する。
【0074】
一方、電動モータ37がステアリングシャフト611に固定されているから、ステアリングシャフト611がステアリング軸線L3まわりに回動すると、電動モータ37は、ステアリングシャフト611および船外機2と共にステアリング軸線L3まわりに回動する。そのため、図28に示すように、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動したときに、電動モータ37は、船外機2と共に、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。すなわち、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動しても、船外機2に対する電動モータ37の位置が変化しない。
【0075】
図29は、この発明の第6実施形態に係る第2船舶推進装置601の一部の分解図である。図30は、この発明の第6実施形態に係るステアリング機構620を含む第2船舶推進装置601の一部の部分断面図である。図31および図32は、この発明の第6実施形態に係るステアリング機構620を含む第2船舶推進装置601の一部の模式的な平面図である。
【0076】
ステアリング機構620は、電動モータ37と、動力変換機構638と、減速機構39と、ステアリングケース40とを含む。さらに、図29に示すように、ステアリング機構620は、ギヤケース668と、ステー669とを含む。動力変換機構638は、第1変換機構641と、第2変換機構642とを含む。図30に示すように、ステアリングケース40は、ステアリングシャフト611の固定部667に固定されており、ギヤケース668は、ステアリングケース40に固定されている。したがって、ギヤケース668は、ステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に固定されている。ステアリングシャフト611は、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動可能である。よって、ギヤケース668は、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動可能である。図30に示すように、ギヤケース668は、ステアリング開口50に対向するギヤ開口670を有している。ステアリングケース40の内部は、ギヤ開口670を介してギヤケース668の内部に接続されている。
【0077】
図31に示すように、第1変換機構641は、第2ボールねじ645と、複数のボールを介して第2ボールねじ645に取り付けられた筒状の第2ボールナット646とを含む。第2変換機構642は、第2ボールナット646に連結された第2ラック647と、第2ラック647に噛み合う第2ピニオン648とを含む。第2ボールねじ645、第2ボールナット646、第2ラック647は、ステアリングケース40内に収容されており、ステアリングケース40によって保持されている。一方、第2ピニオン648の大部分は、ギヤケース668内に収容されている。第2ピニオン648は、トランサムブラケット10に連結されている。ステアリングシャフト611がトランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動可能であるから、ステアリングシャフト611は、第2ピニオン648に対してステアリング軸線L3まわりに回動可能である。
【0078】
図31に示すように、第2ボールねじ645は、ステアリングケース40内で左右方向に延びている。第2ボールねじ645の回転軸線と電動モータ37の回転軸線とは平行である。第2ボールねじ645は、電動モータ37より後方に配置されている。第2ボールねじ645の両端部は、軸受49を介してステアリングケース40に支持されている。第2ボールねじ645は、ステアリングケース40を介してトランサムブラケット10に連結されており、減速機構39を介して電動モータ37に連結されている。電動モータ37の回転は、減速機構39を介して第2ボールねじ645に伝達される。これにより、第2ボールねじ645が電動モータ37によって回転駆動される。第2ボールねじ645が第2ボールねじ645の中心軸線まわりに回転すると、第2ボールナット646が第2ボールねじ645に沿って移動し、第2ボールねじ645の回転が、第2ボールねじ645に対する第2ボールナット646の直線運動に変換される。
【0079】
図31に示すように、第2ラック647は、第2ボールナット646の外周部に設けられている。第2ラック647は、たとえば、第2ボールナット646と一体である。第2ラック647および第2ボールナット646は、一体の部材であってもよいし、一体移動可能に連結された複数の分割体を含む部材であってもよい。第2ラック647は、第2ボールねじ645の軸方向に配列された複数の歯を含む。第2ラック647は、ステアリングケース40に設けられたステアリング開口50に対向している。第2ボールねじ645が回転すると、第2ラック647は、第2ボールナット646と共に第2ボールねじ645に沿って移動する。
【0080】
図31に示すように、第2ピニオン648は、円筒部671と、歯部672とを含む。図30に示すように、第2ピニオン648の円筒部671は、ステー669に固定されている。ステー669は、トランサムブラケット10に固定されている。したがって、第2ピニオン648は、ステー669を介してトランサムブラケット10に固定されている。ステー669は、筒状である。ステー669と円筒部671とは同軸的に配置されている。ステー669の内部は、円筒部671の内部に接続されている。図30に示すように、トランサムブラケット10の収容部15は、円筒部671内とステー669内に挿入されている。円筒部671およびステー669は、ステアリング軸線L3まわりに収容部15を取り囲んでいる。
【0081】
図30および図31に示すように、第2ピニオン648は、ギヤケース668によって覆われている。ギヤケース668は、第2ピニオン648の周囲に配置されている。第2ピニオン648の歯部672は、円筒部671の外周部から突出している。歯部672は、たとえば、ステアリング軸線L3上に位置する中心軸線を有する扇形である。歯部672は、ステアリング開口50とギヤ開口670とを通ってステアリングケース40の内部に進入している。歯部672は、ステアリングケース40の内部で第2ラック647に噛み合っている。電動モータ37の回転は、第2ボールねじ645、第2ボールナット646、第2ラック647および第2ピニオン648によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。
【0082】
具体的には、電動モータ37の回転は、減速機構39によって第2ボールねじ645に伝達される。第2ボールねじ645が回転すると、第2ボールねじ645の軸方向に相対移動させる力が、第2ボールねじ645および第2ボールナット646に働く。この力は、第2ラック647と第2ピニオン648との噛み合い位置が移動することによって、第2ボールねじ645および第2ボールナット646をステアリング軸線L3まわりに回動させる力に変換される。これにより、図32に示すように、第2ボールねじ645が第2ボールナット646に対して第2ボールねじ645の軸方向に移動しながら、第2ボールねじ645および第2ボールナット646がステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0083】
第2ボールねじ645は、ステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に連結されている。したがって、第2ボールねじ645がステアリング軸線L3まわりに回動することにより、ステアリングシャフト611が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。すなわち、電動モータ37の回転は、第2ボールねじ645および第2ボールナット646によって、第2ボールねじ645に対する第2ボールナット646の直線運動に変換される。それと同時に、第2ボールナット646の直線運動が、第2ラック647および第2ピニオン648によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。これにより、図32に示すように、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0084】
図33は、この発明の第7実施形態に係るステアリング機構720を含む第2船舶推進装置701の一部の部分断面図である。図34および図35は、この発明の第7実施形態に係るステアリング機構720を含む第2船舶推進装置701の一部の模式的な平面図である。この図33〜図35において、前述の図1〜図32に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0085】
この第7実施形態と前述の第6実施形態との主要な相違点は、ステアリング機構620に代えて、ステアリング機構720が備えられていることである。ステアリング機構720は、電動モータ37と、動力変換機構738と、減速機構39と、ステアリングケース40とを含む。動力変換機構738は、第1変換機構641と、第2変換機構742とを含む。第2ボールナット646の直線運動は、第2ピン762および第2アーム763によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。
【0086】
具体的には、第2変換機構742は、第2ボールナット646に連結された第2ピン762と、第2ピン762およびトランサムブラケット10に連結された第2アーム763とを含む。第2ピン762は、たとえば、第2ボールナット646から下方に突出している。第2ピン762は、ステアリングケース40内に収容されている。第2ボールねじ645が回転すると、第2ピン762は、第2ボールナット646と共に第2ボールねじ645に沿って移動する。第2アーム763は、トランサムブラケット10の収容部15から突出している。第2アーム763は、たとえば、収容部15と一体である。第2アーム763および収容部15は、一体の部材であってもよいし、一体移動可能に連結された複数の分割体を含む部材であってもよい。第2アーム763は、ステアリング開口50とギヤ開口670とを通ってステアリングケース40の内部に進入している。第2アーム763は、二股の噛み合い部764を含む。第2ピン762は、噛み合い部764内に配置されている。
【0087】
電動モータ37の回転は、減速機構39によって第2ボールねじ645に伝達される。第2ボールねじ645が回転すると、第2ボールねじ645の軸方向に相対移動させる力が、第2ボールねじ645および第2ボールナット646に働く。この力は、第2ピン762と第2アーム763とが第2ピン762の中心軸線まわりに相対回動することによって、第2ボールねじ645および第2ボールナット646をステアリング軸線L3まわりに回動させる力に変換される。すなわち、電動モータ37の回転は、第2ボールねじ645および第2ボールナット646によって、第2ボールねじ645に対する第2ボールナット646の直線運動に変換される。それと同時に、第2ボールナット646の直線運動が、第2ピン762および第2アーム763によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。これにより、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0088】
図36は、この発明の第8実施形態に係るステアリング機構820を含む第2船舶推進装置801の一部の部分断面図である。図37および図38は、この発明の第8実施形態に係るステアリング機構820を含む第2船舶推進装置801の一部の模式的な平面図である。この図36〜図38において、前述の図1〜図35に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0089】
この第8実施形態と前述の第6実施形態との主要な相違点は、ステアリング機構620に代えて、ステアリング機構820が備えられていることである。ステアリング機構820は、電動モータ37と、動力変換機構838と、減速機構39と、ステアリングケース40とを含む。電動モータ37の回転は、第2駆動ギヤ865および第2従動ギヤ866によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。
【0090】
具体的には、動力変換機構838は、電動モータ37によって回転駆動される第2駆動ギヤ865と、第2駆動ギヤ865に噛み合う第2従動ギヤ866とを含む。第2駆動ギヤ865は、たとえば、ウォームであり、第2従動ギヤ866は、たとえば、ウォームホイールである。
第2駆動ギヤ865は、ステアリングケース40内で左右方向に延びている。第2駆動ギヤ865の回転軸線と電動モータ37の回転軸線とは平行である。第2駆動ギヤ865は、電動モータ37より後方に配置されている。第2駆動ギヤ865の両端部は、軸受49を介してステアリングケース40に支持されている。第2駆動ギヤ865は、ステアリングケース40に対して、第2駆動ギヤ865の中心軸線まわりに回転可能である。第2駆動ギヤ865の中心軸線(回転軸線)は、ステアリング軸線L3に平行でなくかつ交わらない第2非交差軸線L805である。第2駆動ギヤ865は、ステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に連結されており、減速機構39を介して電動モータ37に連結されている。電動モータ37の回転は、減速機構39を介して第2駆動ギヤ865に伝達される。これにより、第2駆動ギヤ865が電動モータ37によって第2非交差軸線L805まわりに回転駆動される。
【0091】
第2従動ギヤ866は、円筒部671と、歯部872とを含む。第2従動ギヤ866は、ステー669を介して、トランサムブラケット10に固定されている。第2従動ギヤ866は、ギヤケース668によって覆われている。ギヤケース668は、第2従動ギヤ866の周囲に配置されている。第2従動ギヤ866の歯部872は、円筒部671の外周部から突出している。歯部872は、たとえば、ステアリング軸線L3上に位置する第2中心軸線L806を有する扇形である。歯部872は、ステアリング開口50とギヤ開口670とを通ってステアリングケース40の内部に進入している。歯部872は、ステアリングケース40の内部で第2ラック647に噛み合っている。電動モータ37の回転は、第2駆動ギヤ865および第2従動ギヤ866によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。
【0092】
具体的には、電動モータ37の回転は、減速機構39によって第2駆動ギヤ865に伝達される。第2従動ギヤ866が、トランサムブラケット10に固定されているから、第2駆動ギヤ865が第2非交差軸線L805まわりに回転すると、第2駆動ギヤ865を第2駆動ギヤ865の軸方向に移動させる力が働く。この力は、第2駆動ギヤ865と第2従動ギヤ866との噛み合い位置が移動することによって、第2駆動ギヤ865をステアリング軸線L3まわりに回動させる力に変換される。第2駆動ギヤ865は、電動モータ37およびステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に連結されている。したがって、第2駆動ギヤ865がステアリング軸線L3まわりに回動することにより、ステアリングシャフト611が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。これにより、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0093】
図39は、この発明の第9実施形態に係るステアリング機構920を含む第2船舶推進装置901の一部の部分断面図である。図40および図41は、この発明の第9実施形態に係るステアリング機構920を含む第2船舶推進装置901の一部の模式的な平面図である。この図39〜図41において、前述の図1〜図38に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0094】
この第9実施形態と前述の第6実施形態との主要な相違点は、ステアリング機構620に代えて、ステアリング機構920が備えられていることである。ステアリング機構920は、電動モータ37と、動力変換機構938と、ステアリングケース40とを含む。電動モータ37の回転は、第2駆動ギヤ965および第2従動ギヤ966によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。
【0095】
具体的には、動力変換機構938は、電動モータ37によって回転駆動される第2駆動ギヤ965と、第2駆動ギヤ965に噛み合う第2従動ギヤ966とを含む。第2駆動ギヤ965および第2従動ギヤ966は、たとえば、傘歯車である。
第2駆動ギヤ965は、電動モータ37の回転軸44に連結されている。第2駆動ギヤ965と回転軸44とは同軸的に配置されている。第2減速ギヤ53は、回転軸44と共に回転する。第2駆動ギヤ965は、電動モータ37によって、ステアリング軸線L3に交差する第2交差軸線L907まわりに回転駆動される。すなわち、電動モータ37は、たとえば、回転軸44が前後方向に延びるように配置されている。電動モータ37のモータ本体43は、ステアリングケース40に固定されている。電動モータ37は、ステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に固定されている。したがって、第2駆動ギヤ965は、電動モータ37およびステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に連結されている。
【0096】
第2従動ギヤ966は、円筒部671と、歯部972とを含む。第2従動ギヤ966は、ステー669を介して、トランサムブラケット10に固定されている。第2従動ギヤ966は、ギヤケース668によって覆われている。ギヤケース668は、第2従動ギヤ966の周囲に配置されている。第2従動ギヤ966の歯部972は、円筒部671の外周部から突出している。歯部972は、たとえば、ステアリング軸線L3上に位置する第2中心軸線L806を有する扇形である。歯部972は、第2ラック647に噛み合っている。電動モータ37の回転は、第2駆動ギヤ965および第2従動ギヤ966によって、ステアリング軸線L3まわりのステアリングシャフト611の回動に変換される。
【0097】
具体的には、電動モータ37の回転は、第2駆動ギヤ965に伝達される。第2従動ギヤ966が、トランサムブラケット10に固定されているから、第2駆動ギヤ965が第2交差軸線L907まわりに回転すると、第2駆動ギヤ965と第2従動ギヤ966との噛み合い位置が移動することによって、第2駆動ギヤ965がステアリング軸線L3まわりに回動する。第2駆動ギヤ965は、電動モータ37およびステアリングケース40を介してステアリングシャフト611に連結されている。したがって、第2駆動ギヤ965がステアリング軸線L3まわりに回動することにより、ステアリングシャフト611が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。これにより、船外機2が、トランサムブラケット10に対してステアリング軸線L3まわりに回動する。
【0098】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第9実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1〜第4、および第6〜第8実施形態では、減速機構がステアリング機構に備えられており、電動モータの回転が、減速機構を介してボールねじまたは駆動ギヤに伝達される場合について説明した。しかし、前述の第1〜第4、および第6〜第8実施形態において、減速機構がステアリング機構に備えられておらず、電動モータの回転が、減速機構を介さずに、ボールねじまたは駆動ギヤに伝達されてもよい。
【0099】
また、前述の第5および第9実施形態では、減速機構がステアリング機構に備えられておらず、電動モータの回転が、減速機構を介さずに、駆動ギヤに伝達される場合について説明した。しかし、第5および第9実施形態において、減速機構がステアリング機構に備えられており、電動モータの回転が、減速機構を介して駆動ギヤに伝達されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0100】
以下に、特許請求の範囲に記載された構成要素と前述の実施形態における構成要素との対応関係を示す。
船体:船体H1
トランサム:トランサムT1
トランサムブラケット:トランサムブラケット10
ステアリング軸線:ステアリング軸線L3
ステアリングシャフト:ステアリングシャフト11、611
チルト軸線:チルト軸線L4
船外機:船外機2
チルト機構:チルト機構19
電動モータ:電動モータ37
動力変換機構:動力変換機構38、238、338、438、538、638、738、838、938
ステアリング機構:ステアリング機構20、220、320、420、520、620、720、820、920
船舶推進装置:第1船舶推進装置1、201、301、401、501、第2船舶推進装置601、701、801、901
収容部:収容部15
減速機構:減速機構39
第1変換機構:第1変換機構41、641
第2変換機構:第2変換機構42、242、342、642、742
第1ボールねじ:第1ボールねじ45
第1ボールナット:第1ボールナット46
第1ラック:第1ラック47
第1ピニオン:第1ピニオン48
第1ピン:第1ピン362
第1アーム:第1アーム363
第1駆動ギヤ:第1駆動ギヤ465、565
第1従動ギヤ:第1従動ギヤ466、566
第1非交差軸線:第1非交差軸線L405
第1中心軸線:第1中心軸線L406
第1交差軸線:第1交差軸線L507
第2ボールねじ:第2ボールねじ645
第2ボールナット:第2ボールナット646
第2ラック:第2ラック647
第2ピニオン:第2ピニオン648
第2ピン:第2ピン762
第2アーム:第2アーム763
第2駆動ギヤ:第2駆動ギヤ865、965
第2従動ギヤ:第2従動ギヤ866、966
第2非交差軸線:第2非交差軸線L805
第2中心軸線:第2中心軸線L806
第2交差軸線:第2交差軸線L907
【符号の説明】
【0101】
1 第1船舶推進装置
2 船外機
10 トランサムブラケット
11 ステアリングシャフト
15 収容部
19 チルト機構
20 ステアリング機構
37 電動モータ
38 動力変換機構
39 減速機構
41 第1変換機構
42 第2変換機構
45 第1ボールねじ
46 第1ボールナット
47 第1ラック
48 第1ピニオン
201 第1船舶推進装置
220 ステアリング機構
238 動力変換機構
242 第2変換機構
301 第1船舶推進装置
320 ステアリング機構
338 動力変換機構
342 第2変換機構
362 第1ピン
363 第1アーム
401 第1船舶推進装置
420 ステアリング機構
438 動力変換機構
465 第1駆動ギヤ
466 第1従動ギヤ
501 第1船舶推進装置
520 ステアリング機構
538 動力変換機構
565 第1駆動ギヤ
566 第1従動ギヤ
601 第2船舶推進装置
611 ステアリングシャフト
620 ステアリング機構
638 動力変換機構
641 第1変換機構
642 第2変換機構
645 第2ボールねじ
646 第2ボールナット
647 第2ラック
648 第2ピニオン
701 第2船舶推進装置
720 ステアリング機構
738 動力変換機構
742 第2変換機構
762 第2ピン
763 第2アーム
801 第2船舶推進装置
820 ステアリング機構
838 動力変換機構
865 第2駆動ギヤ
866 第2従動ギヤ
901 第2船舶推進装置
920 ステアリング機構
938 動力変換機構
965 第2駆動ギヤ
966 第2駆動ギヤ
H1 船体
L3 ステアリング軸線
L4 チルト軸線
L405 第1非交差軸線
L406 第1中心軸線
L507 第1交差軸線
L805 第2非交差軸線
L806 第2中心軸線
L907 第2交差軸線
T1 トランサム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体のトランサムに取り付け可能なトランサムブラケットと、
前記トランサムブラケットに連結されており、上下方向に延びるステアリング軸線まわりに回動可能なステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトに連結されており、前記ステアリング軸線に垂直な平面に沿って延びるチルト軸線まわりに回動可能であり、前記ステアリング軸線まわりに前記ステアリングシャフトと共に回動可能な船外機と、
前記ステアリングシャフトと前記船外機とに連結されており、前記船外機を前記ステアリングシャフトに対して前記チルト軸線まわりに回動させるチルト機構と、
電動モータと、前記電動モータの動力を前記ステアリング軸線まわりの前記ステアリングシャフトの回動に変換する動力変換機構とを含むステアリング機構と
を含む、船舶推進装置。
【請求項2】
前記トランサムブラケットは、前記ステアリング軸線に沿って延びる筒状の収容部を含み、
前記ステアリングシャフトの少なくとも一部は、前記収容部に収容されている、請求項1記載の船舶推進装置。
【請求項3】
前記ステアリング機構は、前記電動モータの回転を減速して、減速された回転を前記動力変換機構に伝達する減速機構を含む、請求項1または2記載の船舶推進装置。
【請求項4】
前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記ステアリング軸線まわりに回動しないように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記チルト軸線まわりに回動しないように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項5】
前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化するように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化するように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項6】
前記電動モータは、前記トランサムブラケットに固定されている、請求項4または5記載の船舶推進装置。
【請求項7】
前記動力変換機構は、前記電動モータの回転を直線運動に変換する第1変換機構と、前記直線運動を前記トランサムブラケットに対する前記ステアリング軸線まわりの前記ステアリングシャフトの回動に変換する第2変換機構とを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項8】
前記第1変換機構は、前記トランサムブラケットおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第1ボールねじと、前記第1ボールねじに取り付けられた第1ボールナットとを含み、
前記第2変換機構は、前記第1ボールナットに連結された第1ラックと、前記第1ラックに噛み合い前記ステアリングシャフトと共に前記ステアリング軸線まわりに回動するように前記ステアリングシャフトに連結された第1ピニオンとを含み、
前記電動モータの回転は、前記第1ボールねじおよび第1ボールナットによって、前記第1ボールねじに対する前記第1ボールナットの直線運動に変換され、前記第1ボールナットの直線運動は、前記第1ラックおよび第1ピニオンによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される、請求項7記載の船舶推進装置。
【請求項9】
前記第1変換機構は、前記トランサムブラケットおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第1ボールねじと、前記第1ボールねじに取り付けられた第1ボールナットとを含み、
前記第2変換機構は、前記第1ボールナットに連結された第1ピンと、前記第1ピンおよびステアリングシャフトに連結された第1アームとを含み、前記第1ボールねじに対する前記第1ボールナットの直線運動を、前記第1ピンおよび第1アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換するように構成されており、
前記電動モータの回転は、前記第1ボールねじおよび第1ボールナットによって、前記第1ボールねじに対する前記第1ボールナットの直線運動に変換され、前記第1ボールナットの直線運動は、前記第1ピンおよび第1アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される、請求項7記載の船舶推進装置。
【請求項10】
前記動力変換機構は、前記トランサムブラケットおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第1駆動ギヤと、前記第1駆動ギヤに噛み合い前記ステアリングシャフトと共に前記ステアリング軸線まわりに回動するように前記ステアリングシャフトに連結された第1従動ギヤとを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項11】
前記第1駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に平行でなくかつ交わらない第1非交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、
前記第1従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第1中心軸線を含み、前記第1中心軸線まわりに回動するように構成されている、請求項10記載の船舶推進装置。
【請求項12】
前記第1駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に交差する第1交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、
前記第1従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第1中心軸線を含み、前記第1中心軸線まわりに回動するように構成されている、請求項10記載の船舶推進装置。
【請求項13】
前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記ステアリング軸線まわりに回動するように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記トランサムブラケットに対して前記チルト軸線まわりに回動しないように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項14】
前記電動モータは、前記ステアリング軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化しないように構成されており、前記チルト軸線まわりの前記船外機の回動に伴って前記船外機に対する位置が変化するように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項15】
前記電動モータは、前記ステアリングシャフトに固定されている、請求項13または14記載の船舶推進装置。
【請求項16】
前記動力変換機構は、前記電動モータの回転を直線運動に変換する第1変換機構と、前記直線運動を前記トランサムブラケットに対する前記ステアリング軸線まわりの前記ステアリングシャフトの回動に変換する第2変換機構とを含む、請求項1〜3および請求項13〜15のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項17】
前記第1変換機構は、前記ステアリングシャフトおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第2ボールねじと、前記第2ボールねじに取り付けられた第2ボールナットとを含み、
前記第2変換機構は、前記第2ボールナットに連結された第2ラックと、前記第2ラックに噛み合い前記トランサムブラケットに連結された第2ピニオンとを含み、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動を、前記第2ラックおよび第2ピニオンによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換するように構成されており、
前記電動モータの回転は、前記第2ボールねじおよび第2ボールナットによって、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動に変換され、前記第2ボールねじの直線運動は、前記第2ラックおよび第2ピニオンによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される、請求項16記載の船舶推進装置。
【請求項18】
前記第1変換機構は、前記ステアリングシャフトおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第2ボールねじと、前記第2ボールねじに取り付けられた第2ボールナットとを含み、
前記第2変換機構は、前記第2ボールナットに連結された第2ピンと、前記第2ピンおよびトランサムブラケットに連結された第2アームとを含み、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動を、前記第2ピンおよび第2アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換するように構成されており、
前記電動モータの回転は、前記第2ボールねじおよび第2ボールナットによって、前記第2ボールナットに対する前記第2ボールねじの直線運動に変換され、前記第2ボールねじの直線運動は、前記第2ピンおよび第2アームによって、前記ステアリングシャフトの回動に変換される、請求項16記載の船舶推進装置。
【請求項19】
前記動力変換機構は、前記ステアリングシャフトおよび電動モータに連結されており前記電動モータによって回転駆動される第2駆動ギヤと、前記第2駆動ギヤに噛み合い前記トランサムブラケットに連結された第2従動ギヤとを含む、請求項1〜3および13〜15のいずれか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項20】
前記第2駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に平行でなくかつ交わらない第2非交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、
前記第2従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第2中心軸線を含み、
前記電動モータの回転は、前記第2駆動ギヤおよび第2従動ギヤによって、前記第2中心軸線まわりの前記第2駆動ギヤの回動に変換される、請求項19記載の船舶推進装置。
【請求項21】
前記第2駆動ギヤは、前記電動モータによって、前記ステアリング軸線に交差する第2交差軸線まわりに回転駆動されるように構成されており、
前記第2従動ギヤは、前記ステアリング軸線上に位置する第2中心軸線を含み、
前記電動モータの回転は、前記第2駆動ギヤおよび前第2従動ギヤによって、前記第2中心軸線まわりの前記第2駆動ギヤの回動に変換される、請求項19記載の船舶推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2012−81899(P2012−81899A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230851(P2010−230851)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)