説明

色素増感太陽電池用電解質組成物とその用途

【課題】大気圧における沸点が200℃以上であるニトリル化合物を溶媒とすることで、耐久性に優れた色素増感太陽電池用電解質組成物及び色素増感太陽電池を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるニトリル化合物


(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、アラルキル基、アリール基を示す)、又は/及び、下記式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物


(Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アラルキル基、アリール基を示す)と酸化還元対を含む色素増感太陽電池用電解質組成物、及びそれを用いた色素増感太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色素増感太陽電池用電解質組成物の溶媒として用いられるニトリル化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー問題に対する関心が高まり、クリーンエネルギー開発の観点から太陽光を効率よく電気に変換することができる太陽電池の研究が盛んになっており、多結晶シリコンやアモルファスシリコンを利用したシリコン系の太陽電池が普及し始めている。
【0003】
しかし、シリコン系太陽電池は、製造コストが高く、また、高純度シリコンを安価且つ大量に供給することが困難であるために、広く普及するには限界があるといわれている。
【0004】
一方、これらのシリコン系の太陽電池以外では、光電変換層の電解質に有機化合物を用いた太陽電池がある。その中で1991年にグレッツェルらから報告された色素増感太陽電池(例えば非特許文献1)は、ルテニウム錯体等を増感色素に用いて分光増感した酸化チタンあるいは酸化亜鉛多孔質薄膜を光電極とする湿式太陽電池である。この太陽電池は、アモルファスシリコン太陽電池と同等以上の性能を持つにもかかわらず、安価な酸化チタン等の酸化物半導体を用いることができること、真空プロセスが必要ないため、その生産に際して大型の設備等も必要ないことなど、製造コストを大幅に削減できる可能性がある。
【0005】
この色素増感太陽電池は、陽極と、陰極と、電解質とを備えている。電解質部には陽極と陰極間で電子の授受を行うために、例えばヨウ素化合物及びヨウ素からなるレドックス系(酸化還元対)が必要である。
【0006】
色素増感太陽電池は通常電解質に液体を用いるため、レドックス系(酸化還元対)を溶解させるための溶媒として、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルなどのニトリル系溶媒やプロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒が使用されている。しかしながら、アセトニトリル等のニトリル系溶媒は、沸点が低いため、長期的に厳重な封止を施すことが難しく、電解液の液漏れや溶媒の蒸発が生じる。溶媒の揮発により電解液が減量すると、電極間の導電性が確保されずに光電変換特性が低下する恐れがある。このため、屋外等で使用する際に、十分な寿命を確保することが困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nature(353,p.737−740,1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような問題を鑑み、従来のニトリル系溶媒等とは異なり、大気圧における沸点が200℃以上であるニトリル化合物を色素増感太陽電池用電解質組成物の溶媒として用いることで、耐久性に優れた色素増感太陽電池用電解質組成物及び色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記式(1)で表されるニトリル化合物
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)、又は/及び、
下記式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物
【化2】

(式中、Rは上記と同じであり、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)
と酸化還元対を含む色素増感太陽電池用電解質組成物、及びそれを用いた色素増感太陽電池を提供する
【0010】
項1. 下記式(1)で表されるニトリル化合物
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)、又は/及び、
下記式(2)で表されるニトリル化合物
【化4】

(式中、Rは上記と同じであり、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)
と酸化還元対を含む色素増感太陽電池用電解質組成物。
項2. 酸化還元対がヨウ素及びヨウ化合物の対である項1に記載の色素増感太陽電池用電解質組成物。
項3. 項1または2に記載の電解質組成物を用いることを特徴とする色素増感太陽電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明で得られる大気圧における沸点が200℃以上のニトリル化合物を色素増感太陽電池用電解質組成物の溶媒として用いることにより、得られる色素増感太陽電池用電解質組成物及び色素増感太陽電池は、良好な光電変換効率を保持し、耐久性にも優れる。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明のニトリル化合物について詳細に説明する。
本発明の色素増感太陽電池用電解質組成物の溶媒に用いるニトリル化合物は、下記式(1)で表されるニトリル化合物
【化5】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)、又は/及び、下記式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物
【化6】

(式中、Rは上記と同じであり、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)である。
【0014】
1) 式(1)で表されるニトリル化合物の合成
本発明の下記式(1)で表されるニトリル化合物
【化7】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)は、大気圧における沸点が200℃以上である。式(1)中のRは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。上記ニトリル化合物は、公知の方法で製造することができる。
例えば、アクリロニトリルを有機溶媒中、適当な塩基存在下で、下記式(3)で表されるシアノ酢酸エステル
【化8】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す。)
と反応させることで製造することができる。
【0015】
本反応に用いるシアノ酢酸エステルは、下記式(3)で表されるシアノ酢酸エステル
【化9】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す。)を例示することができる。式(3)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0016】
式(3)で表されるシアノ酢酸エステルとして、具体的には、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸n−ブチル、シアノ酢酸t−ブチルを例示することができる。中でも安価で入手容易である点で、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルがより好ましい。
【0017】
反応に用いるアクリロニトリルの使用量は、式(3)で表されるシアノ酢酸エステルに対して、0.5〜5当量の範囲を範囲であり、0.5〜2当量の範囲が好ましい。
【0018】
反応に用いる塩基としては、特に制限は無いが、例えば水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属水素化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等を例示することができる。中でも、水素化ナトリウム、アルカリ金属アルコキシド、炭酸カリウムが好ましく、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウムがより好ましい。
【0019】
反応に用いる塩基の使用量は、式(3)で表されるシアノ酢酸エステルに対して、0.01〜1当量の範囲であり、0.05〜0.5当量の範囲が好ましい。
【0020】
反応に用いる溶媒としては、通常反応に用いることのできるものであれば特に制限無く用いられるが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒および水等を例示できる。中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましく、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非プロトン性極性溶媒がより好ましい。反応温度は通常−20℃〜130℃であり、室温〜100℃が好ましく、室温〜80℃がより好ましい。
【0021】
反応終了後、反応液を無機酸水溶液等による分液操作を行うことにより、簡便に目的とする式(1)で表されるニトリル化合物を有機層へ分離できる。すなわち、反応液を無機酸水溶液で洗浄、分液処理を行ったのち、通常用いられる溶媒留去により得られるニトリル化合物を通常の精製法を用いて、例えば、蒸留により、容易に高純度の式(1)で表されるニトリル化合物を製造することができる。上記合成方法によって得られた式(1)ニトリル化合物は、色素増感太陽電池用電解質組成物の溶媒として用いることができる。
【0022】
2) 式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物の合成
本発明の下記式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物
【化10】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)は、大気圧における沸点が200℃以上である。式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。また、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。上記アルコキシニトリル化合物は、公知の方法で製造することができる。
例えば、下記式(4)で表されるアルコキシエタノール
【化11】

(式中、Rは上述と同じ意である。)
を、塩基の存在下、下記式(5)で表されるスルホニルハライド
SOX (5)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)
と反応させて下記式(6)で表されるアルコキシエチルスルホナート
【化12】

(式中、R、Rは上述と同じ意である。)
を得、次いで、塩基の存在下、下記式(3)で表されるシアノ酢酸エステル
【化13】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す。)
と反応させることで製造することができる。
【0023】
以下に式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物の合成方法について詳細を説明する。
【0024】
式(6)で表されるアルコキシエチルスルホナートを得る反応は、有機溶媒中、式(4)で表されるアルコキシエタノール及び塩基を添加し、これに式(5)で表されるスルホニルハライドを添加することにより行われる。
【0025】
本発明に用いるアルコキシエタノールは、下記式(4)で表されるアルコキシエタノール化合物
【化14】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す。)を例示することができる。式(4)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0026】
式(4)で表されるアルコキシエタノールとして、具体的には、メトキシエタノール、エトキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、フェノキシエタノール等を例示することができる。中でも安価に入手容易である点で、メトキシエタノール、エトキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノールが好ましく、メトキシエタノール、エトキシエタノールがより好ましい。
【0027】
本発明に用いるスルホニルハライドは、特に限定されないが、例えば、下記式(5)
SOX (5)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で表されるスルホニルハライドを例示することができる。
【0028】
式(5)で表されるスルホニルハライドとして、具体的には、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド等を例示することができる。中でも、メタンスルホニルクロリドが好ましい。
【0029】
反応に用いるスルホニルハライドの使用量は、出発原料である式(4)アルコキシエタノールに対して、1〜5当量の範囲であり、1〜1.5当量の範囲が好ましい。
【0030】
反応に用いる塩基としては、第3級アミンおよびピリジン誘導体等を例示することができる。
【0031】
第3級アミンとしては、トリメチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジエチルヘキシルアミン等の各アルキル基が炭素数1〜6のトリアルキルアミンや、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−メチルジフェニルアミン等のアルキル基が炭素数1〜4のジアルキルフェニルアミン、またはモノアルキルジフェニルアミンや、1−メチルピロリジン、1−エチルピペリジン、4−メチルモルホリン等の炭素数1〜4のアルキル基で置換した第3級アミンを有する含窒素飽和複素環化合物を例示することができる。また、ピリジン誘導体としては、ピリジンのほか、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、4−エチルピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン等の炭素数1〜4のアルキル基で置換したピリジン化合物や、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、4−N,N−ジエチルアミノピリジン、4−N−メチル−N−エチルアミノピリジン等の炭素数1〜4のアルキル基で置換した第3級アミノ基を有するピリジン化合物等を例示することができる。中でも安価であるの点で、各アルキル基が炭素数1〜6のトリアルキルアミンまたはピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン等のピリジン誘導体が好ましく、トリエチルアミンまたはピリジンがより好ましい。
【0032】
反応に用いる塩基の使用量は、出発原料である式(4)アルコキシエタノールに対して、1〜5当量の範囲であり、1〜1.5当量の範囲が好ましい。
【0033】
反応に用いる有機溶媒としては、通常反応に用いることのできるものであれば特に制限無く用いられるが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒を例示することができる。中でも溶媒留去の容易性の点で、ハロゲン系炭化水素系溶媒が好ましく、ジクロロメタン、または1,2−ジクロロエタンがより好ましい。上記記載の有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。反応温度は、通常−10℃〜40℃の範囲であり、−10〜25℃の範囲が好ましい。
【0034】
反応終了後、この反応液を水等による分液操作を行うことにより、簡便に目的とする式(6)で表されるアルコキシエチルスルホナートを有機層へ分離することができる。すなわち、反応液を水で洗浄、分液処理を行ったのち、通常用いられる溶媒留去により得られた式(6)の化合物を精製等の操作を行うことなく次の反応に用いることができる。
【0035】
さらに、式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物を得る反応は、有機溶媒中に、式(3)で表されるシアノ酢酸エステル及び塩基を添加し、これに上記反応で得られる式(6)で表されるアルコキシエチルスルホナートを添加することにより行われる。
【0036】
本反応に用いるシアノ酢酸エステルは、下記式(3)
【化15】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す。)で表されるシアノ酢酸エステルを例示することができる。式(3)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0037】
式(3)で表されるシアノ酢酸エステルとして、具体的には、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸n−ブチル、シアノ酢酸t−ブチルを例示することができる。中でも安価で入手容易である点で、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルがより好ましい。
【0038】
式(6)で表されるアルコキシエチルスルホナートの使用量は、式(3)で表されるシアノ酢酸エステルに対して、0.2〜2当量の範囲であり、0.4〜1.5当量の範囲が好ましい。
【0039】
反応に用いる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属水素化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等を例示することができる。中でも、水素化ナトリウム、アルカリ金属アルコキシド、炭酸カリウムが好ましく、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウムがより好ましい。
【0040】
反応に用いる塩基の使用量は、式(3)で表されるシアノ酢酸エステルに対して、0.5〜2当量の範囲であり、0.5〜1.5当量の範囲が好ましい。
【0041】
反応に用いる溶媒としては、通常反応に用いることのできるものであれば特に制限無く用いられるが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒および水等を例示することができる。中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましく、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非プロトン性極性溶媒がより好ましい。反応温度は通常−20℃〜130℃の範囲であり、室温〜100℃の範囲が好ましく、室温〜80℃の範囲がより好ましい。
【0042】
本反応において、反応を促進させるために、必要に応じてヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属ヨウ化物を添加してもよい。反応に用いるアルカリ金属ヨウ化物の使用量は、式(6)で表されるアルコキシエチルスルホナートに対して、0.001〜1当量の範囲であり、0.01〜0.5当量の範囲が好ましい。
【0043】
反応終了後、この反応液を無機酸水溶液による分液操作を行うことにより、簡便に目的とする式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物を有機層へ分離できる。すなわち、反応液を無機酸水溶液で洗浄、分液処理を行ったのち、溶媒留去により得られる化合物を通常の精製法を用いて、例えば、蒸留等により、容易に高純度の式(2)で表されるニトリル化合物を製造することができる。上記合成方法によって得られた式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物は、色素増感太陽電池用電解質組成物の溶媒として用いることができる。
【0044】
3)色素増感太陽電池用電解質組成物
本発明の色素増感電池用電解質組成物には、上記式(1)で表されるニトリル化合物、又は/及び、式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物、酸化還元対、塩基性化合物、グアニジン塩等を含んでいてもよい。
【0045】
上記製造方法で合成した式(1)で表されるニトリル化合物、及び/又は、式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物を色素増感太陽電池電解質の溶媒として使用する場合、電気化学的に酸化還元を起こす酸化還元対であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、ヨウ素化合物およびヨウ素の組合せ、または臭素化合物および臭素の組合せ等と例示することができる。中でも、ヨウ素とヨウ化リチウム等のヨウ素化合物との組合せが好ましい。また、ヨウ化リチウムの変わりに各種イオン性液体を用いてもよい。
ヨウ素化合物としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩およびこれらの混合物等が挙げられる。具体的には、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド等を例示できる。中でも溶解性の点で、ヨウ化リチウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージドが好ましい。
【0046】
色素増感太陽電池用電解質組成物に用いる酸化還元対のヨウ素化合物とヨウ素の使用比率は任意であるが、通常、ヨウ素化合物をヨウ素に対して過剰に用いることが好ましい
【0047】
ヨウ素化合物の濃度としては特に限定されないが、色素増感太陽電池用電解質組成物中に0.01mol/L以上であり、0.05〜3mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましい。
【0048】
本発明では、半導体層から電解質への逆電子移動を防止するなどの目的でtert−ブチルピリジンや2−ピコリン、2,6−ルチジンなどの塩基性化合物を前述の色素増感太陽電池用電解質組成物に添加してもよい。これら塩基性化合物を添加する場合、色素増感太陽電池用電解質組成物液に対して、0.05〜2mol/Lの範囲が好ましい。
【0049】
また、本発明では、光電流を更に増大させるとともに、初期の光電変換効率を更に上昇させる目的で、色素増感太陽電池用電解質組成物にグアニジン塩を含むこともできる。グアニジン塩としては、グアニジウムチオシアネート等を例示できる。グアニジン塩を添加する場合、色素増感太陽電池用電解質組成物に対して、0.02〜0.5mol/Lの範囲が好ましい。
【0050】
本発明の色素増感太陽電池用電解質組成物には、効果へ影響を与えない限り、通常の色素増感太陽電池用電解質組成物に用いられる有機溶剤を混合して用いてもよい。例えば、ニトリル類、環状または鎖状カーボネートおよび環状エステル等が挙げられる。ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、バレロニトリルなど、環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなど、環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、σ-ブチロラクトンなどのラクトン類を例示することができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物として色素増感太陽電池用電解質組成物に添加してもよい。また、色素増感太陽電池用電解質組成物には、本発明の効果へ影響を与えない限り、電解質組成物の粘度を下げるために、上記記載の溶媒を添加してもよい。
【0051】
また、本発明の色素増感太陽電池用電解質組成物には、ゲル化剤を添加してゲル化させてよい。ゲル化の手法としては、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類の添加とこれに引き続く架橋等が挙げられる。ポリマー添加によりゲル化させる場合には、通常用いられるポリマーであれば特に制限は無いが、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等を使用することができる。
【0052】
また、ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化する場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を添加してもよい。架橋可能は反応性基として、水酸基等を例示することができ、架橋剤はトリレンジイソシアネート等を例示できる。
【0053】
また、本発明においては、目的または必要に応じて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、一般の色素増感太陽電池用電解質組成物に配合する通常の添加物、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、ベンゾイミダゾール誘導体(電極から電解質への逆電子移動を防止するための添加剤)、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、フタル酸エステル類、グアニジン塩等の(光電流を増大させるための添加剤)などの各種添加剤を配合することができる。
【0054】
本発明の色素増感太陽電池用電解質組成物は、式(1)のニトリル化合物と式(2)のアルコキシニトリル化合物のどちらか一方を含んでいればよく、両方を含んでいてもよい。なお、両方のニトリル化合物を色素増感太陽電池用電解質組成物に添加する際の混合比は、必要に応じて適宜調整すればよい。
【0055】
4)色素増感太陽電池
本発明のニトリル化合物を含む色素増感太陽電池用電解質組成物を用いて色素増感太陽電池を製造する場合、色素増感型太陽電池の構成は、特に限定されることはなく、高分子電解質組成物以外は従来の公知の基本的な色素増感太陽電池の構成で実施できる。その構成として、例えば、透明なガラスまたはプラスチックフィルムの片面に透明導電膜をコートした2枚の透明導電基板の一方に、増感色素を担持した金属酸化物の微粒子からなる多孔質の半導体層を設けた電極と、もう一方は表面に導電性物質を導入した対向電極とし、これらの一対の電極間に電解質を配置した構造である。
【0056】
上記の半導体層には、例えば、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Cr等の金属の酸化物を用いることができ、中でもエネルギー準位の点で、TiO又はZnOが好ましい。半導体層は、例えば、電極を有する基板の表面に、半導体微粒子を含有するペーストを公知の方法により塗布し、その後、400〜600℃の範囲内の温度で加熱焼結することにより形成させることができる。
【0057】
半導体微粒子に吸着、担持させる色素としては、ルテニウムビピリジン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、シアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等を例示することができ、中でも可視光域で吸収帯域が広い点で、ルテニウムビピリジン系色素が好ましい。
【0058】
半導体層への色素の担持方法としては、半導体層を有する電極を備えた基板を、増感色素を溶媒に溶かした色素溶液に浸漬する方法あるいは、色素溶液を半導体層に塗布する方法を例示することができる。なお、浸漬中に加熱あるいは超音波をかけることで浸漬の効率を上げることができる。
増感色素を溶解させる溶媒としては、増感色素を溶解可能なものであれば特に制限なく用いることができ、アルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水等の溶媒を例示することができる。また、上記溶媒の混合物を用いてもよい。
【0059】
上記の半導体層を形成する導電層は、ガラスまたはフィルム等の透明な基板の一方の面に形成し、このように作成した電極を負極として用いる。
この負極の導電層を形成するための導電剤としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、炭素、インジウム−錫複合酸化物、フッ素をドープした酸化錫等の導電性の金属の酸化物を例示することができる。
【0060】
もう一方の対極となる電極は、太陽電池の正極として用いる。前記の半導体層が設けられる側の電極と同様に形成することができるが、本発明における色素増感太陽電池の対電極の材料としては、電解質の還元体に電子を与える触媒作用を有する白金やグラファイト等が太陽電池の正極として効率よく作用する。
【0061】
実施例
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
I)ニトリル化合物の合成
【0063】
[実施例1] 2,4−ジシアノブタン酸エチルの合成
200mL三つ口フラスコにシアノ酢酸エチル113.1g(1.0mol)、ナトリウムエトキシド3.4g(0.05mol)、エタノール23.0g(0.50mol)を入れ、これを攪拌しながら5℃まで冷却した。次に、アクリロニトリル26.5g(0.50mol)を内容物の温度が35℃を超えないように保ちながら滴下した。滴下後、内温を25℃前後に保ち2時間攪拌し、酢酸3.0g(0.05mol)を滴下して反応を終了させた。イオン交換水100mLを添加したのち、酢酸エチル100mLで2回抽出した。溶媒を減圧下留去させ、粗2,4−ジシアノブタン酸エチル136.8g得た。次に、蒸留精製、溶媒の除去により、無色透明液体の2,4−ジシアノブタン酸エチル31.1gを得た。
H NMR (270MHz,CDCl,δ(ppm)) δ=1.36(t,J=7.0Hz,3H),2.27−2.39(m,2H), 2.62−2.68(m,2H),3.67−3.72(dd,J=6.5, 7.6Hz, 1H), 4.32(q, J=7.0Hz,2H)
b.p.=115−121℃(0.6mmHg)
【0064】
[実施例2] 2−メトキシエチルメタンスルホネートの製造
1000mL四つ口フラスコに2−メトキシエタノール76.1g(1.0mol)、トリエチルアミン111.3g(1.1mol)、ジクロロメタン320mLを入れ、これを攪拌しながら10℃まで冷却した。次に、メタンスルホニルクロリド126g(1.1mol)を内容物の温度が20℃を超えないように滴下したのち、内容物を室温で1時間攪拌した。反応液を10%炭酸水素ナトリウム水溶液300gで1回、次いでイオン交換水100gで1回洗浄したのち、ジクロロメタン層を濃縮し2−メトキシエチルメタンスルホネート147gを得た。
【0065】
[実施例3] 2−シアノ−4−メトキシブタン酸エチルの製造
1000mL四つ口フラスコにシアノ酢酸エチル113.1g(1.00mol)、ナトリウムエトキシド51.0g(0.75mol)、ヨウ化カリウム8.3g(0.05mol)、エタノール345.3g(7.50mol)を入れ、これを攪拌しながら60℃まで加熱した。次に、実施例2で得た2−メトキシエチルメタンスルホネート73.7g(0.48mol)を内容物の温度を60℃付近に保ちながら滴下したのち、内容物を60℃で72時間攪拌した。次にエタノールを減圧下留去させたのち、イオン交換水400mLを加え、10%塩酸水溶液で中和した。トルエン700mLで3回抽出し、トルエンを減圧下留去させ、粗2−シアノ−4−メトキシブタン酸エチル58.0gを得た。次に、蒸留精製により、無色透明液体の2−シアノ−4−メトキシブタン酸エチル32.0gを得た。
H NMR (270MHz,CDCl,δ(ppm)) δ=1.33(t,J=7.0Hz,3H),2.10−2.30(m,2H),3.35(s,3H),3.54−3.59(m,2H), 3.75(dd, J=8.4, 5.9Hz, 1H), 4.27(q, 7.0Hz, 2H)
b.p.=65−67℃(0.5mmHg)
【0066】
II)色素増感太陽電池セルの組み立て
色素増感太陽電池セルの組み立てはThin Solid Films 516(2008)4613−4619に記載されている方法に従って行った。具体的には、以下のとおりである。
【0067】
(1)酸化物薄膜電極の製造
フッ素ドープ酸化スズ透明導電性ガラスからなる基材(厚さ4mm、抵抗値30Ω/cm)に平均粒子径30nmの酸化チタンペーストを14μm塗布し、さらに平均粒子径400nmの酸化チタンペーストを6μm塗布した後に、空気雰囲気中、325℃から500℃まで段階的に加熱することにより、透明導電性ガラスからなる基材の表面に酸化チタンからなる酸化物薄膜電極を形成した。
【0068】
(2)陽極の製造
酸化物薄膜電極の製造に用いたものと同じ透明導電性ガラスからなる基材の表面に、2mg/mLに調製した塩化白金酸のエタノール溶液を塗布し、400℃で15分間加熱することにより、白金電極を形成した。
【0069】
(3)色素溶液の調製
色素「N719」(東京化成工業製)をアセトニトリル/tert−ブタノール混合溶媒(体積比:50/50)に溶解させ、色素の濃度が0.5mmol/Lである色素溶液を調製した。
【0070】
(4)陰極の製造
前記の酸化物薄膜電極を、前記色素溶液中に室温で20時間浸漬することにより、酸化物薄膜電極に色素を吸着させ、陰極を製造した。
【0071】
(5)色素増感太陽電池電解質溶液の調製
[実施例4及び比較例1]電解質溶液E-1及び電解質溶液R−1の調製
2−シアノ−4−メトキシブタン酸エチルに、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.6mol/L、ヨウ素を0.03mol/L、グアニジウムチオシアネートを0.1mol/L及び4−t−ブチルピリジンを0.5mol/Lの濃度で溶解させて電解質溶液を調製した(以下、「電解質溶液E−1」と表記する)。また、比較例1として、2−シアノ−4−メトキシブタン酸エチルの代わりに3−メトキシプロピオニトリルを用いて同様の電解質溶液を調製した(以下、「電解質溶液R−1」と表記する)。
【0072】
[実施例5及び比較例2]電解質溶液E-2及び電解質溶液R−2の調製
2−シアノ−4−メトキシブタン酸エチル/バレロニトリル混合溶媒(体積比:85/15)に、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.6mol/L、ヨウ素を0.03mol/L、グアニジウムチオシアネートを0.1mol/L及び4−t−ブチルピリジンを0.5mol/Lの濃度で溶解させて電解質溶液を調製した(以下、「電解質溶液E−2」と表記する)。また、比較例2として、2−シアノ−4−メトキシブタン酸エチルの代わりに3−メトキシプロピオニトリルを用いて同様の電解質溶液を調製した(以下、「電解質溶液−」と表記する)。
【0073】
[実施例6]電解質溶液E-3の調製
2,4−ジシアノブタン酸エチルに、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.6mol/L、ヨウ素を0.03mol/L、グアニジウムチオシアネートを0.1mol/L及び4−t−ブチルピリジンを0.5mol/Lの濃度で溶解させて電解質溶液を調製した(以下、「電解質溶液E−3」と表記する)。
【0074】
[実施例7]電解質溶液E-4の調製
2,4−ジシアノブタン酸エチル/バレロニトリル混合溶媒(体積比:85/15)に、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.6mol/L、ヨウ素を0.03mol/L、グアニジウムチオシアネートを0.1mol/L及び4−t−ブチルピリジンを0.5mol/Lの濃度で溶解させて電解質溶液を調製した(以下、「電解質溶液E−4」と表記する)。
【0075】
(6)色素増感太陽電池の製造
前記陽極の白金焼結面と、前記陰極の酸化物薄膜電極形成面が対向するように配置し、シール材で接着し、空隙中に前記電解質溶液を注入して色素増感太陽電池を製造した。
[色素増感太陽電池の評価]
実施例及び比較例の色素増感太陽電池に対し、5mm角の窓をつけた光照射面積規定用マスクを装着させた上で、ソーラーシミュレーターを用いて擬似太陽光を1Sunの照度で照射し光電変換効率を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すように実施例1〜3で製造したニトリル化合物を溶媒に用いて調製した電解質溶液を用いた、実施例4〜7の色素増感太陽電池は、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒に用いて調製した電解質溶液を用いた比較例1及び2の色素増感太陽電池と同程度の変換効率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のニトリル化合物は色素増感太陽電池用途に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるニトリル化合物
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)、又は/及び、
下記式(2)で表されるアルコキシニトリル化合物
【化2】

(式中、Rは上記と同じであり、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示す)
と酸化還元対を含む色素増感太陽電池用電解質組成物。
【請求項2】
酸化還元対がヨウ素及びヨウ化合物の対である請求項1に記載の色素増感太陽電池用電解質組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電解質組成物を用いることを特徴とする色素増感太陽電池。


【公開番号】特開2012−129052(P2012−129052A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278998(P2010−278998)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】