説明

花卉苗の栽培方法及び栽培装置

【課題】
太陽光と補助光源とを併用して行う花卉苗の栽培方法において、より効率よく良い苗が安定的に生産できる栽培方法、更にはそれを実現するための栽培装置を提供すること。
【解決手段】
太陽光と補助光源とを併用した花卉苗の栽培方法であって、補助光源を用いて花卉苗に25μmol/m/s以上300μmol/m/s以下の光を照射する花卉苗の栽培方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花卉苗の栽培方法及び栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光は植物の生育に欠かせない要素であり、この光を供給する主たる光源は太陽光である。太陽光の日射量は夏季晴天時には約10万ルクスという膨大な量にもなり、冬季であっても晴天時であれば約5万ルクスの日射量となるため、極めて有用な光源である。
【0003】
しかし一方、上記太陽光を光源として用いた場合であっても、例えば冬季において曇雨天などの悪天候が長引いた場合、日射量の不足から植物の生長が遅延してしまうという問題がある。そこでこの日射量の不足に対し、補助光源として人工光源を用いる方法が考えられている。
【0004】
この従来の方法として、例えば下記特許文献1に、植物育成用の可視光線ランプと藻やカビの発生抑制用の紫外線ランプとを備えた植物育成装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−339236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の植物育成装置は、露地栽培やハウス栽培を対象としたものではなく、外光を遮断した空間内に植物苗を配置し、適切な温度環境及び光環境を常時人工的に提供して苗を育成する閉鎖型苗生産システムであり、太陽光と補助光源とを併用して行う栽培方法ではない。
【0007】
そこで、本発明は、太陽光と補助光源とを併用して行う花卉苗の栽培方法において、より効率よく良い苗が安定的に生産できる栽培方法、更にはそれを実現するための栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行い、太陽光と補助光源とを併用する栽培方法において、様々な光の照射量等に対する植物の育成状況を検討したところ、補助光源を用いる際、20000ルクス以上38000ルクス以下の範囲、より望ましくは25000ルクス以上38000ルクス以上とすることで、非常に効率よく花卉苗を栽培することができる点に想到し、本発明をするに至った。
【0009】
即ち、より具体的には、本発明に係る花卉苗の栽培方法は、太陽光と補助光源とを併用した花卉苗の栽培方法であって、補助光源を用いて花卉苗に光合成有効光量子束密度200μmol/m/s以上500μmol/m/s以下の光を照射することを特徴とする。この範囲の光照射量は、上記した光の照射量を達成でき花卉苗の育成に十分な量であるだけでなく、光照射に基づく熱エネルギーを花卉苗近傍に供給することができ、花卉苗近傍の温度の適正化に寄与し、良質な苗を安定的に供給させることが可能となる。また良質な花卉苗を短期間に生産することも可能となる。なおここで照射量は、花卉苗の設置面において測定した場合における照射量である。また、本発明の栽培対象とする花卉苗は特段に限定されるものではなく、種々の花卉苗に対して好適に用いることができるが、例えばアゲラタム、ペチュニア、ニチニチソウ、パンジー、マリーゴールド等が好適である。なお、より望ましい光合成有効光量子束密度の範囲としては300μmol/m/s以上500μmol/m/s以下である。
【0010】
またこの花卉苗の栽培方法において、補助光源は、近接照射することが望ましい。近接照射の範囲としては以下に限定されるわけではないが、50cm以上120cm以下離れて花卉苗に対し光を照射することも望ましい範囲である。上記の光合成有効光量子束密度の範囲にて目的を概ね達成することは可能であるが、補助光源が花卉苗からあまりに離れすぎてしまうと花卉苗近傍に対して熱エネルギーの供給を通じた適正化という効果が薄くなってしまう場合もあり、あまりに近づきすぎると植物に対して損傷を与えてしまう虞もあるため、花卉苗から50cm以上120cm以下離れた範囲で光を照射させることがより望ましい。なおここで上記花卉苗と補助光源との距離は、花卉苗の設置面からランプ中央までの距離とする。なお、花卉苗から補助光源までのより望ましい距離は80cm以上100cm以下である。
【0011】
またこの花卉苗の栽培方法において、補助光源として、高圧ナトリウムランプを用いることも好ましい態様である。高圧ナトリウムランプは極めて強い光量を提供することのできるランプであって、花卉苗に供給する光量とその光量を実現している状態において花卉苗に供給する熱エネルギー量のバランスが非常に優れており、より好ましい態様である。なお、高輝度放電灯としては例えば高圧ナトリウムランプ、水銀灯、メタルハライドランプがあり、これら単独でも、併用してもよい。
【0012】
また光の照射は、特段に限定されるわけではないが、夜間において3時間以上8時間以内行うことが望ましく、より望ましくは4時間以上7時間以内である。
【0013】
また、本発明に係る栽培装置は、太陽光と補助光源とを併用して花卉苗を栽培する栽培装置であって、前記補助光源は20000ルクス以上38000ルクス以下の光を花卉苗に照射することが可能であることを特徴の一つとする。この構成とすることにすることにより、上述した栽培方法を達成でき、より良質な苗が安定的に生産できる。なお、より望ましい照射量の範囲としては、25000ルクス以上38000ルクス以下である。適宜調整可能な部分はあるが、本発明は光合成有効光量子束密度を200μmol/m/s以上500μmol/m/s以下とすることで20000ルクス以上38000ルクス以下を達成しており、また、300μmol/m/s以上500μmol/m/s以下とすることで25000ルクス以上38000ルクス以下を達成することができている。
【0014】
また、本栽培装置において、補助光源からの光を花卉苗に向かって反射させる収納可能な反射部材と、を有することも望ましい。この構成とすることにより、昼間には反射部材を取り除いて太陽光を花卉苗に照射可能とする一方、日没後の夜間においては反射部材を配置してより効率のよい補助光の照射を花卉苗に行うことができ、更には、花卉苗周辺に反射部材を配置することで花卉苗周辺の温度条件を均一化することにも寄与する。なお反射部材としては、光源からの光を反射して花卉苗に照射させることができる限りにおいて特段の制限はないが、例えば光反射シート等が好適である。また反射部材の配置としても制限されるわけではないが、均一な光照射の観点からは花卉苗周辺全体を囲うよう反射部材を配置することはより望ましい態様である。
【0015】
また本栽培装置において、補助光源は、近接照射することが望ましく、より望ましくは花卉苗から50cm以上120cm以下だけ離れるよう配置されてなることも望ましく、補助光源として高輝度放電灯を用いてなることも望ましい態様である。なお、花卉苗から補助光源までのより望ましい距離は80cm以上100cm以下である。
【発明の効果】
【0016】
以上により、太陽光と補助光源とを併用して行う花卉苗の栽培方法において、より効率よく良い苗が安定的に生産できる栽培方法、更にはそれを実現するための栽培装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
図1は本実施形態に係る栽培装置の概略図である。本栽培装置1は、植物の苗などを載せるためのベンチ2と、このベンチに固定される支柱群3と、この支柱群3に固定され、ベンチ2に対して所定の距離を保ち、ベンチに対し光を照射可能に配置される複数の補助光源4と、支柱群3に設置され、必要に応じて補助光源からの光を反射させて花卉苗に向かわせる光反射カーテン5と、を有して構成されている。この構成を採用することにより、植物の苗などと光源とを一定の距離に保つことができ、安定した光量と熱エネルギーを供給することができ、良質な苗を安定して栽培することができるようになる。
【0019】
ベンチ2は、補助光源と花卉苗との距離を好適に保ち、花卉苗に照射される光の量を所望の範囲に保つために用いられるものであって必ずしも必須の要素ではないが、花卉苗の設置面(地面)のばらつきを防ぎ、花卉苗に照射する光量を安定させるためには極めて望ましい要素である。なおベンチ2には複数の穴が設けられるセルトレイを用いて花卉苗を配置することが好ましい。
【0020】
支柱群3は、補助光源と植物の苗との距離を一定に保つために必要な部材であって、一定に保つことができるものである限りにおいて支柱である必要は必ずしもなく、板や壁を要素として用いてもかまわない。但し、本栽培装置は太陽光と補助光源とを併用するものであるため、板や壁を用いる場合であっても昼間には太陽光を取り入れることができる程度に透明な部材であることが好適である。
【0021】
補助光源4は、植物の苗を安定に成長させるために必須な要素であり、植物に必要な光を供給するとともに、光源から放射される熱エネルギーによって植物の苗の成長を促進する。植物の花卉や苗の安定的な成長に必要な照射量としては20000ルクス以上の照射量、より望ましくは25000ルクス以上を実現できる必要がある。この照射量を達成することができる限り制限されるわけではないが、具体的には高圧ナトリウムランプ等の高輝度放電灯が好適である。また、光源とベンチとの距離は、光源の出力等によって異なるが、補助光源の出力が110w〜940wの高圧ナトリウムランプ(高輝度放電灯)である場合、概ね50cm以上120cm以下の範囲内にあることが望ましく、より望ましくは80cm以上100cm以下の範囲内である。補助光源の数は一つでも可能ではあるが、複数とすることが、花卉苗に照射される光や熱の均一性の観点から望ましい態様である。なお望ましい光合成有効光量子束密度としては200μmol/m/s以上500μmol/m/s以下、より望ましくは300μmol/m/s以上500μmol/m/s以下である。
【0022】
光反射カーテン5は、日没後の夜間において補助光源が使用される場合に、花卉苗とは異なる方向に漏れ出る光を反射させて花卉苗に向かわせるためのものであり、また、花卉苗周辺の温度条件を均一化することにも役立つ。光反射カーテン5は、昼間は太陽光を遮らないようにするため、本実施形態の例では支柱群3の梁部に収納可能となるよう設置されている。なお本実施形態では光反射カーテンを用いているが、温度条件のみを考慮するのであれば遮光カーテンとする構成も可能ではある。
【0023】
以上により、太陽光と補助光源とを併用して行う花卉苗の栽培方法において、より効率よく良い苗が安定的に生産できる栽培方法、更にはそれを実現するための栽培装置を提供することができる。
【0024】
なお、本実施形態の構成により、効率よい花卉苗育成のための光量の範囲を達成しつつそれと同時に熱エネルギーを供給して温度条件の適正化を図ることができるが、冬季における温度低下が補助光源による熱エネルギー供給を上回ることもあるため、補助的にヒーターを設けることも極めて望ましい態様である。
【実施例】
【0025】
以下、上記実施形態のより具体的な例を用いて本発明の効果について確認した。
(実施例1:ペチュニア苗の栽培)
本実施例はペチュニアについて冬季栽培を行った例である。ペチュニア品種としてはバカラサーモンを用い、種は市販のものを購入した。播種容器としては288孔セルトレイ(縦18.3mm×横18.3mm×深さ45.7mm、容積8.0ml)を、播種用土としてはSIERRA LIORTICULTURAL PRODUCTS COMPANY製のメトロミックス 350を用い、セルトレイの各孔に播種を行った。子葉展開後、このセルトレイをベンチに配置した。
【0026】
ベンチは幅94cm、長さ26m、地上からの高さ63cmとし、補助光源の高さは補助光源の中央からベンチまで98cmとなるようにした。光反射カーテンはベンチの端より20cm離して配置し、高さは130cm(補助光源の高さより20cm高い)とした。
【0027】
補助光源としては高圧ナトリウムランプ(NH110FL(110W)、NH220FL(220W)、NH360FL(360W)、NH940FL(940W)、松下電器製)を用い、光反射カーテンとしてはXLSスクリーン(XLSオブスキュラ、誠和製)を用いた。また、本栽培装置は栽培ハウス内に設置することで行ったが、栽培ハウス内の温度が18℃以下となった場合、栽培ハウス内の温度を18℃に保つべくヒーターを設けることにより行った。
【0028】
また、本発明の効果を確認すべく、ベンチを複数の区に分けた。具体的には補助光源による補光を行わない試験区1、補助光源としてNH110FLを用いた試験区2、補助光源としてNH220FLを用いた試験区3、補助光源としてNH360FL(360W)を用いた試験区4、補助光源としてNH940FLを用いた試験区5の合計5区に分けた。なお各区のベンチ幅は94cm、長さは3.4mとした。なお、試験区2における照射量は59μmol/m/sであり、同様に試験区3では134μmol/m/s、試験区4では209μmol/m/s、試験区5では475μmol/m/sであった。
【0029】
更に各区においては、施肥と光量による栽培への影響も考慮すべく、更に各区を週1回施肥を行った週1回施肥区、週2回施肥を行った週2回施肥区、週3回施肥を行った週3回施肥区に分け、それぞれについて栽培を行った。
【0030】
補光は21日間行い(1月26日播種、2月4日補光開始、2月26日計測)、昼間は太陽光による光照射を、夜間は補助光源による補光を行った。補光は1日5時間行った。なお、光を照射する時間としては、適宜調整可能であるが、3時間以上8時間以下、更には4時間以上7時間以下であることがより望ましい。これら範囲にすることにより、花卉苗に照射される一日の平均の光の量を20000ルクス以上38000ルクス以下の範囲とすることができ、花卉苗の成長に好適な範囲となると考えられる。なおこれ以下であると光の照射量が足りず植物の生長抑制の効果を得る量が少なくなり、これ以上であると光の照射量が多すぎ植物の育成を阻害してしまう場合もあるためである。
【0031】
(計測項目)
計測項目として、本葉長、本葉幅、草丈、株幅、葉緑素値、生体重、乾物重を計測項目とした。本葉長は、茎から葉先までの長さ(縦方向)として補光開始から5日後、10日後、17日後に夫々計測した。また本葉幅は本葉における横方向の長さとして上記本葉長と同日に計測した。また株幅は一つの株の端から端までの長さを株幅として上記本葉長と同日に計測した。更に、草丈は、土表面から茎頂までの長さとして、補光開始から17日後に計測した。更に、葉緑素値は、葉緑素計(CHLOROPHYLL METER SPAD−502、ミノルタ株式会社製)を用いて補光開始から17日後に計測した。生体重は、全重量、地上部量、地下部量を計測した。全重量及び地上部量はデジタル計測器(Chyo Balance Corporation社製:30g及び300g)を用いて補光開始後17日目に計測し、地上部量は全重量から地上部量を引いた値とした。乾物重さは、地上部と地下部とにわけ、一個体ずつ薬包紙に包み、3ヶ月間乾燥させた後に上記のデジタル計測器により計測した。なお計測の際、10個体まとめて計測し、その平均値とした。
【0032】
上記の栽培及び計測の結果を表1に、試験区1及び5における補光開始から21日後のペチュニアについての写真を図2に示す。
【表1】

【0033】
この結果、試験区2〜5のいずれにおいても試験区1に比べ優位差が観測できたが、特に試験区4、5において顕著な有意差が確認できた。特に試験区5の生体重は、週2回施肥区において試験区1の約4倍、週3回施肥区においては試験区1の約3倍と非常に有意であった。以上、本発明による有用性を確認することができた。特に図1で示すように結果は目視により一目で分かるほどであった。上は試験区5、下は試験区1である。
【0034】
また、表2に本実施例に係る高圧ナトリウムランプによる試験区の気温上昇について確認を行った。結果を表2に示し、栽培期間のある一日における高圧ナトリウムランプが温度に及ぼす影響を図3に示す。
【表2】

【0035】
この結果によると、対照区(試験区1)に対し、いずれも放射熱により高い温度上昇を見て取ることができ、特に940W区(試験区5)においては8℃以上も温度上昇が見られた。上記結果により、この成長促進効果は補助光源による光照射と光源による熱エネルギーの相乗効果であると推察される。特に図2で示すように、試験区5(940W区)においては、温度の上昇が極めて高く、花卉苗の成長に著しく寄与するものと推察される。
【0036】
(実施例2:パンジー苗の栽培)
本実施例はパンジーについて冬季栽培を行った例である。パンジーの品種としてはFイオナ パープルアンドホワイトを用い、種は市販のものを購入した。
【0037】
パンジーに対しては、2月4日に播種、2月15日に補光開始、3月11日計測した(補光は25日)。本葉長、本葉幅、株幅は補光開始から8日後、24日後(25日目)に行った。その他用いた器具、栽培方法、計測方法などはほぼ実施例1と同様である。この栽培の結果を表3に示す。
【表3】

【0038】
この結果、試験区1に対し、試験区2〜5のいずれにおいても、本葉長、葉面積、草丈、株幅、葉緑素値、生体重において有意差が見られ、特に、試験区4、5において顕著な有意差が確認できた。本発明の有用性を確認することができた。なお実施例1にて示した図1と同様、試験区1、3における栽培結果を図4に示す。上は試験区3における結果を、下は試験区1における結果を夫々示す。
【0039】
(実施例3:マリーゴールド苗の栽培)
本実施例はマリーゴールドについて冬季栽培を行った例である。マリーゴールドの品種としてはゲイトオレンジを用い、種は市販のものを購入した。
【0040】
マリーゴールドに対しては、2月11日に播種、2月15日に補光開始、3月2日計測した(補光は16日)。本葉長、本葉幅、株幅は補光開始から8日後、15日後(16日目)に行った。その他用いた器具、栽培方法、計測方法などはほぼ実施例1と同様である。この栽培の結果を表4に示す。
【表4】

【0041】
この結果、試験区1に対し、試験区2〜5のいずれにおいても、本葉長、葉面積、草丈、株幅、葉緑素値、生体重において有意差が見られ、特に、試験区4、5において顕著な有意差が確認できた。
【0042】
(実施例4:アゲラタム苗の栽培)
本実施例はアゲラタムについて冬季栽培を行った例である。アゲラタムの品種としてはブルーマリーを用い、種は市販のものを購入した。
【0043】
アゲラタムに対しては、2月27日に播種、3月4日に補光開始、3月22日計測した(補光は19日)。本葉長、本葉幅、株幅は補光開始から10日後、14日後、18日後(19日目)に行った。その他用いた器具、栽培方法、計測方法などはほぼ実施例1と同様である。この栽培の結果を表5に示す。
【表5】

【0044】
この結果、試験区1に対し、試験区2〜5のいずれにおいても、本葉長、葉面積、草丈、株幅、葉緑素値、生体重において有意差が見られ、特に、試験区4、5において顕著な有意差が確認できた。なお実施例1にて示した図1と同様、試験区1、3における栽培結果を図5に示す。上は試験区3における結果を、下は試験区1における結果を夫々示す。また、下記表6に高圧ナトリウムランプ補光時における気温についての表を示しておく。
【表6】

【0045】
(実施例5:ニチニチソウ苗の栽培)
本実施例はニチニチソウについて冬季栽培を行った例である。ニチニチソウの品種としてはパシフィカピンクを用い、種は市販のものを購入した。
【0046】
ニチニチソウに対しては、5月5日に播種、5月16日に補光開始、5月31日計測した(補光は16日)。本葉長、本葉幅、株幅は補光開始から9日後、15日後(16日目)に行った。その他用いた器具、栽培方法、計測方法などはほぼ実施例1と同様である。この栽培の結果を表7に示す。
【表7】

【0047】
この結果、試験区1に対し、試験区2〜5のいずれにおいても、本葉長、葉面積、草丈、株幅、葉緑素値、生体重において有意差が見られ、特に、試験区4、5において顕著な有意差が確認できた。なお実施例1にて示した図1と同様、試験区1、3における栽培結果を図6に示す。上は試験区3における結果を、下は試験区1における結果を夫々示す。また、下記表8に高圧ナトリウムランプ補光時における気温についての表を示しておく。
【表8】

【0048】
以上、本実施例により、太陽光と補助光源とを併用して行う花卉苗の栽培方法において、より効率よく良い苗が安定的に生産できる栽培方法、更にはそれを実現するための栽培装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】栽培装置の概略を示す図。
【図2】ペチュニアにおける栽培結果を示す図。
【図3】栽培期間のある一日における高圧ナトリウムランプが温度に及ぼす影響を示す図。
【図4】パンジーにおける栽培結果を示す図。
【図5】アゲラタムにおける栽培結果を示す図。
【図6】ニチニチソウにおける栽培結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光と補助光源とを併用した花卉苗の栽培方法であって、
前記補助光源を用いて花卉苗に光合成有効光量子束密度200μmol/m/s以上500μmol/m/s以下の光を照射する花卉苗の栽培方法。
【請求項2】
前記補助光源は、50cm以上120cm以下離れて花卉苗に対し光を照射することを特徴とする請求項1記載の花卉苗の栽培方法。
【請求項3】
前記補助光源として、高輝度放電灯を用いてなることを特徴とする請求項1記載の花卉苗の栽培方法。
【請求項4】
前記光の照射は、夜間において3時間以上8時間以内の範囲で行われることを特徴とする請求項1記載の花卉苗の栽培方法。
【請求項5】
太陽光と補助光源とを併用して花卉苗を栽培する栽培装置であって、
光合成有効光量子束密度200μmol/m/s以上500μmol/m/s以下の光を花卉苗に照射する補助光源を有する栽培装置。
【請求項6】
前記補助光源からの光を花卉苗に向かって反射させる収納可能な反射部材と、を有することを特徴とする請求項5栽培装置。
【請求項7】
前記補助光源は、花卉苗から50cm以上120cm以下離れるよう配置されてなることを特徴とする請求項5記載の栽培装置。
【請求項8】
前記補助光源は、高輝度放電灯を用いてなることを特徴とする請求項5記載の栽培装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−280313(P2006−280313A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106955(P2005−106955)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】