説明

船舶

【課題】一部の船舶推進装置が作動状態で他の船舶推進装置が起動しても、起動前の制御状態が変動し難く、船舶推進装置を操作するリモコン装置やリモコンレバーの操作状態を安定して維持し易い船舶を提供する。
【解決手段】電源系がそれぞれ独立した複数の船舶推進装置11、12にリモコン装置17、21が接続され、リモコン装置17、21に複数の船舶推進装置11、12にそれぞれ対応する複数のコントロールユニット27、28と、リモコンレバー29、30とを備え、各コントロールユニッ27、28ト同士が通信可能に接続され、一部の船舶推進装置11、12が作動状態で他の船舶推進装置11、12が停止状態から起動したとき、起動した船舶推進装置11、12に対応するコントロールユニット27、28が、作動状態の船舶推進装置11、12に対応するコントロールユニット27、28の制御状態を認識し、その制御状態と一致させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源系が独立した複数の船舶推進装置を備え、操船ステーションの切換処理や船舶推進装置の選択処理を行うことが可能な船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船尾に船舶推進装置である船外機が配置され、船体の中央にメインステーションが配設され、このメインステーションの上方にサブステーションが配設された船舶が多数知られている。
【0003】
このような船舶では、各操船ステーションに船外機を操作するためのリモコンレバーが設けられており、一機又は多機の船外機のそれぞれを、各ステーションにより操作可能となっている。この操船ステーションは、操船者の選択により任意に切換て使用されるもので、切換えられた操船ステーションのレバー操作により全ての船外機が操作可能に構成されている。
【0004】
ここでは、リモコンレバーと船外機とが機械的にワイヤー等により連結されている場合、一方の操船ステーションのレバーを操作すると他方のステーションのレバーが従動するため、船外機を操作する複数のレバーを常に同一の操作状態にすることができる。
【0005】
ところが、レバーの操作量を操作信号として船外機の制御部に伝達するようにしたリモコン装置を使用した船舶では、船外機を操作する複数のリモコンレバーをそれぞれ独立に操作できるため、一方のリモコンレバーの操作量と他方のリモコンレバーの操作量とが異なる操作状態となることが起こり易い。
【0006】
複数のリモコンレバーが異なる操作状態となると、操船ステーションを切換えた際、船外機に入力される操作信号が急激に変化するため、切換時に操船し難いという支障が生じる。そのため、このような船舶では、例えば、下記特許文献1等のように、操船ステーションの切換の際、船外機に入力される操作信号が急激に変化することを防止するための提案がなされている。
【0007】
また、複数の船外機を有する船舶では、何れの船外機を使用するかを選択スイッチにより選択して、リモコンレバーにより操作可能となるように構成されているものが知られている。このような船舶では、操船ステーションの切換とは別に、選択スイッチが設けられており、選択スイッチにより選択することでリモコンレバーが切換わるようになっている。
【特許文献1】特許第3019984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、それぞれ独立した電源系の複数の船外機が装備され、各船外機毎にコントロールユニットが設けられて、各コントロールユニット毎に操船ステーションの切換状態や船外機の選択状態を制御する場合、船外機を起動させた際に、各コントロールユニットは操船ステーションの切換状態や船外機の選択状態を所定の状態から制御を開始することになる。
【0009】
そのため、一部の船外機が作動状態で、操船ステーションの切換や船外機の選択が実施されて所定の状態から変化した後で、他の一部の停止状態の船外機を起動させると、新たに起動された船外機のコントロールユニットが所定の状態から制御を開始する結果、既に作動状態の船外機のコントロールユニットと新たに起動された船外機のコントロールユニットとの間で、操船ステーションの切換状態や船外機の選択状態が相違する現象が起こる。
【0010】
更に、既に作動状態にされた船外機が、不測の原因により瞬間的に停止及び再起動される所謂瞬断が生じた場合にも、作動状態が維持された船外機のコントロールユニットと瞬断が生じた船外機のコントロールユニットとの間で相違する現象が生じる。
【0011】
そのような制御状態の相違が生じると、一部の船外機について操船ステーションやリモコンレバーが突然変化したり、一部のリモコンレバーによる船外機の操作状態が突然変化するなどの不都合を生じる。
【0012】
そこで、この発明では、このような課題を解決するべく、一部の船舶推進装置が作動状態で他の船舶推進装置が起動しても、起動前の制御状態が変動し難く、船舶推進装置を操作するリモコン装置やリモコンレバーの操作状態を安定して維持し易い船舶を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、電源系がそれぞれ独立した複数の船舶推進装置にリモコン装置が接続され、該リモコン装置に前記複数の船舶推進装置にそれぞれ対応する複数のコントロールユニットと、該コントロールユニットに操作量を入力するリモコンレバーとを備えた船舶であり、前記各コントロールユニット同士が通信可能に接続され、一部の前記船舶推進装置が作動状態で他の前記船舶推進装置が停止状態から起動したとき、起動した前記船舶推進装置に対応する前記コントロールユニットが、前記一部の船舶推進装置に対応する前記コントロールユニットの制御状態を認識し、その制御状態と一致させる制御を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、複数のステーションを有し、それぞれのステーションに前記リモコン装置が設けられた船舶であり、前記制御状態は、一方のステーションと他方のステーションの切替状態であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記リモコン装置に、前記複数の船舶推進装置の何れを使用するかの選択を行う選択スイッチが設けられた船舶であり、前記制御状態は、前記選択スイッチの選択状態であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、起動した前記船舶推進装置に対応する前記コントロールユニットに他の前記コントロールユニットから前記制御状態が伝達されないとき、又は、複数の異なる前記制御状態が伝達されたとき、全ての前記コントロールユニットが所定の基準状態となるように制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、複数の船舶推進装置の電源系がそれぞれ独立し、各船舶推進装置毎にコントロールユニットが接続されており、各コントロールユニット毎に操船ステーションの切換状態や船外機の選択状態などの制御が行われるので、各船舶推進装置毎に起動して制御が行なわれるが、複数の船舶推進装置の内の一部が作動状態で他の一部が停止状態から起動する場合、起動した他の船舶推進装置に対応するコントロールユニットが、通信により伝達される作動状態の船舶推進装置のコントロールユニットの制御状態を認識し、その制御状態と一致させる制御を行うので、一部の船舶推進装置が起動しても、システム全体の制御状態を安定に維持することが可能である。
【0018】
そのため、一部の停止状態の船舶推進装置の起動時や、作動状態の一部の船舶推進装置の不測の原因による瞬断時やリセット時などに、船舶推進装置を操作するリモコン装置やリモコンレバーの操作状態が変化することがなく、操作性を向上し易い。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、起動した船舶推進装置に対応するコントロールユニットが作動状態のものと一致させる制御状態が、ステーションの切替状態であるので、一部の停止状態の船舶推進装置の起動時や瞬断時などに、一部の船舶推進装置の操船ステーションが変化することを防止することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、起動した船舶推進装置に対応するコントロールユニットが作動状態のものと一致させる制御状態が、選択スイッチの選択状態であるので、一部の停止状態の船舶推進装置の起動時や瞬断時などに、一部のリモコンレバーの操作状態が変化することを防止することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、起動した舶推進装置に対応するコントロールユニットに他のコントロールユニットから制御状態が伝達されないとき、又は、複数の異なる制御状態が伝達されたとき、全てのコントロールユニットが所定の基準状態となるように制御を行うので、全ての船舶推進装置が停止状態から起動する場合や、複数のコントロールユニットで操船ステーションの切換や船外機の選択の制御が行われる期間に時間差が生じた場合などに起動させても、切換処理を正常に行うことができ、システム全体を安定した状態で維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[実施の形態1]
【0023】
以下、この発明の船舶を図を用いて説明する。図1乃至図4はこの実施の形態の船舶を示す。
【0024】
まず、構成を説明すると、この実施の形態の船舶は、図1及び図2に示すように、船体10の船尾に、それぞれ電源系が独立している「船舶推進装置」としての2基の船外機11、12が取り付けられ、この船体10にはメインステーション14及びサブステーション15からなる2つの操船席が設けられている。メインステーション14にはメイン側リモコン装置17、キースイッチ装置18及びハンドル装置19等が配置されている。サブステーション15にはサブ側リモコン装置21、キースイッチ装置22及びハンドル装置23等が配置されている。
【0025】
メインステーション14のメイン側リモコン装置17には、図3に示すように、リモコン本体26内に左側の船外機11用の「コントロールユニット」としての左用メインリモコン側ECU27、及び、右側の船外機12用の「コントロールユニット」としての右用メインリモコン側ECU28が内蔵して接続されると共に、各船外機11、12に対応して、スロットル、シフト操作を行う一対のリモコンレバー29、30が設けられ、これらリモコンレバー29、30のそれぞれの位置を検出する位置センサ31、32が設けられ、これら各位置センサ31、32が各メインリモコン側ECU27、28にそれぞれ2系統の信号回路bを介して接続されている。
【0026】
この左用メインリモコン側ECU27及び右用メインリモコン側ECU28には、メイン側リモコン装置17とサブ側リモコン装置21とを択一的に切り換えるための処理ステップがそれぞれ組み込まれており、各メインリモコン側ECU27、28内にそれぞれメイン側リモコン装置17とサブ側リモコン装置21との切換処理を行うリモコン切換制御部が含まれた構成となっている。
【0027】
また、それら各メインリモコン側ECU27、28には、それぞれPTT(パワートリム&チルト)スイッチ33、34が信号回路を介して接続されている。
【0028】
それら左右用メインリモコン側ECU27、28には、キースイッチ装置18が接続されている。このキースイッチ装置18には、各メインリモコン側ECU27、28に対応してそれぞれメインスイッチ37、38、始動スイッチ39、40、停止スイッチ41、42、ブザー43、44が設けられている。更に、このキースイッチ装置18には、船外機11、12に対してメイン側リモコン装置17を有効に機能させるために操作される押しボタン等からなるメインステーション切換スイッチ45が設けられている。そして、これらが信号回路bを介してメインリモコン側ECU27、28に接続されている。
【0029】
メインステーション14のハンドル装置19には、操舵を行うハンドル46が設けられ、図示していないがハンドル46の回転位置(回転角度位置)が位置センサにより検出され、内蔵されたハンドル側ECUに伝達されるようになっている。
【0030】
そして、このハンドル側ECUが前記両メインリモコン側ECU27、28に信号線としてのDBWCANケーブルを介して接続されている。ここで、DBWとは、Drive−By−Wireの略であり、機械的な接続で行っていたものを電気的接続で行う操縦装置を言い、又、CANとは、Controller Area Networkの略である。
【0031】
一方、サブステーション15のサブ側リモコン装置21は、リモコン本体48内に左側の船外機11用の左用サブリモコン側ECU49、及び、右側の船外機12用の右用サブリモコン側ECU50が内蔵されると共に、メインステーション14のメイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30に対応する一対のリモコンレバー51、52が設けられ、これらリモコンレバー51、52のそれぞれの位置を検出する位置センサ53、54が設けられ、これら各位置センサ53、54が各サブリモコン側ECU49、50にそれぞれ2系統の信号回路bを介して接続されている。
【0032】
この左用サブリモコン側ECU49及び右用サブリモコン側ECU50は、それぞれ位置センサ53、54からの検出信号を専らメイン側リモコン装置17の左用メインリモコン側ECU27及び右用メインリモコン側ECU28に伝達するように構成されている。この左用サブリモコン側ECU49及び右用サブリモコン側ECU50は、前述のようなメイン側リモコン装置17とサブ側リモコン装置21との切換処理を行うリモコン切換制御部は含まれていない。
【0033】
また、それら各サブリモコン側ECU49、50には、それぞれPTT(パワートリム&チルト)スイッチ55、56が信号回路を介して接続されている。
【0034】
左右用サブリモコン側ECU49、50には、キースイッチ装置22が接続されている。このキースイッチ装置22には、各サブリモコン側ECU49、50に対応してそれぞれ始動スイッチ59、60、停止スイッチ61、62、ブザー63、64が設けられている。更に、このキースイッチ装置22には、船外機11、12に対してサブ側リモコン装置21を有効に機能させるために操作される押しボタン等からなるサブステーション切換スイッチ65が設けられている。そして、これらが信号回路bを介してサブリモコン側ECU49、50に接続されている。
【0035】
サブステーション15のハンドル装置23には、操舵を行うハンドル66が設けられ、図示していないがハンドル66の回転位置(回転角度位置)が位置センサにより検出され、内蔵されたハンドル側ECUに伝達されるようになっている。
【0036】
また、メイン側及びサブ側リモコン装置17、21では、両メインリモコン側ECU27、28と両サブリモコン側ECU49、50とが接続されている。即ち、左用サブリモコン側ECU49が電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して左用メインリモコン側ECU27に接続されると共に、右用サブリモコン側ECU50が電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して右用メインリモコン側ECU28に接続されている。更に、左用メインリモコン側ECU27と右用メインリモコン側ECU28間がECU間通信回線gにより接続されている。
【0037】
そして、左用メインリモコン側ECU27が左側の船外機11に電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して接続されると共に、右用メインリモコン側ECU28が右側の船外機12に電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して接続されている。なお、これらの船外機11、12には3個のバッテリー69が接続されている。
【0038】
各船外機11、12は、スロットル開度センサからのスロットル開度、クランク角センサからのエンジン回転数、及び他の各センサからの検出値に基づき、各メインリモコン側ECU27、28から電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して送信される制御信号により、それぞれ燃料噴射量、噴射時期、及び点火時期等が制御されるようになっている。
【0039】
この各船外機11、12からは、各メインリモコン側ECU27、28にDBWCANケーブルeを介して、スロットル開度、エンジン回転数等各種の検出値(運転情報)が送信されるようになっており、両メインリモコン側ECU27、28間でも、それらの運転情報がECU間通信回線gを介して相互に送受信されるようになっている。
【0040】
各メインリモコン側ECU27、28では、リモコン切換制御部における切換処理により選択されたメイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30又はサブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52の一方の操作に基づき、各船外機11、12からの運転情報を用いてエンジン回転数差が目標値に収まるように、各船外機11、12に制御信号を送信し、各船外機11、12の燃料噴射量、噴射時期、及び点火時期等を制御している。
【0041】
そして、この船舶のメインリモコン側ECU27、28に含まれるリモコン切換制御部では、例えば図4に示すように、メイン側リモコン装置17又はサブ側リモコン装置21を有効にするための切換処理を行えるように構成されている。
【0042】
メイン側リモコン装置17の操作が有効なメインステーション制御状態S101からサブ側リモコン装置21の操作が有効なサブステーション制御状態S103への切換又はその逆の切換を行うには、まず、メイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30とサブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52をニュートラル状態にしてサブステーション切換スイッチ65をONにする。
【0043】
すると、各メインリモコン側ECU27、28では、それぞれメイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30がニュートラル状態であると共にサブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52がニュートラル状態であることと、メインステーション切換スイッチ45又はサブステーション切換スイッチ65がON状態にされたこととの条件が満たされたとき、判定状態S102、S104となる。
【0044】
判定状態S102、S104では、それぞれのメインリモコン側ECU27、28で判定状態S102、S104を維持する判定時間が予め設定されており、その判定時間内に、ECU間通信を介して、他方のメインリモコン側ECU27、28から伝達される情報が判定される。
【0045】
ここでは、各メインリモコン側ECU27、28に対応するメインスイッチ37、38がON状態であるため、各メインリモコン側ECU27、28では、判定時間内に他方のメインリモコン側ECU27、28から、メイン側リモコン装置17のリモコンレバー29、30及びサブ側リモコン装置21のリモコンレバー51、52がニュートラル状態であることを示す切換可能情報が伝達されたとき、メイン側リモコン装置17からサブ側リモコン装置21への切換処理又はその逆の切換処理が行われる。
【0046】
なお、メインスイッチ37、38の何れか一方がOFF状態のときには、ECU間通信を介して伝達される情報が存在せず、そのままメイン側リモコン装置17からサブ側リモコン装置21への切換処理又はその逆の切換処理が行われる。また、この実施の形態では、他方のメインリモコン側ECU27、28が既に切換処理後の制御状態S101、S103になっているときにも、その切換処理が行われる。
【0047】
一方、この判定状態S102、S104では、メインスイッチ37、38の両方がON状態で判定時間内に各メインリモコン側ECU27、28に切換可能情報が伝達されない場合には、切換処理は行われず、元の制御状態S101、S103に復帰する。
【0048】
このような判定処理では、例えばECU間通信の通信遅れなどにより、両メインリモコン側ECU27、28間で異なるステーション制御状態S101、S103に切換処理が行わた場合には、強制的にサブステーション制御状態S103のメインリモコン側ECU27、28をメインステーション制御状態S101に切換える切換処理が行なわれる。
【0049】
そして、この実施の形態1の船舶では、このような各メインリモコン側ECU27、28のそれぞれに含まれるリモコン切換制御部に、各船外機11、12及び対応する各メインリモコン側ECU27、28が起動するとき、所定の切換処理を行うスタートアップ状態S100が設定されている。
【0050】
このスタートアップ状態S100では、各メインリモコン側ECU27、28では、ECU間通信回線gを介して伝達される他のメインリモコン側ECU27、28の切換選択情報を取得して判定される。この切換選択情報は、例えば、作動状態の船外機11、12に対応する各メインリモコン側ECU27、28毎に保有されており、そのメインリモコン側ECU27、28が現在メインステーション制御状態S101であるか、サブステーション制御状態S103であるか、又は判定状態S102若しくはS104であるかを認識可能な情報である。
【0051】
ここでは、作動状態の船外機11、12に対応するメインリモコン側ECU27、28がメインステーション制御状態S101である場合には、起動した船外機11、12に対応するメインリモコン側ECU27、28をメインステーション制御状態S101に切換処理を実行する。
【0052】
一方、作動状態の船外機11、12に対応するメインリモコン側ECU27、28がサブステーション制御状態S103である場合には、起動した船外機11、12に対応するメインリモコン側ECU27、28をサブステーション制御状態S103に切換処理を実行する。
【0053】
なお、各メインリモコン側ECU27、28には、メインステーション切換状態S101を選択するリモコン切換基準状態が予め設定されている。そのため、起動した際、他に作動状態の船外機11、12及びメインリモコン側ECU27、28がない場合、即ち、全ての船外機11、12及びメインリモコン側ECU27、28が停止状態から起動されたような場合には、起動された船外機11、12に対応する各メインリモコン側ECU27、28をメインステーション制御状態S101に切換処理を実行する。
【0054】
そして、スタートアップ状態S100からメインステーション制御状態S101又はサブステーション制御状態S103に切換処理が行なわれた後は、上述のような切換制御の流れに従うようになっている。
【0055】
以上のような船舶によれば、複数の船外機11、12の電源系がそれぞれ独立し、各船外機11、12を操作するためのリモコン装置17、21の切換処理を行うメインリモコン側ECU27、28のリモコン切換制御部が各船外機11、12のそれぞれに対応して設けられているため、各船外機11、12毎に起動されて制御が行われる。その際、船外機11、12の内の一方が作動状態で他方が起動したとき、起動した一方の船外機11、12に対応するリモコン切換制御部が、ECU間通信回線gを介して伝達される作動状態の他方の船外機11、12のリモコン切換制御部の切換選択情報を取得して認識し、その切換選択情報に従い切換制御を実行するので、起動した一方のリモコン装置17、21の切換状態を作動状態の他方のリモコン装置17、21の切換状態と一致させることができ、システム全体の切換状態を安定に維持することが可能である。
【0056】
そのため、一部の停止状態の船外機11、12の起動時に、或いは、不測の原因による作動状態の船外機11、12の電源の瞬断時やリセット時などに、リモコン装置17、21のリモコンレバー29、30、51、52の一部の操作状態が変化するようなことがなく、操作性を向上し易い。
【0057】
更に、船外機11、12のそれぞれにメイン側リモコン装置17が接続されると共に、このメイン側リモコン装置17にサブ側リモコン装置21が接続され、メイン側リモコン装置17に各船外機11、12に対応したメイン側リモコンECU27、28が設けられているので、同一の船外機11、12を操作するリモコン装置17、21を複数設けても、リモコン切換制御部やECU間通信回線gを少なく抑えることができ、簡単な構成を実現し易い。
【0058】
また、リモコン切換制御部にメイン側リモコン装置17を選択するリモコン切換基準状態が予め設定されているので、一方の起動した船外機11、12のメイン側リモコンECU27、28に他のメイン側リモコンECU27、28から切換選択情報が伝達されないとき、強制的にメイン側リモコン装置17を有効にする切換処理を実行でき、例えば、全ての船外機11、12が停止状態から起動するような場合であって、切換処理を正常に行うことができ、システム全体を安定した状態で維持することができる。
[実施の形態2]
【0059】
図5は、この実施の形態2の船舶のリモコン装置及び船外機の概略の接続状態を示している。
【0060】
この船舶では、3機の船外機71、72、73を有し、この船外機71、72、73をメインステーション74及びサブステーション75に設けられたメイン側リモコン装置76及びサブ側リモコン装置77により操作できるように構成されている。
【0061】
メイン側リモコン装置76には、一対のリモコンレバー78、79が設けられるとともに、3機の船外機71、72、73に対応する3個のメインリモコン側ECU81、82、83が直接接続して設けられ、一方のリモコンレバー78の位置センサーがメインリモコン側ECU81、82に接続されると共に他方のリモコンレバー79の位置センサーがメインリモコン側ECU82、83に接続されており、メインリモコン側ECU81、82、83がそれぞれ対応する船外機71、72、73に接続されている。
【0062】
一方、サブ側リモコン装置77には、一対のリモコンレバー84、85が設けられるとともに、3つのメインリモコン側ECU81、82、83に対応する3個のサブリモコン側ECU86、87、88が設けられ、一方のリモコンレバー84の位置センサーがサブリモコン側ECU86、87に接続されると共に他方のリモコンレバー85の位置センサーがサブリモコン側ECU87、88に接続されている。そして、各サブリモコン側ECU86、87、88がそれぞれ対応するメインリモコン側ECU81、82、83に接続されており、一対のリモコンレバー84、85の操作がメインリモコン側ECU81、82、83に伝達されて、3機の船外機71、72、73を制御できるようになっている。
【0063】
メインステーション74及びサブステーション75の各キースイッチ装置には、それぞれメインステーション切換スイッチ89及びサブステーション切換スイッチ97が設けられており、それぞれメインリモコン側ECU81、82、83及びサブリモコン側ECU86、87、88に接続されている。
【0064】
また、この実施の形態2においてもメインリモコン側ECU81、82、83内に、それぞれメイン側リモコン装置76又はサブ側リモコン装置77を有効にするための切換処理を行うためのリモコン切換制御部が含まれた構成となっていると共に、メインリモコン側ECU81、82、83間がECU通信回線により接続されて通信可能となっている。
【0065】
そして、各メインリモコン側ECU81、82、83のリモコン切換制御部では、各船外機71、72、73が起動するときに切換処理を行うスタートアップ状態S100が設定されており、このスタートアップ状態S100で、ECU間通信回線gを介して伝達される他のメインリモコン側ECU81、82、83の切換選択情報を取得して切換処理が実施される。
【0066】
ここでは、起動した船外機71、72、73に対応するメインリモコン側ECU81、82、83は、他の作動状態の船外機71、72、73に対応するメインリモコン側ECU81、82、83がメインステーション制御状態S101にある場合には、起動した船外機71、72、73に対応するメインリモコン側ECU81、82、83をメインステーション制御状態S101にする切換処理を実行する。
【0067】
一方、他の作動状態の船外機71、72、73に対応するメインリモコン側ECU81、82、83がサブステーション制御状態S103である場合には、起動した船外機71、72、73に対応するメインリモコン側ECU81、82、83をサブステーション制御状態S103にする切換処理を実行する。
【0068】
なお、各メインリモコン側ECU81、82、83には、メインステーション切換状態S101を選択するリモコン切換基準状態が予め設定されている。そのため、起動した際、他に作動状態の船外機71、72、73及びメインリモコン側ECU81、82、83がない場合、即ち、全ての船外機71、72、73及びメインリモコン側ECU81、82、83が停止状態から起動した場合には、起動された船外機71、72、73に対応する各メインリモコン側ECU81、82、83をメインステーション制御状態S101に切換処理を実行する。
【0069】
また、起動した1機の船外機71、72、73のメイン側リモコンECU81、82、83に他の2機の船外機71、72、73のメイン側リモコンECU81、82、83から異なる切換選択情報が伝達されたときにも、同様に強制的にメイン側リモコン装置76を選択する切換処理を実行するので、複数のリモコン切換制御部でそれぞれ切換処理が行われる期間に起動するような特殊な状態であっても、切換処理を正常に行うことが可能である。
【0070】
そして、以上のような実施の形態2の船舶であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることが可能である。
[実施の形態3]
【0071】
図6及び図7はこの実施の形態3を示している。ここでは、実施の形態1、2と同様に操船ステーションが複数設けられ、それぞれにリモコン装置が設けられている。
【0072】
図6に示すように、リモコン装置90には一対のリモコンレバー91、92が設けられ、そのリモコン本体93に2機の船外機11、12にそれぞれ対応した2つのリモコン側ECU94、95が設けられると共に、何れの船外機11、12使用するかを選択するためのレバー選択スイッチ96が設けられている。
【0073】
レバー選択スイッチ96は、左側に配置された船外機11がリモコンレバー91の操作量により操作されると共にリモコンレバー92が操作量に拘わらず常にニュートラル状態で保たれるP状態を選択するP状態制御スイッチ96pと、右側に配置された船外機12がリモコンレバー92の操作量により操作されると共にリモコンレバー91が操作量に拘わらず常にニュートラル状態で保たれるS状態を選択するS状態制御スイッチ96sと、左側に配置された船外機11がリモコンレバー91の操作量により操作されると共に右側に配置された船外機12がリモコンレバー92の操作量により操作されるBOTH状態を選択するBOTH状態制御スイッチ96bとを備えている。
【0074】
各リモコン側ECU94、95には、これらのレバー選択スイッチ96に応じて、船外機11、12をリモコンレバー91、92と共に選択して、リモコンレバー91、92と各リモコン側ECU94、95との対応を制御するレバー選択制御部が設けられている。この実施の形態3では、メインステーション14に配置されたリモコン装置90の各リモコン側ECU94、95にレバー選択制御部が含まれており、このメインステーション14に配置された各リモコン側ECU94、95間がECU間通信回線gにより接続されている。
【0075】
その他は実施の形態1と同様である。
【0076】
このような船舶のリモコン側ECU94、95に含まれるレバー選択制御部は、図7に示すような選択処理を行えるように構成されている。
【0077】
ここでは、P状態S111、S状態S112、BOTH状態S113の間は、所定の条件下で相互に選択可能であり、即ち、全ての船外機11、12及びリモコンECUがオン状態であって、リモコンレバー91、92が共にニュートラル状態で、船外機11、12を操作可能なステーションのリモコン装置90のP状態制御スイッチ96p、S状態制御スイッチ96s、又はBOTH状態制御スイッチ96bの何れかがオン状態にされたとき、選択処理が行われる。
【0078】
そして、この発明では、各リモコン側ECU94、95のぞれぞれに含まれるレバー選択制御部に、各船外機11、12及び対応する各メインリモコン側ECU27、28が起動したとき、選択処理を行うスタートアップ状態S110が設定されている。
【0079】
このスタートアップ状態S110では、各リモコン側ECU94、95では、ECU間通信回線gを介して伝達される他のリモコン側ECU94、95の選択情報を取得して判定される。この選択情報は、例えば、作動状態の船外機11、12に対応する各リモコン側ECU94、95毎に保有されており、そのリモコン側ECU94、95が現在P状態S111であるか、S状態S112であるか、BOTH状態S113であるかを認識可能な情報である。
【0080】
ここでは、起動した船外機11、12に対応するリモコン側ECU94、95は、他の作動状態の船外機11、12に対応するリモコン側ECU94、95の状態S111、S112、BOTH状態S113に従い、一致させるように選択処理を実行する。
【0081】
なお、各リモコン側ECU94、95には、同一のリモコン装置90の全てのリモコンレバー91、92により全ての船外機11、12を操作するBOTH状態S113がレバー選択基準状態として予め設定されている。そのため、起動した際、他に作動状態の船外機11、12及びリモコン側ECU94、95がない場合、即ち、全ての船外機11、12及びリモコン側ECU94、95が停止状態から起動された場合には、起動された船外機11、12に対応する各リモコン側ECU94、95をBOTH状態S113を選択する選択処理を実行するようになっている。
【0082】
以上のような船舶によれば、複数の船外機11、12の電源系がそれぞれ独立し、各船外機11、12を操作するためのリモコンレバー91、92の選択処理を行うリモコン側ECU94、95のレバー選択制御部が各船外機11、12のそれぞれに対応して設けられているため、船外機11、12の内の一方が作動状態で他方が起動すると、起動した一方の船外機11、12に対応するレバー選択制御部が、ECU間通信回線gを介して伝達される作動中の他方の船外機11、12のレバー選択御部の選択情報を取得して選択処理を実行するので、起動前のリモコンレバー91、92の選択状態を変化させ難く、システム全体の切換状態を安定に維持することが可能である。
【0083】
そのため、一部の停止状態の船外機11、12の起動時、不測の原因による作動中の船外機11、12の電源の瞬断時やリセット時などに、一部の船外機11、12及びリモコン側ECU94、95が起動した際、作動中の一部の船外機11、12を操作するリモコンレバーが変化したり、一部の船外機11、12の操作状態が変化することを防止することができる。
【0084】
また、起動した船外機11、12のリモコン側ECU94、95のレバー選択制御部に他のレバー選択制御部から選択情報が伝達されないときには、起動した船外機11、12に対応するリモコン側ECU94、95のレバー選択制御部をBOTH状態S113にする選択処理を実行するので、全ての船外機11、12が停止状態から起動する場合でも、選択処理を正常に行うことができ、システム全体を安定した状態で維持することができる。
【0085】
なお、この実施の形態3では2機の船外機11、12の例について説明したが、3機以上の船外機を備える船舶であってもよく、その場合、複数のレバー選択制御部において選択処理が行われている期間に一部の船外機及びリモコン側ECU94、95が起動することにより、複数の船外機及びリモコン側ECU94、95から複数の異なる選択情報が伝達されたときなどには、起動した船外機に対応するリモコン側ECU94、95をBOTH状態S113に切換える切換処理を実行するようにしてもよく、また、中央側に配置された船外機に対応するレバー選択制御部の選択情報を取得して切換処理を実行するようにしてもよい。
【0086】
また、上記のようなレバー選択制御部は、実施の形態1のように複数のリモコン装置の切換処理を行うリモコン切換判定処理部と共に設けることも当然に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】この発明の実施の形態1に係る船舶の斜め後方から見た斜視図である。
【図2】同実施の形態1に係る船舶のリモコン装置及び船外機等の接続状態を示す概略図である。
【図3】同実施の形態1に係る船舶のリモコン装置、キースイッチ装置及び船外機等の接続状態を示すブロック図である。
【図4】同実施の形態1の船舶のリモコン切換判定処理部の切換処理の流れを示す系統図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る船舶のリモコン装置及び船外機等の接続状態を示す概略図である。
【図6】この発明の実施の形態3の船舶のリモコン装置の正面図である。
【図7】同実施の形態3のレバー選択制御部の切換処理の流れを示す系統図である。
【符号の説明】
【0088】
10 船体
11、12、71、72、73 船外機(船舶推進装置)
14、74 メインステーション
15、75 サブステーション
17、76 メイン側リモコン装置
21、77 サブ側リモコン装置
27 左用メインリモコン側ECU
28 右用メインリモコン側ECU
29、30、51、52、84、85、91、92 リモコンレバー
45、89 メインステーション切換スイッチ
49 左用サブリモコン側ECU
50 右用サブリモコン側ECU
65、97 サブステーション切換スイッチ
81、82、83 メインリモコン側ECU
90 リモコン装置
94、95 リモコン側ECU
96 レバー切換スイッチ
S100 スタートアップ状態
S101 メインステーション制御状態
S102 切換判定状態
S103 サブステーション制御状態
S104 切換判定状態
S111 P状態
S112 S状態
S113 BOTH状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源系がそれぞれ独立した複数の船舶推進装置にリモコン装置が接続され、該リモコン装置に前記複数の船舶推進装置とそれぞれ対応する複数のコントロールユニットと、該コントロールユニットに操作量を入力するリモコンレバーとを備えた船舶であり、
前記各コントロールユニット同士が通信可能に接続され、
一部の前記船舶推進装置が作動状態で他の前記船舶推進装置が停止状態から起動したとき、起動した前記他の船舶推進装置に対応する前記コントロールユニットが、前記一部の船舶推進装置に対応する前記コントロールユニットの制御状態を認識し、その制御状態と一致させる制御を行うことを特徴とする船舶。
【請求項2】
複数のステーションを有し、それぞれのステーションに前記リモコン装置が設けられた船舶であり、
前記制御状態は、一方のステーションと他方のステーションとの切替状態であることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記リモコン装置に、前記複数の船舶推進装置の何れを使用するかの選択を行う選択スイッチが設けられた船舶であり、前記制御状態は、前記選択スイッチの選択状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
起動した前記船舶推進装置に対応する前記コントロールユニットに他の前記コントロールユニットから前記制御状態が伝達されないとき、又は、複数の異なる前記制御状態が伝達されたとき、前記コントロールユニットが所定の基準状態となるように制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−30608(P2008−30608A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206318(P2006−206318)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)