説明

船舶航行阻害装置

【課題】 取扱いが容易であると共に、効率的な使用が可能である船舶航行阻害装置を提供する。
【解決手段】 船舶航行阻害装置1は、長手方向(図の左右方向)に延びる一対の円筒形状のフロート11a、11bと、フロート11a、11b間に設置されたネット21とを備えている。折畳み状態においては、軸材17にフロート11a、11b及びネット21が巻き付けられているため、保管及び運搬が容易となる。この折畳み状態から、図で示すようにフロート11a、11bの各々の注入バルブ23から空気を注入すると、フロート11a、11bの内圧によって展張部分31a、31bが回転しながら標的Tに向かって展張することになる。即ち、空気の注入によってフロート11a、11b及びネット21が水面5上に展張するため、取扱いが容易になると共に、速やかな設置が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船舶航行阻害装置に関し、特に、海上から港湾や海岸に侵入する不審船等の航行を阻害するための船舶航行阻害装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は従来の船舶航行阻害装置を示す側面図であり、(a)は妨害態勢をしいた状態を示すものであって、(b)は妨害態勢を解除した状態を示すものである。
【0003】
まず(a)を参照して、妨害態勢をしいた状態の船舶航行妨害装置(船舶航行阻害装置)70は、水面76に浮遊する複数のブイ72と、水溶性の連結紐74を介してブイ72の各々に取付けられた索73とを備えている。従って、例えば不審船が船舶航行妨害装置70を通過しようとすると、索73が不審船のスクリューに絡み付き、その航行を妨害することになる。
【0004】
そして、船舶航行妨害装置70が不要になると、一般の船舶の航行を妨害しないように、通常は特に航行の妨害となる索73を回収する必要があった。しかしながら、この船舶航行妨害装置70においては、このような回収作業が必要無くなる。
【0005】
即ち、(b)を参照して、上述した通り、索73は水溶性の連結紐によってブイ72の各々に取付けられている。従って、着水する妨害態勢をしいた状態から所定時間が経過して連結紐が水に溶けることによって、ブイ72の各々との取付状態が解除され、図の矢印で示すように索73が水中に沈下する。
このように妨害態勢が解除されることによって、上述したような船舶航行妨害装置70の回収作業を行う必要が無くなり、一般の船舶の航行を妨害しないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−53094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の船舶航行阻害装置では、緊急に設置する必要がある場合に問題が生じる。即ち、従来の船舶航行阻害装置は、基本的には侵入防止区域等に対して、事前に船舶等を用いて設置する必要があった。そのため、設置位置を自在に変更する事は困難であり、その取扱いは容易ではなかった。
【0008】
又、妨害態勢を解除する際、策を水中に沈下させるため、繰り返しの使用ができず、効率的に使用することができなかった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、取扱いが容易であると共に、効率的な使用が可能である船舶航行阻害装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、船舶航行阻害装置であって、船舶の航行を阻害するための策材と、策材が接続され、流体の注入が可能な浮力体とを備え、策材と浮力体とは折畳み自在に構成されると共に、浮力体は、流体が注入された際展張され、少なくともその一部が水面上に浮遊するものである。
【0011】
このように構成すると、折畳んだ状態から流体を注入すると、浮力体は策材を伴って水面上に展張する。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、浮力体は平行に展張可能であると共に、各々が水面上を浮遊する一対のフロートよりなり、策材は、フロートの各々の間に配置されるものである。
【0013】
このように構成すると、策材は水面に沿って平面状に展張される。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、フロートの各々は長手方向に延びる筒状に形成され、フロートの各々の長手方向の一方端部には、気体の注入口が形成され、フロートの各々の長手方向の他方端部の近傍には、長手方向に直交する方向に架け渡す柱状の軸材を更に備えたものである。
【0015】
このように構成すると、フロートの各々は、気体を抜いた状態で軸材周りに巻き取ることができると共に、気体を注入すると、フロートは軸材の周りを回転しながら展張する。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、軸材は、フロートの軸材周りの展張部分が水中に沈まないような浮力を有するものである。
【0017】
このように構成すると、フロートは水面に沿って展張する。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、浮力体は平行に展張可能である一対のフロートよりなり、策材は、フロートの各々の間に配置され、フロートの一方には気体が注入され、フロートの他方には液体が注入され、液体の比重は、フロートの他方がフロートの一方の水中の下方に位置するように設定されるものである。
【0019】
このように構成すると、策材は水面に直交するように展張される。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、策材の端部であって浮力体の反対側には、錘が取付けられ、錘の重量は、錘が浮力体の水中の下方に位置するように設定されるものである。
【0021】
このように構成すると、策材は水面に直交するように展張される。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、浮力体に接続された浮遊体を更に備え、浮遊体は、浮力体に浮力を発生させるために注入された流体が全て排出された際に、少なくともその一部が水面上に浮遊する浮力を有するものである。
【0023】
このように構成すると、浮力体が破損した場合でも、全体が沈むことがない。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、折畳んだ状態から流体を注入すると、浮力体は策材を伴って水面上に展張するため、取扱いが容易で、効率的な使用が可能となる。
【0025】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、策材は水面に沿って平面状に展張されるため、水面での航行の阻害範囲が拡大する。
【0026】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、フロートの各々は、気体を抜いた状態で軸材周りに巻き取ることができると共に、気体を注入すると、フロートは軸材の周りを回転しながら展張するため、フロートの展張動作が安定する。
【0027】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、フロートは水面に沿って展張するため、フロートの展張動作が更に安定する。
【0028】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、策材は水面に直交するように展張されるため、航行の阻害範囲が水中に拡大する。
【0029】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、策材は水面に直交するように展張されるため、航行の阻害範囲が水中に拡大する。
【0030】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、浮力体が破損した場合でも、全体が沈むことがないため、使用上の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の第1の実施の形態による船舶航行阻害装置の展張状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大断面図である。
【図3】図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【図4】図1で示した展張状態の船舶航行阻害装置を折畳み状態にする工程を示した概略側面図である。
【図5】図4で示した折畳み状態の船舶航行阻害装置を展張状態にする第1工程を示した概略図である。
【図6】図5に続く図4で示した折畳み状態の船舶航行阻害装置を展張状態にする第2工程を示した概略図である。
【図7】図6に続く図4で示した折畳み状態の船舶航行阻害装置を展張状態にする第3工程を示した概略図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態による船舶航行阻害装置を示す断面図である。
【図9】この発明の第3の実施の形態による船舶航行阻害装置を示す断面図である。
【図10】従来の船舶航行阻害装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1はこの発明の第1の実施の形態による船舶航行阻害装置の展張状態を示す概略斜視図であり、図2は図1で示したII−IIラインの拡大断面図であり、図3は図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【0033】
これらの図を参照して、水面5上に設置された船舶航行阻害装置1は、長手方向(図1の左下から右上方向)に延びる、各々が平行に配置された円筒状の浮力体である一対のフロート11a、11bと、フロート11a、11bの各々の間に配置された策材である合成樹脂繊維よりなるネット21とから主に構成されている。尚、図2及び図3で示すように、フロート11a、11bの各々は、内部に合成樹脂よりなる繊維13が埋設されたゴム12によって形成されている。又、ネット21の繊維強度及び間隔は、用途に応じた設計強度に設定すれば良い。
【0034】
又、フロート11a、11bの内部には空気が注入されているため、フロート11a、11bの各々が水面5上に浮遊する。尚、フロート11a、11bの長手方向の一方端部(図1の左下側の端部)の各々には、空気の注入口である注入バルブ23a、23bが取付けられている。そして、注入バルブ23a、23bを介して、図示しない給排出手段を用いてフロート11a、11bの内部に空気が注入又は排出される。
【0035】
更に、フロート11a、11bの各々には、ゴムよりなる複数の連結ベルト15が、長手方向に等間隔で巻き付けるようにして配置され、一方端部を除いて加硫接続等によって接着されている。又、連結ベルト15の一方端部には開口16が形成されている。そして、ネット21の短手方向(図2の左右方向)の両端部は、連結ベルト15の各々に開口16を介して取付けられたスナップフック28の各々を介して、フロート11a、11bの各々に接続されている。
【0036】
又、展張状態のネット21の長手方向の両端部及び中央部付近の各々には、フロート11a、11bの短手方向の間隔を保持するための、プラスチック等よりなる円筒状の保持材25が設置されている。尚、保持材25の内部にはロープ26が挿通されており、ロープ26の両端の各々はスナップフック28の各々に縛り付けられている。従って、保持材25の設置状態が保持される。そして、この保持材25によって、フロート11a、11bの間隔が常に一定に保持されるため、ネット21が確実に水面5に沿って平面状に展張することになる。
【0037】
又、フロート11a、11bの各々の長手方向の他方端部(図1の右上側の端部)の近傍には、短手方向に架け渡すように、その内部に空気が注入された円筒状のゴムよりなる軸材17が配置されている。軸材17の両端部の各々は、フロート11a、11bの各々に接続されたゴムよりなる固定ベルト18a、18bの各々に挟まれて固定されている。このような軸材17の効果については後述する。
【0038】
このように構成された船舶航行阻害装置1は、展張状態において、図1の矢印で示す短手方向及び長手方向に向かう不審船に対して、ネット21がその不審船の航行を阻害する。特に、上述した通り、長手方向に向かう不審船に対しては、ネット21が水面5に沿って平面状に展張されるため、水面5での航行の阻害範囲が拡大することになる。又、複数の船舶航行阻害装置1を水面5上に並べて配置することによって、水面5での航行の阻害範囲を更に拡大させることができる。
【0039】
次に、このような展張状態から折畳み状態に移行する工程について説明する。
【0040】
図4は図1で示した展張状態の船舶航行阻害装置を折畳み状態にする工程を示した概略側面図である。
【0041】
まず(1)を参照して、展張状態の船舶航行阻害装置1のフロート11の内部から、図の矢印で示すように、注入バルブ23を介して空気を排出する。
【0042】
次に(2)を参照して、フロート11は主にゴムによって形成されているため、内部の空気が排出されると扁平状態となる。このような状態から、フロート11の軸材17側(図の右側)の端部を、軸材17を中心に巻き付ける。
【0043】
次に(3)を参照して、(2)の状態から更に軸材17を中心にフロート11を巻き付け続けると、フロート11の大部分が軸材17周りに巻き取られる。すると、船舶航行阻害装置1が折畳み状態となる。尚、フロート11の巻取りに伴って、フロート11に接続されている図示しない合成樹脂繊維よりなるネットも同時に巻き取られることになる。
【0044】
このようにして、船舶航行阻害装置1は折畳み状態となり、その大きさがコンパクトになると共に、船舶航行阻害装置1を構成する各部材は軽量であるため、トラック等の一般車両での運搬が可能になる。更に、車両等が走行できない場所においては、人力での運搬が可能となる。
【0045】
次に、このような折畳み状態から展張状態に移行する工程について説明する。
【0046】
図5は図4で示した折畳み状態の船舶航行阻害装置を展張状態にする第1工程を示した概略図であって、(1)は平面図に対応するものであって、(2)は側面図に対応するものであり、以下、図6及び図7において同様に対応する。図6は図5に続く図4で示した折畳み状態の船舶航行阻害装置を展張状態にする第2工程を示した概略図であり、図7はこれに続く船舶航行阻害装置を展張状態にする第3工程を示した概略図である。
【0047】
まず図5を参照して、水面5上に設置された折畳み状態の船舶航行阻害装置1のフロート11a、11bの各々の内部に、図示しない空気供給手段により注入バルブ23を介して空気を注入する。この時、フロート11a、11bの長手方向が標的Tを向くように位置を調整する。
【0048】
次に図6を参照して、フロート11a、11bに空気を注入し続けると、まず注入バルブ23側の端部から徐々に膨らみ始める。すると、フロート11a、11bの各々の内圧によって、フロート11a、11bは平行に、且つ軸材17周りの展張部分31a、31bの各々が軸材17を中心に回転しながら標的Tの方向へと展張する。従って、安定した展張動作となる。この時、フロート11a、11bに接続され、軸材17に巻き付けられているネット21も同時に展張することになる。
【0049】
ここで、軸材17は、その周りのフロート11a、11bの展張部分31a、31bが水中に沈まないような浮力を有するように設定されている。従って、(2)の二点鎖線で示すように、展張部分31a、31bが水中に沈んだ状態とはならず、水面5に沿って展張することになる。従って、フロート11a、11bの展張動作が更に安定する。
【0050】
又、フロート11a、11b間には、その間隔を保持するための保持材25が設置されているため、フロート11aとフロート11bとは、間隔Dを保持したまま展張する。従って、フロート11a、11bが安定して平行に展張すると共に、ネット21の水面の阻害範囲が確保されることになる。
【0051】
次に図7を参照して、図6の状態から更に空気を注入し続けると、フロート11a、11b内が空気で充満し、水面5上に全体が展開した状態で浮遊する。即ち、船舶航行阻害装置1の標的Tの方向への展張が完了する。
【0052】
このように、船舶航行阻害装置1のフロート11a、11bは、その内部に空気を注入することによって、ネット21を伴って水面5上に展張することになる。そのため、取扱いが容易であると共に、使用後においては折畳み状態にして回収することができるので、効率的な使用が可能となる。更には、空気注入速度を調整して、折畳み状態から短時間で速やかに展張状態にすることができる。
【0053】
図8はこの発明の第2の実施の形態による船舶航行阻害装置を示す断面図であって、第1の実施の形態の図2に対応するものである。
【0054】
図を参照して、この実施の形態による船舶航行阻害装置2にあっては、フロート11bの内部に液体33が注入されている点、及び軸材とフロート11a、11bの間隔を保持する保持材とロープとを備えていない点を除いては、第1の実施の形態による船舶航行阻害装置と同一である。
【0055】
即ち、一方(上方)のフロート11aには空気が注入されているため、水面5上に浮遊した状態となっている。そして、他方(下方)のフロート11bには液体33が注入されている。この液体33の比重は、ネット21が接続されたフロート11bが、水面5上に浮遊するフロート11aの水中の下方に位置するように設定されている。従って、フロート11bが水中に沈下し、フロート11aの下方に位置した状態となる。
【0056】
このように、フロート11bがフロート11aの水中の下方に位置することによって、各々に接続されているネット21は水面に直交するように展張されることになる。従って、航行の阻害範囲が水中に拡大するため、例えば水中を移動する潜水艦等に対して高い阻害効果を発揮する。
【0057】
尚、船舶航行阻害装置2においては、図5〜図7で示した第1の実施の形態における展張工程において、フロート11aには空気を注入すると同時に、フロート11bには上述した液体33を注入することで、フロート11a、11bを同時に展張することができる。従って、第1の実施の形態と同様、取扱いが容易であると共に、効率的な使用が可能となる。
【0058】
図9はこの発明の第3の実施の形態による船舶航行阻害装置を示す断面図であって、第2の実施の形態の図8に対応するものである。
【0059】
図を参照して、この実施の形態による船舶航行阻害装置3にあっては、水中に位置する他方のフロートに代えて錘35が取付けられている点を除いては、第2の実施の形態による船舶航行阻害装置と同一である。
【0060】
即ち、水面5上に浮遊するフロート11の反対側のネット21の端部には、スナップフック28を介して錘35が接続されている。そして、錘35は、例えば長手方向(図の紙面を直交する方向)に複数取付けられる等、その重量によってフロート11の水中の下方に位置するように設定される。従って、第2の実施の形態と同様、ネット21による航行の阻害範囲が水中に拡大することになる。
【0061】
尚、上記の各実施の形態では、船舶航行阻害装置は不審船等の船舶の航行を阻害するために使用されているが、例えば、港湾や海岸に泳いで侵入しようとする不審者の移動を阻害する等、人に対しても同様に適用できることは言うまでもない。
【0062】
又、上記の各実施の形態では、浮力体としてフロートが使用されているが、流体の注入が可能で、且つ折畳み自在であると共に、流入が注入されると展張し、展張状態において少なくともその一部が水面上に浮遊できるものであれば、他の形状及び素材(例えば、合成樹脂等)の浮力体を使用しても良い。
【0063】
更に、上記の各実施の形態では、水面上に浮遊するフロートには空気が注入されているが、展張状態において対象となる水面(海面)に浮遊できれば、他の気体及び比重の小さな液体、即ち流体が注入されていても良い。
【0064】
更に、上記の各実施の形態では、折畳み状態においては軸材にフロート及びネットを巻き付けた形状であるが、展張状態と比較してコンパクトになれば、他の形状で折畳まれていても良い。
【0065】
更に、上記の各実施の形態では、策材としてネットが使用されているが、例えばロープ、ワイヤー又は金網等、船舶の航行を阻害すると共に、折畳み自在のものであれば、他の部材のものを使用しても良い。
【0066】
更に、上記の各実施の形態では、ネットはスナップフックを介してフロート又は錘に接続されているが、フロート又は錘に対して確実に接続できるものであれば、他の手段又は部材によって接続されていても良い。
【0067】
更に、上記の各実施の形態では、船舶航行阻害装置はその内部に空気が注入されたフロートによって水面上に浮遊しているが、水面上に浮遊するフロートの破損に備えて、例えば球状又は筒状の発泡スチロール等の浮遊体を、ロープ等を介して接続しても良い。この場合、該浮遊体は、水面上に浮遊するフロートに浮力を発生させるためにその内部に注入された流体が全て排出された際に、少なくともその一部が水面上に浮遊する浮力を有するように設定する必要がある。このような浮遊体を更に備えることによって、水面上を浮遊するフロートが破損して内部の空気が抜けても、船舶航行阻害装置全体が水中に沈むことがない。従って、使用上の信頼性が向上する。更に、折畳み状態においては、浮遊体はフロートやネット等と共に巻き取る、又は巻き取り状態のフロートから外方側に飛び出すようにして配置すれば良い。
【0068】
更に、上記の各実施の形態では、船舶航行阻害装置は単体で使用されているが、二つの船舶航行阻害装置を連結して構成しても良い。即ち、例えば第1の実施の形態では、第1の連結方法として、フロートの長手方向の他方端部の各々に注入バルブを更に取付けた第1の船舶航行阻害装置に対して、この他方端部の注入バルブの各々と、通常の第2の船舶航行阻害装置のフロートの長手方向の一方端部の注入バルブの各々とを、流体が通過できるように連結すれば良い。このように第1及び第2の船舶航行阻害装置を連結する手順としては、例えば、第2の船舶航行阻害装置を図4の(3)で示したようにロール状に巻き取った後、第2の船舶航行阻害装置のフロートの注入バルブの各々と第1の船舶航行阻害装置のフロートの他方端部の注入バルブの各々とを連結する。その後、巻き取られた第2の船舶航行阻害装置に重ねて第1の船舶航行阻害装置を巻き取って、これらを折畳み状態にすれば良い。そして、展張時においては、第1の船舶航行阻害装置のフロートの一方端部の注入バルブの各々から流体を注入すれば、第1の船舶航行阻害装置に加えて、第2の船舶航行阻害装置のフロート等が展張することになる。従って、航行の阻害範囲が長手方向に容易に拡大する。尚、第1及び第2の船舶航行阻害装置の連結のみに限らず、長手方向に対して更に第3の船舶航行阻害装置を連結させても良い。又、このような連結方法は、第2及び第3の実施の形態においても同様に適用することができる。
【0069】
更に、第2の連結方法としては、例えば、第1の船舶航行阻害装置を水面上に展張させると共に、第2の船舶航行阻害装置を第1の船舶航行阻害装置の近傍の水面上又は海岸等に展張させる。その後、第2の船舶航行阻害装置を第1の船舶航行阻害装置の手前側(使用者側)に位置させ、これらのフロートの長手方向の端部の各々を連結する。そして、手前側の第2の船舶航行阻害装置を奥側の方向(展張方向)へ押すことによって、第1及び第2の船舶航行阻害装置を配置する。このように第1及び第2の船舶航行阻害装置を連結して配置することによって、新たな部材を取付ける等の手間がなく、航行の阻害範囲が長手方向に容易に拡大する。尚、第1の連結方法と同様、第1及び第2の船舶航行阻害装置の連結のみに限らず、長手方向に対して更に第3の船舶航行阻害装置を連結させても良いと共に、第2及び第3の実施の形態においても同様に適用することができる。
【0070】
更に、上記の第1及び第2の実施の形態では、一対の円筒形状のフロートを備えているが、一対のフロートが平行に展張可能であれば、フロートは他の形状であっても良い。又、第1の実施の形態においては、どちらか一方のフロートが一つあれば、他方のフロートは無くても良い。更に、第1の実施の形態においては、フロートの各々が平行に配置されると共に、フロートの各々の間にネットが配置されていれば、フロートは三つ以上設けられていても良い。
【0071】
更に、上記の第2及び第3の実施の形態では、その内部に特定の液体が注入されたフロート又は錘によって、策材であるネットが水面に直交するように展張されているが、例えば、策材にワイヤー等を使用し、策材単体で水中に沈下するように構成しても良い。
【0072】
更に、上記の第1の実施の形態では、円筒形状の軸材を備えているが、例えば四角筒形状又は円柱状等、フロート間を架け渡す柱状に形成されていれば、他の形状であっても良い。又は、軸材は無くても良い。
【0073】
更に、上記の第1の実施の形態では、軸材はその内部に空気が注入されることで浮力を有しているが、折畳み状態において軸材周りのフロートの展張部分が水中に沈まなければ、他の手段又は素材(例えば、発泡スチロール等の合成樹脂)による浮力を有していても良い。又は、軸材はこのような浮力を有するものでなくても良い。
【0074】
更に、上記の第1の実施の形態では、軸材が固定ベルトによってフロートに固定されているが、例えば、軸材をフロートに接着する等、他の手段で固定されていても良い。又は、軸材をフロートに固定せず、折畳み状態では展張部分の中心に設置され、展張状態においてはフロートから離脱するように構成しても良い。
【0075】
更に、上記の第1の実施の形態では、フロート間隔を保持するための保持材及びロープを備えているが、例えば、軸材をフロートに接着等で固定すると共に、展張時において注入箇所のフロート間隔を保持することによって全体のフロート間隔を保持する等、他の手段又は部材によってフロート間隔が保持されていても良い。又は、このような保持材及びロープは無くても良い。
【0076】
更に、上記の第1の実施の形態では、一対のフロートはどちらも水面上に浮遊しているが、一方のフロートに対して、空気が注入された状態の一方のフロートが他方のフロートの水中の下方に位置するようにその重量が設定された錘を取付けても良い。このような錘を取付けることによって、ネットが水面に沿って平面状に展張された状態から、第2及び第3の実施の形態と同様、水面に直交する展張状態へと変化させることができる。
【0077】
更に、上記の第1の実施の形態では、ネットは水面に沿って平面状にのみ展張されているが、例えば、一方のフロートに対して、第2の実施の形態のように、ネットを介して特定の液体が注入されたフロートを更に取付けても良い。このように構成することによって、ネットが水面に直交する状態にも展張することになり、航行の阻害範囲が水中にも拡大する。尚、一対のフロートの両方をこのように構成しても良いし、第3の実施の形態のように、一方のフロートに対して、ネットを介して特定の重量の錘を取付けるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0078】
1〜3…船舶航行阻害装置
5…水面
11…フロート
17…軸材
21…ネット
23…注入バルブ
31…展張部分
33…液体
35…錘
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶航行阻害装置であって、
船舶の航行を阻害するための策材と、
前記策材が接続され、流体の注入が可能な浮力体とを備え、
前記策材と前記浮力体とは折畳み自在に構成されると共に、前記浮力体は、前記流体が注入された際展張され、少なくともその一部が水面上に浮遊する、船舶航行阻害装置。
【請求項2】
前記浮力体は平行に展張可能であると共に、各々が水面上を浮遊する一対のフロートよりなり、
前記策材は、前記フロートの各々の間に配置される、請求項1記載の船舶航行阻害装置。
【請求項3】
前記フロートの各々は長手方向に延びる筒状に形成され、
前記フロートの各々の前記長手方向の一方端部には、気体の注入口が形成され、
前記フロートの各々の前記長手方向の他方端部の近傍には、前記長手方向に直交する方向に架け渡す柱状の軸材を更に備えた、請求項2記載の船舶航行阻害装置。
【請求項4】
前記軸材は、前記フロートの前記軸材周りの展張部分が水中に沈まないような浮力を有する、請求項3記載の船舶航行阻害装置。
【請求項5】
前記浮力体は平行に展張可能である一対のフロートよりなり、
前記策材は、前記フロートの各々の間に配置され、
前記フロートの一方には気体が注入され、
前記フロートの他方には液体が注入され、
前記液体の比重は、前記フロートの前記他方が前記フロートの前記一方の水中の下方に位置するように設定される、請求項1記載の船舶航行阻害装置。
【請求項6】
前記策材の端部であって前記浮力体の反対側には、錘が取付けられ、
前記錘の重量は、前記錘が前記浮力体の水中の下方に位置するように設定される、請求項1記載の船舶航行阻害装置。
【請求項7】
前記浮力体に接続された浮遊体を更に備え、
前記浮遊体は、前記浮力体に浮力を発生させるために注入された前記流体が全て排出された際に、少なくともその一部が水面上に浮遊する浮力を有する、請求項1から請求項6のいずれかに記載の船舶航行阻害装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171446(P2012−171446A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34224(P2011−34224)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)