花器
【課題】花器において、切り花に供給する液体をこぼすことがなく、柔らかい茎の切り花であっても固定できるようにする。
【解決手段】液体容器20が土台10に固定され、次に、糸40の一方の端部が軸部32にある穴32Aに固定され、糸40が軸部32に螺旋状に巻き付けられる。糸40の端部のうち穴32Aに固定された側とは反対側の端部は穴31を通して蓋部31の底面31B側に引き出され、引き出された端部におもり50が固定される。次に、軸部32が支持部材60の貫通孔61の第2開口部61Cに差し入れられ、底面60Bと蓋部31の上面31Aとが接着される。次に、切り花に供給される液体が液体容器20の中空部21に注がれ、底面31B側に引き出された糸40と、この糸に固定されたおもり50とが、この液体中に入れられる。この後、蓋部31を、液体容器20の中空部21にはめ込むと鑑賞容器1が形成される。
【解決手段】液体容器20が土台10に固定され、次に、糸40の一方の端部が軸部32にある穴32Aに固定され、糸40が軸部32に螺旋状に巻き付けられる。糸40の端部のうち穴32Aに固定された側とは反対側の端部は穴31を通して蓋部31の底面31B側に引き出され、引き出された端部におもり50が固定される。次に、軸部32が支持部材60の貫通孔61の第2開口部61Cに差し入れられ、底面60Bと蓋部31の上面31Aとが接着される。次に、切り花に供給される液体が液体容器20の中空部21に注がれ、底面31B側に引き出された糸40と、この糸に固定されたおもり50とが、この液体中に入れられる。この後、蓋部31を、液体容器20の中空部21にはめ込むと鑑賞容器1が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に水分を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内で手軽に植物観賞ができるように、苔盆栽のような小型の鑑賞用植物が提供されている。また、屋内での植物鑑賞に鑑みて、植物観賞のために土を使用すると部屋を汚す虞があることから、土を使用せずにハイドロボールを使用した鑑賞用植物も提供されている。しかしながら、土やハイドロボールを用いて植物の栽培を行う場合、水分や養分の補給をたびたび行う必要があり手間がかかることから、屋内で植物観賞を行う際には水分補給の手間がかからない水栽培が好まれている。
【0003】
屋内で水栽培を行うための器としては、例えば、特許文献1〜4に開示された器がある。特許文献1には、切り花を水栽培するための器として、半径方向に切れ目が設けられた円柱状の弾性体と、水に浮かぶ物体とを有する器が開示されている。円柱状の弾性体は、水に浮かぶ物体の中央部に設けられた貫通孔にはめ込まれるようになっており、切れ目においては弾力を利用して花を挟むようになっている。花を挟んだ弾性体を水に浮かぶ物体の貫通孔にはめ込んで水に浮かせると、弾性体に挟まれた花の茎の切り口が水に浸ることとなり、手軽に一輪挿しを楽しむことができる。また、特許文献2〜4には、毛細管現象を利用して植物の培地に水分を吸い上げて水分供給を行う器が開示されている。これらの技術によれば、植物を観賞する者は水分補給を頻繁に行うことなく、容易に植物を観賞することができる。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3109311号公報
【特許文献2】実開昭59−132570号公報
【特許文献3】特開2001−320970号公報
【特許文献4】特開平8−9808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1,3,4に開示されている容器では、地震や人間が触れたりすると容器が倒れ、容器内にある水がこぼれてしまうという問題がある。
また、特許文献3,4に開示されている水栽培用の容器では、根を持った植物の栽培を想定しており、切り花のように根を有していない植物をうまく固定できず、切り花の鑑賞には適していないという問題がある。これに対し、特許文献1に開示されている容器によれば、弾性体に茎の部分を固定できるため、切り花の鑑賞にも使用できるが、茎の部分を固定する際には、茎の部分を保持する弾性体の切れ目部分を指で押し広げ、広げた切れ目部分に茎を入れるという面倒な作業を行う必要がある。一方、特許文献2に開示されている容器においては、中空柱体状の容器の内部に入れられた水の上方に、毛細管現象により吸い上げられた水分を保持する発泡状のブロック体が固着されており、このブロック体に茎を差し込めるようになっているため、切り花を容易に鑑賞することができる。しかしながら、切り花の中には茎が柔らかいものもあり、ブロック体に容易に差し込んで固定できないものもある。また、複数回使用する場合、複数回の茎の差し込みによりブロック体が劣化するため、ブロック体を交換するという面倒な作業を行わなければならない。
【0006】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、切り花に供給する液体をこぼすことがなく、柔らかい茎の切り花であっても固定できる水栽培用の花器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明は、柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、該第2中空部の底面から開口部の方向に向かう柱体形状の軸部と、該第2中空部の底面から開口部の方向とは反対方向に向かって該部材の外面へ貫通した貫通孔と、該軸部に巻き付けられ、前記貫通孔を通って該部材の外面へ引き出された糸とを有する部材を有し、前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、前記部材の外面に引き出された糸が第1中空部内に位置していることを特徴とする花器を提供する。
【0008】
また、本発明は、柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、多孔質な柱体形状の軸部であって、その一部が該第2中空部内にあり、該第2中空部の底面を通って該第2中空部の開口部とは反対の方向に向かって該部材を貫通した軸部とを有する部材を有し、前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、前記軸部のうち、前記第2中空部とは反対側に前記部材の外部に突き出ている部分が、前記第1中空部内に位置していることを特徴とする花器を提供する。
【0009】
上記花器においては、前記第2中空部の開口部から該第2中空部の底面に向かって複数の空間が形成されるように前記第2中空部を仕切る仕切部を有するようにしてもよい。
また、上記花器においては、前記第1中空部は、前記開口部から該第1中空部の底面に向かうにつれて狭くなっているようにしてもよい。
また、上記花器においては、前記軸部は、前記第2中空部の底面の位置から前記第2中空部の開口部に向かうにつれて細くなっており、前記第1中空部の形状は、円柱形状であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切り花に供給する液体をこぼすことがなく、柔らかい茎の切り花であっても固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る花器である鑑賞容器1の斜視図であり、図2は、鑑賞容器1の分解図である。この鑑賞容器1は、切り花を鑑賞するのに用いられる花器であり、図1,2に示したように、土台10、液体容器20、蓋30、糸40、おもり50、および支持部材60とにより構成されている。
【0012】
液体容器20は、切り花に供給する液体を蓄える容器であり、図2に示したように、その形状は円柱状となっている。液体容器20においては、長手方向の一方の端面に開口部が設けられており、長手方向のもう一方の端面は閉端面となっている。そして、開口部から閉端面に向かって円柱状の中空部21が設けられている。なお、液体容器20の材質は、中空部21に蓄えられた液体が液体容器20の外周面や底面20Bから外部に漏れ出ない材質であればよく、中空部21に注ぎ込まれた液体の量が目視できるように、プラスチックやガラス等の透明な材質であるのが好ましい。
【0013】
土台10は、鑑賞容器1が転倒するのを防ぐための部材であり、その形状は円盤状となっている。土台10の円形面10Aの中心部には、液体容器20の底面20Bが接着剤により固定される。
【0014】
蓋30は、液体容器20の中空部21の開口部を塞ぐためのものであり、例えば、弾性を有するゴムで形成されている。具体的には、この蓋30は、図3に示したように、円柱形状の蓋部31と、同じく円柱形状であって蓋部31より半径が短い軸部32とを有している。蓋部31には、この蓋部31の上面31Aから底面31Bへ貫通する穴31Cが設けられている。また、蓋部31の半径は、液体容器20における円柱形状の中空部21の半径より長くなっている。また、軸部32は、蓋部31の円形の上面31Aの中心部から垂直に起立するように設けられており、糸40が固定される穴32Aを有している。
【0015】
糸40は、例えば、綿糸であり、一方の端部が軸部32の穴32Aに固定されている。そして、図2に示したように、糸40は軸部32に螺旋状に巻き付けられ、軸部32に固定された端部と反対側の端部は、蓋部31の穴31Cを通って蓋部31の底面31B側に引き出されている。なお、糸40は、軸部32に螺旋状に巻き付けるときには糸と糸との間にすき間が生じないように巻き付けるのが好ましい。
【0016】
おもり50は、蓋部31の穴31Cから引き出された糸40の端部に取り付けられている。おもり50の材質は、液体容器20に注ぎ込まれる液体の密度より高い材質であり、この液体中に沈むものであればよく、プラスチック等の材質が好ましい。
【0017】
支持部材60は、鑑賞する切り花の茎を固定するための部材である。支持部材60の形状は円柱状であり、支持部材60においては、一方の円形の端面側からもう一方の円形の端面側に向かって貫通している貫通孔61が形成されている。この貫通孔61の形状は、円錐台状となっており、一方の第1開口部61Bの直径がもう一方の第2開口部61Cの直径より大きくなっている。なお、第2開口部61Cの直径は、糸40が巻き付けられた軸部32を差し入れることが可能な直径となっており、且つ、蓋部31の上面31Aの直径よりも小さくなっている。
【0018】
鑑賞容器1を組み立てる際には、まず、液体容器20が接着剤により土台10に固定される。次に、糸40の一方の端部が軸部32に設けられた穴32Aに固定され、糸40が軸部32に螺旋状に巻き付けられる。そして、糸40の端部のうち穴32Aに固定された側とは反対側の端部が穴31を通して蓋部31の底面31B側に引き出され、引き出された端部におもり50が固定される。そして、糸40が巻き付けられた軸部32が、支持部材60の貫通孔61の第2開口部61C(直径が小さい方の開口部)に差し入れられ、支持部材60の底面60Bと、蓋部31の上面31Aとが接着されて固定される。
【0019】
次に、切り花に供給される液体70(養分を含んだ液体または水)が液体容器20の中空部21に注がれ、蓋部31の底面31B側に引き出された糸40と、この糸に固定されたおもり50とが、この液体70中に入れられる。この後、蓋30の蓋部31を、液体容器20の中空部21にはめ込むと、図1に示したように鑑賞容器1が形成される。
【0020】
この鑑賞容器1においては、軸部32に巻き付けられている糸40と、支持部材60の内周面61Aとの間に切り花の茎が差し込まれ、図4に示したように切り花が糸40と内周面61Aとの間で固定され、切り花の茎の切り口が糸40に接触する。
【0021】
この鑑賞容器1においては、液体容器20中にある液体70は、糸40にて生じる毛細管現象によって糸40の全体に浸透する。軸部32に巻き付けられている糸40は、固定された切り花の茎の切り口に接触しているので、糸40に浸透した液体70が、茎の切り口に供給されて、切り花に液体70が供給される。
【0022】
また、この鑑賞容器1においては、蓋部31は弾性を有しており、その直径は、中空部21の直径より大きくなっている。このため、蓋部31が中空部21にはめ込まれると、蓋部31においては蓋部31の中心点から円周に向かう方向へ向かって、はめ込まれる前の大きさに戻ろうとする力が働き、蓋部31の周面が液体容器20の内周面に密着して固定される。このように蓋部31は液体容器20に密着して固定されるため、この状態で横倒しになったとしても、中空部21に注がれた液体が液体容器20の外部にこぼれ出すことがない。
【0023】
また、この鑑賞容器1においては、貫通孔61は、切り花が差し込まれる側の第1開口部61Bから蓋30側に向かうにつれて孔の直径が狭くなっていくため、切り花の茎が容易に固定されることとなる。また、蓋30は、液体容器20に対して何度も外したりはめ込んだりできるため、液体容器20の内部に液体70を簡単に注ぎこむことができ、何度でも液体70を補充して繰り返し使用することができる。また、鑑賞容器1は、部品数が少なく、各部品の構成も単純な形状であるため、小型化も可能であり、また、安価に製造することができる。
【0024】
また、鑑賞容器1においては、中空部21は液体70が注がれた後は蓋部31により密閉されるため、中空部21に注がれた液体70は、液体70が外気に触れる場合と比較して劣化しにくくなり、液体70の濁りや液体容器20内部の汚れが発生しにくくなる。また、鑑賞容器1は、単純な構造となっているため、汚れが発生したとしても容易に洗浄を行うことが可能であり、部品の交換を行うことなく繰り返し使用することができる。
また、鑑賞容器1においては、切り花の茎の切り口が液体70中に浸かることないので、切り口が液体70中に浸かっている場合と比較して切り口が腐食しにくくなり、切り花の鑑賞日数も、切り口が液体70中に浸かっている場合と比較して長くなる。
【0025】
本発明の発明者は、切り花を鑑賞できる鑑賞日数が容器の違いによって変化するか否かを調べるために試験を行ったので、以下、その試験について述べる。
試験に使用した容器は、容器内の液体が常時植物の茎および外気に触れる一般的な花瓶と、上述した鑑賞容器1であり、容器内に注ぐ液体としては、水道水と、切り花用の活力剤(商品名:キープフラワー)を水道水で50倍に薄めた溶液とを使用した。切り花としてはスプレーギクを使用し、一つの鑑賞容器1には3本のスプレーギクを差し込み、これを8個づつ用意して計24本のスプレーギクの鑑賞日数を観察し、また、花瓶においても同様に一つの花瓶には3本のスプレーギクを差し込み、これを8個づつ用意して計24本のスプレーギクの鑑賞日数を観察した。なお、各鑑賞容器1と花瓶は室内に置き、各切り花には植物育成用蛍光灯を一日につき12時間照射した。
【0026】
そして、発明者は、(1)花瓶に水道水を入れた場合と、(2)鑑賞容器1に水道水を入れた場合と、(3)花瓶に活力剤溶液を入れた場合と、(4)鑑賞容器1に活力剤溶液を入れた場合とで、切り花の鑑賞を開始してから日が経過する毎に鑑賞可能な切り花(鑑賞に耐えられる切り花)の数を数え、日が経過していくと鑑賞可能な切り花の数がどのように減少していくかを観察した。なお、切り花が鑑賞可能であるか否かを判断する基準としては、「(1)茎が90度以上折れ曲がってしまった場合は鑑賞不可」、「(2)花弁の5分の1以上が萎れるまたは落下した場合は鑑賞不可」というように2つの基準を設定し、切り花がこのいずれかの状態となったときは切り花が鑑賞不可となったと判断した。
【0027】
図5は試験結果を示した表であり、図6は試験結果をグラフにして表したものである。花瓶に水道水を入れて切り花を鑑賞したときは、5日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、17日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。一方、鑑賞容器1に水道水を入れて切り花を栽培したときは、7日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、18日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。また、花瓶に活力剤溶液を入れたときには、13日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、29日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。一方、鑑賞容器1に活力剤溶液を入れて切り花を栽培したときは、11日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、34日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。このように、一般的な花瓶と比較した場合、本実施形態に係る鑑賞容器1においては、切り花の鑑賞可能な日数が長くなっていることが分かる。
【0028】
なお、発明者は、切り花の観察を行うと共に、液体容器20に注がれた液体の観察も行った。花瓶に水道水を入れて切り花を鑑賞したときは、8個の花瓶の全てにおいて、水道水の濁りとカビの発生が見られた。また、花瓶に活力剤溶液を入れた場合、2つの花瓶において活力剤溶液に著しい濁りが見られ、残りの6つの花瓶においても活力剤溶液に濁りが見られた。また、5つの花瓶においてはカビが発生しているのが観察できた。一方、本実施形態に係る鑑賞容器1においては、水道水を使用した場合に3つの容器において切り花の茎の部分にカビが発生しているのが観察できた。しかしながら、水道水や活力剤溶液の濁りについては、いずれの液体を使用した場合でも濁りの発生は観察できなかった。
【0029】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、例えば、上述した実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0030】
液体容器20に注ぐ液体は、植物の成長に必要な成分を含むことが望ましい。また、この液体は、切り花の茎の腐敗を防ぐ成分を含むのが望ましい。
【0031】
上述した実施形態においては、糸40は、麻、絹、ポリ乳酸等の天然素材や、ポリエステル、ポリアミド系のナイロン等の化学素材であってもよい。要は、毛細管現象が生じるのであれば、綿に限定されず、様々な素材を使用することができる。なお、上述した実施形態において糸40の径は、径が大きくなると軸部32に巻き付けたときに糸と糸との間の凹部が大きくなり、植物の茎との接触性が低下するため、例えば、径は0.5mm〜1.2mmの径であるのが望ましい。
【0032】
上述した実施形態においては、液体容器20の形状は、円柱状ではなく、四角柱や多角柱、楕円柱など他の形状であってもよい。また、中空部21の開口部の形状も円ではなく、多角形であってもよい。この場合、蓋部31の形状も、中空部21の開口部の形状に合わせた形状にすることとなる。
【0033】
上述した実施形態においては、蓋30はゴムではなく、外部からの力を受けて変形するプラスチック等で形成されていてもよい。また、蓋30においては、軸部32は多孔体(セラミックス多孔体またはプラスチック焼結多孔体など)としてもよい。また、蓋30における軸部32の形状は、角錘や円錐、円錐台であってもよい。なお、軸部32の形状を図7に示したように円錐台状(または角錐や円錐)とした場合、支持部材60における貫通孔61の形状を図7に示したように円筒状としてもよい。
また、上述した実施形態においては、蓋30は軸部32を複数有していてもよい。
また、上述した実施形態においては、図8に示したように、多孔質の材質であって毛細管現象が生じる軸部32が蓋部31を貫通するようにし、蓋30を液体容器20にはめ込んだときに、蓋部31の底面31B側に突き出た軸部32が液体容器20中の液体に浸かるようにしてもよい。なお、このように、軸部32を多孔体とし、蓋部31を貫通するようにした態様においても、軸部32において蓋部31の上面31A側に位置する部分を、角錘や円錐、円錐台状としてもよい。
また、軸部32が蓋部31を貫通する構成においては、軸部32の周面に糸40を巻き付けるようにしてもよい。なお、蓋部31を貫通した軸部32に糸40を巻き付ける場合、軸部32を多孔質の材質としなくてもよい。また、蓋部31を貫通した軸部32に糸40を巻き付ける場合、蓋部31の底面31B側には糸40を巻き付けないようにしてもよい。
【0034】
上述した実施形態においては、支持部材60の長手方向に沿って支持部材60の内周面61Aに凹凸をもうけてもよい。また、円柱状の支持部材60の円周の方向に沿って内周面61Aに凹凸を設けるようにしてもよい。
【0035】
上述した実施形態においては、土台10を設けず、替わりに図9に示したように屈曲した板状の部材80を液体容器20に接着するようにしてもよい。この構成によれば、壁面などにおいて段差のある部分に板状の部材80を引っかけることができ、テーブルなどの水平な台上だけでなく、屋内の様々なところに切り花を飾ることができる。
また、土台10を設けないようにした場合、図10に示したように針90を液体容器20に設けるようにしてもよい。この構成によれば、針90を壁に刺すと鑑賞容器1が壁に固定されるため、テーブルなどの水平な台上だけでなく、屋内の様々なところに切り花を飾ることができる。
【0036】
上述した実施形態においては、図11に示したように、液体容器20の内周面にネジ山21Cを設けるとともに、蓋部31の周面にネジ山31Cを設け、雄ねじである蓋部31を雌ねじである液体容器20にねじこんで蓋部31を液体容器20に固定するようにしてもよい。
【0037】
上述した実施形態においては、糸40が液体容器20中の液体70に触れれば毛細管現象により液体70が切り花に供給されるため、糸40の端部におもり50をつけなくてもよい。
また、上述した実施形態においては、貫通孔61を円柱状にするとともに軸部32を円柱状にしてもよい。この場合、貫通孔61と軸部32に巻き付けられた糸40との間のすき間に入るように切り花の茎を斜めに切断するのが好ましい。
【0038】
上述した実施形態においては、図12に示したように支持部材60の内側に複数の仕切部62を設けるようにしてもよい。この仕切部62は、断面円形である支持部材60の半径方向と直交する方向に所定の厚さをもっており、貫通孔61の周面から貫通孔61の中心方向に突出して形成されている。仕切部62を複数備えた支持部材60を用いると、図13に示したように、支持部材60の内側は、軸部32と複数の仕切部62とにより複数の空間に仕切られることとなる。
この態様によれば、第1開口部61側から差し込まれた茎が横方向にずれたとしても、ずれた茎が仕切部62で止められて固定されることとなる。また、この態様によれば、硬い茎が挿入されて軸部32に強い力が掛かったとしても、軸部32が仕切部32により支持され軸部32にかかった力が仕切部32に分散するので、軸部32が折れることがない。
【0039】
なお、図12においては仕切部62の数は3つとなっているが、2つでもよく、また、4つ以上であってもよい。
また、仕切部62は、軸部32が第2開口部61C側から挿入された場合に、軸部32に巻き付けられた糸40に接触する構成であってもよい。また、軸部32が、上述したように多孔体である場合には、各仕切部62が軸32に接触する構成であってもよい。
これらの態様によれば、軸部32は仕切部62により支持されるため、硬い茎が挿入されて軸部32に強い力が掛かったとしても、軸部32が曲がることがない。
また、仕切部62を備える態様にあっては、図14に示したように仕切部62が支持部材60の内周面61Aに沿って螺旋状に形成されていてもよい。
また、仕切部62は、支持部材60ではなく、軸部32から支持部材60の内周面61Aに向かって形成されていてもよい。
要は、軸部32と支持部材60との間の空間を複数に仕切る構成であれば、図12や図14に示した構成に限定されず仕切部62は他の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に鑑賞容器1(花器)の斜視図である。
【図2】同実施形態に係る鑑賞容器1の分解図である。
【図3】同実施形態に係る鑑賞容器1を構成する蓋30の全体図である。
【図4】同実施形態に係る鑑賞容器1に切り花を差し込んだときの図である。
【図5】切り花の鑑賞日数に関する試験結果を表した図である。
【図6】切り花の鑑賞日数に関する試験結果を表したグラフである。
【図7】本発明の変形例に係る蓋30と支持部材60とを示した図である。
【図8】本発明の変形例に係る鑑賞容器1を示した図である。
【図9】本発明の変形例に係る鑑賞容器1を示した図である。
【図10】本発明の変形例に係る鑑賞容器1を示した図である。
【図11】本発明の変形例に係る蓋30と液体容器20とを示した図である。
【図12】本発明の変形例に係る支持部材60の一部破断図である。
【図13】本発明の変形例に係る鑑賞容器1に切り花を差し込んだときの図である。
【図14】本発明の変形例に係る支持部材60の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・鑑賞容器(花器)、10・・・土台、20・・・液体容器、30・・・蓋、40・・・糸、50・・・おもり、60・・・支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に水分を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内で手軽に植物観賞ができるように、苔盆栽のような小型の鑑賞用植物が提供されている。また、屋内での植物鑑賞に鑑みて、植物観賞のために土を使用すると部屋を汚す虞があることから、土を使用せずにハイドロボールを使用した鑑賞用植物も提供されている。しかしながら、土やハイドロボールを用いて植物の栽培を行う場合、水分や養分の補給をたびたび行う必要があり手間がかかることから、屋内で植物観賞を行う際には水分補給の手間がかからない水栽培が好まれている。
【0003】
屋内で水栽培を行うための器としては、例えば、特許文献1〜4に開示された器がある。特許文献1には、切り花を水栽培するための器として、半径方向に切れ目が設けられた円柱状の弾性体と、水に浮かぶ物体とを有する器が開示されている。円柱状の弾性体は、水に浮かぶ物体の中央部に設けられた貫通孔にはめ込まれるようになっており、切れ目においては弾力を利用して花を挟むようになっている。花を挟んだ弾性体を水に浮かぶ物体の貫通孔にはめ込んで水に浮かせると、弾性体に挟まれた花の茎の切り口が水に浸ることとなり、手軽に一輪挿しを楽しむことができる。また、特許文献2〜4には、毛細管現象を利用して植物の培地に水分を吸い上げて水分供給を行う器が開示されている。これらの技術によれば、植物を観賞する者は水分補給を頻繁に行うことなく、容易に植物を観賞することができる。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3109311号公報
【特許文献2】実開昭59−132570号公報
【特許文献3】特開2001−320970号公報
【特許文献4】特開平8−9808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1,3,4に開示されている容器では、地震や人間が触れたりすると容器が倒れ、容器内にある水がこぼれてしまうという問題がある。
また、特許文献3,4に開示されている水栽培用の容器では、根を持った植物の栽培を想定しており、切り花のように根を有していない植物をうまく固定できず、切り花の鑑賞には適していないという問題がある。これに対し、特許文献1に開示されている容器によれば、弾性体に茎の部分を固定できるため、切り花の鑑賞にも使用できるが、茎の部分を固定する際には、茎の部分を保持する弾性体の切れ目部分を指で押し広げ、広げた切れ目部分に茎を入れるという面倒な作業を行う必要がある。一方、特許文献2に開示されている容器においては、中空柱体状の容器の内部に入れられた水の上方に、毛細管現象により吸い上げられた水分を保持する発泡状のブロック体が固着されており、このブロック体に茎を差し込めるようになっているため、切り花を容易に鑑賞することができる。しかしながら、切り花の中には茎が柔らかいものもあり、ブロック体に容易に差し込んで固定できないものもある。また、複数回使用する場合、複数回の茎の差し込みによりブロック体が劣化するため、ブロック体を交換するという面倒な作業を行わなければならない。
【0006】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、切り花に供給する液体をこぼすことがなく、柔らかい茎の切り花であっても固定できる水栽培用の花器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明は、柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、該第2中空部の底面から開口部の方向に向かう柱体形状の軸部と、該第2中空部の底面から開口部の方向とは反対方向に向かって該部材の外面へ貫通した貫通孔と、該軸部に巻き付けられ、前記貫通孔を通って該部材の外面へ引き出された糸とを有する部材を有し、前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、前記部材の外面に引き出された糸が第1中空部内に位置していることを特徴とする花器を提供する。
【0008】
また、本発明は、柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、多孔質な柱体形状の軸部であって、その一部が該第2中空部内にあり、該第2中空部の底面を通って該第2中空部の開口部とは反対の方向に向かって該部材を貫通した軸部とを有する部材を有し、前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、前記軸部のうち、前記第2中空部とは反対側に前記部材の外部に突き出ている部分が、前記第1中空部内に位置していることを特徴とする花器を提供する。
【0009】
上記花器においては、前記第2中空部の開口部から該第2中空部の底面に向かって複数の空間が形成されるように前記第2中空部を仕切る仕切部を有するようにしてもよい。
また、上記花器においては、前記第1中空部は、前記開口部から該第1中空部の底面に向かうにつれて狭くなっているようにしてもよい。
また、上記花器においては、前記軸部は、前記第2中空部の底面の位置から前記第2中空部の開口部に向かうにつれて細くなっており、前記第1中空部の形状は、円柱形状であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切り花に供給する液体をこぼすことがなく、柔らかい茎の切り花であっても固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る花器である鑑賞容器1の斜視図であり、図2は、鑑賞容器1の分解図である。この鑑賞容器1は、切り花を鑑賞するのに用いられる花器であり、図1,2に示したように、土台10、液体容器20、蓋30、糸40、おもり50、および支持部材60とにより構成されている。
【0012】
液体容器20は、切り花に供給する液体を蓄える容器であり、図2に示したように、その形状は円柱状となっている。液体容器20においては、長手方向の一方の端面に開口部が設けられており、長手方向のもう一方の端面は閉端面となっている。そして、開口部から閉端面に向かって円柱状の中空部21が設けられている。なお、液体容器20の材質は、中空部21に蓄えられた液体が液体容器20の外周面や底面20Bから外部に漏れ出ない材質であればよく、中空部21に注ぎ込まれた液体の量が目視できるように、プラスチックやガラス等の透明な材質であるのが好ましい。
【0013】
土台10は、鑑賞容器1が転倒するのを防ぐための部材であり、その形状は円盤状となっている。土台10の円形面10Aの中心部には、液体容器20の底面20Bが接着剤により固定される。
【0014】
蓋30は、液体容器20の中空部21の開口部を塞ぐためのものであり、例えば、弾性を有するゴムで形成されている。具体的には、この蓋30は、図3に示したように、円柱形状の蓋部31と、同じく円柱形状であって蓋部31より半径が短い軸部32とを有している。蓋部31には、この蓋部31の上面31Aから底面31Bへ貫通する穴31Cが設けられている。また、蓋部31の半径は、液体容器20における円柱形状の中空部21の半径より長くなっている。また、軸部32は、蓋部31の円形の上面31Aの中心部から垂直に起立するように設けられており、糸40が固定される穴32Aを有している。
【0015】
糸40は、例えば、綿糸であり、一方の端部が軸部32の穴32Aに固定されている。そして、図2に示したように、糸40は軸部32に螺旋状に巻き付けられ、軸部32に固定された端部と反対側の端部は、蓋部31の穴31Cを通って蓋部31の底面31B側に引き出されている。なお、糸40は、軸部32に螺旋状に巻き付けるときには糸と糸との間にすき間が生じないように巻き付けるのが好ましい。
【0016】
おもり50は、蓋部31の穴31Cから引き出された糸40の端部に取り付けられている。おもり50の材質は、液体容器20に注ぎ込まれる液体の密度より高い材質であり、この液体中に沈むものであればよく、プラスチック等の材質が好ましい。
【0017】
支持部材60は、鑑賞する切り花の茎を固定するための部材である。支持部材60の形状は円柱状であり、支持部材60においては、一方の円形の端面側からもう一方の円形の端面側に向かって貫通している貫通孔61が形成されている。この貫通孔61の形状は、円錐台状となっており、一方の第1開口部61Bの直径がもう一方の第2開口部61Cの直径より大きくなっている。なお、第2開口部61Cの直径は、糸40が巻き付けられた軸部32を差し入れることが可能な直径となっており、且つ、蓋部31の上面31Aの直径よりも小さくなっている。
【0018】
鑑賞容器1を組み立てる際には、まず、液体容器20が接着剤により土台10に固定される。次に、糸40の一方の端部が軸部32に設けられた穴32Aに固定され、糸40が軸部32に螺旋状に巻き付けられる。そして、糸40の端部のうち穴32Aに固定された側とは反対側の端部が穴31を通して蓋部31の底面31B側に引き出され、引き出された端部におもり50が固定される。そして、糸40が巻き付けられた軸部32が、支持部材60の貫通孔61の第2開口部61C(直径が小さい方の開口部)に差し入れられ、支持部材60の底面60Bと、蓋部31の上面31Aとが接着されて固定される。
【0019】
次に、切り花に供給される液体70(養分を含んだ液体または水)が液体容器20の中空部21に注がれ、蓋部31の底面31B側に引き出された糸40と、この糸に固定されたおもり50とが、この液体70中に入れられる。この後、蓋30の蓋部31を、液体容器20の中空部21にはめ込むと、図1に示したように鑑賞容器1が形成される。
【0020】
この鑑賞容器1においては、軸部32に巻き付けられている糸40と、支持部材60の内周面61Aとの間に切り花の茎が差し込まれ、図4に示したように切り花が糸40と内周面61Aとの間で固定され、切り花の茎の切り口が糸40に接触する。
【0021】
この鑑賞容器1においては、液体容器20中にある液体70は、糸40にて生じる毛細管現象によって糸40の全体に浸透する。軸部32に巻き付けられている糸40は、固定された切り花の茎の切り口に接触しているので、糸40に浸透した液体70が、茎の切り口に供給されて、切り花に液体70が供給される。
【0022】
また、この鑑賞容器1においては、蓋部31は弾性を有しており、その直径は、中空部21の直径より大きくなっている。このため、蓋部31が中空部21にはめ込まれると、蓋部31においては蓋部31の中心点から円周に向かう方向へ向かって、はめ込まれる前の大きさに戻ろうとする力が働き、蓋部31の周面が液体容器20の内周面に密着して固定される。このように蓋部31は液体容器20に密着して固定されるため、この状態で横倒しになったとしても、中空部21に注がれた液体が液体容器20の外部にこぼれ出すことがない。
【0023】
また、この鑑賞容器1においては、貫通孔61は、切り花が差し込まれる側の第1開口部61Bから蓋30側に向かうにつれて孔の直径が狭くなっていくため、切り花の茎が容易に固定されることとなる。また、蓋30は、液体容器20に対して何度も外したりはめ込んだりできるため、液体容器20の内部に液体70を簡単に注ぎこむことができ、何度でも液体70を補充して繰り返し使用することができる。また、鑑賞容器1は、部品数が少なく、各部品の構成も単純な形状であるため、小型化も可能であり、また、安価に製造することができる。
【0024】
また、鑑賞容器1においては、中空部21は液体70が注がれた後は蓋部31により密閉されるため、中空部21に注がれた液体70は、液体70が外気に触れる場合と比較して劣化しにくくなり、液体70の濁りや液体容器20内部の汚れが発生しにくくなる。また、鑑賞容器1は、単純な構造となっているため、汚れが発生したとしても容易に洗浄を行うことが可能であり、部品の交換を行うことなく繰り返し使用することができる。
また、鑑賞容器1においては、切り花の茎の切り口が液体70中に浸かることないので、切り口が液体70中に浸かっている場合と比較して切り口が腐食しにくくなり、切り花の鑑賞日数も、切り口が液体70中に浸かっている場合と比較して長くなる。
【0025】
本発明の発明者は、切り花を鑑賞できる鑑賞日数が容器の違いによって変化するか否かを調べるために試験を行ったので、以下、その試験について述べる。
試験に使用した容器は、容器内の液体が常時植物の茎および外気に触れる一般的な花瓶と、上述した鑑賞容器1であり、容器内に注ぐ液体としては、水道水と、切り花用の活力剤(商品名:キープフラワー)を水道水で50倍に薄めた溶液とを使用した。切り花としてはスプレーギクを使用し、一つの鑑賞容器1には3本のスプレーギクを差し込み、これを8個づつ用意して計24本のスプレーギクの鑑賞日数を観察し、また、花瓶においても同様に一つの花瓶には3本のスプレーギクを差し込み、これを8個づつ用意して計24本のスプレーギクの鑑賞日数を観察した。なお、各鑑賞容器1と花瓶は室内に置き、各切り花には植物育成用蛍光灯を一日につき12時間照射した。
【0026】
そして、発明者は、(1)花瓶に水道水を入れた場合と、(2)鑑賞容器1に水道水を入れた場合と、(3)花瓶に活力剤溶液を入れた場合と、(4)鑑賞容器1に活力剤溶液を入れた場合とで、切り花の鑑賞を開始してから日が経過する毎に鑑賞可能な切り花(鑑賞に耐えられる切り花)の数を数え、日が経過していくと鑑賞可能な切り花の数がどのように減少していくかを観察した。なお、切り花が鑑賞可能であるか否かを判断する基準としては、「(1)茎が90度以上折れ曲がってしまった場合は鑑賞不可」、「(2)花弁の5分の1以上が萎れるまたは落下した場合は鑑賞不可」というように2つの基準を設定し、切り花がこのいずれかの状態となったときは切り花が鑑賞不可となったと判断した。
【0027】
図5は試験結果を示した表であり、図6は試験結果をグラフにして表したものである。花瓶に水道水を入れて切り花を鑑賞したときは、5日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、17日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。一方、鑑賞容器1に水道水を入れて切り花を栽培したときは、7日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、18日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。また、花瓶に活力剤溶液を入れたときには、13日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、29日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。一方、鑑賞容器1に活力剤溶液を入れて切り花を栽培したときは、11日目から鑑賞可能な切り花の数が減り始め、34日目には鑑賞可能な切り花の数が0本となった。このように、一般的な花瓶と比較した場合、本実施形態に係る鑑賞容器1においては、切り花の鑑賞可能な日数が長くなっていることが分かる。
【0028】
なお、発明者は、切り花の観察を行うと共に、液体容器20に注がれた液体の観察も行った。花瓶に水道水を入れて切り花を鑑賞したときは、8個の花瓶の全てにおいて、水道水の濁りとカビの発生が見られた。また、花瓶に活力剤溶液を入れた場合、2つの花瓶において活力剤溶液に著しい濁りが見られ、残りの6つの花瓶においても活力剤溶液に濁りが見られた。また、5つの花瓶においてはカビが発生しているのが観察できた。一方、本実施形態に係る鑑賞容器1においては、水道水を使用した場合に3つの容器において切り花の茎の部分にカビが発生しているのが観察できた。しかしながら、水道水や活力剤溶液の濁りについては、いずれの液体を使用した場合でも濁りの発生は観察できなかった。
【0029】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、例えば、上述した実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0030】
液体容器20に注ぐ液体は、植物の成長に必要な成分を含むことが望ましい。また、この液体は、切り花の茎の腐敗を防ぐ成分を含むのが望ましい。
【0031】
上述した実施形態においては、糸40は、麻、絹、ポリ乳酸等の天然素材や、ポリエステル、ポリアミド系のナイロン等の化学素材であってもよい。要は、毛細管現象が生じるのであれば、綿に限定されず、様々な素材を使用することができる。なお、上述した実施形態において糸40の径は、径が大きくなると軸部32に巻き付けたときに糸と糸との間の凹部が大きくなり、植物の茎との接触性が低下するため、例えば、径は0.5mm〜1.2mmの径であるのが望ましい。
【0032】
上述した実施形態においては、液体容器20の形状は、円柱状ではなく、四角柱や多角柱、楕円柱など他の形状であってもよい。また、中空部21の開口部の形状も円ではなく、多角形であってもよい。この場合、蓋部31の形状も、中空部21の開口部の形状に合わせた形状にすることとなる。
【0033】
上述した実施形態においては、蓋30はゴムではなく、外部からの力を受けて変形するプラスチック等で形成されていてもよい。また、蓋30においては、軸部32は多孔体(セラミックス多孔体またはプラスチック焼結多孔体など)としてもよい。また、蓋30における軸部32の形状は、角錘や円錐、円錐台であってもよい。なお、軸部32の形状を図7に示したように円錐台状(または角錐や円錐)とした場合、支持部材60における貫通孔61の形状を図7に示したように円筒状としてもよい。
また、上述した実施形態においては、蓋30は軸部32を複数有していてもよい。
また、上述した実施形態においては、図8に示したように、多孔質の材質であって毛細管現象が生じる軸部32が蓋部31を貫通するようにし、蓋30を液体容器20にはめ込んだときに、蓋部31の底面31B側に突き出た軸部32が液体容器20中の液体に浸かるようにしてもよい。なお、このように、軸部32を多孔体とし、蓋部31を貫通するようにした態様においても、軸部32において蓋部31の上面31A側に位置する部分を、角錘や円錐、円錐台状としてもよい。
また、軸部32が蓋部31を貫通する構成においては、軸部32の周面に糸40を巻き付けるようにしてもよい。なお、蓋部31を貫通した軸部32に糸40を巻き付ける場合、軸部32を多孔質の材質としなくてもよい。また、蓋部31を貫通した軸部32に糸40を巻き付ける場合、蓋部31の底面31B側には糸40を巻き付けないようにしてもよい。
【0034】
上述した実施形態においては、支持部材60の長手方向に沿って支持部材60の内周面61Aに凹凸をもうけてもよい。また、円柱状の支持部材60の円周の方向に沿って内周面61Aに凹凸を設けるようにしてもよい。
【0035】
上述した実施形態においては、土台10を設けず、替わりに図9に示したように屈曲した板状の部材80を液体容器20に接着するようにしてもよい。この構成によれば、壁面などにおいて段差のある部分に板状の部材80を引っかけることができ、テーブルなどの水平な台上だけでなく、屋内の様々なところに切り花を飾ることができる。
また、土台10を設けないようにした場合、図10に示したように針90を液体容器20に設けるようにしてもよい。この構成によれば、針90を壁に刺すと鑑賞容器1が壁に固定されるため、テーブルなどの水平な台上だけでなく、屋内の様々なところに切り花を飾ることができる。
【0036】
上述した実施形態においては、図11に示したように、液体容器20の内周面にネジ山21Cを設けるとともに、蓋部31の周面にネジ山31Cを設け、雄ねじである蓋部31を雌ねじである液体容器20にねじこんで蓋部31を液体容器20に固定するようにしてもよい。
【0037】
上述した実施形態においては、糸40が液体容器20中の液体70に触れれば毛細管現象により液体70が切り花に供給されるため、糸40の端部におもり50をつけなくてもよい。
また、上述した実施形態においては、貫通孔61を円柱状にするとともに軸部32を円柱状にしてもよい。この場合、貫通孔61と軸部32に巻き付けられた糸40との間のすき間に入るように切り花の茎を斜めに切断するのが好ましい。
【0038】
上述した実施形態においては、図12に示したように支持部材60の内側に複数の仕切部62を設けるようにしてもよい。この仕切部62は、断面円形である支持部材60の半径方向と直交する方向に所定の厚さをもっており、貫通孔61の周面から貫通孔61の中心方向に突出して形成されている。仕切部62を複数備えた支持部材60を用いると、図13に示したように、支持部材60の内側は、軸部32と複数の仕切部62とにより複数の空間に仕切られることとなる。
この態様によれば、第1開口部61側から差し込まれた茎が横方向にずれたとしても、ずれた茎が仕切部62で止められて固定されることとなる。また、この態様によれば、硬い茎が挿入されて軸部32に強い力が掛かったとしても、軸部32が仕切部32により支持され軸部32にかかった力が仕切部32に分散するので、軸部32が折れることがない。
【0039】
なお、図12においては仕切部62の数は3つとなっているが、2つでもよく、また、4つ以上であってもよい。
また、仕切部62は、軸部32が第2開口部61C側から挿入された場合に、軸部32に巻き付けられた糸40に接触する構成であってもよい。また、軸部32が、上述したように多孔体である場合には、各仕切部62が軸32に接触する構成であってもよい。
これらの態様によれば、軸部32は仕切部62により支持されるため、硬い茎が挿入されて軸部32に強い力が掛かったとしても、軸部32が曲がることがない。
また、仕切部62を備える態様にあっては、図14に示したように仕切部62が支持部材60の内周面61Aに沿って螺旋状に形成されていてもよい。
また、仕切部62は、支持部材60ではなく、軸部32から支持部材60の内周面61Aに向かって形成されていてもよい。
要は、軸部32と支持部材60との間の空間を複数に仕切る構成であれば、図12や図14に示した構成に限定されず仕切部62は他の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に鑑賞容器1(花器)の斜視図である。
【図2】同実施形態に係る鑑賞容器1の分解図である。
【図3】同実施形態に係る鑑賞容器1を構成する蓋30の全体図である。
【図4】同実施形態に係る鑑賞容器1に切り花を差し込んだときの図である。
【図5】切り花の鑑賞日数に関する試験結果を表した図である。
【図6】切り花の鑑賞日数に関する試験結果を表したグラフである。
【図7】本発明の変形例に係る蓋30と支持部材60とを示した図である。
【図8】本発明の変形例に係る鑑賞容器1を示した図である。
【図9】本発明の変形例に係る鑑賞容器1を示した図である。
【図10】本発明の変形例に係る鑑賞容器1を示した図である。
【図11】本発明の変形例に係る蓋30と液体容器20とを示した図である。
【図12】本発明の変形例に係る支持部材60の一部破断図である。
【図13】本発明の変形例に係る鑑賞容器1に切り花を差し込んだときの図である。
【図14】本発明の変形例に係る支持部材60の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・鑑賞容器(花器)、10・・・土台、20・・・液体容器、30・・・蓋、40・・・糸、50・・・おもり、60・・・支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、
柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、該第2中空部の底面から開口部の方向に向かう柱体形状の軸部と、該第2中空部の底面から開口部の方向とは反対方向に向かって該部材の外面へ貫通した貫通孔と、該軸部に巻き付けられ、前記貫通孔を通って該部材の外面へ引き出された糸とを有する部材
を有し、
前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、
前記部材の外面に引き出された糸が第1中空部内に位置していること
を特徴とする花器。
【請求項2】
柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、
柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、多孔質な柱体形状の軸部であって、その一部が該第2中空部内にあり、該第2中空部の底面を通って該第2中空部の開口部とは反対の方向に向かって該部材を貫通した軸部とを有する部材を有し、
前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、
前記軸部のうち、前記第2中空部とは反対側に前記部材の外部に突き出ている部分が、前記第1中空部内に位置していること
を特徴とする花器。
【請求項3】
前記第2中空部の開口部から該第2中空部の底面に向かって複数の空間が形成されるように前記第2中空部を仕切る仕切部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の花器。
【請求項4】
前記第1中空部は、前記開口部から該第1中空部の底面に向かうにつれて狭くなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の花器。
【請求項5】
前記軸部は、前記第2中空部の底面の位置から前記第2中空部の開口部に向かうにつれて細くなっており、前記第1中空部の形状は、円柱形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の花器。
【請求項1】
柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、
柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、該第2中空部の底面から開口部の方向に向かう柱体形状の軸部と、該第2中空部の底面から開口部の方向とは反対方向に向かって該部材の外面へ貫通した貫通孔と、該軸部に巻き付けられ、前記貫通孔を通って該部材の外面へ引き出された糸とを有する部材
を有し、
前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、
前記部材の外面に引き出された糸が第1中空部内に位置していること
を特徴とする花器。
【請求項2】
柱体形状の容器であって柱体形状のいずれかの面に開口した第1中空部を有する容器と、
柱体形状の部材であって、該部材のいずれかの外面に開口した第2中空部と、多孔質な柱体形状の軸部であって、その一部が該第2中空部内にあり、該第2中空部の底面を通って該第2中空部の開口部とは反対の方向に向かって該部材を貫通した軸部とを有する部材を有し、
前記第1中空部の開口部は、前記部材の第2中空部の開口部とは反対側の部位で塞がれており、
前記軸部のうち、前記第2中空部とは反対側に前記部材の外部に突き出ている部分が、前記第1中空部内に位置していること
を特徴とする花器。
【請求項3】
前記第2中空部の開口部から該第2中空部の底面に向かって複数の空間が形成されるように前記第2中空部を仕切る仕切部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の花器。
【請求項4】
前記第1中空部は、前記開口部から該第1中空部の底面に向かうにつれて狭くなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の花器。
【請求項5】
前記軸部は、前記第2中空部の底面の位置から前記第2中空部の開口部に向かうにつれて細くなっており、前記第1中空部の形状は、円柱形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の花器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−61757(P2008−61757A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241621(P2006−241621)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【特許番号】特許第3889034号(P3889034)
【特許公報発行日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(504283596)有限会社プラントライフデザイン (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【特許番号】特許第3889034号(P3889034)
【特許公報発行日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(504283596)有限会社プラントライフデザイン (2)
【Fターム(参考)】
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