説明

花粉症対策マンション用エアシャワー装置及びそれを備えた花粉症対策マンション

【課題】居室内に花粉等を持ち込むことを防止することができるとともに、マンションの風除室等に特段の床補強工事をすることなく簡便な作業で設置することができる花粉症対策マンション用エアシャワー装置を提供する。
【解決手段】エアシャワー装置は、複数の空気供給循環ダクト2と、空気供給循環ダクト2同士の側面間を仕切る複数のパネル3と、パネル3の一部を構成する扉4と、これらで囲まれた空間の上部を仕切るよう配置した機械室と、設置床面とによりエアシャワー室12を構成した組立構造をしている。各ジェット吹出口2aは、吹き出される清浄空気がジェット吹出口2aに正対する利用者の中心を外して吹き出すように設置されるとともに、ジェット吹出口2aの近傍に設けた吸込口2bにより汚染空気を迅速に吸い込む。また、利用者の自転を誘導するための誘導手段(表示灯)8を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション、アパート等の居住空間の出入口に設けて花粉症の原因となる花粉やその他の有害な粉塵等の居住空間への浸入を防御するための花粉症対策マンション用エアシャワー装置及び該エアシャワー装置を備えた花粉症対策マンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マンション、アパート等の居住空間の出入口に設けて花粉症の原因となる花粉等の浸入を防御するためのエアシャワー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示される花粉症防御システムでは、エレベーターの搭乗空間や回転ドアの歩行空間などの制限空間を利用して、この制限空間内にいる利用者に高速ジェットを吹き付けて、利用者の衣類や頭髪に付着した花粉等を除去するものである。
【0003】
また、特許文献2の換気システムでは、玄関扉の居室内側にハンドシャワーを取り付けたり(特許文献2の図12参照)、玄関扉のドアノブ側の側面にエアカーテン機能を付与して玄関扉を開けた時に吹き出したりすることにより(同図11参照)、居室内に花粉等で汚染された空気を侵入させない工夫をしている。
【0004】
【特許文献1】特開平4−58953号公報
【特許文献2】特開2005−3321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているエアシャワー装置では、エアシャワー装置本体部分が例えば約300kgもあり、搬入設置作業に大変な労力を要するという問題がある。しかも、300kg程度もあるエアシャワー装置では、通常のマンションの床の耐荷重の上限ギリギリとなってしまい、地震等により床が抜け落ちる危険性があるため、設置部分だけは別途補強工事する必要がある。新設するマンション等であれば設計時に補強部分を盛り込むこともできるものの、既設のマンションに設置する場合には大かがりな工事を行う必要があるという問題がある。
また、特許文献2に開示されているようなハンドシャワーを利用した場合には、利用者の体等に付着した花粉を十分に払い落とせないという問題があるばかりでなく、ハンドシャワーが居室内に設けられているので、玄関付近を払い落とした花粉で汚染してしまうという問題がある。さらに、特許文献2に開示されているエアカーテン機能を付与した玄関扉だけでは、花粉の浸入を完全に遮断できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、住居の屋外から住居へ入る際に、人体(髪の毛や衣類等)に付着した花粉を十分に払い落として居室内に花粉等を持ち込むことを防止することができるとともに、マンションの風除室あるいはエントランスホールに特段の床補強工事をすることなく簡便な作業で設置することができる花粉症対策マンション用エアシャワー装置を提供することを目的とする。
また、上記花粉症対策マンション用エアシャワー装置を利用して、外出した際に付着した花粉に汚染された人体から花粉を完全に除去するとともに、居室内では花粉除去フィルタを利用して、居室内の空気を常に清浄化することにより、「花粉を持ち込ませない、花粉をシャットアウトする」花粉症対策マンションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置は、請求項1に記載の通り、複数の空気供給循環ダクトと、該空気供給循環ダクト同士の側面間を仕切る複数のパネルと、該パネルの一部を構成する扉とにより側面外周部を構成し、前記側面外周部の内周面と、該側面外周部で囲まれた空間の上部を仕切るよう配置した機械室と、前記空気供給循環ダクト、前記パネル及び前記扉の設置床面とによりエアシャワー室を構成した組立構造をしており、
前記機械室は、前記エアシャワー室内の汚染空気のリターン空間と、該汚染空気を吸い込んで吐出するファンと、該ファンの吐出側に設けられたフィルタと、該フィルタによって清浄化された清浄空気を圧縮する圧力室とから構成され、前記複数の空気供給循環ダクトは、それぞれ、前記圧力室に連結された清浄空気供給空間と、該清浄空気供給空間に連結されたジェット吹出口と、前記エアシャワー室内の汚染空気を吸い込むための吸込口と、該吸込口で吸い込まれた汚染空気を機械室に戻すためのリターン空間とから構成され、
前記各ジェット吹出口は、吹き出される清浄空気が該ジェット吹出口に正対する利用者の中心を外して吹き出すように設置されるとともに、前記ジェット吹出口の近傍に設けた前記吸込口により汚染空気を迅速に吸い込むことを特徴とする。
また、請求項2に記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置は、請求項1に記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置において、前記ジェット吹出口は、鉛直方向に配列され、前記利用者の頭部から足下まで高速ジェットを吹き出す複数のジェット吹出口から構成され、前記吸込口は、少なくとも前記複数のジェット吹出口が鉛直方向に配列された位置に対応する鉛直長さを有する縦スリット形状の吸込口であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置は、請求項1又は2に記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置において、前記空気供給循環ダクト、前記パネル及び前記扉のいずれか複数の方向に誘導手段を設け、前記誘導手段により利用者の自転を誘導することを特徴とする。
また、本発明の花粉症対策マンションは、請求項1乃至3のいずれかに記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置を風除室あるいはエントランスホールに設けるとともに、前記居室と居室外の空間との境界の壁に設けられた換気口に花粉除去フィルタを設置して前記居室内を24時間換気することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置は、請求項1に記載の通り、空気供給循環ダクト、パネル、扉、機械室を組み合わせることにより簡便に組み立てることができる。本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置では、各部材を軽量化することにより、花粉症対策マンション用エアシャワー装置全体を軽量化することができ、既設のマンションに設置する場合であっても特段の床補強工事を必要としない。
また、設置場所の空間的広さ等に応じて、空気供給循環ダクトの設置本数を変更することができ、空気供給循環ダクト間は既成のパネルで仕切っているため、扉位置を自在に変更することができる。すなわち、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置では、その設計をフレキシブルとすることが可能である。
また、複数、例えば、2方向あるいは3方向から高速ジェットとなる清浄空気をジェット吹出口に正対する利用者の中心(本発明では、エアシャワー室の中心付近)を外して(すわなち、利用者の体をかすめるように)吹き出し、ジェット吹出口の近傍に設けた吸込口により花粉等を含む汚染空気を迅速に吸い込むことにより、利用者に直接的に不快感を与えることなく、付着した花粉を払い落とし(吹き飛ばして)、吹き飛ばされた花粉を迅速にエアシャワー室内から除去することができる。
また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置では、請求項2に記載の通り、ジェット吹出口が鉛直方向に配列され、利用者の頭部から足下まで高速ジェットを吹き出す複数のジェット吹出口であり、吸込口が少なくとも複数のジェット吹出口が鉛直方向に配列された位置に対応する鉛直長さを有する縦スリット形状の吸込口であるので、利用者の足下から頭部まで高速ジェットを吹き付けた場合でも迅速に汚染空気を吸い込むことができ、花粉を効率よく払い落とすことができる。
また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置は、請求項3に記載の通り、利用者が正対した時に直接体に高速ジェットを吹き付けないため、その点では花粉の払い落としの効果は落ちるものの、表示灯等の誘導手段により利用者を誘導してエアシャワー室内で1〜2回転させることで、利用者の体全体に均等に高速ジェットを当てることができ、効率よく花粉を払い落とし、エアシャワー室外に除去することができる。
本発明の花粉症対策マンションでは、外出した住人(本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置の利用者)は、風除室あるいはエントランスホールに設けられたエアシャワー装置でまず体に付着した花粉をほとんど払い落とすので、マンション内に花粉を持ち込むことを阻止することができ、また、換気口に花粉除去フィルタを設置して居室内を24時間換気しているので、花粉の居室内への浸入を阻止することができる。したがって、これらを組み合わせることにより、花粉症の住人が安心して住むことができる花粉症対策マンションを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置及びそれを備えた花粉症対策マンションの好適な実施の形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置の一実施形態における側面図であり、図2〜図4は、それぞれ、図1のA−A線断面図、図1のB−B線断面図、図1のC−C線断面図である。
【0010】
まず、図1及び図2に基づいて、花粉症対策マンション用エアシャワー装置(以下、単に「エアシャワー装置」ともいう)1の部材を説明する。本発明のエアシャワー装置1は、図1及び図2に示すように、複数の空気供給循環ダクト2と、該空気供給循環ダクト2同士の側面間を仕切る複数のパネル3と、該パネル3の一部を構成する扉4と、これらの空気供給循環ダクト2、パネル3及び扉4で囲まれた空間の上部を仕切るよう配置した機械室5とによる組立構造を有している。
ここで、空気供給循環ダクト2、パネル3及び扉4により側面外周部が構成され、この側面外周部の内周面と、機械室5と、空気供給循環ダクト2、パネル3及び扉4の設置床面200とによりエアシャワー室12(図3参照)が構成される。なお、図1は、一方の側面を固定具4bで固定され、ドアノブ4aで扉4を半開きにした状態を示す。図2から分かるように、本実施形態のエアシャワー装置1では、同一の形状を有する3つの空気供給循環ダクト2が設置され、空気供給循環ダクト2の一側面に沿って隣り合う空気供給循環ダクト2の間にパネル3が設けられている。このように、本発明のエアシャワー装置1は、パネル工法により容易に組み立てることができ、各部材2、3、4及び5を軽量化することにより、エアシャワー装置1全体を軽量化することができる。このようにエアシャワー装置1を軽量化することにより、既設のマンションに設置する場合であっても特段の床補強工事を必要としない。
【0011】
各空気供給循環ダクト2は、エアシャワー室12の中心に向かう一側面に、鉛直方向に配列され、利用者の頭部から足下まで高速ジェット(エアジェット)を吹き出す複数のジェット吹出口2aを備えるとともに、このジェット吹出口2aの近傍に設けられ、少なくとも複数のジェット吹出口2aが鉛直方向に配列された位置に対応する鉛直長さを有する縦スリット形状であり、エアシャワー室1内の汚染空気を吸い込むための吸込口2bを備えている。このようにジェット吹出口2aと吸込口2bとを隣接して設けることにより、人体から吹き飛ばされた花粉を迅速にエアシャワー室12内から除去することができる。
なお、本実施形態では、空気供給循環ダクト2の断面がジェット吹出口2aを備える側面部分を切り欠いた五角形となっており、この一側面に隣り合う一側面に、吸込口2bが設けられている。また、各ジェット吹出口2aは、吹き出される清浄空気がジェット吹出口2aに正対する利用者の中心を外して吹き出すように設置されている。このように、ジェット吹出口2aに正対する利用者の中心(本発明では、エアシャワー室12の中心付近)を外して(すわなち、利用者の体をかすめるように)清浄空気を吹き出しているので、利用者に直接的に不快感を与えることなく、付着した花粉を払い落とす(吹き飛ばす)ことができる。
また、空気供給循環ダクト2の内部には、吸込口2bから吸い込まれた汚染空気を機械室5に送るための汚染空気リターン空間9と、後述するファン6からの清浄空気をジェット吹出口2aに供給するための清浄空気供給空間10とが設けられている。
【0012】
また、ジェット吹出口2aが設けられた一側面には、エアシャワー装置1に入ってきた利用者の目線に近い位置に、高速ジェット噴射時にこの利用者の自転を誘導するための誘導手段として利用される表示灯8が設けられている。本実施形態では、誘導手段としての表示灯8を各空気供給循環ダクト2の一側面に設けて、この表示灯8を順次点滅あるいは点灯させることにより利用者の自転を誘導している。この場合、エアシャワー装置1の利用案内(使用方法等)を利用者の認識するところに表示して(例えば、扉4の外面に貼り付け等して)、表示灯8の点滅に合わせて体を回転して高速ジェットを浴びることを促すようにするのが好ましい。なお、本発明の誘導手段は、この表示灯8に限定されることなく、例えば、音声により利用案内と自転の誘導を行うように構成されてもよい。
【0013】
機械室5は、エアシャワー室12内の汚染空気が通る汚染空気リターン空間9と、該汚染空気を吸い込んで吐出する2つのファン6と、ファン6の吐出側に設けられ、花粉等を集塵するためのフィルタ7と、ファン6から吐出され、フィルタ7で清浄化された清浄空気を圧縮する圧力室11とから構成される。
ここで、本発明に用いるファン6としては、シロッコファン(横吹出ファン)、斜流ファン、軸流ファン、遠心ファン等を使用することができる。特に、風量確保の点からシロッコファンが好ましい。なお、図1及び図2では、軸流ファンを一例として示している。
【0014】
また、本発明のエアシャワー装置1に用いるフィルタ7としては、粒子除去用、ガス分解除去用、ガス吸着用フィルタ等を適宜組み合わせて使用することができる。粒子除去用フィルタとしては、一般の超ULPA、ULPA、HEPA等の高性能フィルタ、中性能フィルタを使用することができる。ガス分解除去用フィルタとは、光触媒等の触媒を濾材に担持したものを使用することができる。また、ガス吸着用フィルタとしては、活性炭、活性炭素繊維、イオン交換樹脂、イオン交換繊維等からなる濾材を含むものを使用することができる。
なお、エアシャワー室12から機械室5へ汚染空気を導く汚染空気リターン空間9に使用するフィルタは図示を省略したが、例えば、プレフィルタを使用することができる。このように、エアシャワー室12から吸い込まれた汚染空気を清浄化するためにプレフィルタを使用し、利用者に吹き出す前に最終的に清浄化するフィルタとして、HEPA等の高性能フィルタを使用することが一般的である。
【0015】
次に、図3を用いて本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の組立方法の一例を説明する。
まず、例えば、風除室あるいはエントランスルームの床面200に、コーナーを利用して壁100に沿って、3つの空気供給循環ダクト2、2、2を等間隔に立てる。次いで、隣り合う空気供給循環ダクト2、2の間にパネル3、3、3、3を取り付け、開放されているパネル3、3の間に扉4を取り付けることにより、その内周面がエアシャワー室12の側面となる側面外周部を形成する。
次いで、空気供給循環ダクト2、2、2の上に機械室5を載せて、空気供給循環ダクト2の汚染空気リターン空間9が圧力室11の上面を突き抜けるように機械室5を設置して、機械室5の底面によりエアシャワー室12の上面を構成する。
次いで、複数のジェット吹出口2aから吹き出される清浄空気が、そのジェット吹出口2aに正対する利用者の中心を外れるように、ジェット吹出口2aの吹出方向を調整する。
以上のようにして、本発明のエアシャワー装置1は完成する。このように本発明のエアシャワー装置1はパネル工法を用いているので、空気供給循環ダクト、パネル、扉、機械室を順次組み合わせることにより簡便に組み立てることができる。
【0016】
次に、図4を用いて本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の使用方法の一例を説明する。
エアシャワー装置1の外にいる利用者は、エアシャワー装置1の扉4を開けてエアシャワー室12内に入室する(動作A1)。
利用者がエアシャワー室12内に入室すると、扉4の閉止に応答してファン6が駆動するとともに、図4において右側、すなわち、利用者がエアシャワー室12に入る方向に対して右側の表示灯8が点灯(点滅)する。それに応じて、利用者は右側の空気供給循環ダクト2の前に正対する。このとき、すべての空気供給循環ダクト2のジェット吹出口2aから約3秒間程清浄空気が吹き出され、利用者はその吹き出された清浄空気(高速ジェット)を受ける(動作A2)。
次いで、エアシャワー室12の入口(すなわち、扉4側)から見て真正面の空気供給循環ダクト2にある表示灯8が点灯すると、利用者は体を左方向に1/4回転して、図4において上側の空気供給循環ダクト2の前に正対する。このとき、すべての空気供給循環ダクト2のジェット吹出口2aから約3秒間程清浄空気が吹き出され、利用者はその吹き出された清浄空気(高速ジェット)を受ける(動作A3)。
【0017】
次いで、図4において左側の空気供給循環ダクト2にある表示灯8が点灯すると、利用者は体を左方向に更に1/4回転して、図4において左側の空気供給循環ダクト2の前に正対する。このとき、すべての空気供給循環ダクト2のジェット吹出口2aから約3秒間程清浄空気が吹き出され、利用者はその吹き出された清浄空気(高速ジェット)を受ける(動作A4)。
以下同様にして、順次表示灯8、8、8が点灯し、この点灯に合わせて利用者は体をもう1回転して、最終的に合計20秒程の時間、清浄空気を浴びてから、エアシャワー室12外に退室する(動作A5)。なお、エアシャワー室12内における利用者の自転の回数は、上述のように2回に限らず、1回、あるいは3回以上であってもよい。また、ジェット吹出口2aから吹き出される高速ジェットは、上述のような間欠式に吹き出されてもよく、利用者がエアシャワー室12にいる間連続して吹き出されてもよい。
このように、本発明のエアシャワー装置1では、表示灯8等の誘導手段により利用者を誘導してエアシャワー室12内で回転(自転)させつつジェット吹出口2aから高速ジェットを吹き出すように構成されているので、利用者の体全体に均等に高速ジェットをあてることができ、効率よく花粉を払い落とすことができる。
【0018】
次に、図5を用いて本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1を備えた花粉症対策マンションの一実施例を説明する。
図5は、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置を用いたの花粉症対策マンションの概略的な平面図である。なお、図5では、本発明のエアシャワー装置1を利用する利用者の動線を点線Xで示している。以下、この動線Xに従って、本発明の花粉症対策マンションの一例を説明する。また、図5における実線の矢印は花粉の動線を示している。
本実施形態では、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1は、マンションの風除室20の片隅に設置されており、外出から戻った(居室外から居室に入る)利用者で花粉症の人や同居人に花粉症の人がいる人は、上述のようにエアシャワー装置1を利用して、居室内に花粉を持ち込まないようにする。
次いで、エアシャワー装置1を利用した利用者は、エントランスホール30、共用廊下40を通って、自らの住居50に入室する。
【0019】
ここで、住居50では、24時間換気システムを導入して室内を24時間換気することにより、ホルムアルデヒド等の濃度を許容濃度以下に管理されている。また、住居50とバルコニー51との境界の壁には、24時間換気システムで利用され得る換気口52が設けられており、その換気口52には花粉除去用フィルタ53が取り付けられている。このように、換気口52に花粉除去用フィルタ53を取り付けているため、住居50内への花粉の浸入をシャットアウトすることができる。
上述のような構成によって、共用廊下40が内廊下式であれば、マンション館内の24時間換気により、「マンションの館内に花粉を持ち込まず、居室(住居50)内への花粉の浸入をシャットアウトする」ことを完全に達成することができ、マンションが疑似クリーンルームのように構成されることにより、住居50内をクリーン化して花粉症の住人が住みやすい環境を実現することができる。
仮に、共用廊下40が外廊下式であったとしても、風除室20のエアシャワー装置1によってほとんど花粉を除去することができるとともに、住居(居室)50内も花粉除去用フィルタ53によりクリーン化を維持することができるので、内廊下式のマンションの場合に比べてもほぼ同程度のクリーン化が可能であり、同様に、花粉症の住人が住みやすい環境を実現することができる。
【0020】
なお、本発明の花粉除去用フィルタ53としては、花粉症対策マンション用エアシャワー装置1に用いたフィルタ7と同様のものを使用することができる。また、この花粉除去用フィルタ53の濾材構造としては、濾材をプリーツしたフィルタパックを丸形にしたもの、濾材を菊型にプリーツしたもの、濾材を積層して丸形にしたもの等を使用することができる。さらに、濾材と多孔グラスウール等の遮音材とを複合した複合フィルタを利用すれば、花粉等を除去するとともに、居室外の騒音を低減することができ、換気口52のシャッタを閉めずに複合フィルタを常時設置使用することができる。そのため、24時間換気システムの法規制である「換気回数0.5回/時間」を十分にクリアー(達成)することができる。
【0021】
以上、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1及び花粉症対策マンションについて添付図面を参照して説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1に任意の構成物が付加されていてもよい。
本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の一実施形態では、空気供給循環ダクト2の断面形状が五角形であるものとして説明したが、上述のようなジェット吹出口2a、吸込口2b等を備える構成であれば、どのような断面形状であってもよい。
また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の一実施形態では、ジェット吹出口2aは、空気供給循環ダクト2に複数設けられ、例えば、図1では、等間隔に5つ設けられている場合について示したが、このジェット吹出口2aの設置数はこれに限らず、花粉を十分に吹き飛ばすことができるのであれば、4つ以下でも6つ以上でもよい。また、高速ジェットとして清浄空気を利用者に吹き付けられる限り、ジェット吹出口2aのノズル形状はどのようなものであってもよい。
また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の一実施形態では、空気供給循環ダクト2に設けられた吸込口2bが、少なくとも複数のジェット吹出口2aが鉛直方向に配列された位置に対応する鉛直長さを有する縦スリット形状のものである場合を示したが、各ジェット吹出口2aから吹き出された高速ジェットが利用者の近くを通過して、花粉を含む汚染空気となったときにその汚染空気を迅速に吸い込むことができるのであればどのような形状であってもよい。吸込口2bは、例えば、各ジェット吹出口2aの鉛直方向の長さより幾分長めの複数のスリットを鉛直方向に並べたような構成であってもよく、ジェット吹出口2aの列に対して両側に2本のスリット状に設けられたものであってもよい。
また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の一実施形態では、誘導手段として表示灯8を用いた場合を示したが、上述したように、例えば、音声などのような表示灯8以外の誘導手段を用いてもよい。さらに、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の一実施形態では、空気供給循環ダクト2のジェット吹出口2aがある一側面に表示灯8が設置されている場合について説明したが、この表示灯8は、利用者の自転を誘導できるならば、パネル3や扉4に設置されていてもよい。
また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の一実施形態では、機械室5に2つのファン6を設けた場合について説明したが、ファン6の設置台数は、所望する風量(高速ジェットとなり得る風圧)等に応じて適宜設定すればよい。
【0022】
また、本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置1の一実施形態では、空気供給循環ダクト2を3台使用した場合について説明したが、空気供給循環ダクト2の設置台数は3台に限定されず、例えば、2台の空気供給循環ダクト2にしてその間をそれぞれパネル3と扉4とで構成した構造としてもよい。また、扉4の位置は、図1〜図4に示す位置に限定されることなく、パネル3のつなぎ方で自在に変更することができる。さらに、パネル3の代わりに扉4を増やした場合には、扉4が二つあるスルー式の構造とすることもでき、風除室20やエントランスホール30等の片隅ではなく、マンションやエントランスホールの入口等に設置することも可能である。
また、本発明の花粉症対策マンションの一実施形態では、本発明のエアシャワー装置1を風除室20の片隅(隅部)に設けた場合について説明したが、エアシャワー装置1の設置場所はこれに限定されることなく、例えば、風除室20の一部を使用してもよく、エントランスホール30の隅部やその一部を使用してもよい。なお、共用廊下40には、エレベーター、階段等のフロア移動手段が含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のエアシャワー装置は、花粉症対策マンション用としてマンションの出入口に主として用いるが、食品・医薬・製薬等の雑菌や粉塵等による室内の汚染を制御する分野において貢献できる点で、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置の一実施形態における側面図
【図2】図2は図1のA−A線断面図
【図3】図3は図1のB−B線断面図
【図4】図4は図1のC−C線断面図
【図5】本発明の花粉症対策マンション用エアシャワー装置を用いた花粉症対策マンションの概略的な平面図
【符号の説明】
【0025】
1 花粉症対策マンション用エアシャワー装置
2 空気供給循環ダクト
2a ジェット吹出口
2b 吸込口
3 パネル
4 扉
4a ドアノブ
4b 固定具
5 機械室
6 ファン
7 フィルタ
8 表示灯
9 汚染空気リターン空間
10 清浄空気供給空間
11 圧力室
12 エアシャワー室
20 風除室
30 エントランスホール
40 共用廊下
50 住居
51 バルコニー
52 換気口
53 花粉除去用フィルタ
100 壁
200 床面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気供給循環ダクトと、該空気供給循環ダクト同士の側面間を仕切る複数のパネルと、該パネルの一部を構成する扉とにより側面外周部を構成し、前記側面外周部の内周面と、該側面外周部で囲まれた空間の上部を仕切るよう配置した機械室と、前記空気供給循環ダクト、前記パネル及び前記扉の設置床面とによりエアシャワー室を構成した組立構造をしており、
前記機械室は、前記エアシャワー室内の汚染空気のリターン空間と、該汚染空気を吸い込んで吐出するファンと、該ファンの吐出側に設けられたフィルタと、該フィルタによって清浄化された清浄空気を圧縮する圧力室とから構成され、前記複数の空気供給循環ダクトは、それぞれ、前記圧力室に連結された清浄空気供給空間と、該清浄空気供給空間に連結されたジェット吹出口と、前記エアシャワー室内の汚染空気を吸い込むための吸込口と、該吸込口で吸い込まれた汚染空気を機械室に戻すためのリターン空間とから構成され、
前記各ジェット吹出口は、吹き出される清浄空気が該ジェット吹出口に正対する利用者の中心を外して吹き出すように設置されるとともに、前記ジェット吹出口の近傍に設けた前記吸込口により汚染空気を迅速に吸い込むことを特徴とする花粉症対策マンション用エアシャワー装置。
【請求項2】
前記ジェット吹出口は、鉛直方向に配列され、前記利用者の頭部から足下まで高速ジェットを吹き出す複数のジェット吹出口から構成され、前記吸込口は、少なくとも前記複数のジェット吹出口が鉛直方向に配列された位置に対応する鉛直長さを有する縦スリット形状の吸込口であることを特徴とする請求項1に記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置。
【請求項3】
前記空気供給循環ダクト、前記パネル及び前記扉のいずれか複数の方向に誘導手段を設け、前記誘導手段により利用者の自転を誘導することを特徴とする請求項1又は2に記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の花粉症対策マンション用エアシャワー装置を風除室あるいはエントランスホールに設けるとともに、前記居室と居室外の空間との境界の壁に設けられた換気口に花粉除去フィルタを設置して前記居室内を24時間換気することを特徴とする花粉症対策マンション。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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