色可変光放出デバイス
色/色温度可変光放出デバイスは、第一の波長範囲の光を生成するように動作可能である励起光源(LED)及び光の少なくとも一部を第二の波長範囲の光に変換するように動作可能である蛍光体物質を含む波長変換コンポーネントを含む。デバイスによって放出される光は、第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含む。波長変換コンポーネントは、空間的に変化する波長変換性(単位面積あたりの蛍光体物質濃度)を有する。光源によって生成される光の色は、第一の波長範囲の光が波長変換コンポーネントの異なる部分に入射し、生成される光が第一及び第二の波長範囲の光を異なる相対的割合で含むような波長変換コンポーネントと励起光源との相対動によって可変である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
2007年10月1日出願のJames CarusoらによるCOLOR TUNABLE LIGHT EMITTING DEVICEと題する米国特許出願第11/906,532号(整理番号ITMX−00228US0)。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、色/色温度可変光放出デバイスに関し、特に、特定の色の光を生成するために波長変換性蛍光体物質を含む、発光ダイオードのような固体光源に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
光源、特に発光ダイオード(LED)によって生成される光の色は、主として、その光を生成するために使用されるデバイスアーキテクチャ及び材料選択によって決まる。たとえば、多くのLEDは、LEDチップ/ダイによって放出される放射線の一部分を吸収し、異なる色(波長)の放射線を再放出するフォトルミネッセンス物質である一つ以上の蛍光体物質を組み込んでいる。これが、「白色」LED光源の製造における最先端技術である。そのようなLEDによって生成される光の正味色は、LEDチップからの光の色と、LED光が製造されるとき固定され、決定される、蛍光体によって再放出される色とが合わさった固有の色(波長)である。
【0004】
赤、緑及び青のLEDを含む色切換え可能な光源が公知である。そのような光源から出力される光の色は、異なる色のLEDの一つ以上の選択的アクティブ化によって制御することができる。たとえば、青及び赤のLEDのアクティブ化は、紫色に見える光を生成し、三つのLEDすべてのアクティブ化は、白色に見える光を生成する。このような光源の欠点は、これらの光源を作動させるために必要な駆動回路の複雑さである。
【0005】
US7,014,336は、有色光を生成するシステム及び方法を開示している。一つの照明器具は、成分照射光源(異なる色のLED)のアレイ及び成分照射光源の集合体を制御するためのプロセッサを含む。プロセッサは、アレイ中の異なる色のLEDの強さを制御して、個々のLEDのスペクトル及び照明器具に関連するフィルタ又は他のスペクトル変更装置によって画定される範囲内の選択された色の照射を生成する。
【0006】
白色LEDは当技術分野で公知であり、比較的最近の技術革新である。電磁スペクトルの青/紫部分で放出するLEDが開発されてはじめて、LEDに基づく白色光源を開発することが現実的になった。たとえばUS5,998,925で教示されているように、白色光生成LED(「白色LED」)は、LEDによって放出された放射線の一部分を吸収し、異なる色(波長)の放射線を再放出する一つ以上の蛍光体物質、すなわちフォトルミネッセンス物質を含む。一般に、LEDチップ又はダイが青色光を生成し、蛍光体がその青色光の一定割合を吸収し、黄色光又は緑色光と赤色光、緑色光と黄色光もしくは黄色光と赤色光の組み合わせを再放出する。LEDによって生成される青色光のうち、蛍光体によって吸収されない部分が、蛍光体によって放出される光と組み合わされ、人の眼にはほぼ白色に見える光を提供する。
【0007】
周知のとおり、白色光源の相関色温度(CCT)は、その色相を理論的な加熱された黒体放射体と比較することによって測定される。CCTは、ケルビン(K)で指定され、光源と同じ色相の白色光を放射する黒体放射体の温度に対応する。白色LEDのCCTは、一般に、蛍光体組成及びLEDに組み込まれた蛍光体の量によって決まる。
【0008】
白色LEDは、多くの場合、接着剤を使用してLEDチップを金属又はセラミクスのカップに取り付けたのち、リードワイヤをチップに結合することによって製造される。カップは、多くの場合、光をデバイスの外に反射するための反射性内面を有する。通常、粉末形態にある蛍光体物質がシリコーン結合材と混合されたのち、その蛍光体混合物がLEDチップの上に配置される。白色LEDを製造する際の問題は、名目上は同じであると考えられるLEDの間でのCCT及び色相の変差である。この問題は、人の眼が、特に「白」色範囲における色相の微妙な変化に対してきわめて敏感であるという事実によって複雑化する。白色LEDに伴うさらなる問題は、そのCCTがデバイスの作動寿命にわたって変化することができ、そのような色の変化が、LEDライティングバーのような、複数の白色LEDを含む光源で特に顕著であるということである。
【0009】
上記のような蛍光体波長変換を伴うLED、特に白色LEDにおける色変差の問題を軽減するため、LEDは、製造後、「ビンアウト」又は「ビニング」のシステムを使用して分類される。ビニングにおいては、各LEDを作動させ、その放出光の実際の色を計測する。そして、デバイスが製造された際の標的CCTに基づいてではなく、デバイスが生成する光の実際の色にしたがってLEDを分類又はビニングする。一般に、白色LEDを分類するためには9個以上のビン(色空間の領域又はカラービン)が使用される。多くの場合、9個のビンのうち2個しか所期の用途には受け入れられないため、ビニングの欠点は、製造コストの増大及び低い収率であり、白色LED供給者及び顧客にとってサプライチェーンの難題を生じさせる。
【0010】
白色LEDは、潜在的には数十万時間にも及ぶその長い作動寿命及び低い電力消費の点での高い効率のおかげで、潜在的に白熱、蛍光及びネオン光源に取って代わると予想される。最近、従来の白色蛍光灯、水銀灯及びネオンライトに代えて高輝度白色LEDが使用されるようになった。他の光源と同様、白色LEDのCCTは一定であり、LEDを製造するために使用される蛍光体組成によって決まる。
【0011】
US7,014,336は、高質な白色光、すなわち、人の眼の明順応(スペクトル移動機能)内で実質的に連続的なスペクトルを有する白色光を生成するシステム及び方法を開示している。眼の明順応は、眼が見ることができる限界の測度を与えるため、これは、波長範囲400nm(紫外線)〜700nm(赤外線)を有する高質な白色光に対する境界を設定する。白色光を創出するための一つのシステムは300個のLEDを含み、各LEDが、狭いスペクトル幅及び400〜700nm波長範囲の所定部分に及ぶ最大スペクトルピークを有する。各LEDの強さを選択的に制御することにより、色温度(及び色)を制御することができる。さらなる照明器具は、波長範囲にわたって25nmごとに離間した25nmのスペクトル幅を有する9個のLEDを含む。これら9個のLEDの相対的強さを調節することにより、LEDのパワーを調節して一定範囲の色温度(及び色)を生成することができる。また、各LEDが、眼の明順応を満たす実質的に連続的なスペクトルを維持するための増大したスペクトル幅を有するならば、より少数のLEDを使用して白色光を生成することが提案されている。もう一つの照明器具は、一つ以上の白色LEDを使用し、光学ハイパスフィルタを設けて白色光の色温度を変化させることを含む。これは、一連の互換性フィルタを設けることにより、一つの照明器具が、様々なフィルタに関して一連の範囲を指定することにより、任意の温度の白色光を生成することを可能にする。このようなシステムは高質な白色光を生成することができるが、このような照明器具は、複数の別個のカラーLEDを製造する困難さ及びそれらを作動させるのに要する制御回路のせいで、多くの用途にとって費用がかかりすぎる。
【0012】
したがって、公知の光源の限界を解消する色可変光源、特に低廉な固体光源、たとえば波長変換性蛍光体物質を含み、放出光の色及び/又はCCTが少なくとも部分的に可変であるLEDの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、色が少なくとも部分的に可変である光放出デバイスを提供しようとする努力において生まれた。そのうえ、本発明は、少なくとも部分的に、蛍光体波長変換を含むLEDの色相変差の問題にも対応し、ビニングの必要性を減らす又はなくすことを試みる。本発明のさらなる目的は、多色LEDパッケージと比較して低廉な色可変光源を提供することである。
【0014】
本発明にしたがって、第一の波長範囲の光を生成するように動作可能である、LEDのような励起光源及び光の少なくとも一部を第二の波長範囲の光に変換するように動作可能である少なくとも一つの蛍光体物質を含む波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、波長変換コンポーネントが、空間的に変化する波長変換性を有し、光源によって生成される光の色が、第一の波長範囲の光が波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するような波長変換コンポーネントと励起光源との相対動によって可変であるデバイスが提供される。本発明の光放出デバイスの他ならぬ利点は、その色温度を製造後に正確に設定することができるため、費用のかかるビニングの必要性がなくなることである。色/色温度を設定する製造者又は設置者だけでなく、ユーザもまた、デバイスの寿命にわたって、又は「ムード」照明の場合にはより頻繁に、色/色温度を定期的に調節することができる。
【0015】
波長変換コンポーネントは、励起光源に対して移動可能であり、一次元的、二次元的又は回転方向に変化する波長変換性を有することができる。コンポーネントの波長変換性は、蛍光体物質の単位面積あたりの濃度(密度)における空間的変化によって変化するように構成されることができる。そのような変化は、少なくとも一つの蛍光体物質の厚さにおける空間的変化、たとえば実質的に線形に変化する厚さを含むことができる。一つの態様において、少なくとも一つの蛍光体は、透明な材料の単位体積あたり実質的に一定である濃度で透明な材料、たとえばアクリル又はシリコーン材料に組み込まれ、波長変換コンポーネントの厚さは空間的に変化する。一つのそのようなコンポーネントの例はくさび形であり、コンポーネントの長手に沿ってテーパ状である厚さを有する。代替態様において、波長変換コンポーネントは透明なキャリヤを含み、そのキャリヤの表面上に蛍光体物質が設けられる。好ましい実施態様において、蛍光体物質は、少なくとも一つの蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化するような、空間的に変化するパターン、たとえば異なるサイズ及び/又は間隔の点又は線のパターンとして設けられる。そのような態様において、蛍光体物質の厚さ及び濃度は実質的に一定であることができる。蛍光体物質は、蛍光体物質を選択的に小出しするためのディスペンサを使用してキャリヤに付着させることもできるし、スクリーン印刷法を使用して印刷することもできる。
【0016】
波長変換コンポーネントは、第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質をさらに含むことができ、デバイスによって放出される光は、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、第二の蛍光体物質の単位面積あたりの濃度は空間的に変化する。
【0017】
光放出デバイスは、第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質を含む第二の波長変換コンポーネントをさらに含むことができ、デバイスによって放出される光は、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、第二の波長変換コンポーネントは、空間的に変化する波長変換性を有し、光源によって生成される光の色は、第一の波長範囲の光が第一及び第二の波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するように、励起光源に対して第一及び第二の波長変換コンポーネントを動かすことによって可変である。好ましくは、第一及び第二の波長変換コンポーネントは、互いに及び励起光源に対して独立して移動可能である。そのような態様は、色空間の区域にわたる色変化を可能にする。
【0018】
第一の波長変換コンポーネントの場合と同様に、単位面積あたりの第二の蛍光体の濃度は、たとえば、蛍光体厚さにおける変化又は蛍光体物質のパターンにおける変化とともに空間的に変化することができる。
【0019】
本発明のさらなる実施態様にしたがって、第一の波長範囲の光を生成するように動作可能である複数の発光ダイオード及び励起放射線の少なくとも一部を第二の波長の光に変換するように動作可能である波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、波長変換コンポーネントが、少なくとも一つの蛍光体物質を含む、それぞれが発光ダイオードのそれぞれ一つと対応する複数の波長変換領域を含み、各領域が、空間的に変化する波長変換性を有し、デバイスによって生成される光の色が、各発光ダイオードからの第一の波長範囲の光がそのそれぞれの波長変換領域の異なる部分に入射するように発光ダイオードに対してコンポーネントを動かすことによって可変であるデバイスが提供される。
【0020】
一つの態様において、複数の発光ダイオードは線形アレイを含み、波長変換領域は対応する線形アレイを含み、光源は、発光ダイオードのアレイに対してコンポーネントを線形に移動させることによって可変である。あるいはまた、複数の発光ダイオードは二次元アレイを含み、波長変換領域は対応する二次元アレイを含み、光源は、発光ダイオードのアレイに対してコンポーネントを二元的に移動させることによって可変である。
【0021】
さらに別の態様において、複数の発光ダイオードは円形アレイを含み、波長変換領域は対応する円形アレイを含み、デバイスは、発光ダイオードのアレイに対してコンポーネントを回転方向に移動させることによって可変である。
【0022】
本発明がより良く理解されるよう、以下、添付図面を参照しながら本発明の実施態様を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の色可変光放出デバイスの作動原理の略図である。
【図2】図1のデバイスに関する色変化を示すCIE(国際照明委員会)1931色度図である。
【図3】(a)〜(f)は、本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。
【図4】図3の光源に関する色変化を示すCIE1931色度図である。
【図5】本発明の波長変換コンポーネントの略図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。
【図7】図6の光源に関する色変化を示すCIE1931色度図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の色温度可変白色光放出ライティングバーの図である。
【図9】波長変換コンポーネントが回転可能である本発明のさらなる実施態様の色温度可変白色光放出デバイスの略図である。
【図10】波長変換コンポーネントが二方向に移動可能である本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の実施態様は、空間的に変化する波長変換性(特性)を有し、一つの波長範囲(色)にある、励起光源、通常は発光ダイオード(LED)からの光を異なる波長範囲(色)の光に変換するために使用される波長変換コンポーネントに基づく。第一及び第二の波長範囲の組み合わせた光を含む、デバイスによって生成される光の色は、励起光源に対してコンポーネントを動かして第二の波長範囲の光の全割合を変更することによって制御する(変える)ことができる。
【0025】
図1(a)〜(c)を参照すると、本発明の色可変光放出デバイス10の作動原理の略図が示されている。デバイス10は、波長λ1の励起放射線(光)14を生成するように動作可能である励起光源12及び移動可能な波長変換コンポーネント16を含む。通常、励起光源12は、発光ダイオード(LED)、たとえば、波長400〜465nmの青色光を生成するように動作可能であるInGaN/GaN(インジウム窒化ガリウム/窒化ガリウム)ベースのLEDチップを含む。
【0026】
図示される例示的実施態様において、波長変換コンポーネント16は、テーパ形(くさび形)であり、所期移動方向18に沿ってtとTとの間で厚さがテーパ状である。波長変換コンポーネント16は、蛍光体(フォトルミネッセンス又は波長変換性)物質を組み込んだ透明な基材、たとえばアクリル又はシリコーン材料、たとえばGEのRTV615でできていることができる。公知であるように、蛍光体物質は、第一の波長の励起放射線(光)を吸収し、より長い波長λ2、たとえば緑色の光を再放出する。粉末形態にある蛍光体物質は、アクリル材料中に実質的に均一に分散し、光デバイス10の動作の所期の色範囲に依存して一般的範囲5〜50%の、アクリルに対する蛍光体の重量比配合率を有する。蛍光体物質はコンポーネント中に均一に分散している、すなわち、基材の単位体積あたりの蛍光体の濃度は実質的に一定であり、コンポーネントはその長手に沿って厚さが変化するため、単位面積あたりの蛍光体の量(1平方メートルあたりのグラム数、g/m2)は、コンポーネントの長手に沿って線形に変化する。換言するならば、波長変換コンポーネント16は、その長手に沿って変化する波長変換性(特性)を有する。
【0027】
図1に示すように、励起放射線(青色光)14の入射区域を波長変換コンポーネント16の小さな部分に限定するために遮光要素20が設けられている。好ましい実施態様において、LEDチップ12は、セラミックス又は金属のハウジング中にパッケージングされ、波長変換コンポーネントは、ハウジング開口に隣接して又はそれと滑動的に接触する状態で取り付けられる。そのような態様においては、ハウジング壁が遮光要素として機能する。デバイスの全効率を最適化するために、ハウジング壁20の内面は、好ましくは高反射性である。
【0028】
次に、図1(a)〜(c)及びデバイスの色変化を示すCIE(国際照明委員会)1931色度図である図2を参照することによってデバイス10の動作を説明する。図1(a)において、波長変換コンポーネントは、デバイス10によって生成される光22がLEDチップからの光14のみからなるような完全に引き込まれた位置で示されている。その結果、デバイスによって生成される光は、青色である波長λ1の光であり、図2の点24に対応する。
【0029】
図1(b)において、波長変換コンポーネント16は方向18に平行移動しており、今やLEDからの光14はコンポーネントの領域に入射するようになっている。コンポーネント内の蛍光体物質が励起放射線(光)14の一部を吸収し、青色付活緑色放出蛍光体物質が波長変換コンポーネント16に組み込まれているこの例においては緑色である波長λ2の光を再放出する。すると、デバイスによって生成される光22は、青色(λ1)光と緑色(λ2)光との組み合わせを含み、青緑色に見える。出力光中の緑色(λ2)光の割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の濃度(g/m2)に依存する。コンポーネント16の所与の場所及び所与の厚さに関して、そのような得られる光は、その場所における蛍光体単位面積配合率に依存する色を有する。この得られる色は、図2のCIE図の線28上の点に合致し、その正確な位置は、蛍光体の選択及び波長変換コンポーネント16中のそのような蛍光体の配合率に依存する。
【0030】
図1(c)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネントのもっとも厚い部分TがLEDチップの上方に位置している。コンポーネント内の蛍光体の濃度及び厚さTは、蛍光体が今やLEDからのすべての光を吸収し、緑色の光を再放出するように構成されている。したがって、デバイスによって生成される光22は今や、蛍光体によって生成される緑色(λ2)光のみからなり、これが、図2の色度図上で点26として示されている。デバイスによって放出される光の色は線28上の点24と点26との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0031】
本発明の光放出デバイスは、無機蛍光体物質、たとえば一般組成A3Si(OD)5又はA2Si(OD)4のシリケート系蛍光体を使用すると考えられる(式中、Siはケイ素であり、Oは酸素であり、Aは、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)又はカルシウム(Ca)を含み、Dは、塩素(Cl)、フッ素(F)、窒素(N)又は硫黄(S)を含む)。シリケート系蛍光体の例は、本発明者らの同時係属出願US2006/0145123、US2006/028122、US2006/261309及びUS2007029526に開示されている。これらの出願それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
US2006/0145123に教示されているように、ユーロピウム(Eu2+)付活シリケート系緑色蛍光体は、一般式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有する(式中、A1は、2+カチオン、1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせ、たとえばMg、Ca、Ba、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)又はセリウム(Ce)の少なくとも一つであり、A2は、3+、4+又は5+カチオン、たとえばホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、N又はリン(P)であり、A3は、1−、2−又は3−アニオン、たとえばF、Cl、臭素(Br)、N又はSである)。式は、A1カチオンがSrに取って代わり、A2カチオンがSiに取って代わり、A3アニオンがOに取って代わることを示すように書かれている。xの値は、2.5〜3.5の整数又は非整数である。
【0033】
US2006/028122は、式A2SiO4:Eu2+Dを有するシリケート系黄緑色蛍光体を開示している(式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn又はカドミウム(Cd)を含む二価の金属の少なくとも一つであり、Dは、F、Cl、Br、ヨウ素(I)、P、S及びNを含むドーパントである)。ドーパントDは、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在することができる。蛍光体は、(Sr1-x-yBaxMy)SiO4:Eu2+Fを含むことができる(式中、MはCa、Mg、Zn又はCdを含む)。
【0034】
US2006/261309は、結晶構造が(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである第一の相及び結晶構造が(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである第二の相を有する二相シリケート系蛍光体を教示している(式中、M1及びM2は、それぞれSr、Ba、Mg、Ca又はZnを含む)。少なくとも一つの相が二価のユーロピウム(Eu2+)で付活され、相の少なくとも一つは、F、Cl、Br、S又はNを含むドーパントDを含有する。ドーパント原子の少なくともいくつかがホストシリケート結晶の酸素原子格子部位に位置していると考えられる。
【0035】
US2007/029526は、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5を有するシリケート系オレンジ色蛍光体を開示している(式中、Mは、Ba、Mg、Ca又はZnを含む二価の金属の少なくとも一つであり、0<x<0.5、2.6<y<3.3及び0.001<z<0.5である)。蛍光体は、約565nmよりも大きいピーク放出波長を有する可視光線を放出するように構成されている。
【0036】
蛍光体はまた、本発明者らの同時係属出願US2006/0158090及びUS2006/0027786で教示されているようなアルミネート系物質を含むこともできる。これらの出願それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
US2006/0158090は、式M1-xEuxAlyO[1+3y/2]のアルミネート系緑色蛍光体を教示している(式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zn、Cu、Cd、Sm及びツリウム(Tm)を含む二価の金属の少なくとも一つであり、0.1<x<0.9及び0.5≦y≦12である)。
【0038】
US2006/0027786は、式(M1-xEux)2-zMgzAlyO[1+3y/2]を有するアルミネート系蛍光体を開示している(式中、Mは、二価の金属Ba又はSrの少なくとも一つである)。一つの組成において、蛍光体は、約280nm〜420nmの範囲の波長の放射線を吸収し、約420nm〜560nmの範囲の波長を有する可視光線を放出するように構成されており、0.05<x<0.5又は0.2<x<0.5、3≦y≦12及び0.8≦z≦1.2である。蛍光体はさらに、ハロゲンドーパントH、たとえばCl、Br又はIでドープされ、一般組成(M1-xEux)2-zMgzAlyO[1+3y/2]:Hを有することもできる。
【0039】
蛍光体は、本明細書に記載される例には限定されず、たとえば窒化物及びスルフェート蛍光体物質、オキシ窒化物及びオキシスルフェート蛍光体又はガーネット物質(YAG)をはじめとする任意の無機又は有機蛍光体物質を含むことができることが理解されよう。
【0040】
図3(a)〜(f)は、本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。本明細書を通して、同様なコンポーネントは、同様な参照番号を使用して指定される。図3の実施態様において、波長変換コンポーネント16は、赤色(R)光を放出する蛍光体物質及び緑色(G)光を放出する蛍光体物質をそれぞれ含む二つの重なり合ったテーパ状の部品16a及び16bを含む。図4は、図3のデバイスの色変化を示すCIE(国際照明委員会)1931色度図である。
【0041】
図3(a)において、波長変換コンポーネント16は、デバイス10によって生成される光22がLEDチップからの光のみからなるように完全に引き込まれた位置で示されている。その結果、デバイスによって生成される光は青色(B)であり、図4の点30に対応する。
【0042】
図3(b)において、波長変換コンポーネント16は方向18に平行移動しており、今やLEDからの光14はコンポーネントの赤色光生成部品16aに入射するようになっている。すると、コンポーネント内の赤色光放出蛍光体物質が励起放射線の一部を吸収し、赤色光を再放出する。その結果、デバイスによって生成される光22は、青色光と赤色光との組み合わせを含み、青色光と赤色光との相対的割合に依存して、温白(WW)色ないしインジゴ色に見える。出力光中の赤色光の割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の濃度に依存する。
【0043】
図3(c)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネント部品16aのもっとも厚い部分TがLEDチップの上方に位置している。部品16a内の蛍光体の濃度及び部品16aの厚さは、赤色光生成蛍光体が今やLEDからのすべての青色光を吸収し、赤色光を再放出するように選択されている。したがって、デバイスによって生成される光22は今や、蛍光体によって生成される赤色光のみからなり、これが、図4の色度図上で点34として示されている。デバイスによって放出される光の色は線32上の点30と点34との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0044】
図3(d)において、波長変換コンポーネント16は方向18にさらに平行移動し、今やLEDからの光14は赤色光生成部品16a及び緑色光生成部品16bの両方を含むコンポーネントの領域に入射するようになっている。図示するように、コンポーネントは、緑色光生成部品16bの厚さが赤色光生成部品16aの厚さよりも大きくなり、したがって、緑色光の割合が相応に大きくなるように配置されている。すると、コンポーネント部品16a及び16b内の赤色光放出蛍光体物質及び緑色光放出蛍光体物質は、励起放射線の実質すべてをそれらの間で吸収し、それぞれ赤色光及び緑色光を再放出する。その結果、デバイスによって生成される光22は、赤色光と緑色光との組み合わせを含み、黄緑色に見える。出力光中の赤色光と緑色光との相対的割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の相対密度に依存する。
【0045】
図3(e)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネント部品16bのもっとも厚い部分TがLEDチップの上方に位置している。この時点で、部品16aはもはや放出光に寄与しない。部品16b内の蛍光体の濃度及び部品16bの厚さは、緑色光生成蛍光体が今やLEDからのすべての光を吸収し、緑色光を再放出するように選択されている。したがって、デバイスによって生成される光22は今や、蛍光体によって生成される緑色光のみからなり、これが、図4の色度図上で点38として示されている。デバイスによって放出される光の色は線36上の点34と点38との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0046】
図3(f)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネント部品16bの比較的薄い部分がLEDチップの上方に位置している。すると、コンポーネント内の緑色光放出蛍光体が励起放射線の一部を吸収し、緑色光を再放出する。その結果、デバイスによって生成される光22は、青色光と緑色光との組み合わせを含み、青緑色に見える。出力光中の緑色光の割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の濃度に依存する。光源によって放出される光の色は線40上の点38と点30との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0047】
波長変換コンポーネントは、単位面積あたりの蛍光体の濃度がコンポーネントの位置の関数として空間的に変化するようなテーパ状の厚さを有するものとして記載された。図5は、代替態様の波長変換コンポーネント16の略図である。この実施態様において、波長変換コンポーネントは、蛍光体物質のパターンを表面に有する基材の透明なキャリヤ42を含む。蛍光体パターンは、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法又は他の付着技術を使用して蛍光体物質を付着させることにより、キャリヤ上に設けることができる。図示される例において、蛍光体パターンは、蛍光体物質の円形のドット44のパターンを含む。ドット42の相対的サイズ及び/又は間隔は、単位面積あたりの蛍光体濃度がコンポーネントの所期移動方向18に沿って変化するように選択される。ドット42はまた、ハーフトーンシステムを使用して、異なるサイズの等間隔非重複区域(ドット)のアレイとして設けることもできる。図3の波長変換コンポーネントは、二つ以上の蛍光体物質のパターンによって製造することができる。そのうえ、単位面積あたりの蛍光体濃度がコンポーネントの表面上の位置とともに空間的に変化するならば、蛍光体物質のいかなるパターンをも使用することができることが理解されよう。たとえば、パターンは、異なる幅及び/又は間隔の線のパターンを含むことができる。代替的又は追加的に、パターンの様々な部分内の蛍光体物質の濃度(すなわち、結合材への蛍光体の配合率)を使用して、空間的に変化する蛍光体パターンを達成することができる。そのようなコンポーネントの利点は製造の容易さであり、実質的に均一な厚さであることが、コンポーネントを簡単なガイド構造内に移動可能に取り付けることを可能にする。
【0048】
図6(a)〜(d)は、独立して移動可能である二つの変換コンポーネント161及び162を含む本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。この実施態様において、各波長変換コンポーネント161及び162は、図5の実施態様にしたがって製造され、それぞれ波長λ2(赤)及びλ3(緑)の光を生成する蛍光体物質のパターンを含む。蛍光体パターンは、図6には、コンポーネントを厚さ方向に通過する一連の線として示され、これらの線の間隔の変化が蛍光体物質の濃度の変化を表す。
【0049】
図6(a)において、両方の波長変換コンポーネント161及び162は、LEDからの光14、励起放射線が、各コンポーネントの、単位面積あたり非常に低濃度の蛍光体物質を含む、又は蛍光体物質を含まない末端部分に入射するような引き込まれた位置で示されている。その結果、デバイス10によって生成される光22は、LEDチップ12からの光14のみからなり、青色(波長λ1)である。これは、図7のCIE図の点46に対応する。
【0050】
図6(b)において、波長変換コンポーネント161は平行移動しており、今やLEDからの光14は、コンポーネント161の、最高濃度の蛍光体物質を含有する反対側末端部分に入射するようになっている。コンポーネント162の位置は変化しないままである。すると、コンポーネント161内の赤色光放出蛍光体物質が励起放射線のすべてを吸収し、赤色光(λ2)を再放出する。これは、図7の色度図の点48に対応する。デバイスによって放出される光の色は、コンポーネント162を維持しながらコンポーネント161を動かして、単位面積あたり異なる濃度の蛍光体を有するコンポーネントの中間部分に励起放射線が入射するようにすることにより、点46と点48とを接続する線に沿って可変であることができる。
【0051】
図6(b)の状況とは逆である図6(c)において、波長変換コンポーネント162は平行移動しており、LEDからの光14は、コンポーネントの、最高濃度の蛍光体物質を含有する末端部分に入射するようになっている。第一のコンポーネント161は引き込まれた位置にあり、LEDからの光は、このコンポーネントの、蛍光体物質を含有しない末端部分に入射する。両コンポーネントがこれらの位置にあると、コンポーネント162内の緑色光放出蛍光体物質が励起放射線のすべてを吸収し、緑色光(λ3)を再放出する。これは、図7の色度図の点50に対応する。デバイスによって放出される光の色は、コンポーネント162を動かして、単位面積あたり異なる濃度の蛍光体を有するコンポーネントの中間部分に励起放射線が入射するようにすることにより、点46と点50とを接続する線に沿って可変であることができる。
【0052】
図6(d)において、波長変換コンポーネント161及び162は、LEDからの光14が、コンポーネントの両端間のほぼ中間の、中間濃度の蛍光体物質を有する部分に入射するように配置されている。すると、コンポーネント161及び162内の赤色光放出蛍光体物質及び緑色光放出蛍光体物質は、励起放射線の実質的割合をそれらの間で吸収し、赤色光(λ2)と緑色光(λ3)との組み合わせを再放出する。これは、図7の色度図の点48と点50とを接続する線上の点に対応する。
【0053】
独立して制御可能な二つの異なる波長変換コンポーネントを使用する利点は、生成される光22の色が、図7の色度図のクロスハッチ模様領域52によって示されるような色空間内で可変であるということである。
【0054】
図8(a)〜(c)は、本発明の色温度可変白色光放出バー80を示す。ライティングバー80は、照明用途に使用するためのものであり、相関色温度(CCT)が可変であり、製造者及び/又はユーザによってCCT≒7000Kの冷白色(CW)とCCT≒3000Kの温白色(WW)との間で設定することができる白色光を生成することができる。図8(a)及び(b)はそれぞれライティングバー80の側面図及び平面図を示し、図8(c)は、ライティングバーが異なるCCTに変えられているさらなる平面図を示す。
【0055】
ライティングバー80は、バー84の長手に沿って線形アレイとして取り付けられた7個のLED82を含む。バー84は、各LEDへの電力及びLEDの熱管理を提供し、適当なヒートシンク(図示せず)に取り付けられることができる。各LED82は、四角のハウジング中にパッケージングされ、それぞれが冷白色(CW)光を生成するように動作可能であるような一つ以上の蛍光体物質を含むInGaN/GaN(インジウム窒化ガリウム/窒化ガリウム)ベースのLEDチップを含む。通常、蛍光体物質は、緑色のシリケート系蛍光体物質を含むことができる。各LEDの光放出の区域が円86によって示されている。
【0056】
ライティングバー80は、七つの波長変換領域90をその長手に沿って含む、アクリルのような透明な材料でできた透明なキャリヤバー88の形態の波長変換コンポーネントをさらに含む。波長変換領域90は、各領域90がLED82の各一つに対応する状態で、キャリヤの長手に沿う方向で変化する実質的に同一の波長変換特性を有する。各波長変換領域は、単位面積あたりの濃度がその長手に沿って実質的に線形に変化する黄色のシリケート系光放出蛍光体物質を含むことができる。上記の照明デバイスと同じく、濃度の変化は、蛍光体物質を透明な結合材に組み込み、図示するように各領域の厚さをその長手に沿って変化させることによって、又は、濃度が空間的に変化するパターンの形態で蛍光体物質を付着させることによって実現することができる。キャリヤバー88は、ガイド92の対によって、キャリヤ88の下面がLEDと滑動的に接触する状態で、バー84に移動可能に取り付けられている。サムレバー94がバー84に旋回可能に取り付けられ、レバー中のスロットが、キャリヤ88の上面から延びるスタッド96に結合されている。方向98へのレバーの動きがLEDに対するキャリヤの平行移動を生じさせる。バー88に対するキャリヤの位置を固定するためにロックスクリュー100が設けられている。
【0057】
操作に際して、製造者又は設置者が、ロックスクリュー100をゆるめ、ライティングバーが出力光に必要な色温度を生成するまでレバー94を操作することにより、ライティングバー80を選択された色温度に設定することができる。レバーの操作が、バー及びそれぞれのLEDに対するキャリヤ及び波長変換領域90の平行移動を生じさせるということが理解されよう(図8(c))。これが、波長変換領域によって生成される出力中の光(黄色)の割合を変化させ、ひいては、出力の色温度を変化させる。ひとたび選択された色温度が設定されたならば、ロックスクリューを締め付けてキャリヤを定位置に固定する。ライティングバーの他ならぬ利点は、その色温度を製造後に変えることができるため、費用のかかるビニングの必要性がなくなることである。色温度を設定する製造者又は設置者だけでなく、ユーザもまた、デバイスの寿命にわたってバーの色温度を定期的に調節することができる。
【0058】
より頻繁に色温度を調節することが求められる代替態様、たとえば「ムード」照明においては、モータ又はアクチュエータ、たとえば圧電又は磁気ひずみアクチュエータを使用してキャリヤを自動的に動かすことができる。LEDは、等間隔であるように示されているが、波長変換領域の間隔がLEDに対応するならば、不等間隔であることもできることが理解されよう。
【0059】
図9は、波長変換コンポーネントが回転可能である本発明のさらなる実施態様の色温度可変白色光放出デバイス120の略図である。白色光放出デバイス120は、CCTが冷白色(CW)と温白色(WW)との間で可変である白色光を生成することができる。この実施態様において、デバイスは、三つの同心円の周囲に配設された24個のLED122の円形アレイを含む。波長変換コンポーネントは、24の波長変換領域126の対応するアレイをその表面に有する回転可能な透明なディスク124を含む。各波長変換領域126は、所与の回転感覚における所与の角回転に関して実質的に同一な方法で変化する波長変換性を有する。その結果、回転軸により近い波長変換領域は、ディスク124の円周により近い位置にある波長変換領域よりも短い。図9において、波長変換コンポーネントは、各波長変換領域126の中央部分がその対応するLED122にかぶさる位置にあるように示されている。ディスク124を位置128と位置130との間で回転させることにより、デバイスによって放出される光の色温度をCWとWWとの間で変えることができるということが理解されよう。
【0060】
図10は、波長変換コンポーネントが二方向x、yに移動可能(平行移動可能)である本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイス140の略図である。この実施態様においては、4個のLED142が四角形アレイの形態に配設され、波長変換コンポーネントは、軸x及びyに対応する二方向に移動可能である透明な四角形プレート144を含む。四つの四角形の波長変換領域146の対応する四角形のアレイが透明なプレート144上に設けられている。この例において、各波長変換領域146は、それぞれ線及び点によって示される二つの異なる蛍光体物質を含み、それらの蛍光体物質それぞれの単位面積あたりの濃度が波長変換領域上で変化する。各波長変換領域の波長変換性は、x及びyの方向で実質的に同一な方法で変化する。図10において、波長変換コンポーネントは、各波長変換領域146の中央部分がその対応するLED142にかぶさる位置にあるように示されている。デバイスによって生成される光の色は、方向x及びyへのプレートの平行移動によって変えることができる。プレート144の移動範囲は破線148によって示されている。
【0061】
本発明の光放出デバイスの他ならぬ利点は、ビニングの必要性をなくすことができるということである。さらなる利点は、多色LEDパッケージ及びそれに伴う複雑な制御システムと比較した場合のコスト削減である。
【0062】
さらに、本発明は、記載された特定の実施態様に限定されず、本発明の範囲内である変更を加えることができるということが理解されよう。たとえば、LEDの数及び配設及び/又は波長変換コンポーネントの構成を所与の用途に適合させることができる。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
2007年10月1日出願のJames CarusoらによるCOLOR TUNABLE LIGHT EMITTING DEVICEと題する米国特許出願第11/906,532号(整理番号ITMX−00228US0)。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、色/色温度可変光放出デバイスに関し、特に、特定の色の光を生成するために波長変換性蛍光体物質を含む、発光ダイオードのような固体光源に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
光源、特に発光ダイオード(LED)によって生成される光の色は、主として、その光を生成するために使用されるデバイスアーキテクチャ及び材料選択によって決まる。たとえば、多くのLEDは、LEDチップ/ダイによって放出される放射線の一部分を吸収し、異なる色(波長)の放射線を再放出するフォトルミネッセンス物質である一つ以上の蛍光体物質を組み込んでいる。これが、「白色」LED光源の製造における最先端技術である。そのようなLEDによって生成される光の正味色は、LEDチップからの光の色と、LED光が製造されるとき固定され、決定される、蛍光体によって再放出される色とが合わさった固有の色(波長)である。
【0004】
赤、緑及び青のLEDを含む色切換え可能な光源が公知である。そのような光源から出力される光の色は、異なる色のLEDの一つ以上の選択的アクティブ化によって制御することができる。たとえば、青及び赤のLEDのアクティブ化は、紫色に見える光を生成し、三つのLEDすべてのアクティブ化は、白色に見える光を生成する。このような光源の欠点は、これらの光源を作動させるために必要な駆動回路の複雑さである。
【0005】
US7,014,336は、有色光を生成するシステム及び方法を開示している。一つの照明器具は、成分照射光源(異なる色のLED)のアレイ及び成分照射光源の集合体を制御するためのプロセッサを含む。プロセッサは、アレイ中の異なる色のLEDの強さを制御して、個々のLEDのスペクトル及び照明器具に関連するフィルタ又は他のスペクトル変更装置によって画定される範囲内の選択された色の照射を生成する。
【0006】
白色LEDは当技術分野で公知であり、比較的最近の技術革新である。電磁スペクトルの青/紫部分で放出するLEDが開発されてはじめて、LEDに基づく白色光源を開発することが現実的になった。たとえばUS5,998,925で教示されているように、白色光生成LED(「白色LED」)は、LEDによって放出された放射線の一部分を吸収し、異なる色(波長)の放射線を再放出する一つ以上の蛍光体物質、すなわちフォトルミネッセンス物質を含む。一般に、LEDチップ又はダイが青色光を生成し、蛍光体がその青色光の一定割合を吸収し、黄色光又は緑色光と赤色光、緑色光と黄色光もしくは黄色光と赤色光の組み合わせを再放出する。LEDによって生成される青色光のうち、蛍光体によって吸収されない部分が、蛍光体によって放出される光と組み合わされ、人の眼にはほぼ白色に見える光を提供する。
【0007】
周知のとおり、白色光源の相関色温度(CCT)は、その色相を理論的な加熱された黒体放射体と比較することによって測定される。CCTは、ケルビン(K)で指定され、光源と同じ色相の白色光を放射する黒体放射体の温度に対応する。白色LEDのCCTは、一般に、蛍光体組成及びLEDに組み込まれた蛍光体の量によって決まる。
【0008】
白色LEDは、多くの場合、接着剤を使用してLEDチップを金属又はセラミクスのカップに取り付けたのち、リードワイヤをチップに結合することによって製造される。カップは、多くの場合、光をデバイスの外に反射するための反射性内面を有する。通常、粉末形態にある蛍光体物質がシリコーン結合材と混合されたのち、その蛍光体混合物がLEDチップの上に配置される。白色LEDを製造する際の問題は、名目上は同じであると考えられるLEDの間でのCCT及び色相の変差である。この問題は、人の眼が、特に「白」色範囲における色相の微妙な変化に対してきわめて敏感であるという事実によって複雑化する。白色LEDに伴うさらなる問題は、そのCCTがデバイスの作動寿命にわたって変化することができ、そのような色の変化が、LEDライティングバーのような、複数の白色LEDを含む光源で特に顕著であるということである。
【0009】
上記のような蛍光体波長変換を伴うLED、特に白色LEDにおける色変差の問題を軽減するため、LEDは、製造後、「ビンアウト」又は「ビニング」のシステムを使用して分類される。ビニングにおいては、各LEDを作動させ、その放出光の実際の色を計測する。そして、デバイスが製造された際の標的CCTに基づいてではなく、デバイスが生成する光の実際の色にしたがってLEDを分類又はビニングする。一般に、白色LEDを分類するためには9個以上のビン(色空間の領域又はカラービン)が使用される。多くの場合、9個のビンのうち2個しか所期の用途には受け入れられないため、ビニングの欠点は、製造コストの増大及び低い収率であり、白色LED供給者及び顧客にとってサプライチェーンの難題を生じさせる。
【0010】
白色LEDは、潜在的には数十万時間にも及ぶその長い作動寿命及び低い電力消費の点での高い効率のおかげで、潜在的に白熱、蛍光及びネオン光源に取って代わると予想される。最近、従来の白色蛍光灯、水銀灯及びネオンライトに代えて高輝度白色LEDが使用されるようになった。他の光源と同様、白色LEDのCCTは一定であり、LEDを製造するために使用される蛍光体組成によって決まる。
【0011】
US7,014,336は、高質な白色光、すなわち、人の眼の明順応(スペクトル移動機能)内で実質的に連続的なスペクトルを有する白色光を生成するシステム及び方法を開示している。眼の明順応は、眼が見ることができる限界の測度を与えるため、これは、波長範囲400nm(紫外線)〜700nm(赤外線)を有する高質な白色光に対する境界を設定する。白色光を創出するための一つのシステムは300個のLEDを含み、各LEDが、狭いスペクトル幅及び400〜700nm波長範囲の所定部分に及ぶ最大スペクトルピークを有する。各LEDの強さを選択的に制御することにより、色温度(及び色)を制御することができる。さらなる照明器具は、波長範囲にわたって25nmごとに離間した25nmのスペクトル幅を有する9個のLEDを含む。これら9個のLEDの相対的強さを調節することにより、LEDのパワーを調節して一定範囲の色温度(及び色)を生成することができる。また、各LEDが、眼の明順応を満たす実質的に連続的なスペクトルを維持するための増大したスペクトル幅を有するならば、より少数のLEDを使用して白色光を生成することが提案されている。もう一つの照明器具は、一つ以上の白色LEDを使用し、光学ハイパスフィルタを設けて白色光の色温度を変化させることを含む。これは、一連の互換性フィルタを設けることにより、一つの照明器具が、様々なフィルタに関して一連の範囲を指定することにより、任意の温度の白色光を生成することを可能にする。このようなシステムは高質な白色光を生成することができるが、このような照明器具は、複数の別個のカラーLEDを製造する困難さ及びそれらを作動させるのに要する制御回路のせいで、多くの用途にとって費用がかかりすぎる。
【0012】
したがって、公知の光源の限界を解消する色可変光源、特に低廉な固体光源、たとえば波長変換性蛍光体物質を含み、放出光の色及び/又はCCTが少なくとも部分的に可変であるLEDの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、色が少なくとも部分的に可変である光放出デバイスを提供しようとする努力において生まれた。そのうえ、本発明は、少なくとも部分的に、蛍光体波長変換を含むLEDの色相変差の問題にも対応し、ビニングの必要性を減らす又はなくすことを試みる。本発明のさらなる目的は、多色LEDパッケージと比較して低廉な色可変光源を提供することである。
【0014】
本発明にしたがって、第一の波長範囲の光を生成するように動作可能である、LEDのような励起光源及び光の少なくとも一部を第二の波長範囲の光に変換するように動作可能である少なくとも一つの蛍光体物質を含む波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、波長変換コンポーネントが、空間的に変化する波長変換性を有し、光源によって生成される光の色が、第一の波長範囲の光が波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するような波長変換コンポーネントと励起光源との相対動によって可変であるデバイスが提供される。本発明の光放出デバイスの他ならぬ利点は、その色温度を製造後に正確に設定することができるため、費用のかかるビニングの必要性がなくなることである。色/色温度を設定する製造者又は設置者だけでなく、ユーザもまた、デバイスの寿命にわたって、又は「ムード」照明の場合にはより頻繁に、色/色温度を定期的に調節することができる。
【0015】
波長変換コンポーネントは、励起光源に対して移動可能であり、一次元的、二次元的又は回転方向に変化する波長変換性を有することができる。コンポーネントの波長変換性は、蛍光体物質の単位面積あたりの濃度(密度)における空間的変化によって変化するように構成されることができる。そのような変化は、少なくとも一つの蛍光体物質の厚さにおける空間的変化、たとえば実質的に線形に変化する厚さを含むことができる。一つの態様において、少なくとも一つの蛍光体は、透明な材料の単位体積あたり実質的に一定である濃度で透明な材料、たとえばアクリル又はシリコーン材料に組み込まれ、波長変換コンポーネントの厚さは空間的に変化する。一つのそのようなコンポーネントの例はくさび形であり、コンポーネントの長手に沿ってテーパ状である厚さを有する。代替態様において、波長変換コンポーネントは透明なキャリヤを含み、そのキャリヤの表面上に蛍光体物質が設けられる。好ましい実施態様において、蛍光体物質は、少なくとも一つの蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化するような、空間的に変化するパターン、たとえば異なるサイズ及び/又は間隔の点又は線のパターンとして設けられる。そのような態様において、蛍光体物質の厚さ及び濃度は実質的に一定であることができる。蛍光体物質は、蛍光体物質を選択的に小出しするためのディスペンサを使用してキャリヤに付着させることもできるし、スクリーン印刷法を使用して印刷することもできる。
【0016】
波長変換コンポーネントは、第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質をさらに含むことができ、デバイスによって放出される光は、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、第二の蛍光体物質の単位面積あたりの濃度は空間的に変化する。
【0017】
光放出デバイスは、第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質を含む第二の波長変換コンポーネントをさらに含むことができ、デバイスによって放出される光は、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、第二の波長変換コンポーネントは、空間的に変化する波長変換性を有し、光源によって生成される光の色は、第一の波長範囲の光が第一及び第二の波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するように、励起光源に対して第一及び第二の波長変換コンポーネントを動かすことによって可変である。好ましくは、第一及び第二の波長変換コンポーネントは、互いに及び励起光源に対して独立して移動可能である。そのような態様は、色空間の区域にわたる色変化を可能にする。
【0018】
第一の波長変換コンポーネントの場合と同様に、単位面積あたりの第二の蛍光体の濃度は、たとえば、蛍光体厚さにおける変化又は蛍光体物質のパターンにおける変化とともに空間的に変化することができる。
【0019】
本発明のさらなる実施態様にしたがって、第一の波長範囲の光を生成するように動作可能である複数の発光ダイオード及び励起放射線の少なくとも一部を第二の波長の光に変換するように動作可能である波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、波長変換コンポーネントが、少なくとも一つの蛍光体物質を含む、それぞれが発光ダイオードのそれぞれ一つと対応する複数の波長変換領域を含み、各領域が、空間的に変化する波長変換性を有し、デバイスによって生成される光の色が、各発光ダイオードからの第一の波長範囲の光がそのそれぞれの波長変換領域の異なる部分に入射するように発光ダイオードに対してコンポーネントを動かすことによって可変であるデバイスが提供される。
【0020】
一つの態様において、複数の発光ダイオードは線形アレイを含み、波長変換領域は対応する線形アレイを含み、光源は、発光ダイオードのアレイに対してコンポーネントを線形に移動させることによって可変である。あるいはまた、複数の発光ダイオードは二次元アレイを含み、波長変換領域は対応する二次元アレイを含み、光源は、発光ダイオードのアレイに対してコンポーネントを二元的に移動させることによって可変である。
【0021】
さらに別の態様において、複数の発光ダイオードは円形アレイを含み、波長変換領域は対応する円形アレイを含み、デバイスは、発光ダイオードのアレイに対してコンポーネントを回転方向に移動させることによって可変である。
【0022】
本発明がより良く理解されるよう、以下、添付図面を参照しながら本発明の実施態様を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の色可変光放出デバイスの作動原理の略図である。
【図2】図1のデバイスに関する色変化を示すCIE(国際照明委員会)1931色度図である。
【図3】(a)〜(f)は、本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。
【図4】図3の光源に関する色変化を示すCIE1931色度図である。
【図5】本発明の波長変換コンポーネントの略図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。
【図7】図6の光源に関する色変化を示すCIE1931色度図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の色温度可変白色光放出ライティングバーの図である。
【図9】波長変換コンポーネントが回転可能である本発明のさらなる実施態様の色温度可変白色光放出デバイスの略図である。
【図10】波長変換コンポーネントが二方向に移動可能である本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の実施態様は、空間的に変化する波長変換性(特性)を有し、一つの波長範囲(色)にある、励起光源、通常は発光ダイオード(LED)からの光を異なる波長範囲(色)の光に変換するために使用される波長変換コンポーネントに基づく。第一及び第二の波長範囲の組み合わせた光を含む、デバイスによって生成される光の色は、励起光源に対してコンポーネントを動かして第二の波長範囲の光の全割合を変更することによって制御する(変える)ことができる。
【0025】
図1(a)〜(c)を参照すると、本発明の色可変光放出デバイス10の作動原理の略図が示されている。デバイス10は、波長λ1の励起放射線(光)14を生成するように動作可能である励起光源12及び移動可能な波長変換コンポーネント16を含む。通常、励起光源12は、発光ダイオード(LED)、たとえば、波長400〜465nmの青色光を生成するように動作可能であるInGaN/GaN(インジウム窒化ガリウム/窒化ガリウム)ベースのLEDチップを含む。
【0026】
図示される例示的実施態様において、波長変換コンポーネント16は、テーパ形(くさび形)であり、所期移動方向18に沿ってtとTとの間で厚さがテーパ状である。波長変換コンポーネント16は、蛍光体(フォトルミネッセンス又は波長変換性)物質を組み込んだ透明な基材、たとえばアクリル又はシリコーン材料、たとえばGEのRTV615でできていることができる。公知であるように、蛍光体物質は、第一の波長の励起放射線(光)を吸収し、より長い波長λ2、たとえば緑色の光を再放出する。粉末形態にある蛍光体物質は、アクリル材料中に実質的に均一に分散し、光デバイス10の動作の所期の色範囲に依存して一般的範囲5〜50%の、アクリルに対する蛍光体の重量比配合率を有する。蛍光体物質はコンポーネント中に均一に分散している、すなわち、基材の単位体積あたりの蛍光体の濃度は実質的に一定であり、コンポーネントはその長手に沿って厚さが変化するため、単位面積あたりの蛍光体の量(1平方メートルあたりのグラム数、g/m2)は、コンポーネントの長手に沿って線形に変化する。換言するならば、波長変換コンポーネント16は、その長手に沿って変化する波長変換性(特性)を有する。
【0027】
図1に示すように、励起放射線(青色光)14の入射区域を波長変換コンポーネント16の小さな部分に限定するために遮光要素20が設けられている。好ましい実施態様において、LEDチップ12は、セラミックス又は金属のハウジング中にパッケージングされ、波長変換コンポーネントは、ハウジング開口に隣接して又はそれと滑動的に接触する状態で取り付けられる。そのような態様においては、ハウジング壁が遮光要素として機能する。デバイスの全効率を最適化するために、ハウジング壁20の内面は、好ましくは高反射性である。
【0028】
次に、図1(a)〜(c)及びデバイスの色変化を示すCIE(国際照明委員会)1931色度図である図2を参照することによってデバイス10の動作を説明する。図1(a)において、波長変換コンポーネントは、デバイス10によって生成される光22がLEDチップからの光14のみからなるような完全に引き込まれた位置で示されている。その結果、デバイスによって生成される光は、青色である波長λ1の光であり、図2の点24に対応する。
【0029】
図1(b)において、波長変換コンポーネント16は方向18に平行移動しており、今やLEDからの光14はコンポーネントの領域に入射するようになっている。コンポーネント内の蛍光体物質が励起放射線(光)14の一部を吸収し、青色付活緑色放出蛍光体物質が波長変換コンポーネント16に組み込まれているこの例においては緑色である波長λ2の光を再放出する。すると、デバイスによって生成される光22は、青色(λ1)光と緑色(λ2)光との組み合わせを含み、青緑色に見える。出力光中の緑色(λ2)光の割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の濃度(g/m2)に依存する。コンポーネント16の所与の場所及び所与の厚さに関して、そのような得られる光は、その場所における蛍光体単位面積配合率に依存する色を有する。この得られる色は、図2のCIE図の線28上の点に合致し、その正確な位置は、蛍光体の選択及び波長変換コンポーネント16中のそのような蛍光体の配合率に依存する。
【0030】
図1(c)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネントのもっとも厚い部分TがLEDチップの上方に位置している。コンポーネント内の蛍光体の濃度及び厚さTは、蛍光体が今やLEDからのすべての光を吸収し、緑色の光を再放出するように構成されている。したがって、デバイスによって生成される光22は今や、蛍光体によって生成される緑色(λ2)光のみからなり、これが、図2の色度図上で点26として示されている。デバイスによって放出される光の色は線28上の点24と点26との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0031】
本発明の光放出デバイスは、無機蛍光体物質、たとえば一般組成A3Si(OD)5又はA2Si(OD)4のシリケート系蛍光体を使用すると考えられる(式中、Siはケイ素であり、Oは酸素であり、Aは、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)又はカルシウム(Ca)を含み、Dは、塩素(Cl)、フッ素(F)、窒素(N)又は硫黄(S)を含む)。シリケート系蛍光体の例は、本発明者らの同時係属出願US2006/0145123、US2006/028122、US2006/261309及びUS2007029526に開示されている。これらの出願それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
US2006/0145123に教示されているように、ユーロピウム(Eu2+)付活シリケート系緑色蛍光体は、一般式(Sr,A1)x(Si,A2)(O,A3)2+x:Eu2+を有する(式中、A1は、2+カチオン、1+カチオンと3+カチオンとの組み合わせ、たとえばMg、Ca、Ba、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)又はセリウム(Ce)の少なくとも一つであり、A2は、3+、4+又は5+カチオン、たとえばホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、N又はリン(P)であり、A3は、1−、2−又は3−アニオン、たとえばF、Cl、臭素(Br)、N又はSである)。式は、A1カチオンがSrに取って代わり、A2カチオンがSiに取って代わり、A3アニオンがOに取って代わることを示すように書かれている。xの値は、2.5〜3.5の整数又は非整数である。
【0033】
US2006/028122は、式A2SiO4:Eu2+Dを有するシリケート系黄緑色蛍光体を開示している(式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn又はカドミウム(Cd)を含む二価の金属の少なくとも一つであり、Dは、F、Cl、Br、ヨウ素(I)、P、S及びNを含むドーパントである)。ドーパントDは、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在することができる。蛍光体は、(Sr1-x-yBaxMy)SiO4:Eu2+Fを含むことができる(式中、MはCa、Mg、Zn又はCdを含む)。
【0034】
US2006/261309は、結晶構造が(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである第一の相及び結晶構造が(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである第二の相を有する二相シリケート系蛍光体を教示している(式中、M1及びM2は、それぞれSr、Ba、Mg、Ca又はZnを含む)。少なくとも一つの相が二価のユーロピウム(Eu2+)で付活され、相の少なくとも一つは、F、Cl、Br、S又はNを含むドーパントDを含有する。ドーパント原子の少なくともいくつかがホストシリケート結晶の酸素原子格子部位に位置していると考えられる。
【0035】
US2007/029526は、式(Sr1-xMx)yEuzSiO5を有するシリケート系オレンジ色蛍光体を開示している(式中、Mは、Ba、Mg、Ca又はZnを含む二価の金属の少なくとも一つであり、0<x<0.5、2.6<y<3.3及び0.001<z<0.5である)。蛍光体は、約565nmよりも大きいピーク放出波長を有する可視光線を放出するように構成されている。
【0036】
蛍光体はまた、本発明者らの同時係属出願US2006/0158090及びUS2006/0027786で教示されているようなアルミネート系物質を含むこともできる。これらの出願それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
US2006/0158090は、式M1-xEuxAlyO[1+3y/2]のアルミネート系緑色蛍光体を教示している(式中、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Mn、Zn、Cu、Cd、Sm及びツリウム(Tm)を含む二価の金属の少なくとも一つであり、0.1<x<0.9及び0.5≦y≦12である)。
【0038】
US2006/0027786は、式(M1-xEux)2-zMgzAlyO[1+3y/2]を有するアルミネート系蛍光体を開示している(式中、Mは、二価の金属Ba又はSrの少なくとも一つである)。一つの組成において、蛍光体は、約280nm〜420nmの範囲の波長の放射線を吸収し、約420nm〜560nmの範囲の波長を有する可視光線を放出するように構成されており、0.05<x<0.5又は0.2<x<0.5、3≦y≦12及び0.8≦z≦1.2である。蛍光体はさらに、ハロゲンドーパントH、たとえばCl、Br又はIでドープされ、一般組成(M1-xEux)2-zMgzAlyO[1+3y/2]:Hを有することもできる。
【0039】
蛍光体は、本明細書に記載される例には限定されず、たとえば窒化物及びスルフェート蛍光体物質、オキシ窒化物及びオキシスルフェート蛍光体又はガーネット物質(YAG)をはじめとする任意の無機又は有機蛍光体物質を含むことができることが理解されよう。
【0040】
図3(a)〜(f)は、本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。本明細書を通して、同様なコンポーネントは、同様な参照番号を使用して指定される。図3の実施態様において、波長変換コンポーネント16は、赤色(R)光を放出する蛍光体物質及び緑色(G)光を放出する蛍光体物質をそれぞれ含む二つの重なり合ったテーパ状の部品16a及び16bを含む。図4は、図3のデバイスの色変化を示すCIE(国際照明委員会)1931色度図である。
【0041】
図3(a)において、波長変換コンポーネント16は、デバイス10によって生成される光22がLEDチップからの光のみからなるように完全に引き込まれた位置で示されている。その結果、デバイスによって生成される光は青色(B)であり、図4の点30に対応する。
【0042】
図3(b)において、波長変換コンポーネント16は方向18に平行移動しており、今やLEDからの光14はコンポーネントの赤色光生成部品16aに入射するようになっている。すると、コンポーネント内の赤色光放出蛍光体物質が励起放射線の一部を吸収し、赤色光を再放出する。その結果、デバイスによって生成される光22は、青色光と赤色光との組み合わせを含み、青色光と赤色光との相対的割合に依存して、温白(WW)色ないしインジゴ色に見える。出力光中の赤色光の割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の濃度に依存する。
【0043】
図3(c)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネント部品16aのもっとも厚い部分TがLEDチップの上方に位置している。部品16a内の蛍光体の濃度及び部品16aの厚さは、赤色光生成蛍光体が今やLEDからのすべての青色光を吸収し、赤色光を再放出するように選択されている。したがって、デバイスによって生成される光22は今や、蛍光体によって生成される赤色光のみからなり、これが、図4の色度図上で点34として示されている。デバイスによって放出される光の色は線32上の点30と点34との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0044】
図3(d)において、波長変換コンポーネント16は方向18にさらに平行移動し、今やLEDからの光14は赤色光生成部品16a及び緑色光生成部品16bの両方を含むコンポーネントの領域に入射するようになっている。図示するように、コンポーネントは、緑色光生成部品16bの厚さが赤色光生成部品16aの厚さよりも大きくなり、したがって、緑色光の割合が相応に大きくなるように配置されている。すると、コンポーネント部品16a及び16b内の赤色光放出蛍光体物質及び緑色光放出蛍光体物質は、励起放射線の実質すべてをそれらの間で吸収し、それぞれ赤色光及び緑色光を再放出する。その結果、デバイスによって生成される光22は、赤色光と緑色光との組み合わせを含み、黄緑色に見える。出力光中の赤色光と緑色光との相対的割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の相対密度に依存する。
【0045】
図3(e)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネント部品16bのもっとも厚い部分TがLEDチップの上方に位置している。この時点で、部品16aはもはや放出光に寄与しない。部品16b内の蛍光体の濃度及び部品16bの厚さは、緑色光生成蛍光体が今やLEDからのすべての光を吸収し、緑色光を再放出するように選択されている。したがって、デバイスによって生成される光22は今や、蛍光体によって生成される緑色光のみからなり、これが、図4の色度図上で点38として示されている。デバイスによって放出される光の色は線36上の点34と点38との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0046】
図3(f)において、波長変換コンポーネント16はさらに平行移動し、今やコンポーネント部品16bの比較的薄い部分がLEDチップの上方に位置している。すると、コンポーネント内の緑色光放出蛍光体が励起放射線の一部を吸収し、緑色光を再放出する。その結果、デバイスによって生成される光22は、青色光と緑色光との組み合わせを含み、青緑色に見える。出力光中の緑色光の割合は、LEDに対するコンポーネントの位置に依存する単位面積あたりの蛍光体の濃度に依存する。光源によって放出される光の色は線40上の点38と点30との間で可変であり、波長選択コンポーネントの位置に依存するということが理解されよう。
【0047】
波長変換コンポーネントは、単位面積あたりの蛍光体の濃度がコンポーネントの位置の関数として空間的に変化するようなテーパ状の厚さを有するものとして記載された。図5は、代替態様の波長変換コンポーネント16の略図である。この実施態様において、波長変換コンポーネントは、蛍光体物質のパターンを表面に有する基材の透明なキャリヤ42を含む。蛍光体パターンは、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法又は他の付着技術を使用して蛍光体物質を付着させることにより、キャリヤ上に設けることができる。図示される例において、蛍光体パターンは、蛍光体物質の円形のドット44のパターンを含む。ドット42の相対的サイズ及び/又は間隔は、単位面積あたりの蛍光体濃度がコンポーネントの所期移動方向18に沿って変化するように選択される。ドット42はまた、ハーフトーンシステムを使用して、異なるサイズの等間隔非重複区域(ドット)のアレイとして設けることもできる。図3の波長変換コンポーネントは、二つ以上の蛍光体物質のパターンによって製造することができる。そのうえ、単位面積あたりの蛍光体濃度がコンポーネントの表面上の位置とともに空間的に変化するならば、蛍光体物質のいかなるパターンをも使用することができることが理解されよう。たとえば、パターンは、異なる幅及び/又は間隔の線のパターンを含むことができる。代替的又は追加的に、パターンの様々な部分内の蛍光体物質の濃度(すなわち、結合材への蛍光体の配合率)を使用して、空間的に変化する蛍光体パターンを達成することができる。そのようなコンポーネントの利点は製造の容易さであり、実質的に均一な厚さであることが、コンポーネントを簡単なガイド構造内に移動可能に取り付けることを可能にする。
【0048】
図6(a)〜(d)は、独立して移動可能である二つの変換コンポーネント161及び162を含む本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイスの動作の略図である。この実施態様において、各波長変換コンポーネント161及び162は、図5の実施態様にしたがって製造され、それぞれ波長λ2(赤)及びλ3(緑)の光を生成する蛍光体物質のパターンを含む。蛍光体パターンは、図6には、コンポーネントを厚さ方向に通過する一連の線として示され、これらの線の間隔の変化が蛍光体物質の濃度の変化を表す。
【0049】
図6(a)において、両方の波長変換コンポーネント161及び162は、LEDからの光14、励起放射線が、各コンポーネントの、単位面積あたり非常に低濃度の蛍光体物質を含む、又は蛍光体物質を含まない末端部分に入射するような引き込まれた位置で示されている。その結果、デバイス10によって生成される光22は、LEDチップ12からの光14のみからなり、青色(波長λ1)である。これは、図7のCIE図の点46に対応する。
【0050】
図6(b)において、波長変換コンポーネント161は平行移動しており、今やLEDからの光14は、コンポーネント161の、最高濃度の蛍光体物質を含有する反対側末端部分に入射するようになっている。コンポーネント162の位置は変化しないままである。すると、コンポーネント161内の赤色光放出蛍光体物質が励起放射線のすべてを吸収し、赤色光(λ2)を再放出する。これは、図7の色度図の点48に対応する。デバイスによって放出される光の色は、コンポーネント162を維持しながらコンポーネント161を動かして、単位面積あたり異なる濃度の蛍光体を有するコンポーネントの中間部分に励起放射線が入射するようにすることにより、点46と点48とを接続する線に沿って可変であることができる。
【0051】
図6(b)の状況とは逆である図6(c)において、波長変換コンポーネント162は平行移動しており、LEDからの光14は、コンポーネントの、最高濃度の蛍光体物質を含有する末端部分に入射するようになっている。第一のコンポーネント161は引き込まれた位置にあり、LEDからの光は、このコンポーネントの、蛍光体物質を含有しない末端部分に入射する。両コンポーネントがこれらの位置にあると、コンポーネント162内の緑色光放出蛍光体物質が励起放射線のすべてを吸収し、緑色光(λ3)を再放出する。これは、図7の色度図の点50に対応する。デバイスによって放出される光の色は、コンポーネント162を動かして、単位面積あたり異なる濃度の蛍光体を有するコンポーネントの中間部分に励起放射線が入射するようにすることにより、点46と点50とを接続する線に沿って可変であることができる。
【0052】
図6(d)において、波長変換コンポーネント161及び162は、LEDからの光14が、コンポーネントの両端間のほぼ中間の、中間濃度の蛍光体物質を有する部分に入射するように配置されている。すると、コンポーネント161及び162内の赤色光放出蛍光体物質及び緑色光放出蛍光体物質は、励起放射線の実質的割合をそれらの間で吸収し、赤色光(λ2)と緑色光(λ3)との組み合わせを再放出する。これは、図7の色度図の点48と点50とを接続する線上の点に対応する。
【0053】
独立して制御可能な二つの異なる波長変換コンポーネントを使用する利点は、生成される光22の色が、図7の色度図のクロスハッチ模様領域52によって示されるような色空間内で可変であるということである。
【0054】
図8(a)〜(c)は、本発明の色温度可変白色光放出バー80を示す。ライティングバー80は、照明用途に使用するためのものであり、相関色温度(CCT)が可変であり、製造者及び/又はユーザによってCCT≒7000Kの冷白色(CW)とCCT≒3000Kの温白色(WW)との間で設定することができる白色光を生成することができる。図8(a)及び(b)はそれぞれライティングバー80の側面図及び平面図を示し、図8(c)は、ライティングバーが異なるCCTに変えられているさらなる平面図を示す。
【0055】
ライティングバー80は、バー84の長手に沿って線形アレイとして取り付けられた7個のLED82を含む。バー84は、各LEDへの電力及びLEDの熱管理を提供し、適当なヒートシンク(図示せず)に取り付けられることができる。各LED82は、四角のハウジング中にパッケージングされ、それぞれが冷白色(CW)光を生成するように動作可能であるような一つ以上の蛍光体物質を含むInGaN/GaN(インジウム窒化ガリウム/窒化ガリウム)ベースのLEDチップを含む。通常、蛍光体物質は、緑色のシリケート系蛍光体物質を含むことができる。各LEDの光放出の区域が円86によって示されている。
【0056】
ライティングバー80は、七つの波長変換領域90をその長手に沿って含む、アクリルのような透明な材料でできた透明なキャリヤバー88の形態の波長変換コンポーネントをさらに含む。波長変換領域90は、各領域90がLED82の各一つに対応する状態で、キャリヤの長手に沿う方向で変化する実質的に同一の波長変換特性を有する。各波長変換領域は、単位面積あたりの濃度がその長手に沿って実質的に線形に変化する黄色のシリケート系光放出蛍光体物質を含むことができる。上記の照明デバイスと同じく、濃度の変化は、蛍光体物質を透明な結合材に組み込み、図示するように各領域の厚さをその長手に沿って変化させることによって、又は、濃度が空間的に変化するパターンの形態で蛍光体物質を付着させることによって実現することができる。キャリヤバー88は、ガイド92の対によって、キャリヤ88の下面がLEDと滑動的に接触する状態で、バー84に移動可能に取り付けられている。サムレバー94がバー84に旋回可能に取り付けられ、レバー中のスロットが、キャリヤ88の上面から延びるスタッド96に結合されている。方向98へのレバーの動きがLEDに対するキャリヤの平行移動を生じさせる。バー88に対するキャリヤの位置を固定するためにロックスクリュー100が設けられている。
【0057】
操作に際して、製造者又は設置者が、ロックスクリュー100をゆるめ、ライティングバーが出力光に必要な色温度を生成するまでレバー94を操作することにより、ライティングバー80を選択された色温度に設定することができる。レバーの操作が、バー及びそれぞれのLEDに対するキャリヤ及び波長変換領域90の平行移動を生じさせるということが理解されよう(図8(c))。これが、波長変換領域によって生成される出力中の光(黄色)の割合を変化させ、ひいては、出力の色温度を変化させる。ひとたび選択された色温度が設定されたならば、ロックスクリューを締め付けてキャリヤを定位置に固定する。ライティングバーの他ならぬ利点は、その色温度を製造後に変えることができるため、費用のかかるビニングの必要性がなくなることである。色温度を設定する製造者又は設置者だけでなく、ユーザもまた、デバイスの寿命にわたってバーの色温度を定期的に調節することができる。
【0058】
より頻繁に色温度を調節することが求められる代替態様、たとえば「ムード」照明においては、モータ又はアクチュエータ、たとえば圧電又は磁気ひずみアクチュエータを使用してキャリヤを自動的に動かすことができる。LEDは、等間隔であるように示されているが、波長変換領域の間隔がLEDに対応するならば、不等間隔であることもできることが理解されよう。
【0059】
図9は、波長変換コンポーネントが回転可能である本発明のさらなる実施態様の色温度可変白色光放出デバイス120の略図である。白色光放出デバイス120は、CCTが冷白色(CW)と温白色(WW)との間で可変である白色光を生成することができる。この実施態様において、デバイスは、三つの同心円の周囲に配設された24個のLED122の円形アレイを含む。波長変換コンポーネントは、24の波長変換領域126の対応するアレイをその表面に有する回転可能な透明なディスク124を含む。各波長変換領域126は、所与の回転感覚における所与の角回転に関して実質的に同一な方法で変化する波長変換性を有する。その結果、回転軸により近い波長変換領域は、ディスク124の円周により近い位置にある波長変換領域よりも短い。図9において、波長変換コンポーネントは、各波長変換領域126の中央部分がその対応するLED122にかぶさる位置にあるように示されている。ディスク124を位置128と位置130との間で回転させることにより、デバイスによって放出される光の色温度をCWとWWとの間で変えることができるということが理解されよう。
【0060】
図10は、波長変換コンポーネントが二方向x、yに移動可能(平行移動可能)である本発明のさらなる実施態様の色可変光放出デバイス140の略図である。この実施態様においては、4個のLED142が四角形アレイの形態に配設され、波長変換コンポーネントは、軸x及びyに対応する二方向に移動可能である透明な四角形プレート144を含む。四つの四角形の波長変換領域146の対応する四角形のアレイが透明なプレート144上に設けられている。この例において、各波長変換領域146は、それぞれ線及び点によって示される二つの異なる蛍光体物質を含み、それらの蛍光体物質それぞれの単位面積あたりの濃度が波長変換領域上で変化する。各波長変換領域の波長変換性は、x及びyの方向で実質的に同一な方法で変化する。図10において、波長変換コンポーネントは、各波長変換領域146の中央部分がその対応するLED142にかぶさる位置にあるように示されている。デバイスによって生成される光の色は、方向x及びyへのプレートの平行移動によって変えることができる。プレート144の移動範囲は破線148によって示されている。
【0061】
本発明の光放出デバイスの他ならぬ利点は、ビニングの必要性をなくすことができるということである。さらなる利点は、多色LEDパッケージ及びそれに伴う複雑な制御システムと比較した場合のコスト削減である。
【0062】
さらに、本発明は、記載された特定の実施態様に限定されず、本発明の範囲内である変更を加えることができるということが理解されよう。たとえば、LEDの数及び配設及び/又は波長変換コンポーネントの構成を所与の用途に適合させることができる。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の波長範囲の光を生成するように動作可能である励起光源及び前記光の少なくとも一部を第二の波長範囲の光に変換するように動作可能である少なくとも一つの蛍光体物質を含む波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、前記第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、前記波長変換コンポーネントが、空間的に変化する波長変換性を有し、前記光源によって生成される光の色が、前記第一の波長範囲の光が前記波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するような前記波長変換コンポーネントと励起光源との相対動によって可変であるデバイス。
【請求項2】
前記少なくとも一つの蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化する、請求項2記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも一つの蛍光体物質の厚さが空間的に変化する、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記厚さが実質的に線形に変化する、請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも一つの蛍光体が、透明な材料の単位体積あたり実質的に一定である濃度で透明な材料に組み込まれ、前記波長変換コンポーネントの厚さが空間的に変化する、請求項3記載のデバイス。
【請求項6】
前記波長変換コンポーネントが透明なキャリヤを含み、前記キャリヤの表面上に前記少なくとも一つの蛍光体物質が設けられている、請求項2記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも一つの蛍光体が、空間的に変化するパターンとして設けられている、請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記波長変換コンポーネントが、前記第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質をさらに含み、前記デバイスによって放出される光が、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、前記第二の蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化する、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
前記波長変換コンポーネントが、前記励起光源に対して移動可能であり、一次元的、二次元的及び回転方向からなる群より選択されるやり方で変化する波長変換性を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
前記第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質を含む第二の波長変換コンポーネントをさらに含み、デバイスによって放出される光が、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、前記第二の波長変換コンポーネントが、空間的に変化する波長変換性を有し、前記光源によって生成される光の色が、前記第一の波長範囲の光が前記第一及び第二の波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するように前記励起光源に対して前記第一及び第二の波長変換コンポーネントを動かすことによって可変である、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記第一及び第二の波長変換コンポーネントが、互いに及び前記励起光源に対して独立して移動可能である、請求項10記載のデバイス。
【請求項12】
前記第二の蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化する、請求項10記載のデバイス。
【請求項13】
前記第二の蛍光体物質の厚さが空間的に変化する、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記厚さが実質的に線形に変化する、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
前記第二の蛍光体が、透明な材料の単位体積あたり実質的に一定である濃度で透明な材料に組み込まれ、前記波長変換コンポーネントの厚さが空間的に変化する、請求項10記載のデバイス。
【請求項16】
前記第二の波長変換コンポーネントが透明なキャリヤを含み、前記キャリヤの表面上に前記第二の蛍光体物質が設けられている、請求項10記載のデバイス。
【請求項17】
前記第二の蛍光体物質が、単位面積あたりのその濃度が空間的に変化するような空間的に変化するパターンとして設けられている、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
前記励起光源が発光ダイオードを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項19】
第一の波長の光を生成するように動作可能である複数の発光ダイオード及び励起放射線の少なくとも一部を第二の波長の光に変換するように動作可能である波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、前記第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、前記波長変換コンポーネントが複数の波長変換領域を含み、複数の波長変換領域が少なくとも一つの蛍光体物質を含み、それぞれの領域が前記発光ダイオードのそれぞれ一つと対応し、各領域が、空間的に変化する波長変換性を有し、デバイスによって生成される光の色が、各発光ダイオードからの第一の波長範囲の光がそのそれぞれの波長変換領域の異なる部分に入射するように前記発光ダイオードに対して前記コンポーネントを動かすことによって可変であるデバイス。
【請求項20】
前記複数の発光ダイオードが線形アレイを含み、前記波長変換領域が対応する線形アレイを含み、前記光源が、前記発光ダイオードのアレイに対して前記コンポーネントを線形に移動させることによって可変である、請求項19記載のデバイス。
【請求項21】
前記複数の発光ダイオードが二次元アレイを含み、前記波長変換領域が対応する二次元アレイを含み、前記光源が、前記発光ダイオードのアレイに対して前記コンポーネントを二元的に移動させることによって可変である、請求項19記載のデバイス。
【請求項22】
前記複数の発光ダイオードが円形アレイを含み、前記波長変換領域が対応する円形アレイを含み、デバイスが、前記発光ダイオードのアレイに対して前記コンポーネントを回転方向に移動させることによって可変である、請求項19記載のデバイス。
【請求項1】
第一の波長範囲の光を生成するように動作可能である励起光源及び前記光の少なくとも一部を第二の波長範囲の光に変換するように動作可能である少なくとも一つの蛍光体物質を含む波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、前記第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、前記波長変換コンポーネントが、空間的に変化する波長変換性を有し、前記光源によって生成される光の色が、前記第一の波長範囲の光が前記波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するような前記波長変換コンポーネントと励起光源との相対動によって可変であるデバイス。
【請求項2】
前記少なくとも一つの蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化する、請求項2記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも一つの蛍光体物質の厚さが空間的に変化する、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記厚さが実質的に線形に変化する、請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも一つの蛍光体が、透明な材料の単位体積あたり実質的に一定である濃度で透明な材料に組み込まれ、前記波長変換コンポーネントの厚さが空間的に変化する、請求項3記載のデバイス。
【請求項6】
前記波長変換コンポーネントが透明なキャリヤを含み、前記キャリヤの表面上に前記少なくとも一つの蛍光体物質が設けられている、請求項2記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも一つの蛍光体が、空間的に変化するパターンとして設けられている、請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記波長変換コンポーネントが、前記第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質をさらに含み、前記デバイスによって放出される光が、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、前記第二の蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化する、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
前記波長変換コンポーネントが、前記励起光源に対して移動可能であり、一次元的、二次元的及び回転方向からなる群より選択されるやり方で変化する波長変換性を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
前記第一の波長範囲の光の少なくとも一部を第三の波長範囲の光に変換するように動作可能である第二の蛍光体物質を含む第二の波長変換コンポーネントをさらに含み、デバイスによって放出される光が、第一、第二及び第三の波長範囲の合わせた光を含み、前記第二の波長変換コンポーネントが、空間的に変化する波長変換性を有し、前記光源によって生成される光の色が、前記第一の波長範囲の光が前記第一及び第二の波長変換コンポーネントの異なる部分に入射するように前記励起光源に対して前記第一及び第二の波長変換コンポーネントを動かすことによって可変である、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記第一及び第二の波長変換コンポーネントが、互いに及び前記励起光源に対して独立して移動可能である、請求項10記載のデバイス。
【請求項12】
前記第二の蛍光体物質の単位面積あたりの濃度が空間的に変化する、請求項10記載のデバイス。
【請求項13】
前記第二の蛍光体物質の厚さが空間的に変化する、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記厚さが実質的に線形に変化する、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
前記第二の蛍光体が、透明な材料の単位体積あたり実質的に一定である濃度で透明な材料に組み込まれ、前記波長変換コンポーネントの厚さが空間的に変化する、請求項10記載のデバイス。
【請求項16】
前記第二の波長変換コンポーネントが透明なキャリヤを含み、前記キャリヤの表面上に前記第二の蛍光体物質が設けられている、請求項10記載のデバイス。
【請求項17】
前記第二の蛍光体物質が、単位面積あたりのその濃度が空間的に変化するような空間的に変化するパターンとして設けられている、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
前記励起光源が発光ダイオードを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項19】
第一の波長の光を生成するように動作可能である複数の発光ダイオード及び励起放射線の少なくとも一部を第二の波長の光に変換するように動作可能である波長変換コンポーネントを含む色可変光放出デバイスであって、デバイスによって放出される光が、前記第一及び第二の波長範囲の合わせた光を含み、前記波長変換コンポーネントが複数の波長変換領域を含み、複数の波長変換領域が少なくとも一つの蛍光体物質を含み、それぞれの領域が前記発光ダイオードのそれぞれ一つと対応し、各領域が、空間的に変化する波長変換性を有し、デバイスによって生成される光の色が、各発光ダイオードからの第一の波長範囲の光がそのそれぞれの波長変換領域の異なる部分に入射するように前記発光ダイオードに対して前記コンポーネントを動かすことによって可変であるデバイス。
【請求項20】
前記複数の発光ダイオードが線形アレイを含み、前記波長変換領域が対応する線形アレイを含み、前記光源が、前記発光ダイオードのアレイに対して前記コンポーネントを線形に移動させることによって可変である、請求項19記載のデバイス。
【請求項21】
前記複数の発光ダイオードが二次元アレイを含み、前記波長変換領域が対応する二次元アレイを含み、前記光源が、前記発光ダイオードのアレイに対して前記コンポーネントを二元的に移動させることによって可変である、請求項19記載のデバイス。
【請求項22】
前記複数の発光ダイオードが円形アレイを含み、前記波長変換領域が対応する円形アレイを含み、デバイスが、前記発光ダイオードのアレイに対して前記コンポーネントを回転方向に移動させることによって可変である、請求項19記載のデバイス。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−541283(P2010−541283A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528045(P2010−528045)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/077977
【国際公開番号】WO2009/045922
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/077977
【国際公開番号】WO2009/045922
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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