芳香族ポリエステル樹脂及びそれを用いた電子写真用感光体
【課題】 有機感光体用のバインダー樹脂、或いは電荷輸送性高分子材料として有用な新規芳香族ポリエステル樹脂、及び該芳香族ポリエステル樹脂を用いた高感度で且つ高耐久性な乾式現像用の電子写真用感光体、並びにキャリア溶剤に対する耐性にも優れた液体現像用の電子写真感光体を提供する。
【解決手段】 下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)
【解決手段】 下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する芳香族ポリエステル樹脂に関し、電荷輸送能を有し、電子写真感光体用材料として有用な芳香族ポリエステル樹脂、及び該芳香族ポリエステル樹脂を感光層中や最表層中に含有した高感度で且つ高耐久性の乾式または液体現像用の電子写真用感光体、並びに該感光体を備えた電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル樹脂(ポリアリレート樹脂)として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略記する)にイソフタル酸かテレフタル酸、或いはイソフタル酸ジクロリドかテレフタル酸ジクロリドを反応させて得られる芳香族ポリエステル樹脂がその代表的なものとして知られている。かかるビスフェノールAからの芳香族ポリエステル樹脂は、透明性、耐熱性、寸法精度および機械的強度などの面で優れた性質を有していることから、多くの分野で用いられている。
【0003】
また、近年、有機感光体(OPC)が複写機、プリンターに多く使用されている。有機感光体の代表的な構成例として、導電性基板上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した積層型感光体が挙げられる。電荷輸送層は低分子電荷輸送材料(CTM)とバインダー樹脂より形成され、このバインダー樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂が多数提案されている。しかしながら、低分子電荷輸送材料の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損うものとなっている。
【0004】
一方、前記芳香族ポリエステル樹脂の用途の例として、電子写真法において使用される有機感光体用のバインダー樹脂としてさまざまな検討がなされている。有機感光体の代表的な構成例として、前記したように導電性基板上に電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した積層感光体であるが、電荷輸送層は低分子電荷輸送材料とバインダー樹脂より形成され、このバインダー樹脂として芳香族ポリエステル樹脂が多数提案されている。例えば、特許文献1には、商品名「U−ポリマー」として市販されている芳香族ポリエステル樹脂をバインダーとして用いた電子写真用感光体が開示され、また、特許文献2では、ビスフェノール成分にテトラメチルビスフェノールF及びビスフェノールAを使用した構造の芳香族ポリエステル共重合体を含有する電子写真用感光体が開示され、更に、特許文献3には、ビスフェノール成分にビスフェノールCを含有する電子写真用感光体が開示されている。
【0005】
しかしながら、低分子電荷輸送物質の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性劣化、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損なうものとなっている。
【0006】
光導電性高分子材料としては古くはポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のビニル重合体が電荷移動錯体型の感光体として検討されたが、光感度の点で満足できるものではなかった。一方、前述の積層型感光体の欠点を改良すべく、電荷輸送能を有する高分子材料に関する検討がなされている。例えばトリフェニルアミン構造を有するアクリル系樹脂(非特許文献1参照)、ヒドラゾン構造を有するビニル重合体(非特許文献2参照)及びトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(特許文献4〜19参照)、α−フェニルスチルベン構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献20参照)、カルバゾール構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献21参照)、およびベンジジン構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献22参照)、スチルベン構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献23参照)などが検討されているが、実用化には至っていない。
【0007】
また、M. A. Abkowitzらはテトラアリールベンジジン誘導体をモデル化合物として低分散型と高分子化されたポリカーボネートとの比較を行っているが、高分子系はドリフト移動度が一桁低いとの結果を得ている(非特許文献3参照)。この原因については明らかではないが、高分子化することにより機械的強度は改善されるものの、感度、残留電位等電気的特性に課題があることを示唆している。
この原因については明らかではないが、テトラアリールベンジジン誘導体に代表される、主鎖に電荷輸送性の骨格を有するポリマー、特にポリカーボネート樹脂においては、テトラアリールベンジジン骨格上のアリール基に置換された電子吸引性のカルボニルジオキシ基と第3級アミンの電子供与性の効果により、電子の局在化が起こり、この結果ホール移動に不利な分子設計になっていることが推察される。このことが高分子化することにより感度、残留電位等電気特性が充分でない原因になっていると思われる。
一方、新たな試みとして特許文献24ではポリアリレンビニレンが検討されている。
【0008】
ところで、従来、電子写真方式において使用される感光体の光導電体としては、大きく分けて種々の無機及び有機光導電体が知られている。ここにいう「電子写真方式」とは、一般に光導電性の感光体をまず暗所で、例えば、コロナ放電によって帯電させ、次いで像露光し、露光部のみの電荷を選択的に逸散させて静電潜像を得、この潜像部を染料、顔料などの着色剤と高分子材料などで構成されるトナーで現像し、可視化して画像を形成するようにした、いわゆるカールソンプロセスと呼ばれる画像形成プロセスである。カールソンプロセスを利用した電子写真現像方式は、乾式現像方式と湿式(または液体)現像方式に大別される。乾式現像方式を用いた画像形成装置は複写機、プリンター等、現在広く一般的に使用されている。一方、湿式現像方式を用いた画像形成装置は、古くから開発、製品化されているが、現在では、乾式現像方式を利用した画像形成装置が市場の大部分を占める。
【0009】
しかしながら、湿式現像方式を利用した画像形成装置は、一般に、液体中にトナーが分散されており、トナー粒子を非常に微細にすることが可能であるため、得られる画像は非常に高画質となる。このため、近年高画質が求められるフルカラープリンターの市場拡大に伴い、再び脚光を浴びつつあり、開発が進められている。
湿式現像方式を利用した画像形成装置は、前述のように、トナー粒子が液体中に分散した現像溶液を使用するため、使用する感光体の全部または一部が、前記液体現像溶液中に浸漬される。現像溶液に使用する液体(キャリア溶剤)としては、例えば、アイソパー(エクソン ケミカルズ社製)と呼ばれる脂肪族系炭化水素溶媒、或いはシリコーン系オイルなどが主に使用される。そして、キャリア溶剤中に感光体成分が溶出しないセレン、アモルファスシリコン等の無機感光体が使用されるのが一般的である。
【0010】
一方、有機の光導電体を用いた感光体は無機光導電体に比べ、感光波長域の自由度、成膜性、可撓性、膜の透明性、量産性、毒性やコスト面等において利点を持つため、有機材料を用いた感光体の開発が積極的になされ、実用に供されている。
この種の有機感光体には、電荷発生機能を担う電荷発生層と電荷輸送機能担う電荷輸送層とからなる積層型感光体と、一層で電荷発生機能と電荷輸送機能を兼ね備えてなる単層型に大別される。前者は導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した構成からなり、有機材料上の制約から主として負帯電方式が像形成装置に適用され、感光特性や耐久性に優れるので、広く実用化されている。又、後者は同様に導電性支持体上に単層型の感光層を設けた層構成からなり、主として原理的に高解像度を得やすい正帯電型の構成が取られる。
このため、前記湿式現像方式を利用した画像形成装置に一般的に使用されているセレン、アモルファスシリコン等の無機感光体は、通常正帯電で使用されるため、従来使用されていた無機感光体を、有機感光体に置き換える場合においては、単層型感光体が同じ正帯電で使用出来るため有利となる。
【0011】
一般の有機感光体を、湿式現像方式を利用した画像形成装置に使用する場合、前述のように使用する感光体の全部または一部が、液体現像溶液(キャリア溶剤)中に浸漬されるため、キャリア溶剤との接触によりクラッキング、電荷輸送物質及び/又はアクセプター性化合物等の低分子化合物の結晶化、あるいはそれらの現像液への溶出等により、機械的にはもちろん、電気的にも著しい劣化を伴い、良好な画像が得られなくなる。
そこで、従来より有機感光体の表面に更にシリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性で液体現像剤に不溶の樹脂をオーバーコート(表面保護層)を施した有機感光体が提案されているが、オーバーコートを施すことにより感度が著しく悪化し、また製造コストが高くなると言う大きな問題が新たに生じる。
【0012】
一方、オーバーコートを施さない方法としては、湿式現像方式で使用可能な単層型感光体として、特定のバインダー樹脂を使用することで、湿式現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する耐性が高く、この溶剤に対する電荷輸送物質の溶出がなく、且つ実用感度を有する単層型感光体が開示されている(特許文献25〜30参照)。
しかし、これは、極性の比較的高いバインダー樹脂の使用で、極性の低いキャリア溶剤に対する耐性を向上させるもので、本質的に電荷輸送物質の溶出は避けられず、長期使用に耐えられない。
更に、特許文献31には、電荷輸送機能を有する化学構造ブロックとバインダ樹脂の化学構造ブロックとの共重合体、及びこれを用いた単層型感光体に関する記載がある。この共重合体を湿式現像方式の電子写真用感光体に用いた場合、液体現像剤による低分子化合物の溶出を防止するものである。しかし、この単層型感光体は、必ずしも充分に市場の要求に応えられる程度に高感度とは言えない。
【0013】
又更に、特許文献32には、電荷輸送機能を有する化学構造ブロックとバインダ樹脂の化学構造ブロックとの共重合体、及びこれを用いた単層型感光体に関する記載がある。しかし、この共重合体は電荷輸送機能を有する化学構造ブロックが30〜15mol%で、電荷輸送能が不充分である。この共重合体のみで電荷輸送を担う場合、充分な感度が得られず、実施例で示すように低分子電荷輸送物質の添加が必要となる。このような感光体を湿式現像方式の電子写真用感光体に用いた場合、液体現像剤による低分子電荷輸送物質の溶出は避けられず、長期使用に耐えられない。
【0014】
また、湿式現像方式に関するものとして、特許文献33には、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として用いた電子写真用感光体が記載され、特許文献34には、アクセプター性化合物として2,3−ジフェニルインデン化合物を含有する電子写真用感光体が記載され、さらに特許文献35には、酸化防止剤として特定の構造を有するビスフェノール化合物を含有する電子写真感光体が、それぞれ記載されている。
しかしながら、特許文献33に記載のポリカーボネート樹脂は電荷輸送能を有しないバインダー樹脂であり、前記したものと同様の問題を有する。また特許文献34、35にも電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂に関しては何も開示されていない。
【0015】
【特許文献1】特開昭56−135844号公報
【特許文献2】特開平3−6567号公報
【特許文献3】特開平7−333911号公報
【特許文献4】米国特許第4,801,517号明細書
【特許文献5】米国特許第4,806,443号明細書
【特許文献6】米国特許第4,806,444号明細書
【特許文献7】米国特許第4,937,165号明細書
【特許文献8】米国特許第4,959,288号明細書
【特許文献9】米国特許第5,030,532号明細書
【特許文献10】米国特許第5,034,296号明細書
【特許文献11】米国特許第5,080,989号明細書
【特許文献12】特開昭64−9964号公報
【特許文献13】特開平3−221522号公報
【特許文献14】特開平2−304456号公報
【特許文献15】特開平4−11627号公報
【特許文献16】特開平4−175337号公報
【特許文献17】特開平4−18371号公報
【特許文献18】特開平4−31404号公報
【特許文献19】特開平4−133065号公報
【特許文献20】特開平11−29634号公報
【特許文献21】特許第2958100号公報
【特許文献22】特開昭64−9964号公報
【特許文献23】特許第3368415号公報
【特許文献24】特開平10−310635号公報
【特許文献25】特開2002−116560号公報
【特許文献26】特開2002−131943号公報
【特許文献27】特開2002−351101号公報
【特許文献28】特開2002−40677号公報
【特許文献29】特開2002−214610号公報
【特許文献30】特開2003−5391号公報
【特許文献31】特開2000−63456号公報
【特許文献32】特開2003−57856号公報
【特許文献33】特許第3583707号公報
【特許文献34】特開平7−300434号公報
【特許文献35】特開平10−133400号公報
【非特許文献1】M.Stolka et al,J.Polym.Sci.,vol 21,969(1983)
【非特許文献2】Japan HardCopy ’89 P.67
【非特許文献3】Physical Review B46 6705(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、有機感光体用のバインダー樹脂として、或いは電荷輸送性高分子材料として有用な新規芳香族ポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂を用いることにより、高感度で且つ高耐久性な電子写真用感光体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する感光体の耐性が高く、且つ実用的で高感度な単層型の液体現像用電子写真用感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有する芳香族ポリエステル樹脂、及び該芳香族ポリエステル樹脂を感光層中や最表層中に含有する乾式現像用の電子写真用感光体、並びに液体現像用の電子写真用感光体により、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の上記課題は、以下の(1)〜(17)によって達成される。
(1)「下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0018】
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)」
(2)「前記第(1)項に記載の一般式(I)で表わされる繰り返し単位と下記一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(I)で表わされる繰り返し単位の組成比をk、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0019】
【化2】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【0020】
【化3】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、a、b、c、dが2以上の場合、複数のR2、R3、R4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0021】
【化4】
から選ばれ、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、また、R6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表わす。)を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。]」
(3)「下記一般式(III)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0022】
【化5】
(式中、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わし、Ar4は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)」
(4)「前記第(3)項に記載の一般式(III)で表わされる繰り返し単位と前記第(2)項に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(III)で表わされる繰り返し単位の組成比をk’、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をj’としたときに組成比の割合が0<k’/(k’+j’)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂」
(5)「下記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0023】
【化6】
(式中、R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)」
(6)「前記第(5)項に記載の一般式(IV)で表わされる繰り返し単位と前記第(2)項に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(IV)で表わされる構成単位の組成比をk”、該一般式(II)で表わされる構成単位の組成比をj”としたときに組成比の割合が0<k”/(k”+j”)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂」
(7)「前記一般式(I)〜(IV)中、Wが下記一般式(V)で表わされることを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂;
【0024】
【化7】
(式中、A1,A2,A3,A4は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基又は、ハロゲン原子を表わす。)」
(8)「前記芳香族ポリエステル樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいてその重量平均分子量(ポリスチレン換算)が7000〜1000000であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂」
(9)「導電性支持体上に、前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体」
(10)「導電性支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真用感光体において、電荷輸送層に前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(11)「導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含む電子写真用感光体において、その最表層に前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(12)「導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、感光層中に、前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(13)「導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、その最表層に、前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(14)「導電性支持体上に直接又は中間層を介して単層の感光層を設けてなる液体現像用の電子写真感光体において、その感光層は少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及びアクセプター性化合物を含有し、かつ、該電荷輸送物質が前記第(3)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂であることを特徴とする液体現像用の電子写真用感光体」
(15)「前記アクセプター性化合物が、下記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物であることを特徴とする前記第(14)項に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【0025】
【化8】
(式中、f1、f2、f3、f4は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基、またはニトロ基を表わし、AおよびBは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基を表わす。)」
(16)「感光層中に,下記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記第(14)項又は第(15)項に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【0026】
【化9】
(式中,g1〜g8は水素原子,置換もしくは無置換のアルキル基,置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基,置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)」
(17)「電子写真用感光体、帯電装置、像露光装置、現像装置および転写装置を有する電子写真装置において、該電子写真用感光体として前記第(9)項乃至第(16)項のいずれかに記載の電子写真用感光体を備えたことを特徴とする乾式現像方式又は液体現像方式の電子写真装置」。
【発明の効果】
【0027】
本発明の新規芳香族ポリエステル樹脂は、光導電性素材として有効に機能し、また、染料やルイス酸等の増感剤によって光学的あるいは化学的に増感される。また、電子写真用感光体の感光層の電荷輸送媒体として、あるいは電荷輸送物質等として好適に使用され、特に電荷発生層と電荷輪送層を2層に区分した、いわゆる機能分離型感光層における電荷輸送媒体あるいは電荷輸送物質として有用なものである。
また本発明の電子写真用感光体は、感光層中や最表層中に少なくとも電荷輸送能を有する上記の新規芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有するものであり、高感度で且つ高耐久な電子写真用感光体である。
さらに、本発明の、導電性支持体上に直接又は中間層を介して単層の感光層を設けてなる液体現像用の電子写真用感光体において、その感光層は少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及びアクセプター性化合物を含有し、かつ、該電荷輸送物質が前記一般式(III)で表わされる高分子電荷輸送物質である液体現像用の電子写真用感光体は、湿式現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する感光層の耐性が極めて高く、且つ実用的で高感度なことより、高画質化のための湿式現像システムへの適用が好適な液体現像用の電子写真用感光体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の新規な芳香族ポリエステル樹脂は、電荷輸送性高分子材料として前記一般式(I)、前記一般式(III)、前記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を少なくとも含有する芳香族ポリエステル樹脂であり、電荷輸送能を有する前記一般式(I)、前記一般式(III)、前記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位のみからなる芳香族ポリエステル樹脂、または電荷輸送能を有する前記一般式(I)、前記一般式(III)、前記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位と電荷輸送能以外の特性を付与するための繰り返し単位として前記一般式(II)で表わされる繰り返し単位とからなる芳香族ポリエステル共重合樹脂である。これら芳香族ポリエステル樹脂は、電荷輸送能を持ち、且つ高い機械的強度を有し、電子写真用感光体の感光層、特に電荷輸送層に要求される電気的な特性、光学的な性質、機械的な性質を合わせ待ったものである。
また本発明の電子写真用感光体(尚、単に電子写真用感光体と表現された場合は、乾式現像用及び液体現像用の両者を示す)は、上記新規な芳香族ポリエステル樹脂を電荷輸送性高分子材料として感光層や最表層、特に電荷輸送層に含有させたものであり、電子写真用感光体の感光層に要求される前記諸特性に優れたものである。
さらに本発明の液体現像用の電子写真用感光体は、上記新規な芳香族ポリエステル樹脂を電荷輸送性高分子材料として、単層の感光層中に含有するものであり、液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する耐性が高く、且つ実用的で高感度の液体現像用の電子写真用感光体である。
【0029】
以下に本発明の芳香族ポリエステル樹脂について詳細に説明する。
先ず、本発明の芳香族ポリエステル樹脂の製造法について説明する。本発明の芳香族ポリエステル樹脂は従来ポリエステル樹脂の製造法として公知の、ビスフェノール類と芳香族ジカルボン酸、或いはその誘導体との重合と同様の方法で製造できる。すなわち、下記一般式(VI)、(VII)または(VIII)で表わされるビスフェノール化合物を少なくとも1種以上使用し、芳香族ジカルボン酸エステルとのエステル交換法や芳香族ジカルボン酸ジクロライド等のハロゲン化カルボニル化合物との溶液又は界面重合法を用いる方法等により製造される。ハロゲン化カルボニル化合物としては塩素以外のハロゲンより誘導されるハロゲン化カルボニル化合物、例えば、臭化カルボニル、ヨウ化カルボニル、フッ化カルボニルも有用である。
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
(各式中のR1,R17,R18,Ar1,Ar2,Ar3,Ar4及びXは前期定義と同一。)
【0034】
前述したように、一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされる電荷輸送能を有するジオール1種以上と併用して前記一般式(IX)で表わされるジオールを使用し、機械特性等の改良された共重合体とすることができる。この場合、一般式(IX)で表わされるジオールを1種あるいは複数併用しても良い。一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされる電荷輸送能を有するジオールと一般式(IX)で表わされるジオールとの割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。また、適当な重合操作を選択することによって共重合体の中でもランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム交互共重合体、ランダムブロック共重合体等を得ることができる。例えば、一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされる電荷輸送能を有するジオールと一般式(IX)で表わされるジオールを初めから均一に混合して芳香族ジカルボン酸、或いはその誘導体との縮合反応を行なえば一般式(I)、(III)、(IV)で表わされる繰り返し単位と一般式(II)で表わされる繰り返し単位とからなるランダム共重合体が得られる。
【0035】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂の製造方法としては、公知の様々な重合方法を用いることが可能であるが、具体的には界面重合法、溶液重合法、エステル交換法等を挙げることができる。これらのうち、界面重合法を用いて本発明の芳香族ポリエステル樹脂を製造する場合、例えば、1種以上の二官能性フェノール化合物、もしくはビスフェノール化合物をアルカリ水溶液水に対して実質的に不溶性であり、且つ、芳香族ポリエステル樹脂を溶解する有機溶媒との2相間で芳香族ジカルボン酸ジクロライド化合物と反応を行なう。この際、高速撹拌や触媒の添加によって反応媒体を乳化させて行なうことによって短時間で分子量分布の狭い芳香族ポリエステル樹脂を得ることができる。この際、触媒として四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩を存在させることも可能である。本芳香族ポリエステル樹脂の生産性の観点から、重合温度は通常0〜40℃の範囲、重合時間は通常2〜12時間の範囲が好ましい。重合終了後、水相と有機相とを分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で洗浄、回収することにより、目的とする樹脂を得ることができる。
【0036】
上記界面重合法において、アルカリ水溶液に用いる塩基としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等である。これらの塩基は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。塩基の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.0〜3.0倍当量の範囲が好ましい。使用される水は蒸留水、イオン交換水が好ましい。
【0037】
有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、又は、それらの混合物である。又、それらにトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を混合した有機溶媒でもよい。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素であり、より好ましくは、ジクロロメタン又はクロロベンゼンである。
【0038】
芳香族ポリエステル製造時に触媒として用いられる四級アンモニウム塩、もしくは四級ホスホニウム塩としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の三級アルキルアミンと塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリウムクロライド等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0039】
また、アルカリ水溶液中でのジオールの酸化を防ぐためにハイドロサルファイト等の酸化防止剤を加えても良い。
【0040】
一方、溶液重合を行なう場合は、ジオールを溶媒に溶解し、脱酸剤を添加し、これに芳香族カルボン酸クロライド化合物を添加することにより得られる。脱酸剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンのような第3級アミンおよびピリジンが使用される。また、反応に使用される溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素およびテトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系の溶媒およびピリジンが好ましい。反応温度は通常、0〜80℃、重合時間は通常2〜12時間の範囲が好ましい。
【0041】
また、エステル交換法によっても製造される。この場合、不活性ガス存在下にジオールと芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を混合し、通常減圧下80〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的に1mmHg以下にして生成するアルコール類を系外に留去させる。重合時間は、通常1〜6時間の範囲が好ましい。又、必要に応じて酸化防止剤を加えても良い。芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物中、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基が好ましい。
【0042】
以上、すべての重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤として末端停止剤を用いることが望ましく、従って、本発明で使用される芳香族ポリエステル樹脂の末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。使用される末端停止剤は、1価の芳香族ヒドロキシ化合物、1価のカルボン酸または1価のカルボン酸のハライド誘導体等である。1価の芳香族ヒドロキシ化合物は、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−イソプロピルフェノール、o,m,p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−デシルオキシフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、p−フェニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、p−(2,4,4−トリメチルクロマニル)フェノール、2−(4−メトキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。
【0043】
1価のカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、3,5−ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、安息香酸、p−メチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、p−オクチルオキシ安息香酸、p−フェニル安息香酸、p−ベンジル安息香酸、p−クロロ安息香酸等の安息香酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。1価のカルボン酸のハライド誘導体は、上記の1価のカルボン酸のハライド誘導体等である。
【0044】
これらの末端封止剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。末端封止剤は、好ましくは、1価の芳香族ヒドロキシ化合物であり、より好ましくは、フェノール、o,m,p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたはp−クミルフェノールである。
【0045】
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、芳香族性ヒドロキシ基、芳香族カルボン酸基、或いはその誘導体から選ばれる反応基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。
分岐化剤の具体例は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α,α′−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、2,4−ビス[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィン、1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、α,α,α′,α′−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1,2,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、3,3′,5,5′−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、トリメシン酸トリクロライド、シアヌル酸クロライド等である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0046】
以上のようにして得られた芳香族ポリエステル樹脂は重合中に使用した触媒や酸化防止剤、又、未反応のジオールや末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作も従来公知の方法を使用できる。例えば、得られた樹脂の溶液を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液、塩酸、硝酸、リン酸等の酸水溶液、水等で洗浄した後、静止分離や遠心分離等を用いて分離する。
また、樹脂溶液を樹脂が不溶の溶媒中に析出させる方法、樹脂溶液を温水中に分散させ溶媒を留去する方法、或いは、樹脂溶液を吸着カラム等に流通させる方法等を用いて、樹脂を精製しても良い。得られた樹脂は、通常は樹脂の分解温度以下の温度で乾燥するが、好ましくは20℃〜樹脂の溶融温度の範囲内で減圧下で乾燥する。乾燥は残存溶媒等の不純物の純度が一定以下になるまで行なうが、通常は残存溶媒が1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下になるまで乾燥する。
【0047】
また、上記の方法にしたがって製造された芳香族ポリエステル樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤などの添加剤を加えることができる。
【0048】
次に、本発明の芳香族ポリエステル樹脂の主要な繰り返し単位である一般式(I)で表わされる繰り返し単位について(なお、前記一般式(IV)で表わされる原料ジオールの合成は後述するが、詳細には特開平9−272735号公報記載と同様)、さらに詳細に説明する。なお、本発明においては、「アリール」とは複素環基を含めた基を表わす。
前記一般式(I)中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。R1の置換もしくは無置換のアルキル基としては、以下のものを挙げることができる。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0049】
また、R1の置換もしくは無置換のアリール基としては、以下のものを挙げることができる。
フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ〔a,d〕シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられ、これらは上記した置換もしくは無置換のアルキル基、上記した置換もしくは無置換のアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、下記一般式で表わされるアミノ基を置換基として有していてもよい。
【0050】
【化14】
(式中、R19、R20は前記R1で定義される置換もしくは無置換のアルキル基、前記R1で定義される置換もしくは無置換のアリール基を表わすと共に、R19とR20が共同で環を形成したり、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。このような具体例としてピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
【0051】
前記一般式(I)中、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わす。Ar1の置換もしくは無置換のアリール基としては、下記一般式(X)で表わされる基及びピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環基から誘導される1価基が挙げられる。これらはA1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有していてもよい。
【0052】
【化15】
(式中、R17、R18はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。Ar4は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。hは1〜3の整数を表わす。)
【0053】
上記一般式(X)において、R17、R18のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。R17、R18の置換もしくは無置換のアルキル基は、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基と同様のものが挙げられる。R17、R18の置換もしくは無置換のアリール基は、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基に加えて、下記一般式(XI)で表わされる基を挙げることができる。
【0054】
【化16】
[式中、Bは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の2価基から選ばれる基であり、R21は、水素原子、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表わす。
【0055】
【化17】
(ここで、R22は、水素原子、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表わし、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表わす。)]
【0056】
R21のアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。R21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R21のアミノ基としては前記R1の置換もしくは無置換のアリール基の置換基として定義されたアミノ基を表わす。また、上記一般式(X)において、Ar4のアリーレン基としては前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0057】
前記一般式(III)中、Ar2、Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。Ar2、Ar3のアリーレン基としては、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。以上一般式(III)の繰り返し単位について説明したが同一の記号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0058】
本発明の新規芳香族ポリエステル樹脂の原料モノマーである前記一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされるジオールについて説明する。
これら化合物、例えば、一般式(VI)で表わされるジオールは、下記合成経路に示すように、下記一般式(XII)で表わされるホスホン酸エステルと、一般式(XIII)で表わされるカルボニル化合物とから下記一般式(XIV)で表わされるスチルベン化合物を得、次いでエーテル基又はエステル基の開裂により製造することができる。
【0059】
【化18】
[ここで、R23、R24は前記R1と同じ定義の置換もしくは無置換のアルキル基、前記R17、R18と同じ定義のアシル基を表わす。R25は低級アルキル基を表わし、具体例としては炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。R1、Ar1、Ar2、Ar3は前記定義と同一である。]
【0060】
また、前記一般式(VII)、(VIII)で表わされるジオールも対応するホスホン酸エステルと、対応するカルボニル化合物とから前記一般式(VI)で表わされるジオールの場合と同様な方法で製造することができる。
【0061】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂は電荷輸送能を有する前記一般式(I)で表わされる繰り返し単位のみからなる芳香族ポリエステル樹脂、及びその繰り返し単位と機械的特性を調節するためのそれ以外の繰り返し単位とを有する共重合体である。それ以外の繰り返し単位としては従来公知のポリエステル樹脂の繰り返し単位そのまま利用することができる。このような従来公知の繰り返し単位のうち、好ましい例として前記一般式(II)で表わされる繰り返し単位を挙げることができる。以下にもう1つの主要な繰り返し単位である前記一般式(II)について原料となる前記一般式(IX)の例を挙げて詳細に説明する。
【0062】
前記一般式(IX)のXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオキシ化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、,14−ビス(4−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン等が挙げられる。
【0063】
またXが芳香族の2価基である場合としては、前記R1で定義された置換基もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。また、Xは上記これらの2価基を連結してできる2価基や、以下に示される2価基を表わす。
【0064】
【化19】
[式中、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、a、b、c、dが2以上の場合、複数のR2、R3、R4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0065】
【化20】
(ここで、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、また、R6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R15、R16は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表わす。)から選ばれた基を表わす。]
【0066】
これらの中で、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基はいずれも前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基と同様である。又、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表わす。また、Z1,Z2が置換もしくは無置換の脂肪族の2価基である場合としてはXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオールからヒドロキシ基を除いた2価基を挙げることができる。又、Z1,Z2が置換もしくは無置換のアリーレン基である場合としては前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0067】
これらXが芳香族の2価基である場合の好ましいジオールの具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4′−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジフェニル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3,3′,3′−テトラメチル−6,6′−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3′,4,4′−テトラヒドロ−4,4,4′,4′−テトラメチル−2,2′−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)−7,7′−ジオール、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、2,6−ジヒドロキシベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキシベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシベンゾチオフェン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイドロキノン、レゾルシン、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0068】
また、ジオール2モルとイソフタロイルクロライド又はテレフタロイルクロライド1モルとの反応により製造されるエステル結合を含む芳香族ジオール化合物も有用である。以上一般式(II)で表わされる繰り返し単位についてその原料となる一般式(IX)の例を挙げて説明したが、これらのジオール中でXが芳香族の2価基である場合が特に好ましい。また、一般式(II)及び一般式(IX)中の同一の記号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0069】
次に本発明のもう1つの主要な構成単位である一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)におけるWについて説明する。
Wは、置換または無置換の2価の芳香族基を表わす。2価の芳香族基としては、本発明で目的とする芳香族ポリエステル樹脂としての特性を損なわない物が選択できるが、具体的にはフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。Wに用いられる置換基としては、水素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシキ基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、上記したアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を挙げることができる。
これらの中で好ましいのはフェニレン基である。即ち、Wとして好ましいものは、下記一般式(V)で表わされる2価のフェニレン基である。
【0070】
【化21】
なお、上記一般式(V)中、A1,A2,A3,A4は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、又はハロゲン原子を表わす。A1,A2,A3,A4は、上記したWの置換基と同様の置換基を使用することができる。なかでも、A1,A2,A3,A4について、すべてが水素原子であることが特に好ましい。
【0071】
前記一般式(I)で表わされる繰り返し単位と前記一般式(II)で表わされる繰り返し単位との共重合ポリエステル樹脂において、該一般式(I)で表わされる繰り返し単位の含有する割合は任意の範囲で選択することができるが、該一般式(I)で表わされるの繰り返し単位の含有率は芳香族ポリエステル樹脂の電荷輸送性に対応しているので、好ましくは全繰り返し単位中5モル%以上、より好ましくは20モル%以上含有する事が望ましい。
【0072】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂の好ましい分子量は、ポリスチレン換算数平均分子量で1000〜500000であり、より好ましくは10000〜200000であり、また、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいてその重量平均分子量(ポリスチレン換算)は7000〜1000000が好ましい。より好ましくは10000〜300000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性の悪化、耐キャリア液性の不足等実用性に乏しくなる。又分子量が大きすぎる場合には、一般有機溶剤への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用上問題となる。
【0073】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂は種々の一般的有機溶剤、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、モノクロロベンゼン、及びキシレン等に対し、良好な溶解性を示す。従って本発明のポリエステル樹脂を溶解できる適当な溶剤により適当な濃度の溶液を作成し、これを用いて公知の塗工法により種々の感光体を作成することができる。
【0074】
本発明で用いられる高分子電荷輸送物質の前記本発明の芳香族ポリエステル樹脂の感光層全体に占める量は、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%である。
【0075】
さらに、本発明の液体現像用の電子写真用感光体の感光層においては、必須成分としてアクセプター性化合物が含有される。なお、乾式現像用の電子写真用感光体の感光層においてもアクセプター性化合物を含有させることが好ましい。本発明の主要な構成成分であるアクセプター性化合物の好ましい化合物である下記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物について更に説明する。
【0076】
【化22】
(式中、f1、f2、f3、f4は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基またはニトロ基を表わし、AおよびBは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基を表わす。)
【0077】
本発明上記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物中、f1〜f4は,水素原子、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの置換アルキル基、シアノ基、またはニトロ基を表わし、AおよびBは、水素原子、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの置換アルキル基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシエチルカルボニル基などの置換アルキルカルボニル基、フェニル基,ナフチル基などのアリール基、その置換基としてはメチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。特に、前記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物において、下記構造式(A−1)で表わされる(2,3−ジフェニル−1−インデン)マロンにトリルが好適に使用される。
【0078】
【化23】
【0079】
本発明で用いることができるアクセプター性化合物としては、公知の化合物も使用する事ができる。例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−インデノ4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどを挙げることができ、さらに下記構造式(A−2)、(A−3)、(A−4)で表わされるアクセプター性化合物を好適に使用することができる。
【0080】
【化24】
【0081】
【化25】
【0082】
【化26】
【0083】
これらの有機アクセプター性化合物は単独または2種類以上が併用されても良い。
また、これら有機アクセプター性化合物の感光層に占める量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜40重量%が適当である。
【0084】
さらに、本発明の液体現像用の電子写真用感光体の感光層においては、必要に応じてフェノール化合物が含有される。本発明の主要な構成成分である下記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物について説明する。
【0085】
【化27】
(式中、g1〜g8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基,置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基,置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)
【0086】
本発明の上記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物中、g1〜g8は,水素原子,メチル基,エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基,t−ブチル基などのアルキル基、ベンジル基,メトキシメチル基,メトキシエチル基などの置換アルキル基,メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシエチルオキシカルボニル基などの置換アルコキシカルボニル基、フェニル基,ナフチル基などのアリール基、その置換基としてはメチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基,メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基,フッ素原子,塩素原子などのハロゲン原子、が挙げられ、また置換もしくは無置換のアルコキシ基としては上記置換もしくは無置換アルキル基を有するアルコキシ基を挙げることができる。
【0087】
また、これらフェノール化合物の感光層における含有量は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは、0.1〜30重量%である。0.1重量%未満では、繰り返し耐久性の向上に対する効果が充分でなく、また50重量%超えると機械的耐久性の低下、及び感度低下を来たす。
【0088】
本発明において用いる前記フェノール化合物の具体例としては、下記表1に示すものが挙げられるが,これらに限定されるものではない。
【0089】
【表1】
【0090】
以上、本発明の新規芳香族ポリエステル樹脂について説明したが、このものを感光層中に含有させる電子写真用感光体(以下、単に感光体ともいう)について以下に説明する。
本発明の感光体の断面図を図1〜図6に示す。
本発明の感光体は前記のような芳香族ポリエステル樹脂の1種または2種以上を感光層2(2’,2’’,2’’’,2’’’’,2’’’’’)に含有させたものであるが、これらの応用の仕方によって図1、図2、図3、図4、図5あるいは図6に示したごとくに用いることができる。
【0091】
図1における感光体は導電性支持体1上に増感染料及び本発明の芳香族ポリエステル樹脂、場合により結合剤(結着樹脂)よりなる感光層2が設けられたものである。ここでの本発明の芳香族ポリエステル樹脂は光導電性物質として作用し、光減衰に必要な電荷担体の生成及び移動は本発明の芳香族ポリエステル樹脂を介して行なわれる。しかしながら、本発明の芳香族ポリエステル樹脂は光の可視領域においてほとんど吸収を有していないので、可視光で画像を形成する目的のためには、可視領域に吸収を有する増感染料を添加して増感する必要がある。
【0092】
図2における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を本発明の芳香族ポリエステル樹脂単独あるいは結合剤と併用してなる電荷輸送媒体4の中に分散せしめた感光層2’が設けられたものである。本発明の液体現像用の電子写真用感光体の好ましい層構成も、該図2に示す層構成のものである。ここでの本発明の芳香族ポリエステル樹脂は単独であるいは結合剤との併用で電荷輸送媒体を形成し、一方、電荷発生物質3(無機又は有機顔料のような電荷発生物質)が電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は主として電荷発生物質3が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する作用を担当している。そしてこの感光体にあっては電荷発生物質と本発明の芳香族ポリエステル樹脂とが、互いに主として可視領域において吸収波長領域が重ならないというのが基本的条件である。これは電荷発生物質3に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する本発明の芳香族ポリエステル樹脂は波長600nm以上にほとんど吸収がなく、一般に可視領域から近赤外領域の光線を吸収し、電荷担体を発生する電荷発生物質3とを組み合わせた場合、特に有効に電荷輸送媒体、あるいは電荷輸送物質として働くのがその特長である。なお、上記電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。
【0093】
図3における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を主体とする電荷発生層5と、本発明の芳香族ポリエステル樹脂を含有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2’’が設けられたものである。この感光体では電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層5に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行なうもので、光減衰に必要な電荷担体の発生は電荷発生物質3で行われ、また電荷担体の輸送は電荷輸送層4で行なわれる。こうした機構は図2に示した感光体においてした説明と同様である。
なお電荷輸送層4は本発明の芳香族ポリエステル樹脂単独あるいは結合剤との併用で形成される。また本発明の芳香族ポリエステル樹脂は、電荷輸送媒体、あるいは低分子電荷輸送物質としても使用され、その場合、電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。また電荷発生効率を高めるために、電荷発生層5に本発明の芳香族ポリエステル樹脂を含有させてもよい。同様の目的で感光層2’’中に低分子電荷輸送物質を併用してもよい。後述の感光層2’’’〜2’’’’’についても同様である。
【0094】
図4における感光体は電荷輸送層4上に保護層6を設けたものである。本構成の場合は電荷輸送層4上に本発明の芳香族ポリエステル樹脂あるいは結合剤との併用で保護層が形成される。当然のことながら、従来多く使用されている低分子分散型電荷輸送層上への形成が効果的である。なお図2に示した感光層2’上へ同様に保護層が設けられてもよい。
【0095】
図5における感光体は図3の電荷発生層5と本発明の芳香族ポリエステル樹脂を含有する電荷輸送層4の積層順を逆にしたものであり、その電荷担体の発生及び輸送の機構は上記の説明と同様にできる。この場合機械的強度を考慮し図6のように電荷発生層5の上に保護層6を設けることもできる。
実際に本発明の感光体を作製するには、図1に示した感光体であれば、本発明の芳香族ポリエステル樹脂の1種または2種以上と、必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用して溶解し、更にこれに増感染料を加えた液をつくり、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2を形成すればよい。
【0096】
感光層の厚さは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2に占める本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は20〜100重量%が好ましく、又、感光層2に占める増感染料の量は0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量%である。増感染料としてはブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレット6Bのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGエキストラ、エオシンS、エリトロシン、ローズベンガル、フルオレセインのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、シアニンのようなシアニン染料が挙げられる。
【0097】
また、図2に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上の本発明の芳香族ポリエステル樹脂と、必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液に電荷発生物質3の微粒子を分散せしめ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2’を形成すればよい。
感光層2’の厚さは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2’に占める本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は20〜95重量%が好ましく、また、感光層2’に占める電荷発生物質3の量は0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。
【0098】
本発明の乾式または液体現像用の電子写真用感光体の感光層に用いることができる電荷発生物質3としては、例えばセレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコンなどの無機材料、有機材料としては例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報に記載)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、例えばシーアイピグメントブルー16(CI74100)、チタニルフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、例えばシーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン系顔料などが挙げられる。なお、これらの電荷発生物質は単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0099】
また、上記の電荷発生物質の中で、特にフタロシアニン系顔料との組合せにより、高感度で且つ高耐久な感光体を得ることができる。フタロシアニン顔料としては、下記式(N)で表わされるフタロシアニン骨格を有する化合物で、Mとしては、金属(中心金属)および無金属(水素)の元素等が挙げられる。
【0100】
【化28】
【0101】
ここで挙げられるMは、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしくは酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物などの2種以上の元素からなる。Mは、これらの元素に限定されるものではない。本発明におけるフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質とは、少なくとも一般式(N)の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体など多量体構造を持つもの、さらに高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。
【0102】
これらの様々なフタロシアニンのうち、MにTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、Hを有する無金属フタロシアニンは、感光体特性的に、特に好ましい。
また、これらのフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことも知られており、例えばオキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、Y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。同じ中心金属等を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより、種々の特性も変化する。その中で、感光体特性も、このような結晶系変化に伴い、変化することが報告されている(電子写真学会誌 第29巻 第4号(1990))。
このことから、各フタロシアニンは、感光体特性的に、最適な結晶系が存在し、特にオキソチタニウムフタロシアニンにおいては、Y型の結晶系が望ましい。
また、これらの電荷発生物質は、フタロシアニン骨格を有する電荷発生物質を2種以上混合していてもかまわない。さらにそれ以外の電荷発生物質と混合していてもかまわない。この場合に混合する電荷輸送物質としては、無機系材料及び有機系材料が挙げられる。
【0103】
これら電荷発生物質の感光層に占める量は好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.3〜25重量%が適当で、高分子正孔輸送物質に対する電荷発生物質の割合は5〜95重量%とするのが好ましい。
【0104】
更に図3に示した感光体を作製するには、導電性支持体1に電荷発生物質を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥するかして、更に必要であればバフ研磨などの方法によって表面仕上げ、膜厚調整などを行って電荷発生層5を形成し、この上に1種又は2種以上の芳香族ポリエステル樹脂あるいは必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成すればよい。
なお、ここで電荷発生層5の形成に用いられる電荷発生物質は、前記の感光層2’の説明と同じものである。
【0105】
電荷発生層5の厚さは5μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下であり、電荷輸送層4の厚さは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmが適当である。電荷発生層5が電荷発生層物質の微粒子3を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質の微粒子3の電荷発生層5に占める割合は10〜100重量%が好ましく、より好ましくは50〜100重量%程度である。又、電荷輸送層4に占める電荷輸送能を有する本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は40〜100重量%が好ましい。
【0106】
なお、図3における感光層2’’に低分子電荷輸送物質を含有してもよいことは前記のとおりであり、帯電性及び感度を調節する等の目的で用いられるが、ここに用いられる該電荷輸送物質としては下記のものが挙げられる。
オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、同52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号、同55−52063号、同56−81850号などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)など。
【0107】
図4に示した感光体を作成するには、図3に示した感光体上に本発明の芳香族ポリエステル樹脂を単独であるいは必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して、保護層6が設けられる。保護層の厚さは0.15〜10μmが好ましい。保護層6中に占める本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は40〜100重量%が好ましい。
【0108】
図5に示した感光体を作成するには導電性支持体1上に本発明の芳香族ポリエステル樹脂あるいは必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成したのち、この電荷輸送層の上に電荷発生層物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した溶媒中に分散した分散液をスプレー塗工等の方法で塗布乾燥して電荷発生層5を形成すればよい。電荷発生層あるいは電荷輸送層の量比は図3で説明した内容と同様である。
【0109】
このようにして得られた感光体の電荷発生層5の上に前述の保護層6を形成することにより、図6に示す感光体を作成できる。
また図1、2、3及び5に示した層構成の感光体においても、後述する通常の保護層を形成することもできる。
【0110】
また、結合剤としてはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネートなどの縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体などが用いられるが、絶縁性で且つ接着性のある樹脂はすべて使用できる。必要により可塑剤が結合剤に加えられているが、そうした可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが例示できる。また必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。
【0111】
上記感光層中には帯電性の向上等を目的として必要により、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。このような可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが、酸化防止剤、光安定剤としてはフェノール化合物、ハイドロキノン化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードアミンとヒンダードフェノールが同一分子中に存在する化合物など例示できる。
【0112】
上記いずれの感光体においても導電性基体1としては、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金、ステンレス等の金属板、金属ドラムまたは金属箔、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金、酸化スズ、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックフィルム、或いは導電性物質を塗布する等の導電処理を施した紙、プラスチックフィルムまたはドラム等が挙げられる。
【0113】
また、必要に応じて導電性基体上に中間層を設けても良い。中間層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。中間層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えても良い。これらの中間層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。さらに、本発明の中間層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。中間層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0114】
さらに、耐摩擦性など機械的耐久性を向上させるために、感光層上に保護層を設けても良い。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。保護層には耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したものを添加することができる。保護層の形成方法としては通常の塗布法が採用できる。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作製法にて形成したa−C、a−SiCなどの公知材料を保護層として用いることもできる。
【0115】
更に以上のようにして得られる感光体には導電性支持体と感光層の間に、必要に応じて接着層又はバリヤ層を設けることができる。これらの層に用いられる材料としては、ポリアミド、ニトロセルロース、酸化アルミニウム、酸化チタンなどであり、また膜厚は1μm以下が好ましい。
【0116】
本発明の感光体は、前期の材料を有機溶剤中に溶解または分散して感光層形成液を調整し、これを、上記導電性支持体上に、あるいは中間層等を介して浸漬法やブレード塗布法、スプレー塗布法で塗布し乾燥することで形成される。また、必要に応じ、予め、電荷発生物質を分散し他に材料と合わせて溶解または分散し、感光層形成液を調整することも可能である。
分散方法としては、例えば、ボールミル分散、超音波分散、ホモミキサー分散等が挙げられる。
また、感光層の分散液或いは溶液を調整する際に使用する溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン、ジオキソラン等を挙げることができる。
【0117】
本発明の感光層では、帯電性、感度、及び分散性等を改良する目的で、必要に応じて結着剤を加えることができる。
感光層形成時に用いる結着剤は、従来から知られている絶縁性が良い電子写真感光体用結着剤であればいかなる物質も使用でき、特に限定はない。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、ならびにこれらの樹脂の繰り返し単位のうち2つ以上を含む共重合体樹脂、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂等の絶縁性樹脂のほか、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの結着剤は単独または2種類以上の混合物として用いることができる。
【0118】
本発明における感光層の厚さは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜40μmが適当である。5μmより薄いと帯電性が低下し、逆に、100μmより厚いと感度の低下をもたらす。
【0119】
本発明の感光体を用いて複写を行なうには、感光面に帯電、露光を施した後、現像を行ない必要によって紙などへ転写を行なう。
本発明の感光体は感度が高く、また耐久性に優れている。
【0120】
次に、液体現像剤を用いた湿式現像システムについて詳しく説明する。
図7は、本発明の電子写真方式による液体現像剤を用いた液体(湿式)現像システムを説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、中央に示す感光体は導電性支持体上に単層型感光層が設けられている。感光体はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャ(1)、転写チャージャ(6)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
【0121】
画像露光部(3)、除電ランプ(9)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。かかる光源等は、図7に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0122】
現像ユニット(4)により感光体上に現像されたトナーは、転写紙に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシおよびブレードにより、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0123】
電子写真用感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0124】
本発明のこのような液体現像用の電子写真用感光体は、耐キャリア溶剤性、及び帯電性と感度に優れ、低速から高速の複写プロセスまで好適であり、また、電荷発生物質を変えることで分光感度が制御でき、モノクロ又はフルカラー用のアナログ複写機から光書き込み用にLD或いはLED光を使用したページプリンター用の感光体まで適用することが可能である。本発明の液体現像用の電子写真用感光体に係わる感光層で特に重要なのは電荷輸送物質に高分子電荷輸送物質を用いたことにある。特に、高分子構造として従来のポリカーボネート構造に比較して高安定性の芳香族ポリエステル構造を導入したことにある。このことにより、液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する感光体の耐性が非常に高く、且つ実用的に高感度な単層型電子写真用感光体が達成される。この理由は現時点では定かでないが次のように推測される。
【0125】
本発明の特定構造を有する高分子電荷輸送物質は液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する耐性が高く、一定以上の高分子量化合物であること、又、比較的結晶性の高い芳香族ポリエステル構造であることで、更にキャリア溶剤に対する耐性が増加するものと考えられる。このような強固な高分子電荷輸送物質マトリックス中に存在する特定構造のアクセプター性化合物、或いは特定構造のフェノール化合物などの低分子化合物は高分子電荷輸送物質との何らかの相互作用が存在し、結果的に本発明の高分子電荷輸送物質を含有する電子写真用感光体のキャリア溶剤に対する耐性が非常に高くなるものと推測される。
【0126】
前記相互作用としては、例えば、特定構造のアクセプター性化合物の場合は、高分子電荷輸送物質と分子間電荷移動に基づく相互作用が想定され、特定構造のフェノール化合物の場合は、高分子電荷輸送物質と水素結合、或いはファン・デア・ワールス(van der Waals)力に基づく相互作用が想定される。又、該相互作用には、本発明で使用される高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、及びフェノール化合物の構造因子も重要で、これらの相乗効果により、目的が達成されると推測される。
【0127】
一方、高感度化に対しては、上記相互作用に基づき非常に均質な高分子マトリックス(分子オーダーで分散)が作成され、電荷が電荷発生物質から電荷移動マトリックスへ注入され、マトリックスを通るスムーズな移動が達成され、結果的に高感度化が達成されたと推測される。
【実施例】
【0128】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0129】
(芳香族ポリエステル樹脂の合成)
合成例1
水酸化ナトリウム1.30g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、4−tert−ブチルフェノール15mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド8mg、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン3.16gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.66gとイソフタル酸クロライド0.66gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.38g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を3.60g得た。
【0130】
【化29】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.1)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:82.05/82.20,H:5.01/5.09,N:2.24/2.28
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:13300,重量平均分子量:47500
赤外吸収スペクトルを図8に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1743cm−1
【0131】
合成例2
水酸化ナトリウム1.28g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール21mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド10mg、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン0.86g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.76gとイソフタル酸クロライド0.76gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.05g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を3.42g得た。
【0132】
【化30】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.2)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:80.80/80.98,H:5.16/5.24,N:1.51/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:21900,重量平均分子量:122700
赤外吸収スペクトルを図9に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0133】
合成例3
水酸化ナトリウム1.34g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール22mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド11mg、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン0.81g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.80gとイソフタル酸クロライド0.80gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.15g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.3)を3.34g得た。
【0134】
【化31】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.3)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:80.70/80.57,H:5.04/5.08,N:1.67/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:27600,重量平均分子量:202700
赤外吸収スペクトルを図10に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0135】
合成例4
水酸化ナトリウム1.30g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール21mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド11mg、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン0.84g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.77gとイソフタル酸クロライド0.77gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.08g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)を3.43g得た。
【0136】
【化32】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.4)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:80.78/80.77,H:5.20/5.30,N:1.50/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:25400,重量平均分子量:147000
赤外吸収スペクトルを図11に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0137】
合成例5
水酸化ナトリウム1.34g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール22mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド11mg、4、4‘−ジヒドロキシ−3、3’−ジメチルジフェニルエーテル0.81g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.80gとイソフタル酸クロライド0.80gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.15g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.5)を3.17g得た。
【0138】
【化33】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.5)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:79.41/97.38,H:5.03/4.90,N:1.50/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:24600,重量平均分子量:219800
赤外吸収スペクトルを図12に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0139】
(電子写真用感光体の製造)
実施例1
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。この上に電荷発生物質として下記構造式(P−1)で表わされるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンと2−ブタノンの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0140】
【化34】
次に、合成例1で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)1部をテトラヒドロフラン4部に溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、80℃で5分、120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して感光体No.1を作製した。
【0141】
実施例2
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.2を作成した。
【0142】
実施例3
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例3で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.3)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.3を作成した。
【0143】
実施例4
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例4で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.4を作成した。
【0144】
実施例5
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例5で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.5)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.5を作成した。
【0145】
比較例1
実施例1と同様の中間層、電荷発生層を作成した後、下記構造式(D−1)で示される電荷輸送物質1部、ポリカーボネートZ(PC−Z,帝人化成製)1部をテトラヒドロフラン8部に溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、80℃で5分、120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して比較例感光体No.1を作製した。
【0146】
【化35】
【0147】
実施例6
実施例1において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒 328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例1と同様に感光体No.6を作成した。
【0148】
実施例7
実施例2において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒 328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例2と同様に感光体No.7を作成した。
【0149】
実施例8
実施例3において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例3と同様に感光体No.8を作成した。
【0150】
実施例9
実施例4において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例4と同様に感光体No.9を作成した。
【0151】
実施例10
実施例5において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒 328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例5と同様に感光体No.10を作成した。
【0152】
比較例2
実施例6と同様の中間層、電荷発生層を作成した後、上記構造式(D−1)で示される電荷輸送物質1部、ポリカーボネートZ(PC−Z,帝人化成製)1部をテトラヒドロフラン8部に溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、80℃で5分、120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して比較例感光体No.2を作製した。
【0153】
上記実施例、並びに比較例で作製した積層型電子写真感光体の静電特性をかくしてつくられた感光体No.1〜No.10、比較例1,比較例2について市販の静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製EPA−8200]を用いて暗所で−6KVのコロナ放電を20秒間行なって帯電せしめた後、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位V0(V)を測定した。次いで、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、V0が1/2になるまでの時間(秒)を求め、露光量E1/2(lux・sec)を算出した。その結果を、表2に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
実施例11
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。次に、X型無金属フタロシアニン1部を、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)1部とテトラヒドロフラン38部gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)60重量%、下記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、80℃で5分、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する単層型電子写真感光体、感光体No.11を作成した。
【0156】
【化36】
【0157】
実施例12
実施例11において、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を、合成例4で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)に代えた以外は、実施例11と同様に単層型電子写真感光体、感光体No.12を作成した。
【0158】
比較例3
実施例11と同様の中間層上に、X型無金属フタロシアニン1部を、ポリカーボネートZ(PC−Z,帝人化成製)1部とテトラヒドロフラン38部よりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、PC−Z組成が50重量%、上記構造式(D−1)で表わされる低分子電荷移動物質30重量%、前記構造式(A−1)で表されるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように低分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、80℃で5分、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する単層型電子写真感光体、比較例感光体No.3を作成した。
【0159】
<評価1>
上記実施例、並びに比較例で作製した単層型電子写真感光体No.11、No.12、及び比較例NO.3の静電特性を、静電複写紙試験装置EPA−8200(川口電気製作所製)を用い、まず、印可電圧+6KVで20秒間帯電した後、20秒間暗所に放置した後の表面電位V0(V)を測定し、ついで780nmの単色光を感光体表面での照度が2.5μW/cm2になるように照射して、感光体の表面電位が800Vから400Vまでに要する半減露光量Em1/2(μJ/cm2)をLD光源域(近赤外域)の感度として測定した。結果を表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
<評価2>
実施例11(感光体No.11)、実施例12(感光体No.12)、及び比較例3(比較例No.3)の単層型電子写真感光体を線速260mm/sのドラムに着装し、プラス帯電、露光、光クエンチを5000回繰り返し、初期、及び5000回後の帯電電位Vd(V)、と露光後電位Vl(V)を測定した。その結果を表4に示す。
【0162】
【表4】
【0163】
実施例13
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。次に、X型無金属フタロシアニン0.5gを、合成例1で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル(NO.1)0.5gとテトラヒドロフラン19gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、合成例1で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル(NO.1)75.5重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物22.5重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.1)を作成した。
【0164】
実施例14
X型無金属フタロシアニン0.5gを、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル(NO.2)0.5gとテトラヒドロフラン19gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)80重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を実施例13と同様に作成した中間層上にドクターブレードにて塗布し、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.2)を作成した。
【0165】
実施例15
実施例14において、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を、合成例3で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.3)に代えた以外は実施例14と同様の条件で、液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.3)を作成した。
【0166】
実施例16
実施例14において、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を、合成例4で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)に代えた以外は、実施例14と同様の条件で、液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.4)を作成した。
【0167】
実施例17
実施例14において、構造式(A−1)で表わされるアクセプター化合物を、下記構造式(A−3)で表わされるアクセプター性化合物に代えた以外は、実施例14と同様の条件で、液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.5)を作成した。
【0168】
【化37】
【0169】
実施例18
実施例14において、顔料組成2重量%、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)75.5重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物20重量%、下記構造式(B−2)で表わされるフェノール性化合物2.5重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、フェノール性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分濃度が20重量%の感光体塗布液を調整した以外は、実施例14と同様に液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.6)を作成した。
【0170】
【化38】
【0171】
実施例19
実施例14において、顔料組成2重量%、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)75.5重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物20重量%、酸化防止剤(三共製:サノールLS2626)2.5重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、酸化防止剤、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分濃度が20重量%の感光体塗布液を調整した以外は、実施例14と同様に液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.7)を作成した。
【0172】
比較例4
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。次に、X型無金属フタロシアニン0.5gを、ポリカーボネートZ(PC−Z、帝人化成製)0.5gとテトラヒドロフラン19gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、PC−Z組成が50重量%、前記構造式(D−1)で表わされる低分子電荷移動物質30重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように低分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する、液体現像用の単層型電子写真用感光体、比較例感光体(No.4)を作成した。
【0173】
上記実施例13〜19、並びに比較例4の、液体現像用の単層型電子写真用感光体を、次に示す測定条件により、評価し、その結果を表5〜表11に示す。
(評価、及び試験条件)
上記実施例13〜19、並びに比較例4で作製した単層型電子写真用感光体のテストピース(55mm×60mm:端面処理を施した)を液体現像用のキャリア溶剤アイソパー(エクソン ケミカルズ社製)、及びシリコーンオイル(東レ・ダウシリコーン社製SH200;50cSt)に20℃、湿度50%の暗中に浸漬した。初期、及び各期間終了後、感光体の外観変化(変色の有無、クラックの有無等を目視観察)、及び感光体特性を評価した。感光体特性は、25℃/55%RHの環境下、静電複写紙試験装置EPA−8200(川口電気製作所製)を用い、まず、印可電圧+6KVで20秒間帯電した後、20秒間暗所に放置した後の表面電位V0(V)を測定し、ついで700nmの単色光を感光体表面での照度が2.5μW/cm2になるように照射して、感光体の表面電位が800Vから400Vまでに要する半減露光量Em1/2(μJ/cm2)を測定した。
【0174】
【表5】
【0175】
【表6】
【0176】
【表7】
【0177】
【表8】
【0178】
【表9】
【0179】
【表10】
【0180】
【表11】
【0181】
【表12】
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る液体現像剤を用いた液体現像システムの概略図である。
【図8】合成例1で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図9】合成例2で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図10】合成例3で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図11】合成例4で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図12】合成例5で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0183】
1 導電性支持体
2,2’,2’’,2’’’,2’’’’,2’’’’’ 感光層
3 電荷発生物質
4 電荷輸送層又は電荷輸送媒体
5 電荷発生層
6 保護層
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する芳香族ポリエステル樹脂に関し、電荷輸送能を有し、電子写真感光体用材料として有用な芳香族ポリエステル樹脂、及び該芳香族ポリエステル樹脂を感光層中や最表層中に含有した高感度で且つ高耐久性の乾式または液体現像用の電子写真用感光体、並びに該感光体を備えた電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル樹脂(ポリアリレート樹脂)として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略記する)にイソフタル酸かテレフタル酸、或いはイソフタル酸ジクロリドかテレフタル酸ジクロリドを反応させて得られる芳香族ポリエステル樹脂がその代表的なものとして知られている。かかるビスフェノールAからの芳香族ポリエステル樹脂は、透明性、耐熱性、寸法精度および機械的強度などの面で優れた性質を有していることから、多くの分野で用いられている。
【0003】
また、近年、有機感光体(OPC)が複写機、プリンターに多く使用されている。有機感光体の代表的な構成例として、導電性基板上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した積層型感光体が挙げられる。電荷輸送層は低分子電荷輸送材料(CTM)とバインダー樹脂より形成され、このバインダー樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂が多数提案されている。しかしながら、低分子電荷輸送材料の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損うものとなっている。
【0004】
一方、前記芳香族ポリエステル樹脂の用途の例として、電子写真法において使用される有機感光体用のバインダー樹脂としてさまざまな検討がなされている。有機感光体の代表的な構成例として、前記したように導電性基板上に電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した積層感光体であるが、電荷輸送層は低分子電荷輸送材料とバインダー樹脂より形成され、このバインダー樹脂として芳香族ポリエステル樹脂が多数提案されている。例えば、特許文献1には、商品名「U−ポリマー」として市販されている芳香族ポリエステル樹脂をバインダーとして用いた電子写真用感光体が開示され、また、特許文献2では、ビスフェノール成分にテトラメチルビスフェノールF及びビスフェノールAを使用した構造の芳香族ポリエステル共重合体を含有する電子写真用感光体が開示され、更に、特許文献3には、ビスフェノール成分にビスフェノールCを含有する電子写真用感光体が開示されている。
【0005】
しかしながら、低分子電荷輸送物質の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性劣化、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損なうものとなっている。
【0006】
光導電性高分子材料としては古くはポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のビニル重合体が電荷移動錯体型の感光体として検討されたが、光感度の点で満足できるものではなかった。一方、前述の積層型感光体の欠点を改良すべく、電荷輸送能を有する高分子材料に関する検討がなされている。例えばトリフェニルアミン構造を有するアクリル系樹脂(非特許文献1参照)、ヒドラゾン構造を有するビニル重合体(非特許文献2参照)及びトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(特許文献4〜19参照)、α−フェニルスチルベン構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献20参照)、カルバゾール構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献21参照)、およびベンジジン構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献22参照)、スチルベン構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特許文献23参照)などが検討されているが、実用化には至っていない。
【0007】
また、M. A. Abkowitzらはテトラアリールベンジジン誘導体をモデル化合物として低分散型と高分子化されたポリカーボネートとの比較を行っているが、高分子系はドリフト移動度が一桁低いとの結果を得ている(非特許文献3参照)。この原因については明らかではないが、高分子化することにより機械的強度は改善されるものの、感度、残留電位等電気的特性に課題があることを示唆している。
この原因については明らかではないが、テトラアリールベンジジン誘導体に代表される、主鎖に電荷輸送性の骨格を有するポリマー、特にポリカーボネート樹脂においては、テトラアリールベンジジン骨格上のアリール基に置換された電子吸引性のカルボニルジオキシ基と第3級アミンの電子供与性の効果により、電子の局在化が起こり、この結果ホール移動に不利な分子設計になっていることが推察される。このことが高分子化することにより感度、残留電位等電気特性が充分でない原因になっていると思われる。
一方、新たな試みとして特許文献24ではポリアリレンビニレンが検討されている。
【0008】
ところで、従来、電子写真方式において使用される感光体の光導電体としては、大きく分けて種々の無機及び有機光導電体が知られている。ここにいう「電子写真方式」とは、一般に光導電性の感光体をまず暗所で、例えば、コロナ放電によって帯電させ、次いで像露光し、露光部のみの電荷を選択的に逸散させて静電潜像を得、この潜像部を染料、顔料などの着色剤と高分子材料などで構成されるトナーで現像し、可視化して画像を形成するようにした、いわゆるカールソンプロセスと呼ばれる画像形成プロセスである。カールソンプロセスを利用した電子写真現像方式は、乾式現像方式と湿式(または液体)現像方式に大別される。乾式現像方式を用いた画像形成装置は複写機、プリンター等、現在広く一般的に使用されている。一方、湿式現像方式を用いた画像形成装置は、古くから開発、製品化されているが、現在では、乾式現像方式を利用した画像形成装置が市場の大部分を占める。
【0009】
しかしながら、湿式現像方式を利用した画像形成装置は、一般に、液体中にトナーが分散されており、トナー粒子を非常に微細にすることが可能であるため、得られる画像は非常に高画質となる。このため、近年高画質が求められるフルカラープリンターの市場拡大に伴い、再び脚光を浴びつつあり、開発が進められている。
湿式現像方式を利用した画像形成装置は、前述のように、トナー粒子が液体中に分散した現像溶液を使用するため、使用する感光体の全部または一部が、前記液体現像溶液中に浸漬される。現像溶液に使用する液体(キャリア溶剤)としては、例えば、アイソパー(エクソン ケミカルズ社製)と呼ばれる脂肪族系炭化水素溶媒、或いはシリコーン系オイルなどが主に使用される。そして、キャリア溶剤中に感光体成分が溶出しないセレン、アモルファスシリコン等の無機感光体が使用されるのが一般的である。
【0010】
一方、有機の光導電体を用いた感光体は無機光導電体に比べ、感光波長域の自由度、成膜性、可撓性、膜の透明性、量産性、毒性やコスト面等において利点を持つため、有機材料を用いた感光体の開発が積極的になされ、実用に供されている。
この種の有機感光体には、電荷発生機能を担う電荷発生層と電荷輸送機能担う電荷輸送層とからなる積層型感光体と、一層で電荷発生機能と電荷輸送機能を兼ね備えてなる単層型に大別される。前者は導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した構成からなり、有機材料上の制約から主として負帯電方式が像形成装置に適用され、感光特性や耐久性に優れるので、広く実用化されている。又、後者は同様に導電性支持体上に単層型の感光層を設けた層構成からなり、主として原理的に高解像度を得やすい正帯電型の構成が取られる。
このため、前記湿式現像方式を利用した画像形成装置に一般的に使用されているセレン、アモルファスシリコン等の無機感光体は、通常正帯電で使用されるため、従来使用されていた無機感光体を、有機感光体に置き換える場合においては、単層型感光体が同じ正帯電で使用出来るため有利となる。
【0011】
一般の有機感光体を、湿式現像方式を利用した画像形成装置に使用する場合、前述のように使用する感光体の全部または一部が、液体現像溶液(キャリア溶剤)中に浸漬されるため、キャリア溶剤との接触によりクラッキング、電荷輸送物質及び/又はアクセプター性化合物等の低分子化合物の結晶化、あるいはそれらの現像液への溶出等により、機械的にはもちろん、電気的にも著しい劣化を伴い、良好な画像が得られなくなる。
そこで、従来より有機感光体の表面に更にシリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性で液体現像剤に不溶の樹脂をオーバーコート(表面保護層)を施した有機感光体が提案されているが、オーバーコートを施すことにより感度が著しく悪化し、また製造コストが高くなると言う大きな問題が新たに生じる。
【0012】
一方、オーバーコートを施さない方法としては、湿式現像方式で使用可能な単層型感光体として、特定のバインダー樹脂を使用することで、湿式現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する耐性が高く、この溶剤に対する電荷輸送物質の溶出がなく、且つ実用感度を有する単層型感光体が開示されている(特許文献25〜30参照)。
しかし、これは、極性の比較的高いバインダー樹脂の使用で、極性の低いキャリア溶剤に対する耐性を向上させるもので、本質的に電荷輸送物質の溶出は避けられず、長期使用に耐えられない。
更に、特許文献31には、電荷輸送機能を有する化学構造ブロックとバインダ樹脂の化学構造ブロックとの共重合体、及びこれを用いた単層型感光体に関する記載がある。この共重合体を湿式現像方式の電子写真用感光体に用いた場合、液体現像剤による低分子化合物の溶出を防止するものである。しかし、この単層型感光体は、必ずしも充分に市場の要求に応えられる程度に高感度とは言えない。
【0013】
又更に、特許文献32には、電荷輸送機能を有する化学構造ブロックとバインダ樹脂の化学構造ブロックとの共重合体、及びこれを用いた単層型感光体に関する記載がある。しかし、この共重合体は電荷輸送機能を有する化学構造ブロックが30〜15mol%で、電荷輸送能が不充分である。この共重合体のみで電荷輸送を担う場合、充分な感度が得られず、実施例で示すように低分子電荷輸送物質の添加が必要となる。このような感光体を湿式現像方式の電子写真用感光体に用いた場合、液体現像剤による低分子電荷輸送物質の溶出は避けられず、長期使用に耐えられない。
【0014】
また、湿式現像方式に関するものとして、特許文献33には、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として用いた電子写真用感光体が記載され、特許文献34には、アクセプター性化合物として2,3−ジフェニルインデン化合物を含有する電子写真用感光体が記載され、さらに特許文献35には、酸化防止剤として特定の構造を有するビスフェノール化合物を含有する電子写真感光体が、それぞれ記載されている。
しかしながら、特許文献33に記載のポリカーボネート樹脂は電荷輸送能を有しないバインダー樹脂であり、前記したものと同様の問題を有する。また特許文献34、35にも電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂に関しては何も開示されていない。
【0015】
【特許文献1】特開昭56−135844号公報
【特許文献2】特開平3−6567号公報
【特許文献3】特開平7−333911号公報
【特許文献4】米国特許第4,801,517号明細書
【特許文献5】米国特許第4,806,443号明細書
【特許文献6】米国特許第4,806,444号明細書
【特許文献7】米国特許第4,937,165号明細書
【特許文献8】米国特許第4,959,288号明細書
【特許文献9】米国特許第5,030,532号明細書
【特許文献10】米国特許第5,034,296号明細書
【特許文献11】米国特許第5,080,989号明細書
【特許文献12】特開昭64−9964号公報
【特許文献13】特開平3−221522号公報
【特許文献14】特開平2−304456号公報
【特許文献15】特開平4−11627号公報
【特許文献16】特開平4−175337号公報
【特許文献17】特開平4−18371号公報
【特許文献18】特開平4−31404号公報
【特許文献19】特開平4−133065号公報
【特許文献20】特開平11−29634号公報
【特許文献21】特許第2958100号公報
【特許文献22】特開昭64−9964号公報
【特許文献23】特許第3368415号公報
【特許文献24】特開平10−310635号公報
【特許文献25】特開2002−116560号公報
【特許文献26】特開2002−131943号公報
【特許文献27】特開2002−351101号公報
【特許文献28】特開2002−40677号公報
【特許文献29】特開2002−214610号公報
【特許文献30】特開2003−5391号公報
【特許文献31】特開2000−63456号公報
【特許文献32】特開2003−57856号公報
【特許文献33】特許第3583707号公報
【特許文献34】特開平7−300434号公報
【特許文献35】特開平10−133400号公報
【非特許文献1】M.Stolka et al,J.Polym.Sci.,vol 21,969(1983)
【非特許文献2】Japan HardCopy ’89 P.67
【非特許文献3】Physical Review B46 6705(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、有機感光体用のバインダー樹脂として、或いは電荷輸送性高分子材料として有用な新規芳香族ポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂を用いることにより、高感度で且つ高耐久性な電子写真用感光体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する感光体の耐性が高く、且つ実用的で高感度な単層型の液体現像用電子写真用感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有する芳香族ポリエステル樹脂、及び該芳香族ポリエステル樹脂を感光層中や最表層中に含有する乾式現像用の電子写真用感光体、並びに液体現像用の電子写真用感光体により、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の上記課題は、以下の(1)〜(17)によって達成される。
(1)「下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0018】
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)」
(2)「前記第(1)項に記載の一般式(I)で表わされる繰り返し単位と下記一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(I)で表わされる繰り返し単位の組成比をk、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0019】
【化2】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【0020】
【化3】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、a、b、c、dが2以上の場合、複数のR2、R3、R4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0021】
【化4】
から選ばれ、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、また、R6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表わす。)を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。]」
(3)「下記一般式(III)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0022】
【化5】
(式中、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わし、Ar4は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)」
(4)「前記第(3)項に記載の一般式(III)で表わされる繰り返し単位と前記第(2)項に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(III)で表わされる繰り返し単位の組成比をk’、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をj’としたときに組成比の割合が0<k’/(k’+j’)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂」
(5)「下記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂;
【0023】
【化6】
(式中、R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)」
(6)「前記第(5)項に記載の一般式(IV)で表わされる繰り返し単位と前記第(2)項に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(IV)で表わされる構成単位の組成比をk”、該一般式(II)で表わされる構成単位の組成比をj”としたときに組成比の割合が0<k”/(k”+j”)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂」
(7)「前記一般式(I)〜(IV)中、Wが下記一般式(V)で表わされることを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂;
【0024】
【化7】
(式中、A1,A2,A3,A4は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基又は、ハロゲン原子を表わす。)」
(8)「前記芳香族ポリエステル樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいてその重量平均分子量(ポリスチレン換算)が7000〜1000000であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂」
(9)「導電性支持体上に、前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体」
(10)「導電性支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真用感光体において、電荷輸送層に前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(11)「導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含む電子写真用感光体において、その最表層に前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(12)「導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、感光層中に、前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(13)「導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、その最表層に、前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体」
(14)「導電性支持体上に直接又は中間層を介して単層の感光層を設けてなる液体現像用の電子写真感光体において、その感光層は少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及びアクセプター性化合物を含有し、かつ、該電荷輸送物質が前記第(3)項乃至第(8)項のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂であることを特徴とする液体現像用の電子写真用感光体」
(15)「前記アクセプター性化合物が、下記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物であることを特徴とする前記第(14)項に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【0025】
【化8】
(式中、f1、f2、f3、f4は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基、またはニトロ基を表わし、AおよびBは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基を表わす。)」
(16)「感光層中に,下記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記第(14)項又は第(15)項に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【0026】
【化9】
(式中,g1〜g8は水素原子,置換もしくは無置換のアルキル基,置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基,置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)」
(17)「電子写真用感光体、帯電装置、像露光装置、現像装置および転写装置を有する電子写真装置において、該電子写真用感光体として前記第(9)項乃至第(16)項のいずれかに記載の電子写真用感光体を備えたことを特徴とする乾式現像方式又は液体現像方式の電子写真装置」。
【発明の効果】
【0027】
本発明の新規芳香族ポリエステル樹脂は、光導電性素材として有効に機能し、また、染料やルイス酸等の増感剤によって光学的あるいは化学的に増感される。また、電子写真用感光体の感光層の電荷輸送媒体として、あるいは電荷輸送物質等として好適に使用され、特に電荷発生層と電荷輪送層を2層に区分した、いわゆる機能分離型感光層における電荷輸送媒体あるいは電荷輸送物質として有用なものである。
また本発明の電子写真用感光体は、感光層中や最表層中に少なくとも電荷輸送能を有する上記の新規芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有するものであり、高感度で且つ高耐久な電子写真用感光体である。
さらに、本発明の、導電性支持体上に直接又は中間層を介して単層の感光層を設けてなる液体現像用の電子写真用感光体において、その感光層は少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及びアクセプター性化合物を含有し、かつ、該電荷輸送物質が前記一般式(III)で表わされる高分子電荷輸送物質である液体現像用の電子写真用感光体は、湿式現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する感光層の耐性が極めて高く、且つ実用的で高感度なことより、高画質化のための湿式現像システムへの適用が好適な液体現像用の電子写真用感光体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の新規な芳香族ポリエステル樹脂は、電荷輸送性高分子材料として前記一般式(I)、前記一般式(III)、前記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を少なくとも含有する芳香族ポリエステル樹脂であり、電荷輸送能を有する前記一般式(I)、前記一般式(III)、前記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位のみからなる芳香族ポリエステル樹脂、または電荷輸送能を有する前記一般式(I)、前記一般式(III)、前記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位と電荷輸送能以外の特性を付与するための繰り返し単位として前記一般式(II)で表わされる繰り返し単位とからなる芳香族ポリエステル共重合樹脂である。これら芳香族ポリエステル樹脂は、電荷輸送能を持ち、且つ高い機械的強度を有し、電子写真用感光体の感光層、特に電荷輸送層に要求される電気的な特性、光学的な性質、機械的な性質を合わせ待ったものである。
また本発明の電子写真用感光体(尚、単に電子写真用感光体と表現された場合は、乾式現像用及び液体現像用の両者を示す)は、上記新規な芳香族ポリエステル樹脂を電荷輸送性高分子材料として感光層や最表層、特に電荷輸送層に含有させたものであり、電子写真用感光体の感光層に要求される前記諸特性に優れたものである。
さらに本発明の液体現像用の電子写真用感光体は、上記新規な芳香族ポリエステル樹脂を電荷輸送性高分子材料として、単層の感光層中に含有するものであり、液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する耐性が高く、且つ実用的で高感度の液体現像用の電子写真用感光体である。
【0029】
以下に本発明の芳香族ポリエステル樹脂について詳細に説明する。
先ず、本発明の芳香族ポリエステル樹脂の製造法について説明する。本発明の芳香族ポリエステル樹脂は従来ポリエステル樹脂の製造法として公知の、ビスフェノール類と芳香族ジカルボン酸、或いはその誘導体との重合と同様の方法で製造できる。すなわち、下記一般式(VI)、(VII)または(VIII)で表わされるビスフェノール化合物を少なくとも1種以上使用し、芳香族ジカルボン酸エステルとのエステル交換法や芳香族ジカルボン酸ジクロライド等のハロゲン化カルボニル化合物との溶液又は界面重合法を用いる方法等により製造される。ハロゲン化カルボニル化合物としては塩素以外のハロゲンより誘導されるハロゲン化カルボニル化合物、例えば、臭化カルボニル、ヨウ化カルボニル、フッ化カルボニルも有用である。
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
(各式中のR1,R17,R18,Ar1,Ar2,Ar3,Ar4及びXは前期定義と同一。)
【0034】
前述したように、一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされる電荷輸送能を有するジオール1種以上と併用して前記一般式(IX)で表わされるジオールを使用し、機械特性等の改良された共重合体とすることができる。この場合、一般式(IX)で表わされるジオールを1種あるいは複数併用しても良い。一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされる電荷輸送能を有するジオールと一般式(IX)で表わされるジオールとの割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。また、適当な重合操作を選択することによって共重合体の中でもランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム交互共重合体、ランダムブロック共重合体等を得ることができる。例えば、一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされる電荷輸送能を有するジオールと一般式(IX)で表わされるジオールを初めから均一に混合して芳香族ジカルボン酸、或いはその誘導体との縮合反応を行なえば一般式(I)、(III)、(IV)で表わされる繰り返し単位と一般式(II)で表わされる繰り返し単位とからなるランダム共重合体が得られる。
【0035】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂の製造方法としては、公知の様々な重合方法を用いることが可能であるが、具体的には界面重合法、溶液重合法、エステル交換法等を挙げることができる。これらのうち、界面重合法を用いて本発明の芳香族ポリエステル樹脂を製造する場合、例えば、1種以上の二官能性フェノール化合物、もしくはビスフェノール化合物をアルカリ水溶液水に対して実質的に不溶性であり、且つ、芳香族ポリエステル樹脂を溶解する有機溶媒との2相間で芳香族ジカルボン酸ジクロライド化合物と反応を行なう。この際、高速撹拌や触媒の添加によって反応媒体を乳化させて行なうことによって短時間で分子量分布の狭い芳香族ポリエステル樹脂を得ることができる。この際、触媒として四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩を存在させることも可能である。本芳香族ポリエステル樹脂の生産性の観点から、重合温度は通常0〜40℃の範囲、重合時間は通常2〜12時間の範囲が好ましい。重合終了後、水相と有機相とを分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で洗浄、回収することにより、目的とする樹脂を得ることができる。
【0036】
上記界面重合法において、アルカリ水溶液に用いる塩基としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等である。これらの塩基は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。塩基の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.0〜3.0倍当量の範囲が好ましい。使用される水は蒸留水、イオン交換水が好ましい。
【0037】
有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、又は、それらの混合物である。又、それらにトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を混合した有機溶媒でもよい。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素であり、より好ましくは、ジクロロメタン又はクロロベンゼンである。
【0038】
芳香族ポリエステル製造時に触媒として用いられる四級アンモニウム塩、もしくは四級ホスホニウム塩としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の三級アルキルアミンと塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリウムクロライド等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0039】
また、アルカリ水溶液中でのジオールの酸化を防ぐためにハイドロサルファイト等の酸化防止剤を加えても良い。
【0040】
一方、溶液重合を行なう場合は、ジオールを溶媒に溶解し、脱酸剤を添加し、これに芳香族カルボン酸クロライド化合物を添加することにより得られる。脱酸剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンのような第3級アミンおよびピリジンが使用される。また、反応に使用される溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素およびテトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系の溶媒およびピリジンが好ましい。反応温度は通常、0〜80℃、重合時間は通常2〜12時間の範囲が好ましい。
【0041】
また、エステル交換法によっても製造される。この場合、不活性ガス存在下にジオールと芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を混合し、通常減圧下80〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的に1mmHg以下にして生成するアルコール類を系外に留去させる。重合時間は、通常1〜6時間の範囲が好ましい。又、必要に応じて酸化防止剤を加えても良い。芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物中、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの低級アルキル基が好ましい。
【0042】
以上、すべての重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤として末端停止剤を用いることが望ましく、従って、本発明で使用される芳香族ポリエステル樹脂の末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。使用される末端停止剤は、1価の芳香族ヒドロキシ化合物、1価のカルボン酸または1価のカルボン酸のハライド誘導体等である。1価の芳香族ヒドロキシ化合物は、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−イソプロピルフェノール、o,m,p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−デシルオキシフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、p−フェニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、p−(2,4,4−トリメチルクロマニル)フェノール、2−(4−メトキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。
【0043】
1価のカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、3,5−ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、安息香酸、p−メチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、p−オクチルオキシ安息香酸、p−フェニル安息香酸、p−ベンジル安息香酸、p−クロロ安息香酸等の安息香酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。1価のカルボン酸のハライド誘導体は、上記の1価のカルボン酸のハライド誘導体等である。
【0044】
これらの末端封止剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。末端封止剤は、好ましくは、1価の芳香族ヒドロキシ化合物であり、より好ましくは、フェノール、o,m,p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたはp−クミルフェノールである。
【0045】
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、芳香族性ヒドロキシ基、芳香族カルボン酸基、或いはその誘導体から選ばれる反応基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。
分岐化剤の具体例は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α,α′−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、2,4−ビス[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィン、1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、α,α,α′,α′−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1,2,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、3,3′,5,5′−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、トリメシン酸トリクロライド、シアヌル酸クロライド等である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0046】
以上のようにして得られた芳香族ポリエステル樹脂は重合中に使用した触媒や酸化防止剤、又、未反応のジオールや末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作も従来公知の方法を使用できる。例えば、得られた樹脂の溶液を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液、塩酸、硝酸、リン酸等の酸水溶液、水等で洗浄した後、静止分離や遠心分離等を用いて分離する。
また、樹脂溶液を樹脂が不溶の溶媒中に析出させる方法、樹脂溶液を温水中に分散させ溶媒を留去する方法、或いは、樹脂溶液を吸着カラム等に流通させる方法等を用いて、樹脂を精製しても良い。得られた樹脂は、通常は樹脂の分解温度以下の温度で乾燥するが、好ましくは20℃〜樹脂の溶融温度の範囲内で減圧下で乾燥する。乾燥は残存溶媒等の不純物の純度が一定以下になるまで行なうが、通常は残存溶媒が1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下になるまで乾燥する。
【0047】
また、上記の方法にしたがって製造された芳香族ポリエステル樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤などの添加剤を加えることができる。
【0048】
次に、本発明の芳香族ポリエステル樹脂の主要な繰り返し単位である一般式(I)で表わされる繰り返し単位について(なお、前記一般式(IV)で表わされる原料ジオールの合成は後述するが、詳細には特開平9−272735号公報記載と同様)、さらに詳細に説明する。なお、本発明においては、「アリール」とは複素環基を含めた基を表わす。
前記一般式(I)中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。R1の置換もしくは無置換のアルキル基としては、以下のものを挙げることができる。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0049】
また、R1の置換もしくは無置換のアリール基としては、以下のものを挙げることができる。
フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ〔a,d〕シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられ、これらは上記した置換もしくは無置換のアルキル基、上記した置換もしくは無置換のアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、下記一般式で表わされるアミノ基を置換基として有していてもよい。
【0050】
【化14】
(式中、R19、R20は前記R1で定義される置換もしくは無置換のアルキル基、前記R1で定義される置換もしくは無置換のアリール基を表わすと共に、R19とR20が共同で環を形成したり、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。このような具体例としてピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
【0051】
前記一般式(I)中、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わす。Ar1の置換もしくは無置換のアリール基としては、下記一般式(X)で表わされる基及びピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環基から誘導される1価基が挙げられる。これらはA1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有していてもよい。
【0052】
【化15】
(式中、R17、R18はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。Ar4は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。hは1〜3の整数を表わす。)
【0053】
上記一般式(X)において、R17、R18のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。R17、R18の置換もしくは無置換のアルキル基は、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基と同様のものが挙げられる。R17、R18の置換もしくは無置換のアリール基は、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基に加えて、下記一般式(XI)で表わされる基を挙げることができる。
【0054】
【化16】
[式中、Bは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の2価基から選ばれる基であり、R21は、水素原子、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表わす。
【0055】
【化17】
(ここで、R22は、水素原子、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表わし、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表わす。)]
【0056】
R21のアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。R21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R21のアミノ基としては前記R1の置換もしくは無置換のアリール基の置換基として定義されたアミノ基を表わす。また、上記一般式(X)において、Ar4のアリーレン基としては前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0057】
前記一般式(III)中、Ar2、Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。Ar2、Ar3のアリーレン基としては、前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。以上一般式(III)の繰り返し単位について説明したが同一の記号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0058】
本発明の新規芳香族ポリエステル樹脂の原料モノマーである前記一般式(VI)、(VII)、(VIII)で表わされるジオールについて説明する。
これら化合物、例えば、一般式(VI)で表わされるジオールは、下記合成経路に示すように、下記一般式(XII)で表わされるホスホン酸エステルと、一般式(XIII)で表わされるカルボニル化合物とから下記一般式(XIV)で表わされるスチルベン化合物を得、次いでエーテル基又はエステル基の開裂により製造することができる。
【0059】
【化18】
[ここで、R23、R24は前記R1と同じ定義の置換もしくは無置換のアルキル基、前記R17、R18と同じ定義のアシル基を表わす。R25は低級アルキル基を表わし、具体例としては炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。R1、Ar1、Ar2、Ar3は前記定義と同一である。]
【0060】
また、前記一般式(VII)、(VIII)で表わされるジオールも対応するホスホン酸エステルと、対応するカルボニル化合物とから前記一般式(VI)で表わされるジオールの場合と同様な方法で製造することができる。
【0061】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂は電荷輸送能を有する前記一般式(I)で表わされる繰り返し単位のみからなる芳香族ポリエステル樹脂、及びその繰り返し単位と機械的特性を調節するためのそれ以外の繰り返し単位とを有する共重合体である。それ以外の繰り返し単位としては従来公知のポリエステル樹脂の繰り返し単位そのまま利用することができる。このような従来公知の繰り返し単位のうち、好ましい例として前記一般式(II)で表わされる繰り返し単位を挙げることができる。以下にもう1つの主要な繰り返し単位である前記一般式(II)について原料となる前記一般式(IX)の例を挙げて詳細に説明する。
【0062】
前記一般式(IX)のXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオキシ化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、,14−ビス(4−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン等が挙げられる。
【0063】
またXが芳香族の2価基である場合としては、前記R1で定義された置換基もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。また、Xは上記これらの2価基を連結してできる2価基や、以下に示される2価基を表わす。
【0064】
【化19】
[式中、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、a、b、c、dが2以上の場合、複数のR2、R3、R4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0065】
【化20】
(ここで、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、また、R6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R15、R16は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表わす。)から選ばれた基を表わす。]
【0066】
これらの中で、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基はいずれも前記R1で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基と同様である。又、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表わす。また、Z1,Z2が置換もしくは無置換の脂肪族の2価基である場合としてはXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオールからヒドロキシ基を除いた2価基を挙げることができる。又、Z1,Z2が置換もしくは無置換のアリーレン基である場合としては前記R1で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0067】
これらXが芳香族の2価基である場合の好ましいジオールの具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4′−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジフェニル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3,3′,3′−テトラメチル−6,6′−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3′,4,4′−テトラヒドロ−4,4,4′,4′−テトラメチル−2,2′−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)−7,7′−ジオール、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、2,6−ジヒドロキシベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキシベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシベンゾチオフェン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイドロキノン、レゾルシン、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0068】
また、ジオール2モルとイソフタロイルクロライド又はテレフタロイルクロライド1モルとの反応により製造されるエステル結合を含む芳香族ジオール化合物も有用である。以上一般式(II)で表わされる繰り返し単位についてその原料となる一般式(IX)の例を挙げて説明したが、これらのジオール中でXが芳香族の2価基である場合が特に好ましい。また、一般式(II)及び一般式(IX)中の同一の記号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0069】
次に本発明のもう1つの主要な構成単位である一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)におけるWについて説明する。
Wは、置換または無置換の2価の芳香族基を表わす。2価の芳香族基としては、本発明で目的とする芳香族ポリエステル樹脂としての特性を損なわない物が選択できるが、具体的にはフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。Wに用いられる置換基としては、水素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシキ基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、上記したアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を挙げることができる。
これらの中で好ましいのはフェニレン基である。即ち、Wとして好ましいものは、下記一般式(V)で表わされる2価のフェニレン基である。
【0070】
【化21】
なお、上記一般式(V)中、A1,A2,A3,A4は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、又はハロゲン原子を表わす。A1,A2,A3,A4は、上記したWの置換基と同様の置換基を使用することができる。なかでも、A1,A2,A3,A4について、すべてが水素原子であることが特に好ましい。
【0071】
前記一般式(I)で表わされる繰り返し単位と前記一般式(II)で表わされる繰り返し単位との共重合ポリエステル樹脂において、該一般式(I)で表わされる繰り返し単位の含有する割合は任意の範囲で選択することができるが、該一般式(I)で表わされるの繰り返し単位の含有率は芳香族ポリエステル樹脂の電荷輸送性に対応しているので、好ましくは全繰り返し単位中5モル%以上、より好ましくは20モル%以上含有する事が望ましい。
【0072】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂の好ましい分子量は、ポリスチレン換算数平均分子量で1000〜500000であり、より好ましくは10000〜200000であり、また、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいてその重量平均分子量(ポリスチレン換算)は7000〜1000000が好ましい。より好ましくは10000〜300000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性の悪化、耐キャリア液性の不足等実用性に乏しくなる。又分子量が大きすぎる場合には、一般有機溶剤への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用上問題となる。
【0073】
本発明の芳香族ポリエステル樹脂は種々の一般的有機溶剤、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、モノクロロベンゼン、及びキシレン等に対し、良好な溶解性を示す。従って本発明のポリエステル樹脂を溶解できる適当な溶剤により適当な濃度の溶液を作成し、これを用いて公知の塗工法により種々の感光体を作成することができる。
【0074】
本発明で用いられる高分子電荷輸送物質の前記本発明の芳香族ポリエステル樹脂の感光層全体に占める量は、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%である。
【0075】
さらに、本発明の液体現像用の電子写真用感光体の感光層においては、必須成分としてアクセプター性化合物が含有される。なお、乾式現像用の電子写真用感光体の感光層においてもアクセプター性化合物を含有させることが好ましい。本発明の主要な構成成分であるアクセプター性化合物の好ましい化合物である下記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物について更に説明する。
【0076】
【化22】
(式中、f1、f2、f3、f4は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基またはニトロ基を表わし、AおよびBは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基を表わす。)
【0077】
本発明上記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物中、f1〜f4は,水素原子、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの置換アルキル基、シアノ基、またはニトロ基を表わし、AおよびBは、水素原子、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などの置換アルキル基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシエチルカルボニル基などの置換アルキルカルボニル基、フェニル基,ナフチル基などのアリール基、その置換基としてはメチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。特に、前記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物において、下記構造式(A−1)で表わされる(2,3−ジフェニル−1−インデン)マロンにトリルが好適に使用される。
【0078】
【化23】
【0079】
本発明で用いることができるアクセプター性化合物としては、公知の化合物も使用する事ができる。例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−インデノ4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどを挙げることができ、さらに下記構造式(A−2)、(A−3)、(A−4)で表わされるアクセプター性化合物を好適に使用することができる。
【0080】
【化24】
【0081】
【化25】
【0082】
【化26】
【0083】
これらの有機アクセプター性化合物は単独または2種類以上が併用されても良い。
また、これら有機アクセプター性化合物の感光層に占める量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜40重量%が適当である。
【0084】
さらに、本発明の液体現像用の電子写真用感光体の感光層においては、必要に応じてフェノール化合物が含有される。本発明の主要な構成成分である下記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物について説明する。
【0085】
【化27】
(式中、g1〜g8は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基,置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基,置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)
【0086】
本発明の上記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物中、g1〜g8は,水素原子,メチル基,エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基,t−ブチル基などのアルキル基、ベンジル基,メトキシメチル基,メトキシエチル基などの置換アルキル基,メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシエチルオキシカルボニル基などの置換アルコキシカルボニル基、フェニル基,ナフチル基などのアリール基、その置換基としてはメチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基,メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基,フッ素原子,塩素原子などのハロゲン原子、が挙げられ、また置換もしくは無置換のアルコキシ基としては上記置換もしくは無置換アルキル基を有するアルコキシ基を挙げることができる。
【0087】
また、これらフェノール化合物の感光層における含有量は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは、0.1〜30重量%である。0.1重量%未満では、繰り返し耐久性の向上に対する効果が充分でなく、また50重量%超えると機械的耐久性の低下、及び感度低下を来たす。
【0088】
本発明において用いる前記フェノール化合物の具体例としては、下記表1に示すものが挙げられるが,これらに限定されるものではない。
【0089】
【表1】
【0090】
以上、本発明の新規芳香族ポリエステル樹脂について説明したが、このものを感光層中に含有させる電子写真用感光体(以下、単に感光体ともいう)について以下に説明する。
本発明の感光体の断面図を図1〜図6に示す。
本発明の感光体は前記のような芳香族ポリエステル樹脂の1種または2種以上を感光層2(2’,2’’,2’’’,2’’’’,2’’’’’)に含有させたものであるが、これらの応用の仕方によって図1、図2、図3、図4、図5あるいは図6に示したごとくに用いることができる。
【0091】
図1における感光体は導電性支持体1上に増感染料及び本発明の芳香族ポリエステル樹脂、場合により結合剤(結着樹脂)よりなる感光層2が設けられたものである。ここでの本発明の芳香族ポリエステル樹脂は光導電性物質として作用し、光減衰に必要な電荷担体の生成及び移動は本発明の芳香族ポリエステル樹脂を介して行なわれる。しかしながら、本発明の芳香族ポリエステル樹脂は光の可視領域においてほとんど吸収を有していないので、可視光で画像を形成する目的のためには、可視領域に吸収を有する増感染料を添加して増感する必要がある。
【0092】
図2における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を本発明の芳香族ポリエステル樹脂単独あるいは結合剤と併用してなる電荷輸送媒体4の中に分散せしめた感光層2’が設けられたものである。本発明の液体現像用の電子写真用感光体の好ましい層構成も、該図2に示す層構成のものである。ここでの本発明の芳香族ポリエステル樹脂は単独であるいは結合剤との併用で電荷輸送媒体を形成し、一方、電荷発生物質3(無機又は有機顔料のような電荷発生物質)が電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は主として電荷発生物質3が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する作用を担当している。そしてこの感光体にあっては電荷発生物質と本発明の芳香族ポリエステル樹脂とが、互いに主として可視領域において吸収波長領域が重ならないというのが基本的条件である。これは電荷発生物質3に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する本発明の芳香族ポリエステル樹脂は波長600nm以上にほとんど吸収がなく、一般に可視領域から近赤外領域の光線を吸収し、電荷担体を発生する電荷発生物質3とを組み合わせた場合、特に有効に電荷輸送媒体、あるいは電荷輸送物質として働くのがその特長である。なお、上記電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。
【0093】
図3における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を主体とする電荷発生層5と、本発明の芳香族ポリエステル樹脂を含有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2’’が設けられたものである。この感光体では電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層5に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行なうもので、光減衰に必要な電荷担体の発生は電荷発生物質3で行われ、また電荷担体の輸送は電荷輸送層4で行なわれる。こうした機構は図2に示した感光体においてした説明と同様である。
なお電荷輸送層4は本発明の芳香族ポリエステル樹脂単独あるいは結合剤との併用で形成される。また本発明の芳香族ポリエステル樹脂は、電荷輸送媒体、あるいは低分子電荷輸送物質としても使用され、その場合、電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。また電荷発生効率を高めるために、電荷発生層5に本発明の芳香族ポリエステル樹脂を含有させてもよい。同様の目的で感光層2’’中に低分子電荷輸送物質を併用してもよい。後述の感光層2’’’〜2’’’’’についても同様である。
【0094】
図4における感光体は電荷輸送層4上に保護層6を設けたものである。本構成の場合は電荷輸送層4上に本発明の芳香族ポリエステル樹脂あるいは結合剤との併用で保護層が形成される。当然のことながら、従来多く使用されている低分子分散型電荷輸送層上への形成が効果的である。なお図2に示した感光層2’上へ同様に保護層が設けられてもよい。
【0095】
図5における感光体は図3の電荷発生層5と本発明の芳香族ポリエステル樹脂を含有する電荷輸送層4の積層順を逆にしたものであり、その電荷担体の発生及び輸送の機構は上記の説明と同様にできる。この場合機械的強度を考慮し図6のように電荷発生層5の上に保護層6を設けることもできる。
実際に本発明の感光体を作製するには、図1に示した感光体であれば、本発明の芳香族ポリエステル樹脂の1種または2種以上と、必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用して溶解し、更にこれに増感染料を加えた液をつくり、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2を形成すればよい。
【0096】
感光層の厚さは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2に占める本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は20〜100重量%が好ましく、又、感光層2に占める増感染料の量は0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量%である。増感染料としてはブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレット6Bのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGエキストラ、エオシンS、エリトロシン、ローズベンガル、フルオレセインのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、シアニンのようなシアニン染料が挙げられる。
【0097】
また、図2に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上の本発明の芳香族ポリエステル樹脂と、必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液に電荷発生物質3の微粒子を分散せしめ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2’を形成すればよい。
感光層2’の厚さは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2’に占める本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は20〜95重量%が好ましく、また、感光層2’に占める電荷発生物質3の量は0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。
【0098】
本発明の乾式または液体現像用の電子写真用感光体の感光層に用いることができる電荷発生物質3としては、例えばセレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコンなどの無機材料、有機材料としては例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報に記載)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、例えばシーアイピグメントブルー16(CI74100)、チタニルフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、例えばシーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン系顔料などが挙げられる。なお、これらの電荷発生物質は単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0099】
また、上記の電荷発生物質の中で、特にフタロシアニン系顔料との組合せにより、高感度で且つ高耐久な感光体を得ることができる。フタロシアニン顔料としては、下記式(N)で表わされるフタロシアニン骨格を有する化合物で、Mとしては、金属(中心金属)および無金属(水素)の元素等が挙げられる。
【0100】
【化28】
【0101】
ここで挙げられるMは、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしくは酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物などの2種以上の元素からなる。Mは、これらの元素に限定されるものではない。本発明におけるフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質とは、少なくとも一般式(N)の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体など多量体構造を持つもの、さらに高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。
【0102】
これらの様々なフタロシアニンのうち、MにTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、Hを有する無金属フタロシアニンは、感光体特性的に、特に好ましい。
また、これらのフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことも知られており、例えばオキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、Y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。同じ中心金属等を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより、種々の特性も変化する。その中で、感光体特性も、このような結晶系変化に伴い、変化することが報告されている(電子写真学会誌 第29巻 第4号(1990))。
このことから、各フタロシアニンは、感光体特性的に、最適な結晶系が存在し、特にオキソチタニウムフタロシアニンにおいては、Y型の結晶系が望ましい。
また、これらの電荷発生物質は、フタロシアニン骨格を有する電荷発生物質を2種以上混合していてもかまわない。さらにそれ以外の電荷発生物質と混合していてもかまわない。この場合に混合する電荷輸送物質としては、無機系材料及び有機系材料が挙げられる。
【0103】
これら電荷発生物質の感光層に占める量は好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.3〜25重量%が適当で、高分子正孔輸送物質に対する電荷発生物質の割合は5〜95重量%とするのが好ましい。
【0104】
更に図3に示した感光体を作製するには、導電性支持体1に電荷発生物質を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥するかして、更に必要であればバフ研磨などの方法によって表面仕上げ、膜厚調整などを行って電荷発生層5を形成し、この上に1種又は2種以上の芳香族ポリエステル樹脂あるいは必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成すればよい。
なお、ここで電荷発生層5の形成に用いられる電荷発生物質は、前記の感光層2’の説明と同じものである。
【0105】
電荷発生層5の厚さは5μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下であり、電荷輸送層4の厚さは3〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmが適当である。電荷発生層5が電荷発生層物質の微粒子3を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質の微粒子3の電荷発生層5に占める割合は10〜100重量%が好ましく、より好ましくは50〜100重量%程度である。又、電荷輸送層4に占める電荷輸送能を有する本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は40〜100重量%が好ましい。
【0106】
なお、図3における感光層2’’に低分子電荷輸送物質を含有してもよいことは前記のとおりであり、帯電性及び感度を調節する等の目的で用いられるが、ここに用いられる該電荷輸送物質としては下記のものが挙げられる。
オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、同52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号、同55−52063号、同56−81850号などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)など。
【0107】
図4に示した感光体を作成するには、図3に示した感光体上に本発明の芳香族ポリエステル樹脂を単独であるいは必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して、保護層6が設けられる。保護層の厚さは0.15〜10μmが好ましい。保護層6中に占める本発明の芳香族ポリエステル樹脂の量は40〜100重量%が好ましい。
【0108】
図5に示した感光体を作成するには導電性支持体1上に本発明の芳香族ポリエステル樹脂あるいは必要に応じて結合剤あるいは電荷輸送物質と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成したのち、この電荷輸送層の上に電荷発生層物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した溶媒中に分散した分散液をスプレー塗工等の方法で塗布乾燥して電荷発生層5を形成すればよい。電荷発生層あるいは電荷輸送層の量比は図3で説明した内容と同様である。
【0109】
このようにして得られた感光体の電荷発生層5の上に前述の保護層6を形成することにより、図6に示す感光体を作成できる。
また図1、2、3及び5に示した層構成の感光体においても、後述する通常の保護層を形成することもできる。
【0110】
また、結合剤としてはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネートなどの縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体などが用いられるが、絶縁性で且つ接着性のある樹脂はすべて使用できる。必要により可塑剤が結合剤に加えられているが、そうした可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが例示できる。また必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。
【0111】
上記感光層中には帯電性の向上等を目的として必要により、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。このような可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが、酸化防止剤、光安定剤としてはフェノール化合物、ハイドロキノン化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードアミンとヒンダードフェノールが同一分子中に存在する化合物など例示できる。
【0112】
上記いずれの感光体においても導電性基体1としては、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金、ステンレス等の金属板、金属ドラムまたは金属箔、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金、酸化スズ、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックフィルム、或いは導電性物質を塗布する等の導電処理を施した紙、プラスチックフィルムまたはドラム等が挙げられる。
【0113】
また、必要に応じて導電性基体上に中間層を設けても良い。中間層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。中間層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えても良い。これらの中間層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。さらに、本発明の中間層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。中間層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0114】
さらに、耐摩擦性など機械的耐久性を向上させるために、感光層上に保護層を設けても良い。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。保護層には耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したものを添加することができる。保護層の形成方法としては通常の塗布法が採用できる。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作製法にて形成したa−C、a−SiCなどの公知材料を保護層として用いることもできる。
【0115】
更に以上のようにして得られる感光体には導電性支持体と感光層の間に、必要に応じて接着層又はバリヤ層を設けることができる。これらの層に用いられる材料としては、ポリアミド、ニトロセルロース、酸化アルミニウム、酸化チタンなどであり、また膜厚は1μm以下が好ましい。
【0116】
本発明の感光体は、前期の材料を有機溶剤中に溶解または分散して感光層形成液を調整し、これを、上記導電性支持体上に、あるいは中間層等を介して浸漬法やブレード塗布法、スプレー塗布法で塗布し乾燥することで形成される。また、必要に応じ、予め、電荷発生物質を分散し他に材料と合わせて溶解または分散し、感光層形成液を調整することも可能である。
分散方法としては、例えば、ボールミル分散、超音波分散、ホモミキサー分散等が挙げられる。
また、感光層の分散液或いは溶液を調整する際に使用する溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン、ジオキソラン等を挙げることができる。
【0117】
本発明の感光層では、帯電性、感度、及び分散性等を改良する目的で、必要に応じて結着剤を加えることができる。
感光層形成時に用いる結着剤は、従来から知られている絶縁性が良い電子写真感光体用結着剤であればいかなる物質も使用でき、特に限定はない。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、ならびにこれらの樹脂の繰り返し単位のうち2つ以上を含む共重合体樹脂、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂等の絶縁性樹脂のほか、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの結着剤は単独または2種類以上の混合物として用いることができる。
【0118】
本発明における感光層の厚さは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜40μmが適当である。5μmより薄いと帯電性が低下し、逆に、100μmより厚いと感度の低下をもたらす。
【0119】
本発明の感光体を用いて複写を行なうには、感光面に帯電、露光を施した後、現像を行ない必要によって紙などへ転写を行なう。
本発明の感光体は感度が高く、また耐久性に優れている。
【0120】
次に、液体現像剤を用いた湿式現像システムについて詳しく説明する。
図7は、本発明の電子写真方式による液体現像剤を用いた液体(湿式)現像システムを説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、中央に示す感光体は導電性支持体上に単層型感光層が設けられている。感光体はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャ(1)、転写チャージャ(6)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
【0121】
画像露光部(3)、除電ランプ(9)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。かかる光源等は、図7に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0122】
現像ユニット(4)により感光体上に現像されたトナーは、転写紙に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシおよびブレードにより、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0123】
電子写真用感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0124】
本発明のこのような液体現像用の電子写真用感光体は、耐キャリア溶剤性、及び帯電性と感度に優れ、低速から高速の複写プロセスまで好適であり、また、電荷発生物質を変えることで分光感度が制御でき、モノクロ又はフルカラー用のアナログ複写機から光書き込み用にLD或いはLED光を使用したページプリンター用の感光体まで適用することが可能である。本発明の液体現像用の電子写真用感光体に係わる感光層で特に重要なのは電荷輸送物質に高分子電荷輸送物質を用いたことにある。特に、高分子構造として従来のポリカーボネート構造に比較して高安定性の芳香族ポリエステル構造を導入したことにある。このことにより、液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する感光体の耐性が非常に高く、且つ実用的に高感度な単層型電子写真用感光体が達成される。この理由は現時点では定かでないが次のように推測される。
【0125】
本発明の特定構造を有する高分子電荷輸送物質は液体現像方式に用いられるキャリア溶剤に対する耐性が高く、一定以上の高分子量化合物であること、又、比較的結晶性の高い芳香族ポリエステル構造であることで、更にキャリア溶剤に対する耐性が増加するものと考えられる。このような強固な高分子電荷輸送物質マトリックス中に存在する特定構造のアクセプター性化合物、或いは特定構造のフェノール化合物などの低分子化合物は高分子電荷輸送物質との何らかの相互作用が存在し、結果的に本発明の高分子電荷輸送物質を含有する電子写真用感光体のキャリア溶剤に対する耐性が非常に高くなるものと推測される。
【0126】
前記相互作用としては、例えば、特定構造のアクセプター性化合物の場合は、高分子電荷輸送物質と分子間電荷移動に基づく相互作用が想定され、特定構造のフェノール化合物の場合は、高分子電荷輸送物質と水素結合、或いはファン・デア・ワールス(van der Waals)力に基づく相互作用が想定される。又、該相互作用には、本発明で使用される高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、及びフェノール化合物の構造因子も重要で、これらの相乗効果により、目的が達成されると推測される。
【0127】
一方、高感度化に対しては、上記相互作用に基づき非常に均質な高分子マトリックス(分子オーダーで分散)が作成され、電荷が電荷発生物質から電荷移動マトリックスへ注入され、マトリックスを通るスムーズな移動が達成され、結果的に高感度化が達成されたと推測される。
【実施例】
【0128】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0129】
(芳香族ポリエステル樹脂の合成)
合成例1
水酸化ナトリウム1.30g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、4−tert−ブチルフェノール15mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド8mg、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン3.16gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.66gとイソフタル酸クロライド0.66gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.38g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を3.60g得た。
【0130】
【化29】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.1)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:82.05/82.20,H:5.01/5.09,N:2.24/2.28
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:13300,重量平均分子量:47500
赤外吸収スペクトルを図8に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1743cm−1
【0131】
合成例2
水酸化ナトリウム1.28g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール21mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド10mg、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン0.86g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.76gとイソフタル酸クロライド0.76gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.05g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を3.42g得た。
【0132】
【化30】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.2)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:80.80/80.98,H:5.16/5.24,N:1.51/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:21900,重量平均分子量:122700
赤外吸収スペクトルを図9に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0133】
合成例3
水酸化ナトリウム1.34g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール22mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド11mg、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン0.81g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.80gとイソフタル酸クロライド0.80gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.15g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.3)を3.34g得た。
【0134】
【化31】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.3)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:80.70/80.57,H:5.04/5.08,N:1.67/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:27600,重量平均分子量:202700
赤外吸収スペクトルを図10に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0135】
合成例4
水酸化ナトリウム1.30g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール21mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド11mg、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン0.84g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.77gとイソフタル酸クロライド0.77gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.08g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)を3.43g得た。
【0136】
【化32】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.4)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:80.78/80.77,H:5.20/5.30,N:1.50/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:25400,重量平均分子量:147000
赤外吸収スペクトルを図11に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0137】
合成例5
水酸化ナトリウム1.34g、ナトリウムハイドロサルファイト96mg、水48mlを、窒素ガスをバブリングしながら撹拌溶解した。そこに、2,4、6−トリメチルフェノール22mg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド11mg、4、4‘−ジヒドロキシ−3、3’−ジメチルジフェニルエーテル0.81g、電荷輸送能を有するジオールとしてN−{4−〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル〕フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン2.15gをこの順に加え、30分撹拌した後、別途、テレフタル酸クロライド0.80gとイソフタル酸クロライド0.80gを40mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、20℃で1時間をかけて滴下した。その後、室温で更に4時間撹拌を続けた後、酢酸2.15g、ジクロロメタン100ml、水100mlを加え、30分撹拌した。その後、撹拌を停止し、有機層を分液後、イオン交換水で2回洗浄、ついで0.1N塩酸水溶液で洗浄し、さらに洗浄液の導電率がイオン交換水の値と同じになるまでイオン交換水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下し、得られたポリマーを80℃で減圧乾燥して、黄色の下式で示される芳香族ポリエステル樹脂(NO.5)を3.17g得た。
【0138】
【化33】
(芳香族ポリエステル樹脂NO.5)
元素分析値(%)実測値/計算値
C:79.41/97.38,H:5.03/4.90,N:1.50/1.56
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量
数平均分子量:24600,重量平均分子量:219800
赤外吸収スペクトルを図12に示した。
CO伸縮振動(エステル結合)1741cm−1
【0139】
(電子写真用感光体の製造)
実施例1
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。この上に電荷発生物質として下記構造式(P−1)で表わされるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンと2−ブタノンの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0140】
【化34】
次に、合成例1で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)1部をテトラヒドロフラン4部に溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、80℃で5分、120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して感光体No.1を作製した。
【0141】
実施例2
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.2を作成した。
【0142】
実施例3
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例3で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.3)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.3を作成した。
【0143】
実施例4
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例4で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.4を作成した。
【0144】
実施例5
実施例1において、合成例1で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.1)を、合成例5で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.5)に代えた以外は、実施例1と同様に感光体No.5を作成した。
【0145】
比較例1
実施例1と同様の中間層、電荷発生層を作成した後、下記構造式(D−1)で示される電荷輸送物質1部、ポリカーボネートZ(PC−Z,帝人化成製)1部をテトラヒドロフラン8部に溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、80℃で5分、120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して比較例感光体No.1を作製した。
【0146】
【化35】
【0147】
実施例6
実施例1において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒 328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例1と同様に感光体No.6を作成した。
【0148】
実施例7
実施例2において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒 328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例2と同様に感光体No.7を作成した。
【0149】
実施例8
実施例3において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例3と同様に感光体No.8を作成した。
【0150】
実施例9
実施例4において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例4と同様に感光体No.9を作成した。
【0151】
実施例10
実施例5において、電荷発生層として、電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン3部、ポリビニルブチラール樹脂(BM−S:積水化学工業製)2部をテトラヒドロフラン溶媒 328部中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例5と同様に感光体No.10を作成した。
【0152】
比較例2
実施例6と同様の中間層、電荷発生層を作成した後、上記構造式(D−1)で示される電荷輸送物質1部、ポリカーボネートZ(PC−Z,帝人化成製)1部をテトラヒドロフラン8部に溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、80℃で5分、120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して比較例感光体No.2を作製した。
【0153】
上記実施例、並びに比較例で作製した積層型電子写真感光体の静電特性をかくしてつくられた感光体No.1〜No.10、比較例1,比較例2について市販の静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製EPA−8200]を用いて暗所で−6KVのコロナ放電を20秒間行なって帯電せしめた後、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位V0(V)を測定した。次いで、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、V0が1/2になるまでの時間(秒)を求め、露光量E1/2(lux・sec)を算出した。その結果を、表2に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
実施例11
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。次に、X型無金属フタロシアニン1部を、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)1部とテトラヒドロフラン38部gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)60重量%、下記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、80℃で5分、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する単層型電子写真感光体、感光体No.11を作成した。
【0156】
【化36】
【0157】
実施例12
実施例11において、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を、合成例4で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)に代えた以外は、実施例11と同様に単層型電子写真感光体、感光体No.12を作成した。
【0158】
比較例3
実施例11と同様の中間層上に、X型無金属フタロシアニン1部を、ポリカーボネートZ(PC−Z,帝人化成製)1部とテトラヒドロフラン38部よりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、PC−Z組成が50重量%、上記構造式(D−1)で表わされる低分子電荷移動物質30重量%、前記構造式(A−1)で表されるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように低分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、80℃で5分、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する単層型電子写真感光体、比較例感光体No.3を作成した。
【0159】
<評価1>
上記実施例、並びに比較例で作製した単層型電子写真感光体No.11、No.12、及び比較例NO.3の静電特性を、静電複写紙試験装置EPA−8200(川口電気製作所製)を用い、まず、印可電圧+6KVで20秒間帯電した後、20秒間暗所に放置した後の表面電位V0(V)を測定し、ついで780nmの単色光を感光体表面での照度が2.5μW/cm2になるように照射して、感光体の表面電位が800Vから400Vまでに要する半減露光量Em1/2(μJ/cm2)をLD光源域(近赤外域)の感度として測定した。結果を表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
<評価2>
実施例11(感光体No.11)、実施例12(感光体No.12)、及び比較例3(比較例No.3)の単層型電子写真感光体を線速260mm/sのドラムに着装し、プラス帯電、露光、光クエンチを5000回繰り返し、初期、及び5000回後の帯電電位Vd(V)、と露光後電位Vl(V)を測定した。その結果を表4に示す。
【0162】
【表4】
【0163】
実施例13
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。次に、X型無金属フタロシアニン0.5gを、合成例1で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル(NO.1)0.5gとテトラヒドロフラン19gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、合成例1で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル(NO.1)75.5重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物22.5重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.1)を作成した。
【0164】
実施例14
X型無金属フタロシアニン0.5gを、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル(NO.2)0.5gとテトラヒドロフラン19gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)80重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を実施例13と同様に作成した中間層上にドクターブレードにて塗布し、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.2)を作成した。
【0165】
実施例15
実施例14において、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を、合成例3で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.3)に代えた以外は実施例14と同様の条件で、液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.3)を作成した。
【0166】
実施例16
実施例14において、合成例2で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)を、合成例4で得られた芳香族ポリエステル樹脂(NO.4)に代えた以外は、実施例14と同様の条件で、液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.4)を作成した。
【0167】
実施例17
実施例14において、構造式(A−1)で表わされるアクセプター化合物を、下記構造式(A−3)で表わされるアクセプター性化合物に代えた以外は、実施例14と同様の条件で、液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.5)を作成した。
【0168】
【化37】
【0169】
実施例18
実施例14において、顔料組成2重量%、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)75.5重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物20重量%、下記構造式(B−2)で表わされるフェノール性化合物2.5重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、フェノール性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分濃度が20重量%の感光体塗布液を調整した以外は、実施例14と同様に液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.6)を作成した。
【0170】
【化38】
【0171】
実施例19
実施例14において、顔料組成2重量%、合成例2で得られた電荷輸送能を有する芳香族ポリエステル樹脂(NO.2)75.5重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物20重量%、酸化防止剤(三共製:サノールLS2626)2.5重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように高分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、酸化防止剤、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分濃度が20重量%の感光体塗布液を調整した以外は、実施例14と同様に液体現像用の単層型電子写真用感光体(No.7)を作成した。
【0172】
比較例4
アルミニウム板支持体上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、100℃で5分乾燥して0.5μmの中間層を設けた。次に、X型無金属フタロシアニン0.5gを、ポリカーボネートZ(PC−Z、帝人化成製)0.5gとテトラヒドロフラン19gよりなる溶液と共にボールミリング分散した後、顔料組成2重量%、PC−Z組成が50重量%、前記構造式(D−1)で表わされる低分子電荷移動物質30重量%、前記構造式(A−1)で表わされるアクセプター性化合物18重量%、シリコーンオイル(KF50:信越化学社製)0.001重量%となるように低分子電荷輸送物質、アクセプター性化合物、テトラヒドロフラン、及びシリコーンオイルを加え、固形分20重量%の感光体塗布液を調整した。このようにして調整した感光体塗布液を前記中間層上にドクターブレードにて塗布し、120℃で20分乾燥し、厚さ20μmの感光層を有する、液体現像用の単層型電子写真用感光体、比較例感光体(No.4)を作成した。
【0173】
上記実施例13〜19、並びに比較例4の、液体現像用の単層型電子写真用感光体を、次に示す測定条件により、評価し、その結果を表5〜表11に示す。
(評価、及び試験条件)
上記実施例13〜19、並びに比較例4で作製した単層型電子写真用感光体のテストピース(55mm×60mm:端面処理を施した)を液体現像用のキャリア溶剤アイソパー(エクソン ケミカルズ社製)、及びシリコーンオイル(東レ・ダウシリコーン社製SH200;50cSt)に20℃、湿度50%の暗中に浸漬した。初期、及び各期間終了後、感光体の外観変化(変色の有無、クラックの有無等を目視観察)、及び感光体特性を評価した。感光体特性は、25℃/55%RHの環境下、静電複写紙試験装置EPA−8200(川口電気製作所製)を用い、まず、印可電圧+6KVで20秒間帯電した後、20秒間暗所に放置した後の表面電位V0(V)を測定し、ついで700nmの単色光を感光体表面での照度が2.5μW/cm2になるように照射して、感光体の表面電位が800Vから400Vまでに要する半減露光量Em1/2(μJ/cm2)を測定した。
【0174】
【表5】
【0175】
【表6】
【0176】
【表7】
【0177】
【表8】
【0178】
【表9】
【0179】
【表10】
【0180】
【表11】
【0181】
【表12】
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る液体現像剤を用いた液体現像システムの概略図である。
【図8】合成例1で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図9】合成例2で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図10】合成例3で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図11】合成例4で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図12】合成例5で得られたポリエステル樹脂の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0183】
1 導電性支持体
2,2’,2’’,2’’’,2’’’’,2’’’’’ 感光層
3 電荷発生物質
4 電荷輸送層又は電荷輸送媒体
5 電荷発生層
6 保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)で表わされる繰り返し単位と下記一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(I)で表わされる繰り返し単位の組成比をk、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化2】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化3】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、a、b、c、dが2以上の場合、複数のR2、R3、R4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【化4】
から選ばれ、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、また、R6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R15、R16は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表わす。)を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。]
【請求項3】
下記一般式(III)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化5】
(式中、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わし、Ar4は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
【請求項4】
請求項3に記載の一般式(III)で表わされる繰り返し単位と請求項2に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(III)で表わされる繰り返し単位の組成比をk’、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をj’としたときに組成比の割合が0<k’/(k’+j’)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【請求項5】
下記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化6】
(式中、R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)
【請求項6】
請求項5に記載の一般式(IV)で表わされる繰り返し単位と請求項2に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(IV)で表わされる構成単位の組成比をk”、該一般式(II)で表わされる構成単位の組成比をj”としたときに組成比の割合が0<k”/(k”+j”)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記一般式(I)〜(IV)中、Wが下記一般式(V)で表わされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂。
【化7】
(式中、A1,A2,A3,A4は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基又は、ハロゲン原子を表わす。)
【請求項8】
前記芳香族ポリエステル樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいてその重量平均分子量(ポリスチレン換算)が7000〜1000000であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂。
【請求項9】
導電性支持体上に、請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項10】
導電性支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真用感光体において、電荷輸送層に請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項11】
導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含む電子写真用感光体において、その最表層に請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項12】
導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、感光層中に、請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項13】
導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、その最表層に、請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項14】
導電性支持体上に直接又は中間層を介して単層の感光層を設けてなる液体現像用の電子写真感光体において、その感光層は少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及びアクセプター性化合物を含有し、かつ、該電荷輸送物質が請求項3乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂であることを特徴とする液体現像用の電子写真用感光体。
【請求項15】
前記アクセプター性化合物が、下記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物であることを特徴とする請求項14に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【化8】
(式中、f1、f2、f3、f4は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基、またはニトロ基を表わし、AおよびBは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基を表わす。)
【請求項16】
感光層中に,下記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項14又は15に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【化9】
(式中,g1〜g8は水素原子,置換もしくは無置換のアルキル基,置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基,置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)
【請求項17】
電子写真用感光体、帯電装置、像露光装置、現像装置および転写装置を有する電子写真装置において、該電子写真用感光体として請求項9乃至16のいずれかに記載の電子写真用感光体を備えたことを特徴とする乾式現像方式又は液体現像方式の電子写真装置。
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化1】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)で表わされる繰り返し単位と下記一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(I)で表わされる繰り返し単位の組成比をk、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化2】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化3】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、a、b、c、dが2以上の場合、複数のR2、R3、R4、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【化4】
から選ばれ、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、また、R6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表わし、R15、R16は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表わす。)を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。]
【請求項3】
下記一般式(III)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化5】
(式中、Ar2,Ar3は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わし、Ar4は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わす。R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
【請求項4】
請求項3に記載の一般式(III)で表わされる繰り返し単位と請求項2に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(III)で表わされる繰り返し単位の組成比をk’、該一般式(II)で表わされる繰り返し単位の組成比をj’としたときに組成比の割合が0<k’/(k’+j’)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【請求項5】
下記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を含有することを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【化6】
(式中、R17,R18は同一又は異なるアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わし、Wは置換もしくは無置換の2価の芳香族基を表わす。)
【請求項6】
請求項5に記載の一般式(IV)で表わされる繰り返し単位と請求項2に記載の一般式(II)で表わされる繰り返し単位からなり、該一般式(IV)で表わされる構成単位の組成比をk”、該一般式(II)で表わされる構成単位の組成比をj”としたときに組成比の割合が0<k”/(k”+j”)≦1であることを特徴とする芳香族ポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記一般式(I)〜(IV)中、Wが下記一般式(V)で表わされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂。
【化7】
(式中、A1,A2,A3,A4は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基又は、ハロゲン原子を表わす。)
【請求項8】
前記芳香族ポリエステル樹脂が、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいてその重量平均分子量(ポリスチレン換算)が7000〜1000000であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂。
【請求項9】
導電性支持体上に、請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項10】
導電性支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真用感光体において、電荷輸送層に請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項11】
導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含む電子写真用感光体において、その最表層に請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項12】
導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、感光層中に、請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項13】
導電性支持体上に、感光層が単一層に形成された単層型電子写真用感光体において、その最表層に、請求項1乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂を有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項14】
導電性支持体上に直接又は中間層を介して単層の感光層を設けてなる液体現像用の電子写真感光体において、その感光層は少なくとも電荷発生物質、電荷輸送物質及びアクセプター性化合物を含有し、かつ、該電荷輸送物質が請求項3乃至8のいずれかに記載の芳香族ポリエステル樹脂であることを特徴とする液体現像用の電子写真用感光体。
【請求項15】
前記アクセプター性化合物が、下記一般式(F1)で表わされる2,3−ジフェニルインデン化合物であることを特徴とする請求項14に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【化8】
(式中、f1、f2、f3、f4は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シアノ基、またはニトロ基を表わし、AおよびBは水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基を表わす。)
【請求項16】
感光層中に,下記一般式(G1)で表わされるフェノール化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項14又は15に記載の液体現像用の電子写真用感光体。
【化9】
(式中,g1〜g8は水素原子,置換もしくは無置換のアルキル基,置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基,置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基を表わす。)
【請求項17】
電子写真用感光体、帯電装置、像露光装置、現像装置および転写装置を有する電子写真装置において、該電子写真用感光体として請求項9乃至16のいずれかに記載の電子写真用感光体を備えたことを特徴とする乾式現像方式又は液体現像方式の電子写真装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−89702(P2006−89702A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352595(P2004−352595)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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