説明

船舶

【課題】乗員が船外機の周囲を自由に移動することができる船舶を提供すること。
【解決手段】船舶A1は、船体10の船尾に設けられた船外機取付部と、船外機取付部の後方に隣接し、船尾を上下に貫通する船外機配置孔17と、船外機配置孔17の後方に設けられたプラットフォーム16と、船外機配置孔17に配置され、船外機取付部に取り付けられた船外機25とを含む。船舶A1の乗員は、プラットフォーム16における船外機25の周囲の空間を自由に移動して利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船外機によって推進される船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
レジャー等に用いられる、いわゆるクルーザータイプの船舶が知られている。このような船舶の一例は、船外機によって推進される船舶である(たとえば、特許文献1参照)。この船舶は、船体外に配置された船外機によって推進されるため、駆動用の機関を配置するためのスペースを船体内に必要としない。したがって、前記船舶は、大きさが略等しい他の形式の船舶に比べて、各種の装置を設置するためのスペースや、くつろぐためのスペースが広げられている。
【0003】
また、前述の先行技術に係る船舶は、トランサムに設けられた船外機取付部を有している。前記船舶に備えられた船外機は、船外機取付部に取り付けられている。さらに、船外機は、その上側、前側および左右両側が船外機カバーで覆われている。また、前記船舶は、船外機の左右両側に設けられ、乗員が座れるように構成された船尾ステップを有している。したがって、船外機カバーは、船外機の騒音を遮断するだけでなく、上面がテーブルとして利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−207888号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかしながら、前述の先行技術に係る船舶では、船外機の左右両側に形成された船尾ステップ間を結ぶ通路が備えられていない。このため、たとえば、乗員が一方の船尾ステップから他方の船尾ステップに移動する場合には、一方の船尾ステップから一旦デッキに移動して、デッキから他方の船尾ステップに移動しなければならない。
また、前述の先行技術に係る船舶では、船外機が、トランサムに設けられた船外機取付部に取り付けられている。そのため、トランサムと船外機との間隔が狭くなる。したがって、トランサムの下部の水切り面から流れてくる水流がそのまま船外機のプロペラに巻き込まれてプロペラにエアードロー(泡かみ)が生じやすくなる。
【0006】
そこで、この発明の目的は、乗員が船外機の周囲を自由に移動することができる船舶を提供することである。
また、この発明の他の目的は、航走性の向上を図れる船舶を提供することである。
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、船体の船尾に設けられた船外機取付部と、前記船外機取付部の後方に隣接し、前記船尾を上下に貫通する船外機配置孔と、前記船外機配置孔の後方に設けられたプラットフォームと、前記船外機配置孔に配置され、前記船外機取付部に取り付けられた船外機とを含む、船舶である。
【0007】
この構成によれば、船体の船尾を上下に貫通する船外機配置孔が、船外機取付部の後方に隣接して設けられている。船外機は、船外機配置孔に配置されており、船外機取付部に取り付けられている。さらに、プラットフォームは、船外機配置孔の後方に設けられている。したがって、乗員は、プラットフォームにおける船外機の周囲の空間を自由に移動して利用することができる。また、船外機がプラットフォームや船体によって囲まれているため、船舶の船尾を岸壁等に当接させたり、後方から物体が衝突してきたりしたときに、船外機が、プラットフォームや船体によって保護される。これにより、船外機の破損が防止される。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記プラットフォームは、前記船外機配置孔から後方に延び、前記プラットフォームを上下に貫通する切欠き孔を含み、前記船外機は、前記船外機の下部が前記切欠き孔を通って前記プラットフォームの上方に達するまで、前記船外機の前部を通る水平軸線まわりに回動できるように構成されている、請求項1記載の船舶である。
この構成によれば、船外機が水平軸線まわりに回動されるように構成されている。船外機が水平軸線まわりに回動されて船外機の下部が上昇するとき(船外機がチルトアップされるとき)、船外機の下部は、切欠き孔を通ってプラットフォームの上方に移動する。したがって、プラットフォームに対する船外機の衝突が防止される。さらに、船外機配置孔の前後方向の長さの増加が抑制される。これにより、船舶において乗員が自由に利用できるスペースが広げられる。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記切欠き孔は、左右方向への長さが前記船外機配置孔より短くなるように構成されている、請求項2記載の船舶である。
この構成によれば、プラットフォームにおいて乗員が自由に利用できるスペースが広げられる。
切欠き孔は、船外機の下部を通過させることができる必要十分な大きさに構成されていることが好ましい。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記船体の底部において、前記船外機取付部の前方に配置された第1水切り面と、前記船体の底部において、前記船外機配置孔の右側および左側で前後に延び、それぞれの後部に設けられた第2水切り面を有する一対の延設部とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶である。
この構成によれば、第1水切り面が、船外機取付部の前方に配置されている。したがって、第1水切り面と船外機との間の距離が、少なくとも船外機取付部の分だけ長くなる。エアードローは、第1水切り面と船外機との間の距離が短い場合に発生し易い。したがって、エアードローの発生が抑制される。これにより、船舶の加速性能が向上される。
【0011】
また、一対の延設部が、船体の底部に設けられている。より具体的には、船体の底部において船外機取付部の両側に位置する部分が船尾側に延長されている。そのため、船舶の浮力が増す。したがって、たとえば船舶の碇泊中に乗員がプラットフォーム上を移動しても、船舶の姿勢変化が抑制される。
また、2つの第2水切り面が、それぞれ、一対の延設部の後部に設けられている。船舶の航走速度は、船体の重心と、水切り面との間の距離に依存する。さらに、船体の重心と水切り面との間の距離が長いほど、航走時における船舶の安定性が増す。したがって、船体の重心と水切り面(第2水切り面)との間の距離が延長されていることにより、安定性の高い高速航走が可能である。
【0012】
また、船舶は、少なくとも3つの水切り面(第1水切り面および2つの第2水切り面)を有している。2つの第2水切り面は、船舶の左右方向に関して第1水切り面の両側に配置されている。さらに、2つの第2水切り面は、第1水切り面の後方に配置されている。したがって、船舶の前後方向における重心位置と水切り位置との距離が延長されている。これにより、船舶の加速性能が向上される。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記船外機配置孔の上方に配置され、前記船外機を覆う天井部をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶である。
この構成によれば、船外機配置孔への物や人の落下が、天井部によって防止される。さらに、乗員は、天井部の上面をたとえばテーブルとして有効に利用することができる。これにより、船舶において乗員が利用できるスペースが広げられる。
【0014】
天井部は、単に船外機を覆うものであってもよいし、テーブルや椅子として機能するように構成されたものであってもよい。
請求項6記載の発明は、前記プラットフォームは、前側ほど高くなるように階段状に形成された上部を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の船舶である。
プラットフォームの高い方の部分(たとえば前部)の高さは、船舶が接岸される桟橋の高さと略同じになるように設定されていることが好ましい。また、プラットフォームの低い方の部分(たとえば後部)の高さは、水面よりやや高くなるように設定されていることが好ましい。この場合、乗員が桟橋から船舶に乗り降りする際のステップとしてプラットフォームの前部を使用することにより、桟橋から船舶への乗り降りが容易になる。また、たとえば乗員が水泳をするときに、乗員が船舶と水中との間を移動する際のステップとしてプラットフォームの後部を使用することにより、船舶と水中との間の移動が容易になる。さらに、プラットフォームの上部は、前側ほど高くなるように階段状に形成されているので、少なくとも1つの段差が、プラットフォームの上部に設けられている。この段差は、プラットフォームの後部から浸入してきた水を堰き止めることができる。これにより、船舶内部への水の浸入が抑制される。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記船外機は、前記船外機の前部を通る操舵軸線まわりに左右に回動できるように構成されており、前記切欠き孔は、前記船外機が前記操舵軸線まわりに任意の操舵角(全操舵角範囲内の任意の操舵角)まで回動された状態で前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過できるように、左右方向への長さが設定されている、請求項2記載の船舶である。
【0016】
この構成によれば、船外機が操舵された状態で水平軸線まわりに回動されても、船外機の下部は、プラットフォームに衝突することなく切欠き孔を通過する。そのため、乗員は、船外機を操舵原点まで戻す操作を行わずに、船外機の下部がプラットフォームの上方に達するまで船外機を水平軸線まわりに回動させることができる。したがって、利便性が高まる。
【0017】
請求項8記載の発明は、前記切欠き孔を塞ぐハッチと、前記ハッチを開けられるように、前記ハッチを前記プラットフォームに連結する連結部材とをさらに含む、請求項2または7記載の船舶である。
この構成によれば、切欠き孔が、ハッチによって塞がれている。乗員は、ハッチ上のスペースを利用することができる。したがって、船舶において乗員が自由に利用できるスペースが広げられる。また、ハッチは、連結部材によって開閉可能にプラットフォームに連結されている。したがって、ハッチが開かれていれば、船外機が水平軸線まわりに回動されるときに、ハッチが障害となることはない。
【0018】
ハッチは、手動で開閉されるように構成されていてもよいし、自動で開閉されるように構成されていてもよい。また、ハッチは、開動作または閉動作のみが自動で行われるように構成されていてもよい。
請求項9記載の発明は、前記ハッチは、前記ハッチが閉じられた状態で、前記ハッチの上面の少なくとも一部が前記プラットフォームの上面と同一平面上に位置するように構成されている、請求項8記載の船舶である。
【0019】
この構成によれば、プラットフォームの上面と、ハッチの上面の少なくとも一部とによって、平坦な広いスペースが形成される。乗員は、この広いスペース内をスムーズに移動することができる。したがって、利便性の高い広いスペースが船舶の後部に確保される。
請求項10記載の発明は、前記船外機の傾き状態を検知する傾き検知機構と、前記ハッチの開閉を検知する開閉センサと、前記傾き検知機構および開閉センサの検出値が入力され、それらの検出値に基づいて前記船外機を制御する制御装置とをさらに含み、前記制御装置は、前記船外機を回動させて前記船外機の下部を上方に移動させる場合において、前記ハッチが開かれていないときに、前記船外機の下部が前記切欠き孔の手前まで移動したときに、前記船外機の回動を停止させるように構成されている、請求項8または9記載の船舶である。
【0020】
この構成によれば、制御装置は、傾き検知機構の検出値に基づいて船外機の傾き状態を検知する。また、制御装置は、開閉センサの検出値に基づいてハッチの開閉を検知する。さらに、制御装置は、船外機を水平軸線まわりに回動させて、船外機の下部を上方に移動させる場合に、ハッチが開かれていなければ、船外機の下部が切欠き孔の手前まで移動したときに、船外機の回動を停止させる。これにより、船外機の衝突によるハッチおよび船外機の破損が防止される。
【0021】
傾き検知機構は、船外機の傾斜角度(位置)を検知するものであってもよいし、船外機の傾斜範囲のうちどの領域に船外機が位置するかを検知するものであってもよい。また、開閉センサは、開閉方向へのハッチの位置を検知するものであってもよいし、ハッチが開位置または閉位置にあるか否かを検知するものであってもよい。
請求項11記載の発明は、前記船外機の傾き状態を検知する傾き検知機構と、前記ハッチの開閉を検知する開閉センサと、前記ハッチを開くための開用アクチュエータを有し、前記ハッチが開く方向に前記ハッチを移動させる開機構と、前記傾き検知機構および開閉センサの検出値が入力され、それらの検出値に基づいて前記船外機および開用アクチュエータを制御する制御装置とをさらに含み、前記制御装置は、前記船外機の下部が前記プラットフォームの上方に移動するまで前記船外機を回動させるときに、前記傾き検知機構および開閉センサの検出値に基づいて、前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過するまでに、前記ハッチが開かれているか否かを検知する開閉検知ステップと、前記開閉検知ステップにおいて前記ハッチが開かれていないときに、前記開用アクチュエータを制御して、前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過するまでに前記ハッチを開かせる開ステップと、前記ハッチが開かれている状態で前記切欠き孔に対して前記船外機の下部を通過させる上昇ステップとを実行するように構成されている、請求項8または9記載の船舶である。
【0022】
この構成によれば、制御装置は、船外機の下部がプラットフォームの上方に移動するまで船外機を回動させるときに、開閉検知ステップを実行する。すなわち、制御装置は、傾き検知機構および開閉センサの検出値に基づいて、船外機の下部が切欠き孔を通過するまでに、ハッチが開かれているか否かを検知する。また、制御装置は、開閉検知ステップにおいてハッチが開かれていないときに、開ステップを実行する。すなわち、制御装置は、開用アクチュエータを制御して、船外機の下部が切欠き孔を通過するまでにハッチを開かせる。そして、制御装置は、上昇ステップを実行して、ハッチが開かれている状態で切欠き孔に対して船外機の下部を通過させる。これにより、船外機の下部が、ハッチに衝突することなく、プラットフォームの上方まで移動される。このように、この構成によれば、ハッチが自動で開かれるので、利便性が高い。また、船外機の下部が切欠き孔を通過するまでにハッチが開かれるので、ハッチに対する船外機の衝突が確実に防止される。これにより、ハッチおよび船外機の破損が防止される。
【0023】
請求項12記載の発明は、前記制御装置は、前記船外機を回動させて前記船外機の下部を上方に移動させる場合において、前記ハッチが開かれていないときに、前記船外機の下部が前記切欠き孔の手前まで移動したときに、前記船外機の回動を停止させる停止ステップをさらに実行し、前記停止ステップにおいて前記船外機の回動が停止されている状態で前記開閉検知ステップおよび開ステップを実行するように構成されている、請求項11記載の船舶である。
【0024】
この構成によれば、制御装置は、船外機を回動させて船外機の下部を上方に移動させる場合において、ハッチが開かれていないときに、停止ステップを実行する。すなわち、制御装置は、船外機の下部が切欠き孔の手前まで移動したときに、船外機の回動を停止させる。そして、制御装置は、停止ステップにおいて船外機の回動が停止している状態で開閉検知ステップおよび開ステップを実行する。すなわち、制御装置は、船外機の下部を切欠き孔の手前で停止させた状態で、ハッチの開閉を検知する。そして、ハッチが開かれていない場合には、制御装置は、船外機の下部を切欠き孔の手前で停止させた状態で、開用アクチュエータを制御してハッチを開かせる。これにより、船外機の衝突によるハッチおよび船外機の破損がより確実に防止される。
【0025】
請求項13記載の発明は、前記ハッチを閉じるための閉用アクチュエータを有し、前記ハッチが閉じる方向に前記ハッチを移動させる閉機構をさらに含み、前記制御装置は、前記船外機の下部が前記プラットフォームの上方から下方に移動するまで前記船外機を回動させるときに、前記ハッチが開かれている状態で前記切欠き孔に対して前記船外機の下部を通過させる下降ステップと、前記下降ステップにおいて、前記傾き検知機構の検出値に基づいて前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過したことを検知する通過検知ステップと、前記通過検知ステップにおいて前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過したことが検知された後に、前記閉用アクチュエータを制御して、前記ハッチを閉じさせる閉ステップとを実行するように構成されている、請求項11または12記載の船舶である。
【0026】
この構成によれば、制御装置は、船外機の下部がプラットフォームの上方から下方に移動するまで船外機を回動させるときに、下降ステップを実行する。すなわち、制御装置は、ハッチが開かれている状態で切欠き孔に対して船外機の下部を通過させる。そして、制御装置は、通過検知ステップを実行して、下降ステップにおいて、傾き検知機構の検出値に基づいて船外機の下部が切欠き孔を通過したことを検知する。このとき、船外機の下部が切欠き孔を通過したことが検知されれば、制御装置は、通過が検知された後に、閉ステップを実行する。すなわち、制御装置は、閉用アクチュエータを制御して、ハッチを閉じさせる。このように、この構成によれば、ハッチが自動で閉じられるので、利便性が高い。また、船外機の下部が切欠き孔を通過した後にハッチが閉じられるので、船外機の下部に対するハッチの衝突が確実に防止される。これにより、ハッチおよび船外機の破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1実施形態に係る船舶を示した斜視図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る船舶を示した側面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る船舶を示した平面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る船底後部を下方から見た斜視図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係る船外機が上下に回転する状態を示した側面図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る船外機がチルトアップした状態の船舶を示した斜視図である。
【図7】この発明の第1実施形態に係る船舶の内部の概略を示した断面図である。
【図8】この発明の第1実施形態に係る船舶の内部の概略を示した平面図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係る船舶の船尾の斜視図である。
【図10】この発明の第2実施形態に係る船舶の船尾の斜視図である。
【図11】図12に示すXI−XI線に沿う船舶の船尾の部分断面図である。
【図12】この発明の第2実施形態に係る船舶の船尾の平面図である。
【図13】この発明の第2実施形態に係る船外機の傾き状態を検知するための傾き検知機構の側面図である。
【図14】図13に示す矢印XIVから見た傾き検知機構の模式図である。
【図15】この発明の第2実施形態に係る船舶に備えられたハッチおよびこれに関連する構成の平面図である。
【図16】図15に示すXVI−XVI線に沿うハッチおよびこれに関連する構成の断面図である。
【図17】図15の一部を拡大した図である。
【図18】この発明の第2実施形態に係る船舶の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図19】船外機が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときのフローチャートである。
【図20】船外機が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチが閉じられるときのフローチャートである。
【図21】この発明の第3実施形態に係る船舶に備えられたハッチおよびこれに関連する構成の平面図である。
【図22】図21に示すXXII−XXII線に沿うハッチおよびこれに関連する構成の断面図である。
【図23】船外機が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときのフローチャートである。
【図24】この発明の第4実施形態に係る船舶に備えられたハッチおよびこれに関連する構成の平面図である。
【図25】図24に示すXXV−XXV線に沿うハッチおよびこれに関連する構成の断面図である。
【図26】船外機が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチが閉じられるときのフローチャートである。
【図27】この発明の他の実施形態に係るハッチおよびこれに関連する構成を後方から見た図である。
【図28】この発明のさらに他の実施形態に係るハッチおよびこれに関連する構成を後方から見た図である。
【図29】この発明のさらに他の実施形態に係るハッチおよびこれに関連する構成を後方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
第1実施形態
図1〜図3は、この発明の第1実施形態に係るクルーザータイプの船舶A1を示している。
船舶A1の船体10は、船体底部を構成するハル11と、デッキ12とで構成されている。ハル11とデッキ12との周縁部は、水密的に接合されている。船体10の周囲には、ガンネル部10aが形成されている。また、船体10の上部における前後方向の略中央から後部にかけて周囲が開放された操縦室13が設けられている。操縦室13内の右舷側部分には、操舵ハンドル14と運転席15とが前後に並んで設けられている。また、操舵ハンドル14の近傍には、船舶A1を操船するために必要なスタートスイッチ、計器および加減速操作するための操作レバー等の各種の装置が設けられている。
【0029】
デッキ12の上面における操縦室13よりも前部側部分には広い平面部からなる船首側デッキ12aが形成されている。また、図3に示すように、デッキ12の上面における操縦室13よりも後部側部分には船首側デッキ12aよりも狭い平面部からなる船尾側デッキ12bが形成されている。船首側デッキ12aと船尾側デッキ12bとの間は、操縦室13の左右両側に形成された前後に細長く延びる通路12c,12dで結ばれている。また、図1に示すように、船尾側デッキ12bの後方下部には、平面視略U字状のプラットフォーム16が形成されている。
【0030】
また、船体10の後部における船尾側デッキ12bの幅方向の中央側と、プラットフォーム16の前部側部分の幅方向の中央側とには、船外機配置孔17が上下に貫通して形成されている。プラットフォーム16は、船外機配置孔17の後部側部分(後述する切欠き孔17a)の両側と後側に形成されている。プラットフォーム16は、前部側に位置する前部側ステップ16aと、後部側に位置する後部側ステップ16bとで構成されている。
【0031】
また、後部側ステップ16bの前縁部の左右方向の中央部は、船外機配置孔17の後縁部に沿う凹部に形成されている。また、前記凹部の両側部分は、それぞれ、左右方向の中央部が前部側ステップ16a側に突出した凸部に形成されている。したがって、前部側ステップ16aと後部側ステップ16bとの境界部は波形に曲がった曲線になっている。
また、プラットフォーム16の上部は、前側ほど高くなるように階段状に形成されている。すなわち、前部側ステップ16aと後部側ステップ16bとの間には、前部側ステップ16aの方が後部側ステップ16bよりも高くなるように形成された段差が設けられている。前部側ステップ16aの高さは、たとえば、船舶A1が接岸したときに、桟橋の高さと略同じ高さになるように設定されている。また、後部側ステップ16bの高さは、たとえば、後部側ステップ16bが水面よりやや高くなるように設定されている。このため、乗員は、前部側ステップ16aを利用することにより、容易に船舶A1に乗り降りすることができる。また、乗員は、後部側ステップ16bを利用することにより、船舶A1と水中との間を容易に移動することができる。さらに、船舶A1内に後方から浸入しようとする水は、前部側ステップ16aと後部側ステップ16bとの間の段差によって堰き止められる。すなわち、前部側ステップ16aと後部側ステップ16bとの間の段差は、水を堰き止める堰としても機能する。
【0032】
また、図4に示すように、ハル11の底部の後部側における幅方向の中央には、下部と後部とが開放された凹部11aが形成されている。この凹部11aの後部は船外機配置孔17に連なっている。ダブルエンダー型のボトムトランサム21は、凹部11aの後部によって形成されている。ボトムトランサム21は、水切り面22(第1水切り面)と、水切り面22から後方に突出する船外機取付部23とで構成されている。水切り面22は、下端部よりも上端部がやや後方に位置する垂直に近い面からなる。水切り面22は、凹部11aの前側に位置する縦壁面を構成している。水切り面22は、ハル11の略V字状の下縁部に沿って略一定の幅で延びる左右対称の略V字状の面で構成されている。
【0033】
また、船外機取付部23の下縁部(図4では、上縁部)は、後面視において、水切り面22の上縁部(図4では、下縁部)に沿った略V字状に形成されている。さらに、船外機取付部23の上縁部(図4では、下縁部)は、後面視において、左右方向に水平に延びる直線状に形成されている。船外機取付部23は、後面視において、上下に所定の長さを備えた左右対称の略五角形に形成されている。
【0034】
また、船外機取付部23の下縁部は、側面視において、水切り面22の左右方向の中央部の上端から上方に向かって後方に延びる傾斜部分と、その傾斜部分の後端から後方に垂直に近い角度で延びる部分とで構成されている。すなわち、船外機取付部23の表面は、四角形の一対の傾斜面部23a,23bと、五角形の後面部23cとで構成されている。各傾斜面部23a,23bは、左右対称の凸面からなり、外側(左右方向の外側)および後部側に行くほど高さが徐々に高くなるように構成されている。また、後面部23cは、垂直に近い傾斜面からなる。後面部23cは、水切り面として機能する。
【0035】
また、図4に示すように、船外機取付部23の後面部23cは、船外機配置孔17を構成する周面の前側部分を構成している。また、図5に示すように、船外機取付部23の後部には、取付部24が形成されている。船外機25は、取付部24に取り付けられている。船外機取付部23の上部における取付部24の前側には、船外機25がチルトアップしたときに、船外機25の上部が入る接触回避用凹部24aが形成されている。
【0036】
また、図4に示すように、ハル11は、凹部11aの左右両側に位置する一対の延設部11bを含む。各延設部11bは、その前部側部分と略同じ高さで前後に延びている。また、各延設部11bは、船外機配置孔17の前後方向の略中央に対応する部分まで後方に延びている。一方の延設部11bは、その後端部に形成された水切り面22a(第2水切り面)を含む。また、他方の延設部11bは、その後端部に形成された水切り面22b(第2水切り面)を含む。各水切り面22a,22bは、下端部よりも上端が後方に位置する傾斜面で構成されている。各水切り面22a,22bの傾斜角度は、水切り面22および後面部23cと平行になるように設定されている。各水切り面22a,22bは、後面部23cよりも後方に配置されている。
【0037】
また、図4に示すように、ハル11の底面における水切り面22a,22bの後方部分は、後ろにいくほど徐々に高くなる傾斜面に形成されている。また、この2つの傾斜面間(船外機配置孔17の後方部分)は水平面で構成されている。すなわち、プラットフォーム16の後部側ステップ16bの左右方向の中央部は厚みが均一で水平に配置された平板状に形成されている。そして、後部側ステップ16bの左右方向の両側部分の上面は、中央部に連なる水平面に形成されている。また、後部側ステップ16bの左右方向の両側部分の下面は、後部よりも前部の方が低くなる傾斜面に形成されている。これにより、後部側ステップ16bの左右方向の両側部分は、前部側にいくほど徐々に厚みが増加している。また、後部側ステップ16bの中央部の下面は、その両側部分の下面後端部よりも上方に配置されている。このため、後部側ステップ16bの下面における中央部と両側部分との間には、中央部の方が両側部分よりも高い段差が形成されている。
【0038】
また、図4に示すように、プラットフォーム16における船外機配置孔17の後方には、切欠き孔17aが形成されている。切欠き孔17aの左右方向および前後方向の長さは、たとえば、それぞれ、船外機配置孔17の左右方向および前後方向の長さの半分程度である。
また、船外機25は、船外機配置孔17の周囲の壁部によって囲まれている。これによって船外機25は前部や両側部だけでなく後部も保護されている。図5に示すように、船外機25は、スイベルブラケットやクランプブラケットからなる取付部材26を介して取付部24に取り付けられている。取付部材26は、水平に延びるチルト・トリム軸26aと、鉛直に延びる操舵軸(図示せず)とを備えている。船外機25は、チルト・トリム装置(図示せず)の作動によりチルト・トリム軸26aを中心として、上下に回動できるように構成されている。また、船外機25は、操舵軸(図示せず)を中心として、左右に回動できるように構成されている。
【0039】
また、図5に示すように、船外機25は、ロアケース25aと、ロアケース25aの上部に連結されたアッパーケース25bと、アッパーケース25bの上部に連結されたカウリング(エンジンカバー)25cとを備えている。また、図示はしないが、船外機25は、推進機と、ドライブシャフトと、エンジンと、クランク軸とを備えている。推進機は、ロアケース25aに設けられている。推進機は、略水平に配置された推進軸(図示せず)と、推進軸の後端に取り付けられたプロペラ27とを含む。また、ドライブシャフトは、アッパーケース25bに設けられている。ドライブシャフトは、クランク軸に連結されている。エンジンおよびクランク軸は、カウリング25cに設けられている。エンジンが駆動されると、その駆動力はクランク軸、ドライブシャフト、推進軸等を介してプロペラ27に伝達される。これにより、プロペラ27が回転して推進力が発生される。
【0040】
前述のように、船外機25は、チルト・トリム軸26aを中心として上下に回動できるように構成されている。船外機25は、船舶A1の航走状態に応じてトリム領域の範囲で回動角度(傾斜角度)が変更される。また、船外機25の点検(たとえば、プロペラ27の点検)は、船舶A1の停止時に、船外機25がチルトアップされた状態で行われる。図5の二点鎖線で示した船外機25および図6に示した船外機25は、チルトアップした状態を示している。
【0041】
船外機25の下部(ロアケース25aやプロペラ27)は、船外機25がチルトアップされる際に、切欠き孔17a内を通過する。すなわち、切欠き孔17aは、船外機25の下部を通過させるために設けられている。また、カウリング25cの前部(図5では、二点鎖線で示されたカウリング25cの下部)は、船外機25のチルトアップが終了したときに(船外機25の傾斜角度が所定値以上になったときに)、接触回避用凹部24aの内部に入る。これにより、プラットフォーム16における乗員が移動できるスペースが広げられる。さらに、船外機取付部23の上部の空間が有効に利用される。
【0042】
また、図4に示すように、後部側ステップ16bの左舷側底面における水切り面22aの近傍には、後部サイドスラスタ31aが設けられている。また、図2に示すように、ハル11の船首側下部には、ハル11を左右に貫通する前部サイドスラスタ31bが設けられている。後部サイドスラスタ31aおよび前部サイドスラスタ31bは、それぞれ、左右に延びる筒状本体と、筒状本体の内部中央に設けられたプロペラとを備えている。各プロペラは、ハル11内に設置された駆動モータ(図示せず)によって回転される。各プロペラの回転によって、筒状本体内を一方から他方に向う水流が発生される。また、各プロペラの回転方向は、駆動モータによって変更される。船舶A1の船尾は、後部サイドスラスタ31aに設けられたプロペラが回転されることにより、左または右に移動される。また、船舶A1の船首は、前部サイドスラスタ31bに設けられたプロペラが回転されることにより、左または右に移動される。
【0043】
また、図1に示すように、船舶A1は、船尾側デッキ12bにおける船外機25(チルトアップしていない状態)の上部に配置されたテーブル32(天井部)と、デッキ12の後部に配置された門形の浮翼33とを備えている。テーブル32は、物を置くための台として使用される。さらに、テーブル32は、船外機配置孔17に物や人が落下したりすることを防止する。また、浮翼33は、デッキ12の後部から前方に向かって斜め上方に延びている。また、図2および図7に示すように、船舶A1は、デッキ12の外周部における中央側から前部に至る範囲に配置された手すり34(図2および図7以外の図では省略している。)を備えている。また、図7および図8に示すように、船舶A1は、船体10の内部に設けられた設置スペースを備えている。各種の部屋や、発電機、燃料タンク、清水タンクおよびバッテリ等は、この設置スペースに設けられている。
【0044】
図7に示すように、船体10の内部は、デッキ床面35を境にして上下に区画されている。デッキ床面35の上部には、前述した操縦室13が配置されている。操縦室13内における左舷側から後部にかけては、たとえば平面視L形のソファ36が設置されている。前述したテーブル32は、ソファ36の後部側部分の背面に設置されている。また、ソファ36の後部側部分は、取り外しが可能な蓋部材としても機能する着脱部36aを含む。接触回避用凹部24aは、着脱部36aの下方に位置している。乗員は、着脱部36aを取り外すことにより、操縦室13から船外機25に容易にアクセスすることができる。
【0045】
ソファ36は、船外機25の運転音を遮蔽して操縦室13に届かないようにする効果も備えている。また、図1に示すように、ソファ36の右舷後方側には、船尾側デッキ12bとプラットフォーム16との間を仕切る開閉ドア36bが設けられている。船尾側デッキ12bとプラットフォーム16との間には、船尾側デッキ12bの方がプラットフォーム16よりも高くなった段差が設けられており、開閉ドア36bは、船尾側デッキ12bの後縁部に沿うように設置されている。
【0046】
図7に示すように、船体10の内部におけるデッキ床面35の下部側には、船舶A1の前部側に配置されたメインサロン37や、後部側に配置された休憩室38、休憩室38の後方に配置されたスペース39等が設けられている。休憩室38は、乗員が休憩するための空間である。また、前述した発電機等や各種の配管や装置等は、スペース39に設置されている。メインサロン37には、平面視略U字形のソファ37a、流し台37bおよびトイレ37c等が設置されている。また、休憩室38にはベッド38aが設置されている。ベッド38aの下部には、燃料タンク38bが設置されている。
【0047】
このように、船舶A1では、船体10内のスペースが有効に利用されている。また、船舶A1が船外機25によって推進されるため、エンジン等の所定の機関を配置するためのスペースを船体10内に設置する必要がない。そのため、船体10内において乗員が利用できるスペースが増加されている。
運転者および同乗者を含む複数の乗員(乗組員または乗客)は、たとえば、船舶A1の右舷側が接岸され、船舶A1が停止している状態であれば、前部側ステップ16aの右舷側から船舶A1に乗り込み、開閉ドア36bを開けて船尾側デッキ12bを通過して操縦室13内に入ることができる。そして、運転者は運転席15に座って操舵ハンドル14を操作することができる。また、運転者以外の乗員は、操縦室13内のソファ36に座ったり、メインサロン37のソファ37aに座ったり、ベッド38a上で横になったりすることができる。複数の乗員を乗せた船舶A1は、運転席15に座った運転者が操舵ハンドル14の近傍に設置されたスタートスイッチをオンにした状態で、操作レバーや操舵ハンドル14を操作することにより航走される。
【0048】
船舶A1は、船舶A1の航走速度が加速されるにしたがって、船首側が船尾側よりも上方に位置するように傾斜していく。一方、ハル11の底面後部側における凹部11aの左右両側部分(一対の延設部11b)は、後方に向かって延長されている。さらに、一対の延設部11bの後端部には、水切り面22a,22bが設けられている。そのため、前後方向で見た場合の船体10の重心と水切り面(水切り面22a,22b)との間の距離が延長されている。これにより、船舶A1は高速航走が可能になる。そして、船舶A1の航走速度が所定の速度以上になると、水切り面22,22a,22bによって水面の水が水切りされ、船外機取付部23は水面よりも上方に位置する。これにより、船外機取付部23が抵抗になって、船舶A1の航走に悪影響が生じることが防止される。
【0049】
また、船舶A1の航走中において、船外機25の下部は、水切り面22の下縁部から後方に向って斜めに上昇する水流の中に入る。そのため、船外機25のプロペラ27は、確実に水流を捕らえることができる。これにより、船舶Aは、安定した航走が行える。特に、船舶Aが高速で旋回する際に、船舶Aは、エアードローを生じさせることなく安定した旋回を行える。
【0050】
また、船舶Aが水上で停止したときには、船外機取付部23が水中に没して浮力を生じさせる。そのため、乗員が船尾側に移動しても、船舶Aの船尾側が下方に沈んで、船舶A1が大きく傾くことが防止される。乗員は、その状態で、船首側デッキ12aやプラットフォーム16で釣りをしたり、船首側デッキ12aで日光浴をしたりすることができる。また、乗員が水泳をする場合には、後部側ステップ16bから水中に降りることができる。さらに、必要に応じて、プラットフォーム16上を自由に移動することができる。
【0051】
また、たとえば船外機25の点検等を行う必要が生じて、水上で、船外機25をチルトアップさせる操作をすると、船外機25は、チルト・トリム軸26aを中心として、下部を上方に移動させるように船外機配置孔17内で回転する。その際、船外機25の下部は、切欠き孔17a内を通過して上方に移動する。そして、図5に示すように、カウリング25cの前部は、接触回避用凹部24aの内部に入る。このため、船外機25は周囲の物に接触することなくスムーズに回転できる。そして、船舶A1を接岸させる際には、後部サイドスラスタ31aおよび前部サイドスラスタ31bを作動させることによりスムーズな接岸ができる。
【0052】
以上のように本実施形態では、船外機配置孔17が船体10の船尾に設けられている。船外機25は、船外機配置孔17の前壁部の取付部24に取り付けられている。したがって、乗員は、プラットフォーム16における船外機25の周囲部分を自由に移動できる。
また、船外機25が取り付けられる取付部24が、船外機配置孔17の前壁部の上部に設けられている。船外機配置孔17の前壁部は、水切り面22の後部に設けられた船外機取付部23の後壁面を構成している。これにより、水切り面22と船外機25との間の距離が延長されている。したがって、船外機25のプロペラ27にエアードローが生じることを防止でき、船舶A1の加速性能が向上する。
【0053】
また、船外機25がプラットフォーム16で囲まれているため、船舶A1の船尾を岸壁等に当接させたり、後方から物体が衝突してきたりしたときに、船外機25が破損することが防止される。さらに、ハル11の底部における船外機取付部23の両側に位置する部分(一対の延設部11b)が船尾側に延長され、その後端部に水切り面22a,22bが設けられている。そのため、前後方向で見た場合の船体10の重心と水切り面22a,22bとの間の距離が延長されている。これにより、船舶A1の加速性能がさらに向上される。また、従来の船舶が備えるトランサムに相当する水切り面22の後方に、さらに、水切り面22a,22bが設けられているため、船体10の重心と水切り面との距離を長くした場合と同様の加速性能が得られる。
【0054】
また、船外機配置孔17の後部に切欠き孔17aが設けられている。さらに、船外機取付部23の上部に接触回避用凹部24aが設けられている。そのため、船外機25をスムーズにチルトアップさせることできる。また、切欠き孔17aが設けられることによって、船外機配置孔17の全体の大きさが縮小されているため、プラットフォーム16における乗員が移動できるスペースが広げられている。また、船外機配置孔17の上方に船外機25を覆うテーブル32が設けられているため、船外機配置孔17の内部に物が落下したり乗員が落ちたりすることが防止される。
【0055】
また、プラットフォーム16は、前部側ステップ16aと、前部側ステップ16aよりも高さが低い後部側ステップ16bとを含む。そのため、前部側ステップ16aは、たとえば、乗員が桟橋と船舶A1との間を移動する際に利用される。また、後部側ステップ16bは、たとえば、乗員が船舶A1と水中との間の移動の際に利用される。したがって、乗員は、船舶A1と桟橋との間および船舶A1と水中との間を容易に移動することができる。さらに、前部側ステップ16aと後部側ステップ16bとの間の段差が、後部側ステップ16b上に浸入してきた水をせき止める堰として機能する。したがって、前部側ステップ16a上への水の浸入を抑制することができる。
【0056】
第2実施形態
以下では、本発明の第2実施形態に係る船舶A2を、図9〜図20を参照して詳細に説明する。この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、切欠き孔213を塞ぐことができるように構成されたハッチ203が、プラットフォーム202に取り付けられていることである。図9〜図20において、前述の図1〜8に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図9および図10は、この発明の第2実施形態に係る船舶A2の船尾の斜視図である。また、図11は、図12に示すXI−XI線に沿う船舶A2の船尾の部分断面図であり、図12は、船舶A2の船尾の平面図である。図9は、ハッチ203が閉じられた状態を示している。また、図10は、ハッチ203が開かれた状態で、右に操舵された船外機25がチルト・トリム軸210まわりに傾けられている状態を示している。また、図11および図12では、船舶A2の一部の構成の図示が省略されている。
【0058】
船舶A2は、船体201と、船体201の船尾に取り付けられた船外機25と、船外機25後方で船体201の船尾に取り付けられたプラットフォーム202と、プラットフォーム202に対して上下に開閉可能に取り付けられたハッチ203とを備えている。船体201は、船体201の船尾に設けられた船外機取付部204および船外機配置孔205を含む。船外機取付部204は、左右方向に関して、船体201の船尾の中央部に設けられている。船外機取付部204は、船体201の船尾の底部に設けられている。船外機取付部204は、船外機取付部204の後部に設けられた取付部24と、船外機取付部204の上部に設けられた接触回避用凹部24aとを含む。接触回避用凹部24aは、取付部24の前方に配置されている。
【0059】
また、船外機配置孔205は、船外機取付部204に隣接するように船外機取付部204の後方に配置されている。船外機配置孔205は、船体201の船尾を上下に貫通している。船外機配置孔205は、左右方向に関して、船体201の船尾の中央部に設けられている。船外機配置孔205は、たとえば、船体201の後端から前方に延びる切欠き状に形成されている。船外機配置孔205は、たとえば、船外機取付部204と略等しい幅(左右方向への長さ)を有している。船舶A2は、デッキ206の後部に取り付けられたガードレール207を備えている。船外機配置孔205への乗員の落下は、ガードレール207によって防止される。ガードレール207は、たとえば複数のパイプによって形成されている。ガードレール207は、平面視U字状の上部208と、上部208を支持する複数の足部209とを含む。図11において二点鎖線で示すように、上部208には、船外機25を覆うテーブル32が取り付けられていてもよい。
【0060】
船外機25は、船外機配置孔205を上下に挿通している。船外機25は、船外機配置孔205を挿通した状態で、取付部材26を介して取付部24に取り付けられている。船舶A2を上方から見ると、船外機25は、船外機配置孔205内に収容されている。また、船舶A2を上方から見ると、船外機25は、船体201およびプラットフォーム202によって取り囲まれている。したがって、船外機25は、船体201およびプラットフォーム202によって保護されている。
【0061】
また、図11に示すように、船外機25は、船体201に対してチルト・トリム軸210(水平軸線)まわりに上下に回動して傾くことができるように構成されている。チルト・トリム軸210は、取付部材26の上端部と、船外機25の前部とを通る水平な軸である。船外機25は、傾斜原点(図11において実線で示された船外機25の位置)と、最大傾斜位置(図11において二点鎖線で示された船外機25の位置)との間で傾くことができるように構成されている。傾斜原点は、プロペラ27の回転軸線L1が略水平になる位置である。また、最大傾斜位置は、プロペラ27がプラットフォーム202の上方に位置する位置である。
【0062】
船外機25は、船舶A2の高速航走時に、トリム領域(航走領域)の範囲で傾くように制御される。また、船外機25は、プロペラ27の点検時や船舶A2の係留時に、プロペラ27の回転が停止された状態で、チルト領域の範囲で傾くように制御される。さらに、船外機25は、船舶A2が浅瀬を航走するときや、船舶A2が浜辺に乗り付けられるときに、傾斜原点と最大傾斜位置との間に設けられたビーチング位置に位置するように制御される。 トリム領域は、船外機25の傾斜角度が相対的に小さい領域であり、チルト領域は、船外機25の傾斜角度が相対的に大きい領域である。トリム領域およびチルト領域は、互いに異なる領域である。また、ビーチング位置は、傾けられた船外機25の下端が船体201の下端(キール:keel)よりも上方に位置し、かつ、プロペラ27の少なくとも一部が水中にある位置である。ビーチング位置は、トリム領域またはチルト領域の一部であってもよい。
【0063】
また、船外機25は、傾斜原点と最大傾斜位置との間に設けられた停止位置(図11において一点鎖線で示された船外機25の位置)で停止できるように構成されている。停止位置は、ハッチ203が閉じられた状態で、船外機25がハッチ20およびプラットフォーム202に干渉しない位置である。この実施形態では、停止位置は、たとえば、ロワケース25aがハッチ203の閉位置の直下に位置するように設定されている。また、この実施形態では、停止位置とビーチング位置とが、たとえば同じ位置に設定されている。ビーチング位置は、停止位置と同じ位置に限らず、停止位置よりも傾斜原点側の位置であってもよいし、停止位置よりも最大傾斜位置側の位置であってもよい。
【0064】
また、図12に示すように、船外機25は、船体201に対して操舵軸211(操舵軸線)まわりに左右に回動できるように構成されている。船舶A2は、船外機25が左右に回動されることにより操舵される。操舵軸211は、船外機25の前部を通り、プロペラ27の回転軸線L1に直交する軸である。操舵軸211は、チルト・トリム軸210まわりの船外機25の傾斜角度が零のときに、たとえば略鉛直になるように構成されている。船外機25は、プロペラ27の回転軸線L1が前後方向に沿う操舵原点を中心に左右に回動できるように構成されている。また、船外機25は、操舵原点にあるときだけでなく左右に回動された状態でも、傾斜原点と傾斜最大位置との間でチルト・トリム軸210まわりに上下に回動できるように構成されている。船外機配置孔205は、右または左への船外機25の操舵角度が最大値に達した場合でも、船外機25が船体201に衝突しない大きさに形成されている。図12では、右および左への船外機25の操舵角度が最大値に達した状態を二点鎖線で示している。
【0065】
プラットフォーム202は、たとえば、左右対称の平板状に形成されている。プラットフォーム202は、船体201の船尾から後方に突出している。プラットフォーム202は、船体201の一部が後方に延設されたものであってもよいし、船体201とは別の部材であってもよい。この実施形態では、プラットフォーム202は、船体201とは別の部材であり、略水平になるように船体201の船尾に取り付けられている。プラットフォーム202の取り付け位置は、プラットフォーム202が水面よりやや高くなるように設定されている。プラットフォーム202の上面は、たとえば、水平面に沿う平坦状に形成されている。プラットフォーム202の左右および後方は開放されている。図9および図10に示すように、デッキ206の後部のうち船外機配置孔205の右側の部分は、操縦室13とプラットフォーム202とを繋ぐ通路212になっている。
【0066】
乗員は、通路212を通って、操縦室13とプラットフォーム202との間を移動することができる。また、乗員は、プラットフォーム202の左右または後方を通って、プラットフォーム202と水中との間を移動することができる。プラットフォーム202が水面よりやや高くなるように船体201に取り付けられているので、乗員は、プラットフォーム202を利用することにより、プラットフォーム202と水中との間を容易に移動することができる。
【0067】
また、プラットフォーム202は、たとえば、船体201の船尾のうちプラットフォーム202が取り付けられた部分と略等しい幅(左右方向への長さ)を有している。プラットフォーム202の幅は、船体201から離れるに連れて緩やかに減少している。プラットフォーム202の左右の側面は、それぞれ、外側に凸になる湾曲状に形成されている。プラットフォーム202の左右の側面は、それぞれ、船体201の左右の側面に殆ど段差なく連なっている。プラットフォーム202の左右の側面の厚み(上下方向への長さ)は、船体201から離れるに連れて緩やかに減少している。
【0068】
また、プラットフォーム202の後端部の右端部および左端部は、後方に突出している。さらに、プラットフォーム202の後端部のうち右端部および左端部の間の部分は、前方に凹んでいる。また、プラットフォーム202は、プラットフォーム202の前端から後方に延びる切欠き孔213を有している。プラットフォーム202の前端部のうち切欠き孔213の両側の部分は、船体201の後端に沿う形状に形成されている。
【0069】
切欠き孔213は、プラットフォーム202を上下に貫通している。切欠き孔213は、平面視において、たとえば、左右に長い略長方形状に形成されている。切欠き孔213は、左右方向に関して、プラットフォーム202の中央部に配置されている。切欠き孔213は、たとえば、船外機配置孔205と略等しい幅を有している。切欠き孔213は、後方から船外機配置孔205に連通している。プラットフォーム202の上面のうち切欠き孔213の後方の部分は、少なくとも乗員が左右に移動できる幅(前後方向への長さ)を有している。したがって、乗員は、ハッチ203が開かれた状態でも、プラットフォーム202上を左右に移動することができる。
【0070】
たとえば船外機25が傾斜原点から傾斜最大位置までチルト・トリム軸210まわりに回動されるとき、プロペラ27を含む船外機25の下部は、切欠き孔213を通ってプラットフォーム202の上方まで移動される。切欠き孔213は、右または左への船外機25の操舵角度が最大の状態で船外機25が傾斜最大位置まで回動されるときでも、船外機25の下部がプラットフォーム202に干渉しない大きさに設定されている。したがって、船外機25が任意の操舵角まで操舵された状態でチルト・トリム軸210まわりに回動されても、船外機25の下部がプラットフォーム202に衝突することはない。そのため、乗員は、船外機25を操舵原点まで戻す操作を行わずに、船外機25をチルト・トリム軸210まわりに回動させることができる。したがって、利便性が高い。
【0071】
ハッチ203は、たとえば、平板部214と、段部215とを含む。平板部214は、切欠き孔213全体を塞ぐことができるように形成されている。この実施形態では、平板部214は、たとえば、左右に長い略長方形状に形成されている。平板部214の後端部は、ヒンジ216(図16参照:連結部材)によって、プラットフォーム202に対して上下に回動可能に連結されている。ハッチ203は、平板部214の後端部を中心に閉位置(図9に示す位置)と開位置(図10に示す位置)との間で上下に開閉される。ハッチ203の開閉は、たとえば、段部215に取り付けられたU字状のハンドル217が乗員によって上下動されることにより行われる。また、ハッチ203の開閉は、船外機25の傾斜角度が停止位置に対応する値以下のときに行われる。すなわち、この実施形態では、船外機25の傾斜角度が停止位置に対応する値を超えると、船外機25の一部が切欠き孔213内に入り込むように構成されている。そのため、船外機25の傾斜角度が停止位置に対応する値を超えている場合には、ハッチ203が開かれた状態に維持される。
【0072】
また、段部215は、平板部214の前端部に設けられている。段部215は、平板部214と略等しい幅(左右方向への長さ)を有している。段部215は、ハッチ203が閉じられた状態で、平板部214より高くなるように形成されている。段部215は、ハッチ203が閉じられた状態で、船外機配置孔205の後部に入り込むように構成されている。また、段部215の前端部は、船外機25の後部に沿うように、後方に凸になる左右対称の湾曲状に形成されている。したがって、ハッチ203が閉じられた状態では、船外機25の後部と船体201との間の左右の隙間が、段部215によって埋められて小さくなる。そのため、乗員が、船外機配置孔205に落下することが防止される。さらに、ハッチ203が閉じられた状態では、段部215が平板部214よりも高くなっているので、乗員が、船外機配置孔205に落下することがより確実に防止される。
【0073】
ハッチ203は、ハッチ203が閉じられた状態で、平板部214の上面がプラットフォーム202の上面と同一平面上に位置するように構成されている。したがって、ハッチ203が閉じられた状態では、プラットフォーム202の上面およびハッチ203の上面(平板部214の上面)によって、広いスペースが確保される。さらに、平板部214の上面がプラットフォーム202の上面と同一平面上に位置するので、乗員は、ハッチ203を通って、プラットフォーム202上を左右にスムーズに移動することができる。
【0074】
このように、ハッチ203が設けられることにより、プラットフォーム202の前後方向への長さが抑えられつつ、広いスペースが船舶A2の後部に確保される。したがって、船舶A2の航走性の低下が防止される。すなわち、プラットフォーム202が前後に長いと、船舶A2の航走時に、プラットフォーム202が水中に浸かって、船舶A2の航走性が低下するおそれがある。したがって、プラットフォーム202の前後方向への長さが抑えられることにより、船舶A2の航走性の低下が防止されつつ、広いスペースが船舶A2の後部に確保される。船舶A2の全長が9.27mの場合、プラットフォーム202の前後方向への長さは、たとえば、0.8〜0.9mである。
【0075】
また、前述のように、この実施形態では、ビーチング位置が停止位置と同じ位置に設定されている。したがって、乗員は、ハッチ203が閉じられた状態で、船外機25をビーチング位置に位置させることができる。そのため、船外機25がトリム領域にある場合だけでなく、ビーチング位置にある場合でも、広いスペースが船舶A2の後部に確保される。したがって、乗員は、たとえば船外機25がビーチング位置にある状態で船舶A2が浜辺に乗り付けられたときに、船舶A2の後部に確保された広いスペースを有効に利用することができる。
【0076】
図13は、船外機25の傾き状態を検知するための傾き検知機構218の側面図である。また、図14は、図13に示す矢印XIVから見た傾き検知機構218の模式図である。図13および図14は、船外機25が傾斜原点にある状態を示している。
船舶A2は、チルト・トリム軸210まわりの船外機25の傾き状態を検知するための傾き検知機構218を備えている。傾き検知機構218は、ブラケット219を介して取付部24に取り付けられた傾きセンサ220と、アーム221を介してチルト・トリム軸210に取り付けられた検知対象222とを含む。傾きセンサ220は、たとえば、近接センサなどの非接触センサであってもよいし、リミットスイッチなどの接触センサであってもよい。この実施形態では、傾きセンサ220は、近接センサである。図14に示すように、傾きセンサ220は、検知対象222に対して左右方向に位置をずらして配置されている。傾きセンサ220は、制御装置223に電気的に接続されている。
【0077】
また、検知対象222は、船外機25とともにチルト・トリム軸210まわりに回動するように構成されている。図14において実線で示す検知対象222の位置は、船外機25が傾斜原点にあるときの位置である。また、図14において二点鎖線で示す検知対象222の位置は、船外機25が傾斜最大位置にあるときの位置である。検知対象222は、チルト・トリム軸210まわりの船外機25の回動に伴って、これらの位置の間をチルト・トリム軸210まわりに回動する。
【0078】
船外機25の傾斜角度が停止位置に対応する値以上になると、検知対象222の一部が傾きセンサ220に対向する。これにより、傾きセンサ220がオンに切り替わって、傾きセンサ220から制御装置223に信号が入力される。したがって、船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで移動されるとき、船外機25が停止位置に達すると、傾きセンサ220から制御装置223に信号が入力される。また、船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで移動されるとき、船外機25が停止位置を通過すると、傾きセンサ220からの信号の出力が停止される。したがって、制御装置223は、傾きセンサ220からの信号の有無に基づいて、船外機25が停止位置に達したことを検知することができる。
【0079】
図15は、この発明の第2実施形態に係る船舶A2に備えられハッチ203およびこれに関連する構成の平面図である。また、図16は、図15に示すXVI−XVI線に沿うハッチ203およびこれに関連する構成の断面図である。また、図17は、図15の一部を拡大した図である。
船舶A2は、ハッチ203の開閉を検知する開閉検知機構224と、ハッチ203を閉じた状態でロックするロック機構225とを備えている。開閉検知機構224は、プラットフォーム202に取り付けられた開閉センサ226と、ハッチ203に取り付けられた検知対象227とを含む。開閉センサ226は、たとえば、近接センサなどの非接触センサであってもよいし、リミットスイッチなどの接触センサであってもよい。この実施形態では、開閉センサ226は、近接センサである。開閉センサ226は、プラットフォーム202に設けられた一対の支持部228の一方に取り付けられている。開閉センサ226の上端部は、一方の支持部228に設けられた凹部229の底部に配置されている。
【0080】
また、検知対象227は、ハッチ203の下面に取り付けられている。ハッチ203が開閉されると、検知対象227は、ハッチ203とともに上下に回動される。また、ハッチ203が閉じられると、ハッチ203の右端部および左端部がそれぞれ一対の支持部228に支持される。さらに、ハッチ203が閉じられると、検知対象227が、凹部229に入り込んで、開閉センサ226に対向する。これにより、開閉センサ226がオンに切り替わって、開閉センサ226から制御装置223に信号が入力される。したがって、制御装置223は、開閉センサ226からの信号の有無に基づいて、ハッチ203が閉じられているか否かを検知することができる。
【0081】
また、ロック機構225は、2つの突起230と、2つの係合部材231と、2つの操作部材232とを含む。2つの突起230は、それぞれ、ハッチ203の右端部および左端部に取り付けられている。2つの突起230の先端部は、それぞれ、ハッチ203の右側面および左側面から側方に突出している。2つの係合部材231は、ハッチ203が閉じられたときにそれぞれ2つの突起230に対向する位置で、プラットフォーム202に取り付けられている。また、2つの操作部材232は、それぞれ、ハッチ203の右端部および左端部に取り付けられている。2つの操作部材232は、それぞれ、2つの突起230の近傍に位置している。2つの操作部材232は、たとえば、図15〜図17に示すような回動式のレバーであってもよいし、押しボタンであってもよい。各操作部材232のつまみ233は、ハッチ203の上面から突出しないように配置されている。各突起230は、乗員によって対応する操作部材232が操作されることにより進退する。この実施形態では、たとえば、各操作部材232が右または左まわりに90度回動されることにより、操作部材232の回動が対応する突起230の直線運動に変換されて、各突起230が進退する。ハッチ203が閉じられた状態で各突起230が進出されると、各突起230の先端部が対応する係合部材231に係合する。これにより、ハッチ203が閉じられた状態でロックされる。
【0082】
図18は、船舶A2の電気的構成を説明するためのブロック図である。
船舶A2は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置223を備えている。船舶A2に備えられた複数の電気部品は、制御装置223に電気的に接続されている。また、前記複数の電気部品は、制御装置223によって制御される。より具体的には、船外機25、傾きセンサ220、開閉センサ226、アップスイッチ234、ダウンスイッチ235、およびブザー236は、制御装置223に電気的に接続されている。船外機25およびブザー236は、制御装置223によって制御される。ブザー236は、警告装置の一例である。
【0083】
また、傾きセンサ220、開閉センサ226、アップスイッチ234、およびダウンスイッチ235からの信号は、制御装置223に入力される。アップスイッチ234は、船外機25をチルト・トリム軸210(図11参照)まわりに回動させて、船外機25の下部を上昇させるときに操作されるスイッチである。また、ダウンスイッチ235は、船外機25をチルト・トリム軸210まわりに回動させて、船外機25の下部を下降させるときに操作されるスイッチである。アップスイッチ234およびダウンスイッチ235は、たとえば、操舵ハンドル14(図2参照)に近傍に配置されている。アップスイッチ234は、トリムアップスイッチおよびチルトアップスイッチを含む複数のスイッチであってもよいし、単一のスイッチであってもよい。同様に、ダウンスイッチ235は、トリムダウンスイッチおよびチルトダウンスイッチを含む複数のスイッチであってもよいし、単一のスイッチであってもよい。
【0084】
図19は、船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときのフローチャートである。以下では、図11、図18および図19を参照して、第2実施形態に係る船舶A2において船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときのフローを説明する。
乗員によってアップスイッチ234が操作されて、トリムアップ操作が行われると(ステップS1)、傾斜原点にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の上昇が開始される(ステップS2)。そして、船外機25が停止位置に達したか否かが、傾きセンサ220からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS3)。より具体的には、船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときに、船外機25が停止位置に達すると、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力される。したがって、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力されていない場合(ステップS3でNoの場合)には、引き続き船外機25が停止位置に達したか否かが、制御装置223によって判断される。また、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力された場合(ステップS3でYesの場合)には、制御装置223は、船外機25が停止位置に達したと判断して、船外機25の回動を停止させる(ステップS4)。
【0085】
次に、乗員によってアップスイッチ234が操作されて、チルトアップ操作が行われると(ステップS5)、ハッチ203が開かれているか否かが、開閉センサ226からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS6)。より具体的には、ハッチ203が開いている場合には、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力されない。したがって、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力されていない場合(ステップS6でYesの場合)には、停止位置にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の上昇が開始される(ステップS7)。そして、船外機25が最大傾斜位置に達すると、チルトアップが停止される(ステップS8)。すなわち、プロペラ27を含む船外機25の下部が切欠き孔213を通ってプラットフォーム202の上方に達すると、チルトアップが停止される。
【0086】
一方、ハッチ203が開かれていない場合(ハッチ203が閉じられている場合)には、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力される。したがって、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力されている場合(ステップS6でNoの場合)には、ブザー236が制御装置223によって制御されて、ハッチ203の開け忘れに対する警告音が発せられる(ステップS9)。そして、警告音が発せられたまま、再びハッチ203が開かれているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS10)。このとき、ハッチ203が閉じられていれば(ステップS10でNoの場合)、引き続き警告音が発せられる。また、乗員によってハッチ203が操作されて開かれていれば(ステップS10でYesの場合)、警告音が停止される(ステップS11)。
【0087】
次に、チルトアップ操作が行われたか否かが、アップスイッチ234からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS12)。このとき、チルトアップ操作が行われた場合(ステップS12でYesの場合)には、再びハッチ203が開かれているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS6に戻る)。そして、ハッチ203が開かれていれば(ステップS6でYesの場合)、チルトアップが開始され(ステップS7)、船外機25が最大傾斜位置に達した後にチルトアップが停止される(ステップS8)。一方、乗員によって開かれたはずのハッチ203が、たとえば風などによって閉まっている場合には、再び警告音が発せられ(ステップS6でNoの場合)、前述のフローが再び実行される。
【0088】
図20は、船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチ203が閉じられるときのフローチャートである。以下では、図11、図18および図20を参照して、第2実施形態に係る船舶A2において船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチ203が閉じられるときのフローを説明する。
船外機25が最大傾斜位置にある場合、ハッチ203は、開かれた状態に維持されている。この状態で、乗員によってダウンスイッチ235が操作されて、ダウン操作が行われると(ステップS21)、最大傾斜位置にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下降が開始される(ステップS22)。そして、船外機25が傾斜原点に達すると、船外機25の回動が停止される(ステップS23)。その後、ハッチ203が閉じられているか否かが、開閉センサ226からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS24)。
【0089】
ハッチ203が閉じられていない場合(ステップS24でNoの場合)には、ブザー236が制御装置223によって制御されて、ハッチ203の閉め忘れに対する警告音が発せられる(ステップS25)。そして、警告音が発せられたまま、再びハッチ203が閉じられているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS26)。このとき、ハッチ203が閉じられていない場合(ステップS26でNoの場合)には、引き続き警告音が発せられる。また、ハッチ203が閉じられている場合(ステップS26でYesの場合)には、警告音が停止される(ステップS27)。
【0090】
以上のように本実施形態では、プラットフォーム202が船体201の船尾に取り付けられている。乗員は、プラットフォーム202上の空間を自由に利用することができる。また、プラットフォーム202に形成された切欠き孔213は、ハッチ203によって塞がれている。乗員は、ハッチ203上のスペースも利用することができる。したがって、乗員が自由に利用できる広いスペースが船舶A2の後部に確保されている。さらに、ハッチ203は、開閉可能にプラットフォーム202に連結されている。したがって、ハッチ203が開かれていれば、最大傾斜位置まで船外機25が回動されるときに、ハッチ203が障害となることはない。
【0091】
また、この実施形態では、ハッチ203の平板部214の上面は、ハッチ203が閉じられた状態で、プラットフォーム202の上面と同一平面上に配置される。したがって、ハッチ203が閉じられた状態では、プラットフォーム202の上面と、ハッチ203の上面の一部とによって、平坦な広いスペースが形成される。乗員は、この広いスペース内をスムーズに移動することができる。したがって、利便性の高い広いスペースが船舶A2の後部に確保される。
【0092】
また、この実施形態では、制御装置223は、傾きセンサ220の検出値に基づいて船外機25の傾き状態を検知する。また、制御装置223は、開閉センサ226の検出値に基づいてハッチ203の開閉を検知する。さらに、制御装置223は、船外機25をチルト・トリム軸210まわりに回動させて、船外機25の下部を上方に移動させる場合に、ハッチ203が開かれていなければ、船外機25の下部が切欠き孔213の手前(停止位置)まで移動したときに、船外機25の回動を停止させる。これにより、船外機25の衝突によるハッチ203および船外機25の破損が防止される。
【0093】
第3実施形態
図21は、この発明の第3実施形態に係る船舶A3に備えられたハッチ203およびこれに関連する構成の平面図である。また、図22は、図21に示すXXII−XXII線に沿うハッチ203およびこれに関連する構成の断面図である。図21および図22において、前述の図1〜20に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。また、図21および図22では、開閉検知機構224(図16参照)の図示が省略されている。
【0094】
この第3実施形態と前述の第2実施形態との主要な相違点は、ハッチ203が自動で開かれるように構成されていることである。船舶A3は、2つの押圧部材301と、前述のロック機構225と、2つのアクチュエータ302(開用アクチュエータ)とを備えている。この実施形態では、ロック機構225と、2つのアクチュエータ302とによって開機構が構成されている。
【0095】
2つの押圧部材301は、左右に間隔を空けて配置されている。図21では、2つの押圧部材301がハッチ203の下方に配置されているが、2つの押圧部材301およびこれに関連する構成を実線で示している。各押圧部材301は、シリンダ303と、ロッド304とを含む。ロッド304の一端部は、シリンダ303内に収容されている。また、ロッド304の他端部は、ステー305を介してハッチ203の下面に回動可能に連結されている。また、ロッド304と反対側のシリンダ303の端部は、ステー306を介してプラットフォーム202に上下に回動可能に連結されている。各押圧部材301は、ハッチ203が開かれる方向にハッチ203を押圧するように構成されている。したがって、ロック機構225によるハッチ203のロックが解除されている状態では、2つの押圧部材301の押圧力によってハッチ203が開かれる。2つの押圧部材301の押圧力は、たとえば、人の力によってハッチ203を閉じることができる大きさに設定されている。
【0096】
また、ロック機構225は、前述の2つの突起230、2つの係合部材231、および2つの操作部材232を含む。図示はしないが、2つの突起230は、それぞれ、2つのアクチュエータ302に連結されている。各アクチュエータ302は、たとえばモータである。各アクチュエータ302は、制御装置223に接続されている。制御装置223によって各アクチュエータ302が制御されて、各アクチュエータ302の回転軸(図示せず)が右回りまたは左回りに回動すると、各突起230が進退する。したがって、ハッチ203が閉じられた状態で、各アクチュエータ302が制御されて、各突起230が進出すると、各突起230の先端部が対応する係合部材231に係合して、ハッチ203がロックされる。また、ハッチ203がロックされた状態で、各アクチュエータ302が制御されて、各突起230が退避すると、ハッチ203のロックが解除される。これにより、2つの押圧部材301の押圧力によってハッチ203が開かれる。
【0097】
図23は、船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときのフローチャートである。以下では、図11、図18および図23を参照して、第3実施形態に係る船舶A3において船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときのフローを説明する。
乗員によってアップスイッチ234が操作されて、トリムアップ操作が行われると(ステップS31)、傾斜原点にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の上昇が開始される(ステップS32)。そして、船外機25が停止位置に達したか否かが、傾きセンサ220からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS33)。より具体的には、船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときに、船外機25が停止位置に達すると、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力される。したがって、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力されていない場合(ステップS33でNoの場合)には、引き続き船外機25が停止位置に達したか否かが、制御装置223によって判断される。また、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力された場合(ステップS33でYesの場合)には、制御装置223は、船外機25が停止位置に達したと判断して、船外機25の回動を停止させる(ステップS34:停止ステップ)。
【0098】
次に、チルトアップ操作が行われると(ステップS35)、船外機25が停止位置で停止された状態で、ハッチ203が開かれているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS36:開閉検知ステップ)。より具体的には、ハッチ203が開いている場合には、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力されない。したがって、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力されない場合(ステップS36でYesの場合)には、停止位置にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の上昇が開始される(ステップS37:上昇ステップ)。そして、船外機25が最大傾斜位置に達すると、チルトアップが停止される(ステップS38)。すなわち、プロペラ27を含む船外機25の下部が切欠き孔213を通ってプラットフォーム202の上方に達すると、チルトアップが停止される。
【0099】
一方、ロック機構225によってハッチ203がロックされ、ハッチ203が開かれていない場合には、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力される。したがって、開閉センサ226からの信号が制御装置223に入力されている場合(ステップS36でNoの場合)には、ブザー236が制御装置223によって制御されて、ハッチ203が自動で開かれることを喚起する警告音が発せられる(ステップS39)。そして、警告音が発せられたまま、制御装置223によって2つのアクチュエータ302が駆動される(ステップS40:開ステップ)。これにより、船外機25が停止位置で停止された状態で、ハッチ203のロックが解除され、ハッチ203が、2つの押圧部材301(図21参照)の押圧力によって開かれる。そして、警告音が停止される(ステップS41)。警告音の停止は、たとえば、2つのアクチュエータ302が駆動されてから所定時間が経過した後に行われてもよいし、ハッチ203が開かれたことが検知された時点で行われてもよい。
【0100】
警告音が停止された後は、再びハッチ203が開かれているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS42)。このとき、ハッチ203が開かれている場合(ステップS42でYesの場合)には、チルトアップが開始され(ステップS43:上昇ステップ)、船外機25が最大傾斜位置に達した後にチルトアップが停止される(ステップS44)。一方、たとえば、2つのアクチュエータ302の故障等によりハッチ203のロックが解除されず、ハッチ203が閉じられたままである場合には、2つのアクチュエータ302の異常を知らせる警告音がブザー236から発せられる(ステップS45)。
【0101】
次に、図11、図18および図20を参照して、第3実施形態に係る船舶A3において船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチ203が閉じられるときのフローを説明する。
船外機25が最大傾斜位置にある場合、ハッチ203は、開かれた状態に維持されている。この状態で、乗員によってダウンスイッチ235が操作されて、ダウン操作が行われると(ステップS21)、最大傾斜位置にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の下降が開始される(ステップS22)。そして、船外機25が傾斜原点に達すると、船外機25の回動が停止される(ステップS23)。その後、ハッチ203が閉じられているか否かが、開閉センサ226からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS24)。
【0102】
ハッチ203が閉じられていない場合(ステップS24でNoの場合)には、ブザー236が制御装置223によって制御されて、ハッチ203の閉め忘れに対する警告音が発せられる(ステップS25)。そして、警告音が発せられたまま、再びハッチ203が閉じられているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS26)。このとき、ハッチ203が閉じられていない場合(ステップS26でNoの場合)には、引き続き警告音が発せられる。また、ハッチ203が閉じられている場合(ステップS26でYesの場合)には、警告音が停止される(ステップS27)。乗員によってハッチ203が閉じられてから行われるハッチ203のロックは、乗員が2つの操作部材232(図21参照)を操作することにより行われてもよいし、2つのアクチュエータ302(図21参照)が制御装置223によって制御されることにより自動で行われてもよい。
【0103】
以上のように本実施形態では、制御装置223は、船外機25の下部がプラットフォーム202の上方に移動するまで船外機25を回動させるときに、開閉検知ステップを実行する。すなわち、制御装置223は、傾きセンサ220および開閉センサ226の検出値に基づいて、船外機25の下部が切欠き孔213を通過するまでに、ハッチ203が開かれているか否かを検知する。また、制御装置223は、開閉検知ステップにおいてハッチ203が開かれていないときに、開ステップを実行する。すなわち、アクチュエータ302を制御して、船外機25の下部が切欠き孔213を通過するまでにハッチ203を開かせる。そして、制御装置223は、上昇ステップを実行して、ハッチ203が開かれている状態で切欠き孔213に対して船外機25の下部を通過させる。これにより、船外機25の下部が、ハッチ203に衝突することなく、プラットフォーム202の上方まで移動される。このように、この実施形態では、ハッチ203が自動で開かれるので、利便性が高い。また、船外機25の下部が切欠き孔213を通過するまでにハッチ203が開かれるので、ハッチ203に対する船外機25の下部の衝突が確実に防止される。これにより、ハッチ203および船外機25の破損が防止される。
【0104】
また、この実施形態では、制御装置223は、船外機25を回動させて船外機25の下部を上方に移動させる場合において、ハッチ203が開かれていないときに、停止ステップを実行する。すなわち、制御装置223は、船外機25の下部が切欠き孔213の手前(停止位置)まで移動したときに、船外機25の回動を停止させる。そして、制御装置223は、船外機25の回動が停止している状態で開閉検知ステップおよび開ステップを実行する。すなわち、制御装置223は、船外機25の下部を切欠き孔213の手前(停止位置)で停止させた状態で、ハッチ203の開閉を検知する。そして、ハッチ203が開かれていない場合には、制御装置223は、アクチュエータ302を制御してハッチ203を開かせる。これにより、船外機25の衝突によるハッチ203および船外機25の破損がより確実に防止される。
【0105】
第4実施形態
図24は、この発明の第4実施形態に係る船舶A4に備えられたハッチ203およびこれに関連する構成の平面図である。また、図25は、図24に示すXXV−XXV線に沿うハッチ203およびこれに関連する構成の断面図である。図24および図25において、前述の図1〜23に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0106】
この第4実施形態と前述の第2実施形態との主要な相違点は、ハッチ203が自動で開閉されるように構成されていることである。船舶A4は、2つの開閉機構401(開機構、閉機構)を備えている。図24では、各開閉機構401がハッチ203の下方に配置されているが、各開閉機構401を実線で示している。各開閉機構401は、アクチュエータ402(開用アクチュエータ、閉用アクチュエータ、開閉センサ)と、ロッド403と、図示しない伝達機構が収容されたハウジング404とを含む。各アクチュエータ402は、たとえばサーボモータである。各アクチュエータ402は、制御装置223に接続されている。各アクチュエータ402は、ステー405を介して、プラットフォーム202に上下に回動可能に連結されている。また、各アクチュエータ402は、ハウジング404を介してロッド403に連結されている。アクチュエータ402と反対側の各ロッド403の端部は、ステー406を介してハッチ203の下面に回動可能に連結されている。
【0107】
また、各伝達機構としては、たとえば、ボールねじ機構、歯車機構、プーリ・ベルト機構などが挙げられる。この実施形態では、各伝達機構は、ボールねじ機構である。図示はしないが、各伝達機構は、ボールねじと、ボールナットと、複数の転動体とを含む。各アクチュエータ402は、対応するボールねじに連結されている。各ボールねじは、対応するアクチュエータ402によって回転される。また、各ボールナットは、対応するロッド403に連結されている。各ロッド403は、対応するボールねじが回転されることにより、対応するボールナットとともに移動する。各ロッド403は、対応するボールねじが回転されることにより、対応するハウジング404に対して進退するように構成されている。
【0108】
ハッチ203は、2つのアクチュエータ402が駆動されることにより開閉されるように構成されている。また、2つのアクチュエータ402が駆動されていない状態では、開閉方向へのハッチ203の移動が、各開閉機構401および各アクチュエータ402からの機械的な抵抗によって規制される。したがって、この実施形態では、前述のロック機構225が備えられていなくても、ハッチ203がロックされる。制御装置223は、ハッチ203が開位置(図25において二点鎖線で示されたハッチ203の位置)と閉位置(図25において実線で示されたハッチ203の位置)との間で回動するように2つのアクチュエータ402を制御する。また、開閉方向に関するハッチ203の位置は、たとえば、制御装置223から各アクチュエータ402に入力されたパルス信号の数によって検知される。すなわち、この実施形態では、各アクチュエータ402が、開閉センサとして機能する。各アクチュエータ402に入力されたパルス信号の数は、制御装置223によって記憶されている。なお、船舶A4は、前述の開閉検知機構224(図16参照)によってハッチ203の開閉を検知するように構成されていてもよい。
【0109】
次に、図11、図18および図23を参照して、第4実施形態に係る船舶A4において船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチ203が閉じられるときのフローを説明する。
乗員によってアップスイッチ234が操作されて、トリムアップ操作が行われると(ステップS31)、傾斜原点にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の上昇が開始される(ステップS32)。そして、船外機25が停止位置に達したか否かが、傾きセンサ220からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS33)。より具体的には、船外機25が傾斜原点から最大傾斜位置まで回動されるときに、船外機25が停止位置に達すると、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力される。したがって、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力されていない場合(ステップS33でNoの場合)には、引き続き船外機25が停止位置に達したか否かが、制御装置223によって判断される。また、傾きセンサ220からの信号が制御装置223に入力された場合(ステップS33でYesの場合)には、制御装置223は、船外機25が停止位置に達したと判断して、船外機25の回動を停止させる(ステップS34:停止ステップ)。
【0110】
次に、チルトアップ操作が行われると(ステップS35)、船外機25が停止位置で停止された状態で、ハッチ203が開かれているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS36:開閉検知ステップ)。より具体的には、制御装置223に記憶されたパルス信号の数が、ハッチ203が開位置にある状態に対応する数である場合(ステップS36でYesの場合)には、停止位置にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の上昇が開始される(ステップS37:上昇ステップ)。そして、船外機25が最大傾斜位置に達すると、チルトアップが停止される(ステップS38)。すなわち、プロペラ27を含む船外機25の下部が切欠き孔213を通ってプラットフォーム202の上方に達すると、チルトアップが停止される。
【0111】
一方、制御装置223に記憶されたパルス信号の数が、ハッチ203が開位置にある状態に対応する数でない場合(ステップS36でNoの場合)には、ブザー236が制御装置223によって制御される。これにより、ハッチ203が自動で開かれることを喚起する警告音が発せられる(ステップS39)。そして、警告音が発せられたまま、制御装置223によって2つのアクチュエータ402が駆動される(ステップS40:開ステップ)。これにより、船外機25が停止位置で停止された状態で、ハッチ203が開かれる。そして、警告音が停止される(ステップS41)。警告音の停止は、たとえば、2つのアクチュエータ402が駆動されてから所定時間が経過した後に行われてもよいし、ハッチ203が開かれたことが検知された時点で行われてもよい。
【0112】
警告音が停止された後は、再びハッチ203が開かれているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS42)。このとき、ハッチ203が開かれている場合(ステップS42でYesの場合)には、チルトアップが開始され(ステップS43:上昇ステップ)、船外機25が最大傾斜位置に達した後にチルトアップが停止される(ステップS44)。一方、たとえば、2つのアクチュエータ402の故障等によりハッチ203が閉じられたままである場合には、2つのアクチュエータ402の異常を知らせる警告音がブザー236から発せられる(ステップS45)。
【0113】
図26は、船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチ203が閉じられるときのフローチャートである。以下では、図11、図18および図26を参照して、第4実施形態に係る船舶A4において船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されてハッチ203が閉じられるときのフローを説明する。
船外機25が最大傾斜位置にある場合、ハッチ203は、開かれた状態に維持されている。この状態で、乗員によってダウンスイッチ235が操作されて、ダウン操作が行われると(ステップS51)、最大傾斜位置にある船外機25がチルト・トリム軸210まわりに回動して、船外機25の下部の下降が開始される(ステップS52:下降ステップ)。そして、船外機25が傾斜原点に達すると、船外機25の回動が停止される(ステップS53)。一方、船外機25の回動と並行して、船外機25が停止位置に達したか否かが、傾きセンサ220からの信号の有無に基づいて制御装置223によって判断される(ステップS54:通過検知ステップ)。
【0114】
船外機25が最大傾斜位置から傾斜原点まで回動されるとき、船外機25が停止位置を超えると、傾きセンサ220から制御装置223への信号の出力が停止される。したがって、傾きセンサ220から制御装置223に信号が入力されている場合(ステップS54でNoの場合)には、引き続き船外機25が停止位置に達したか否かが、制御装置223によって判断される。一方、傾きセンサ220から制御装置223への信号の出力が停止された場合(ステップS54でYesの場合)には、ブザー236が制御装置223によって制御されて、ハッチ203が自動で閉じられることを喚起する警告音が発せられる(ステップS55)。そして、警告音が発せられたまま、制御装置223によって2つのアクチュエータ402が駆動される(ステップS56:閉ステップ)。これにより、船外機25が停止位置と傾斜原点との間に位置する状態で、ハッチ203が閉じられる。そして、警告音が停止される(ステップS57)。警告音の停止は、たとえば、2つのアクチュエータ402が駆動されてから所定時間が経過した後に行われてもよいし、ハッチ203が開かれたことが検知された時点で行われてもよい。
【0115】
警告音が停止された後は、ハッチ203が閉じられているか否かが、制御装置223によって判断される(ステップS58)。このとき、たとえば、2つのアクチュエータ402の故障等により、閉じられているはずのハッチ203が閉じられていない場合(ステップS58でNoの場合)には、2つのアクチュエータ402の異常を知らせる警告音がブザー236から発せられる(ステップS59)。
【0116】
以上のように本実施形態では、制御装置223は、前述の第3実施形態と同様に、船外機25の下部がプラットフォーム202の上方に移動するまで船外機25を回動させるときに、各アクチュエータ402を制御して、ハッチ203を自動で開かせる。したがって、利便性が高い。また、船外機25の下部が切欠き孔213の手前(停止位置)で停止された状態でハッチ203が開かれるので、ハッチ203に対する船外機25の下部の衝突が確実に防止される。これにより、ハッチ203および船外機25の破損が防止される。
【0117】
また、この実施形態では、制御装置223は、船外機25の下部がプラットフォーム202の上方から下方に移動するまで船外機25を回動させるときに、下降ステップを実行する。すなわち、制御装置223は、ハッチ203が開かれている状態で切欠き孔213に対して船外機25の下部を通過させる。そして、制御装置223は、通過検知ステップを実行して、下降ステップにおいて、傾きセンサ220の検出値に基づいて船外機25の下部が切欠き孔213を通過したことを検知する。このとき、船外機25の下部が切欠き孔213を通過したことが検知されれば、制御装置223は、通過が検知された後に、閉ステップを実行する。すなわち、制御装置223は、各アクチュエータ402を制御して、ハッチ203を閉じさせる。このように、この構成によれば、ハッチ203が自動で閉じられるので、利便性が高い。また、船外機25の下部が切欠き孔213を通過した後にハッチ203が閉じられるので、船外機25の下部に対するハッチ203の衝突が確実に防止される。これにより、ハッチ203および船外機25の破損が防止される。
【0118】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の第1〜第4実施形態では、船舶A1〜A4が、1機の船外機25を備える場合について説明した。しかし、船舶A1〜A4は、複数機の船外機25を備えていてもよい。具体的には、左右に並んで配置された2機以上の船外機25が船舶A1〜A4に備えられていてもよい。
【0119】
また、前述の第2〜第4実施形態では、ハッチ203が前後方向に沿って上下に回動されるように構成されている場合について説明した。しかし、ハッチ203の開閉方向は、これに限られない。たとえば、図27に示すように、ハッチ503は、左右方向に沿って上下に回動されるように構成されていてもよい。また、図28に示すように、ハッチ603は、左右方向に沿って上下に観音開きになるようにプラットフォーム202に取り付けられた2枚の分割体603aを含むものであってもよい。また、図29に示すように、ハッチ703は、プラットフォーム202の上面に沿って左右にスライド移動し、上方から切欠き孔213内に進入するように構成された2つのスライド部材703a含むものであってもよい。
【0120】
また、前述の第2〜第4実施形態では、船外機25の構成機器とは別に傾き検知機構218が設けられている場合について説明した。しかし、傾き検知機構218は、船外機25の一部であってもよい。たとえば、パルスモータや、位置検出機構を備える油圧シリンダが、船外機25をチルト・トリム軸210まわりに回動させるためのアクチュエータとして採用されている場合には、これらの機器から制御装置223に入力される信号に基づいて船外機25の傾き状態が検知されてもよい。
【0121】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 船体
11 ハル
11b 延設部
16 プラットフォーム
16a 前部側ステップ
16b 後部側ステップ
17 船外機配置孔
17a 切欠き孔
22 水切り面(第1水切り面)
22a 水切り面(第2水切り面)
22b 水切り面(第2水切り面)
23 張り出し部
25 船外機
32 テーブル(天井部)
201 船体
202 プラットフォーム
203 ハッチ
204 船外機取付部
205 船外機配置孔
210 チルト・トリム軸(水平軸線)
211 操舵軸(操舵軸線)
213 切欠き孔
216 ヒンジ(連結部材)
218 傾き検知機構
223 制御装置
225 ロック機構(開機構の一部)
226 開閉センサ
302 アクチュエータ(開用アクチュエータ、開機構の一部)
401 開閉機構(開機構、閉機構)
402 アクチュエータ(開用アクチュエータ、閉用アクチュエータ、開閉センサ)
504 ハッチ
604 ハッチ
704 ハッチ
A1〜A4 船舶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の船尾に設けられた船外機取付部と、
前記船外機取付部の後方に隣接し、前記船尾を上下に貫通する船外機配置孔と、
前記船外機配置孔の後方に設けられたプラットフォームと、
前記船外機配置孔に配置され、前記船外機取付部に取り付けられた船外機とを含む、船舶。
【請求項2】
前記プラットフォームは、前記船外機配置孔から後方に延び、前記プラットフォームを上下に貫通する切欠き孔を含み、
前記船外機は、前記船外機の下部が前記切欠き孔を通って前記プラットフォームの上方に達するまで、前記船外機の前部を通る水平軸線まわりに回動できるように構成されている、請求項1記載の船舶。
【請求項3】
前記切欠き孔は、左右方向への長さが前記船外機配置孔より短くなるように構成されている、請求項2記載の船舶。
【請求項4】
前記船体の底部において、前記船外機取付部の前方に配置された第1水切り面と、
前記船体の底部において、前記船外機配置孔の右側および左側で前後に延び、それぞれの後部に設けられた第2水切り面を有する一対の延設部とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記船外機配置孔の上方に配置され、前記船外機を覆う天井部をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
前記プラットフォームは、前側ほど高くなるように階段状に形成された上部を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記船外機は、前記船外機の前部を通る操舵軸線まわりに左右に回動できるように構成されており、
前記切欠き孔は、前記船外機が前記操舵軸線まわりに任意の操舵角まで回動された状態で前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過できるように、左右方向への長さが設定されている、請求項2記載の船舶。
【請求項8】
前記切欠き孔を塞ぐハッチと、
前記ハッチを開けられるように、前記ハッチを前記プラットフォームに連結する連結部材とをさらに含む、請求項2または7記載の船舶。
【請求項9】
前記ハッチは、前記ハッチが閉じられた状態で、前記ハッチの上面の少なくとも一部が前記プラットフォームの上面と同一平面上に位置するように構成されている、請求項8記載の船舶。
【請求項10】
前記船外機の傾き状態を検知する傾き検知機構と、
前記ハッチの開閉を検知する開閉センサと、
前記傾き検知機構および開閉センサの検出値が入力され、それらの検出値に基づいて前記船外機を制御する制御装置とをさらに含み、
前記制御装置は、
前記船外機を回動させて前記船外機の下部を上方に移動させる場合において、前記ハッチが開かれていないときに、前記船外機の下部が前記切欠き孔の手前まで移動したときに、前記船外機の回動を停止させるように構成されている、請求項8または9記載の船舶。
【請求項11】
前記船外機の傾き状態を検知する傾き検知機構と、
前記ハッチの開閉を検知する開閉センサと、
前記ハッチを開くための開用アクチュエータを有し、前記ハッチが開く方向に前記ハッチを移動させる開機構と、
前記傾き検知機構および開閉センサの検出値が入力され、それらの検出値に基づいて前記船外機および開用アクチュエータを制御する制御装置とをさらに含み、
前記制御装置は、
前記船外機の下部が前記プラットフォームの上方に移動するまで前記船外機を回動させるときに、前記傾き検知機構および開閉センサの検出値に基づいて、前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過するまでに、前記ハッチが開かれているか否かを検知する開閉検知ステップと、
前記開閉検知ステップにおいて前記ハッチが開かれていないときに、前記開用アクチュエータを制御して、前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過するまでに前記ハッチを開かせる開ステップと、
前記ハッチが開かれている状態で前記切欠き孔に対して前記船外機の下部を通過させる上昇ステップとを実行するように構成されている、請求項8または9記載の船舶。
【請求項12】
前記制御装置は、前記船外機を回動させて前記船外機の下部を上方に移動させる場合において、前記ハッチが開かれていないときに、前記船外機の下部が前記切欠き孔の手前まで移動したときに、前記船外機の回動を停止させる停止ステップをさらに実行し、前記停止ステップにおいて前記船外機の回動が停止されている状態で前記開閉検知ステップおよび開ステップを実行するように構成されている、請求項11記載の船舶。
【請求項13】
前記ハッチを閉じるための閉用アクチュエータを有し、前記ハッチが閉じる方向に前記ハッチを移動させる閉機構をさらに含み、
前記制御装置は、
前記船外機の下部が前記プラットフォームの上方から下方に移動するまで前記船外機を回動させるときに、前記ハッチが開かれている状態で前記切欠き孔に対して前記船外機の下部を通過させる下降ステップと、
前記下降ステップにおいて、前記傾き検知機構の検出値に基づいて前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過したことを検知する通過検知ステップと、
前記通過検知ステップにおいて前記船外機の下部が前記切欠き孔を通過したことが検知された後に、前記閉用アクチュエータを制御して、前記ハッチを閉じさせる閉ステップとを実行するように構成されている、請求項11または12記載の船舶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公開番号】特開2010−254283(P2010−254283A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250174(P2009−250174)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)