説明

艶消し樹脂組成物

【目的】 艶消しされ外観の優れた成形品が得られる、ポリエステル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物を提供する。
【構成】 (A)ポリエステル系樹脂 5〜99重量部および(B)二重結合を有するポリカーボネート系樹脂またはこれとポリカーボネート系樹脂 1〜95重量部を含む樹脂組成物。(A)および(B)の合計100重量部を、(C)ラジカル開始剤 0.005〜1.0重量部の存在下に溶融混練する、艶消し樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、艶消し成形品を得るための、ポリエステル系樹脂およびポリカーボネート(以下で、PCと称することがある)系樹脂を含む樹脂組成物および艶消し樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル系樹脂にポリカーボネート系樹脂をブレンドした樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱変形性、耐薬品性等に優れた材料として知られており、広く使用されている。そのうち、自動車外装部品、例えばアウトサイドドアハンドル、自動車内装におけるインストルメントパネルのように光沢を抑えることが望まれる場合がある。光沢を抑え、艶消しされた部品を得る方法としては、金型面の改良、艶消し塗装による方法等がとられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの方法では十分な結果が得られていないのが現状である。すなわち、金型面の改良では金型の補修、管理が難しく、また成形条件によっても艶の状態が変り、一定の艶の成形品を得ることは難しい。
【0004】そこで本発明は、艶消しされ外観の優れた成形品が得られる、ポリエステル系樹脂およびPC系樹脂を含む樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、艶消し樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリエステル系樹脂およびPC系樹脂を含む樹脂組成物から得られる成形品の外観の改良について鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含むポリカーボネート系樹脂およびポリエステル系樹脂は、ラジカル開始剤の存在下で溶融混練すると、艶消しされた外観を有する成形品材料として用いることができ、しかも機械的物性にも優れていることを見出し、本発明に至った。
【0006】すなわち本発明は、(A)ポリエステル系樹脂 5〜99重量部、ならびに(B)分子内に(a) 炭素‐炭素二重結合および(b) 次式−C(=O)−Cl、−C(=O)−Br、−C(=O)−OH、−OH、−O−C(=O)−Clおよび−O−C(=O)−Brから選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物を、共重合成分もしくは末端封止剤として含むポリカーボネート系樹脂またはこれとポリカーボネート系樹脂 95〜1重量部含む樹脂組成物を提供するものである。
【0007】本発明で用いられる(A)ポリエステル系樹脂としては、公知のものを用いることができる。なかでも、芳香族ポリエステル樹脂およびポリエーテルエステル系ブロック共重合体(ポリエステルエラストマー)を使用するのが好ましい。
【0008】上記芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステルで、芳香族ジカルボン酸およびジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主成分とする重縮合反応により得られる重合体もしくは共重合体である。
【0009】ここで、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン-2,5- ジカルボン酸、ナフタレン-2,6- ジカルボン酸、ビフェニル-2,2′- ジカルボン酸、ビフェニル-3,3 ′- ジカルボン酸、ビフェニル-4,4′- ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4′- ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4′- ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン-4,4′- ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン-4,4′- ジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4′- ジカルボン酸、アントラセン-2,5- ジカルボン酸、アントラセン- 2,6-ジカルボン酸、p-ターフェニレン-4,4 ′- ジカルボン酸、ピリジン-2,5- ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
【0010】これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパン-1,3- ジオール、ジエトレングリコール、トリエチレングリコール、などの脂肪族ジオール、シクロヘキサン-1,4- ジメタノールなどの脂環式ジオール等、およびそれらの混合物などがあげられる。なお、少量であれば、分子量400 〜6,000 の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ- 1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめても良い。具体例な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン-1,2- ビス(フェノキシ)エタン- 4,4 ′- ジカルボキシレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等を挙げることができる。また、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート等の共重合ポリエステルを使用することもできる。これらのうち、好ましくはポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートであり、特に好ましくはポリブチレンテレフタレートである。
【0011】また、上記ポリエーテルエステル系ブロック共重合体(ポリエステルエラストマー)としては、特開昭52-50347号公報に記載されている公知のものを使用することができる。このポリエーテルエステル系ブロック共重合体は、(イ)ジカルボン酸成分、(ロ)低分子量グリコール成分、および(ハ)ポリオキシアルキレングリコール成分から構成される。
【0012】前記(イ)として用いられるジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましい。好ましい芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-1,5- ジカルボン酸、ナフタレン-2,6- ジカルボン酸、ナフタレン-2,7- ジカルボン酸、ビフェニル-4,4′- ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン-4,4′- ジカルボン酸、フェノキシエタン-4,4′- ジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族および脂環式ジカルボン酸とこれらの混合物を用いることもできる。
【0013】前記(ロ)として用いられる低分子量グリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール、4,4 ′- ビス- β- ヒドロキシエトキシビスフェノールA、4,4 ′- ビス- β- ヒドロキシエトキシジフェニルスルホン等の芳香族基を有するグリコールおよびシクロヘキサンジメタノール等の脂環式基を有するグリコールを挙げることができる。このなかで、好ましいグリコールは脂肪族グリコールである。
【0014】前記(ハ)成分としては、好ましくは平均分子量500 〜5,000 のポリオキシアルキレングリコールが用いられ、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコールおよびポリオキシヘキサメチレングリコール等、またはこれらの共重合体があげられる。
【0015】また、本発明で用いられるポリエーテルエステル系ブロック共重合体には、特表昭62-501365 号公報に開示されている公知のポリエーテルイミドエステルブロック共重合体が含まれる。好ましいポリエーテルイミドエステルブロック共重合体の具体例としては、ポリ(プロピレンエーテル)ジアミン、ブタンジオールジメチルテレフタレート、および無水トリメリット酸からチタネートエステル触媒を用いて製造される共重合体を挙げることができる。
【0016】前記芳香族ポリエステル樹脂およびポリエーテルエステル系ブロック共重合体は、本発明の樹脂組成物中に、組成比(芳香族ポリエステル樹脂/ポリエーテルエステル系ブロック共重合体)9〜0.1 で含まれることが好ましい。
【0017】次に、本発明で使用する(B)ポリカーボネート系樹脂には、芳香族ポリカーボネートの他にコポリエステルカーボネート等をも包含する。
【0018】ポリカーボネートはカーボネート成分およびジフェノール成分を含む。カーボネート成分を導入するための前駆物質としては、例えばホスゲン、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。また、適したジフェノールとしては、ヘテロ原子を有していても良く、かつポリカーボネート製造の条件下に不活性でありかつ電磁波の影響に対して不活性である置換基を有していても良い単核および多核ジフェノールの両方である。例えばヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニル、ビス-(ヒドロキシフェニル)-アルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-シクロアルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルフィド、ビス-(ヒドロキシフェニル)-エーテル、ビス-(ヒドロキシフェニル)-ケトン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルホキシド、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルホンおよびα,α´‐ビス-(ヒドロキシフェニル)-ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの環‐アルキル化ならびに環‐ハロゲン化化合物を挙げることができる。
【0019】好適なジフェノールは以下のものである:4,4'- ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆるビスフェノールA)、2,4'- ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2- メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α´‐ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス(3-メチル-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス -(3,5- ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス -(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス -(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)-2- メチルブタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α´‐ビス-(3,5-ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4- ヒドロキシフェニル)プロパン。
【0020】特に好適なジフェノールの例は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス -(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4- ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンである。上記のジフェノールの任意の好ましい組合せをも使用することができる。 上記の単量体ジフェノールに加えて、付随的にポリカーボネートの合成の条件下に重合反応を受けることができる2つの末端基を有するオリゴマーまたはポリマーを使用することも可能である。この様な末端基は、例えばフェノール性のOH基、クロロ炭酸エステル基およびカルボン酸クロリド基である。このような反応性の基をすでに有しているか、または適当な後処理によってこのような基を生ぜしめることができる予め調製したオリゴマーまたはポリマー状のブロックは、例えばポリシロキサン、例えば水素化した2量体状脂肪酸に基づく飽和脂肪族ポリエステルのような、脂肪族ジオールと飽和脂肪族または芳香族ジカルボン酸に基づく重縮合物、芳香族ポリエーテルスルホンおよび脂肪族ポリエーテルである。 流動性改善のためには、少量、好ましくは0.05〜2.0モル%(使用するジフェノールのモル数に対して)の量の、3官能性またはそれ以上の官能性を有する化合物、特に3以上のフェノール性水酸基を有する化合物をも、公知のようにして付随的に使用することができる。
【0021】3以上のフェノール性水酸基を有する、使用可能な化合物のいくつかの例は、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)- ベンゼン、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)- エタン、2,6-ビス-(2-ヒドロキシ-5- メチル- ベンジル)-4-メチルフェノール、2-(4- ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-オルトテレフタル酸エステル、テトラ-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、ヘキサ-(4-(2-(4-ヒドロキシフェニル)-プロプ-2- イル)-フェニル)-オルトテレフタル酸エステル、テトラ-(4-ヒドロキシフェニル)-メタンおよび1,4-ビス(4',4''-ジヒドロキシ- トリフェニル)-メチル)-ベンゼンである。その他のいくつかの3官能性化合物は、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸クロリドおよび3,3-ビス-(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)-2-オキソ-2,3- ジヒドロ- インドールである。
【0022】コポリエステルカーボネートとしては特に、次式(化1):
【0023】
【化1】


および次式(化2):
【0024】
【化2】


上記式中、RおよびR´はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、一価の炭化水素基または炭化水素オキシ基であり、Wは二価の炭化水素基、−S−、−S−S−、−O−、−S(=O)−、−(O=)S(=O)−、または−C(=O)−であり、nおよびn´はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、Xは炭素数6〜18を有する二価の脂肪族基であり、bは0または1である、で示される構造単位を有し、かつ前記(化2)の構造単位の量は(化1)および(化2)の構造単位の合計量の2〜30モル%を占めるところのコポリエステルカーボネートが好ましい。上記式中のハロゲン原子としては、例えば塩素原子または臭素原子等が挙げられる。一価の炭化水素基としては、炭素数1〜12を有するアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、デシル基等;炭素数4〜8を有するシクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等;炭素数6〜12を有するアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等;炭素数7〜14を有するアラルキル基、例えばベンジル基、シンナミル基等;または炭素数7〜14を有するアルカリール基、例えば、トリル基、クメニル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基である。また炭化水素オキシ基の炭化水素基は前記した炭化水素基を挙げることができる。そのような炭化水素オキシ基としては、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基またはアルカリールオキシ基であり、アルコキシ基およびアリールオキシ基が好ましい。また、Wが二価の炭化水素基の場合には、炭素数1〜30を有するアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、オクタメチレン基等、炭素数2〜30を有するアルキリデン基、例えばエチリデン基、プロピリデン基等、または、炭素数6〜16を有するシクロアルキレン基、例えばシクロヘキシレン基、シクロドデシレン基等もしくはシクロアルキリデン基、例えばシクロヘキシリデン基等である。
【0025】上記式(化2)で示される構成単位は、ジフェノール成分および二価酸成分からなる。ジフェノール成分の導入については、上記したのと同様のジフェノールを使用できる。二価酸成分を導入するために使用するモノマーとしては、二価の酸またはその等価物質である。二価の酸としては例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族二酸である。この二価の酸またはその等価物質は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであっても良い。脂肪族二酸は、α、ω‐ジカルボン酸が好ましい。そのような二価の酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、セバシン酸およびドデカン二酸が特に好ましい。また、等価物質としては、上記した二価の酸の、例えば酸クロリドのような酸ハライド、例えばジフェニルエステルのようなジ芳香族エステル等が挙げられる。ただし、エステルのエステル部分の炭素数は、上記した酸の炭素数には含めない。上記した二価の酸またはその等価物質は、単独でも良く、また2種以上の組合せであっても良い。
【0026】上記のコポリエステルカーボネートは、(化1)(化2)で示される上記した2種の構成単位を次の割合で有している。すなわち、(化2)で示される構成単位の量が、(化1)および(化2)の合計量の2〜30モル%、好ましくは5〜25モル%、さらに好ましくは7〜20モル%である。
【0027】コポリエステルカーボネートの重量平均分子量は、通常10,000〜100,000 、好ましくは18,000〜40,000である。ここでいう重量平均分子量とは、ポリカーボネート用に補正されたポリスチレンを用いて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定されたものである。また、メチレンクロリド中、25℃で測定した固有粘度が、0.35〜0.65 dl/g であるものが好ましい。
【0028】上記のコポリエステルカーボネートは、公知のポリカーボネートの製造方法、例えばホスゲンを用いる界面重合法、溶融重合法等によって製造できる。例えば、クイン(Quinn)の米国特許第4,238,596 号明細書ならびにクインおよびマルケジッヒ(Markezich)の米国特許第4,238,597 号明細書に記載された方法で製造することができる。具体的には、まず、エステル形成基とジフェノールとの反応に先立ち酸ハライドを形成し、次いでホスゲンと反応させる。なお、ゴールドベルグ(Goldberg)の塩基性溶液法(米国特許第3,169,121 号明細書)では、ピリジン溶媒が使用でき、またジカルボン酸が用いられる。α、ω‐ジカルボン酸(例えばセバシン酸)のジエステル、(例えばジフェニルエステル)を使用する溶融重合法もまた使用できる。好ましい製造方法は、米国特許第4,286,083 号明細書のコカノウスキー(Kochanowski) の改良法である。この方法では、アジピン酸のような低級の二酸をあらかじめ塩の形(好ましくはナトリウム塩のようなアルカリ金属塩)にしておき、ジフェノールが存在する反応容器に添加する。ホスゲンとの反応中、水相をアルカリ性のpH、好ましくは約pH8〜9に保持し、次いでホスゲンとの反応の残り最小限約5%のところで、pH10〜11に上げる。
【0029】界面重合法、例えばビスクロロフォーメート法による場合には、ポリカーボネートやコポリエステルカーボネートの合成において良く知られている一般的な触媒系を使用するのが好ましい。主な触媒系としては、第3級アミン、アミジンまたはグアニジンのようなアミン類が挙げられる。第3級アミンが一般的に使用され、その中でもトリエチルアミンのようなトリアルキルアミンが特に好ましい。
【0030】また、上記したポリカーボネート系樹脂には、分子量調整のための末端封止剤として、例えばフェノール、p-t-ブチルフェノール、イソノニルフェノール、イソオクチルフェノール、m-またはp-クミルフェノール(好ましくはp-クミルフェノール)、クロマニル化合物等を使用できる。
【0031】本発明においては、上記のポリカーボネート系樹脂に、分子内に(a) 炭素‐炭素二重結合および(b) 次式−C(=O)−Cl、−C(=O)−Br、−C(=O)−OH、−OH、−O−C(=O)−Clおよび−O−C(=O)−Brから選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物が、共重合成分もしくは末端封止剤として含まれるポリカーボネート、すなわちその構造内に炭素‐炭素二重結合を有するポリカーボネート系樹脂を使用する。特に、このような化合物で末端を封止した、末端部分に二重結合を有するポリカーボネートが好ましい。そのような二重結合を有するポリカーボネート系樹脂は、上記したカーボネート成分の前駆物質とジフェノールとを重合させてポリカーボネート系樹脂を製造する際に、上記の化合物を存在させることによって得られる。そのような化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和モノ脂肪族カルボン酸およびマレイミド安息香酸ならびにこれらの酸ハロゲン化物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびこれらの酸ハロゲン化物;イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、マレイミドフェノール等およびこれらのハロゲノ炭酸エステル類等が挙げられる。これらを単独でまた混合物として使用できる。末端に上記化合物を共重合したポリカーボネートを製造するためには、上記した化合物のうち、不飽和モノ脂肪族カルボン酸およびマレイミド安息香酸ならびにこれらの酸ハロゲン化物;イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、マレイミドフェノール等およびこれらのハロゲノ炭酸エステル類等を使用するのが好ましい。
【0032】上記した共重合成分もしくは末端封止剤となる化合物は、原料ジフェノール1モルに対して通常0.001〜0.2モル、好ましくは0.002〜0.1モル添加する。
【0033】本発明における成分(B)としては、上記した二重結合を有するポリカーボネート系樹脂のみを使用するか、またはこれと従来の(未変性の)ポリカーボネート系樹脂の両方を使用する。両者の配合比率は、末端に二重結合を有するポリカーボネート系樹脂0.5〜100重量部に対して従来のポリカーボネート系樹脂0〜99.5重量部である。好ましくは、末端に二重結合を有するポリカーボネート系樹脂1〜20重量部に対して従来のポリカーボネート系樹脂80〜99重量部である。
【0034】上記した成分(A)および(B)の配合比率は、(A)5〜99重量部に対して(B)を95〜1重量部、好ましくは(A)30〜97重量部に対して(B)を70〜3重量部である。
【0035】本発明の樹脂組成物には、上記の成分の他に、その物性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて樹脂の混合時、成形時に、慣用の他の添加剤、例えば顔料、染料、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維など)、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタンなど)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤等を添加することができる。
【0036】本発明の樹脂組成物を製造するための方法に特に制限はなく、通常の方法が満足に使用できる。しかしながら一般に溶融混合法が望ましい。少量の溶剤の使用も可能であるが、一般に必要ない。装置としては特に押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を例として挙げることができ、これらを回分的または連続的に運転する。成分の混合順は特に限定されない。
【0037】本発明で使用する成分(C)ラジカル開始剤としては例えば、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、パラメンタンヒドロパーオキシド、ジ- t-ブチルヒドロパーオキシド等の有機パーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0038】成分(C)は、成分(A)および(B)の合計100重量部に対して0.005〜1.0重量部、好ましくは0.01〜0.3重量部配合される。(C)の量が0.005重量部未満では低光沢樹脂組成物を得るのに不十分であり、1.0重量部より多いと樹脂の劣化を招く。
【0039】上記した(A)および(B)を含む樹脂組成物を(C)ラジカル開始剤の存在下で溶融混練することによって、艶消し樹脂組成物を得ることができる。この艶消し樹脂組成物を成形して得られた製品は、艶消しされ光沢の減ぜられた外観を有する。なお、(A)および(B)を混練して得られたものに(C)を加えて再び混練しても、また、3者を同時に溶融混練してもよい。
【0040】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】なお、実施例においては次の化合物を使用した。
成分(A)
PBT:ポリブチレンテレフタレート(商標;バロックス、ゼネラルエレクトリック社製)
成分(B)
PC−1:Kasha Index(K.I.;米国特許第4,465,820 号明細書に記載の溶融粘度の測定法)(300℃/6分で測定)が3,400 のポリカーボネート(商標;レキサン、ゼネラルエレクトリック社製)
PC−2:以下のようにして製造した、末端部分に二重結合を有するポリカーボネート:イオン交換水6リットルおよび塩化メチレン7リットルの混合物に、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(すなわちビスフェノールA)2.28kg(10モル)、N-(p- ヒドロキシフェニル)マレイミド75.6kg(0.4モル)およびトリエチルアミン14mlを添加し、室温にて激しく撹拌した。次に、水酸化ナトリウム水溶液(50%)を添加して溶液のpHを10に保ちながら、この混合溶液に、60g/分の速度でホスゲンを20分間吹き込んだ。ホスゲン添加終了後、5分間撹拌し、次いで塩化メチレン溶液と水相を分離した。この塩化メチレン溶液を水で、次いで2%塩酸で、次いで再び水で洗浄した後、溶媒を除去し、残留した生成物を100℃で1晩乾燥させた。
【0042】得られた生成物のIR分析を行ったところ、1704cm-1にνC=O の吸収がみられた。また、H1 NMRの測定からは、マレイミドの二重結合炭素に結合する水素原子に対応するピークがδ6.85 ppmに見られた。GPCによる分子量測定からは、この生成物の数平均分子量が11,300、重量平均分子量が28,100であることがわかった。
【0043】PC−3:Kasha Index(300℃/6分)が13,000のポリカーボネート(商標;レキサン、ゼネラルエレクトリック社製)
成分(C)
クメンヒドロパーオキシド任意成分耐衝撃性改良剤:KM653(商標、ローム アンド ハース社製)
エステル交換抑止剤:NaH2 PO4 (SDPと略記する)
実施例1PBT 40重量部、PC−1 45重量部、PC−25重量部、耐衝撃性改良剤としてKM653 10重量部およびエステル交換抑止剤としてSDP0.3重量部混合し、バレル温度260℃、スクリュー回転数350rpm に設定した2軸押出機(30mm)で押出し、ペレットを作成した。このペレットを100℃で4時間乾燥後、シリンダー設定温度260℃、金型温度80℃で射出成形して試験片を作成した。これについて、アイゾット衝撃強度および光沢を測定したところ、アイゾット衝撃強度は66kg-cm/cmであり、光沢は81%であった。
【0044】なお、アイゾット衝撃強度は、ASTM D256 に従い、1/8 インチバー ノッチ付アイゾット衝撃強度を測定した。光沢は、光沢計(グロスメーター モデル GM−26D、村上色彩技術研究所製)を用いて入射角60°、反射角60°における光沢を測定した。
実施例2実施例1で製造したペレットに、クメンパ−オキシド0.05重量部を添加して、実施例1と同一条件で再び押出し、ペレットを作成した。このペレットを、100℃で4時間乾燥後、実施例1と同一条件で射出成形して試験片を作成した。これについて、アイゾット衝撃強度および光沢を測定した。結果を表1に示す。実施例3〜5および比較例1〜4 各成分を表1に示す割合(重量比)で混合し、実施例1と同一条件で押出してペレットを作成し、次いで乾燥後、実施例1と同一条件で射出成形して試験片を作成した。これについて、アイゾット衝撃強度および光沢を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】


【発明の効果】本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、艶消しされた表面外観を有し、しかも機械的物性にも優れているので、その用途は広く、工業的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ポリエステル系樹脂 5〜99重量部、ならびに(B)分子内に(a) 炭素‐炭素二重結合および(b) 次式−C(=O)−Cl、−C(=O)−Br、−C(=O)−OH、−OH、−O−C(=O)−Clおよび−O−C(=O)−Brから選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物を、共重合成分もしくは末端封止剤として含むポリカーボネート系樹脂またはこれとポリカーボネート系樹脂 95〜1重量部含む樹脂組成物。
【請求項2】 請求項1記載の樹脂組成物100重量部を、(C)ラジカル開始剤 0.005〜1.0重量部の存在下で溶融混練することを特徴とする艶消し樹脂組成物の製造方法。