色処理装置およびその方法
【課題】 局所的に急激な変化が起きない滑らかな均等色知覚空間を短時間に作成する。
【解決手段】 基準色空間取得部104は、色空間を表すデータを入力する。データ取得部103は、複数の色領域における視覚均等性を表すデータセットを取得する。制御点設定部105は、色空間において、データセットが対応する複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定する。最適化部106は、制御点とデータセットを用いて、色空間を縮小するように補正する。
【解決手段】 基準色空間取得部104は、色空間を表すデータを入力する。データ取得部103は、複数の色領域における視覚均等性を表すデータセットを取得する。制御点設定部105は、色空間において、データセットが対応する複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定する。最適化部106は、制御点とデータセットを用いて、色空間を縮小するように補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の知覚に一致する色空間を作成する色処理に関する。
【背景技術】
【0002】
色を定量的に表現するための表色系として、様々な色空間が存在する。例えば、国際照明委員会(CIE)によって定められた、CIELAB空間や、CIELUV空間、CIECAM02におけるJCh空間などが典型例である。しかし、これら色空間は人間の知覚に対しては均等な空間ではない。
【0003】
図1によりMacAdamが作成した25色それぞれに対する色弁別閾(非特許文献1参照)をCIELAB空間にプロットした様子を示す。なお、説明のために、図1は、MacAdamの色弁別閾(以下、MacAdam楕円)を十倍に拡大し、色度情報のみをa*b*平面にプロットしたものである。
【0004】
図1に示す楕円状の各図形は、人間が同じ色と認識する範囲を示し、低彩度の色に対しては比較的図形の面積が小さく、高彩度の色、とくに青色や緑色に対して図形の面積が非常に大きくなる。つまり、人間は、低彩度の色については色空間内の距離が小さくても色を弁別することができ、高彩度の青色や緑色については色空間内の距離が大きくても色を弁別することができない。言い換えれば、CIELAB空間は人間の知覚に一致していない。
【0005】
特許文献1は、人間の知覚に一致する色空間を作成する手法を記載する。特許文献1の手法は、まずCIELUV空間のような人間の知覚に対して均等ではない色空間(以下、非均等色知覚空間)を四面体(二次元空間の場合は三角形)などの小領域に分割する。そして、MacAdam色弁別閾のような等色差楕円データが真円として表されるように、各四面体の頂点位置を最適化して、CIELUV空間を人間の知覚に対して均等な色空間(以下、均等色知覚空間)に補正する。
【0006】
しかし、特許文献1の手法は、非均等色知覚空間を分割した四面体の頂点の移動位置を最適化によって決定するため、局所的に急激な色の変化が生じ易い問題がある。特許文献1は、四面体の頂点を移動する位置の最適化において、各近接四面体の間で連続性を保つ方法や反転を防止する方法を記載する。しかし、四面体ごとに最適化するため、等色差楕円データがない色領域、または、複数の等色差楕円データが非常に接近する色領域においては急激な変化が生じ易くなる。さらに、特許文献1の発明による均等色知覚空間の作成は、非常に長い処理時間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-150277号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D. L. MacAdam「Visual sensitivities to color differences in daylight」Journal of the Optical Society of America、Vol. 32、No.5、247-274頁、1942年5月
【非特許文献2】Melgosa M、Hita E、Poza AJ、Alman DH、Berns RS「Super threshold color-difference ellipsoids for surface colours」Color Res. Appl. 22、148-155頁、1997年
【非特許文献3】BFDPデータセット(M. R. Luo and B. Rigg「Chromaticity-Discrimination Ellipses for Surface Colours」Color Res. Appl. 11、25-42頁、1986年)
【非特許文献4】Brownデータセット(W. R. J. Brown「Color Discrimination of Twelve Observers」J.Opt. Soc. Am. 47、137-143頁、1957年)
【非特許文献5】Fritz Ebner、Mark D. Fairchild「Finding constant hue surfaces in color space」SPIE Vol. 3300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、局所的に急激な変化が起きない滑らかな均等色知覚空間を短時間に作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0011】
本発明にかかる色処理は、色空間を表すデータを入力し、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、前記色空間において、前記データセットが対応する前記複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定し、前記制御点と前記データセットを用いて、前記色空間を縮小するように補正することを特徴とする。
【0012】
また、色空間を表すデータを入力し、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、色空間において、制御領域を示す制御点を設定し、制御点、データセットおよび色空間における中心を用いて、色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、局所的に急激な変化が起きない滑らかな均等色知覚空間を短時間に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】MacAdamが作成した25色に対する色弁別閾をCIELAB空間にプロットした様子を示す図。
【図2】実施例の色処理装置の構成例を示すブロック図。
【図3】実施例の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図4】色処理装置が実行する処理を説明するフローチャート。
【図5】UIの一例を示す図。
【図6】ΔEに基づき作成した色弁別閾データセットの一例を示す図。
【図7】色弁別閾データの楕円近似の一例を説明する図。
【図8】色弁別閾データセットのフォーマット例を説明する図。
【図9】制御領域と制御点の設定例を示す図。
【図10】変換パラメータ作成部が作成するLUTの記述例を説明する図。
【図11】制御パラメータの最適化により楕円近似データを表す図形を真円に近付ける様子を説明する概念図。
【図12】最適化部の処理の詳細を説明するフローチャート。
【図13】制御点と中心の関係を説明する図。
【図14】中間点の移動を説明する図。
【図15】色弁別閾データセットのマッピングを説明する図。
【図16】実施例2のUI表示部が表示すUIの一例を示す図。
【図17】最適化部の処理の詳細を説明するフローチャート。
【図18】実施例3の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図19】色域変換部と色域マッピング部の処理を説明するフローチャート。
【図20】均等色知覚空間における色域マッピングを説明する図。
【図21】観察環境ごとに最適化を行ない変換パラメータを作成する手法の概念図。
【図22】実施例4による変換パラメータ作成手法の概念図。
【図23】実施例4の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図24】実施例4の色処理装置が実行する処理を説明するフローチャート。
【図25】実施例4のUI表示部が表示すUIの一例を示す図。
【図26】均等色知覚空間の色相線形性を示す図。
【図27】実施例5の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図28】色差評価の処理を説明するフローチャート。
【図29】実施例5のUI表示部が表示すUIの一例を示す図。
【図30】均等色知覚空間における色差評価を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる実施例の色処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
[装置の構成]
図2のブロック図により実施例1の色処理装置の構成例を示す。CPU201は、RAMなどのメインメモリ202をワークメモリとして、ROM209やハードディスクドライブ(HDD)203に格納されたプログラムを実行し、システムバス206を介して後述する構成を制御する。なお、ROM209やHDD203には、後述する色処理を実現するプログラムや各種データが格納されている。
【0017】
USBやIEEE1394などの汎用インタフェイス(I/F)204には、キーボードやマウスなどの指示入力部207やUSBメモリやメモリカードなどの記録メディア208が接続される。また、モニタ205には、CPU201によって、ユーザインタフェイス(UI)や処理経過や処理結果を示す情報が表示される。
【0018】
例えば、CPU201は、指示入力部207を介して入力されるユーザ指示に従いROM209、HDD203または記録メディア208に格納されたアプリケーションプログラム(AP)をメインメモリ202の所定領域にロードする。そして、APを実行し、APに従いモニタ205にUIを表示する。
【0019】
次に、CPU201は、ユーザによるUIの操作に従いHDD203や記録メディア208に格納された各種データをメインメモリ202の所定領域にロードする。そして、APに従いメインメモリ202にロードした各種データに所定の演算処理を施す。そして、CPU201は、ユーザによるUIの操作に従い演算処理結果をモニタ205に表示したり、HDD203や記録メディア208に格納する。
【0020】
なお、CPU201は、システムバス206に接続された図示しないネットワークI/Fを介して、ネットワーク上のサーバ装置との間でプログラム、データ、演算処理結果の送受信を行うこともできる。
【0021】
[論理構成]
図3のブロック図により実施例1の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図3に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。
【0022】
色処理装置101において、UI表示部102は、UIをモニタ205に表示する。データ取得部103は、人間が色を弁別可能な範囲をデータ化したMacAdam楕円のような色弁別閾データセットをHDD203や記録メディア208などから取得する。基準色空間取得部104は、均等色知覚空間の作成元になる非均等色知覚空間を表すデータを基準色空間のデータとしてHDD203や記録メディア208などから取得する。
【0023】
制御点設定部105は、基準色空間取得部104が取得した基準色空間内に制御範囲に対応する領域(以下、制御領域)を設定し、制御領域の境界に制御点を設定する。最適化部106は、最適化手法を用いて、色弁別閾データを表す図形が真円に近付くように制御点の移動方向と移動量、中心に対する圧縮率を含む制御パラメータを最適化する。
【0024】
変換パラメータ作成部107は、最適化部106が最適化した制御パラメータに基づき、制御領域内の任意の色を均等色知覚空間に変換するための変換パラメータを作成する。出力部108は、変換パラメータ作成部107が作成した変換パラメータをデータファイルとしてHDD203や記録メディア208などに出力する。
【0025】
図4のフローチャートにより色処理装置101が実行する処理を説明する。
【0026】
UI表示部102は、以降の処理に必要な情報をユーザが入力するためのUIをモニタ205に表示する(S11)。図5によりUIの一例を示す。ユーザは、入力部1001を操作して、使用する色弁別閾データセットをHDD203や記録メディア208などに予め記憶された複数のデータセットの中から選択する。なお、予め記憶される色弁別閾データセットは一つでもよい。
【0027】
MacAdamの楕円データセット以外にも、様々な色弁別閾データが提案されており(非特許文献2-4参照)、それら色弁別閾データを用いていもよい。また、CIEが規定する色差式ΔE94や、ΔE2000などから逆算して色弁別閾データセットを作成して使用することもできる。例えば、任意の点に対し、当該点を中心にΔE94やΔE2000の値が1になる点を円周状に探索して、色弁別閾データセットを作成することができる。図6によりΔE2000に基づき作成したD65光源のCIELAB色空間における色弁別閾データセットの一例を示す。ユーザは、入力部1001を操作して、色弁別閾データセットの一つまたは複数を選択することができる。
【0028】
ユーザは、入力部1002を操作して、使用する基準色空間を選択する。例えば、入力部1002はドロップコンボボックスの形態を有し、ユーザはドロップダウンされるメニューから例えばCIELAB空間、CIELUV空間、または、CIECAM02のJCh空間などを選択することができる。
【0029】
ユーザは、入力部1003を操作して、色処理装置101が作成した非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを保存する際のファイル名を入力する。
【0030】
ユーザは、使用する色弁別閾データセットの選択、使用する基準色空間の選択、ファイル名の入力が終了するとOKボタン1004を押して(S12)、処理の開始を指示する。OKボタン1004が押されると、データ取得部103は、ユーザが選択した色弁別閾データセットをHDD203や記録メディア208などから取得する(S13)。なお、ΔE2000に基づき作成したD65光源のCIELAB空間における色弁別閾データセットが選択されたとして以後の処理を説明する。
【0031】
本実施例においては、HDD203や記録メディア208などには、予め楕円近似された色弁別閾データセットが格納されている。図7により色弁別閾データの楕円近似の一例を説明する。また、図8により色弁別閾データセットのフォーマット例を説明する。図7、8に示すように、例えばCIEXYZ空間における、楕円の中心座標、長軸および短軸と楕円が交差する四点(以下、端点)の座標の合計五点のデータをセット(以下、楕円近似データ)とする。そして、複数の色領域それぞれにおいて楕円近似データを用意したデータセットが色弁別閾データセットである。
【0032】
次に、基準色空間取得部104は、ユーザが選択した基準色空間のデータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S14)。なお、CIELAB空間が選択されたとして以後の処理を説明する。
【0033】
次に、制御点設定部105は、基準色空間であるCIELAB空間上に制御領域を定義し、制御領域の境界に制御点を設定する(S15)。図9により制御領域と制御点の設定例を示す。制御領域1101は、均等色知覚空間への変換対象領域であり、制御領域1101外のデータを均等色知覚空間に変換することはできない。従って、制御領域1101は充分に広いことが好ましく、例えば0≦L*≦100、-150≦a*≦150、-150≦b*≦150を制御領域に定義する。また、制御点は、制御領域の境界に複数設定する。例えば、図9に示すようにL*=0、50、100の各明度に八点の合計24点を設定する。24点のab座標値は(a*, b*)=(150, 0)、(150, 150)、(0, 150)、(-150, 150)、(-150, 0)、(-150, -150)、(0, -150)、(150, -150)である。
【0034】
次に、最適化部106は、詳細は後述するが、制御パラメータ(制御点の移動方向と移動量、中心に対する圧縮率)を最適化して、楕円近似データを表す図形が真円に近付くように基準色空間を最適化する(S16)。
【0035】
次に、変換パラメータ作成部107は、最適化された制御パラメータに基づき、制御領域内の任意の点を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを作成する(S17)。なお、変換パラメータとしてルックアップテーブル(LUT)を作成するとして処理を説明する。
【0036】
図10により変換パラメータ作成部107が作成するLUTの記述例を説明する。変換パラメータ作成部107は、基準色空間の制御領域を包含し、制御領域のL*、a*、b*の範囲をそれぞれ33スライスした格子を作成し、各格子点に変換先の均等色知覚空間の色空間値を記述する。そして、格子点の色空間値を変換し(詳細は後述する)、基準色空間の色空間値と均等色知覚空間の色空間値の対応関係を表すテーブルを作成する。
【0037】
次に、出力部108は、作成された変換パラメータであるLUTを入力部1003によって設定されたファイル名のデータとしてHDD203や記録メディア208に保存する(S17)。このLUTを参照する補間演算(例えば四面体補間演算や立方体補間演算)を行えば、制御領域内の任意の点の色空間値は、均等色知覚空間の色空間値に変換することができる。
【0038】
●最適化部
図11の概念図により制御パラメータ(制御点の移動と圧縮率)の最適化により楕円近似データを表す図形を真円に近付ける様子を説明する。なお、図11は、説明のために、制御点だけではなく格子点も表示する。つまり、最適化部106は、設定された各制御点の位置を移動し、各制御点の中心に対する圧縮率を変化させて、楕円近似データを表す図形(図11(a))を縮小して真円に近付けるように補正する(図11(b))。
【0039】
図12のフローチャートにより最適化部106の処理(S16)の詳細を説明する。最適化部106は、下式を用いて色弁別閾データセットをCIELAB空間(基準色空間)の値に変換する(S51)。なお、色弁別閾データセットが既に基準色空間の値である場合は、この変換を省略することができる。
if (Y/Yw > 0.008856)
L* = 116(Y/Yw)1/3 - 16;
else
L* = 903.29×Y/Yw;
;
if (X/Xw > 0.008856)
f(X/Xw) = (X/Xw)1/3;
else
f(X/Xw) = 7.78×X/Xw + 16/116;
if (Y/Yw > 0.008856)
f(Y/Yw) = (Y/Yw)1/3;
else
f(Y/Yw) = 7.78×Y/Yw + 16/116;
if (Z/Zw > 0.008856)
f(Z/Zw) = (Z/Zw)1/3;
else
f(Z/Zw) = 7.78×Z/Zw + 16/116;
;
a* = 500{f(X/Xw} - f(Y/Yw)};
b* = 200{f(Y/Yw} - f(Z/Zw)}; …(1)
ここで、Xw、Yw、Zwは白色点のXYZ値。
【0040】
計算に用いる白色点は、実際に色を観察する環境(以下、観察環境)の白色点を使用する。そのため、色弁別閾データセットの作成環境が観察環境と異なる場合、最適化部106は、色弁別閾データセットのCIE三刺激値XYZを観察環境下のXYZ値に変換する処理を行うことが好ましい。なお、観察環境下のXYZ値への変換には、例えば、Von Kries変換式やBradford変換式を用いる。
【0041】
次に、最適化部106は、ニュートン法、減衰最小二乗法、または、最急降下法などの最適化手法を用いた処理を行う。つまり、最適化法のルールに従い各制御点の移動位置を決定し(S52)、最適化法のルールに従い中心に対する各制御点の圧縮率を決定する(S53)。
【0042】
図13により制御点と中心の関係を説明する。図13に示すように、中心とは、制御点1102と等明度の、L*軸上の無彩色点1103に相当する。圧縮率は、制御点1102の移動位置に対して、当該制御点1102と無彩色点1103の間に位置する点(以下、中間点)の移動位置を決定するパラメータである。図14により中間点の移動を説明する。中間点の移動位置は下式によって決定される。
↑x' = (|↑x|/|↑p|)γ・↑p' …(2)
ここで、↑xは中間点1104の位置ベクトル、
↑x'は移動後の中間点1104の位置ベクトル、
↑pは制御点1102の位置ベクトル、
↑p'は移動後の制御点1102の位置ベクトル、
γは圧縮率(0≦γ≦1)。
【0043】
次に、最適化部106は、式(2)および補間演算を用いて、CIELAB空間(基準色空間)の値に変換した色弁別閾データセットを均等色知覚空間にマッピングする(S54)。図15により色弁別閾データセットのマッピングを説明する。例えば、楕円近似データ1105が四つの制御点1102a-1102dと二つの無彩色点1103a、1103bに囲まれた領域にあるとする。この場合、楕円近似データ1105のa*成分を↑pbと↑pd上に投影し、√(a*+b*)成分を↑paと↑pc上に投影して、式(2)の演算を行い、それら演算結果を補間演算してマッピング後の楕円近似データを得る。なお、補間演算は、線形、非線形を問わず、任意の方法を用いればよい。
【0044】
次に、最適化部106は、マッピング後の色弁別閾データセットから評価値を算出する(S55)。評価値は、変換後の楕円近似データを表す図形の真円らしさを表す値であればよく、例えば、下式を用いる。下式において、変換後の楕円近似データを表す図形が真円の場合、評価値Eは零になる。
E = Σ[1 - √{(L*c-L*i)2 + (a*c-a*i)2 + (b*c-b*i)2}]/4 …(3)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4、
(L*c, a*c, b*c)は変換後の楕円近似データの中心座標、
(L*i, a*i, b*i)は変換後の楕円近似データの端点座標。
【0045】
次に、最適化部106は、楕円近似データすべてに対する評価値Eの平均値Eaveを計算し(S56)、平均値Eaveが所定の閾値Ethよりも小さいか否かを判定する(S57)。閾値は、色空間の均等性を求める精度によって調整する。平均評価値が閾値よりも大きい(Eave>Eth)場合は処理をステップS52に戻し、平均評価値が閾値以下(Eave≦Eth)になるまでステップS52からS56の処理を繰り返す。そして、Eave≦Ethになると、最適化部106は、最適化が収束したと判断する。
【0046】
最適化が収束すると、最適化部106は、最適化結果である各制御点の移動位置(24点の座標)、および、各制御点の中心に対する圧縮率(24個のγ値)をメインメモリ202の所定領域に保存する(S58)。
【0047】
このように、非均等色知覚空間に制御領域を設定し、制御領域の境界に制御点を設定し、制御点の位置と、制御点の中心に対する圧縮率を制御パラメータとして、色弁別閾データセットを表す図形を真円に近付けることで均等色知覚空間を構成する。従って、局所的に急激な変化が起きない滑らかな均等色知覚空間を、短時間に作成することができる。
【0048】
また、本手法を用いることにより、視覚に対する色空間の色相線形性も向上させることができる。図26は、CIELAB色空間と、本手法により得られた変換パラメータを用いて作成した均等色知覚空間に、マンセルデータの各色相における視覚等色相データをそれぞれプロットした図である。図26(a)に示すCIELAB色空間では、赤や青の色相について視覚等色相データが大きく曲がっていることがわかる(図中の太実線に囲まれた領域)。対して、図26(b)に示す均等色知覚空間では、それらが改善されていることがわかる。本手法を用いた均等色知覚空間では、マンセルデータの視覚等色相データが、各色相において色相差Δhが三度以内(Δh≦3°)で表現できることが確認された。
【0049】
また、主観評価実験によって作成された他の視覚等色相データ(例えば、Ebnerらにより求められた等色相ライン(非特許文献5参照))を用いて色相差を算出しても、色相差Δh≦3°の色空間を作成することができる。言い替えれば、均等知覚色空間は、視覚等色相データや人間が同じ色相と知覚する色データ群を所定の色相差以内で表現する色空間である。
【実施例2】
【0050】
以下、本発明にかかる実施例2の色処理を説明する。なお、実施例2において、実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0051】
実施例1においては、所定の制御領域を設定し、制御領域に制御点を設定して、非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する処理例を説明した。実施例2においては、より詳細なユーザの指示に従い、均等色知覚空間を作成する方法を説明する。実施例1と異なるのは、UI表示部102の処理、制御点設定部105の処理、および、最適化部106の処理である。
【0052】
図16により実施例2のUI表示部102が表示すUIの一例を示す。実施例2のUIは、図5に示す実施例1のUIに制御点設定部2005と最適化設定部2006を追加したものである。
【0053】
ユーザは、制御点設定部2005を操作して、制御領域の形状を設定することができる。実施例1においては、制御領域の一例として0≦L*≦100、-150≦a*≦150、-150≦b*≦150の直方体を定義したが、実施例2においては、直方体だけでなく円柱形なども設定することができる。また、ユーザは、円柱形の制御領域を選択した場合はその半径を、直方体の制御領域を選択した場合は色度範囲を入力することができ、制御領域の大きさを自由に設定することができる。
【0054】
実施例1においては、等明度に八点、三段階の明度で合計24点の制御点を設定する例を説明したが、実施例2において、ユーザは、UIを操作して、明度の分割数や色度の分割数をそれぞれ設定することができる。制御点設定部105は、UIを介して指示された制御領域を設定する。
【0055】
また、ユーザは、最適化設定部2006を操作して、最適化における評価値の閾値Ethやループ回数、各楕円近似データに対する重みなどを設定することができる。閾値Ethは、最適化の終了条件であり、実施例1においては例えば0.5を示したが、実施例2においてはユーザが任意に指定することができる。また、ループ回数も同様に最適化の終了条件であり、ループ回数がユーザが指定する回数に達した場合、最適化を終了する。
【0056】
また、ユーザは、作成する均等色知覚空間において特に均等性を求める領域がある場合、楕円近似データに対する重みを設定することができる。例えば、UIの重み設定部2007において、特に重視したい色領域の楕円(楕円近似データに相当)を指定し、当該楕円の重み(数値)を設定する。例えば重みを5に設定した楕円が存在する色領域は、他の領域と比較して五倍の均等性精度を期待することができる。
【0057】
●最適化部
図17のフローチャートにより最適化部106の処理(S16)の詳細を説明する。最適化部106は、実施例1と同様に、式(1)を用いて色弁別閾データセットをCIELAB空間(基準色空間)の値に変換する(S51)。
【0058】
次に、最適化部106は、UIの最適化設定部2006の設定(閾値Eth、ループ回数C、楕円ごとの重みmj)を取得する(S61)。なお、重みmjにおける「j」はどの楕円かを示すサフィックスである。そして、カウンタiにループ回数Cを設定する(S62)。
【0059】
ステップS52からS54は、実施例1と同様の処理であり、その詳細説明を省略する。
【0060】
次に、最適化部106は、実施例1と同様、マッピング後の色弁別閾データセットから評価値を算出するが(S63)、実施例2においては下式を用いる。
E = mj・Σ[1 - √{(L*c-L*i)2 + (a*c-a*i)2 + (b*c-b*i)2}]/4 …(4)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4。
【0061】
式(4)において、実施例1の式(3)と異なるのは、重みmjとの積を計算する点である。ユーザが指定する楕円の重みとの積を計算することにより、重み分、当該楕円の均等性評価値を悪化させるような評価値が得られる。これにより、当該楕円が存在する色領域は、重みが非設定の色領域に比べてより厳しく評価され、結果的に均等性が向上し易くなる。
【0062】
次に、最適化部106は、実施例1と同様に、楕円近似データすべてに対する評価値Eの平均値Eaveを計算し(S56)、平均値Eaveがユーザが指定する閾値Ethよりも小さいか否かを判定する(S57)。そして、Eave>Ethの場合はカウンタiをデクリメントし(S64)、カウンタi>0であれば処理をステップS52に戻し、Eave≦Ethまたはi=0になるまでステップS52からS56の処理を繰り返す。そして、Eave≦Ethまたはi=0になると、最適化部106は、最適化を終了する。
【0063】
最適化が終了すると、最適化部106は、実施例1と同様に、最適化結果である制御パラメータ(各制御点の移動位置、および、各制御点の中心に対する圧縮率)をメインメモリ202の所定領域に保存する(S58)。なお、制御点および圧縮率の数は、ユーザが制御点設定部2005を操作して設定した条件に基づき決まる。
【0064】
このように、ユーザは制御領域および制御点を任意に設定することができる。これにより、例えば制御領域を狭めたり、制御点の数を減らすことで、処理時間を優先した処理にすることができる。また、制御領域を拡げたり、制御点の数を増やせば、精度を優先した処理になる。さらに、例えば、色空間の中で特に均等性を重視したい領域がある場合、ユーザは、最適化パラメータを操作することができる。
【実施例3】
【0065】
以下、本発明にかかる実施例3の色処理を説明する。なお、実施例3において、実施例1、2と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0066】
実施例1、2では、非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する処理例を説明した。実施例3では、均等色知覚空間を使用してカラーマッチングプロファイルを作成する処理例を説明する。
【0067】
図18のブロック図により実施例3の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図3に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。実施例3の色処理装置101は、実施例1の論理構成に、色域変換部409と色域マッピング部410を追加した構成を有する。色域変換部409と色域マッピング部410は、図4に示すステップS17で作成される変換パラメータ(またはLUT)を使用してカラープロファイルを作成する。
【0068】
図19のフローチャートにより色域変換部409と色域マッピング部410の処理を説明する。
【0069】
色域変換部409は、変換パラメータ(またはLUT)を用いて、UIを介してユーザが指定する入力機器(例えばスキャナやディジタルカメラ)の色域、出力機器(例えばプリンタ)の色域を均等色知覚空間に変換する(S21)。色域マッピング部410は、入力機器の色域を出力機器の色域にマッピングする(S22)。出力部108は、入力機器の色域と出力機器の色域の対応関係を示すテーブルを含むカラープロファイルを出力する(S23)。
【0070】
なお、入力機器の色域および出力機器の色域は、変換パラメータ(またはLUT)を作成した際に使用した基準色空間と同じ色空間を用いて表現されている必要がある。もし、それら色域、または、一方の色域が基準色空間と異なる色空間を用いて表現されている場合は、当該色域を基準色空間と同じ色空間に変換すればよい。
【0071】
図20により均等色知覚空間における色域マッピングを説明する。均等色知覚空間L*'C*'において色域マッピングを行う場合、マッピングは非常に簡単になる。つまり、図20に示すように、入力機器の色域境界31を、距離が最小の出力機器の色域境界32にマッピングするだけで、知覚的にマッチングした色域マッピングを行うことができる。なお、色域内部については、周知の手法によりマッピングを行えばよい。
【0072】
このように、知覚と一致した均等色知覚空間を使用してカラープロファイルを作成することができ、非常に簡易な手法で、人間の知覚に適合した画像が得られるカラープロファイルを作成することができる。
【実施例4】
【0073】
以下、本発明にかかる実施例4の色処理を説明する。なお、実施例4において、実施例1〜3と略同様の構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0074】
実施例1〜3では、最適化処理によって、ある観察環境(D65光源)の下における非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを作成する方法、また、該パラメータを用いてプロファイルを作成する例について説明した。実施例4では、基準観察環境下において最適化処理により作成した変換パラメータを用いて、異なる観察環境下における変換パラメータをリアルタイムで作成する方法を説明する。
【0075】
色空間の視覚特性に対する歪み方は観察環境によって異なる。そのため、実施例1〜3で用いたCIELAB空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータは、パラメータを作成した際の基準観察環境であるD65光源におけるCIELAB値に対してのみ使用することができる。
【0076】
しかし、世の中には印刷色を評価する際の標準照明であるD50光源や、オフィス等で多く用いられているF10の三波長型蛍光灯など、様々な観察環境が想定される。このような異なる観察環境における変換パラメータを求めるために、実施例1〜3の方法は、色弁別閾データセットの基準観察環境下のCIE三刺激値XYZを観察環境下のXYZ値に変換する処理を行った上で、最適化処理を行う必要がある。この方法の概念図を図21に示す。以降、基準観察環境をD65、観察環境をD50として説明する。
【0077】
図21に示すように、D65光源のCIELAB空間における色弁別閾データセット4001が真円に近付くよう、設定された入力格子点4002の位置を最適化した出力格子点4003を求める。そして、入力格子点4002と出力格子点4003の対応関係が基準観察環境(D65)における変換パラメータ4004である。
【0078】
観察観察(D50)における変換パラメータを求めるには、まずD65光源のCIELAB空間における色弁別閾データセット4001を、観察環境(D50)における色弁別閾データセット4005に変換する。観察環境下の色弁別閾データセットへの変換には、例えば、Von Kries変換式やBradford変換式などの色順応変換式を用いる。色順応変換式で求められた観察環境下の色は、観察環境下において基準観察環境下の色と等しく見える色である。また、ここでは観察環境における色弁別閾データセットを求める方法として色順応変換により求める方法を説明したが、観察環境において等色実験などを行って作成したデータセットを色弁別閾データセットとして用いてもよい。
【0079】
あとの変換は、基準観察環境(D65)における変換パラメータの作成と同様に、色弁別閾データセット4005が真円に近付くよう、設定された入力格子点4006の位置を最適化した出力格子点4007を求める。そして、それら格子点の対応関係を観察環境(D50)における変換パラメータ4008とする。
【0080】
上記方法により異なる観察環境における変換パラメータを求めることができるが、入力格子点4006の位置を最適化した出力格子点4007を求める最適化処理にはある程度の時間を必要とする。そのため、観察環境ごとに最適化処理を行うと変換パラメータをリアルタイムで作成することは困難である。
【0081】
予め複数の観察環境における変換パラメータを求めておき、その中から選択させる方法も考えられる。しかし、カラーマッチングプロファイルを作成する際などは、ユーザの観察環境下の白色点を測定し、測定した白色点に対応したプロファイルを作成するため、任意の観察環境における変換パラメータを予め作成しておくことは困難である。
【0082】
そこで、実施例4では、予め基準観察環境における変換パラメータのみ求めておき、観察環境における最適化処理を行わずに観察環境における変換パラメータを求める方法を説明する。この方法の概念図を図22に示す。以降も、基準観察環境をD65、観察環境をD50として説明する。
【0083】
基準観察環境(D65)における均等色知覚空間への変換パラメータ4004は前述した方法により予め求めておく。次に、基準観察環境の入力格子点4002を、色順応変換処理を用いて観察環境の入力格子点4009に変換する。そして、変換された入力格子点4009と基準観察環境において最適化処理によって求めた出力格子点4003とを対応付けて当該観察環境における均等色知覚空間への変換パラメータ4008を求める。
【0084】
[論理構成]
図23のブロック図により実施例4の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図23に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。
【0085】
色処理装置101において、UI表示部102はUIをモニタ205に表示する。基準観察環境変換パラメータ取得部503は、実施例1または実施例2の方法で予め作成した、基準観察環境における均等色知覚空間への変換パラメータ(LUT)(以下、基準観察環境変換パラメータ)をHDD203や記録メディア208などから取得する。基準観察環境取得部504は、基準観察環境変換パラメータ取得部503が取得した基準観察環境変換パラメータを作成した際の基準観察環境のデータをUIから取得する。観察環境取得部505は、ユーザが指定した、変換パラメータを求めたい観察環境(以下、要求観察環境)のデータをUIから取得する。
【0086】
入力格子点変換部506は、色順応変換式を用いて基準観察環境における入力格子点を要求観察環境の格子点に変換する。つまり、入力格子点の色と等しく見える要求観察環境の色を表す格子点を変換後の入力格子点とする。
【0087】
要求観察環境変換パラメータ作成部507は、入力格子点変換部506の変換により得た要求観察環境の入力格子点と、基準観察環境変換パラメータ取得部503が取得した基準観察環境変換パラメータ(LUT)を対応付ける。この対応付けにより、要求観察環境における任意の色を均等色知覚空間に変換するための変換パラメータ(LUT)が作成される。出力部108は、変換パラメータ作成部107が作成した変換パラメータをデータファイルとしてHDD203や記録メディア208などに出力する。
【0088】
[色処理]
図24のフローチャートにより色処理装置101が実行する処理を説明する。
【0089】
UI表示部102は、以降の処理に必要な情報をユーザが入力するためのUIをモニタ205に表示する(S71)。図25によりUI表示部102が表示するUIの一例を示す。ユーザは、入力部3001を操作して、基準観察環境変換パラメータをHDD203や記録メディア208などに予め記憶された複数のデータの中から選択する。なお、予め記憶される基準観察環境変換パラメータは一つでもよい。
【0090】
ユーザは、入力部3002を操作して、使用する基準観察環境変換パラメータを求めた際の基準観察環境を選択する。例えば、入力部3002はドロップコンボボックスの形態を有し、ユーザはドロップダウンされるメニューから例えばD65光源、D50光源、または、A光源などを選択することができる。
【0091】
ユーザは、入力部3003を操作して、要求観察環境の白色点のCIE三刺激値XYZを入力する。本実施例では要求観察環境の情報として白色点のXYZ値を入力することとしたが、予め定められた光源から選択するようにしてもよい。
【0092】
ユーザは、入力部3004を操作して、色処理装置101が作成した非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを保存する際のファイル名を入力する。
【0093】
ユーザは、使用する基準観察環境変換パラメータの選択、基準観察環境の選択、要求観察環境の入力(または選択)、ファイル名の入力が終了するとOKボタン3005を押して(S72)、処理の開始を指示する。
【0094】
OKボタン3005が押されると、基準観察環境変換パラメータ取得部503は、ユーザが選択した基準観察環境の変換パラメータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S73)。
【0095】
次に、基準観察環境取得部504は、ユーザが選択した基準観察環境の変換パラメータを作成した際の基準観察環境のデータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S74)。なお、D65が基準観察環境に選択されたとして、以後の処理を説明する。
【0096】
実施例4では、基準観察環境変換パラメータ取得部503と基準観察環境取得部504を分ける例を説明するが、基準観察環境変換パラメータの取得時に基準観察環境の情報を連動して取得することで基準観察環境取得部504を省略してもよい。例えば、基準観察環境変換パラメータ内に基準観察環境の情報を記述しておき、そこから基準観察環境のデータを取得してもよい。この時のUI表示部102は、基準観察環境の入力部3002を省き、入力部3001、3003、3004、および、OKボタン3005から構成される。
【0097】
次に、要求観察環境取得部505は、ユーザが入力した要求観察環境のデータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S75)。なお、要求観察環境としてD50が入力されたとして以後の処理を説明する。
【0098】
次に、入力格子点変換部506は、基準観察環境の変換パラメータを作成した際の基準色空間の制御領域に設定した入力格子点を、Von Kries変換式やBradford変換式などの色順応変換式を用いて要求観察環境の色空間値に変換する(S76)。
【0099】
次に、要求観察環境変換パラメータ作成部507は、要求観察環境の色空間値に変換された入力格子点と、基準観察環境変換パラメータを対応付ける。この対応付けにより、要求観察環境における均等色知覚空間への変換パラメータ(以下、要求観察環境変換パラメータ)が作成される(S77)。
【0100】
次に、出力部108は、作成された要求観察環境変換パラメータであるLUTを入力部3004によって設定されたファイル名のデータとしてHDD203や記録メディア208に保存する(S78)。このLUTを参照する補間演算(例えば四面体補間演算や立方体補間演算)を行えば、要求観察環境における制御領域内の任意の点の色空間値を均等色知覚空間の色空間値に変換することができる。
【0101】
例えば、実施例3のステップS21において入力機器と出力機器の色域を均等色知覚空間に変換する際に、入力機器と出力機器における観察環境が異なる場合がある。このような場合も、本手法を用いれば、それぞれの観察環境用の変換パラメータをリアルタイムで作成することができ、異なる観察環境におけるカラープロファイルを容易に作成することができる。
【0102】
このように、ユーザが指定した観察環境に対応した変換パラメータをリアルタイムで作成することができ、ユーザの観察環境に最適な均等色知覚空間をリアルタイムで作成することができる。
【実施例5】
【0103】
以下、本発明にかかる実施例5の色処理を説明する。なお、実施例5において、実施例1〜4と略同様の構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0104】
実施例1、2、4では非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換するパラメータの作成処理を、実施例3では均等色知覚空間を使用してカラーマッチングプロファイルを作成する処理を説明した。実施例5では均等色知覚空間を使用して色を評価する処理を説明する。
【0105】
図27のブロック図により実施例5の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図27に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。
【0106】
実施例5の色処理装置101は、実施例1の論理構成に、色変換部609と色差評価部610を追加した構成を有する。色変換部609と色差評価部610は、図4に示すステップS17で作成される変換パラメータ(またはLUT)を使用して色評価を行う。なお、変換パラメータ(またはLUT)は予め作成しておいてもよい。
【0107】
図28のフローチャートにより色変換部609と色差評価部610の処理を説明する。
【0108】
色変換部609は、変換パラメータ(またはLUT)を用いて、UIを介してユーザが指定する基準色の色値(例えば色見本の測定値)、サンプル色の色値(例えば印刷物の測定値)を均等色知覚空間に変換する(S81)。色差評価部610は、基準色とサンプル色の色差を算出し、色差が許容値以下か否かを判定する(S82)。出力部108は、基準色とサンプル色の色差の判定結果を出力する(S83)。
【0109】
図29により実施例5のUI表示部102が表示すUIの一例を示す。実施例5のUIは、図5に示す実施例1のUIに基準色設定部5005、サンプル色設定部5006、許容値設定部5007、評価ボタン5008、判定結果表示部5009、色分布表示部5010を追加したものである。
【0110】
ユーザは、基準色設定部5005、サンプル色設定部5006を操作して、評価したい基準色とサンプル色を設定することができる。また、許容値設定部5007に許容値を設定し、評価ボタン5008を押すと判定結果表示部5009に判定結果が表示される。なお、実施例5では判定結果をUIに表示する例を説明しているが、判定結果をデータファイルとして出力してもよい。
【0111】
また、判定結果表示部5009内のある行を、マウス等を用いて選択すると、色分布表示部5010に基準色とサンプル色の色分布が表示される。黒丸が基準色を、×印がサンプル色を、破線で示す円が許容値の範囲を表している。
【0112】
なお、基準色の色値およびサンプル色の色値は、変換パラメータ(またはLUT)を作成した際に使用した基準色空間と同じ色空間を用いて表現されている必要がある。もし、それら色値、または、一方の色値が基準色空間と異なる色空間を用いて表現されている場合は、当該色値を基準色空間と同じ色空間に変換すればよい。
【0113】
図30を用いて均等色知覚空間における色差評価について説明する。図30において、黒丸5101、5105は基準色を示す。×印5102、5103、5106、5107はサンプル色を示す。破線で示す円5104は許容範囲を示す。図30(a)はa*'b*'平面、図30(b)はL*'a*'平面における基準色とサンプル色の分布を示している。均等色知覚空間L*'a*'b*'において色差評価を行う場合、評価は非常に簡単になる。
【0114】
均等色知覚空間上では、図30に示すように、低彩度域の基準色5101に対しても、高彩度域における基準色5105に対しても同一の許容値を用いて評価することができる。また、L*'方向、a*'方向、b*'方向に対して重み付けして色差を算出する必要もない。基準色とサンプル色の三次元距離が許容値以下か否かを判定するだけで、知覚的な評価と一致した評価結果を得ることができる。なお、許容値は、評価の基準に応じて設定すればよい。例えば、基準色とサンプル色を隣接させて比較してもほとんど差が分からない(人間が知覚できない)レベルか否かを評価したい場合は許容値を1.0に、印象レベルで同じ色として扱えるレベルか否かを評価したい場合は許容値を3.0等に設定する。
【0115】
このように、知覚と一致した均等色知覚空間を使用して色を評価することができ、非常に簡易な手法で、人間が知覚的に評価した結果と一致した評価結果を得ることができる。
【0116】
[変形例]
上記においては、均等色知覚空間を作成するための基準色空間として、CIEで規定される数種の色空間を例に挙げて説明した。しかし、基準色空間はそれらに限らず、AdobeRGB空間、sRGB空間やYCbCr空間などでもよく、CIE三刺激値XYZからの変換方法が定義されている色空間であれば、どのような色空間でも使用することができる。
【0117】
また、上記においては、中心に対する制御点の圧縮率をガンマ係数として設定する例を説明した。しかし、圧縮率はガンマ係数に限らず、例えば、複数の点を一次元のテーブルとして与え、当該テーブルによって圧縮率を制御してもよい。さらに、中心の数は上記に限らず、色空間の原点としてもよい。
【0118】
また、上記においては、変換パラメータとしてLUTを使用する例を説明した。しかし、マトリクスなどの式を変換パラメータに使用してもよい。当該マトリクスは、図10に示す対応関係を近似することで作成することができる。また、最適化部106が算出した制御点の位置と圧縮率をそのまま変換パラメータとして、直接、変換後の色空間値を計算してもよい。勿論、処理を高速化したい場合はLUT、精度を重視する場合は直接計算のように使い分けることもできる。
【0119】
また、上記においては、既に提案されている数種のデータセット、あるいは、色差式から導き出したデータセットから色弁別閾データを選択する構成とした。しかし、他の既存のデータセットや独自に等色実験などを行って作成したデータセットを色弁別閾データとして用いてもよい。
【0120】
また、上記においては、色弁別閾データセットを複数のデータセットの中から一つ選択する例を説明した。しかし、選択するデータセットは一つでなくともよく、複数のデータセットを選択するようにしてもよい。また、色領域によって使用するデータセットを変えるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0121】
また、上記においては、色弁別閾データを用いて均等色知覚空間を作成したが、色弁別閾データに限らず、人間が同じ色差と感じる視覚均等性データセットに本発明を適用することもできる。その場合、最適化部106における評価値を下式に変更する。
E = Σ[D - √{(L*c-L*i)2 + (a*c-a*i)2 + (b*c-b*i)2}]/4 …(5)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4。
Dは上記色差に対応した値。
【0122】
また、明度や色度に重み付けした評価値を使用することもでき、例えば下式のように、各項に対してL、ma、mbのような重みを設定すればよい。
E = Σ[1 - √{mL(L*c-L*i)2 + ma(a*c-a*i)2 + mb(b*c-b*i)2}]/4 …(6)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4。
【0123】
また、上記においては、データ取得部103がCIE三刺激値XYZの色弁別閾データを取得し、制御点設定部105により色弁別閾データを基準色空間の値に変換する例を説明した。しかし、予め基準色空間の色弁別閾データを用意しておいてもよいことは言うまでもない。
【0124】
また、上記においては、色弁別閾データを楕円データに近似し、楕円中心を含む五点を用いて評価する例を説明したが、色弁別閾データをそのまま評価に用いてもよい。
【0125】
また、式(3)、式(4)を用いて評価を行う際、例えば、楕円中心と各端点の距離が小さくなり過ぎる場合は評価が悪くなるように重み付けしてもよい。こうすれば、色空間の潰れの発生防止に有効である。
【0126】
また、実施例2においては、図16に示すUIによって、ユーザが制御領域や制御点を指定する例を説明した。しかし、例えばUI上に基準色空間を三次元(3D)表示すれば、ユーザが任意に制御領域を指定し、制御領域の境界に任意の制御点を指定することができる。
【0127】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の知覚に一致する色空間を作成する色処理に関する。
【背景技術】
【0002】
色を定量的に表現するための表色系として、様々な色空間が存在する。例えば、国際照明委員会(CIE)によって定められた、CIELAB空間や、CIELUV空間、CIECAM02におけるJCh空間などが典型例である。しかし、これら色空間は人間の知覚に対しては均等な空間ではない。
【0003】
図1によりMacAdamが作成した25色それぞれに対する色弁別閾(非特許文献1参照)をCIELAB空間にプロットした様子を示す。なお、説明のために、図1は、MacAdamの色弁別閾(以下、MacAdam楕円)を十倍に拡大し、色度情報のみをa*b*平面にプロットしたものである。
【0004】
図1に示す楕円状の各図形は、人間が同じ色と認識する範囲を示し、低彩度の色に対しては比較的図形の面積が小さく、高彩度の色、とくに青色や緑色に対して図形の面積が非常に大きくなる。つまり、人間は、低彩度の色については色空間内の距離が小さくても色を弁別することができ、高彩度の青色や緑色については色空間内の距離が大きくても色を弁別することができない。言い換えれば、CIELAB空間は人間の知覚に一致していない。
【0005】
特許文献1は、人間の知覚に一致する色空間を作成する手法を記載する。特許文献1の手法は、まずCIELUV空間のような人間の知覚に対して均等ではない色空間(以下、非均等色知覚空間)を四面体(二次元空間の場合は三角形)などの小領域に分割する。そして、MacAdam色弁別閾のような等色差楕円データが真円として表されるように、各四面体の頂点位置を最適化して、CIELUV空間を人間の知覚に対して均等な色空間(以下、均等色知覚空間)に補正する。
【0006】
しかし、特許文献1の手法は、非均等色知覚空間を分割した四面体の頂点の移動位置を最適化によって決定するため、局所的に急激な色の変化が生じ易い問題がある。特許文献1は、四面体の頂点を移動する位置の最適化において、各近接四面体の間で連続性を保つ方法や反転を防止する方法を記載する。しかし、四面体ごとに最適化するため、等色差楕円データがない色領域、または、複数の等色差楕円データが非常に接近する色領域においては急激な変化が生じ易くなる。さらに、特許文献1の発明による均等色知覚空間の作成は、非常に長い処理時間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-150277号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D. L. MacAdam「Visual sensitivities to color differences in daylight」Journal of the Optical Society of America、Vol. 32、No.5、247-274頁、1942年5月
【非特許文献2】Melgosa M、Hita E、Poza AJ、Alman DH、Berns RS「Super threshold color-difference ellipsoids for surface colours」Color Res. Appl. 22、148-155頁、1997年
【非特許文献3】BFDPデータセット(M. R. Luo and B. Rigg「Chromaticity-Discrimination Ellipses for Surface Colours」Color Res. Appl. 11、25-42頁、1986年)
【非特許文献4】Brownデータセット(W. R. J. Brown「Color Discrimination of Twelve Observers」J.Opt. Soc. Am. 47、137-143頁、1957年)
【非特許文献5】Fritz Ebner、Mark D. Fairchild「Finding constant hue surfaces in color space」SPIE Vol. 3300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、局所的に急激な変化が起きない滑らかな均等色知覚空間を短時間に作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0011】
本発明にかかる色処理は、色空間を表すデータを入力し、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、前記色空間において、前記データセットが対応する前記複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定し、前記制御点と前記データセットを用いて、前記色空間を縮小するように補正することを特徴とする。
【0012】
また、色空間を表すデータを入力し、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、色空間において、制御領域を示す制御点を設定し、制御点、データセットおよび色空間における中心を用いて、色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、局所的に急激な変化が起きない滑らかな均等色知覚空間を短時間に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】MacAdamが作成した25色に対する色弁別閾をCIELAB空間にプロットした様子を示す図。
【図2】実施例の色処理装置の構成例を示すブロック図。
【図3】実施例の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図4】色処理装置が実行する処理を説明するフローチャート。
【図5】UIの一例を示す図。
【図6】ΔEに基づき作成した色弁別閾データセットの一例を示す図。
【図7】色弁別閾データの楕円近似の一例を説明する図。
【図8】色弁別閾データセットのフォーマット例を説明する図。
【図9】制御領域と制御点の設定例を示す図。
【図10】変換パラメータ作成部が作成するLUTの記述例を説明する図。
【図11】制御パラメータの最適化により楕円近似データを表す図形を真円に近付ける様子を説明する概念図。
【図12】最適化部の処理の詳細を説明するフローチャート。
【図13】制御点と中心の関係を説明する図。
【図14】中間点の移動を説明する図。
【図15】色弁別閾データセットのマッピングを説明する図。
【図16】実施例2のUI表示部が表示すUIの一例を示す図。
【図17】最適化部の処理の詳細を説明するフローチャート。
【図18】実施例3の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図19】色域変換部と色域マッピング部の処理を説明するフローチャート。
【図20】均等色知覚空間における色域マッピングを説明する図。
【図21】観察環境ごとに最適化を行ない変換パラメータを作成する手法の概念図。
【図22】実施例4による変換パラメータ作成手法の概念図。
【図23】実施例4の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図24】実施例4の色処理装置が実行する処理を説明するフローチャート。
【図25】実施例4のUI表示部が表示すUIの一例を示す図。
【図26】均等色知覚空間の色相線形性を示す図。
【図27】実施例5の色処理装置の論理構成例を説明するブロック図。
【図28】色差評価の処理を説明するフローチャート。
【図29】実施例5のUI表示部が表示すUIの一例を示す図。
【図30】均等色知覚空間における色差評価を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる実施例の色処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
[装置の構成]
図2のブロック図により実施例1の色処理装置の構成例を示す。CPU201は、RAMなどのメインメモリ202をワークメモリとして、ROM209やハードディスクドライブ(HDD)203に格納されたプログラムを実行し、システムバス206を介して後述する構成を制御する。なお、ROM209やHDD203には、後述する色処理を実現するプログラムや各種データが格納されている。
【0017】
USBやIEEE1394などの汎用インタフェイス(I/F)204には、キーボードやマウスなどの指示入力部207やUSBメモリやメモリカードなどの記録メディア208が接続される。また、モニタ205には、CPU201によって、ユーザインタフェイス(UI)や処理経過や処理結果を示す情報が表示される。
【0018】
例えば、CPU201は、指示入力部207を介して入力されるユーザ指示に従いROM209、HDD203または記録メディア208に格納されたアプリケーションプログラム(AP)をメインメモリ202の所定領域にロードする。そして、APを実行し、APに従いモニタ205にUIを表示する。
【0019】
次に、CPU201は、ユーザによるUIの操作に従いHDD203や記録メディア208に格納された各種データをメインメモリ202の所定領域にロードする。そして、APに従いメインメモリ202にロードした各種データに所定の演算処理を施す。そして、CPU201は、ユーザによるUIの操作に従い演算処理結果をモニタ205に表示したり、HDD203や記録メディア208に格納する。
【0020】
なお、CPU201は、システムバス206に接続された図示しないネットワークI/Fを介して、ネットワーク上のサーバ装置との間でプログラム、データ、演算処理結果の送受信を行うこともできる。
【0021】
[論理構成]
図3のブロック図により実施例1の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図3に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。
【0022】
色処理装置101において、UI表示部102は、UIをモニタ205に表示する。データ取得部103は、人間が色を弁別可能な範囲をデータ化したMacAdam楕円のような色弁別閾データセットをHDD203や記録メディア208などから取得する。基準色空間取得部104は、均等色知覚空間の作成元になる非均等色知覚空間を表すデータを基準色空間のデータとしてHDD203や記録メディア208などから取得する。
【0023】
制御点設定部105は、基準色空間取得部104が取得した基準色空間内に制御範囲に対応する領域(以下、制御領域)を設定し、制御領域の境界に制御点を設定する。最適化部106は、最適化手法を用いて、色弁別閾データを表す図形が真円に近付くように制御点の移動方向と移動量、中心に対する圧縮率を含む制御パラメータを最適化する。
【0024】
変換パラメータ作成部107は、最適化部106が最適化した制御パラメータに基づき、制御領域内の任意の色を均等色知覚空間に変換するための変換パラメータを作成する。出力部108は、変換パラメータ作成部107が作成した変換パラメータをデータファイルとしてHDD203や記録メディア208などに出力する。
【0025】
図4のフローチャートにより色処理装置101が実行する処理を説明する。
【0026】
UI表示部102は、以降の処理に必要な情報をユーザが入力するためのUIをモニタ205に表示する(S11)。図5によりUIの一例を示す。ユーザは、入力部1001を操作して、使用する色弁別閾データセットをHDD203や記録メディア208などに予め記憶された複数のデータセットの中から選択する。なお、予め記憶される色弁別閾データセットは一つでもよい。
【0027】
MacAdamの楕円データセット以外にも、様々な色弁別閾データが提案されており(非特許文献2-4参照)、それら色弁別閾データを用いていもよい。また、CIEが規定する色差式ΔE94や、ΔE2000などから逆算して色弁別閾データセットを作成して使用することもできる。例えば、任意の点に対し、当該点を中心にΔE94やΔE2000の値が1になる点を円周状に探索して、色弁別閾データセットを作成することができる。図6によりΔE2000に基づき作成したD65光源のCIELAB色空間における色弁別閾データセットの一例を示す。ユーザは、入力部1001を操作して、色弁別閾データセットの一つまたは複数を選択することができる。
【0028】
ユーザは、入力部1002を操作して、使用する基準色空間を選択する。例えば、入力部1002はドロップコンボボックスの形態を有し、ユーザはドロップダウンされるメニューから例えばCIELAB空間、CIELUV空間、または、CIECAM02のJCh空間などを選択することができる。
【0029】
ユーザは、入力部1003を操作して、色処理装置101が作成した非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを保存する際のファイル名を入力する。
【0030】
ユーザは、使用する色弁別閾データセットの選択、使用する基準色空間の選択、ファイル名の入力が終了するとOKボタン1004を押して(S12)、処理の開始を指示する。OKボタン1004が押されると、データ取得部103は、ユーザが選択した色弁別閾データセットをHDD203や記録メディア208などから取得する(S13)。なお、ΔE2000に基づき作成したD65光源のCIELAB空間における色弁別閾データセットが選択されたとして以後の処理を説明する。
【0031】
本実施例においては、HDD203や記録メディア208などには、予め楕円近似された色弁別閾データセットが格納されている。図7により色弁別閾データの楕円近似の一例を説明する。また、図8により色弁別閾データセットのフォーマット例を説明する。図7、8に示すように、例えばCIEXYZ空間における、楕円の中心座標、長軸および短軸と楕円が交差する四点(以下、端点)の座標の合計五点のデータをセット(以下、楕円近似データ)とする。そして、複数の色領域それぞれにおいて楕円近似データを用意したデータセットが色弁別閾データセットである。
【0032】
次に、基準色空間取得部104は、ユーザが選択した基準色空間のデータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S14)。なお、CIELAB空間が選択されたとして以後の処理を説明する。
【0033】
次に、制御点設定部105は、基準色空間であるCIELAB空間上に制御領域を定義し、制御領域の境界に制御点を設定する(S15)。図9により制御領域と制御点の設定例を示す。制御領域1101は、均等色知覚空間への変換対象領域であり、制御領域1101外のデータを均等色知覚空間に変換することはできない。従って、制御領域1101は充分に広いことが好ましく、例えば0≦L*≦100、-150≦a*≦150、-150≦b*≦150を制御領域に定義する。また、制御点は、制御領域の境界に複数設定する。例えば、図9に示すようにL*=0、50、100の各明度に八点の合計24点を設定する。24点のab座標値は(a*, b*)=(150, 0)、(150, 150)、(0, 150)、(-150, 150)、(-150, 0)、(-150, -150)、(0, -150)、(150, -150)である。
【0034】
次に、最適化部106は、詳細は後述するが、制御パラメータ(制御点の移動方向と移動量、中心に対する圧縮率)を最適化して、楕円近似データを表す図形が真円に近付くように基準色空間を最適化する(S16)。
【0035】
次に、変換パラメータ作成部107は、最適化された制御パラメータに基づき、制御領域内の任意の点を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを作成する(S17)。なお、変換パラメータとしてルックアップテーブル(LUT)を作成するとして処理を説明する。
【0036】
図10により変換パラメータ作成部107が作成するLUTの記述例を説明する。変換パラメータ作成部107は、基準色空間の制御領域を包含し、制御領域のL*、a*、b*の範囲をそれぞれ33スライスした格子を作成し、各格子点に変換先の均等色知覚空間の色空間値を記述する。そして、格子点の色空間値を変換し(詳細は後述する)、基準色空間の色空間値と均等色知覚空間の色空間値の対応関係を表すテーブルを作成する。
【0037】
次に、出力部108は、作成された変換パラメータであるLUTを入力部1003によって設定されたファイル名のデータとしてHDD203や記録メディア208に保存する(S17)。このLUTを参照する補間演算(例えば四面体補間演算や立方体補間演算)を行えば、制御領域内の任意の点の色空間値は、均等色知覚空間の色空間値に変換することができる。
【0038】
●最適化部
図11の概念図により制御パラメータ(制御点の移動と圧縮率)の最適化により楕円近似データを表す図形を真円に近付ける様子を説明する。なお、図11は、説明のために、制御点だけではなく格子点も表示する。つまり、最適化部106は、設定された各制御点の位置を移動し、各制御点の中心に対する圧縮率を変化させて、楕円近似データを表す図形(図11(a))を縮小して真円に近付けるように補正する(図11(b))。
【0039】
図12のフローチャートにより最適化部106の処理(S16)の詳細を説明する。最適化部106は、下式を用いて色弁別閾データセットをCIELAB空間(基準色空間)の値に変換する(S51)。なお、色弁別閾データセットが既に基準色空間の値である場合は、この変換を省略することができる。
if (Y/Yw > 0.008856)
L* = 116(Y/Yw)1/3 - 16;
else
L* = 903.29×Y/Yw;
;
if (X/Xw > 0.008856)
f(X/Xw) = (X/Xw)1/3;
else
f(X/Xw) = 7.78×X/Xw + 16/116;
if (Y/Yw > 0.008856)
f(Y/Yw) = (Y/Yw)1/3;
else
f(Y/Yw) = 7.78×Y/Yw + 16/116;
if (Z/Zw > 0.008856)
f(Z/Zw) = (Z/Zw)1/3;
else
f(Z/Zw) = 7.78×Z/Zw + 16/116;
;
a* = 500{f(X/Xw} - f(Y/Yw)};
b* = 200{f(Y/Yw} - f(Z/Zw)}; …(1)
ここで、Xw、Yw、Zwは白色点のXYZ値。
【0040】
計算に用いる白色点は、実際に色を観察する環境(以下、観察環境)の白色点を使用する。そのため、色弁別閾データセットの作成環境が観察環境と異なる場合、最適化部106は、色弁別閾データセットのCIE三刺激値XYZを観察環境下のXYZ値に変換する処理を行うことが好ましい。なお、観察環境下のXYZ値への変換には、例えば、Von Kries変換式やBradford変換式を用いる。
【0041】
次に、最適化部106は、ニュートン法、減衰最小二乗法、または、最急降下法などの最適化手法を用いた処理を行う。つまり、最適化法のルールに従い各制御点の移動位置を決定し(S52)、最適化法のルールに従い中心に対する各制御点の圧縮率を決定する(S53)。
【0042】
図13により制御点と中心の関係を説明する。図13に示すように、中心とは、制御点1102と等明度の、L*軸上の無彩色点1103に相当する。圧縮率は、制御点1102の移動位置に対して、当該制御点1102と無彩色点1103の間に位置する点(以下、中間点)の移動位置を決定するパラメータである。図14により中間点の移動を説明する。中間点の移動位置は下式によって決定される。
↑x' = (|↑x|/|↑p|)γ・↑p' …(2)
ここで、↑xは中間点1104の位置ベクトル、
↑x'は移動後の中間点1104の位置ベクトル、
↑pは制御点1102の位置ベクトル、
↑p'は移動後の制御点1102の位置ベクトル、
γは圧縮率(0≦γ≦1)。
【0043】
次に、最適化部106は、式(2)および補間演算を用いて、CIELAB空間(基準色空間)の値に変換した色弁別閾データセットを均等色知覚空間にマッピングする(S54)。図15により色弁別閾データセットのマッピングを説明する。例えば、楕円近似データ1105が四つの制御点1102a-1102dと二つの無彩色点1103a、1103bに囲まれた領域にあるとする。この場合、楕円近似データ1105のa*成分を↑pbと↑pd上に投影し、√(a*+b*)成分を↑paと↑pc上に投影して、式(2)の演算を行い、それら演算結果を補間演算してマッピング後の楕円近似データを得る。なお、補間演算は、線形、非線形を問わず、任意の方法を用いればよい。
【0044】
次に、最適化部106は、マッピング後の色弁別閾データセットから評価値を算出する(S55)。評価値は、変換後の楕円近似データを表す図形の真円らしさを表す値であればよく、例えば、下式を用いる。下式において、変換後の楕円近似データを表す図形が真円の場合、評価値Eは零になる。
E = Σ[1 - √{(L*c-L*i)2 + (a*c-a*i)2 + (b*c-b*i)2}]/4 …(3)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4、
(L*c, a*c, b*c)は変換後の楕円近似データの中心座標、
(L*i, a*i, b*i)は変換後の楕円近似データの端点座標。
【0045】
次に、最適化部106は、楕円近似データすべてに対する評価値Eの平均値Eaveを計算し(S56)、平均値Eaveが所定の閾値Ethよりも小さいか否かを判定する(S57)。閾値は、色空間の均等性を求める精度によって調整する。平均評価値が閾値よりも大きい(Eave>Eth)場合は処理をステップS52に戻し、平均評価値が閾値以下(Eave≦Eth)になるまでステップS52からS56の処理を繰り返す。そして、Eave≦Ethになると、最適化部106は、最適化が収束したと判断する。
【0046】
最適化が収束すると、最適化部106は、最適化結果である各制御点の移動位置(24点の座標)、および、各制御点の中心に対する圧縮率(24個のγ値)をメインメモリ202の所定領域に保存する(S58)。
【0047】
このように、非均等色知覚空間に制御領域を設定し、制御領域の境界に制御点を設定し、制御点の位置と、制御点の中心に対する圧縮率を制御パラメータとして、色弁別閾データセットを表す図形を真円に近付けることで均等色知覚空間を構成する。従って、局所的に急激な変化が起きない滑らかな均等色知覚空間を、短時間に作成することができる。
【0048】
また、本手法を用いることにより、視覚に対する色空間の色相線形性も向上させることができる。図26は、CIELAB色空間と、本手法により得られた変換パラメータを用いて作成した均等色知覚空間に、マンセルデータの各色相における視覚等色相データをそれぞれプロットした図である。図26(a)に示すCIELAB色空間では、赤や青の色相について視覚等色相データが大きく曲がっていることがわかる(図中の太実線に囲まれた領域)。対して、図26(b)に示す均等色知覚空間では、それらが改善されていることがわかる。本手法を用いた均等色知覚空間では、マンセルデータの視覚等色相データが、各色相において色相差Δhが三度以内(Δh≦3°)で表現できることが確認された。
【0049】
また、主観評価実験によって作成された他の視覚等色相データ(例えば、Ebnerらにより求められた等色相ライン(非特許文献5参照))を用いて色相差を算出しても、色相差Δh≦3°の色空間を作成することができる。言い替えれば、均等知覚色空間は、視覚等色相データや人間が同じ色相と知覚する色データ群を所定の色相差以内で表現する色空間である。
【実施例2】
【0050】
以下、本発明にかかる実施例2の色処理を説明する。なお、実施例2において、実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0051】
実施例1においては、所定の制御領域を設定し、制御領域に制御点を設定して、非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する処理例を説明した。実施例2においては、より詳細なユーザの指示に従い、均等色知覚空間を作成する方法を説明する。実施例1と異なるのは、UI表示部102の処理、制御点設定部105の処理、および、最適化部106の処理である。
【0052】
図16により実施例2のUI表示部102が表示すUIの一例を示す。実施例2のUIは、図5に示す実施例1のUIに制御点設定部2005と最適化設定部2006を追加したものである。
【0053】
ユーザは、制御点設定部2005を操作して、制御領域の形状を設定することができる。実施例1においては、制御領域の一例として0≦L*≦100、-150≦a*≦150、-150≦b*≦150の直方体を定義したが、実施例2においては、直方体だけでなく円柱形なども設定することができる。また、ユーザは、円柱形の制御領域を選択した場合はその半径を、直方体の制御領域を選択した場合は色度範囲を入力することができ、制御領域の大きさを自由に設定することができる。
【0054】
実施例1においては、等明度に八点、三段階の明度で合計24点の制御点を設定する例を説明したが、実施例2において、ユーザは、UIを操作して、明度の分割数や色度の分割数をそれぞれ設定することができる。制御点設定部105は、UIを介して指示された制御領域を設定する。
【0055】
また、ユーザは、最適化設定部2006を操作して、最適化における評価値の閾値Ethやループ回数、各楕円近似データに対する重みなどを設定することができる。閾値Ethは、最適化の終了条件であり、実施例1においては例えば0.5を示したが、実施例2においてはユーザが任意に指定することができる。また、ループ回数も同様に最適化の終了条件であり、ループ回数がユーザが指定する回数に達した場合、最適化を終了する。
【0056】
また、ユーザは、作成する均等色知覚空間において特に均等性を求める領域がある場合、楕円近似データに対する重みを設定することができる。例えば、UIの重み設定部2007において、特に重視したい色領域の楕円(楕円近似データに相当)を指定し、当該楕円の重み(数値)を設定する。例えば重みを5に設定した楕円が存在する色領域は、他の領域と比較して五倍の均等性精度を期待することができる。
【0057】
●最適化部
図17のフローチャートにより最適化部106の処理(S16)の詳細を説明する。最適化部106は、実施例1と同様に、式(1)を用いて色弁別閾データセットをCIELAB空間(基準色空間)の値に変換する(S51)。
【0058】
次に、最適化部106は、UIの最適化設定部2006の設定(閾値Eth、ループ回数C、楕円ごとの重みmj)を取得する(S61)。なお、重みmjにおける「j」はどの楕円かを示すサフィックスである。そして、カウンタiにループ回数Cを設定する(S62)。
【0059】
ステップS52からS54は、実施例1と同様の処理であり、その詳細説明を省略する。
【0060】
次に、最適化部106は、実施例1と同様、マッピング後の色弁別閾データセットから評価値を算出するが(S63)、実施例2においては下式を用いる。
E = mj・Σ[1 - √{(L*c-L*i)2 + (a*c-a*i)2 + (b*c-b*i)2}]/4 …(4)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4。
【0061】
式(4)において、実施例1の式(3)と異なるのは、重みmjとの積を計算する点である。ユーザが指定する楕円の重みとの積を計算することにより、重み分、当該楕円の均等性評価値を悪化させるような評価値が得られる。これにより、当該楕円が存在する色領域は、重みが非設定の色領域に比べてより厳しく評価され、結果的に均等性が向上し易くなる。
【0062】
次に、最適化部106は、実施例1と同様に、楕円近似データすべてに対する評価値Eの平均値Eaveを計算し(S56)、平均値Eaveがユーザが指定する閾値Ethよりも小さいか否かを判定する(S57)。そして、Eave>Ethの場合はカウンタiをデクリメントし(S64)、カウンタi>0であれば処理をステップS52に戻し、Eave≦Ethまたはi=0になるまでステップS52からS56の処理を繰り返す。そして、Eave≦Ethまたはi=0になると、最適化部106は、最適化を終了する。
【0063】
最適化が終了すると、最適化部106は、実施例1と同様に、最適化結果である制御パラメータ(各制御点の移動位置、および、各制御点の中心に対する圧縮率)をメインメモリ202の所定領域に保存する(S58)。なお、制御点および圧縮率の数は、ユーザが制御点設定部2005を操作して設定した条件に基づき決まる。
【0064】
このように、ユーザは制御領域および制御点を任意に設定することができる。これにより、例えば制御領域を狭めたり、制御点の数を減らすことで、処理時間を優先した処理にすることができる。また、制御領域を拡げたり、制御点の数を増やせば、精度を優先した処理になる。さらに、例えば、色空間の中で特に均等性を重視したい領域がある場合、ユーザは、最適化パラメータを操作することができる。
【実施例3】
【0065】
以下、本発明にかかる実施例3の色処理を説明する。なお、実施例3において、実施例1、2と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0066】
実施例1、2では、非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する処理例を説明した。実施例3では、均等色知覚空間を使用してカラーマッチングプロファイルを作成する処理例を説明する。
【0067】
図18のブロック図により実施例3の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図3に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。実施例3の色処理装置101は、実施例1の論理構成に、色域変換部409と色域マッピング部410を追加した構成を有する。色域変換部409と色域マッピング部410は、図4に示すステップS17で作成される変換パラメータ(またはLUT)を使用してカラープロファイルを作成する。
【0068】
図19のフローチャートにより色域変換部409と色域マッピング部410の処理を説明する。
【0069】
色域変換部409は、変換パラメータ(またはLUT)を用いて、UIを介してユーザが指定する入力機器(例えばスキャナやディジタルカメラ)の色域、出力機器(例えばプリンタ)の色域を均等色知覚空間に変換する(S21)。色域マッピング部410は、入力機器の色域を出力機器の色域にマッピングする(S22)。出力部108は、入力機器の色域と出力機器の色域の対応関係を示すテーブルを含むカラープロファイルを出力する(S23)。
【0070】
なお、入力機器の色域および出力機器の色域は、変換パラメータ(またはLUT)を作成した際に使用した基準色空間と同じ色空間を用いて表現されている必要がある。もし、それら色域、または、一方の色域が基準色空間と異なる色空間を用いて表現されている場合は、当該色域を基準色空間と同じ色空間に変換すればよい。
【0071】
図20により均等色知覚空間における色域マッピングを説明する。均等色知覚空間L*'C*'において色域マッピングを行う場合、マッピングは非常に簡単になる。つまり、図20に示すように、入力機器の色域境界31を、距離が最小の出力機器の色域境界32にマッピングするだけで、知覚的にマッチングした色域マッピングを行うことができる。なお、色域内部については、周知の手法によりマッピングを行えばよい。
【0072】
このように、知覚と一致した均等色知覚空間を使用してカラープロファイルを作成することができ、非常に簡易な手法で、人間の知覚に適合した画像が得られるカラープロファイルを作成することができる。
【実施例4】
【0073】
以下、本発明にかかる実施例4の色処理を説明する。なお、実施例4において、実施例1〜3と略同様の構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0074】
実施例1〜3では、最適化処理によって、ある観察環境(D65光源)の下における非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを作成する方法、また、該パラメータを用いてプロファイルを作成する例について説明した。実施例4では、基準観察環境下において最適化処理により作成した変換パラメータを用いて、異なる観察環境下における変換パラメータをリアルタイムで作成する方法を説明する。
【0075】
色空間の視覚特性に対する歪み方は観察環境によって異なる。そのため、実施例1〜3で用いたCIELAB空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータは、パラメータを作成した際の基準観察環境であるD65光源におけるCIELAB値に対してのみ使用することができる。
【0076】
しかし、世の中には印刷色を評価する際の標準照明であるD50光源や、オフィス等で多く用いられているF10の三波長型蛍光灯など、様々な観察環境が想定される。このような異なる観察環境における変換パラメータを求めるために、実施例1〜3の方法は、色弁別閾データセットの基準観察環境下のCIE三刺激値XYZを観察環境下のXYZ値に変換する処理を行った上で、最適化処理を行う必要がある。この方法の概念図を図21に示す。以降、基準観察環境をD65、観察環境をD50として説明する。
【0077】
図21に示すように、D65光源のCIELAB空間における色弁別閾データセット4001が真円に近付くよう、設定された入力格子点4002の位置を最適化した出力格子点4003を求める。そして、入力格子点4002と出力格子点4003の対応関係が基準観察環境(D65)における変換パラメータ4004である。
【0078】
観察観察(D50)における変換パラメータを求めるには、まずD65光源のCIELAB空間における色弁別閾データセット4001を、観察環境(D50)における色弁別閾データセット4005に変換する。観察環境下の色弁別閾データセットへの変換には、例えば、Von Kries変換式やBradford変換式などの色順応変換式を用いる。色順応変換式で求められた観察環境下の色は、観察環境下において基準観察環境下の色と等しく見える色である。また、ここでは観察環境における色弁別閾データセットを求める方法として色順応変換により求める方法を説明したが、観察環境において等色実験などを行って作成したデータセットを色弁別閾データセットとして用いてもよい。
【0079】
あとの変換は、基準観察環境(D65)における変換パラメータの作成と同様に、色弁別閾データセット4005が真円に近付くよう、設定された入力格子点4006の位置を最適化した出力格子点4007を求める。そして、それら格子点の対応関係を観察環境(D50)における変換パラメータ4008とする。
【0080】
上記方法により異なる観察環境における変換パラメータを求めることができるが、入力格子点4006の位置を最適化した出力格子点4007を求める最適化処理にはある程度の時間を必要とする。そのため、観察環境ごとに最適化処理を行うと変換パラメータをリアルタイムで作成することは困難である。
【0081】
予め複数の観察環境における変換パラメータを求めておき、その中から選択させる方法も考えられる。しかし、カラーマッチングプロファイルを作成する際などは、ユーザの観察環境下の白色点を測定し、測定した白色点に対応したプロファイルを作成するため、任意の観察環境における変換パラメータを予め作成しておくことは困難である。
【0082】
そこで、実施例4では、予め基準観察環境における変換パラメータのみ求めておき、観察環境における最適化処理を行わずに観察環境における変換パラメータを求める方法を説明する。この方法の概念図を図22に示す。以降も、基準観察環境をD65、観察環境をD50として説明する。
【0083】
基準観察環境(D65)における均等色知覚空間への変換パラメータ4004は前述した方法により予め求めておく。次に、基準観察環境の入力格子点4002を、色順応変換処理を用いて観察環境の入力格子点4009に変換する。そして、変換された入力格子点4009と基準観察環境において最適化処理によって求めた出力格子点4003とを対応付けて当該観察環境における均等色知覚空間への変換パラメータ4008を求める。
【0084】
[論理構成]
図23のブロック図により実施例4の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図23に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。
【0085】
色処理装置101において、UI表示部102はUIをモニタ205に表示する。基準観察環境変換パラメータ取得部503は、実施例1または実施例2の方法で予め作成した、基準観察環境における均等色知覚空間への変換パラメータ(LUT)(以下、基準観察環境変換パラメータ)をHDD203や記録メディア208などから取得する。基準観察環境取得部504は、基準観察環境変換パラメータ取得部503が取得した基準観察環境変換パラメータを作成した際の基準観察環境のデータをUIから取得する。観察環境取得部505は、ユーザが指定した、変換パラメータを求めたい観察環境(以下、要求観察環境)のデータをUIから取得する。
【0086】
入力格子点変換部506は、色順応変換式を用いて基準観察環境における入力格子点を要求観察環境の格子点に変換する。つまり、入力格子点の色と等しく見える要求観察環境の色を表す格子点を変換後の入力格子点とする。
【0087】
要求観察環境変換パラメータ作成部507は、入力格子点変換部506の変換により得た要求観察環境の入力格子点と、基準観察環境変換パラメータ取得部503が取得した基準観察環境変換パラメータ(LUT)を対応付ける。この対応付けにより、要求観察環境における任意の色を均等色知覚空間に変換するための変換パラメータ(LUT)が作成される。出力部108は、変換パラメータ作成部107が作成した変換パラメータをデータファイルとしてHDD203や記録メディア208などに出力する。
【0088】
[色処理]
図24のフローチャートにより色処理装置101が実行する処理を説明する。
【0089】
UI表示部102は、以降の処理に必要な情報をユーザが入力するためのUIをモニタ205に表示する(S71)。図25によりUI表示部102が表示するUIの一例を示す。ユーザは、入力部3001を操作して、基準観察環境変換パラメータをHDD203や記録メディア208などに予め記憶された複数のデータの中から選択する。なお、予め記憶される基準観察環境変換パラメータは一つでもよい。
【0090】
ユーザは、入力部3002を操作して、使用する基準観察環境変換パラメータを求めた際の基準観察環境を選択する。例えば、入力部3002はドロップコンボボックスの形態を有し、ユーザはドロップダウンされるメニューから例えばD65光源、D50光源、または、A光源などを選択することができる。
【0091】
ユーザは、入力部3003を操作して、要求観察環境の白色点のCIE三刺激値XYZを入力する。本実施例では要求観察環境の情報として白色点のXYZ値を入力することとしたが、予め定められた光源から選択するようにしてもよい。
【0092】
ユーザは、入力部3004を操作して、色処理装置101が作成した非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換する変換パラメータを保存する際のファイル名を入力する。
【0093】
ユーザは、使用する基準観察環境変換パラメータの選択、基準観察環境の選択、要求観察環境の入力(または選択)、ファイル名の入力が終了するとOKボタン3005を押して(S72)、処理の開始を指示する。
【0094】
OKボタン3005が押されると、基準観察環境変換パラメータ取得部503は、ユーザが選択した基準観察環境の変換パラメータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S73)。
【0095】
次に、基準観察環境取得部504は、ユーザが選択した基準観察環境の変換パラメータを作成した際の基準観察環境のデータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S74)。なお、D65が基準観察環境に選択されたとして、以後の処理を説明する。
【0096】
実施例4では、基準観察環境変換パラメータ取得部503と基準観察環境取得部504を分ける例を説明するが、基準観察環境変換パラメータの取得時に基準観察環境の情報を連動して取得することで基準観察環境取得部504を省略してもよい。例えば、基準観察環境変換パラメータ内に基準観察環境の情報を記述しておき、そこから基準観察環境のデータを取得してもよい。この時のUI表示部102は、基準観察環境の入力部3002を省き、入力部3001、3003、3004、および、OKボタン3005から構成される。
【0097】
次に、要求観察環境取得部505は、ユーザが入力した要求観察環境のデータをHDD203や記録メディア208などから取得する(S75)。なお、要求観察環境としてD50が入力されたとして以後の処理を説明する。
【0098】
次に、入力格子点変換部506は、基準観察環境の変換パラメータを作成した際の基準色空間の制御領域に設定した入力格子点を、Von Kries変換式やBradford変換式などの色順応変換式を用いて要求観察環境の色空間値に変換する(S76)。
【0099】
次に、要求観察環境変換パラメータ作成部507は、要求観察環境の色空間値に変換された入力格子点と、基準観察環境変換パラメータを対応付ける。この対応付けにより、要求観察環境における均等色知覚空間への変換パラメータ(以下、要求観察環境変換パラメータ)が作成される(S77)。
【0100】
次に、出力部108は、作成された要求観察環境変換パラメータであるLUTを入力部3004によって設定されたファイル名のデータとしてHDD203や記録メディア208に保存する(S78)。このLUTを参照する補間演算(例えば四面体補間演算や立方体補間演算)を行えば、要求観察環境における制御領域内の任意の点の色空間値を均等色知覚空間の色空間値に変換することができる。
【0101】
例えば、実施例3のステップS21において入力機器と出力機器の色域を均等色知覚空間に変換する際に、入力機器と出力機器における観察環境が異なる場合がある。このような場合も、本手法を用いれば、それぞれの観察環境用の変換パラメータをリアルタイムで作成することができ、異なる観察環境におけるカラープロファイルを容易に作成することができる。
【0102】
このように、ユーザが指定した観察環境に対応した変換パラメータをリアルタイムで作成することができ、ユーザの観察環境に最適な均等色知覚空間をリアルタイムで作成することができる。
【実施例5】
【0103】
以下、本発明にかかる実施例5の色処理を説明する。なお、実施例5において、実施例1〜4と略同様の構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0104】
実施例1、2、4では非均等色知覚空間を均等色知覚空間に変換するパラメータの作成処理を、実施例3では均等色知覚空間を使用してカラーマッチングプロファイルを作成する処理を説明した。実施例5では均等色知覚空間を使用して色を評価する処理を説明する。
【0105】
図27のブロック図により実施例5の色処理装置101の論理構成例を説明する。なお、図27に示す構成は、CPU201がAPを実行することにより実現される。
【0106】
実施例5の色処理装置101は、実施例1の論理構成に、色変換部609と色差評価部610を追加した構成を有する。色変換部609と色差評価部610は、図4に示すステップS17で作成される変換パラメータ(またはLUT)を使用して色評価を行う。なお、変換パラメータ(またはLUT)は予め作成しておいてもよい。
【0107】
図28のフローチャートにより色変換部609と色差評価部610の処理を説明する。
【0108】
色変換部609は、変換パラメータ(またはLUT)を用いて、UIを介してユーザが指定する基準色の色値(例えば色見本の測定値)、サンプル色の色値(例えば印刷物の測定値)を均等色知覚空間に変換する(S81)。色差評価部610は、基準色とサンプル色の色差を算出し、色差が許容値以下か否かを判定する(S82)。出力部108は、基準色とサンプル色の色差の判定結果を出力する(S83)。
【0109】
図29により実施例5のUI表示部102が表示すUIの一例を示す。実施例5のUIは、図5に示す実施例1のUIに基準色設定部5005、サンプル色設定部5006、許容値設定部5007、評価ボタン5008、判定結果表示部5009、色分布表示部5010を追加したものである。
【0110】
ユーザは、基準色設定部5005、サンプル色設定部5006を操作して、評価したい基準色とサンプル色を設定することができる。また、許容値設定部5007に許容値を設定し、評価ボタン5008を押すと判定結果表示部5009に判定結果が表示される。なお、実施例5では判定結果をUIに表示する例を説明しているが、判定結果をデータファイルとして出力してもよい。
【0111】
また、判定結果表示部5009内のある行を、マウス等を用いて選択すると、色分布表示部5010に基準色とサンプル色の色分布が表示される。黒丸が基準色を、×印がサンプル色を、破線で示す円が許容値の範囲を表している。
【0112】
なお、基準色の色値およびサンプル色の色値は、変換パラメータ(またはLUT)を作成した際に使用した基準色空間と同じ色空間を用いて表現されている必要がある。もし、それら色値、または、一方の色値が基準色空間と異なる色空間を用いて表現されている場合は、当該色値を基準色空間と同じ色空間に変換すればよい。
【0113】
図30を用いて均等色知覚空間における色差評価について説明する。図30において、黒丸5101、5105は基準色を示す。×印5102、5103、5106、5107はサンプル色を示す。破線で示す円5104は許容範囲を示す。図30(a)はa*'b*'平面、図30(b)はL*'a*'平面における基準色とサンプル色の分布を示している。均等色知覚空間L*'a*'b*'において色差評価を行う場合、評価は非常に簡単になる。
【0114】
均等色知覚空間上では、図30に示すように、低彩度域の基準色5101に対しても、高彩度域における基準色5105に対しても同一の許容値を用いて評価することができる。また、L*'方向、a*'方向、b*'方向に対して重み付けして色差を算出する必要もない。基準色とサンプル色の三次元距離が許容値以下か否かを判定するだけで、知覚的な評価と一致した評価結果を得ることができる。なお、許容値は、評価の基準に応じて設定すればよい。例えば、基準色とサンプル色を隣接させて比較してもほとんど差が分からない(人間が知覚できない)レベルか否かを評価したい場合は許容値を1.0に、印象レベルで同じ色として扱えるレベルか否かを評価したい場合は許容値を3.0等に設定する。
【0115】
このように、知覚と一致した均等色知覚空間を使用して色を評価することができ、非常に簡易な手法で、人間が知覚的に評価した結果と一致した評価結果を得ることができる。
【0116】
[変形例]
上記においては、均等色知覚空間を作成するための基準色空間として、CIEで規定される数種の色空間を例に挙げて説明した。しかし、基準色空間はそれらに限らず、AdobeRGB空間、sRGB空間やYCbCr空間などでもよく、CIE三刺激値XYZからの変換方法が定義されている色空間であれば、どのような色空間でも使用することができる。
【0117】
また、上記においては、中心に対する制御点の圧縮率をガンマ係数として設定する例を説明した。しかし、圧縮率はガンマ係数に限らず、例えば、複数の点を一次元のテーブルとして与え、当該テーブルによって圧縮率を制御してもよい。さらに、中心の数は上記に限らず、色空間の原点としてもよい。
【0118】
また、上記においては、変換パラメータとしてLUTを使用する例を説明した。しかし、マトリクスなどの式を変換パラメータに使用してもよい。当該マトリクスは、図10に示す対応関係を近似することで作成することができる。また、最適化部106が算出した制御点の位置と圧縮率をそのまま変換パラメータとして、直接、変換後の色空間値を計算してもよい。勿論、処理を高速化したい場合はLUT、精度を重視する場合は直接計算のように使い分けることもできる。
【0119】
また、上記においては、既に提案されている数種のデータセット、あるいは、色差式から導き出したデータセットから色弁別閾データを選択する構成とした。しかし、他の既存のデータセットや独自に等色実験などを行って作成したデータセットを色弁別閾データとして用いてもよい。
【0120】
また、上記においては、色弁別閾データセットを複数のデータセットの中から一つ選択する例を説明した。しかし、選択するデータセットは一つでなくともよく、複数のデータセットを選択するようにしてもよい。また、色領域によって使用するデータセットを変えるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0121】
また、上記においては、色弁別閾データを用いて均等色知覚空間を作成したが、色弁別閾データに限らず、人間が同じ色差と感じる視覚均等性データセットに本発明を適用することもできる。その場合、最適化部106における評価値を下式に変更する。
E = Σ[D - √{(L*c-L*i)2 + (a*c-a*i)2 + (b*c-b*i)2}]/4 …(5)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4。
Dは上記色差に対応した値。
【0122】
また、明度や色度に重み付けした評価値を使用することもでき、例えば下式のように、各項に対してL、ma、mbのような重みを設定すればよい。
E = Σ[1 - √{mL(L*c-L*i)2 + ma(a*c-a*i)2 + mb(b*c-b*i)2}]/4 …(6)
ここで、Σ演算の範囲はi=1-4。
【0123】
また、上記においては、データ取得部103がCIE三刺激値XYZの色弁別閾データを取得し、制御点設定部105により色弁別閾データを基準色空間の値に変換する例を説明した。しかし、予め基準色空間の色弁別閾データを用意しておいてもよいことは言うまでもない。
【0124】
また、上記においては、色弁別閾データを楕円データに近似し、楕円中心を含む五点を用いて評価する例を説明したが、色弁別閾データをそのまま評価に用いてもよい。
【0125】
また、式(3)、式(4)を用いて評価を行う際、例えば、楕円中心と各端点の距離が小さくなり過ぎる場合は評価が悪くなるように重み付けしてもよい。こうすれば、色空間の潰れの発生防止に有効である。
【0126】
また、実施例2においては、図16に示すUIによって、ユーザが制御領域や制御点を指定する例を説明した。しかし、例えばUI上に基準色空間を三次元(3D)表示すれば、ユーザが任意に制御領域を指定し、制御領域の境界に任意の制御点を指定することができる。
【0127】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色空間を表すデータを入力する入力手段と、
複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得する取得手段と、
前記色空間において、前記データセットが対応する前記複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定する設定手段と、
前記制御点と前記データセットを用いて、前記色空間を縮小するように補正する補正手段とを有することを特徴とする色処理装置。
【請求項2】
色空間を表すデータを入力する入力手段と、
複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得する取得手段と、
前記色空間において、制御領域を示す制御点を設定する設定手段と、
前記制御点、前記データセットおよび前記色空間における中心を用いて、前記色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成する作成手段とを有することを特徴とする色処理装置。
【請求項3】
前記色空間は前記均等色知覚空間を作成する際の基準になる基準色空間であり、前記均等色知覚空間は人間の知覚に対して均等な色空間であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された色処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記制御領域と、前記基準色空間における前記制御領域の境界に前記制御点を複数設定することを特徴とする請求項3に記載された色処理装置。
【請求項5】
さらに、前記複数の制御点それぞれについて、前記基準色空間における前記データセットの各データを表す図形の形状を真円に近付けるための、移動後の前記制御点の位置を示す制御パラメータを算出する算出手段を有し、
前記作成手段は、前記算出の結果を用いて、前記基準色空間の任意の点を前記均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載された色処理装置。
【請求項6】
前記算出手段は、最適化手法を用いて、前記制御点の移動方向と移動量、および、前記制御点が設定された明度における無彩色点に対する前記制御点の圧縮率を前記制御パラメータとして算出することを特徴とする請求項5に記載された色処理装置。
【請求項7】
前記圧縮率は、前記制御点と前記無彩色点の間の中間点の移動位置を規定することを特徴とする請求項6に記載された色処理装置。
【請求項8】
前記取得手段は、人間が弁別可能な範囲を規定した色弁別閾データセットを前記視覚均等性を表すデータセットとして取得することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載された色処理装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記基準色空間の複数の明度それぞれにおいて前記制御領域および前記制御点を設定することを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載された色処理装置。
【請求項10】
さらに、前記変換パラメータを用いて入力機器の色域および出力機器の色域を前記均等色知覚空間に変換する変換手段と、
前記変換後の前記入力機器の色域を前記変換後の前記出力機器の色域にマッピングするテーブルを作成するマッピング手段とを有することを特徴とする請求項2に記載された色処理装置。
【請求項11】
さらに、前記色空間を表すデータを他の観察環境における前記色空間を表すデータに変換する変換手段と、
前記変換後の前記色空間を表すデータと前記変換に用いた変換パラメータの対応関係から、前記他の観察環境における前記色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成する作成手段とを有することを特徴とする請求項2に記載された色処理装置。
【請求項12】
前記均等知覚色空間は、視覚等色相データを所定の色相差以内で表現する色空間であることを特徴とする請求項2または請求項11に記載された色処理装置。
【請求項13】
前記所定の色相差は三度であることを特徴とする請求項12に記載された色処理装置。
【請求項14】
前記視覚等色相データは、主観評価実験に基づき作成された、人間が同じ色相と知覚する色データ群であることを特徴とする請求項12または請求項13に記載された色処理装置。
【請求項15】
前記視覚等色相データは、マンセルデータの各色相における等色相データであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載された色処理装置。
【請求項16】
さらに、前記変換パラメータを用いて基準色の色値およびサンプル色の色値を均等色知覚空間の色値に変換する変換手段と、
前記変換後の前記基準色の色値と、前記変換後のサンプル色の色値の色差を算出し、許容値と比較して色差の評価を行う評価手段とを有することを特徴とする請求項2、請求項11から請求項15の何れか一項に記載された色処理装置。
【請求項17】
入力手段、取得手段、設定手段、補正手段を有する色処理装置の色処理方法であって、
前記入力手段が、色空間を表すデータを入力し、
前記取得手段が、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、
前記設定手段が、前記色空間において、前記データセットが対応する前記複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定し、
前記補正手段が、前記制御点と前記データセットを用いて、前記色空間を縮小するように補正することを特徴とする色処理方法。
【請求項18】
入力手段、取得手段、設定手段、作成手段を有する色処理装置の色処理方法であって、
前記入力手段が、色空間を表すデータを入力し、
前記取得手段が、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、
前記設定手段が、前記色空間において、制御領域を示す制御点を設定し、
前記作成手段が、前記制御点、前記データセットおよび前記色空間における中心を用いて、前記色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成することを特徴とする色処理方法。
【請求項19】
コンピュータを請求項1から請求項16の何れか一項に記載された色処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
色空間を表すデータを入力する入力手段と、
複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得する取得手段と、
前記色空間において、前記データセットが対応する前記複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定する設定手段と、
前記制御点と前記データセットを用いて、前記色空間を縮小するように補正する補正手段とを有することを特徴とする色処理装置。
【請求項2】
色空間を表すデータを入力する入力手段と、
複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得する取得手段と、
前記色空間において、制御領域を示す制御点を設定する設定手段と、
前記制御点、前記データセットおよび前記色空間における中心を用いて、前記色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成する作成手段とを有することを特徴とする色処理装置。
【請求項3】
前記色空間は前記均等色知覚空間を作成する際の基準になる基準色空間であり、前記均等色知覚空間は人間の知覚に対して均等な色空間であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された色処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記制御領域と、前記基準色空間における前記制御領域の境界に前記制御点を複数設定することを特徴とする請求項3に記載された色処理装置。
【請求項5】
さらに、前記複数の制御点それぞれについて、前記基準色空間における前記データセットの各データを表す図形の形状を真円に近付けるための、移動後の前記制御点の位置を示す制御パラメータを算出する算出手段を有し、
前記作成手段は、前記算出の結果を用いて、前記基準色空間の任意の点を前記均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載された色処理装置。
【請求項6】
前記算出手段は、最適化手法を用いて、前記制御点の移動方向と移動量、および、前記制御点が設定された明度における無彩色点に対する前記制御点の圧縮率を前記制御パラメータとして算出することを特徴とする請求項5に記載された色処理装置。
【請求項7】
前記圧縮率は、前記制御点と前記無彩色点の間の中間点の移動位置を規定することを特徴とする請求項6に記載された色処理装置。
【請求項8】
前記取得手段は、人間が弁別可能な範囲を規定した色弁別閾データセットを前記視覚均等性を表すデータセットとして取得することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載された色処理装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記基準色空間の複数の明度それぞれにおいて前記制御領域および前記制御点を設定することを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載された色処理装置。
【請求項10】
さらに、前記変換パラメータを用いて入力機器の色域および出力機器の色域を前記均等色知覚空間に変換する変換手段と、
前記変換後の前記入力機器の色域を前記変換後の前記出力機器の色域にマッピングするテーブルを作成するマッピング手段とを有することを特徴とする請求項2に記載された色処理装置。
【請求項11】
さらに、前記色空間を表すデータを他の観察環境における前記色空間を表すデータに変換する変換手段と、
前記変換後の前記色空間を表すデータと前記変換に用いた変換パラメータの対応関係から、前記他の観察環境における前記色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成する作成手段とを有することを特徴とする請求項2に記載された色処理装置。
【請求項12】
前記均等知覚色空間は、視覚等色相データを所定の色相差以内で表現する色空間であることを特徴とする請求項2または請求項11に記載された色処理装置。
【請求項13】
前記所定の色相差は三度であることを特徴とする請求項12に記載された色処理装置。
【請求項14】
前記視覚等色相データは、主観評価実験に基づき作成された、人間が同じ色相と知覚する色データ群であることを特徴とする請求項12または請求項13に記載された色処理装置。
【請求項15】
前記視覚等色相データは、マンセルデータの各色相における等色相データであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載された色処理装置。
【請求項16】
さらに、前記変換パラメータを用いて基準色の色値およびサンプル色の色値を均等色知覚空間の色値に変換する変換手段と、
前記変換後の前記基準色の色値と、前記変換後のサンプル色の色値の色差を算出し、許容値と比較して色差の評価を行う評価手段とを有することを特徴とする請求項2、請求項11から請求項15の何れか一項に記載された色処理装置。
【請求項17】
入力手段、取得手段、設定手段、補正手段を有する色処理装置の色処理方法であって、
前記入力手段が、色空間を表すデータを入力し、
前記取得手段が、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、
前記設定手段が、前記色空間において、前記データセットが対応する前記複数の色領域を包含する制御領域を示す制御点を設定し、
前記補正手段が、前記制御点と前記データセットを用いて、前記色空間を縮小するように補正することを特徴とする色処理方法。
【請求項18】
入力手段、取得手段、設定手段、作成手段を有する色処理装置の色処理方法であって、
前記入力手段が、色空間を表すデータを入力し、
前記取得手段が、複数の色領域それぞれにおける視覚均等性を表すデータセットを取得し、
前記設定手段が、前記色空間において、制御領域を示す制御点を設定し、
前記作成手段が、前記制御点、前記データセットおよび前記色空間における中心を用いて、前記色空間の任意の点を均等色知覚空間の点に変換する変換パラメータを作成することを特徴とする色処理方法。
【請求項19】
コンピュータを請求項1から請求項16の何れか一項に記載された色処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図11】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図11】
【図26】
【公開番号】特開2013−21679(P2013−21679A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112687(P2012−112687)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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