説明

艶消しシリコーンゴム組成物及び艶消しシリコーンゴムの製造方法

【課題】硬化物表面に良好な艶消し性を付与し、電気・電子部品のポッティング材として好適な艶消しシリコーンゴム組成物及び艶消しシリコーンゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の艶消しシリコーンゴム組成物は、(A)付加反応硬化型シリコーンゴム組成物100重量部に対して、(B)合成樹脂製中空体の表面に無機粉体を付着した艶消し剤を0.1〜10重量部含有し、25℃における粘度が0.5〜50Pa・sである。また、艶消しシリコーンゴムの製造方法は、前記艶消しシリコーンゴム組成物を基材にポッティングする工程と、前記ポッティングされた層の上部に前記(B)成分が移行するように室温で放置する工程と、前記(B)成分が上部に移行した艶消しシリコーンゴム組成物を加熱して硬化させる工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物表面に良好な艶消し性を与え、電気・電子部品のポッティング材として好適な艶消しシリコーンゴム組成物及び艶消しシリコーンゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築産業分野をはじめとする様々な分野で、シーリング材、ポッティング材などとして、常温で流動性を有する加熱硬化型の液状シリコーンゴム組成物が使用されている。
【0003】
しかし、このような液状シリコーンゴム組成物の硬化物は、その表面が平滑で光沢を有するため、例えばLED表示装置などのポッティング材として用いた場合には、硬化物表面が外部からの入射光、例えば太陽光を反射しやすく、点灯したLEDと点灯していないLEDの視認性が悪化するという問題があった。このような問題を解決するため、外部からの入射光を反射しにくい、表面が艶消しされた硬化物を与えるシリコーン組成物として、シリカなどの無機充填材を多量に配合する方法が知られているが、得られる組成物の粘度が増大し作業性が低下する。
【0004】
そこで、各種微小中空体(マイクロバルーン)を配合したものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシリコーン組成物では、ガラスバルーンの真比重が配合する該組成物に対して大きいため、ガラスバルーンを多量に配合しても硬化後の光沢度が低下し難い。また、特許文献2では、熱膨張性のマイクロバルーンを使用しているため、加熱時に熱が均等にかかり難く、熱膨張に時差が生じて艶消し表面の均一性が損なわれる。
【特許文献1】特開2000−154368号公報
【特許文献2】特開2003−96302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような課題に対処するためになされたもので、硬化物表面に良好な艶消し性を付与し、電気・電子部品のポッティング材として好適な艶消しシリコーンゴム組成物及び艶消しシリコーンゴムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、合成樹脂製中空体の表面に無機粉体を付着させた艶消し剤をシリコーンゴム組成物に配合することによって、表面が艶消しされた硬化物が得られやすく、さらに硬化する際には、室温で放置してから加熱硬化させることでより優れた艶消し性を発揮する硬化物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の艶消しシリコーンゴム組成物は、(A)付加反応硬化型シリコーンゴム組成物100重量部に対して、(B)合成樹脂製中空体の表面に無機粉体を付着した艶消し剤を0.1〜10重量部含有し、25℃における粘度が0.5〜50Pa・sであることを特徴とする。
【0009】
また、艶消しシリコーンゴムの製造方法は、艶消しシリコーンゴム組成物を基材にポッティングする工程と、前記ポッティングされた層の上部に前記(B)成分が移行するように室温で放置する工程と、前記(B)成分が上部に移行した艶消しシリコーンゴム組成物を加熱して硬化させる工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、硬化物表面に良好な艶消し性を付与し、電気・電子部品のポッティング材として好適な艶消しシリコーンゴム組成物及び艶消しシリコーンゴムの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の艶消しシリコーンゴム組成物について説明する。
【0012】
[(A)成分]
(A)成分の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物は、(A1)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン、(A2)1分子中に3個以上のSiH基を含有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(A3)白金系触媒からなる。
【0013】
以下、(A1)〜(A3)について説明する。
【0014】
(A1)のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する。ケイ素原子結合アルケニル基が2個未満であると、得られた組成物が十分に硬化し難くなる。
【0015】
ケイ素原子結合アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ペテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、特にビニル基が好ましい。ケイ素原子結合アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、得られる組成物の硬化速度、硬化物の物性、特に機械的強度の点から、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子、特に分子鎖両末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0016】
アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基あるいはこれらの水素原子が部分的に塩素原子、フッ素原子などで置換されたハロゲン化炭化水素基等の炭素原子数1〜12個、好ましくは炭素原子数1〜8個程度のものが挙げられる。合成の容易さから、特にアルキル基、アリール基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。
【0017】
(A1)の分子構造は、直鎖状、分岐状、環状、あるいは三次元網状(レジン状)等のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。また、(A1)の25℃における粘度は、0.01〜1000Pa・sであることが好ましい。0.01Pa・s未満であると、硬化物の良好な物性が得られず脆くなり易い。一方、1000Pa・sを超えると、得られた組成物の流動性が低下して作業性が悪化し易くなる。
【0018】
(A2)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは架橋剤あり、1分子中に3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有している。SiH基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。その分子構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状あるいは三次元網目状のいずれでもよく、1種単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0019】
(A2)成分としては、平均組成式:
SiO[4−(a+b)]/2
で示されるものが用いられる。
上記式中、Rは、脂肪族不飽和炭化水素基を除く、置換または非置換の1価炭化水素基である。Rとしては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;およびこれらの基の水素原子の一部または全部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子やシアノ基で置換されているもの、例えばクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。これらのうちで、炭素数が1〜4のものが好適であり、合成のし易さ、コストの面からアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0020】
また、a、bは、0.5≦a≦2、0<b≦2、0.5<a+b≦3を満足する数であり、特に0.6≦a≦1.9、0.01≦b≦1.0、0.6≦a+b≦2.8を満足する数であることが好ましい。
【0021】
(A2)の25℃における粘度は、0.05〜10Pa・sであることが好ましい。
【0022】
(A2)の配合量は、前記(A1)のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、SiH基の合計個数が0.5〜5.0個、特に1.5〜4.0となる量が好ましい。0.5個未満であると、得られた組成物が十分に硬化し難くなる。一方、5.0個を越えると、硬化後の物性が経時で変化し易くなる。
【0023】
(A3)としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。
【0024】
(A3)の配合量は、硬化に必要な量であればよく、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができる。通常、(A1)100重量部に対し、白金元素に換算して0.1〜1000ppm、好ましくは1〜500ppmの範囲である。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分は、本発明の組成物を硬化した後、その表面に良好な艶消し性を付与する本発明の特徴成分である。(B)成分は、合成樹脂からなる中空体(マイクロバルーン)表面の少なくとも一部分、好ましくは全体に無機粉体を付着させたものである。(B)成分は、その配合量が従来の無機充填剤と比較して格段に少ないにも関わらず、硬化物表面に良好な艶消し性を与えることができる。このため、シリコーンゴム組成物が本来もつ粘度、作業性、硬化物の強度、基材への密着性/接着性等を損なうことがない。
【0026】
(B)成分の真比重は、0.1〜0.3の範囲であることが好ましい。(A)成分の真比重(0.98〜1.00程度)よりも小さくすることで、本組成物を基材にポッティングした後、ポッティングされた層の上部に(B)成分を浮上、分散させることができ、少量の添加で、良好な艶消し表面を有する硬化物を得ることができる。
【0027】
その平均粒径は、10〜200μm、好ましくは10〜100μmである。10μm未満であると、硬化物の光沢度が低下し難い。一方、200μmを越えると、硬化後のゴム物性が低下し易く、また艶消し表面の均一性が損なわれやすい。平均粒径は、例えばレーザー光回折法などによる粒度分布測定装置等を用いて、重量平均値(又はメジアン径)などとして求めることができる。
【0028】
(B)成分を構成する中空体は、その外殻が合成樹脂からなるものであれば、中空体内部への内包物の有無は任意である。例えば、熱により熱可塑性樹脂からなる外殻部分が軟化し、中空部分に内包された揮発性物質の膨張により粒子全体が膨張するような熱膨張性の中空体(上記特許文献2参照)を用いることもできる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0029】
この中空体表面に付着させる無機粉体としては、CeO2、SrTiO3、CrO、SiO2、TiO2、ZnO、Al23、TiON、TiBaO3、MgO、ZrO2、NiO、SnO等の金属酸化物、CaSO4、BaSO4、CaCO3等の金属塩が好ましい。また、無機粉体の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、特に中空体の平均粒径を100としたとき1〜70の粒径であることが好ましい。無機粉体の形状は、特に限定されるものではなく、(A)成分に配合した時の分散性を考慮して選択すればよい。中空体と無機粉体との配合比は、10:90〜40:60が好ましい。
【0030】
中空体表面に無機粉体を付着させる方法としては、例えば流動乾燥炉などを使用して熱により付着させる方法、ボールミルなどの混合機を用いて機械的な力により付着させる方法などが挙げられる。また、中空体として、例えば熱膨張性の中空体を用いる場合には、無機粉体の存在下でこの熱膨張性中空体を加熱膨張させて付着させる方法などが挙げられる。
【0031】
(B)成分の配合量は、上記(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。0.1重量部未満であると、硬化物表面への艶消しの効果が十分に得られ難い。一方、10重量部を越えると、得られる組成物の粘度が高くなり作業性の低下を招く。
【0032】
[その他任意成分]
【0033】
本発明における艶消しシリコーンゴム組成物は、上記(A)〜(B)の各成分を基本成分とし、これらに必要に応じて、その他任意成分として顔料を配合してもよい。顔料としては、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、アニリンブラック、黒酸化鉄等の黒色系顔料が好ましい。
【0034】
顔料の配合量は、目的とする着色度、組成物の粘度等に応じて適宜調整することができるが、(A)成分100重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましい。
【0035】
さらに、その他任意成分として接着性付与剤、耐熱性向上剤、反応制御剤、離型剤、可塑剤、増感剤、重合禁止剤等を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0036】
本発明の艶消し用シリコーンゴム組成物の製造方法としては、例えば上記(A)〜(B)成分及びその他任意成分をプラネタリーミキサー、ニーダー、品川ミキサー等の混合機で混合する方法等が挙げられる。
【0037】
このようにして得られた本発明の組成物の25℃における粘度は、0.5〜50Pa・s、好ましくは0.5〜10Pa・sである。0.5Pa・s未満であると、強度、伸び、硬さ等の十分な強度が得られない。一方、50Pa・sを超えると、流動性が悪化して微小な部位への流れ込みが困難になるため、ポッティング材としての使用が難しい。
【0038】
本発明の組成物は、室温(通常25℃程度)で放置してから、加熱硬化させる。放置する時間は、例えば本組成物を基材の所定部位にポッティングした際に、ポッティングされた層の上部に向けて(B)成分が浮上していればよく、任意であるが、好ましくは0.5〜24時間である。このように(A)成分と(B)成分の比重差を利用して、層上部に浮上させるための時間を設けてから、加熱硬化することで、硬化後の光沢度をさらに低減することができ、優れた艶消し性を得ることができる。なお、加熱条件は、特に限定されず、50〜200℃で30〜180分程度の条件で加熱することが好ましい。
【0039】
このようにして得られる硬化物は、光沢度(JIS Z 8741準拠、60°鏡面光沢度)が30以下、好ましくは0〜20である。30を超えると、外部からの入射光が硬化物表面で反射しやすく、LED表示の視認性が悪化しやすい。
【0040】
したがって、本発明の艶消しシリコーンゴム組成物は、常温で十分な流動性を有し、加熱硬化により表面が艶消しされた硬化物を形成することができるので、例えばLEDなどの電気・電子部品のポッティング材として好適である。
【実施例】
【0041】
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例中、粘度は25℃において測定した値である。また、平均粒径はレーザー光回折法により測定した値である。実施例及び比較例で得られた硬化物は、以下のようにして評価し、結果を表1に示した。表1に示した特性は、25℃において測定した値である。
【0042】
[硬さ]
JIS K 6249 タイプEに準拠して測定した。
【0043】
[光沢度]
JIS Z 8741に準拠し、60°鏡面光沢を光沢度計IC−310(堀場製作所製)を用いて測定し、艶消し効果の尺度とした。光沢度の測定値が小さいほど、艶消し効果が大きいことを示す。
【0044】
[実施例1]
(A)成分として、(A1)粘度が100Pa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン20重量部、(A1)粘度が350mPa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン60.86重量部、(A1)メチルシリコーンレジン5重量部、(A2)ポリメチルハイドロジェンシロキサン0.3重量部、(A2)分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン12重量部、(A3)白金触媒としてビニルダイマー錯体0.2重量部、(B)成分としてプラスチックバルーン表面に炭酸カルシウムを付着させた艶消し剤(MFL−80GCA、松本油脂製薬株式会社製、平均粒径20μm、真比重0.20±0.05)2重量部、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブラック)0.6重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部及びサーフィノール61を0.04重量部を均一に混合して、艶消し用シリコーンゴム組成物を得た。得られた艶消し用シリコーンゴム組成物は、粘度が2.4Pa・sであった。
この艶消し用シリコーンゴム組成物を厚さ6mmの枠体に流し込み、25℃で16時間放置し(工程1)、80℃のオーブンで2時間加熱して(工程2)、硬化物(艶消しシリコーンゴム)を得た。
この硬化物の硬さと光沢度を測定した。さらに、180℃で1時間加熱して、光沢度を測定した。結果を表1に示した。
【0045】
[実施例2]
(A)成分として、(A1)粘度が100Pa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン20重量部、(A1)粘度が350mPa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン60.86重量部、(A1)メチルシリコーンレジン5重量部、(A2)ポリメチルハイドロジェンシロキサン0.3重量部、(A2)分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン12重量部、(A3)白金触媒としてビニルダイマー錯体0.2重量部、(B)成分としてプラスチックバルーン表面に炭酸カルシウムを付着させた艶消し剤(MFL80CA、松本油脂製薬株式会社製、平均粒径100μm、真比重0.13±0.03)1.3重量部、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブラック)0.6重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部及びサーフィノール61を0.04重量部を均一に混合して、艶消し用シリコーンゴム組成物を得た。得られた艶消し用シリコーンゴム組成物は、粘度が2.5Pa・sであった。
この艶消し用シリコーンゴム組成物を厚さ6mmの枠体に流し込み、25℃で16時間放置し(工程1)、80℃のオーブンで2時間加熱して(工程2)、硬化物(艶消しシリコーンゴム)を得た。
この硬化物の硬さと光沢度を測定した。さらに、180℃で1時間加熱して、光沢度を測定した。結果を表1に示した。
【0046】
[実施例3]
(A)成分として、(A1)粘度が100Pa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン20重量部、(A1)粘度が350mPa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン60.86重量部、(A1)メチルシリコーンレジン5重量部、(A2)ポリメチルハイドロジェンシロキサン0.3重量部、(A2)分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン12重量部、(A3)白金触媒としてビニルダイマー錯体0.2重量部、(B)成分としてプラスチックバルーン表面に炭酸カルシウムを付着させた艶消し剤(MFL−80GCA、松本油脂製薬株式会社製、平均粒径20μm、真比重0.20±0.05)1重量部、プラスチックバルーン表面に炭酸カルシウムを付着させた艶消し剤(MFL80CA、松本油脂製薬株式会社製、平均粒径100μm、真比重0.13±0.03)1重量部、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブラック)0.6重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部及びサーフィノール61を0.04重量部を均一に混合して、艶消し用シリコーンゴム組成物を得た。得られた艶消し用シリコーンゴム組成物は、粘度が2.6Pa・sであった。
この艶消し用シリコーンゴム組成物を厚さ6mmの枠体に流し込み、25℃で16時間放置し(工程1)、80℃のオーブンで2時間加熱して(工程2)、硬化物(艶消しシリコーンゴム)を得た。
この硬化物の硬さと光沢度を測定した。さらに、180℃で1時間加熱して、光沢度を測定した。結果を表1に示した。
【0047】
[実施例4]
(A)成分として、(A1)粘度が100Pa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン20重量部、(A1)粘度が350mPa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン60.86重量部、(A1)メチルシリコーンレジン5重量部、(A2)ポリメチルハイドロジェンシロキサン0.3重量部、(A2)分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン12重量部、(A3)白金触媒としてビニルダイマー錯体0.2重量部、(B)成分としてプラスチックバルーン表面に炭酸カルシウムを付着させた艶消し剤(MFL80CA、松本油脂製薬株式会社製、平均粒径100μm、真比重0.13±0.03)0.9重量部、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブラック)0.6重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部及びサーフィノール61を0.04重量部を均一に混合して、艶消し用シリコーンゴム組成物を得た。得られた艶消し用シリコーンゴム組成物は、粘度が2.2Pa・sであった。
この艶消し用シリコーンゴム組成物を厚さ6mmの枠体に流し込み、25℃で16時間放置し(工程1)、80℃のオーブンで2時間加熱して(工程2)、硬化物(艶消しシリコーンゴム)を得た。
この硬化物の硬さと光沢度を測定した。さらに、180℃で1時間加熱して、光沢度を測定した。結果を表1に示した。
【0048】
[比較例1]
(A)成分として、(A1)粘度が100Pa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン20重量部、(A1)粘度が350mPa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン60.86重量部、(A1)メチルシリコーンレジン5重量部、(A2)ポリメチルハイドロジェンシロキサン0.3重量部、(A2)分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン12重量部、(A3)白金触媒としてビニルダイマー錯体0.2重量部、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブラック)0.6重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部及びサーフィノール61を0.04重量部を均一に混合して、艶消し用シリコーンゴム組成物を得た。得られた艶消し用シリコーンゴム組成物は、粘度が2.0Pa・sであった。
この艶消し用シリコーンゴム組成物を厚さ6mmの枠体に流し込み、25℃で16時間放置し(工程1)、80℃のオーブンで2時間加熱して(工程2)、硬化物(艶消しシリコーンゴム)を得た。
この硬化物の硬さと光沢度を測定した。さらに、180℃で1時間加熱して、光沢度を測定した。結果を表1に示した。
【0049】
[比較例2]
(A)成分として、(A1)粘度が100Pa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン20重量部、(A1)粘度が350mPa・sであり、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン60.86重量部、(A1)メチルシリコーンレジン5重量部、(A2)ポリメチルハイドロジェンシロキサン0.3重量部、(A2)分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン12重量部、(A3)白金触媒としてビニルダイマー錯体0.2重量部、(B)成分としてプラスチックバルーン表面に炭酸カルシウムを付着させた艶消し剤(MFL−80CA、松本油脂製薬株式会社製、平均粒径100μm、真比重0.13±0.03)0.9重量部、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブラック)0.6重量部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部及びサーフィノール61を0.04重量部を均一に混合して、艶消し用シリコーンゴム組成物を得た。得られた艶消し用シリコーンゴム組成物は、粘度が2.2Pa・sであった。
この艶消し用シリコーンゴム組成物を厚さ6mmの枠体に流し込み、80℃のオーブンで2時間加熱して、硬化物(艶消しシリコーンゴム)を得た。
この硬化物の硬さと光沢度を測定した。さらに、180℃で1時間加熱して、光沢度を測定した。結果を表1に示した。
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、(B)成分として炭酸カルシウムが付着したプラスチックバルーンを配合した実施例では、光沢度が低減された硬化物を得られやすい。また、本発明の艶消しシリコーンゴム組成物を硬化する際に、室温で所定時間放置してから加熱硬化させることで、シリコーンゴム組成物と比べて真比重の小さい(B)成分を十分に浮上させることができるため、少量の添加で光沢度のより低い硬化物を得ることができる。
【0051】
したがって、中空体表面に無機粉体を付着させた艶消し剤を配合した艶消しシリコーンゴム組成物は、上記特性を有するため、常温で十分な流動性を有し、加熱硬化により表面が艶消しされた硬化物を形成することができるので、LEDなどの電気・電子部品用ポッティング材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)付加反応硬化型シリコーンゴム組成物100重量部に対して、(B)合成樹脂製中空体の表面に無機粉体を付着した艶消し剤を0.1〜10重量部含有し、25℃における粘度が0.5〜50Pa・sであることを特徴とする艶消しシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
さらに、顔料を(A)成分100重量部に対して0.5〜10重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の艶消しシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の真比重が、0.1〜0.3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の艶消しシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記(B)成分の平均粒径が、10〜200μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の艶消しシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の前記無機粉体が、金属酸化物又は金属塩であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の艶消しシリコーンゴム組成物。
【請求項6】
電気・電子部品用ポッティング材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の艶消しシリコーンゴム組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の艶消しシリコーンゴム組成物を基材にポッティングする工程と、
前記ポッティングされた層の上部に前記(B)成分が移行するように室温で放置する工程と、
前記(B)成分が上部に移行した艶消しシリコーンゴム組成物を加熱して硬化させる工程と
を具備することを特徴とする艶消しシリコーンゴムの製造方法。

【公開番号】特開2008−31217(P2008−31217A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203636(P2006−203636)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】