説明

芳香伝達装置及び芳香伝達方法

【課題】視聴者が確実に芳香を楽しむことができるようにすること。
【解決手段】芳香を射出する複数のノズル9c,9dを備える芳香射出手段9と、対象者31a,31bの鼻などの特定部位を検知する検知手段と、その検知手段によって鼻などの特定部位が検知された複数の対象者31a,31b各々に対して各上記ノズル9c,9dを個別に対応させつつ、その芳香射出手段9の各ノズル9c,9dによる芳香の射出を独立して制御する制御手段19とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視聴者に対して芳香を射出する芳香伝達装置及び芳香伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香りや液体を噴霧する関連技術としては、ノズルを使用して空気中に液体粒子を噴霧させる香発生装置が存在している(特許文献1参照)。この香発生装置は、香噴射ユニット、香噴射ユニット位置データベース(以下「香噴射位置ユニットDB」と呼ぶ)、香情報データベース(以下「香情報DB」と呼ぶ)、タイマ及びコントローラを有する。
【0003】
このうち香噴射ユニットは、個別に格納された香源より香りを発生させて噴射する機能を有する。香噴射位置ユニットDBは、その香噴射ユニットに収容されている香源の位置を格納している。香情報DBは、発生させたい香りの発生時間を設定する機能を有する。タイマは、発生させたい香りの発生時間を設定する。
【0004】
コントローラは、上述した各データベースから読み取った所望の香りを発生するために必要な香源の位置及び香りに対する情報に基づいてタイマに香りの発生時間を設定し、この設定した発生時間に香噴射ユニットから香りを発生させるよう制御する。このような構成によれば、この香発生装置は、液体香源の蒸発比率が環境に応じて異なるものの、所望の香りを正確な濃度で発生させ、その噴霧量を精密に制御することができるとしている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−129069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記公知技術では、上述した香噴射ユニットが噴射した香りを複数の対象者で楽しもうとしても、複数の対象者が横方向に並んでいて離れていると、ある対象者には香りが到着しても別の対象者には香りが到着しないことがある。これでは、このように複数の対象者がいる場合においては、せっかく香噴射ユニットが香りを噴射しても、これら複数の対象者が同時期にこの香りを楽しむことができないおそれがある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、芳香を射出する複数のノズルを備える芳香射出手段と、対象者の特定部位を検知する検知手段と、前記検知手段によって特定部位が検知された各前記対象者に対して各前記ノズルを個別に対応させ、前記芳香射出手段の各ノズルによる芳香の射出を独立して制御する制御手段とを有する。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項4記載の発明は、変形ノズルから芳香を射出する芳香射出手段と、複数の対象者の特定部位の位置関係に応じて前記変形ノズルを変形させ、前記芳香射出手段による芳香の射出を制御する形状制御手段とを有する。
【0010】
上記課題を解決するために、請求項11記載の発明は、複数の対象者の特定部位を検知する検知ステップと、前記検知ステップにおいて特定部位が検知された各前記対象者に対して、芳香を射出する複数のノズルを備える芳香射出手段の各前記ノズルを個別に対応させ、前記芳香射出手段の各ノズルによる芳香の射出を独立して制御する制御ステップとを有する。
【0011】
上記課題を解決するために、請求項12記載の発明は、複数の対象者の特定部位を検知する検知ステップと、前記検知ステップにおいて特定部位が検知された前記複数の対象者の特定部位の位置関係に応じて、芳香を射出する変形ノズルを備える芳香射出手段の変形ノズルを変形させ、前記芳香射出手段による芳香の射出を制御する形状制御ステップとを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態としての芳香伝達装置100を備える表示装置1の外観の一例を示す正面図である。
表示装置1は筐体2及び脚部5を有する。この筐体2は、脚部5によって設置面において支えられている。この筐体2は、その外観上、表示パネル7及び2つのスピーカー4を備えている。この筐体2は芳香伝達装置100を内蔵している。この芳香伝達装置100については後述する。
【0013】
この表示パネル7は筐体2の中央部に設けられている。この表示パネル7は、その筐体2の中央部において、外部から入力された画像データに基づく映像を表示する機能を有する。この筐体2の左右には、各々スピーカー4が設けられている。
【0014】
このスピーカー4は、図示しない駆動回路の制御によって、表示パネル7に表示された映像に同期して音を出力する機能を有する。この筐体2は、その内部に図示しない駆動回路を備えている。この駆動回路は、上記画像データに基づく映像を表示パネル7に表示させるための駆動制御を行う。
【0015】
その筐体2の下部には、上記芳香伝達装置100の一部を構成する芳香射出装置9が設けられている。これら芳香射出装置9(芳香射出手段に相当)は、出力源としての表示パネル7又はスピーカー4の近傍に配置しており、視聴者(対象者に相当)に対して芳香を射出する機能を有する。
【0016】
この芳香射出装置9は、外観上、上記表示装置1の下部の左右に各々、例えば円形の射出開口部9aが露出しており、その円形の射出開口部9aの外側に沿ってドーナツ形状の吸引開口部9bが露出している。本実施形態では、これら射出開口部9a及び吸引開口部9bを総称して「ノズル」ともいう。この芳香射出装置9は、各ノズルから同一の芳香を同時期に射出する。
【0017】
この芳香射出装置9は、各ノズルの中心部に位置する円形の射出開口部9aから芳香を射出し、やや遅れてその外側のドーナツ形状の吸引開口部9bから、ノズル周囲の空気を吸引する。すると、ノズル近傍における中心部の流速と周辺部との差により、芳香の塊はドーナツ状となり、直進性を持って進行するようになる。この芳香射出装置9は、射出済みの芳香を消失させるための脱臭気体を射出する場合、同様の手法によりドーナツ状の脱臭気体を直線性を持って射出することができる。
【0018】
上記表示パネル7は、いわゆる、プラズマディスプレイパネル、液晶表示素子又は有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いた表示パネルである。本実施形態においては、この表示パネル7が多数の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機電界発光素子)を備えているものとする。この表示パネル7は、多数の有機電界発光素子がマトリクス状に配列した構成となっている。これらマトリクス状に配列した有機電界発光素子は、図示しない駆動回路の制御によって各画素ごとに駆動制御されている。
【0019】
また筐体2の上部における左右には、それぞれ距離計測装置6が設けられている。これら距離計測装置6(距離計測手段に相当)は、上述した芳香伝達装置100の一部を構成しており、芳香伝達装置9から視聴者の特定部位までの離間距離を計測する機能を有する。本実施形態では、対象者としての視聴者の特定部位として鼻を例示する。
【0020】
これら一対の距離計測装置6は、光、超音波、画像認識角度などの方法を用いて距離を測定する機能を有する。さらにこの距離計測装置6は、近傍を撮影するカメラ機能を有する。この距離計測装置6のカメラ機能については後述する。そして、この距離計測装置6は、例えば光又は超音波を用いて自らの位置から視聴者の鼻の位置までの距離(離間距離)を計測する機能を有する。
【0021】
図2は、図1に示す表示装置1が内蔵する芳香伝達装置100の電気的な構成例を示すブロック図である。
芳香伝達装置100は、芳香射出装置9及び制御部19を有する。この芳香伝達装置100は、さらに射出方向変更部14、距離計測装置6、映像音入出力部11、外部通信部12、状態表示部15、記憶部13及びスイッチ部17を備えている。これら距離計測装置6などは、それぞれバスライン16に接続されている。このバスライン16は、これら接続されている距離計測装置6、芳香射出装置9及び制御部19等との間でデータなどの交換や制御を行うことができる。
【0022】
距離計測装置6(距離計測手段に相当)は、芳香射出装置9(芳香射出手段に相当)の各ノズルから視聴者の鼻までの離間距離を各々計測する機能を有する。本実施形態では、この距離計測装置6によってノズルごとに計測された自ら(距離計測装置6)の位置から視聴者の鼻までの距離を「離間距離」と呼ぶ。
【0023】
この距離計測装置6は、上述したカメラ機能によって視聴者の顔を含む近傍の画像を撮影する。この距離計測装置6は、撮影した画像に含まれる複数の視聴者の鼻を周知のパターン認識や画像認識技術を用いて視覚的に検知する(検知手段に相当)。この距離計測装置6は、この検知した複数の視聴者の鼻の位置を、例えばXY座標で特定する。なお、このようなパターン認識や画像認識技術は、制御部19において行われても良い。すなわち制御部19は、距離計測装置6がカメラ機能によって撮影した画像に含まれる視聴者の鼻をパターン認識や画像認識技術を用いて検知する。このように検知された鼻の数に応じて視聴者の人数を把握することができる。
【0024】
芳香射出装置9(芳香射出手段に相当)は、例えば空気砲の原理によって視聴者に対して芳香を射出する機能を有する。この芳香射出装置9の具体的な構成については後述する。
【0025】
制御部19は、芳香伝達装置100全体をコントロールするCPUなどから構成される。この制御部19は制御手段に相当し、距離計測装置6によって鼻が検知された各視聴者の各々に対して各ノズルを個別に対応させ、その芳香射出装置9の各ノズル9c,9dによる芳香の射出を独立して制御する。
【0026】
また、この制御部19は、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dと各視聴者の鼻との位置に基づいて、芳香射出装置9の各ノズル9c,9dのうちから各視聴者に対応する個別のノズルを選択して割り当てる。なお本実施形態では、制御部19は、このような位置として、各ノズル9c,9dと各視聴者の鼻との各離間距離に基づいて個別のノズルを割り当てている。これにあたり、制御部19は、この個別のノズルとして、例えば、この芳香射出装置9の各ノズル9c,9dのうち、各ノズルから各視聴者の鼻までの離間距離がより短い方を選択する。
【0027】
射出方向変更部14は射出方向変更手段に相当し、制御部19の制御によって、芳香射出装置9の各ノズル9c,9dの向きを変更する。この制御部19は、近傍を撮影した画像に含まれる視聴者の特定部位の位置関係に応じて、その射出方向変更部14を制御する。本実施形態では、このような視聴者の特定部位として、例えば視聴者の鼻を採用している。
【0028】
また制御部19は、その離間距離に基づいて、この芳香射出装置9の各ノズル9cから射出された芳香が視聴者の鼻に到達するまでの所要時間を演算する。このとき制御部19は、芳香射出装置9による芳香の伝送速度を考慮してこの所要時間を演算してもよい。さらにこの制御部19は、この所要時間に応じてこの芳香射出装置9の各ノズル9c,9dによる芳香の射出タイミングを補正する。そしてこの制御部19は、このような演算結果に基づいて後述するように芳香射出装置9を制御する。
【0029】
映像音入出力部11は、外部から映像データ及び音データの少なくとも一方(以下「映像データなど」という)を少なくとも入力する機能を有する。記憶部13は、このように入力された映像データ、制御部19で用いられるプログラムや各種パラメータなどを記憶可能なメモリである。外部通信部12は、芳香射出装置100の外部との間でデータ通信を行う機能を有する。状態表示部15は、この芳香射出装置9の状態を表示する表示部である。スイッチ部17は、この芳香射出装置9を操作するスイッチ部である。
【0030】
図3は、図2に示す芳香射出装置9の構成例を示すブロック図である。
芳香射出装置9は、芳香メインタンク29、コック28、芳香混合部21、芳香サブタンク23、芳香射出部25及び芳香射出制御部27を備えている。芳香射出部25における芳香26を射出する口付近には、ノズル9c,9dが設けられている。これらノズル9c,9dは、各々ノズル部材9a,9bによって構成されている。これら芳香メインタンク29、コック28、芳香混合部21、芳香サブタンク23、芳香射出部25及び芳香射出制御部27は、各ノズル9c,9dに対応して設けられている。なお図3では、図を簡素化し、これらノズル9cなどのうち一方についてのみ芳香メインタンク29などを示している。
【0031】
芳香射出制御部27は、制御部19の制御下の元、後述するように芳香メインタンク29、コック28、芳香サブタンク23及び芳香射出部25の動作を制御する。
【0032】
芳香メインタンク29は、第1基本芳香29a、第2基本芳香29b、第3基本芳香29c、第4基本芳香29c及び第5基本芳香29dを備えている。これら第1基本芳香29aなどは、それぞれ視聴者に対して射出すべき芳香を生成するために混合される基本的な芳香を表している。
【0033】
また芳香メインタンク29は、さらに基本消臭剤29gを備えている。すなわち芳香伝達装置100は、芳香射出装置9によって射出済みの芳香を消失させる脱臭気体を射出する機能を有する。
【0034】
芳香混合部21は、コック28を介して芳香メインタンク29と接続されている。この芳香混合部21は、芳香射出制御部27の制御によるコック28の開閉状況に応じて、芳香メインタンク29内の第1基本芳香29aなど又はこれらいずれかの組み合わせを混合する。
【0035】
芳香サブタンク23は、芳香混合部21内で混合されて生成された新たな芳香を一時的に貯蔵するためのタンクである。このうち芳香サブタンク23は、芳香射出制御部27の制御によって、次の芳香を芳香射出部25に送り込むためにこの芳香を一時的に貯留する機能を有する。そして芳香射出部25は、芳香射出制御部27の制御によって、内部に貯留した芳香を射出し、上述した視聴者に対して芳香の気団26(以下、省略して「芳香26」という)を放出する機能を有する。
【0036】
芳香射出部25における芳香26を射出する口付近には、ノズル部材9a,9bが設けられている。これらノズル部材9a,9bは、二重の同心円筒形状のパイプ構造である。ノズル部材9aは中心寄りの部分を構成しており、ノズル部材9bは外周寄りの部分を構成している。芳香は、中心寄りのノズル部材9aから射出され、その外側の開口部をなすノズル部材9bは、芳香の射出速度よりも遅い速度の空気射出及び吸引を行う。
【0037】
図4は、図3に示す芳香射出部25の構成例を示す断面図である。なお、図4においては、説明の都合上、併せて芳香射出制御部27も図示している。
芳香射出部25は、射出用タンク25a、圧電素子25b及び逆流防止弁25cを備えている。またこの芳香射出部25が芳香26を射出する口には、上述のようにノズル部材9a,9bが設けられている。なお、これらノズル部材9a,9bの構造は簡素化して図示している。
【0038】
射出用タンク25aは、芳香サブタンク23から供給された芳香を一時的に貯留するタンクである。この射出用タンク25aにおける芳香サブタンク23からの芳香の供給口には逆流防止弁25cが設けられている。この逆流防止弁25cは、芳香サブタンク23から射出用タンク25aに既に供給された芳香がその芳香サブタンク23に逆流しないように堰き止める機能を有する。
【0039】
圧電素子25bは、例えばピエゾ素子を用いたものである。この圧電素子25bは、芳香射出制御部27による印加電圧に基づく圧電効果によって射出用タンク25aの内部の容積を瞬間的に変化させ、貯留している芳香26を射出する機能を有する。
【0040】
図5は、芳香伝達装置100が視聴者に対して芳香26を射出する様子を側方から見た場合の一例を示す平面図である。
この例では、表示パネル7には映像が表示されており、この映像では、例えば時刻T1において爆発のシーンが表示される。なお、再生タイミング時間と補正タイミング時間との時間差を、例えばΔTと設定し、芳香射出装置9から視聴者31の鼻までの距離をDとしている。
【0041】
すると、芳香伝達装置100は、この芳香射出装置9が、例えば一定の伝送速度Vで芳香26を射出するとした場合、芳香射出装置9から射出された芳香26が視聴者に到達するまでの時間ΔT=D/Vとなる。なお、芳香射出装置9から視聴者までは例えば距離がDである。よって芳香伝達装置100は、時刻T1−ΔTに火薬の芳香26を伝送速度Vで射出すれば、時刻T1においてこの芳香26が視聴者に到達することとなる。すると、視聴者は、視覚的に認識している爆発のシーンに同期して、火薬の芳香26を嗅覚的に認識することができるため、映像や音によって各々視覚や聴覚によって楽しむことができるばかりでなく、嗅覚によって芳香26も楽しむことができる。従って視聴者は、より臨場感豊かに映像(や音)を楽しむことができる。
【0042】
また、視聴者と表示装置1との間の距離に関らず、芳香が漂う場面のコンテンツの視聴タイミングと視聴者の鼻に芳香が届くタイミングが同一になるように、芳香が視聴者に到達する所要時間を補正して芳香を発生することができる。これにより、視聴者に視聴位置を表示装置に対して固定にするような制限がなくなり、視聴者が自由な位置で芳香を伴うコンテンツを楽しむことができる。
【0043】
図6は、芳香伝達装置100が視聴者に対して芳香26を射出する様子を上方から見た場合の一例を示す平面図である。
この表示パネル7の両端には、それぞれ距離計測装置6a,6bが設けられている。これら距離計測装置6a,6bは各々上述した距離計測装置6に相当する。また、この表示パネル7においては、その左右における距離計測装置6a,6bの近傍に、2つのノズル9c,9dが設けられている。
【0044】
具体的には、距離計測装置6aの近傍にはノズル9cが設けられており、一方、距離計測装置6bの近傍にはノズル9dが設けられている。例えば2人の視聴者31a,31bは、表示装置1の表示パネル7の映像表示面に対面するように、その映像表示面の中心を挟んでその映像表示面の左右において、その映像表示面にほぼ沿った方向に並んで配列している。すなわち視聴者31a,31bは、例えば表示パネル7の正面であってその映像表示面の左右に各々配列している。
【0045】
上述のように距離計測装置6a,6b(距離計測手段に相当)は、例えば光又は超音波によって、各視聴者31a,31bの鼻との距離を各々計測する。このとき併せて、これら距離計測装置6a,6bは、例えばカメラを内蔵しており、このカメラによる撮影機能によって周囲の画像を撮影する機能を有する。この距離計測装置6a,6bは、制御部19の制御によって、各視聴者31a,31bを各々含む映像を撮影する。この制御部19は、例えば画像認識技術を用いて撮影済の映像を解析し、その映像における視聴者の鼻の位置を表すXY座標を算出する。
【0046】
さらに制御部19は、上述した画像について画像解析し、その画像に含まれる複数の視聴者31a,31bの特定部位を画像処理によって検出するとともに、その位置を検出する。具体的には、この制御部19は、この画像に基づいて、複数の31a,31bの顔を認識するとともに、その顔における鼻を認識してその鼻の位置を特定する。この鼻の位置は、制御部19が、射出方向変更部14を制御して芳香射出装置9の各ノズル9c,9dを独立して各視聴者31a,31bに向ける際の演算に用いるためのパラメータである。
【0047】
ここで本実施形態では、制御部19は、両端の距離計測装置6a,6bによって各々計測された視聴者までの第1の距離及び第2の距離に基づいて、芳香射出装置9の各ノズル9c,9dから視聴者31a,31bまでの離間距離を間接的に計測している(距離計測手段に相当)。芳香伝達装置100は、制御部19の制御によって芳香射出装置9のノズル9cに、補正タイミングにて視聴者31aの方向に芳香26を射出させ、ノズル9dに、補正タイミングにて視聴者31bの方向に芳香26を射出させている。
【0048】
具体的には、このような状況としては、例えば視聴者31a及び視聴者31bがソファなどに座り、表示パネル7に表示されている映画を鑑賞している場面を例示することができる。距離計測装置6a,6bは、それぞれ視聴者31a,31bとの離間距離を計測するとともに、近傍を撮影した画像に基づいて視聴者31a,31b各々の鼻の位置を計測する。
【0049】
そして制御部19は、ノズル9c(個別のノズルに相当)を、例えば距離計測装置6aからの離間距離が短い視聴者31aに割り当てるとともに、ノズル9dを、例えば距離計測装置6bからの離間距離が短い視聴者31bに割り当てる。
【0050】
図7は、芳香伝達装置100が視聴者に対して芳香26を射出する様子を上方から見た場合の別の一例を示す平面図である。なお、図7の説明は、上述した図6との違いを中心として説明する。
この表示パネル7においては、その左右における距離計測装置6a,6bの近傍に、2つのノズル9c,9dが設けられているとともに、その映像表示面の中央部にノズル9eが設けられている。
【0051】
具体的には、距離計測装置6aの近傍にはノズル9cが設けられており、距離計測装置6a,6bの中央部にはノズル9eが設けられており、距離計測装置6bの近傍にはノズル9dが設けられている。例えば3人の視聴者31a,31b31cは、表示装置1の表示パネル7の映像表示面に対面するように、その映像表示面の中心及びその中心を挟んでその映像表示面の左右において、その映像表示面にほぼ沿った方向に並んで配列している。すなわち視聴者31a,31bは、例えば表示パネル7の正面であってその映像表示面の中央及び左右に各々配列している。
【0052】
上述のように距離計測装置6a,6b,6c(距離計測手段に相当)は、例えば光又は超音波によって、各視聴者31a,31b,31cの鼻との距離を各々計測する。このとき併せて、この距離計測装置6a,6b,6cは、その内蔵するカメラによる撮影機能によって、制御部19による制御の下、各視聴者31a,31b,31cを含む映像を撮影する。この制御部19は、例えば画像認識技術を用いて撮影済の映像を解析し、その映像における視聴者の鼻の位置を表すXY座標を算出する。
【0053】
ここで本実施形態では、制御部19は、両端の距離計測装置6によって各々計測された視聴者31a,31b,31cまでの第1の距離、第3の距離及び第2の距離に基づいて、芳香射出装置9の各ノズルから視聴者31a,31b,31cまでの離間距離を間接的に計測している(距離計測手段に相当)。芳香伝達装置100は、制御部19の制御によって芳香射出装置9ノズル9cに、補正タイミングにて視聴者31aの方向に芳香26を射出させ、ノズル9dに、補正タイミングにて視聴者31bの方向に芳香26を射出させ、ノズル9eに、補正タイミングにて視聴者31cの方向に芳香26を射出させている。
【0054】
具体的には、このような状況としては、例えば視聴者31a,31b,31cがソファなどに座り、表示パネル7に表示されている映画を鑑賞している場面を例示することができる。距離計測装置6a,6bは、それぞれ視聴者31a,31b,31cとの離間距離を計測するとともに、視聴者31a,31b,31c各々の鼻の位置を計測する。
【0055】
そして制御部19は、ノズル9c(個別のノズルに相当)を、例えば距離計測装置6aからの離間距離が短い視聴者31aに割り当て、ノズル9e(個別のノズルに相当)を、例えば距離計測装置6aからの離間距離が短い視聴者31cに割り当て、ノズル9d(個別のノズルに相当)を、例えば距離計測装置6bからの離間距離が短い視聴者31bに割り当てる。
【0056】
なお、このような構成の芳香伝達装置1においては、例えば視聴者31a,31bが存在せず1人の視聴者31cのみが存在する場合には、中央に位置するノズル9eのみから芳香が射出されるように弁などで制御してもよい。
【0057】
<芳香制御情報の記録媒体への記録方法例>
上述した芳香制御情報のDVDへの記録方法としては、次のような記録装置300を用いた記録方法を採用することができる。
図8は、上記DVDへコンテンツデータ及び上記芳香制御情報を記録する記録装置300の構成例を示すブロック図である。
【0058】
この記録装置300は、DVDへ記録すべきコンテンツデータをVTR(Video Tape Recorder)70に用意しておき、このVTR70から読み出したコンテンツデータを記録媒体の一例であるDVDに記録する機能を有する。
【0059】
具体的には、この記録装置300は、VTR70、メモリ71、信号処理部72、ハードディスク(HD)装置73、ハードディスク(HD)装置74、コントローラ75、多重器76、変調器77及びマスタリング装置78を有する。
【0060】
VTR70には、DVDに記録すべき映像や音等のコンテンツ(素材)である記録情報R(上記コンテンツデータに相当)が記録されている。このVTR70に記録されている記録情報Rは、信号処理部72からの要求により、この信号処理部72に出力される。
【0061】
この信号処理部72は、この記録情報RをA/D変換した後、例えばMPEG2方式により圧縮処理する。さらにこの信号処理部72は、この記録情報Rを構成する映像情報(映像信号)及び音情報(音信号)を時間軸多重して圧縮多重信号Srとして出力する。その後、出力された圧縮多重信号Srは、ハードディスク装置73に一時的に記憶される。
【0062】
これと並行して、メモリ71では、上記記録情報Rを部分記録情報Prに予め区分し、各部分記録情報Prが生成される。さらにこのメモリ71上では、それぞれの部分記録情報Prに関する、特にDVDについての最低読み出しレートが記載されたキューシートSTに基づき、予め入力されたこの部分記録情報Prに関する内容情報を一時的に記憶する。そしてメモリ71は、上記信号処理部72からの要求に基づいてこの内容情報について内容情報信号Siとして出力する。
【0063】
この信号処理部72は、VTR70から出力される上記記録情報Rに対応したタイムコードTt及び、メモリ71から出力される内容情報信号Siに基づきタイムコードTtを参照し、上記部分記録情報Prに対応するアクセス情報信号Sacを生成して出力する。このアクセス情報信号Sacはハードディスク装置74に一時的に記憶される。
【0064】
以上の処理が、記録情報R全体について実行される。記録情報Rの全てについて上記の処理が終了すると、コントローラ75は、ハードディスク装置73から圧縮多重信号Srを読み出すとともにハードディスク装置74からアクセス情報信号Sacを読み出す。そしてコントローラ75は、これら圧縮多重信号Sr及びアクセス情報信号Sacに基づいて付加情報DAを生成する。この付加情報DAは、ハードディスク装置74に記憶される。
【0065】
一方、コントローラ75は、上記信号処理部72、ハードディスク装置73及びハードディスク装置74について各々の動作の時間管理を行う。このコントロ−ラ75は、この付加情報DAに対応する付加情報信号Saを、ハードディスク装置74から読み出して多重器76に出力する。
【0066】
この付加情報DAの一部に、芳香制御情報である。この芳香制御情報のデータとしては、必要に応じて次のような内容のいずれか又はこれらいずれかの組み合わせを選択して採用することができる。具体的には、芳香発生タイミング情報(芳香26を発生させたい時分秒などのタイムスタンプ)、芳香持続時間情報(上記再生期間に相当)、芳香の強さ情報(例えば1〜5のような5段階で表した芳香物質の量)、芳香成分情報、消臭剤(脱臭気体)発生タイミング情報、消臭剤成分情報が採用できる。これら以外の芳香に関する情報を芳香制御情報として含むことができることはいうまでもない。
【0067】
これと共に、このコントロ−ラ75は、圧縮多重信号Srと付加情報信号Saを時間軸多重するための信号として情報選択信号Sccを生成し、多重器76に出力する。
【0068】
この多重器76は、情報選択信号Sccに基づき、これら圧縮多重信号Srと付加情報信号Saを時間軸多重し、その結果としての情報付加圧縮多重信号Sapを変調器77に出力する。
【0069】
つまり、このコントロ−ラ75は、このアクセス情報信号Sacに応じたタイミングで、上記付加情報信号Saを選択すべき旨を表す信号として情報選択信号Sccを、多重器76に対して出力する。この多重器76は、この情報選択信号Sccに基づき付加情報信号Sa側にスイッチし、端子76aと端子76cを接続する。
【0070】
一方、このコントローラ75は、圧縮多重信号Srを選択すべき旨を表す信号として情報選択信号Scを、多重器76に対して出力する。この多重器76は、圧縮多重信号Sr側にスイッチし、端子76aと端子76bを接続する。すると、この多重器77は、上記VOBU92にあるビデオデータ(映像信号)、オーディオデータ(音信号)を情報付加圧縮多重信号Sapとして、順次、変調器77に入力する。このような動作が複数のVOBU92について繰り返し行われ、更に複数のVTS83について繰り返される。
【0071】
上記変調器77は、入力された情報付加圧縮多重信号Sapに対してリードソロモン符号等のエラー訂正コード(ECC)の付加をして、さらに8−16変調等の変調を施してディスク記録信号Smを生成する。さらにこの変調器77は、このディスク記録信号Smをマスタリング装置78に対して出力する。
【0072】
このマスタリング装置78は、このディスク記録信号Smをスタンパディスクに対して記録する。このスタンパディスクは、光ディスクを製造する際のマスタ(抜き型)となるものである。そして図示しないレプリケーション装置は、このスタンパディスクを用いて一般向けに販売すべきレプリカディスクとしての光ディスク、即ちDVDを製造する。このように製造されたDVDには、上述した映像信号及び音信号が記録されているのみならず、上述したDSI93b及びPCI93aの少なくとも一方に、上記芳香制御情報が記録されていることになる。
【0073】
図9は、上述の記録装置により作成されるビデオファイルのフォーマットの一例を示す図である。
ビデオファイルは、例えば記録媒体としてDVDを挙げると、映像を表示するためのビデオデータ(映像信号)や音を出力するためのオーディオデータ(音信号)などのコンテンツデータの他にも、次のような情報データを備えている。すなわちこのビデオファイルは、マルチアングルやパレンタル再生、ランダム・シャッフル再生などのDVD独自の機能を実現する情報データや、早送り、巻き戻しなどの特殊再生をサポートするための情報データを有している。ここでは、前者をプレゼンテーションデータ、後者をナビゲーションデータと呼ぶ。
【0074】
DVDビデオゾーンには、DVDビデオの再生に必要な全てのファイルが格納されている。このDVDビデオゾーンは、ひとつのVMG(Video Manager)80及び少なくとも1つのVTS(Video Title Set)81,82,83を含んでいる。
【0075】
VMG80は、VMGI(Video Manager Information)80a、VMGM_VOBS(Video Object Set VMG Menu)80b及びバックアップのためのVMGI(BUP)80cを含んでいる。VMGI80aは、DVDビデオゾーン全体についての制御情報である。このVMGI80aは、例えばVIDEO_TS.IFOという1つのファイルで構成されている。
【0076】
VMGM_VOBS80bは、タイトル選択メニューのためのコンテンツである。VMGM_VOBS80bは、例えばVIDEO_TS.VOBというひとつのファイルで構成されている。VMGI(BUP)80cは、上述したVMGI80aと同一の内容である。このVMGI(BUP)80cは、例えばVIDEO_TS.BUPというひとつのファイルで構成されている。なお、このVMGM_VOBS80bは省略することもできる。
【0077】
VTS(VTS2を例示する)83は、VTSI(Video Title Set Information)83a、VTSM_VOBS(Video Object Set for the VTS Menu)83b、VTSTT_VOBS(Video Object Set for Titles in a VTS)83c及びバックアップのためのVTSI(BUP)83dを含んでいる。VTSI83aは、そのVTSに対する制御情報である。このVTSI83aは、このVTS_##_0.IFOというひとつのファイルで構成されている。なお、「##」は01から99までの整数、「@」は1から9までの整数を表わしている。
【0078】
VTSM_VOBS83bは、VTS83(VTS2)内の各種メニューのためのコンテンツである。このVTSM_VOBS83bは、例えばVTS_##_0.VOBというひとつのファイルで構成されている。VTSTT_VOBS83cは、タイトル再生のためのコンテンツである。このVTSTT_VOBS83cは、例えばVTS_##_@.VOBという複数のファイルで構成されている。VTSI(BUP)83dは、上記VMGI80aと同一の内容である。このVTSI(BUP)83dは、例えばVTS_##_0.BUPというひとつのファイルで構成されている。なお、VTSM_VOBS83cは省略しても良い。
【0079】
図10は、制御部19が用いる芳香制御情報などを含むビデオデータのフォーマット例を示す図である。
セル(図示の「CELL」に相当)91は、それぞれ少なくとも1つのVOBU(Video Object Unit)92で構成されている。1つのVOBU92は、例えば0.4secから1secの再生時間長を有する。
【0080】
このVOBU92は、先頭にNV_PCK(Navigation Pack:図示の「N」に相当)93が挿入されており、続いてGOP(Group Of Picture)整数個分のビデオデータ、オーディオデータ、サブピクチャデータなどがパック化されて時分割で挿入されている。ただし、NV_PCK93以外のデータは、例えば、常に存在している必要はなく、VOBU92の再生時間長よりも短くてもよい。
【0081】
また、GOPのフレーム数は自由であり、その終端にMPEGのシーケンス・エンド・コードを置けば、GOP最後のフレームで静止画となる。したがって、任意再生時間の静止画を動画中の任意の位置に挿入することができ、オーディオ情報の付加も自由に行えるのである。NV_PCK93は、PCI(Presentation Control Information)93aとDSI(Data Search Information)93bの二つのパケットを有する。
【0082】
一般的にDVDビデオプレーヤは、可変レート再生とシームレス再生を実現するために、ピックアップとデコーダの間にトラック・バッファと呼ばれる大容量メモリを有する。そのため、ピックアップがDVDから読み取っている信号と、デコードされて再生されている映像や音との間に時間ずれを生じる。
【0083】
そこで、リアルタイムの制御情報をPCI93aとDSI93bの二つのパケットに分割して、PCI93aには再生に関する制御情報を格納するとともに、DSI93bにはアクセスに関する制御情報を格納する。すると、DVDプレーヤは、DSI93bとPCI93aをそれぞれトラック・バッファの前と後で処理するのである。
【0084】
本実施形態では、制御部19が芳香射出装置9による芳香26の射出制御にあたり利用する芳香制御情報が、例えば図10に示す再生表示制御PCI93a及びアクセス制御DSI93bの少なくとも一方に含まれているものとする。この芳香制御情報は、例えば射出タイミング時刻、射出すべき芳香の種類、及び、射出しているべき期間を表す芳香射出期間を含んでいる。本実施形態では、これらの情報を総称して「芳香フラグ」と呼ぶ。
【0085】
より具体的には、この芳香制御情報のデータ項目としては、必要に応じて次のような内容のいずれか又はこれらいずれかの組み合わせを選択して採用することができる。
項目1:芳香発生タイミング情報(芳香26を発生させたい時分秒などのタイムスタンプ)
項目2:芳香持続時間情報(上記再生期間に相当)
項目3:芳香の強さ情報(例えば1〜5のような5段階で表した芳香物質の量)
項目4:芳香成分情報1
項目5:芳香成分情報2
項目6:芳香成分情報3
項目7:芳香成分情報4
項目8:芳香成分情報5
項目9:消臭剤(脱臭気体)発生タイミング情報
項目10:消臭剤成分情報1
項目11:消臭剤成分情報2
項目12:消臭剤成分情報3
項目13:消臭剤成分情報4
項目14:消臭剤成分情報5
【0086】
従って芳香制御情報を参照すれば、その芳香フラグによって、逐次再生される映像などに同期して、どのような種類の芳香をどのようなタイミングでどの程度の期間(再生期間)にわたり射出すべきかについて分かるようになっている。このような芳香制御情報は、コンテンツフォーマットの時間軸に沿ってコンテンツデータに同期するように記録媒体に記録されている。この芳香制御情報としては、例えば、ある特定種類の芳香を、射出タイミング時刻が12分15秒から射出時間として30秒間にわたり指定されていることなどを例示することができる。
【0087】
本実施形態では、この芳香制御情報が後述するDVD制御情報に含められて、映像信号(や音信号)とともにDVDなどの記録媒体に記録されている。この記録媒体は、映像音響機器の一例としてのDVDプレーヤによって映像信号(や音信号)及びDVD制御情報が読み出されることと並列して、芳香伝達装置100によって芳香制御情報が読み出される。なお、この記録媒体に記録されている芳香制御情報は、コンテンツ作成者の意思により自由に設定することができる。また、上述以外のパラメータを芳香制御情報として定義してもよい。たとえば、芳香を射出する射出速度(伝送速度)を記述し、記述された射出速度に応じて芳香射出制御部27が芳香射出部25を制御するようにすることも可能である。
【0088】
芳香伝達装置100を内蔵する表示装置1は以上のような構成であり、次に図1〜図10を参照しつつこの芳香伝達装置100を内蔵する表示装置1の動作例について説明する。
【0089】
図11は、芳香伝達装置100の動作例を示すフローチャートである。
ステップS1では、制御部19によって、スイッチ部17の一部としてのプレイボタン(再生ボタン)がオン(ON)されたか否かを検出する。このプレイボタンがONとされた場合、指定されたタイトルのコンテンツを再生すべく、図示しないDVDプレーヤに内蔵するピックアップがDVDからコンテンツデータを読み出してコンテンツの再生の準備をする一方、この制御部19が次のようなステップS2を実行する。
【0090】
このステップS2では、DVDからDVD制御ファイルが読み出される。次にステップS3では、このDVD制御ファイルに含まれる芳香制御情報の芳香フラグが制御部19に転送される。
【0091】
このステップS4では、制御部19は距離計測装置6a、6bを各々制御し、視聴者の人数、各視聴者の鼻の位置及び、上記離間距離を計測する。これら距離計測装置6a,6bは表示パネル7の映像表示面からその映像表示面に対して垂直な方向を撮影可能なカメラを内蔵している。
【0092】
距離計測装置6a,6bは、各々内蔵するカメラによって撮影した視聴者の顔に関する画像から、この視聴者の鼻を画像処理によって認識する。これによって制御部19は、この画像処理によって認識された鼻の数に基づいて視聴者の人数を検出することができる。この検知処理では次のような検知ステップが実行されている。すなわちこの検知ステップでは、複数の対象者31a,31bの鼻を検知する。本実施形態では、制御部19が、近傍を撮影した画像から、このような画像処理によって2つの鼻を検出し、例えば2人の視聴者31a,31bが表示パネル7に対面していることを検出したものとする。
【0093】
次に制御部19は、この画像処理によって上記画像における視聴者31a,31bの鼻の位置を、例えばXY座標として特定する。さらに、この制御部19は、距離計測装置6a,6bに、各々これら視聴者31a,31bの鼻に向けて、例えば光及び超音波の少なくとも一方を照射させ、間接的に、上述した離間距離を計測する。
【0094】
これら距離計測装置6a,6bは、出力源の一例としての表示パネル7の映像表示面と視聴者31a,31bの鼻との離間距離を各々計測する。具体的には、これら距離計測装置6a,6bは、離間距離として、それぞれ、例えば図6に示すような視聴者31aの鼻からノズル9cまでの距離を表す第1の離間距離を計測したり、視聴者31bの鼻からノズル9dまでの距離を表す第2の離間距離を計測する。なお、この距離計測装置6による離間距離などの計測は、ステップS4を実行する時点の代わりに、電源スイッチがオンされた直後に行われるようにしても良い。
【0095】
このような計測結果などに応じて、制御部19は、距離計測装置6a近傍のノズル9cを視聴者31aに割り当てる一方、距離計測装置6b近傍のノズル9dを視聴者31bに割り当てる。このようにして、この制御部19は、複数の対象者31a,31b各々に対して、芳香射出装置9の各ノズル9c,9dを個別に対応させる(割当てステップに相当)。
【0096】
次にステップS5では、制御部19が、芳香26の伝送速度及びこの離間距離に基づいて、この芳香射出装置9のノズル9c,9dから各々射出された芳香26が視聴者31a,31bの鼻に到達するまでの所要時間を演算する。この演算式としては、次の式(1)のようになっている。芳香26の伝送速度は、室温(例えば20度)における芳香26の移動速度が記憶部13に記憶されており、ステップS5の実行前に予め設定されているものとする。また、芳香制御情報に射出速度が記述されている場合は記述されている射出速度を伝送速度とする。
【0097】
「補正タイミング時間」=「再生タイミング時間」−「映像表示面と芳香を感じる視聴者の鼻との距離」÷「芳香の伝送速度」 ・・・ (1)
なお、式(1)における「映像表示面と芳香を感じ取る視聴者の鼻との距離」は上記「離間距離」に相当し、「芳香の伝送速度」は上記「伝送速度」に相当する。
【0098】
次にステップS6では、この制御部19が、この演算結果としての所要時間に応じて、上記補正タイミング時間を、芳香射出装置9のノズル9c,9dによって実際に芳香26を射出すべきタイミングとしてセットする。このとき制御部19は、このような補正タイミングを、ノズル9c,9dごとに独立してセットしている。なお、制御部19は、ノズル9c,9dごとに独立して補正タイミングをセットせず、このような補正タイミングを一律にセットしても良い。
【0099】
次にステップS7では、DVDに記録されているコンテンツデータに基づくコンテンツ(実体内容情報)が再生される。制御部19は、このようなコンテンツの再生に同期させて、この芳香制御情報の芳香フラグに基づいて、補正タイミング時間にて再生期間にわたり芳香射出装置9を作動させるべく準備する。
【0100】
この準備としては、例えば、上述のようにセットされたタイミングによって、上述のように芳香射出装置9を作動させようとした本来の再生タイミング(本実施形態では「再生タイミング」と呼んでいる)から、上記所要時間分、この芳香射出装置9の射出タイミングをシフトさせる。本実施形態では、このようにシフトさせた射出タイミングを「補正タイミング」と呼んでいる。
【0101】
次にステップS8では、制御部19が、現在の時刻が補正タイミング時間であるか否かを確認する。現在の時刻がこの補正タイミング時間でない場合、制御部19が、現在の時刻がこの補正タイミング時間となるまで繰り返し、現在の時刻が上述した補正タイミング時間であるか否かの確認処理を繰り返す一方、現在の時刻がこの補正タイミング時間である場合、この制御部19が、次のステップS9を実行する。
【0102】
このステップS9では、次のような制御ステップを実行する。この制御ステップでは、上述した検知ステップにおいて鼻が検知された各視聴者31a,31bに対して各ノズル9c,9dを個別に対応させ、芳香を射出する複数のノズル9c,9dを備える芳香射出手段9の上記芳香射出装置9の各ノズル9c,9dによる芳香の射出を独立して制御する。
【0103】
このときこのステップ9では、この芳香射出装置9が、各ノズル9c,9dを用いて、このような制御部19の制御によって、各々独立させて上記再生タイミングから補正タイミングにシフトさせて芳香26を次のように射出するようになる。具体的には、制御部19は、芳香制御情報の芳香フラグに応じて、芳香メインタンク29から第1基本芳香29aなどの好適な基本芳香のいずれか又はこれらいずれかの組み合わせを選択すべくコック28を制御する。
【0104】
すると、芳香混合部21には、このコック28を経由して所望の基本芳香29aなどが蓄積され、所望の種類の芳香(の気団)26が蓄積される。この制御部19は、芳香サブタンク23を制御し、芳香混合部21にて混合し終わった芳香26を取り込む。そして芳香射出制御部27は、芳香射出部25が未使用状態であることを確認した後に、芳香サブタンク23に取り込んだ芳香26を芳香射出部25に取り込む。
【0105】
そして制御部19は、芳香制御情報の芳香フラグに応じた条件で圧電素子25bを作動させ、この芳香射出部25の内部の体積を再生期間にわたり変化させることにより、この芳香射出部25に取り込まれた芳香26を所定の伝送速度で射出する。
【0106】
このようにすると、視聴者31a,31bが、接している映像や音に同期させた芳香26を感じ取ることができることから、視覚や聴覚によりこれら映像や音を楽しむことができるばかりでなく、さらに嗅覚により、これら映像や音に合わせた芳香26を楽しむことができる。しかも視聴者31a,31bには、各々対応する芳香射出装置9のノズル9c,9dを用いて独立して芳香が射出されるため、両ノズル9c,9dが各々射出した芳香同士が干渉したり混ざり合うことがなくなる。
【0107】
次にステップS10では、制御部19が、このような再生期間が経過すると、このように射出した芳香26を消失させるべく、この芳香射出装置9に脱臭気体を射出させる。このときこの制御部19は、上記検知ステップにおいて鼻が検知された各上記対象者31a,31bに対して各上記ノズル9c,9dを個別に対応させ、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dによる脱臭気体の射出を独立して制御する。具体的には、制御部19は、芳香メインタンク29から基本消臭剤29gを選択すべくコック28を制御する。なお、この基本消臭剤29gは、上述した脱臭気体を生じさせるためのものである。
【0108】
すると、芳香混合部21には、このコック28を経由して基本消臭剤29gが脱臭気体として蓄積される。この制御部19は、芳香サブタンク23を制御し、芳香混合部21から脱臭気体を取り込む。そして制御部19は、芳香射出部25が未使用状態であることを確認した後に、この芳香サブタンク23に取り込んだ脱臭気体を芳香射出部25に取り込む。
【0109】
そして制御部19は、芳香制御情報の芳香フラグに応じた条件で圧電素子25bを作動させ、この芳香射出部25の内部の体積を再生期間にわたり変化させることにより、この芳香射出部25に取り込まれた脱臭気体を所定の伝送速度で射出する。
【0110】
このようにすると、視聴者31a,31bが、接している映像や音に同期させた芳香26を感じつつも、このような脱臭気体によりその芳香26が好適なタイミングで消臭されることから、新たに射出された他の芳香26と混合せず、これら映像や音に合わせた芳香26を楽しむことができる。
【0111】
次にステップS11では、再生している1つのタイトルのコンテンツが終了であるか否か、つまり、DVDプレーヤがDVDから読み出すべきコンテンツデータが終了であるか否かを判断する。1つのタイトルのコンテンツの終了にまでに至っていない場合には、DVDプレーヤがDVDからこのタイトルのコンテンツの再生を継続する。一方、制御部19は、上記ステップS8〜ステップS10の実行を再度行う。一方、その1つのタイトルの再生を終了する場合には、そのDVDプレーヤがDVDからのコンテンツの再生(プレイ)を停止(オフ)とする(ステップS12)。
【0112】
上記実施形態における芳香伝達装置100は、芳香を射出する複数のノズル9c,9dを備える芳香射出手段9(芳香射出装置に相当)と、対象者の特定部位(例えば鼻)を検知する検知手段6(距離計測装置に相当)と、上記検知手段6によって特定部位が検知された各上記対象者に対して各上記ノズル9c,9dを個別に対応させ、上記芳香射出手段の各ノズル9c,9dによる芳香の射出を独立して制御する制御手段19(制御部に相当)とを有する。
【0113】
上記実施形態における芳香伝達方法は、複数の対象者31a,31bの特定部位を検知する検知ステップと、上記検知ステップにおいて特定部位が検知された各上記対象者31a,31bに対して、芳香を射出する複数のノズル9c,9dを備える芳香射出手段9の各上記ノズル9c,9dを個別に対応させ、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dによる芳香の射出を独立して制御する制御ステップとを有する。
【0114】
以上のようにすると、芳香射出手段9のノズル9c,9dが、各々、対応する複数の対象者31a,31bに対して芳香を射出するようになるため、確実に、各対象者31a,31bにほぼ同時期に芳香を楽しませることができる。
【0115】
上記実施形態における芳香伝達装置100においては、上記構成に加えてさらに、上記制御手段19は、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dと各上記対象者31a,31bの特定部位との位置に基づいて、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dのうちから、各上記対象者31a,31bに対応する個別のノズルを選択して割り当てる。
【0116】
このようにすると、芳香射出手段9の各ノズルは、各対象者との離間距離に応じて、芳香を射出すべき各対象者が個別に割り当てられるため、適切に、各対象者に対して同時期に射出した芳香を提供することができる。
【0117】
上記実施形態における芳香伝達装置100においては、上記構成に加えてさらに、制御部19は、上記個別のノズルとして、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dのうち、各ノズル9c,9dから各対象者31a,31bの特定部位までの離間距離がより短い方を選択する。
【0118】
このようにすると、芳香射出手段9の各ノズル9c,9dは、対応する対象者31a,31bまでの離間距離が短いことから、射出した芳香が拡散する前に確実に各対象者31a,31bに到着する。このため芳香射出手段9の各ノズル9c,9dが同時期に射出した同じ芳香が確実に各対象者31a,31bのもとへ提供することができる。
【0119】
上記実施形態における芳香伝達装置100においては、上記構成に加えてさらに、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dの向きを変更する射出方向変更手段14(射出方向変更部に相当)を有し、上記制御手段19は、複数の対象者の特定部位(例えば視聴者の鼻に相当)の位置関係に応じて、上記射出方向変更手段14を制御する。
【0120】
このようにすると、芳香射出手段9の各ノズル9c,9dが、各々対応する対象者31a,31bの鼻に向けて確実に芳香を射出することができる。
【0121】
上記実施形態における芳香伝達装置100は、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dから各上記対象者31a,31bの特定部位までの離間距離に基づいて、上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dから射出された上記芳香が上記対象者31の特定部位に到達するまでの所要時間ΔTを演算し、上記所要時間に応じて上記芳香射出手段9の各ノズル9c,9dによる上記芳香の射出タイミングを補正する補正手段19(制御部)とを有する。
【0122】
以上のようにすると、芳香射出手段9の各ノズル9c,9dから射出した芳香は、映像及び音の少なくとも一方に合わせて、適切なタイミング(補正タイミング時間)で各視聴者31a,31bの鼻に到達する。このため、例えば映像に接している視聴者31a,31bは、それぞれ、この映像などに同期して提供された芳香によって違和感なくより臨場感豊かに、この映像などを楽しむことができる。
【0123】
上記実施形態における芳香伝達装置100は、上記構成に加えてさらに、映像及び音の少なくとも一方を出力する出力源7,4(表示パネル、スピーカー)を有し、上記制御手段19は、上記対象者が芳香を伴う映像または音を視聴するタイミングと、上記芳香を感じるタイミングが一致するように、上記射出タイミングを補正する。
【0124】
このようにすると、芳香射出手段9の各ノズル9c,9dから射出された芳香26は、出力源7,4から出力された映像及び音の少なくとも一方に合わせて、適切なタイミング(補正タイミング時間)で各視聴者31a,31bの鼻に到達する。このため、この映像などに接している視聴者31a,31bは、この出力源7,4から出力された映像などに同期して提供された芳香26によって違和感なくより臨場感豊かに、この映像などを楽しむことができる。
【0125】
上記実施形態における芳香伝達装置100は、上記構成に加えてさらに、上記映像及び音の少なくとも一方がコンテンツデータとして記録媒体(DVD)に記録されており、この記録媒体は、上記映像及び音の少なくとも一方の内容自体を表す実体内容情報と、上記芳香射出手段9による芳香の射出を制御するための芳香制御情報とを含み、上記制御手段19(芳香射出制御部)は、上記記録媒体から取得した上記芳香制御情報に基づいて上記芳香射出手段9を制御する。
【0126】
このような構成とすると、芳香制御情報を記録した記録媒体を用意しておけば、制御手段19は、この記録媒体から取得した芳香制御情報に基づいて、映像などの再生に同期させて所望の芳香を射出することができる。すると視聴者31は、再生された映像などを視覚などによって楽しむことができるとともに、この映像などに同期した芳香26を嗅覚によって楽しむことで、より臨場感豊かに映像などを楽しむことができる。
【0127】
上記実施形態における芳香伝達装置100は、上記構成に加えてさらに、上記芳香制御情報は、少なくとも芳香発生タイミング情報、芳香成分情報を含み、上記制御手段19は、上記芳香発生タイミング情報が指定する芳香発生タイミングを、上記所要時間だけ前もって芳香が射出されるように上記射出タイミングを補正する。
【0128】
このような構成とすると、制御手段19の制御によって上記所要時間だけ前もって射出された芳香26は、出力源7,4から出力された映像及び音の少なくとも一方に合わせて、適切なタイミング(補正タイミング時間)で視聴者31の鼻に到達する。このため、この映像などに接している視聴者31は、この映像などに同期して提供された芳香26によって違和感なくより臨場感豊かに、この映像などを楽しむことができる。
【0129】
上記実施形態における芳香伝達装置100は、上記構成に加えてさらに、上記芳香射出手段9(芳香射出装置)の各ノズル9c,9dは、射出すべき複数の芳香の成分の1つとして用意した、上記射出済みの芳香を消失させるための脱臭気体29gを射出する。
【0130】
このような構成とすると、芳香射出手段9によって映像などに応じて次々に射出される芳香26が必要に応じて逐一脱臭されるため、瞬間的な芳香26を視聴者31に与えたり、不要な残り香が無くなるばかりでなく、異なるタイミングに射出された芳香26が互いに混じり合うことがなくなる。このため、一般的に嗅覚は視覚などに比べて鈍いものの、視聴者31は、映像などに応じて射出された芳香を、より明瞭に区別しつつ映像などを楽しむことができる。
【0131】
上記実施形態における芳香伝達装置100は、上記構成に加えてさらに、上記制御手段19(芳香射出制御部)が、上記離間距離に基づいて、上記脱臭気体が上記視聴者31の特定部位に到達するまでの所要時間を演算し、上記所要時間に応じて上記脱臭気体の射出タイミングを補正して脱臭気体射出手段9を制御する脱臭気体射出補正手段を備える。
【0132】
このような構成とすると、視聴者31に対して既に射出済みの芳香26をさらに好適なタイミングで消失させつつ、この視聴者31に新たな芳香26を射出することで、この視聴者31に映像などをより臨場感豊かに楽しませることができる。
【0133】
<第2実施形態>
図12は、第2実施形態としての芳香伝達装置100を備える表示装置1の外観の一例を示す正面図である。
第2実施形態における芳香伝達装置100a及び表示装置1aは、各々、第1実施形態における芳香伝達装置100及び表示装置1とほぼ同様の構成でありほぼ同様の動作である。このため第2実施形態では、同一の構成及び動作については第1実施形態における図1乃至図11と同一の符号を用いるとともに、その説明を省略し、以下の説明では異なる点を中心として説明する。
【0134】
上述した両スピーカー4の間には、上記芳香伝達装置100の一部を構成する芳香射出装置9fが設けられている。この芳香射出装置9f(芳香射出手段に相当)は、出力源としての表示パネル7又はスピーカー4の近傍に、その一部であるノズル9gが露出しており、このノズル9gから視聴者(対象者の一例)に対して芳香を射出する機能を有する。
【0135】
この芳香射出装置9fは、第1実施形態における芳香射出装置9とほぼ同様の構成であるが、部材9hの構成が異なっている。この部材9hは、例えば可撓性を有するフレキシブルな材質により構成されている。以下の説明では、この部材を「フレキシブル部材」と呼ぶとともに、そのノズル全体を「フレキシブルノズル」と呼ぶ。
【0136】
この芳香射出装置9fは、第1実施形態とほぼ同様に芳香及び脱臭気体の少なくとも一方を射出する機能を有するが、この射出の際にフレキシブル部材9hが所望に変形された状態で、所望の形態の芳香を射出したり脱臭気体を射出する。
【0137】
フレキシブルノズル9gは、第1実施形態とほぼ同様に射出開口部9a及び吸引開口部9bを有するが、これら射出開口部9a及び吸引開口部9bの境界を構成する隔壁の代わりに、この隔壁とほぼ同様にこれら射出開口部9a及び吸引開口部9bの境界を構成する、可撓性を有するフレキシブル部材9hを備えている。
【0138】
図13は、第2実施形態におけるフレキシブルノズル9gの構成例を示す断面図であり、図14及び図15はそれぞれフレキシブルノズル9gが変形した様子の一例を示す断面図である。なお、図示したフレキシブルノズル9gは、フレキシブル部材9hが変形する様子を概念的に簡素化して図示されている。すなわち、このフレキシブルノズル9gにおいては吸引開口部9bの構成を省略するとともに、射出開口部9aと吸引開口部9bとを連結する連結部などの図示を省略している。
【0139】
このフレキシブル部材9hは、その外部から力が加えられて変形してもよいし、このフレキシブル部材9hが自ら変形する形態であっても良い。このフレキシブル部材9hは、このような後者の形態として、例えば圧電素子を材質とすることができる。本実施形態では、このフレキシブル部材9hが前者の形態であるものと例示する。
【0140】
図2に示す制御部19aは、形状制御手段に相当し、近傍を撮影した画像に含まれる複数の視聴者の鼻の位置関係に応じて図14及び図15に示すようにフレキシブル部材9hを変形させ、芳香射出装置9fによる芳香の射出を制御する。この制御部19aのその他の機能については、上述した制御部19の機能とほぼ同様であるため、説明を省略する。このフレキシブル部材9hとしては、例えばゴム、プラスティック、形状記憶合金などの可撓性を有する材質を挙げることができる。
【0141】
具体的には、このフレキシブルノズル9gは、フレキシブル部材9hに対して押圧する押圧部9iを有する。この押圧部9iは、例えばフレキシブル部材9hの外周に沿って配列している。この押圧部9iは押圧手段に相当し、フレキシブル部材9hを外部から押圧することによりこのフレキシブル部材9hを変形させる。さらに上述した制御部19aは、複数の視聴者の鼻の位置関係に応じてこの押圧部9iを制御する。
【0142】
具体的には、このフレキシブルノズル9gは、制御部19の制御に応じて、例えば図14に示すように縦方向につぶれた楕円形状となったり、図15に示すように横方向につぶれた楕円形状となる。
【0143】
このようにすると、フレキシブルノズル9gは、図14に示すように変形した場合においては複数の視聴者が横方向に並んでいる場合に、ほぼ同時期に芳香を到達させることができるようになる。一方、このフレキシブルノズル9gは、図15に示すように変形した場合においては複数の視聴者の一方が起立しており他方が着座している場合でも、複数の視聴者に対してほぼ同時期に芳香を提供することができる。
【0144】
第2実施形態における芳香伝達装置100a及び表示装置1aは以上のような構成であり、次に図1から図15を参照しつつ芳香伝達装置100aの動作例について説明する。
【0145】
図16は、芳香伝達装置100aの動作例を示すフローチャートである。なお、図16に示すフローチャートは、第1実施形態における図11に示すフローチャートとほぼ同様であるので、異なる部分を中心として説明する。
【0146】
図16に示すフローチャートにおいては、図11に示すフローチャートとはステップS6とステップS7の間にステップS6aが設けられている点が異なっている。このステップS6aでは、制御部19が、押圧部9iを制御してフレキシブルノズル9gの形状を変形する。このステップ6aでは、第1実施形態における検知ステップ(ステップS4に相当)において鼻が検知された複数の視聴者31a,31bの鼻の位置関係に応じて、後で芳香射出装置9による芳香の射出を制御するために、芳香を射出するフレキシブルノズル9gを備える芳香射出手段9のフレキシブルノズル9gを変形させている(形状制御ステップに相当)。
【0147】
具体的には、上述した制御部19aは、フレキシブル部材9hの外周に沿って配列している押圧部9iを制御し、上述した距離計測装置6が近傍を撮影した画像に含まれる複数の視聴者31a,31bの鼻の位置関係に応じて、フレキシブル部材9hを外部から押圧することにより、フレキシブルノズル9hを変形させる。具体的には、このフレキシブルノズル9gは、例えば図14に示すフレキシブル部材9hのように縦方向においてつぶれた楕円形状となったり、図15に示すフレキシブル部材9hのように横方向においてつぶれた楕円形状となる。
【0148】
図17は、芳香射出装置9の各ノズル9c,9dが変形した様子の一例を示す断面図であり、図18は、上述のような芳香伝達装置100aの動作例によってフレキシブルノズル9gから芳香が射出された様子の一例を示す正面図である。
【0149】
この芳香伝達装置100aは、その制御部19の制御によって、そのフレキシブルノズル9gが、図17に示すようにフレキシブル部材9hが変形している。具体的には、このフレキシブル部材9hは、楕円形状のリング上であり、やや傾いている。この傾きは、視聴者31a,31bの鼻の位置が相対的に傾いているためである。
【0150】
このため、フレキシブルノズル9gが射出した芳香26は、このフレキシブル部材9hの変形状態に応じて、図18に示す形態となって視聴者31a,31bに到達する。すると、このように射出された芳香26は、視聴者31a,31bを網羅するようになる。このため視聴者31a,31bは、各々同時期に射出された芳香26を鼻で嗅ぐことができる。
【0151】
図19は、2人の視聴者31a,31bに芳香26が射出される様子を上方から見た場合の一例を示す図である。なお、図19は、第1実施形態における図6とほぼ同様の構成であるため、異なる点を中心として説明する。
【0152】
この表示パネル7のほぼ中央部には芳香射出装置9が設けられている。例えば2人の視聴者31a,31bは、表示装置1の表示パネル7の映像表示面に対面するように、その映像表示面の中心を挟んでその映像表示面の左右において、その映像表示面にほぼ沿った方向に並んで配列している。すなわち視聴者31a,31bは、例えば表示パネル7の正面であってその映像表示面の左右に各々配列している。
【0153】
ここで本実施形態では、制御部19aは、両端の距離計測装置6a,6bによって各々計測された視聴者までの第1の距離及び第2の距離に基づいて、芳香射出装置9の各ノズルから視聴者31a,31bまでの離間距離を間接的に計測している(距離計測手段に相当)。芳香伝達装置100は、制御部19の制御によって芳香射出装置9のフレキシブルノズル9gに、補正タイミングにて視聴者31a,31bの方向に、所望の態様とした芳香26を射出させている。
【0154】
具体的には、このような状況では、例えば視聴者31a及び視聴者31bがソファなどに座り、表示パネル7に表示されている映画を鑑賞している場面を例示することができる。距離計測装置6a,6bは、それぞれ視聴者31a,31bとの離間距離を計測するとともに、近傍を撮影した画像に基づいて視聴者31a,31b各々の鼻の位置を計測する。
【0155】
そして制御部19aは、視聴者31a,31bの鼻の位置関係に応じて、フレキシブル部材9hの周囲に配置した押圧部9iを制御する。すると、この押圧部9iが、このフレキシブル部材9hを変形させる。
【0156】
本実施形態では、さらに制御部19aが次のようにこのフレキシブル部材9を変形させるようにしても良い。すなわち、これまでの説明においては、この制御部19aが、押圧部9iにより、芳香の射出口であるフレキシブル部材9hを、その内周面が芳香の射出中心方向とほぼ平行となるように保ちながら、その射出中心方向にほぼ垂直な方向に押圧させて変形させていた。このような変形例によれば、制御部19aが、押圧部9iを制御し、例えば2人の視聴者の鼻が含まれるようにフレキシブル部材9hを楕円形とするなどし、これら2人に芳香を射出させることができた。しかしながら本実施形態では、フレキシブル部材9の変形形態はこれに限られない。
【0157】
すなわちフレキシブル部材9hは、その内周面が、例えば漏斗の内周面のように芳香の射出中心方向から所定の傾斜をなす形状であり、その漏斗形状の内周面で囲まれる芳香の吹き出し流路が次のように変形する形態であっても良い。具体的には、上述した制御部19aが、押圧部9iを制御して、このような芳香の吹き出し経路内に構成されている漏斗形状の内周面を、その射出中心方向からの角度が変わるように変形させてもよい。なおここでいう「射出中心方向」とは、フレキシブル部材9hによる芳香の吹き出し経路内の漏斗形状の先端から広がる開口部のほぼ中心を通る線の方向を表している。また本実施形態では、この内周面から射出中心方向までの角度を「傾斜角」と呼ぶ。
【0158】
この制御部19aは、フレキシブルノズル9gと視聴者の鼻までの距離の違いに応じて、その視聴者の鼻へ到達した際における必要な芳香の拡散面積が異なるため、押圧部9iを制御してフレキシブル部材9hの傾斜角を変形させて調整するようにしてもよい。具体的には、制御部19aは、例えばフレキシブルノズル9gと各視聴者の鼻との離間距離が短い場合には、射出された芳香が短い距離で複数の視聴者の各鼻を覆う面積にまで拡散するように、傾斜角を大きくするよう押圧部9iを制御する。一方、この制御部19aは、例えばフレキシブルノズル9gと各視聴者の鼻との離間距離が長い場合には、射出された芳香が長い距離で複数の視聴者の各鼻を覆う面積にまで拡散する程度に、傾斜角を小さくするよう押圧部9iを制御する。
【0159】
複数の視聴者が存在する場合、鼻も複数あることになる。この場合の離間距離の決め方は、フレキシブルノズル9gから最も遠い位置にある視聴者の鼻との離間距離としても良いし、フレキシブルノズル9gと各鼻とのそれぞれの離間距離を算出し、それらの離間距離の平均をとってもよい。離間距離の決め方はこれらの方法に限らず様々な方法を用いることができる。つまり制御部19aは複数の対象者の特定部位(例えば鼻)の位置関係と、ノズルと複数の視聴者の特定部位(例えば鼻)の位置との離間距離に応じてフレキシブルノズル9gを変形させる制御を行うのである。
【0160】
以上のように、上記実施形態における芳香伝達装置100aにおいては、変形ノズル9g(フレキシブルノズルに相当)から芳香を射出する芳香射出手段9(芳香射出装置に相当)と、近傍を撮影した画像に含まれる複数の対象者31a,31bの特定部位(例えば鼻)の位置関係に応じて上記変形ノズル9gを変形させ、上記芳香射出手段9による芳香の射出を制御する形状制御手段19a(制御部に相当)とを有する。
【0161】
上記実施形態における芳香伝達方法においては、複数の対象者31a,31bの特定部位(例えば鼻)を検知する検知ステップと、上記検知ステップにおいて特定部位が検知された上記複数の対象者31a,31bの特定部位の位置関係に応じて、芳香を射出する変形ノズル9gを備える芳香射出手段9の変形ノズル9g(フレキシブルノズルに相当)を変形させ、上記芳香射出手段9による芳香の射出を制御する制御ステップとを有する。
【0162】
以上のようにすると、制御手段19aが、複数の対象者31a,31bの鼻の位置関係に応じて、変形ノズル9gの形状を変形させる。すると、芳香射出手段9によって変形ノズル9gから射出された芳香は、これら複数の対象者31a,31bの各鼻を網羅する形状を形成しつつ雰囲気中を進む。従ってこれら複数の対象者31a,31bには、この芳香がほぼ同時期に到達するようになり、この芳香をほぼ同時期に楽しむことができる。
【0163】
上記実施形態における芳香伝達装置100aにおいては、上記構成に加えてさらに、上記変形ノズル9gを外部から押圧することにより上記変形ノズル9gを変形させる押圧手段9iを有し、上記形状制御手段19aは、上記複数の対象者31a,31bの特定部位の位置関係に応じて上記押圧手段9iを制御する。
【0164】
このようにすると、変形ノズル9gは、自らの周りにおける押圧手段9iの配置状況に応じて自由に変形され、様々な態様の芳香を射出することができる。このため複数の対象者は、同一の芳香を所望の態様とするとともに同一のタイミングで嗅ぐことができ、それぞれ、このような所望の態様の芳香を同時期に楽しむことができる。
【0165】
上記実施形態における芳香伝達装置100aにおいては、上記構成に加えてさらに、上記変形ノズル9gは、上記制御手段19aによる制御によって自ら変形する。
【0166】
このようにすると、変形ノズル9gは、形状制御手段19aによる制御に応じて機敏に変形し、芳香の射出タイミングまでに確実に形状を変形しておくことができる。このため複数の対象者は、同一の芳香を同一のタイミングで嗅ぐことができ、それぞれ、このような芳香を同時期に楽しむことができる。
【0167】
<第3実施形態>
図20は、第3実施形態における芳香伝達装置100,100aに提供すべき芳香制御情報などを送信する送信装置50の構成例を示すブロック図である。
図21は、第3実施形態における芳香伝達装置100,100aに提供すべき芳香制御情報を受信する受信装置60の構成例を示すブロック図である。
【0168】
第3実施形態における芳香伝達装置100,100a及び表示装置1,1aは、各々、第1実施形態における芳香伝達装置100,100a及び表示装置1,1aとほぼ同様の構成でありほぼ同様の動作である。このため第3実施形態では、同一の構成及び動作については第1実施形態における図1乃至図11と、第2実施形態における図12乃至図15と同一の符号を用いるとともに、その説明を省略し、以下の説明では異なる点を中心として説明する。
【0169】
第1実施形態及び第2実施形態では、制御部19が、DVDからコンテンツデータ(実体内容情報)とともに芳香制御情報を取得していたが、第3実施形態では、この制御部19が、いわゆるディジタル放送における放送データから、コンテンツデータ(実体内容情報)とともに芳香制御情報(前述のDVDと同様な)を取得している。つまり第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態のようにDVDなどの記録媒体に芳香制御情報を入れておいたのに対して、ストリーム系の放送データにおける制御ファイルに芳香制御情報を入れておく点が異なっている。
【0170】
図20に示す送信装置50は、例えばいわゆるディジタル放送事業者において設置された送信設備の一部である。この送信装置50は、所定のコンテンツの再生に用いる放送データを送信する機能を有する。この送信装置50は、符号化部51,52,53、グループ化パケット多重化部54(以下「パケット多重化部54」という)、変調部55、送信部56及びアンテナ57を備えている。
【0171】
符号化部51,52,53は、それぞれ、芳香制御情報、映像信号及び音信号を符号化(圧縮)する機能を有する。パケット多重化部54は、これら符号化された芳香制御情報、映像信号及び音信号をグループ化しつつパケット単位で多重化する機能を有する。
【0172】
このときパケット多重化部54は、例えば多重化したデータに誤り訂正符号を付している。変調部55は、多重化されたこれらデータをディジタル変調し、送信部56に出力する。この送信部56は、引き渡されたデータをアンテナ57を経由して放送データとして送信する。
【0173】
一方、図21に示す受信装置60は、例えば一般家庭に設置される受信チューナである。この受信チューナは、その放送データを受信する機能を有する。この受信装置60は、符号化部61,62,63、誤り訂正多重分離部64、変調部65、送信部66及びアンテナ67を備えている。
【0174】
受信部66は、アンテナ67を介して受信した放送データを復調部66に引き渡す。この復調部66は、この放送データをディジタル復調し、誤り訂正多重分離部64に引き渡す。
【0175】
この誤り訂正多重分離部64は、ディジタル復調された放送データについて誤り訂正処理を実行する。次にこの誤り訂正多重分離部64は、多重化された芳香制御情報、映像信号及び音信号を各々分離し、符号化部61,62,63に引き渡す。これら符号化部61,62,63は、各々芳香制御情報、映像信号及び音信号を各々復号化し、芳香制御情報、映像信号及び音信号を生成する。
【0176】
上記制御部19は、以上のように受信装置60によって送信装置50から受信した芳香制御情報を取得する。この制御部19は、この映像信号に基づいて表示パネル7に表示された映像に同期させるとともに、この音信号に基づいてスピーカー4に出力された音に同期させて、この芳香制御情報に基づいて芳香射出装置9を制御する。このとき、この制御部19は、第1実施形態と同様に芳香制御情報の芳香フラグの内容に応じて、芳香射出装置9に、上記再生タイミング時間の代わりに、補正タイミング時間から再生期間に渡り、所望の芳香26を射出させるように制御している。
【0177】
第3実施形態における芳香伝達装置100,100aは、上記第1実施形態又は第2実施形態の構成に加えてさらに、映像及び音の少なくとも一方がコンテンツデータとして配信されており、このコンテンツデータは、上記映像及び音の少なくとも一方の内容自体を表す実体内容情報と、上記芳香射出手段9による芳香の射出を制御するための芳香制御情報とを含み、上記制御手段19(制御部)は、受信した上記芳香制御情報に基づいて上記芳香射出手段9(芳香射出部)を制御する。
【0178】
このような構成とすると、配信すべき実体内容情報(コンテンツデータ)とともに芳香制御情報を用意しておけば、制御手段19(制御部)は、この取得した芳香制御情報に基づいて、映像などの再生に同期させて、芳香射出装置9に所望の芳香26を射出させる。すると視聴者31は、再生された映像などを楽しむことができるとともに、この映像などに同期した芳香26が提供されることで、より臨場感豊かに映像などを楽しむことができる。
【0179】
上記実施形態における芳香伝達装置100,100aは、上記構成に加えてさらに、上記芳香制御情報は、少なくとも芳香発生タイミング情報、芳香成分情報を含み、上記制御手段19は、上記芳香発生タイミング情報が指定する芳香発生タイミングを、上記所要時間だけ前もって芳香が射出されるように上記射出タイミングを補正する。
【0180】
このような構成とすると、制御手段19の制御によって上記所要時間だけ前もって射出された芳香26は、出力源7,4から出力された映像及び音の少なくとも一方に合わせて、適切なタイミング(補正タイミング時間)で視聴者31の鼻に到達する。このため、この映像などに接している視聴者31は、この映像などに同期して提供された芳香26によって違和感なくより臨場感豊かに、この映像などを楽しむことができる。
【0181】
なお、本実施形態は、上記に限られず、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
上記第3実施形態では、いわゆるディジタル放送に適用した形態を例示したが、これに限られず、いわゆるアナログ放送に適用しても良い。
【0182】
上記実施形態では、記録媒体の一例としてのDVDに、コンテンツとともに芳香制御情報を記録していたが、例えばいわゆるBlu−Rayディスクのユーザエリアに記録しておき、コンテンツの出力に同期させて芳香26を出力するようにしても良い。また、ディジタル/アナログ放送波に限らずインターネットで配信されるデータストリーム中に芳香制御情報を記録しても良い。また上記コンテンツデータが芳香制御情報を含んでいてもよい。
【0183】
上記実施形態においては、芳香伝達装置100が、映像などのコンテンツの出力に同期させて芳香26を出力している場合に、このコンテンツを聴従させて芳香26を射出している旨の表示(例えば「芳香タイム」という表示)を行うことができる。
【0184】
上記実施形態では、芳香伝達装置100が、映像などのコンテンツの出力に同期させて好適なタイミングで芳香26を射出することを例示しているが、これに限られない。すなわち、上記実施形態では、例えば視聴者31が食事中である場合のように、このように射出すべき芳香26の他にも香りが存在しうるときには、芳香伝達装置100に、芳香26の射出についてオン又はオフを切り替える機能を備えていても良い。なお、このオン又はオフを切り替える機能としては、視聴者31がリモートコントローラによって芳香伝達装置100に指示を与えることができるようにしてもよい。
【0185】
また、上記実施形態では、視聴者31が1名であることを例示しているが、これに限られず、視聴者31が複数名であっても良い。この場合、芳香伝達装置100は、その距離計測装置6によって視聴者31が複数いることを認識した場合、制御部19が、芳香射出装置9に射出させるべき芳香26の量を増加させるようにしてもよい。
【0186】
上記実施形態においては、芳香射出装置9が、芳香26のみならず脱臭気体の両方を射出しているが、これに限られず、芳香26と脱臭気体を別々の射出部から射出する形態を採用しても良い。
【0187】
上記実施形態では、表示装置1が芳香伝達装置100を内蔵している形態を例示しているが、これに限られず、芳香伝達装置100が表示装置1とは別体となっている形態であっても良い。さらに芳香伝達装置100自体が、映像及び音の少なくとも一方を出力する出力源(表示パネル7及びスピーカー4の少なくとも一方)を含んだ表示装置1であってもよい。
【0188】
上記実施形態においては、制御部19が、近傍を撮影した画像に含まれる視聴者31a,31bの特定部位として顔の鼻を認識しているが、これに限られず、その他の部位を認識しても良い。つまり制御部19は、最終的に鼻の方向を特定できるやり方であれば、この近傍を撮影した画像から視聴者31aなどのどのような部位を特定しても良い。
【0189】
上記実施形態は、上述した表示装置1のみならず、その代わりにコンピュータにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】第1実施形態としての芳香伝達装置を備える表示装置の外観の一例を示す正面図である。
【図2】図1に示す表示装置が内蔵する芳香伝達装置の電気的な構成例を示すブロック図である。
【図3】図2に示す芳香射出部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す芳香サブタンクの構成例を示す断面図である。
【図5】芳香射出装置が視聴者に対して芳香を射出する様子を側方から見た場合の一例を示す平面図である。
【図6】芳香射出装置が視聴者に対して芳香を射出する様子を上方から見た場合の一例を示す平面図である。
【図7】芳香射出装置が視聴者に対して芳香を射出する様子を上方から見た場合の別の一例を示す平面図である。
【図8】上記DVDへコンテンツデータ及び芳香制御情報を記録する記録装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】ビデオファイルのフォーマットの一例を示す図である。
【図10】制御部が用いる芳香制御情報などのフォーマット例を示す図である。
【図11】芳香射出装置の動作例を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態としての芳香伝達装置を備える表示装置の外観の一例を示す正面図である。
【図13】第2実施形態におけるフレキシブルノズルの構成例を示す断面図である。
【図14】フレキシブルノズルが変形した様子の一例を示す断面図である。
【図15】フレキシブルノズルが変形した様子の一例を示す断面図である。
【図16】芳香伝達装置の動作例によってフレキシブルノズルから芳香が射出された様子の一例を示す正面図である。
【図17】芳香射出装置の各ノズルが変形した様子の一例を示す断面図である。
【図18】上述のような芳香伝達装置の動作例によって芳香伝達装置のフレキシブルノズルから芳香が射出された様子の一例を示す正面図である。
【図19】2人の視聴者に芳香が射出される様子を上方から見た場合の一例を示す図である。
【図20】第3実施形態における芳香射出装置に提供すべき芳香制御情報を送信する送信装置の構成例を示すブロック図である。
【図21】第3実施形態における芳香射出装置に提供すべき芳香制御情報を受信する受信装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0191】
1 表示装置(出力装置に相当)
1a 表示装置(出力装置に相当)
4 スピーカー(出力源に相当)
6 距離計測装置(検知手段、距離計測手段に相当)
7 表示パネル(出力源に相当)
9 芳香射出装置(芳香射出手段に相当)
9c ノズル
9d ノズル
9e ノズル
9f 芳香射出装置(芳香射出手段に相当)
9g フレキシブルノズル、ノズル(変形ノズルに相当)
9h フレキシブル部材
14 射出方向制御部(射出方向制御手段に相当)
19 制御部(制御手段、補正手段、検知手段の一部に相当)
19a 制御部(形状制御手段、補正手段、検知手段の一部に相当)
27 芳香射出制御部(制御手段に相当)
100 芳香伝達装置
100a 芳香伝達装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香を射出する複数のノズルを備える芳香射出手段と、
対象者の特定部位を検知する検知手段と、
前記検知手段によって特定部位が検知された各前記対象者に対して各前記ノズルを個別に対応させ、前記芳香射出手段の各ノズルによる芳香の射出を独立して制御する制御手段と
を有することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の芳香伝達装置において、
前記制御手段は、
前記芳香射出手段の各ノズルと各前記対象者の特定部位との位置に基づいて、前記芳香射出手段の各ノズルのうちから、各前記対象者に対応する個別のノズルを選択して割り当てることを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項3】
請求項2記載の芳香伝達装置において、
前記制御手段は、
前記個別のノズルとして、前記芳香射出手段の各ノズルのうち、各前記ノズルから各前記対象者の特定部位までの離間距離がより短い方を選択することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項4】
変形ノズルから芳香を射出する芳香射出手段と、
複数の対象者の特定部位の位置関係に応じて前記変形ノズルを変形させ、前記芳香射出手段による芳香の射出を制御する形状制御手段と
を有することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項5】
請求項4記載の芳香伝達装置において、
前記変形ノズルを外部から押圧することにより前記変形ノズルを変形させる押圧手段を有し、
前記形状制御手段は、
前記複数の対象者の特定部位の位置に応じて前記押圧手段を制御することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項6】
請求項4記載の芳香伝達装置において、
前記変形ノズルは、前記制御手段による制御によって自ら変形することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか記載の芳香伝達装置において、
前記芳香射出手段の各ノズルから各前記対象者の特定部位までの離間距離に基づいて、前記芳香射出手段の各ノズルから射出された芳香が対応する各前記対象者の特定部位に到達するまでの所要時間を演算し、前記所要時間に応じて前記芳香射出手段の各ノズルによる前記芳香の射出タイミングを補正する補正手段を有することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項8】
請求項7記載の芳香伝達装置において、
映像及び音の少なくとも一方を出力する出力源を有し、
前記制御手段は、
前記対象者が芳香を伴う映像または音を視聴するタイミングと、芳香を感じるタイミングが一致するように、前記射出タイミングを補正することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の芳香伝達装置において、
前記芳香射出手段の各ノズルは、
射出すべき複数の芳香の成分の1つとして用意した、前記射出済みの芳香を消失させるための脱臭気体を射出することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項10】
請求項9記載の芳香伝達装置において、
前記補正手段は、
前記離間距離に基づいて、前記脱臭気体が前記対象者の特定部位に到達するまでの所要時間を演算し、前記所要時間に応じて前記脱臭気体の射出タイミングを補正することを特徴とする芳香伝達装置。
【請求項11】
複数の対象者の特定部位を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて特定部位が検知された各前記対象者に対して、芳香を射出する複数のノズルを備える芳香射出手段の各前記ノズルを個別に対応させ、前記芳香射出手段の各ノズルによる芳香の射出を独立して制御する制御ステップと
を有することを特徴とする芳香伝達方法。
【請求項12】
複数の対象者の特定部位を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて特定部位が検知された前記複数の対象者の特定部位の位置関係に応じて、芳香を射出する変形ノズルを備える芳香射出手段の変形ノズルを変形させ、前記芳香射出手段による芳香の射出を制御する形状制御ステップと
を有することを特徴とする芳香伝達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−90159(P2009−90159A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260257(P2007−260257)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】