説明

芳香族末端基を有するアミドゲル化化合物を含有する相変化インク

【課題】熱安定性に優れる相変化インクの提供。
【解決手段】着色剤と、開始剤と、相変化インクキャリアとを含み、上述のキャリアが、少なくとも1つのラジカル硬化性モノマー化合物と、下式の化合物


とを含む相変化インクが開示されており、式中、RおよびR1’は、それぞれ芳香族基であり;R、R2’およびRは、それぞれ互いに独立して、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基またはアルキルアリーレン基であるか;または、RおよびR1’は、それぞれ互いに独立して、少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有するアルキル基、少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有するアリールアルキル基、少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有するアルキルアリール基、または芳香族基であり、ただし、RおよびR1’のうち、少なくとも1つが芳香族基であり;ただし、RもR1’も光開始性基ではない。

【発明の詳細な説明】
【図面の簡単な説明】
【0001】
【図1】図1は、比較例のゲル化剤と、3種類の本開示の例示的なゲル化剤について、波長(x軸、ナノメートル)に対する吸光度(y軸)を示すグラフである。
【図2】図2は、本開示にしたがって、比較例のゲル化剤とジ−ベンジルゲル化剤について、温度(x軸、℃)に対する複素粘度(y軸)を示すグラフである。
【図3】図3は、本開示にしたがって、比較例のインクと例示的なインクについて、温度(x軸、℃)に対する複素粘度(y軸)を示すグラフである。
【図4】図4は、本開示にしたがって、比較例のゲル化剤と例示的なゲル化剤について、硬化応答を示す棒グラフである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
下式を有する化合物が記載されており、
【化1】



式中、RおよびR1’は同じであり、RおよびR1’は、それぞれ芳香族基である。
【0003】
およびR1’は、両方とも、混合物ではなく、単一のゲル化剤生成物を与えるような、ゲル化化合物の両端をキャッピングする単一の種であり、これにより、反応後の複雑な精製および処理の必要性を排除している。同一の芳香族末端キャップ分子で官能基化されたゲル化剤組成物は、分光透過率およびゲル化特性を向上させる。末端を芳香族でキャッピングされたゲル化化合物は、紫外線吸光度が低くなっており、このゲル化剤で調製した相変化インクを紫外線でもっと有効に硬化させることができ、最終粘度が高くなるため、従来のゲル化化合物よりも優れたゲル化特性を与えることができる。実施形態では、RおよびR1’は、同じ非反応性末端キャップ分子であり、これにより、高い熱安定性を有するゲル化化合物が得られる。熱安定性の観点では、従来のゲル化剤を85℃のオーブンで一晩加熱すると、モノマーに完全には溶解しない生成物が生じてしまう。芳香族末端キャップ官能基を有するゲル化剤は、85℃のオーブンで数週間安定であり、この物質は、モノマーに自由に溶解する。本明細書のゲル化剤は、85℃に保持したオーブンで8週間安定である。安定であるとは、ゲル化材料が架橋したり、分解したりせず、モノマーへの完全な可溶性を保持していることを意味する。副生成物が少ないクリーナー生成物の合成は、単一の末端キャップ種を用いることによって行われる。
【0004】
本明細書の化合物は、従来知られている化合物よりも複素粘度が高く、熱安定性が増している。本明細書の化合物は、10〜50℃の温度で、約10センチポイズ(cps)〜10cps、約10cps〜10cps、または10cps〜10cpsの複素粘度を与える。
【0005】
本明細書の化合物は、従来知られている化合物よりも、紫外線(UV)波長の吸光度を下げることができ、この化合物を含有するインクのUV硬化をもっと効率的に行うことが可能となる。この化合物は、波長230〜400ナノメートルでの吸光度が0〜0.8、または0〜0.7、または0〜0.6である。図1を参照すると、比較例1の吸光度は、275ナノメートルで8.5E−01であり、本明細書に開示されているゲル化剤の吸光度は、275ナノメートルで0.5E−01(実施例4)、0.75E−01(実施例3)、1.00E−01(実施例2)である。
【0006】
およびR1’は同じであってもよく、以下の芳香族基
【化2】



から選択され、
式中、
【化3】



は、R基およびR1’基の接続点をあらわす。
【0007】
およびR1’は同じであり、下式
【化4】



から選択される。
【0008】
実施形態では、RおよびR1’は、それぞれ下式
【化5】



を有する。
【0009】
およびR2’は、それぞれ互いに独立して、以下のものである。
(i)2〜100個の炭素原子を有するアルキレン基(アルキレン基は、二価の脂肪族基またはアルキル基と定義され、直鎖であるか、分枝であるか、飽和であるか、不飽和であるか、環状であるか、非環状である、置換アルキレン基および置換されていないアルキレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子が、アルキレン基に存在していてもよい)、
(ii)5〜100個の炭素原子を有するアリーレン基(アリーレン基は、二価の芳香族基またはアリール基と定義され、置換アリーレン基および置換されていないアリーレン基を含み、上に記載したようなヘテロ原子が、アリーレン基に存在していてもよい)、
(iii)6〜100個の炭素原子を有するアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、二価のアリールアルキル基と定義され、置換アリールアルキレン基および置換されていないアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、上に記載したようなヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよい)、
(iv)6〜100個の炭素原子を有するアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、二価のアルキルアリール基と定義され、置換アルキルアリーレン基および置換されていないアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、上に記載したようなヘテロ原子が、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよい)、
ここで、置換アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基上の置換基は、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、スルフィド、ホスフィン、ホスホニウム、ホスフェート、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、アシル、酸無水物、アジド、アゾ、チオシアネート、カルボキシレート、ウレタン、尿素、これらの混合物であってもよく、2個以上の置換基が一緒に結合して環を形成していてもよい。
【0010】
実施形態では、RおよびR2’は、両方ともアルキレン基であり、両方とも飽和アルキレン基であり、両方とも置換されていないアルキレン基であり、下式
【化6】



を有する基であり、aは、0〜12の整数であり、下式
【化7】



を有する異性体を含む。
【0011】
は、
(i)アルキレン基、
(ii)アリーレン基、
(iii)アリールアルキレン基、
(iv)アルキルアリーレン基
であり、
ここで、置換アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基上の置換基は、上述のようにピリジンなどであってもよく、2個以上の置換基が一緒に結合して環を形成していてもよく、または、Rは、直鎖または分枝鎖のアルキレン基、例えば、エチレン基
【化8】



である。
【0012】
実施形態では、ゲル化化合物は、下式
【化9】



【化10】



を有する。
【0013】
実施形態では、下式を有する化合物
【化11】



が開示されており、式中、R、R2’およびRは、上に記載したとおりであり、RおよびR1’は、同じであっても異なっていてもよく、ただし、RおよびR1’のうち、少なくとも1つが芳香族基であり;ただし、RもR1’も光開始性基ではなく、RおよびR1’のうち、少なくとも一方は、本明細書に記載したような、芳香族基を含む芳香族末端キャップであり、RまたはR1’の他方は、以下のものである。
(i)少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有するアルキル基、
(ii)少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有するアリールアルキル基、
(iii)少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有するアルキルアリール基、例えば、トリル、
ここで、置換アルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基上の置換基は、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、サルフェート、スルホネート、スルホン酸、スルフィド、スルホキシド、ホスフィン、ホスホニウム、ホスフェート、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホン、アシル、酸無水物、アジド、アゾ、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、カルボン酸、ウレタン、尿素、混合物であってもよく、2個以上の置換基が一緒に結合して環を形成していてもよい。
【0014】
実施形態では、RおよびR1’の1つは、下式
【化12】



を有し、
式中、mは1〜10である。
【0015】
実施形態では、ゲル化化合物は、下式
【化13】



を有する。
【0016】
本明細書に開示されている化合物は、任意の方法によって調製することができ、例えば、下式の2モル当量の二塩基酸と、
HOOC−R−COOH
1モル当量の下式を有するジアミン
【化14】



とを、塩化メチレン(CHCl)のような溶媒存在下、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のような触媒存在下、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のようなカップリング剤を用いて低温で反応させた後、最終的に室温まで加温し、有機アミド中間体を得ることによって調製することができる。
【0017】
上述の二塩基酸およびジアミンは、任意の相対量で存在してもよく、例えば、ジアミン1モルあたり二塩基酸1.75モル、またはジアミン1モルあたり二塩基酸2.5モルの量で存在してもよい。
【0018】
上述のようにして得られた有機アミド中間体を含む反応混合物に、下式
−OH
を有する同一の芳香族末端キャップ分子を2モル当量加えてもよい。
【0019】
または、上述のようにして得られた有機アミド中間体を含む反応混合物に、下式
−OH
を有する芳香族アルコールである第1の末端キャップ分子1モル当量を加え、少なくとも1つのエチレン系不飽和部を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン系不飽和部を有するアリールアルキル基、または少なくとも1つのエチレン系不飽和部を有するアルキルアリール基である第2の末端キャップ分子を1モル当量加えてもよい。ある実施形態では、この第2の末端キャップ分子は、カプロラクトンアクリレートである。
【0020】
上述の有機アミド中間体および芳香族アルコールは、任意の相対量で存在してもよく、例えばRとR1’が同じであり、芳香族アルコールを含み、有機アミド中間体1モルあたり、芳香族アルコール1.75モル、または有機アミド中間体1モルあたり、芳香族アルコール3モルの量を含む。RおよびR1’が2種類の異なる種である実施形態では、RおよびR1’をあわせた合計量は、有機アミド中間体1モルあたり、1.75モル、2モル、または2.25モルであるか、または2.75モル以下、または2.5モル以下であってもよい(RおよびR1’をあわせた合計)。
【0021】
上述の成分をここに記載した順序で混ぜあわせてもよく、ワンポットで反応を行ってもよい。
【0022】
上述の有機アミド中間体を含む反応混合物に、単一の末端キャップ分子種を加えてもよい。
【0023】
または、芳香族アルコールである第1の末端キャップ分子種と、芳香族アルコールではない第2の末端キャップ分子種を、反応混合物に同時に加えてもよい。
【0024】
上述の有機アミド中間体と、および/または単一の末端キャップ成分、または末端キャップ成分の混合物を含む反応混合物を室温で一晩撹拌してもよい。次いで、この反応内容物を濾過し、副生成物のN,N−ジシクロヘキシルウレア(DCHU)を除去してもよい。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮してもよく、これにより金色のゲル状固体であるアミドゲル化剤が得られる。この固体残渣を減圧オーブンで、例えば90℃で2時間乾燥し、アミドゲル化剤から残留溶媒を除去してもよい。
【0025】
適切なカップリング剤の例としては、下式
【化15】



の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)が挙げられる。
【0026】
上述のカップリング剤および二塩基酸は、任意の相対量で存在してもよく、例えば、二塩基酸1モルあたり、カップリング剤1.8モル〜2.75モルの量で存在してもよい。
【0027】
適切な触媒の例としては、下式
【化16】



の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が挙げられる。
【0028】
上述の触媒および二塩基酸は、任意の相対量で存在してもよく、例えば、二塩基酸1モルあたり、触媒0.05モル、または二塩基酸1モルあたり、触媒1モルの量で存在してもよい。
【0029】
任意の溶媒を用いてもよく、例えば、塩化メチレンを用いてもよい。
【0030】
溶媒は、任意の量で存在してもよく、例えば、二塩基酸1ミリモルあたり、溶媒10〜50ミリリットルの量で存在してもよい。
【0031】
上述の二塩基酸と、ジアミンと、カップリング剤との反応は、任意の温度で行ってもよく、例えば、0℃〜50℃で行ってもよい。
【0032】
その次に行う、得られた末端がアミンのジアミド中間体と、さらなる二塩基酸との反応は、任意の温度で行ってもよく、例えば、0℃〜50℃で行ってもよい。
【0033】
その次に行う、得られた有機アミド中間体と、芳香族アルコールとの反応は、任意の温度で行ってもよく、例えば、15℃〜40℃で行ってもよい。
【0034】
上述の二塩基酸とジアミンとの反応は、任意の時間行われてもよく、例えば、2〜5時間行われてもよい。
【0035】
上述の有機アミド中間体と、芳香族アルコールまたは芳香族アルコールおよび第2の末端キャップ分子の混合物との反応は、任意の時間行われてもよく、例えば、1.5時間〜12時間行われてもよい。
【0036】
また、本明細書に開示されている化合物は、まず、下式のn+1モル当量の二塩基酸と、
HOOC−R−COOH
nモル当量の下式を有するジアミン
【化17】



とを、高温で、希釈していない状態で反応混合物から水を取り除きながら反応させ、下式の末端が酸の有機アミド
【化18】



を得ることによって調製されてもよい。
【0037】
その後、このようにして生成した末端が酸のオリゴアミドを、下式の2モル当量の芳香族アルコール
−OH
と反応させるか、
または、このようにして生成した末端が酸の有機アミドを、下式の1モル当量の芳香族アルコール
−OH
と反応させ、DMAPのような触媒存在下、溶媒存在下、低温でDCCのようなカップリング剤を用いることによって、少なくとも1つのエチレン系不飽和部を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン系不飽和部を有するアリールアルキル基、または少なくとも1つのエチレン系不飽和部を有するアルキルアリール基である第2の末端キャップ分子1モル当量と反応させる。
【0038】
反応は以下のように進行する。
n+1HOOC−R−COOH+n
【化19】



【化20】



【0039】
二塩基酸とジアミンとの反応混合物から、任意の方法によって水を除去してもよい。
【0040】
上述の二塩基酸とジアミンとの反応は、一般的に希釈していない状態で行われる。
【0041】
上述の二塩基酸とジアミンとの反応は、任意の温度で行われてもよく、例えば、130℃〜180℃で行われてもよい。
【0042】
上述の二塩基酸とジアミンとの反応は、任意の時間行われてもよく、例えば、2〜5時間行われてもよい。
【0043】
その後、末端が酸の有機アミド中間体と、芳香族アルコール(または、芳香族アルコールおよび第2の末端キャップ成分の混合物)とを、カップリング剤および触媒が存在する状態で反応させる。
【0044】
適切なカップリング剤としては、DCCが挙げられる。適切な触媒としては、DMAPが挙げられる。
【0045】
末端が酸の有機アミド中間体および芳香族アルコール(または芳香族アルコールおよび第2の末端キャップ成分をあわせた合計)は、任意の相対量で存在してもよく、有機アミド中間体1モルあたり、芳香族アルコール2モル、または有機アミド中間体1モルあたり、芳香族アルコール2.75モルの量で存在してもよい。
【0046】
末端が酸の有機アミド中間体およびカップリング剤は、任意の相対量で存在してもよく、実施形態では、有機アミド中間体1モルあたり、カップリング剤1.8モル、または有機アミド中間体1モルあたり、カップリング剤3モルの量で存在してもよい。
【0047】
上述の触媒および有機アミド中間体は、任意の相対量で存在してもよく、実施形態では、有機アミド中間体1モルあたり、触媒0.05モル、または有機アミド中間体1モルあたり、触媒0.8モルの量で存在してもよい。
【0048】
上述の溶媒は、任意の相対量で存在していてもよく、実施形態では、有機アミド中間体1グラムあたり、溶媒が20〜100ミリリットルの量で存在していてもよい。
【0049】
上述の有機アミド中間体と、芳香族アルコール(または芳香族アルコールおよび第2の末端キャップ成分)と、カップリング剤との反応は、任意の温度で行ってもよく、例えば、15℃〜50℃で行ってもよい。
【0050】
上述の末端が酸の有機アミド中間体と、芳香族アルコール(または芳香族アルコールおよび第2の末端キャップ成分)との反応は、任意の時間行ってもよく、例えば、2〜12時間行ってもよい。
【0051】
着色剤と、開始剤と、相変化インクキャリアとを含み、このキャリアが、下式の化合物
【化21】



を含み、この化合物が、相変化インク中に任意の量で存在し、例えば、インクキャリアの5〜50重量%の量で存在する。
【0052】
インクビヒクルは、少なくとも1つのラジカル硬化性モノマー化合物(例えば、プロポキシル化ネオペンチルジアクリレート)をさらに含有する。多官能アクリレートおよびメタクリレートのモノマーおよびオリゴマーが、相変化インクキャリア中に、任意の量で含まれていてもよく、例えば、キャリアの1〜80重量%の量で含まれていてもよい(例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート)。
【0053】
インクキャリアは、相変化インク中に任意の量で存在してもよく、例えば、インクの0.1〜97重量%の量で存在してもよい。
【0054】
インク組成物は、開始剤(例えば、ベンジルケトンのような遊離ラジカル開始剤)をさらに含み、また、相変化インクは、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートのようなアミン共力剤を含有していてもよい。
【0055】
本明細書に開示したインクのための開始剤は、任意の波長(例えば、200〜560nm)で放射線を吸収してもよい。
【0056】
開始剤は、インク中に任意の量で存在してもよく、例えば、インクの0.5〜15重量%の量で存在してもよい。
【0057】
また、放射線硬化性相変化インクは、酸化防止剤(例えば、NAUGARD(登録商標)酸化防止剤)を任意の量で含んでいてもよく、例えば、インクキャリアの0.01〜20重量%の量で含んでいてもよい。
【0058】
また、相変化インクは、着色剤を含んでいる。
【0059】
着色剤は、相変化インク中に任意の量で存在しており、例えば、インクの0.1〜15重量%の量で存在している。
【0060】
インクの硬化は、インク画像に、任意の波長(例えば、約200〜約480nm)の化学線をあてることによって行ってもよい。任意の時間、例えば、約0.2〜約30秒間、化学線にあててもよい。
【0061】
インク組成物は、一般的に、吐出温度(50℃〜120℃であるが、吐出温度は、これらの範囲の外側にあってもよい)での溶融粘度が、2〜30センチポイズであるが、溶融粘度は、これらの範囲の外側にあってもよい。
【0062】
ある実施形態では、インクを、低い温度で、特に、約110℃未満、例えば、約40℃〜約110℃の温度で吐出する。
【0063】
インク組成物を、任意の所望な方法または適切な方法で調製してもよい。例えば、インク成分を一緒に混合した後、約80℃〜約120℃の温度まで加熱し、均一なインク組成物が得られるまで撹拌し、その後、このインクを周囲温度(典型的には、20〜25℃)まで冷却してもよい。インクは、周囲温度で固体である。
【0064】
インクを、直接的なインクジェットプロセス用装置で使用してもよく、間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途で用いてもよい。
【0065】
任意の適切な基板または記録シートを使用してもよい。
【実施例】
【0066】
4リットルのケトルに、加熱マントルと、ポリテトラフルオロエチレンパドルのついたオーバーヘッドスターラーと、250ミリリットルの滴下漏斗と、Dean−Starkトラップと、還流冷却器とを取り付け、Pripol(登録商標)C36ダイマー二塩基酸(酸価196、2当量、4.23モル、2,422グラム)を加えた後、Irgafos(登録商標)168(0.2重量%、5.1グラム、7.9ミリモル)を加えた。この粘性溶液を90℃まで加熱し、アルゴンをパージし、撹拌した。次いで、エチレンジアミン(1当量、2.11モル、141.4ミリリットル)を滴下漏斗に入れ、ケトルに1時間かけて滴下した。滴下が終わった後、ケトルを155℃まで加熱し、この温度で3時間維持した。この間、凝縮した水をDean−Starkトラップで集めた。3時間後、反応生成物は、粘ちょうな金色シロップ状物であった。反応を停止させ、融解した生成物をホイル皿に入れ、室温まで冷却した。有機アミド生成物2,205グラムを粘着性コハク色樹脂として単離した。酸価:92.23、アミン価:1.64。
【0067】
(比較例1)
5リットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体331グラム(285ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン3.6リットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(7.0グラム、57.3ミリモル、0.20当量)を加え、次いで、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(141.95グラム、688ミリモル、2.4当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、Irgacure(登録商標)2959(64.22グラム、286ミリモル、1当量)、SR495B(登録商標)カプロラクトンアクリレート(98.39グラム、286ミリモル、1当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応混合物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を撹拌しつつ、2時間かけてアセトン2リットルに再び懸濁させ、次いで、再び濾過し、ゴム状固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、従来のゲル化生成物410グラム(242ミリモル、収率85%)を半透明ゲルとして得て、この主成分は、下式
10318415
を有すると考えられている。
【0068】
工程1の出発物質であるPripol(登録商標)は、生成物の混合物であり、「ほとんどが」ダイマー酸であることを注記しておく。その結果、有機アミドもゲル化剤も混合物である。さらに、有機アミドは、オリゴマーをいくらか含有している場合がある。
【0069】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 8.08(2H、d、J=9Hz、ArH)、6.97(2H、d、J=9Hz、ArH)、6.45(1H、d、J=17Hz、CH=CHC(O))、6.15(1H、dd、J=18Hz、10.5Hz、CH=CHC(O))、5.88(1H、d、J=10.5Hz、CH=CHC(O))、4.46(2H、m、CHO)、4.35(4H、m、CHO)、4.26(2H、m、CHO)、4.07(4H、m、CHO)、3.01(4H、br、NHCHCHNH)、2.33(8H、m、α−CH(エステル))、2.18(4H、t、J=7.2Hz、α−CH(アミド))、1.62−0.88(br、脂肪族のH)。
【0070】
(実施例2)
1リットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体68.61グラム(59.3ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン350ミリリットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(1.086グラム、8.89ミリモル、0.15当量)を加えた後、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(29.3グラム、142ミリモル、2.4当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、2−フェネチルアルコール(14.48グラム、119ミリモル、2当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応混合物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、下式を有すると考えられるフェネチルゲル化生成物61.27グラム(44.8ミリモル、収率76%)を半透明ゲルとして得た。
【化22】



【0071】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 7.27(10H、m、ArH)、4.30(4H、t、J=7.2Hz、ArCHCHO)、3.39(4H、br、NHCHCHNH)、2.95(4H、t、J=7Hz、ArCH)2.5,(2H、br、NH)、2.28(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(エステル))、2.19(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(アミド))、1.62−0.88(br、脂肪族のH)。
【0072】
(実施例3)
1リットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体57.84グラム(50ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン350ミリリットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(0.915グラム、7.49ミリモル、0.15当量)を加えた後、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(24.73グラム、120ミリモル、2.4当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、ベンジルアルコール(5.4グラム、50ミリモル、1.0当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応混合物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、下式を有すると考えられるベンジルゲル化生成物67.51グラム(50.4ミリモル、収率101%)を半透明ゲルとして得た。
【化23】



【0073】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 7.36(10H、m、ArH)、5.13(4H、s、ArCH)、3.38(4H、br、NHCHCHNH)、2.28(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(エステル))、2.18(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(アミド))、1.62−0.88(br、脂肪族のH)。
【0074】
(実施例4)
250ミリリットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体15.28グラム(酸価:97.16、nacid=26.46ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン150ミリリットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(323ミリグラム、0.1ミリモル)を加えた後、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(6.55グラム、31.75ミリモル、1.2当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、フェノール(2.49グラム、1.0当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応混合物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、下式を有すると考えられるゲル化生成物11.3グラム(17.2ミリモル、65%)を半透明ゲルとして得た。
【化24】



【0075】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 7.41−7.08(10H、m、ArH)、3.36(4H、br、NHCHCHNH)、2.60(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(エステル))、2.18(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(アミド))、1.95−0.85(br、脂肪族のH)。
【0076】
(実施例5)
1リットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体64.06グラム(55.3ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン350ミリリットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(1.014グラム、8.30ミリモル、0.15当量)を加えた後、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(27.4グラム、133ミリモル、2.4当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、フェニルグリコール(15.29グラム、111ミリモル、2当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応混合物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、下式を有すると考えられるフェニルグリコールゲル化生成物41.5グラム(29.7ミリモル、収率53.6%)を半透明ゲルとして得た。
【化25】



【0077】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 7.31(4H、m、ArH)、6.94(6H、m、ArH)、4.44(4H、J=4.8Hz、ArOCH2)、4.19(4H、t、J=5.1Hz、ArOCHCH)、3.38(4H、br、NHCHCHNH)、2.36(4H、t、J=7.5Hz、α−CH2(エステル))、2.19(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(アミド))、1.95−0.85(br、脂肪族のH)。
【0078】
(実施例6)
1リットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体54.6グラム(47.2ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン350ミリリットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(0.864グラム、7.07ミリモル、0.15当量)を加えた後、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(23.35グラム、113ミリモル、2.4当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、ベンジルアルコール(5.1グラム、47.2ミリモル、1.0当量)およびカプロラクトンアクリレート(SR495B(登録商標)、16.26グラム、47.2ミリモル、1.0当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応混合物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、下式を有すると考えられるベンジルゲル化生成物の混合物64.7グラム(41.1ミリモル、収率87%)を半透明ゲルとして得た。
【化26】



【0079】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 7.36(5H、m、ArH)、6.44(1H、d、J=15.6Hz、CH=CHC(O))、6.18(1H、m、CH=CHC(O))、5.87(1H、d、J=10.2Hz、CH=CHC(O))、5.12(2H、s、ArCH)、4.35(4H、m、CHO)、4.07(4H、t、J=7Hz、CHO)、3.38(4H、br、NHCHCHNH)、2.33(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(エステル))、2.18(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(アミド))、1.95−0.85(br、脂肪族のH)。
【0080】
(実施例7)
1リットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体66.58グラム(57.5ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン350ミリリットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(1.054グラム、8.62ミリモル、0.15当量)を加えた後、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(28.5グラム、138ミリモル、2.4当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、2−フェニルエチルアルコール(7.02グラム、57.5ミリモル、1.0当量)およびカプロラクトンアクリレート(SR495B(登録商標)、16.26グラム、47.2ミリモル、1.0当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、下式を有すると考えられるベンジルゲル化生成物の混合物82グラム(51.6ミリモル、収率90%)を半透明ゲルとして得た。
【化27】



【0081】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 7.29−7.22(5H、m、ArH)、6.45(1H、d、J=17Hz、CH=CHC(O))、6.16(1H、m、CH=CHC(O))、5.88(1H、d、J=10.5Hz、CH=CHC(O))、4.35(4H、m、CHO)、4.07(4H、t、J=7Hz、CHO)、3.38(4H、br、NHCHCHNH)、2.33(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(エステル))、2.18(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(アミド))、1.95−0.85(br、脂肪族のH)。
【0082】
(実施例8)
1リットルの丸底フラスコに磁気撹拌棒を取り付け、上述の融解した有機アミド前駆体66.13グラム(57.1ミリモル、1当量)を加えた。次いで、ジクロロメタン350ミリリットルを加え、この混合物をすべての有機アミドが溶解するまで撹拌した。次いで、4,4−ジメチルアミノピリジン(1.047グラム、8.57ミリモル、0.15当量)を加えた後、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(28.3グラム、137ミリモル、2.4当量)を加えた。15分後、濁った懸濁物が生じた。この懸濁物に、フェニルグリコール(7.89グラム、57.1ミリモル、1.0当量)およびカプロラクトンアクリレート(SR495B(登録商標)、16.26グラム、47.2ミリモル、1.0当量)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。次の日に、反応物を濾過し、N,N−ジシクロヘキシルウレア(副生成物)を除去し、濾液の溶媒を減圧下で除去してオフホワイト色の不透明固体を得た。この固体残渣を減圧オーブン中、90℃で2時間乾燥し、残留溶媒を除去し、下式を有すると考えられるフェニルグリコールゲル化生成物の混合物78.83グラム(49.1ミリモル、収率86%)を半透明ゲルとして得た。
【化28】



【0083】
H NMR(ppm、CDCl、300MHz、室温):δ 7.28−6.95(5H、m、ArH)、6.45(1H、d、J=17Hz、CH=CHC(O))、6.18(1H、dd、J=18Hz、10.5Hz、CH=CHC(O))、6.12(1H、d、J=10.5Hz、CH=CHC(O))、4.44(2H、m、CHCHO)、4.35(4H、m、CHO)、4.18(2H、m、CHO)、4.07(4H、t、J=7Hz、CHO)、3.38(4H、br、NHCHCHNH)、2.33(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(エステル))、2.18(4H、t、J=7.5Hz、α−CH(アミド))、1.95−0.85(br、脂肪族のH)。
【0084】
本明細書に開示したいくつかのゲル化剤について、Cary分光光度計を用いて紫外光/可視光スペクトルの比較結果を得た。すべてのサンプルを、ジクロロメタン中、濃度0.2mg/mLで調製した。図1は、比較例1のゲル化剤(線10)、実施例2(フェネチルゲル化剤、線16)、実施例3(ジ−ベンジルゲル化剤、線14)、実施例4(フェノールゲル化剤、線12)について、波長(x軸、ナノメートル)に対する吸光度(y軸)を示している。
【0085】
比較例1のゲル化剤と、実施例3のジ−ベンジルゲル化剤のレオロジー特性は、TA Instruments製の歪み制御型レオメーター(Rheometrics RFS−3)を用いて試験することによって得た。掃引速度1Hzで、温度掃引90℃から30℃で、5°間隔で測定を行った。図2は、比較例1のゲル化剤(「従来のゲル化剤」)と、実施例3のジ−ベンジルゲル化剤について、温度(x軸、℃)に対する複素粘度(y軸、センチポイズ)を示している。
【0086】
(実施例9)
本明細書に記載したプロセスにしたがって、以下の表の成分を、列挙した量で混合することによって硬化性固体インク組成物を調製した。600ミリリットルのビーカーに、上の実施例3のアミドゲル化剤、Unilin(登録商標)350アクリレート、SR9003(登録商標)、SR399LV(登録商標)、IRGACURE(登録商標)379、DAROCUR(登録商標)ITX、IRGACURE(登録商標)819、IRGACURE(登録商標)127、IRGASTAB(登録商標)UV−10を加えた。混合物を磁気撹拌棒で撹拌し、1時間で90℃まで加熱し、透明溶液を作成した。この溶液を、熱いままで1マイクロメートルのParkerフィルターを用い、加圧しつつ濾過し、加熱テープを取り付けた滴下漏斗に移した。加熱した600ミリリットルのビーカー中、濾過した基剤を撹拌しつつ、1時間かけてシアン顔料分散物にゆっくりと加えた。このインクを90℃で2時間混合し、1マイクロメートルのParkerフィルターで加圧しつつ再び濾過した。
【0087】
【表1】



【0088】
*シアン顔料分散物:EFKA(登録商標)4340中、15重量%のシアン顔料
【0089】
(比較例10)
本明細書に記載したプロセスにしたがって、以下の表の成分を、列挙した量で混合することによって、比較例の硬化性固体インク組成物を調製した。600ミリリットルのビーカーに、上の実施例3のアミドゲル化剤、Unilin(登録商標)350アクリレート、SR9003(登録商標)、SR399LV(登録商標)、IRGACURE(登録商標)379、DAROCUR(登録商標)ITX、IRGACURE(登録商標)819、IRGACURE(登録商標)127、IRGASTAB(登録商標)UV−10を加えた。混合物を磁気撹拌棒で撹拌し、1時間で90℃まで加熱し、透明溶液を作成した。この溶液を、熱いままで1マイクロメートルのParkerフィルターを用い、加圧しつつ濾過し、加熱テープを取り付けた滴下漏斗に移した。加熱した600ミリリットルのビーカー中、濾過した基剤を撹拌しつつ、1時間かけてシアン顔料分散物にゆっくりと加えた。このインクを90℃で2時間混合し、1マイクロメートルのParkerフィルターで加圧しつつ再び濾過した。
【0090】
【表2】



【0091】
*シアン顔料分散物:EFKA(登録商標)4340中、15重量%のシアン顔料
【0092】
実施例9のベンジルゲル化インクと、比較例10の比較例のゲルインクのレオロジー特性は、TA Instruments製の歪み制御型レオメーターを用いて試験することによって得た。掃引速度1Hzで、温度掃引90℃から30℃で、5°間隔で測定を行った。図3は、実施例9のベンジルゲル化インクと、比較例10の比較例のゲルインクについて、温度(x軸、℃)に対する複素粘度(y軸、センチポイズ)を示している。黒丸は、熱い状態から冷たい状態まで(冷却/凍結)のシアンインク(従来のゲル化剤)を示している。白丸は、冷たい状態から熱い状態まで(加熱/融解)のシアンインク(従来のゲル化剤)を示している。黒四角は、熱い状態から冷たい状態まで(冷却/凍結)のシアンインク(ベンジルゲル化剤)を示している。白四角は、冷たい状態から熱い状態まで(加熱/融解)のシアンインク(ベンジルゲル化剤)を示している。
【0093】
Mylar(登録商標)フィルム上に、K Printing Proofer(RK Print Coat Instrument Ltd.(Litlington、Royston、Heris、SG8 0OZ、U.K.によって製造))を用いて、実施例9および比較例10で調製したインクを印刷したサンプルを作成した。この方法で、試験したインクを、印刷プレートセット上で、150℃で融解させた。次いで、Mylar(登録商標)フィルムを取り付けたローラーバーを、表面に融解したインクを含有するプレート上に転がした。Mylar(登録商標)フィルム上のインクを冷却すると、長方形の3つの別個のブロックに画像が得られた。印刷したインクを、Fusions UV Systems,Inc.から入手可能なFusions UV Lighthammer(登録商標)に、600W水銀D球を取り付け、10フィート/分(fpm)、32fpm、90fpm、150fpm、230fpmの種々のコンベアベルト速度で通過させることによって硬化させた。硬化させた印刷物を、メチルエチルケトン(MEK)二重摩耗試験(ASTM D4752の耐溶媒摩耗試験)を用いて評価した。図4は、実施例9のベンジルゲル化インクと、比較例10の比較例の従来のゲルインクについて、二重MEK摩耗に対する応答を示している。
【0094】
したがって、実施形態では、アリールエステル末端基(例えば、ベンジル基など)のみを有するC−36ダイマー二塩基酸の有機アミドを含むゲル化剤組成物は、末端キャップの1つが光開始性基であり、第2の末端キャップがカプロラクトンアクリレート基である複雑なオリゴアミドを含む従来のゲル化剤よりもかなり単純なゲル化剤を提供する。実施形態では、本発明のゲル化剤は、光開始剤を含んでおらず、従来のゲル化剤と比較して、硬化に必要なスペクトル領域で低いUV吸光度を示す。さらなる実施形態では、本発明のゲル化剤は、多くの不活性な副生成物を除去することが必要な従来のゲル化剤と比較して、もっと費用効率が高いスケールアップを可能にする。実施形態では、本発明のオリゴアミドゲル化剤誘導体は、末端基にたった1種類の官能基部分を有しているので、単純で費用効率が高いプロセスによって、簡単に大規模に調製することができる生成物を提供する。それに加え、実施形態では、末端がジ−ベンジルでキャッピングされたオリゴアミドゲル化剤が、硬化スペクトル領域でのUV吸光度が顕著に低く、本発明のゲル化剤を用いて調製される相変化インクを硬化させるのに必要なUV光エネルギーが減ることがわかった。ある実施形態では、本発明のゲル化剤組成物は、粘度対温度プロフィールで証明されるように、従来のゲル化剤よりも優れたゲル化能も示している。さらに、本発明のゲル化剤は、従来のゲル化剤よりも高い熱安定性を示し、この性質は、末端基部分の光開始剤が存在しないことによるものであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、開始剤と、相変化インクキャリアとを含み、前記キャリアが、少なくとも1つのラジカル硬化性モノマー化合物と、下式の化合物
【化1】



〔式中、RおよびR1’は、同じであっても異なっていてもよく、RおよびR1’は、それぞれ互いに独立して、(i)少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有し、直鎖であっても分枝であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキル基であっても置換されていないアルキル基であってもよく、アルキル基にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキル基、(ii)少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有し、置換アリールアルキル基であっても置換されていないアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても、置換されていなくてもよく、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキル基、(iii)少なくとも1箇所のエチレン系不飽和部を有し、置換アルキルアリール基であっても置換されていないアルキルアリール基であってもよく、アルキルアリール基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリール基、または(iv)芳香族基であり、
ただし、RおよびR1’のうち、少なくとも1つが芳香族基であり;ただし、RもR1’も光開始性基ではなく;
およびR2’は、同じであっても異なっていてもよく、RおよびR2’は、それぞれ独立して、(i)直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキレン基であっても置換されていないアルキレン基であってもよく、アルキレン基にヘテロ原子が存在していてもよい、アルキレン基;(ii)置換アリーレン基であっても置換されていないアリーレン基であってもよく、アリーレン基にヘテロ原子が存在していてもよい、アリーレン基;(iii)置換アリールアルキレン基または置換していないアリールアルキレン基であってもよく、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキレン基;または(iv)置換アルキルアリーレン基であっても置換されていないアルキルアリーレン基であってもよく、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリーレン基から選択され;
は、(i)飽和であっても不飽和であってもよい、置換アルキレン基または置換されていないアルキレン基であってもよく、アルキレン基にヘテロ原子が存在していてもよい、直鎖または分枝鎖のアルキレン基;(ii)置換アリーレン基または置換されていないアリーレン基であってもよく、アリーレン基にヘテロ原子が存在していてもよい、アリーレン基;(iii)置換アリールアルキレン基であっても置換されていないアリールアルキレン基であってもよく、アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アリールアルキレン基;または(iv)置換アルキルアリーレン基であっても置換されていないアルキルアリーレン基であってもよく、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換されていても置換されていなくてもよく、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよい、アルキルアリーレン基である。〕
とを含む、相変化インク。
【請求項2】
またはR1’のうち1つが、以下の式
【化2】



を有し、
【化3】



は、前記化合物に対するR基およびR1’基の接続点をあらわし;または、RまたはR1’のうち1つが、以下の式
【化4】



を有し、
mが、(O−(CH繰り返し単位の数をあらわす整数であり、
ここで、RおよびR2’が、下式
【化5】



の異性体を含み、不飽和部および環状基を含んでいてもよい分枝鎖アルキレン基であり、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12の整数である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
が、飽和であっても不飽和であってもよい、置換アルキレン基または置換されていないアルキレン基であってもよく、アルキレン基にヘテロ原子が存在していてもよい、直鎖または分枝鎖のアルキレン基である、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
下式の化合物
【化6】



を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
およびR1’が同じであり、RおよびR1’が、それぞれ芳香族基であり;
およびR2’が、それぞれ下式
【化7】



を有し、
【化8】



は、前記化合物に対するR基およびR1’基の接続点をあらわし;RおよびR2’は、両方ともアルキレン基であり、直鎖であっても分枝であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、環状であっても非環状であってもよく、置換アルキレン基であっても置換されていないアルキレン基であってもよく、アルキレン基にヘテロ原子が存在していてもよい、請求項1に記載の相変化インク。
【請求項6】
(I)インクジェット印刷装置に、請求項1に記載の相変化インク組成物を組み込むことと;
(II)前記インクを融解させることと;
(III)融解したインクの液滴を、基板上に画像様パターンになるように放出させることと;
(IV)前記画像様パターンに紫外線をあてることとを含む、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225879(P2011−225879A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94524(P2011−94524)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】