説明

色素化合物およびそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料

【課題】本発明の目的は、所望の吸収波形を有し高感度なハロゲン化銀写真乳剤およびそれを用いた写真感光材料を提供することにある。
【解決手段】少なくとも一層のハロゲン化銀写真乳剤層を含有するハロゲン化銀写真感光材料において分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真乳剤であり、かつ少なくとも1つ以上の水素結合性基を有する少なくとも1種類以上の化合物により分光増感されたハロゲン化銀写真乳剤を少なくとも1層含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分光増感されたハロゲン化銀写真乳剤およびそれを用いた写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化のために多大な努力がなされてきた。ハロゲン化銀写真乳剤においては、ハロゲン化銀粒子表面に吸着した増感色素が感材に入射した光を吸収し、その光エネルギーをハロゲン化銀粒子に伝達することによって感光性が得られる。したがって、ハロゲン化銀の分光増感においては、ハロゲン化銀粒子単位粒子表面積あたりの光吸収率を増加させることによってハロゲン化銀へ伝達される光エネルギーを増大させることが出来、分光感度の高感度化が達成されると考えられる。ハロゲン化銀粒子表面の光吸収率を向上させるためには、単位粒子表面積あたりの分光増感色素の吸着量を増加させればよい。しかし、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着量には限界があり、単層飽和吸着(すなわち1層吸着)より多くの色素発色団を吸着させるのは困難である。従って、分光増感領域における個々のハロゲン化銀粒子の入射光量子の吸収率は未だ低いのが現状である。
【0003】これらの点を解決する方法として提案されたものを以下に述べる。ピー・ビー・ギルマン・ジュニアー(P.B.Gilman,Jr.)らは、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジンニアリング(Photographic Science and Engineering)第20巻3号、第97頁(1976年)において、1層目にカチオン色素を吸着させ、さらに2層目にアニオン色素を静電力を用いて吸着させた。ジー・ビー・バード(G.B.Bird)らは米国特許3,622,316号において、複数の色素をハロゲン化銀に多層吸着させ、フェルスター(Forster)型励起エネルギー移動の寄与によって増感させた。
【0004】杉本らは、特開昭63−138,341号、及び同64−84,244号において、発光性色素からのエネルギー移動による分光増感を行った。アール・スタイガー(R.Steiger)らは、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジンニアリング(Photographic Science and Engineering)第27巻2号、第59頁(1983年)において、ゼラチン置換シアニン色素からの、エネルギー移動による分光増感を試みた。池川らは、特開昭61−251842号において、シクロデキストリン置換色素からのエネルギー移動による分光増感を行った。
【0005】2つの別々に共役しておらず、共有結合で連結された発色団をもつ、いわゆる連結色素については、例えば米国特許2,393,351号、同2,425,772号、同2,518,732号、同2,521,944号、同2,592,196号、欧州特許565,083号などに記載されている。しかし、これらは光吸収率向上を狙ったものではなかった。積極的に光吸収率向上を狙ったものとして、ジー・ビー・バード(G.B.Bird)、エー・エル・ボロアー(A.L.Borror)らは米国特許3,622,317号及び同3,976,493号において、複数のシアニン発色団を有する連結型増感色素分子を吸着させて光吸収率を増やし、エネルギー移動の寄与によって増感を図った。鵜飼、岡崎、杉本は特開昭64−91134号において、少なくとも2個のスルホ基及び/又はカルボキシル基を含む実質的に非吸着性のシアニン、メロシアニン、およびヘミシアニン色素のうち少なくとも1つを、ハロゲン化銀に吸着されうる分光増感色素に結合させることを提案した。
【0006】また、エル・シー・ビシュワカルマ(L.C.Vishwakarma)は特開平6−57235号において、2つの色素の脱水縮合反応によって、連結色素を合成する方法を示した。さらに、特開平6−27578号において、モノメチンシアニンとペンタメチンオキソノールの連結色素が赤感性を有することを示したが、この場合オキソノールの発光とシアニンの吸収の重なりがなく、色素間でのフェルスター型の励起エネルギー移動による分光増感はおこらず、連結されたオキソノールの集光作用による高感度化は望めない。
【0007】また、アール・エル・パートン(R.L.Parton)らは、欧州特許第887,700A1号において特定の連結基を持つ連結色素について提案した。
【0008】また、エム・アール・ロバーツ(M.R.Roberts)らは、米国特許4,950,587号において、シアニン色素ポリマーによる分光増感を提案した。
【0009】このように、現在まで光吸収率向上のために数多くの検討が行われてきたが、いずれも光吸収率の向上効果が十分ではなく、高感度化も十分なものではなかった。
【0010】また、特にカラー感材においては、分光感度を目的の波長範囲に収めることが必要である。通常ハロゲン化銀感材の分光増感においては、増感色素の単量体状態の吸収を用いるのではなく、ハロゲン化銀粒子表面に吸着した際に形成されるJバンドを利用している。Jバンドは単量体状態よりも長波長側にシフトした鋭い吸収を持つので、所望の波長範囲に光吸収および分光感度を収めるのに非常に有用である。したがって、たとえ増感色素を粒子表面に多層吸着させて光吸収率を増加させることが出来たとしても、ハロゲン化銀粒子に直接吸着しない二層目以降の色素が単量体状態で吸着した場合には非常に幅の広い吸収をもたらすことになり、実際の感材の分光感度としては不適当である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光吸収強度の高い、かつ所望の吸収波形を有するハロゲン化銀写真乳剤およびそれを用いた写真感光材料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】(1)少なくとも一層のハロゲン化銀写真乳剤層を含有するハロゲン化銀写真感光材料において分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真乳剤であり、かつ少なくとも1つ以上の水素結合性基を有する少なくとも1種類以上の化合物により分光増感されたハロゲン化銀写真乳剤を少なくとも1層含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
(2)水素結合性基がカルボン酸であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(3)(1)記載の化合物がシアニン色素であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(4)下記一般式(I)で表される化合物を含有するハロゲン化銀乳剤層を有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(I)
【0013】
【化2】


【0014】一般式(I)中、L1、L2、L3、L4、L5及びL6はそれぞれメチン基を表す。R1及びR2は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表す。R3は少なくとも1つ以上のカルボキシ基を有するアルキル基、アリール基または複素環基を表す。Z1及びZ2はそれぞれ5または6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、さらに縮環されていてもよい。p1及びp2はそれぞれ0または1を表す。Mは電荷均衡対イオンを表し、mは分子の電荷を中和するのに必要な0以上10以下の数を表す。
(5)(4)記載の一般式(I)で表される化合物のうち、Z1及びZ2が各々ベンゾオキサゾール核であることを特徴とする(4)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(6)(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料がネガ型撮影用カラー感光材料であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(7)(1)記載の化合物が上記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(8)上記一般式(I)で表される化合物。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。水素結合とは、電気的に陰性な原子(例えば、O,N,F,Cl)と、同じように電気的に陰性な原子に共有結合した水素原子間に存在する。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Jounal of American ChemicalSociety、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、AngewanteChemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。水素結合性基として、好ましくはカルボン酸である。
【0016】以下に一般式(I)であらわされる化合物について詳細に説明する。一般式(I)中、Z1及びZ2はそれぞれ5または6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、さらに縮環されていてもよい。Z1及びZ2で表される5または6員の含窒素複素環としては芳香族環が縮環していても良く、チアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核、イミダゾ[4,5−b]キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることが出来る。
【0017】Z1及びZ2として好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ベンゾイミダゾール核、及びキノリン核であり、更に好ましくは、ベンゾオキサゾール核である。
【0018】Z1及びZ2で表される5または6員の含窒素複素環は置換基を有していても良く、そのような置換基をVとすると、Vで示される置換基としては特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数1から10、好ましくは炭素数2から8、更に好ましくは炭素数2から5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、モルホリノカロボニル)、炭素数0から10、好ましくは炭素数2から8、更に好ましくは炭素数2から5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ピペリジノスルフォニル)、ニトロ基、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシ、ナフトキシ)、
【0019】炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、エタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ、エタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ)、アミノ基、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から12、更に好ましくは炭素数1から8の置換アミノ基(例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数3から10、更に好ましくは炭素数3から6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム)、炭素数0から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から6のイミド基(例えばスクシンイミド基)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から12、更に好ましくは炭素数1から8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、2−ピリジルチオ、ナフチルチオ)、炭素数2から20、好ましくは炭素数2から12、更に好ましくは炭素数2から8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ベンジルオキシカルボニル)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数1から18、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5の無置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1から18、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、またここでは炭素数2から18、好ましくは炭素数3から10、更に好ましくは炭素数3から5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする}、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、更に好ましくは炭素数6から10の置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から10、更に好ましくは炭素数4から6の置換又は無置換のヘテロ環基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)が挙げられる。また、ベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造もとることができる。さらに、これらの置換基上にさらに此処までに説明したVの説明で示した置換基が置換していても良い。置換基として好ましいものは上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ベンゼン環縮合であり、更に好ましくはメチル基、フェニル基、メトキシ基塩素原子、臭素原子、沃素原子、及びベンゼン環縮合である。
【0020】R1及びR2はそれぞれアルキル基、アリール基または複素環基を表し、さらに置換されていてもよい。R1及びR2として具体的には、例えば、炭素原子1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシル)、炭素原子1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の置換アルキル基{例えば置換基として前述のVが置換したアルキル基が挙げられる。好ましくはアラルキル基(例えばベンジル、2−フェニルエチル)、不飽和炭化水素基(例えばアリル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル)、カルボキシアルキル基(例えば、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、カルボキシメチル)、アルコキシアルキル基(例えば、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル)、アリーロキシアルキル基(例えば2−フェノキシエチル、2−(1−ナフトキシ)エチル)、アルコキシカルボニルアルキル基(例えばエトキシカルボニルメチル、2−ベンジルオキシカルボニルエチル)、アリーロキシカルボニルアルキル基(例えば3−フェノキシカルボニルプロピル)、アシルオキシアルキル基(例えば2−アセチルオキシエチル)、アシルアルキル基(例えば2−アセチルエチル)、カルバモイルアルキル基(例えば2−モルホリノカルボニルエチル)、スルファモイルアルキル基(例えばN,N−ジメチルカルバモイルメチル)、スルホアルキル基(例えば、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、3−スルホブチル、4−スルホブチル、2−[3−スルホプロポキシ]エチル、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル、3−スルホプロポキシエトキシエチル)、スルホアルケニル基、スルファトアルキル基(例えば、2−スルファトエチル基、3−スルファトプロピル、4−スルファトブチル)、複素環置換アルキル基(例えば2−(ピロリジン−2−オン−1−イル)エチル、テトラヒドロフルフリル)、アルキルスルホニルカルバモイルメチル基(例えばメタンスルホニルカルバモイルメチル基)}、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から10、さらに好ましくは炭素数6から8の無置換アリール基(例えばフェニル基、1−ナフチル基)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から10、さらに好ましくは炭素数6から8の置換アリール基(例えば置換基の例として挙げた前述のVが置換したアリール基が挙げられる。具体的にはp−メトキシフェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。)、炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10、さらに好ましくは炭素数4から8の無置換複素環基(例えば2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピラゾリル、3−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、2−イミダゾリル、2−オキサゾリル、2−チアゾリル、2−ピリダジル、2−ピリミジル、3−ピラジル、2−(1,3,5-トリアゾリル)、3−(1,2,4-トリアゾリル)、5−テトラゾリル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10、さらに好ましくは炭素数4から8の置換複素環基(例えば置換基の例として挙げた前述のVが置換した複素環基が挙げられる。具体的には5−メチル−2−チエニル基、4−メトキシ−2−ピリジル基などが挙げられる。)が挙げられる。R1及びR2で表されるアルキル基としては例えば、炭素数1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシル)、炭素数1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の置換アルキル基が挙げられ、置換基としては前述の置換基Vなどの説明で記載したものなどが挙げられる。置換基として好ましくは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、スルファト基、ホスホノ基、アルキルスルフォニルカルバモイル基(例えば、メタンスルフォニルカルバモイル基)、アシルカルバモイル基(例えば、アセチルカルバモイル基)、アシルスルファモイル基(例えば、アセチルスルファモイル基)、アルキルスルフォニルスルファモイル基(例えば、メタンスルフォニルスルファモイル基)、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基が挙げられる。更に好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基である。R1及びR2として好ましくは無置換のアルキル基(メチル、エチル、プロピル)、アリールオキシアルキル基(フェノキシエチル、ナフトキシエチル、4−クロロフェノキシエチル、4−メトキシフェノキシエチル)、アルコキシアルキル基(ベンジルオキシエチル基)、フェネチル基、スルホアルキル基(3−スルホ−3−フェニルプロピル基、3−スルホプロピル、スルホエチル、スルホブチル、3−スルホブチル)、o−スルホベンジル基であり、特に好ましくはアリールオキシアルキル基である。
【0021】R3は少なくとも1つ以上のカルボキシ基を有するアルキル基、アリール基または複素環基である。R3として具体的には、例えば、炭素原子1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4のカルボキシアルキル基(例えば、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、カルボキシメチル)、炭素原子6から38、好ましくは6から20、特に好ましくは6から10のカルボキシアリール基(例えば、2−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、4−カルボキシフェニル、2,3−ジカルボキシフェニル、2,4−ジカルボキシフェニル、2,5−ジカルボキシフェニル、2,3,4−トリカルボキシフェニル、1−2−カルボキフェフチル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10、さらに好ましくは炭素数4から8のカルボキシ複素環基(例えば、2−5−カルボキシピリジル)が挙げられる。好ましくは、2−カルボキシエチル、2−カルボキシフェニル、2,4−ジカルボキシフェニルである。
【0022】L1、L2、L3、L4、L5及びL6はそれぞれメチン基を表す。L1〜L6で表されるメチン基は置換基を有していても良く、置換基としては例えば置換又は無置換の炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、特に好ましくは炭素数1から5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、2−カルボキシエチル)、置換または無置換の炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、更に好ましくは炭素数6から10のアリール基(例えばフェニル、o−カルボキシフェニル)、置換または無置換の炭素数3から20、好ましくは炭素数4から15、更に好ましくは炭素数6から10の複素環基(例えばN,N−ジメチルバルビツール酸基)、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数2から10、更に好ましくは炭素数4から10のアミノ基(例えばメチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ、N−メチルピペラジノ)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ)などが挙げられる。また他のメチン基と環を形成してもよく、もしくは助色団環を形成することもできる。
【0023】p1及びp2は0または1を表す。好ましくは0である。
【0024】Mは分子のイオン電荷を中性にするために必要であるとき、陽イオンまたは陰イオンの存在を示すために式中に含まれている。典型的な陽イオンとしては、水素イオン(H+ )、アルカリ金属イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機イオン、アンモニウムイオン(例えばアンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン)などの有機イオンが挙げられる。陰イオンは無機陰イオン又は有機陰イオンのいずれであっても良くハロゲン陰イオン(例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらにイオン性ポリマー又は分子と逆電荷を有する分子を用いても良い。
【0025】mは電荷を均衡させるのに必要な数を表し、分子内で塩を形成する場合に0である。
【0026】以下に本発明の一般式(I)の具体例を示すが、これにより本発明が制限されるわけではない。
一般式(I)の具体例
【0027】
【化3】


【0028】
【化4】


【0029】
【化5】


【0030】
【化6】


【0031】
【化7】


【0032】
【化8】


【0033】本発明の一般式(I)で表される化合物は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレイテイド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds - Cyanine Dyes and RelatedCompounds)」、ジョン・ウイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compouds - Special Topicsin Heterocyclic Chemistry)」、第18章、第14節、482から515頁、ジョン・ウイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compouds)」第2版、ボリュームIV、パートB、第15章、369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社−ニューヨーク、1977年刊などに記載の方法を参考にして合成することが出来る。
【0034】次に本発明のハロゲン化銀写真乳剤及びハロゲン化銀写真感光材料について詳しく説明する。本発明において光吸収強度とは、単位粒子表面積あたりの増感色素による光吸収面積強度であり、粒子の単位表面積に入射する光量をI0 、該表面で増感色素に吸収された光量をIとしたときの光学濃度Log(I0 /(I0 −I))を波数(cm-1)に対して積分した値と定義する。積分範囲は5000cm-1から35000cm-1までである。
【0035】本発明にかかわるハロゲン化銀写真乳剤は、分光吸収極大波長が500nm以上の場合には光吸収強度が100以上、分光吸収極大波長が500nm未満の粒子の場合には光吸収強度が60以上のハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子投影面積の1/2以上含むことが好ましい。また、分光吸収極大波長が500nm以上の場合には、光吸収強度は好ましくは150以上、さらに好ましくは170以上、特に好ましくは200以上、であり、分光吸収極大波長が500nm未満の場合には、光吸収強度は好ましくは90以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは120以上である。上限は特にないが、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、特に好ましくは500以下である。また分光吸収極大波長が500nm未満の粒子に関しては、分光吸収極大波長は350nm以上であることが好ましい。
【0036】光吸収強度を測定する方法の一例としては、顕微分光光度計を用いる方法を挙げることができる。顕微分光光度計は微小面積の吸収スペクトルが測定できる装置であり、一粒子の透過スペクトルの測定が可能である。顕微分光法による一粒子の吸収スペクトルの測定については、山下らの報告(日本写真学会、1996年度年次大会講演要旨集、15ページ)を参照することができる。この吸収スペクトルから一粒子あたりの吸収強度が求められるが、粒子を透過する光は上部面と下部面の二面で吸収されるため、粒子表面の単位面積あたりの吸収強度は前述の方法で得られた一粒子あたりの吸収強度の1/2として求めることができる。このとき、吸収スペクトルを積分する区間は光吸収強度の定義上は5000cm-1から35000cm-1であるが、実験上は増感色素による吸収のある区間の前後500cm-1程度を含む区間の積分で構わない。また顕微分光法を用いないでも、粒子が重なず、かつ、すきまがないように並べて、透過スペクトルを測定して求める方法も可能である。さらに光吸収強度は増感色素の振動子強度と単位面積当たりの吸着分子数で一義的に決定される値であり、増感色素の振動子強度、色素吸着量および粒子表面積を求めれば光吸収強度に換算することが出来る。増感色素の振動子強度は、増感色素溶液の吸収面積強度(光学濃度×cm-1)に比例する値として実験的に求めることが出来るので、1Mあたりの色素の吸収面積強度をA(光学濃度×cm-1)、増感色素の吸着量をB(mol/molAg)、粒子表面積をC(m2 /molAg)とすれば、次の式により光吸収強度を誤差10%程度の範囲で求めることが出来る。
0.156×A×B/Cこの式から光吸収強度を算出しても、前述の定義に基づいて測定された光吸収強度(Log(I0 /(I0 −I)))を波数(cm-1)に対して積分した値)と実質的に同じ値が得られる。
【0037】本発明の色素は分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を実現することが好ましい。
【0038】また、ハロゲン化銀粒子への色素発色団の吸着は、トータルで好ましくは1.5層以上、さらに好ましくは1.7層以上、特に好ましくは2層以上である。なお、上限は特にないが、10層以下が好ましく、さらに好ましくは5層以下である。
【0039】本発明においてハロゲン化銀粒子表面に発色団が一層より多く吸着した状態とは、該乳剤に添加される増感色素のうち、ハロゲン化銀粒子表面の色素占有面積が最も小さい色素によって到達する単位表面積あたりの飽和吸着量を一層飽和被覆量とし、この一層飽和被覆量に対して色素発色団の単位面積当たりの吸着量が多い状態をいう。また、吸着層数は一層飽和被覆量を基準とした時の吸着量を意味する。ここで、共有結合で色素発色団が連結された色素の場合には、連結しない状態の個々の色素の色素占有面積を基準とすることが出来る。色素占有面積は、遊離色素濃度と吸着色素量の関係を示す吸着等温線、および粒子表面積から求めることが出来る。吸着等温線は、例えばエー・ハーツ(A.Herz)らのアドソープション フロム アクエアス ソリューション(Adsorption from Aqueous Solution)アドバンシーズ イン ケミストリー シリーズ(Advances in Chemistry Series)No.17、173ページ(1968年)などを参考にして求めることが出来る。
【0040】増感色素の乳剤粒子への吸着量は、色素を吸着させた乳剤を遠心分離器にかけて乳剤粒子と上澄みのゼラチン水溶液に分離し、上澄み液の分光吸収測定から未吸着色素濃度を求めて添加色素量から差し引くことで吸着色素量を求める方法と、沈殿した乳剤粒子を乾燥し、一定重量の沈殿をチオ硫酸ナトリウム水溶液とメタノールの1:1混合液に溶解し、分光吸収測定することで吸着色素量を求める方法の2つの方法を用いることが出来る。複数種の増感色素を用いている場合には高速液体クロマトグラフィーなどの手法で個々の色素について吸着量を求めることも出来る。上澄み液中の色素量を定量することで色素吸着量を求める方法は、例えばダブリュー・ウエスト(W.West)らのジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)第56巻、1054ページ(1952年)などを参考にすることができる。しかし、色素添加量の多い条件では未吸着色素までも沈降することがあり、上澄み中の色素濃度を定量する方法では必ずしも正しい吸着量を得られないことがあった。一方沈降したハロゲン化銀粒子を溶解して色素吸着量を測定する方法であれば乳剤粒子の方が圧倒的に沈降速度が速いため粒子と沈降した色素は容易に分離でき、粒子に吸着した色素量だけを正確に測定できる。この方法が色素吸着量を求める方法として最も信頼性が高い。ハロゲン化銀粒子表面積の測定方法の一例としては、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して、個々の粒子の形状とサイズを求め算出する方法がある。この場合、平板状粒子において厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出する。透過型電子顕微鏡写真の撮影方法としては、例えば、日本電子顕微鏡学会関東支部編「電子顕微鏡試料技術集」誠分堂新光社1970年刊、バターワーズ社(Buttwrworths)、ロンドン、1965刊、ピー・ビー・ヒルシュ(P.B.Hirsch)らのエレクトロン マイクロスコープ オブチンクリスタル(Electron Microscopy of Thin Crystals)を参考にすることができる。他の方法としては、例えばエイ・エム・クラギン(A.M.Kragin)らのらのジャーナル オブ フォトグラフィック サイエンス(The Journal of Photographic Science)第14巻、185ページ(1966年)、ジェイ・エフ・パディ(J.F.Paddy)のトランスアクションズ オブ ザ ファラデー ソサイアティ(Transactions of the Faraday Society)第60巻1325ページ(1964年)、エス・ボヤー(S.Boyer)らのジュナル デ シミフィジク エ デ フィジコシミ ビジョロジク(Journal de Chimie Physique et de Physicochimie biologique)第63巻、1123ページ(1963年)、ダブリュー・ウエスト(W.West)らのジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)第56巻、1054ページ(1952年)、エイチ・ソーヴエニアー(H.Sauvenier)編集、イー・クライン(E.Klein)らのインターナショナル・コロキウム(International Coloquium)、リエージュ(Liege)、1959年、「サイエンティフィック フォトグラフィー(Scientific Photography)」などを参考にすることができる。色素占有面積は上記の方法で個々の場合について実験的に求められるが、通常用いられる増感色素の分子占有面積はほぼ80A2付近であるので、簡易的にすべての色素について色素占有面積を80A2としておおよその吸着層数を見積もることも出来る。
【0041】本発明において、ハロゲン化銀粒子に色素発色団が多層に吸着している場合、ハロゲン化銀粒子に直接吸着している、いわゆる1層目の色素発色団と2層目以上の色素発色団の還元電位、及び酸化電位はいかなるものでも良いが、1層目の色素発色団の還元電位が2層目以上の色素発色団の還元電位の値から0.2vを引いた値よりも、貴であることが好ましい。
【0042】還元電位、及び酸化電位の測定は、種々の方法が可能であるが、好ましくは、位相弁別式第二高調波交流ポーラログラフィーで行う場合であり、正確な値を求めることができる。なお、以上の位相弁別式第二高調波交流ポーラログラフィーによる電位の測定法はジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(Journal of Imaging Science)、第30巻、第27頁(1986年)に記載されている。
【0043】さらに、1層目の色素発色団のハロゲン化銀写真感光材料中における吸収極大波長が2層目以上の色素発色団の吸収極大波長よりも長波長であることが好ましい。さらに、2層目以上の色素発色団の発光が1層目の色素発色団の吸収と重なることが好ましい。また、1層目の色素発色団はJ-会合体を形成した方が好ましい。さらに、所望の波長範囲に吸収および分光感度を有するためには、2層目以上の色素発色団もJ会合体を形成していることが好ましい。本発明の(I)で表される化合物は2層目色素として用いても何ら添加方法、などの乳剤処方の工夫によらずしてJ会合を形成することが出来る。
【0044】本発明において用いる用語の意味を以下に記述する。
色素占有面積:色素一分子あたりの占有面積。吸着等温線から実験的に求めることが出来る。共有結合で色素発色団が連結された色素の場合には、連結しない状態の個々の色素の色素占有面積を基準とする。簡易的には80A2
一層飽和被覆量:一層飽和被覆時の単位粒子表面積あたりの色素吸着量。添加された色素のうち最小の色素占有面積の逆数。
多層吸着:単位粒子表面積あたりの色素発色団の吸着量が一層飽和被覆量よりも多い状態。
吸着層数:一層飽和被覆量を基準とした時の単位粒子表面積あたりの色素発色団の吸着量。
【0045】光吸収強度100以上のハロゲン化銀写真乳剤粒子を含有する乳剤の増感色素による分光吸収率の最大値Amax、および分光感度の最大値Smaxのそれぞれ50%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は、好ましくは100nm以下である。またAmaxおよびSmaxの80%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は0以上であればよい。その間隔の最大値はいくらでもよいが、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下である。またAmaxおよびSmaxの20%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は、好ましくは180nm以下、さらに好ましくは150nm以下、特に好ましくは120nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
【0046】上記の好ましい方法により、分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を実現することができるが、二層目以上の色素は通常は単量体状態で吸着するため、所望の吸収幅および分光感度幅よりも広くなることがほとんどである。したがって所望の波長域で高い感度を実現するためには、二層目以上に吸着する色素にJ会合体を形成させることが好ましい。本発明において、二層目以上の色素とは、ハロゲン化銀粒子には吸着しているが、ハロゲン化銀に直接は吸着していない色素のことである。本発明において2層目以上の色素のJ会合体とは、二層目以上に吸着した色素の示す吸収の長波長側の吸収幅が、色素発色団間の相互作用のない単量体状態の色素溶液が示す吸収の長波長側の吸収幅の2倍以下であると定義する。ここで長波長側の吸収幅とは、吸収極大波長と、吸収極大波長より長波長で吸収極大の1/2の吸収を示す波長とのエネルギー幅を表す。一般にJ会合体を形成すると単量体状態と比較して長波長側の吸収幅は小さくなることが知られている。単量体状態で二層目に吸着した場合には、吸着位置および状態の不均一性があるため色素溶液の単量体状態の長波長側の吸収幅の2倍以上に大きくなる。したがって、上記定義により二層目以上の色素のJ会合体を定義することが出来る。
【0047】二層目以上に吸着した色素の分光吸収は、該乳剤の全体の分光吸収から一層目色素による分光吸収を引いて求めることが出来る。一層目色素による分光吸収は、一層目色素のみを添加したときの吸収スペクトルを測定すれば求められる。また、増感色素が多層吸着した乳剤に色素脱着剤を添加して二層目以上の色素を脱着させることで、一層目色素による分光吸収スペクトルを測定することも出来る。色素脱着剤を用いて粒子表面から色素を脱着させる実験では、通常一層目色素は二層目以上の色素が脱着した後に脱着されるので、適切な脱着条件を選べば、一層目色素による分光吸収を求めることが出来る。これにより、二層目以上の色素の分光吸収を求めることが可能となる。色素脱着剤を用いる方法は、浅沼らの報告(ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー B(Journal of Physical Chemistry B)第101巻2149頁から2153頁(1997年))を参考にすることが出来る。
【0048】本発明では一般式(I)で表される色素以外を添加しても構わないが、一般式(I)で表される色素は、好ましくは全色素添加量の50%以上である。
【0049】一般式(I)の色素を2層目色素として使用する場合は、3環以上縮環した構造の塩基性核がより好ましい。3環式縮環型複素環として好ましくはナフト[2,3-d]オキサゾール、ナフト[1,2-d]オキサゾール、ナフト[2,1-d]オキサゾール、ナフト[2,3-d]チアゾール、ナフト[1,2-d] チアゾール、ナフト[2,1-d] チアゾール、ナフト[2,3-d]イミダゾール、ナフト[1,2-d] イミダゾール、ナフト[2,1-d] イミダゾール、ナフト[2,3-d]セレナゾール、ナフト[1,2-d] セレナゾール、ナフト[2,1-d] セレナゾール、インドロ[5,6-d]オキサゾール、インドロ[6,5-d]オキサゾール、インドロ[2,3-d]オキサゾール、インドロ[5,6-d]チアゾール、インドロ[6,5-d]チアゾール、インドロ[2,3-d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5-d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6-d]チアゾール、ベンゾフロ[6,5-d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6-d]オキサゾール、ベンゾチエノ[6,5-d]オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3-d]オキサゾール等が挙げられる。また、4環式縮環型複素環として好ましくは、アントラ[2,3-d]オキサゾール、アントラ[1,2-d]オキサゾール、アントラ[2,1-d]オキサゾール、アントラ[2,3-d]チアゾール、アントラ[1,2-d] チアゾール、フェナントロ[2,1-d] チアゾール、フェナントロ[2,3-d]イミダゾール、アントラ[1,2-d] イミダゾール、アントラ[2,1-d] イミダゾール、アントラ[2,3-d]セレナゾール、フェナントロ[1,2-d] セレナゾール、フェナントロ[2,1-d] セレナゾール、カルバゾロ[2,3-d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d]チアゾール、カルバゾロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7-d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[7,6-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d]チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d]チアゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7-d]チアゾール等が挙げられる。3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、ナフト[2,3-d]オキサゾール、ナフト[1,2-d]オキサゾール、ナフト[2,1-d]オキサゾール、ナフト[2,3-d]チアゾール、ナフト[1,2-d] チアゾール、ナフト[2,1-d] チアゾール、インドロ[5,6-d]オキサゾール、インドロ[6,5-d]オキサゾール、インドロ[2,3-d]オキサゾール、インドロ[5,6-d]チアゾール、インドロ[2,3-d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5-d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6-d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6-d]オキサゾール、アントラ[2,3-d]オキサゾール、アントラ[1,2-d]オキサゾール、アントラ[2,3-d]チアゾール、アントラ[1,2-d] チアゾール、カルバゾロ[2,3-d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d]チアゾール、カルバゾロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d]オキサゾール、が挙げられ、特に好ましくは、ナフト[2,3-d]オキサゾール、ナフト[1,2-d]オキサゾール、ナフト[2,3-d]チアゾール、インドロ[5,6-d]オキサゾール、インドロ[6,5-d]オキサゾール、インドロ[5,6-d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6-d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d]チアゾール、カルバゾロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d]オキサゾールである。
【0050】一般式(I)の色素を2層目色素として使用する場合、1層目色素はいかなる構造であってもよいが、好ましくは、特開平10−239789号、同8−269009号、同10−123650号、特願平7−75349号に記載の芳香族基を少なくとも一つ以上有する色素構造である。以下に、一般式(I)の色素を2層目色素として使用する場合の1層目色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
【化9】


【0052】
【化10】


【0053】次に、本発明のハロゲン化銀感光材料について説明する。本発明の一般式(I)で表されるメチン化合物は単独又は他の増感色素と組み合わせてハロゲン化銀感光材料に用いることが出来る。
【0054】本発明のメチン化合物をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製の如何なる工程中であっても良い。米国特許2,735,766号、同3,628,960号、同4,183,756号、同4,225,66号、特開昭58−184142号、同60−196749号等に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/及び脱塩前の時期、脱塩工程中及び/又は脱塩後から化学熟成開始前の時期、特開昭58−113920号等に開示されているように、化学熟成の直前又は工程中の時期、化学熟成後、塗布までの時期の乳剤が塗布される前なら如何なる時期、工程において添加されても良い。また、米国特許4,225,666号、特開昭58−7629号等に開示されているように同一化合物を単独で又は異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、粒子形成工程中と化学増感工程中または化学増感終了後に分けたり、化学熟成の前又は工程中と完了後に分けるなどして分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類をかえて添加されても良い。
【0055】本発明の好ましい添加方法はいかなる方法であってもよいが、好ましくは、アルカリ性溶液に本発明のメチン化合物の水素結合性基が解離させて溶解させた溶液を添加した後に、ハロゲン化銀乳剤のpHを中性付近にまで調製する方法である。
【0056】本発明のメチン化合物の添加量としては、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズにより異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり、1×10-6〜8×10-2モルで用いることが出来る。例えばハロゲン化銀粒子のサイズが0.2〜1.3μmの場合には、ハロゲン化銀1モルあたり、2×10-6〜3.5×10-2モルの添加量が好ましく、7.5×10-6〜1.0×10-2モルの添加量がより好ましい。
【0057】本発明の一般式(I)で表される化合物は直接乳剤中に分散することが出来る。また、これらはまず、適当な溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、メチルセロソルブ、アセトン水、ピリジン、DMF、フッ素アルコールあるいはこれらの混合溶媒中に溶解され、溶液の形で乳剤中へ添加することも出来る。この際、塩基や酸、界面活性剤などの添加物を共存させることも出来る。また溶解に超音波を使用することも出来る。また、本発明の一般式(I)で表される化合物の添加方法としては米国特許第3,469,987号などに記載のごとき、該化合物を揮発性の有機溶媒に溶解し、該溶液を親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中に添加する方法、特公昭46−24185号などに記載のごとき、水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤中に添加する方法、米国特許3,822,135号に記載のごとき、界面活性剤に本発明の化合物を溶解し、該溶液を乳剤に添加する方法、特開昭51−74624号に記載のごとき、レッドシフツさせる化合物を用いて溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭50−80826号に記載のごとき、メチン化合物を実質的に水を含まない酸に溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法が用いられる。その他、乳剤中への添加には米国特許第2,912,343号、同3,342,605号、同2,996,287号、同3,429,835号などに記載の方法も用いることが出来る。
【0058】また、本発明の化合物は、鮮鋭度、色分解能向上などの目的のための種々のフィルター染料、イラジエーション防止染料、又はアンチハレーション用染料等として用いることが出来る。この化合物は慣用の方法でハロゲン化銀写真感光材料層、フィルター層、及び/又はハレーション防止層などの塗布液に含有させることが出来る。染料の使用量は写真層を着色させるのに十分な量で良く、当業者は容易にこの量を使用目的に応じて適宜選定できる。一般には光学濃度が0.05乃至、3.0の範囲になるように使用するのが好ましい。添加時期は塗布される前の如何なる工程でも良い。また、染料イオンと反対の電荷を持つポリマーを媒染剤として層に共存させ、これを染料分子との相互作用によって、染料を特性層中に局在化させることも出来る。ポリマー媒染剤としては例えば、米国特許2,548,564号、同4,124,386号、同3,625,694号、同3,958,995号、同4,168,976号、同3,445,231号に記載されているものなどを挙げることが出来る。
【0059】本発明における分光増感において有用な強色増感剤は、例えば米国特許3,511,664号、同3,615,613号、同3,615,632号、同3,615,641号、同4,596,767号、同4,945,038号、同4,965,182号等に記載のピリミジルアミノ化合物、トリアジニルアミノ化合物、アゾリウム化合物などであり、その使用法に関しても上記に特許に記載されている方法が好ましい。
【0060】本発明において感光機構をつかさどる写真乳剤にはハロゲン化銀として臭化銀、ヨウ臭化銀、塩臭化銀、ヨウ化銀、ヨウ塩化銀、ヨウ臭塩化銀、塩化銀のいずれを用いてもよいが、乳剤最外表面のハロゲン組成が0.1mol%以上、さらに好ましくは1mol%以上、特に好ましくは5mol%以上のヨードを含むことによりより強固な多層吸着構造が構築できる。粒子サイズ分布は、広くても狭くてもいずれでもよいが、狭い方がよりこのましい。写真乳剤のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体、斜方十二面体のような規則的(regular)な結晶体を有するもの、また球状、板状などのような変則的(irregular)な結晶形をもつもの、高次の面((hkl)面)をもつもの、あるいはこれらの結晶形の粒子の混合からなってもよいが、好ましくは平板状粒子であり、平板状粒子については下記に詳細に記述する。高次の面を持つ粒子についてはJournal of Imaging Science誌、第30巻(1986年)の247頁から254頁を参照することができる。また、本発明に用いられるハロゲン化銀写真乳剤は、上記のハロゲン化銀粒子を単独または複数混合して含有していても良い。ハロゲン化銀粒子は、内部と表層が異なる相をもっていても、接合構造を有するような多相構造であっても、粒子表面に局在相を有するものであっても、あるいは粒子全体が均一な相から成っていても良い。またそれらが混在していてもよい。これら各種の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型のいずれでもよい。
【0061】本発明に使用するハロゲン化銀乳剤は、本発明に開示する増感色素を吸着せしめた、より表面積/体積比の高い平板状ハロゲン化銀粒子が好ましく、アスペクト比は2以上100以下、好ましくは5以上80以下、より好ましくは8以上80以下であり、平板状粒子の厚さは、0.2μm未満が好ましく、より好ましくは0.1μm未満、更に好ましくは0.07μm未満である。この様な高アスペクト比で且つ薄い平板粒子を調製する為に下記の技術が適用される。
【0062】本発明では、ハロゲン組成が塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ塩化銀の平板ハロゲン化銀粒子が好ましく使用される。平板粒子は、(100)又は(111)かの主表面を持つものが好ましい。(111)主表面を有する平板粒子、以下これを(111)平板と呼ぶ、は普通三角形か六角形の面をもつ。一般的には分布がより均一になれば、より六角形の面を持つ平板粒子の比率が高くなる。六角形の単分散平板に関しては特公平5−61205号に記載されている。
【0063】(100)面を主表面に持つ平板状粒子、以下(100)平板と呼ぶ、は長方形または正方形の形も持つ。この乳剤においては針状粒子より、隣接辺比が5:1未満の粒子が平板粒子と呼ばれる。塩化銀或いは塩化銀を多く含む平板粒子ににおいては、(100)平板粒子は本来(111)平板に比べて主表面の安定性が高い。(111)平板の場合は、(111)主表面を安定化させる事が必要であるが、それに関しては特開平9−80660号、特開平9−80656号、米国特許第5298388号に記載されている。
【0064】本発明において用いられる塩化銀或いは塩化銀の含有率の高い(111)平板に関しては下記の特許に開示されている。米国特許第4414306号、米国特許第4400463号、米国特許第4713323号、米国特許第4783398号、米国特許第4962491号、米国特許第4983508号、米国特許第4804621号、米国特許第5389509号、米国特許第5217858号、米国特許第5460934号。
【0065】本発明に用いられる高臭化銀(111)平板粒子に関しては下記の特許に記載されている。米国特許第4425425号、米国特許第4425426号、米国特許第443426号、米国特許第4439520号、米国特許第4414310号、米国特許第4433048号、米国特許第4647528号、米国特許第4665012号、米国特許第4672027号、米国特許第4678745号、米国特許第4684607号、米国特許第4593964号、米国特許第4722886号、米国特許第4722886号、米国特許第4755617号、米国特許第4755456号、米国特許第4806461号、米国特許第4801522号、米国特許第4835322号、米国特許第4839268号、米国特許第4914014号、米国特許第4962015号、米国特許第4977074号、米国特許第4985350号、米国特許第5061609号、米国特許第5061616号、米国特許第5068173号、米国特許第5132203号、米国特許第5272048号、米国特許第5334469号、米国特許第5334495号、米国特許第5358840号、米国特許第5372927号。
【0066】本発明に用いられる(100)平板に関しては、下記の特許に記載されている。米国特許第4386156号、米国特許第5275930号、米国特許第5292632号、米国特許第5314798号、米国特許第5320938号、米国特許第5319635号、米国特許第5356764号、欧州特許第569971号、欧州特許第737887号、特開平6−308648号、特開平9−5911号。
【0067】ハロゲン化銀乳剤は、一般に化学増感を行なって使用する。化学増感としてはカルコゲン増感(硫黄増感、セレン増感、テルル増感)、貴金属増感(例、金増感)および還元増感を、それぞれ単独あるいは組み合わせて実施する。本発明においては、少なくともセレン増感されたハロゲン化銀乳剤が好ましい。即ちセレン増感単独、セレン増感及び他のカルコゲン増感及び/又は貴金属増感(特に金増感)との組合せが好ましいが、とくに好ましくはセレン増感及び貴金属増感との組合せである。
【0068】セレン増感においては、不安定セレン化合物を増感剤として用いる。不安定セレン化合物については、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109240号、同4−271341号および同5−40324号各公報に記載がある。セレン増感剤の例には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオロメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例、セレノアセトアミド、N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類およびジアシルセレニド類が含まれる。なお、亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類やセレニド類のような比較的安定なセレン化合物(特公昭46−4553号および同52−34492号各公報記載)も、セレン増感剤として利用できる。
【0069】硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を増感剤として用いる。不安定硫黄化合物については、P.Glafkides 著 Chemie et Physique Photographique (Paul Montel 社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌307巻307105号に記載がある。硫黄増感剤の例には、チオ硫酸塩(例、ハイポ)、チオ尿素類(例、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N′−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例、チオアセトアミド)、ローダニン類(例、ジエチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチル−ローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキ類(例、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソーオキサゾリジン−2−チオン類、ジポリスルフィド類(例、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、ヘキサチオカン−チオン)、メルカプト化合物(例、システィン)、ポリチオン酸塩および元素状硫黄が含まれる。活性ゼラチンも硫黄増感剤として利用できる。
【0070】テルル増感においては、不安定テルル化合物を増感剤として用いる。不安定テルル化合物については、カナダ国特許800958号、英国特許1295462号、同1396696号各明細書、特開平4−204640号、同4−271341号、同4−333043号および同5−303157号各公報に記載がある。テルル増感剤の例には、テルロ尿素類(例、テトラメチルテルロ尿素、N,N′−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N′−ジフェニルエチレンテルロ尿素)、フォスフィンテルリド類(例、ブチル−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルボモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、イソテルロシアナート類、テルロアミド類、テルロヒドラジド類、テルロエステル類(例、ブチルヘキシルテルロエステル)、テルロケトン類(例、テルロアセトフェノン)、コロイド状テルル、(ジ)テルリド類およびその他のテルル化合物(例、ポタシウムテルリド、テルロペンタチオネートナトリウム塩)が含まれる。
【0071】貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウムなどの貴金属の塩を増感剤として用いる。貴金属塩については、P.Glafkides 著 Chemie et Physique Photographique (Paul Montel 社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌307巻307105号に記載がある。金増感が特に好ましい。前述したように、本発明は金増感を行なう態様において特に効果がある。青酸カリウム(KCN)を含む溶液で乳剤粒子上の増感核から金を除去できることは、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)Vol 19322(1975)やジャーナル・イメージング・サイエンス(Journal of Imaging Science)Vol 3228(1988)で述べられている。これらの記載によれば、シアンイオンがハロゲン化銀粒子に吸着した金原子または金イオンをシアン錯体として遊離させ、結果として金増感を阻害する。本発明に従い、シアンの発生を抑制すれば、金増感の作用を充分に得ることができる。
【0072】金増感剤の例には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金および金セレナイドが含まれる。また、米国特許2642361号、同5049484号および同5049485号各明細書に記載の金化合物も用いることができる。還元増感においては、還元性化合物を増感剤として用いる。還元性化合物については、P.Glafkides 著 Chemie et Physique Photographique(Paul Montel 社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌307巻307105号に記載がある。還元増感剤の例には、アミノイミノメタンスルフィン酸(二酸化チオ尿素)、ボラン化合物(例、ジメチルアミンボラン)、ヒドラジン化合物(例、ヒドラジン、p−トリルヒドラジン)、ポリアミン化合物(例、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、塩化第1スズ、シラン化合物、レダクトン類(例、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、アルデヒド化合物および水素ガスが含まれる。また、高pHや銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気によって、還元増感を実施することもできる。還元増感は、ハロゲン化銀粒子の形成時に施すのが好ましい。
【0073】増感剤の使用量は、一般に使用するハロゲン化銀粒子の種類と化学増感の条件により決定する。カルコゲン増感剤の使用量は、一般にハロゲン化銀1モル当り10<SUP>-8</SUP>〜10<SUP>-2</SUP>モルであり、10<SUP>-7</SUP>〜5×10<SUP>-3</SUP>モルであることが好ましい。貴金属増感剤の使用量は、ハロゲン化銀1モル当り10<SUP>-7</SUP>〜10<SUP>-2</SUP>モルであることが好ましい。化学増感の条件に特に制限はない。pAgは一般に6〜11であり、好ましくは7〜10である。pHは4〜10であることが好ましい。温度は40〜95°Cであることが好ましく、45〜85°Cであることがさらに好ましい。
【0074】本発明に用いられる写真乳剤の調製法等については特開平10−239789号の第63欄36行〜第65欄2行等が適用できる。また、カラ−カプラ−等の添加剤、写真感光材料への添加剤等、本発明が適用さる感光材料の種類、感光材料の処理等については特開平10−239789号の第65欄3行〜第73欄13行等が適用できる。
【0075】
【実施例】次に本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1化合物(I−9)の合成
【0076】
【化11】


【0077】化合物(I−9−a)3.0gと化合物(1−9−b)1.0gをピリジン5ml中で150℃にて1時間攪拌下反応させた。反応液を冷却後、酢酸エチルエステルを添加し、粗結晶をろ別した。得られた粗結晶をメタノールとトリエチルアミンの溶液に溶解させごみ取りろ過を行なった後、酢酸を添加して目的化合物を晶析させ、化合物(I−9)0.62gを得た。
λmax(MeOH)=517nm,吸光係数=1.31×105
【0078】実施例2臭化銀平板乳剤の調製。
1.2リットルの水に臭化カリウム6.4gと平均分子量が1万5千以下の低分子量ゼラチン6.2gを溶解させ30℃に保ちながら16.4%の硝酸銀水溶液8.1mlと23.5%の臭化カリウム水溶液7.2mlを10秒にわたってダブルジェット法で添加した。次に11.7%のゼラチン水溶液をさらに添加して75℃に昇温し40分間熟成させた後、32.2%の硝酸銀水溶液370mlと20%の臭化カリウム水溶液を、銀電位を−20mVに保ちながら10分間にわたって添加し、1分間物理熟成後温度を35℃に下げた。このようにして平均投影面積径2.32μm、厚み0.09μm、直径の変動係数15.1%の単分散純臭化銀平板乳剤(比重1.15)を得た。この後凝集沈殿法により可溶性塩類を除去した。再び温度を40℃に保ち、ゼラチン45.6g、1mol/リットルの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を10ml、水167ml、さらに35%フェノキシエタノールを1.66ml添加し、pAgを8.3、pHを6.20に調整した。この乳剤を、最適感度となるようにチオシアン酸カリウム、塩化金酸およびチオ硫酸ナトリウムを添加し55℃で50分間熟成した。色素占有面積を80A<SUP>2 </SUP>としたときのこの乳剤の一層飽和被覆量は1.42×10<SUP>-3</SUP>mol/molAgであった。
【0079】上記のようにして得られた乳剤を50℃に保ちながら表1に示した第一色素を添加して30分間攪拌した後、第二色素を連続して添加し、さらに50℃で30分間攪拌した。
【0080】
【表1】


【0081】
【化12】


【0082】色素吸着量は、得られた液体乳剤を10,000rpmで10分間遠心沈降させ、沈殿を凍結乾燥した後、沈殿0.05gを25%チオ硫酸ナトリウム水溶液25mlとメタノールを加えて50mlにした。この溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、色素濃度を定量して求めた。
【0083】単位面積当たりの光吸収強度の測定は、得られた乳剤をスライドガラス上に薄く塗布し、カールツアイス株式会社製の顕微分光光度計MSP65を用いて以下の方法でそれぞれの粒子の透過スペクトルおよび反射スペクトルを測定して、吸収スペクトルを求めた。透過スペクトルのリファレンスは粒子の存在しない部分を、反射スペクトルは反射率の分かっているシリコンカーバイドを測定してリファレンスとした。測定部は直径1μmの円形アパチャー部であり、粒子の輪郭にアパーチャー部が重ならないように位置を調整して14000cm<SUP>-1</SUP>(714nm)から28000cm<SUP>-1</SUP>(357nm)までの波数領域で透過スペクトル及び反射スペクトルを測定し、1−T(透過率)−R(反射率)を吸収率Aとして吸収スペクトルを求めた。ハロゲン化銀の吸収を差し引いて吸収率A’とし、−Log(1−A’)を波数(cm<SUP>-1</SUP>)に対して積分した値を1/2にして単位表面積あたりの光吸収強度とした。積分範囲は14000cm<SUP>-1</SUP>から28000cm<SUP></SUP><SUP>-1</SUP>までである。この際、光源はタングステンランプを用い、光源電圧は8Vとした。光照射による色素の損傷を最小限にするため、一次側のモノクロメータを使用し、波長間隔は2nm、スリット幅を2.5nmに設定した。乳剤の吸収スペクトルは、色素を添加しない乳剤を参照としたときの完成乳剤の無限拡散反射率をクベルカムンク式で変換して、色素のみの吸収スペクトルを得た。また塗布フィルムの分光感度は、露光波長域内で各波長の光子数が同一になるように調整した分光露光機を用いて露光し、かぶり+0.2の濃度を示す露光量より求めた。
【0084】また得られた乳剤にゼラチン硬膜剤、及び塗布助剤を添加し、塗布銀量が3.0g−Ag/m<SUP>2 </SUP>になるように、セルロースアセテートフィルム支持体上に、ゼラチン保護層とともに同時塗布した。得られたフィルムをタングステン電球(色温度2854K)に対して連続ウエッジ色フィルターを通して1秒間露光した。色フィルターとして色素側を励起するマイナス青露光用の富士ゼラチンフィルターSC−50(富士フイルム(株)製)を用いて500nm以下の光を遮断し、試料に照射した。露光した試料は、下記の表面現像液MAA−1を用いて20℃で10分間現像した。
【0085】表面現像液MAA−1メトール 2.5gL−アスコルビン酸 10gナボックス(富士フイルム(株)) 35g臭化カリウム 1g水を加えて 1リットルpH 9.8現像したフィルムは富士自動濃度計で光学濃度を測定し、感度は被り+0.2の光学濃度を与えるのに要した光量の逆数で第一色素のみを添加した比較例1の感度を100としたときの値である。結果を表2に示す。
【0086】
【表2】


【0087】表2で示されるように、本発明によって増感色素を粒子表面上にJ会合させて多層吸着させることができ、狭い波長範囲で光吸収強度を増加させることが可能となった。さらに写真感度も向上し、残色も改良されることがわかった。
【0088】実施例3特開平8-29904号の実施例5の乳剤Dと同様に平板状よう臭化銀乳剤を調製して、乳剤3Aとした。多層カラー感光材料は特開平8-29904号の実施例5の試料101に従い同様に作製した。特開平8-29904号の実施例5の試料101における第9層乳剤を乳剤3Aに置き換え、ExS−4、5、6の代わりに色素1を3.2×10-3mol/Agmol 添加した試料(比較)を301、もしくは本発明の化合物I−9を3.2×10-3mol/Agmol 添加した試料(本発明)を302とした。こうして得た試料を特開平8-29904号の実施例1と同じ露光、処理工程及び処理液を用いて発色現像処理をして濃度測定を行った。感度はかぶり濃度+0.2の濃度を与える露光量の逆数で表し、試料301を100とした。その結果、試料302の感度は188であり、感度向上が見られた。同様に本発明の化合物を、カラーペーパー用感光材料、X−レイ用感光材料、反転多層構成カラー感光材料、拡散転写カラー方式重層構成感光材料、熱現像カラー感光材料など、種々のハロゲン化銀写真感光材料に適用しても、実施例2と同様の効果がみられた。
【0089】
【発明の効果】本発明の写真乳剤及び感光材料を用いることで、所望の吸収波形をもつ高感度で残色の改良されたハロゲン化銀感光材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一層のハロゲン化銀写真乳剤層を含有するハロゲン化銀写真感光材料において分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真乳剤であり、かつ少なくとも1つ以上の水素結合性基を有する少なくとも1種類以上の化合物により分光増感されたハロゲン化銀写真乳剤を少なくとも1層含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項2】 水素結合性基がカルボン酸であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項3】 該化合物がシアニン色素であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項4】 下記一般式(I)で表される化合物を含有するハロゲン化銀乳剤層を有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(I)
【化1】


一般式(I)中、L1、L2、L3、L4、L5及びL6はそれぞれメチン基を表す。R1及びR2は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表す。R3は少なくとも1つ以上のカルボキシ基を有するアルキル基、アリール基または複素環基を表す。Z1及びZ2はそれぞれ5または6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、さらに縮環されていてもよい。p1及びp2はそれぞれ0または1を表す。Mは電荷均衡対イオンを表し、mは分子の電荷を中和するのに必要な0以上10以下の数を表す。
【請求項5】 該一般式(I)で表される化合物のうち、Z1及びZ2が各々ベンゾオキサゾール核であることを特徴とする請求項4記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項6】 ハロゲン化銀写真感光材料がネガ型撮影用カラー感光材料であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項7】 該化合物が上記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項8】 上記一般式(I)で表される化合物。

【公開番号】特開2001−166413(P2001−166413A)
【公開日】平成13年6月22日(2001.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−347781
【出願日】平成11年12月7日(1999.12.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】