説明

船舶

【課題】操船ステーションを切換える際、リモコン装置の切換処理を行うための装置や制御系を簡単に構成でき、切換処理を行うためのシステムを簡素化し易い船舶を提供する。
【解決手段】船舶推進装置11、12に第1リモコン装置17が接続されると共に第1リモコン装置17に第2リモコン装置21が接続され、第1及び第2リモコン装置17、21にそれぞれ船舶推進装置11、12を操作するためのリモコンレバー29、30、51、52とリモコン切換スイッチ45、65とが設けられてなり、第1リモコン装置17には切換判定処理部が設けられ、この切換判定処理部が、第1及び第2リモコン装置17、21のリモコンレバー29、30、51、52がニュートラル状態で、リモコン切換スイッチ45、65がオン状態のとき、第1及び第2リモコン装置17、21の切換処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船体の互いに異なる位置に設けられた操船ステーションにそれぞれ船舶推進装置を操作するためのリモコン装置が設けられ、操船ステーションの切換に従ってリモコン装置の切換処理を行うことが可能な船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船尾に船舶推進装置である船外機が配置され、船体の中央にメインステーションが配設され、このメインステーションの上方にサブステーションが配設された船舶が多数知られている。
【0003】
このような船舶では、各操船ステーションに船外機を操作するための操作レバーが設けられており、一機又は多機の同一の船外機のそれぞれを、各ステーションのレバーにより操作可能となっている。この操船ステーションは、操船者の選択により任意に切換て使用されるもので、切換えられた操船ステーションのレバー操作により全ての船外機が操作可能に構成されている。
【0004】
ここでは、操作レバーと船外機とが機械的にワイヤー等により連結されている場合、一方の操船ステーションのレバーを操作すると他方のステーションのレバーが従動するため、同一の船外機を操作する複数のレバーが常に同一の操作状態にすることができる。
【0005】
ところが、レバーの操作量を操作信号として船外機の制御部に伝達するようにしたリモコン装置を使用した船舶では、同一の船外機を操作する複数のリモコンレバーをそれぞれ独立に操作できるため、一方のリモコンレバーの操作量と他方のリモコンレバーの操作量とが異なる操作状態となることが起こり易い。
【0006】
同一の船外機を操作する複数のリモコンレバー間で異なる操作状態となると、操船ステーションを切換えた際、船外機に入力される操作信号が急激に変化するため、切換時に操船し難いという支障が生じる。そのため、このような船舶では、操船ステーションの切換の際、船外機に入力される操作信号が急激に変化することを防止するための提案がなされている。
【0007】
例えば、下記特許文献1では、メインステーション及びサブステーションにそれぞれメインリモコン装置及びサブリモコン装置を設け、このメインリモコン装置及びサブリモコン装置に操作位置検出装置を設けて操作信号を送信し、これらの操作信号を受信するコントロール装置を設けて、このコントロール装置によって船外機を電動駆動装置により制御しており、ステーションを切換る際に、メインリモコン装置及びサブリモコン装置の両者をニュートラル状態にしなければ切換できないように構成している。
【特許文献1】特許第3019984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなリモコン装置を用いた船舶では、各操船ステーションの各リモコン装置とコントロール装置とをそれぞれ接続し、各リモコンユニットからの操作信号をコントロール装置で処理することにより船外機を動作させるため、各リモコンユニットから船外機を動作させるコントロール装置まで、2系統の接続及び制御系が必要であり、接続及び制御系が輻輳し易く、システムが複雑化し易いという問題点があった。特に、複数の船外機を操作する船舶では、著しく複雑になり易かった。
【0009】
そこで、この発明では、このような課題を解決するべく、操船ステーションを切換える際、リモコン装置の切換処理を行うための装置や制御系を簡単に構成でき、切換処理を行うためのシステムを簡素化し易い船舶を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、船舶推進装置に第1リモコン装置が接続されると共に該第1リモコン装置に第2リモコン装置が接続され、前記第1及び第2リモコン装置にそれぞれ前記船舶推進装置を操作するためのリモコンレバーとリモコン切換スイッチとが設けられた船舶であって、前記第1リモコン装置には切換判定処理部が設けられ、該切換判定処理部は、前記第1及び第2リモコン装置のリモコンレバーが共にニュートラル状態で、前記リモコン切換スイッチがオン状態のとき、前記第1及び第2リモコン装置の切換処理を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記第1及び第2リモコン装置は、それぞれ複数の前記船舶推進装置を操作可能な複数の前記リモコンレバーと、複数の前記切換判定処理部を有すると共に、前記複数の切換判定処理部間が通信回線により接続されてなり、前記各切換判定処理部は、同一の前記船舶推進装置を操作する前記第1及び第2リモコン装置の前記リモコンレバーが共にニュートラル状態で、前記リモコン切換スイッチがオン状態のとき、それぞれ判定状態となり、該判定状態で、前記通信回線を介して前記第1及び第2リモコン装置の他の全ての前記リモコンレバーがニュートラル状態であることが伝達されたとき、該切換判定処理部に対応する前記リモコンレバーについての前記切換処理を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記複数の船舶推進装置にそれぞれメインスイッチを備え、前記メインスイッチがオン状態の前記船舶推進装置に対応する前記切換判定処理部で前記切換処理を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明に加え、前記各切換判定処理部には前記判定状態を維持する判定時間が設定され、該判定時間内に他の全ての前記リモコンレバーがニュートラル状態であることが伝達されないとき、前記切換処理を行わないことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記切換処理後に少なくとも一つの前記切換判定処理部が前記第1リモコン装置を選択しているとき、前記各切換判定処理部を強制的に前記第1リモコン装置に切換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、切換判定処理部は第1及び第2リモコン装置のリモコンレバーがニュートラル状態か否かの判定を行うので、各リモコンレバーの操作量を検出して処理する必要がなく、判定が容易である。しかも、第2リモコン装置が第1リモコン装置に接続されると共に第1リモコン装置が船舶推進装置に接続されることにより、第2リモコン装置のリモコンレバーの操作が第1リモコン装置に伝達される船舶において、第1リモコン装置に切換判定処理部が設けられているので、第2リモコン装置で切換判定処理を行う必要がないと共に、第1リモコン装置では第2リモコン装置のリモコンレバーの状態を容易に把握でき、切換処理を行うための装置や制御系を簡単に構成し易い。そのため、切換処理を行うためのシステムを簡素化することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、複数の切換判定処理部を有し、各切換判定処理部毎に切換処理を行うようにしたので、複数の切換判定処理部の装置や制御系を同じにすることができ、部品の共通化を図り易い。
【0017】
しかも、複数の切換判定処理部毎に切換処理を行っても、複数の切換判定処理部間が通信回線により接続されて、判定状態で他の全てのリモコンレバーの状態に従って切換処理を行うため、複数のリモコンレバー間で異なるリモコン装置に切換処理が行われることを防止することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、複数の船舶推進装置のうち、メインスイッチがオン状態の船舶推進装置に対応する切換判定処理部だけで切換処理を行うので、使用されていない船舶推進装置についての切換処理を行う必要がなく、切換処理を行うためのシステムをより簡素化することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、判定状態を維持する判定時間内に、通信回線を介して他の全てのリモコンレバーが切換可能であることが伝達されないとき、他のリモコンレバーが切換可能な状態でないと擬制して切換処理が行われないため、切換可能な状態でないことを通信回線を介して伝達する必要がなく、切換処理を行うためのシステムをより簡素化することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、切換処理後に少なくとも一つの切換判定処理部が第1リモコン装置を選択しているとき、強制的に第1リモコン装置に切換えるので、切換処理において異常が生じ、一部で第1リモコン装置が選択され、他の一部又は全部で第2リモコン装置が選択されるような状態が発生しても、すぐに両者を強制的に同じにすることができるため、安全性を確保し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[実施の形態1]
以下、この発明の船舶を図を用いて説明する。図1乃至図4はこの実施の形態の船舶を示す。
【0022】
まず、構成を説明すると、この実施の形態の船舶は、図1及び図2に示すように、船体10の船尾に「船舶推進装置」としての2基の船外機11、12が取り付けられ、この船体10には「第1ステーション」としてのメインステーション14及び「第2ステーション」としてのサブステーション15からなる2つの操船席が設けられている。メインステーション14には、「第1リモコン装置」としてのメイン側リモコン装置17、キースイッチ装置18及びハンドル装置19等が配置されている。サブステーション15には、「第2リモコン装置」としてのサブ側リモコン装置21、キースイッチ装置22及びハンドル装置23等が配置されている。
【0023】
メインステーション14のメイン側リモコン装置17には、図3に示すように、リモコン本体26内に左側の船外機11用の左用メインリモコン側ECU27、及び、右側の船外機12用の右用メインリモコン側ECU28が内蔵されると共に、各船外機11、12に対応して、スロットル、シフト操作を行う一対のリモコンレバー29、30が設けられ、これらリモコンレバー29、30のそれぞれの位置を検出する位置センサ31、32が設けられ、これら各位置センサ31、32が各メインリモコン側ECU27、28にそれぞれ2系統の信号回路bを介して接続されている。
【0024】
この左用メインリモコン側ECU27及び右用メインリモコン側ECU28には、メイン側リモコン装置17とサブ側リモコン装置21とを択一的に切り換えるための処理ステップがそれぞれ組み込まれており、各メインリモコン側ECU27、28内にそれぞれ「切換判定処理部」が含まれた構成となっている。
【0025】
また、それら各メインリモコン側ECU27、28には、それぞれPTT(パワートリム&チルト)スイッチ33、34が信号回路を介して接続されている。
【0026】
それら左右用メインリモコン側ECU27、28には、キースイッチ装置18が接続されている。このキースイッチ装置18には、各メインリモコン側ECU27、28に対応してそれぞれメインスイッチ37、38、始動スイッチ39、40、停止スイッチ41、42、ブザー43、44が設けられている。更に、このキースイッチ装置18には、船外機11、12に対してメイン側リモコン装置17を有効に機能させるために操作される押しボタン等からなる「リモコン切換スイッチ」としてのメインステーション切換スイッチ45が設けられている。そして、これらが信号回路bを介してメインリモコン側ECU27、28に接続されている。
【0027】
メインステーション14のハンドル装置19には、操舵を行うハンドル46が設けられ、図示していないがハンドル46の回転位置(回転角度位置)が位置センサにより検出され、内蔵されたハンドル側ECUに伝達されるようになっている。
【0028】
そして、このハンドル側ECUが前記両メインリモコン側ECU27、28に信号線としてのDBWCANケーブルを介して接続されている。ここで、DBWとは、Drive−By−Wireの略であり、機械的な接続で行っていたものを電気的接続で行う操縦装置を言い、又、CANとは、Controller Area Networkの略である。
【0029】
一方、サブステーション15のサブ側リモコン装置21は、リモコン本体48内に左側の船外機11用の左用サブリモコン側ECU49、及び、右側の船外機12用の右用サブリモコン側ECU50が内蔵されると共に、メインステーション14のメイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30に対応する一対のリモコンレバー51、52が設けられ、これらリモコンレバー51、52のそれぞれの位置を検出する位置センサ53、54が設けられ、これら各位置センサ53、54が各サブリモコン側ECU49、50にそれぞれ2系統の信号回路bを介して接続されている。
【0030】
この左用サブリモコン側ECU49及び右用サブリモコン側ECU50は、それぞれ位置センサ53、54からの検出信号を専らメイン側リモコン装置17の左用メインリモコン側ECU27及び右用メインリモコン側ECU28に伝達するように構成されている。この左用サブリモコン側ECU49及び右用サブリモコン側ECU50は、前述のような「切換判定処理部」を有していない。
【0031】
また、それら各サブリモコン側ECU49、50には、それぞれPTT(パワートリム&チルト)スイッチ55、56が信号回路を介して接続されている。
【0032】
左右用サブリモコン側ECU49、50には、キースイッチ装置22が接続されている。このキースイッチ装置22には、各サブリモコン側ECU49、50に対応してそれぞれ始動スイッチ59、60、停止スイッチ61、62、ブザー63、64が設けられている。更に、このキースイッチ装置22には、船外機11、12に対してサブ側リモコン装置21を有効に機能させるために操作される押しボタン等からなる「リモコン切換スイッチ」としてのサブステーション切換スイッチ65が設けられている。そして、これらが信号回路bを介してサブリモコン側ECU49、50に接続されている。
【0033】
サブステーション15のハンドル装置23には、操舵を行うハンドル66が設けられ、図示していないがハンドル66の回転位置(回転角度位置)が位置センサにより検出され、内蔵されたハンドル側ECUに伝達されるようになっている。
【0034】
また、メイン側及びサブ側リモコン装置17、21では、両メインリモコン側ECU27、28と両サブリモコン側ECU49、50とが接続されている。即ち、左用サブリモコン側ECU49が電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して左用メインリモコン側ECU27に接続されると共に、右用サブリモコン側ECU50が電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して右用メインリモコン側ECU28に接続されている。更に、左用メインリモコン側ECU27と右用メインリモコン側ECU28間がECU間通信回線gにより接続されている。
【0035】
そして、左用メインリモコン側ECU27が左側の船外機11に電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して接続されると共に、右用メインリモコン側ECU28が右側の船外機12に電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して接続されている。なお、これらの船外機11、12には3個のバッテリー69が接続されている。
【0036】
各船外機11、12は、スロットル開度センサからのスロットル開度、クランク角センサからのエンジン回転数、及び他の各センサからの検出値に基づき、各メインリモコン側ECU27、28から電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して送信される制御信号により、それぞれ燃料噴射量、噴射時期、及び点火時期等が制御されるようになっている。
【0037】
この各船外機11、12からは、各メインリモコン側ECU27、28にDBWCANケーブルeを介して、スロットル開度、エンジン回転数等各種の検出値(運転情報)が送信されるようになっており、両メインリモコン側ECU27、28間でも、それらの運転情報がECU間通信回線gを介して相互に送受信されるようになっている。
【0038】
各メインリモコン側ECU27、28の切換判定処理部では、切換処理により択一的に選択されたメイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30又はサブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52の一方の操作に基づき、各船外機11、12からの運転情報を用いてエンジン回転数差が目標値に収まるように、各船外機11、12に制御信号を送信し、各船外機11、12の燃料噴射量、噴射時期、及び点火時期等を制御している。
【0039】
この船舶では、メインリモコン側ECU27、28に含まれている切換判定処理部は、メイン側リモコン装置17とサブ側リモコン装置21とを択一的に切り換えるための切換処理を次のような流れで行えるように構成されている。
【0040】
図4に示すように、まず、キースイッチ装置18のメインスイッチ37、38をON状態にしたスタート時に、例えばメイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30の操作が有効なメインステーション制御状態S101となったとする。
【0041】
そして、メインステーション14からサブステーション15に切換えるときには、メイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30とサブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52をニュートラル状態にしてサブステーション切換スイッチ65をONにする。
【0042】
すると、左用メインリモコン側ECU27では、メイン側リモコン装置17の左用のリモコンレバー29がニュートラル状態であると共にサブ側リモコン装置21の左用のリモコンレバー51がニュートラル状態であること、及びサブステーション切換スイッチ65がONであることの条件が満たされたとき、判定状態S102となる。
【0043】
また、右用メインリモコン側ECU28では、メイン側リモコン装置17の右用のリモコンレバー30がニュートラル状態であると共にサブ側リモコン装置21の右用のリモコンレバー52がニュートラル状態であること、及びサブステーション切換スイッチ65がONであることの条件が満たされたとき、判定状態S102となる。
【0044】
判定状態S102では、各メインリモコン側ECU27、28では、それぞれこの判定状態S102を維持する判定時間が予め設定されており、その判定時間内に、ECU間通信を介して、他方のメインリモコン側ECU27、28から伝達される情報が判定される。
【0045】
ここでは、各メインリモコン側ECU27、28に対応するメインスイッチ37、38がON状態であるため、左用メインリモコン側ECU27では、判定時間内に右用メインリモコン側ECU28から、メイン側リモコン装置17の右用のリモコンレバー30及びサブ側リモコン装置21の右用のリモコンレバー52がニュートラル状態であることを示す切換可能情報が伝達されたとき、即ち、右用メインリモコン側ECU28が判定状態S102であるとき、メイン側リモコン装置17からサブ側リモコン装置21への切換処理が行われ、サブ側リモコン装置21の左用のリモコンレバー51の操作が有効なサブステーション制御状態S103となる。
【0046】
また、右用メインリモコン側ECU28では、判定時間内に左用メインリモコン側ECU27から、メイン側リモコン装置17の左用のリモコンレバー29及びサブ側リモコン装置21の左用のリモコンレバー51がニュートラル状態であることを示す切換可能情報が伝達されたとき、即ち、左用メインリモコン側ECU27が判定状態S102であるとき、メイン側リモコン装置17からサブ側リモコン装置21への切換処理が行われ、サブ側リモコン装置21の右用のリモコンレバー52の操作が有効なサブステーション制御状態S103となる。
【0047】
なお、メインスイッチ37、38の何れか一方がOFF状態のときには、ECU間通信を介して伝達される情報が存在せず、そのままメイン側リモコン装置17からサブ側リモコン装置21への切換処理が行われる。また、この実施の形態では、他方のメインリモコン側ECU27、28が既にサブステーション制御状態S103になっているときには、メイン側リモコン装置17からサブ側リモコン装置21への切換処理が行われる。
【0048】
一方、この判定状態S102では、メインスイッチ37、38の両方がON状態で判定時間内に各メインリモコン側ECU27、28に切換可能情報が伝達されないとき、この実施の形態では、切換可能情報が伝達されないときであって他方のメインリモコン側ECU27、28がメインステーション制御状態S101であるか、他方のメインリモコン側ECU27、28が後述する切換判定状態S104の場合には、メイン側リモコン装置17からサブ側リモコン装置21への切換処理は行われず、メインステーション制御状態S101に復帰する。
【0049】
このような判定処理では、左用メインリモコン側ECU27及び右用メインリモコン側ECU28の両方が判定状態S102であるにも関わらず、例えばECU間通信の通信遅れなどにより、判定時間内に一方の切換可能情報が他方に伝達されないような特殊な状況が生じた場合、両メインリモコン側ECU27、28間で異なるステーション制御状態S101、S103に切換処理が行わることがある。
【0050】
そのため、この実施の形態では、各メインリモコン側ECU27、28でサブステーション制御状態S103に切換処理が行われた直後、他方がメインステーション制御状態S101である場合に、強制的にサブステーション制御状態S103からメインステーション制御状態S101に切換処理が行なわれる。
【0051】
そして、これらにより、メインステーション14からサブステーション15に切換える際の各メインリモコン側ECU27、28の切換処理が完了する。
【0052】
一方、サブステーション15からメインステーション14に切換えるときには、サブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52とメイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30をニュートラル状態にしてメインステーション切換スイッチ45をONにする。
【0053】
すると、左用メインリモコン側ECU27では、サブ側リモコン装置21の左用のリモコンレバー51がニュートラル状態であると共にメイン側リモコン装置17の左用のリモコンレバー29がニュートラル状態であること、及びメインステーション切換スイッチ45がONであることの条件が満たされたとき、判定状態S104となる。
【0054】
また、右用メインリモコン側ECU28では、サブ側リモコン装置21の右用のリモコンレバー52がニュートラル状態であると共にメイン側リモコン装置17の右用のリモコンレバー30がニュートラル状態であること、及びメインステーション切換スイッチ45がONであることの条件が満たされたとき、判定状態S104となる。
【0055】
判定状態S104では、各メインリモコン側ECU27、28では、それぞれこの判定状態S104を維持する判定時間が予め設定されており、その判定時間内に、ECU間通信を介して、他方のメインリモコン側ECU27、28から伝達される情報が判定される。
【0056】
ここでは、各メインリモコン側ECU27、28に対応するメインスイッチ37、38がON状態であるため、左用メインリモコン側ECU27では、判定時間内に右用メインリモコン側ECU28から、サブ側リモコン装置21の右用のリモコンレバー52及びメイン側リモコン装置17の右用のリモコンレバー30がニュートラル状態であることを示す切換可能情報が伝達されたとき、即ち、右用メインリモコン側ECU28が判定状態S104であるとき、サブ側リモコン装置21からメイン側リモコン装置17への切換処理が行われ、メイン側リモコン装置17の左用のリモコンレバー29の操作が有効なメインステーション制御状態S101となる。
【0057】
また、右用メインリモコン側ECU28では、判定時間内に左用メインリモコン側ECU27から、サブ側リモコン装置21の左用のリモコンレバー51及びメイン側リモコン装置17の左用のリモコンレバー29がニュートラル状態であることを示す切換可能情報が伝達されたとき、即ち、左用メインリモコン側ECU27が判定状態S104であるとき、サブ側リモコン装置21からメイン側リモコン装置17への切換処理が行われ、メイン側リモコン装置17の右用のリモコンレバー30の操作が有効なメインステーション制御状態S101となる。
【0058】
なお、メインスイッチ37、38の何れか一方がOFF状態のときには、ECU間通信を介して伝達される情報が存在せず、そのままサブ側リモコン装置21からメイン側リモコン装置17への切換処理が行われる。また、この実施の形態では、他方のメインリモコン側ECU27、28が既にメインステーション制御状態S101になっているときには、サブ側リモコン装置21からメイン側リモコン装置17への切換処理が行われる。
【0059】
一方、この判定状態S102では、メインスイッチ37、38の両方がON状態で判定時間内に各メインリモコン側ECU27、28に切換可能情報が伝達されないとき、この実施の形態では、切換可能情報が伝達されないときであって他方のメインリモコン側ECU27、28がサブステーション制御状態S103であるか、他方のメインリモコン側ECU27、28が前述の切換判定状態S102の場合には、サブ側リモコン装置21からメイン側リモコン装置17への切換処理は行われず、サブステーション制御状態S103に復帰する。
【0060】
このような判定処理で、左用メインリモコン側ECU27及び右用メインリモコン側ECU28の両方が判定状態S104であるにも関わらず、例えばECU間通信の通信遅れなどにより、判定時間内に一方の切換可能情報が他方に伝達されないような特殊な状況が生じた場合、両メインリモコン側ECU27、28間で異なるステーション制御状態S101、S103に切換処理が行わることがある。
【0061】
そのような場合、サブステーション制御状態S103となったメインリモコン側ECU27、28の一方は、サブステーション制御状態S103に切換処理が行われた直後、他方がメインステーション制御状態S101であるため、上述と同様に強制的にサブステーション制御状態S103からメインステーション制御状態S101に切換処理が行なわれる。
【0062】
そして、これらにより、サブステーション15からメインステーション14に切換える際の各メインリモコン側ECU27、28の切換処理が完了する。
【0063】
以上のような船舶によれば、各メインリモコン側ECU27、28に含まれる切換判定処理部が、両リモコン装置17、21の各リモコンレバー29、30、51、52がニュートラル状態か否かの判定を行うので、各リモコンレバー29、30、51、52の操作量を検出して処理する必要がなく、判定が容易である。
【0064】
しかも、サブ側リモコン装置21がメイン側リモコン装置17に接続されると共にメイン側リモコン装置17が船外機11、12に接続されることにより、サブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52の操作がメイン側リモコン装置17に伝達される船舶において、メイン側リモコン装置17の各メインリモコン側ECU27、28に切換判定処理部が設けられているので、メイン側リモコン装置17ではサブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52の状態を容易に把握でき、サブ側リモコン装置21で切換処理を行う必要がなく、装置や制御系を簡単に構成し易い。その結果、切換処理を行うためのシステムを簡素化することができる。
【0065】
また、複数の船外機11、12に対応する複数のメインリモコン側ECU27、28に切換判定処理部が設けられ、各メインリモコン側ECU27、28毎に切換処理を行うので、複数のメインリモコン側ECU27、28の装置や制御系を同じにすることができ、部品の共通化を図り易い。
【0066】
しかも、複数のメインリモコン側ECU27、28毎に切換処理を行っても、複数のメインリモコン側ECU27、28がECU間通信回線gにより接続されて、判定状態S102、S104で他の全てのリモコンレバー29、30、51、52の状態に従って切換処理を行うため、左用と右用のリモコンレバー29、30、51、52間でメイン側リモコン装置17とサブ側リモコン装置21とに異なる切換処理が行われることを防止し易い。
【0067】
更に、オン状態の船外機11、12についてのメインリモコン側ECU27、28だけで切換処理を行うので、使用されていない船外機11、12についての切換処理を行う必要がなく、システムをより簡素化することができる。
【0068】
また、判定状態S102、S104を維持する判定時間内に、ECU間通信回線gを介して他の全てのリモコンレバー29、30、51、52が切換可能であることが伝達されないとき、他のリモコンレバー29、30、51、52が切換可能な状態でないと擬制して切換処理を行わないため、切換可能な状態でないことをECU間通信回線gを介して伝達する必要がなく、切換処理を行うためのシステムをより簡素化することができる。
【0069】
更に、切換処理後に少なくとも一つのメインリモコン側ECU27、28がメイン側リモコン装置17を選択しているとき、強制的にメイン側リモコン装置17に切換えるので、切換処理において通信遅れ等の異常により、メインリモコン側ECU27、28間で異なるステーション制御状態S101、S103が選択されるような状態が発生しても、強制的に同じにすることができ、安全性を確保し易い。
[実施の形態2]
【0070】
図5は、この実施の形態2の船舶のリモコン装置及び船外機の概略の接続状態を示している。
【0071】
この船舶では、3機の船外機71、72、73を有し、この船外機71、72、73をメインステーション74及びサブステーション75に設けられたメイン側リモコン装置76及びサブ側リモコン装置77により操作できるように構成されている。
【0072】
メイン側リモコン装置76には、一対のリモコンレバー78、79が設けられるとともに、3機の船外機71、72、73に対応する3個のメインリモコン側ECU81、82、83が設けられ、一方のリモコンレバー78の位置センサーがメインリモコン側ECU81、82に続されると共に他方のリモコンレバー79の位置センサーがメインリモコン側ECU82、83に接続されており、メインリモコン側ECU81、82、83がそれぞれ対応する船外機71、72、73に接続されている。
【0073】
一方、サブ側リモコン装置77には、一対のリモコンレバー84、85が設けられるとともに、3つのメインリモコン側ECU81、82、83に対応する3個のサブリモコン側ECU86、87、88が設けられ、一方のリモコンレバー84の位置センサーがサブリモコン側ECU86、87に接続されると共に他方のリモコンレバー85の位置センサーがサブリモコン側ECU87、88に接続されている。そして、各サブリモコン側ECU86、87、88がそれぞれ対応するメインリモコン側ECU81、82、83に接続されており、一対のリモコンレバー84、85の操作がメインリモコン側ECU81、82、83に伝達されて、3機の船外機71、72、73を制御できるようになっている。
【0074】
メインステーション74及びサブステーション75の各キースイッチ装置には、それぞれメインステーション切換スイッチ89及びサブステーション切換スイッチ91が設けられており、それぞれメインリモコン側ECU81、82、83及びサブリモコン側ECU86、87、88に接続されている。
【0075】
また、この実施の形態2においてもメインリモコン側ECU81、82、83内に、それぞれ「切換判定処理部」が含まれた構成となっていると共に、メインリモコン側ECU81、82、83間がECU通信回線により接続されて通信可能となっている。
【0076】
その他は、実施の形態1と同様である。
【0077】
このような船舶においても、各メインリモコン側ECU81、82、83に含まれる切換判定処理部が、両リモコン装置76、77各リモコンレバー78、79、84、85がニュートラル状態か否かの判定を行うので、各リモコンレバー78、79、84、85の操作量を検出して処理する必要がなく、判定が容易である。
【0078】
しかも、サブ側リモコン装置77がメイン側リモコン装置76に接続されると共にメイン側リモコン装置76が船外機71、72、73に接続されることにより、サブ側リモコン装置77のリモコンレバー84、85の操作がメイン側リモコン装置76に伝達される船舶において、メイン側リモコン装置76の各メインリモコン側ECU81、82、83に切換判定処理部が設けられているので、メイン側リモコン装置76ではサブ側リモコン装置77のリモコンレバー84、85の状態を容易に把握でき、サブ側リモコン装置77で切換処理を行う必要がなく、装置や制御系を簡単に構成し易い。その結果、切換処理を行うためのシステムを簡素化することができる。
【0079】
また、複数の船外機71、72、73に対応する複数のメインリモコン側ECU81、82、83に切換判定処理部が設けられ、各メインリモコン側ECU81、82、83毎に切換処理を行うので、複数のメインリモコン側ECU81、82、83の装置や制御系を同じにすることができ、部品の共通化を図り易い。
【0080】
しかも、複数のメインリモコン側ECU81、82、83毎に切換処理を行っても、複数のメインリモコン側ECU81、82、83がECU間通信回線により接続されて、判定状態S102、S104で他の全てのリモコンレバー78、79、84、85の状態に従って切換処理を行うため、左用と右用のリモコンレバー78、79、84、85間でメイン側リモコン装置76とサブ側リモコン装置77とに異なる切換処理が行われることを防止し易い。
【0081】
更に、オン状態の船外機71、72、73についてのメインリモコン側ECU81、82、83だけで切換処理を行うように構成しているので、使用されていない船外機71、72、73についての切換処理を行う必要がなく、システムをより簡素化することができる。
【0082】
また、判定状態S102、S104を維持する判定時間内に、ECU間通信回線を介して他の全てのリモコンレバー78、79、84、85が切換可能であることが伝達されないとき、他のリモコンレバー78、79、84、85が切換可能な状態でないと擬制して切換処理を行わないように構成しているので、切換可能な状態でないことをECU間通信回線を介して伝達する必要がなく、切換処理を行うためのシステムをより簡素化することができる。
【0083】
更に、切換処理後に少なくとも一つのメインリモコン側ECU81、82、83がメイン側リモコン装置76を選択しているとき、強制的にメイン側リモコン装置76に切換えるように構成しているので、切換処理において通信遅れ等の異常により、メインリモコン側ECU81、82、83間で異なるステーション制御状態S101、S103が選択されるような状態が発生しても、強制的に同じにすることができ、安全性を確保し易い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明の実施の形態1に係る船舶の斜め後方から見た斜視図である。
【図2】同実施の形態1に係る船舶のリモコン装置及び船外機等の接続状態を示す概略図である。
【図3】同実施の形態1に係る船舶のリモコン装置、キースイッチ装置及び船外機等の接続状態を示すブロック図である。
【図4】同実施の形態1の船舶の切換判定処理部の切換処理の流れを示す系統図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る船舶のリモコン装置及び船外機等の接続状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0085】
10 船体
11、12 船外機(船舶推進装置)
14 メインステーション
15 サブステーション
17 メイン側リモコン装置
21 サブ側リモコン装置
27 左用メインリモコン側ECU
28 右用メインリモコン側ECU
29、30、51、52 リモコンレバー
45 メインステーション切換スイッチ
49 左用サブリモコン側ECU
50 右用サブリモコン側ECU
65 サブステーション切換スイッチ
S101 メインステーション制御状態
S102 切換判定状態
S103 サブステーション制御状態
S104 切換判定状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶推進装置に第1リモコン装置が接続されると共に該第1リモコン装置に第2リモコン装置が接続され、前記第1及び第2リモコン装置にそれぞれ前記船舶推進装置を操作するためのリモコンレバーとリモコン切換スイッチとが設けられた船舶であって、
前記第1リモコン装置には切換判定処理部が設けられ、
該切換判定処理部は、前記第1及び第2リモコン装置のリモコンレバーが共にニュートラル状態で、前記リモコン切換スイッチがオン状態のとき、前記第1及び第2リモコン装置の切換処理を行うことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記第1及び第2リモコン装置は、それぞれ複数の前記船舶推進装置を操作可能な複数の前記リモコンレバーと、複数の前記切換判定処理部とを有すると共に、前記複数の切換判定処理部間が通信回線により接続されてなり、
前記各切換判定処理部は、同一の前記船舶推進装置を操作する前記第1及び第2リモコン装置の前記リモコンレバーが共にニュートラル状態で、前記リモコン切換スイッチがオン状態のとき、それぞれ判定状態となり、
該判定状態で、前記通信回線を介して前記第1及び第2リモコン装置の他の全ての前記リモコンレバーがニュートラル状態であることが伝達されたとき、該切換判定処理部に対応する前記リモコンレバーについての前記切換処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記複数の船舶推進装置にそれぞれメインスイッチを備え、前記メインスイッチがオン状態の前記船舶推進装置に対応する前記切換判定処理部で前記切換処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記各切換判定処理部には前記判定状態を維持する判定時間が設定され、該判定時間内に他の全ての前記リモコンレバーがニュートラル状態であることが伝達されないとき、前記切換処理を行わないことを特徴とする請求項2又は3に記載の船舶。
【請求項5】
前記切換処理後に少なくとも一つの前記切換判定処理部が前記第1リモコン装置を選択しているとき、前記各切換判定処理部を強制的に前記第1リモコン装置に切換えることを特徴とする請求項4に記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−320541(P2007−320541A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156526(P2006−156526)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)