説明

芳香族炭化水素を含むガスの測定装置及び測定方法

【課題】経時的に変化する芳香族炭化水素を含むガスの発生を連続的に測定することが可能な芳香族炭化水素を含むガスの測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る芳香族炭化水素を含むガスの測定装置は、芳香族炭化水素を含むガスを吸収したときに着色され、吸収した芳香族炭化水素の濃度の変化量と吸光度の変化量との比が略一定の関係を有する液状の試薬Mと、試薬Mを収容の収容体1と、ガスを収容体1内の試薬Mに供給するガス供給管11と、吸光度を測定する吸光光度計3と、この吸光光度計3で検出した吸光度の変化量から、吸収したガスに含まれる芳香族炭化水素の濃度を演算する制御部4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族炭化水素を含むガスの測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年問題となっているシックハウス症候群は、建材に塗布された接着剤やインキに混入するトルエン、キシレン等のいわゆるVOC(揮発性有機化合物)が原因とされている。シックハウス症候群の対策としては、まず空気中のVOCを測定する必要があるが、そのような方法としては、例えば特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2005−83854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、建材が設置された後では、塗布されたインキからのVOCの発生を食い止めることは困難である。そこで、根本的な解決方法としては、建材に印刷される前のインキから原因となるVOCを予め除去しておくことが望ましい。そのためには、例えば、印刷時のインキからVOCを検出し、異常のあるインキを予め除去することが必要となる。そこで、VOCの測定装置は既に市販化されていることから、工場の印刷機などで発生するVOCを測定することは可能である。ところで、印刷は連続的に行われているので、VOCの発生も経時的に変化する。そのため、VOCの測定も経時的に行う必要がある。しかしながら、上記のような計測装置では、単発的にVOCの測定ができるのみであり、経時的に変化するVOCの発生を測定することは不可能であった。
【0004】
上記のような問題は、VOCに限られるものではなく、それ以外の芳香族炭化水素を含むガス全般を測定する際にも生じる問題であり、簡易な構成で経時的に変化する芳香族炭化水素の濃度を測定できる装置が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で、経時的に変化する芳香族炭化水素を含むガスの発生を連続的に測定することが可能な芳香族炭化水素を含むガスの測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、芳香族炭化水素を含むガスを吸収したときに光学的特性が変化し、吸収した前記芳香族炭化水素の濃度の変化量と光学的特性を示す光学的パラメータの変化量との比が略一定の関係を有する液状の試薬と、前記試薬を収容の収容体と、前記ガスを前記収容体内の試薬に供給するガス供給管と、前記光学的パラメータを測定する測定手段と、前記測定手段で測定した光学的パラメータから、吸収した前記ガスに含まれる芳香族炭化水素の濃度を演算する制御手段とを備えている。
【0007】
この構成によれば、使用する試薬が、芳香族炭化水素を含むガスを吸収したときに光学的特性が変化し、吸収した芳香族炭化水素の濃度の変化量と光学的特性を示す光学的パラメータの変化量との比が略一定の関係を有しているため、上記比が一定である限り、連続的にガスを試薬に供給することができ、芳香族炭化水素の濃度の経時的な変化を測定することができる。すなわち、芳香族炭化水素の濃度が高くなるにつれて試薬の光学的特性を示す光学的パラメータが比例的に変化するため、測定された光学的パラメータから試薬に含まれる芳香族炭化水素の濃度を導出することができる。このとき、ガスを所定量ずつ連続的に供給しておけば、吸収されたガスに含まれる芳香族炭化水素の濃度の経時的な変化を測定することができる。また、高価な装置を用いることなく、簡易に芳香族炭化水素の濃度の経時的な変化を測定することができる。ここでいう光学的特性とは、例えば、芳香族炭化水素を吸収したときの液状試薬の着色、蛍光の発生、光の反射、屈折特性などをいい、光学的パラメータとは、その指標となる色差、蛍光、吸光度、反射率、屈折率などをいう。
【0008】
なお、本発明で対象とする芳香族炭化水素は、例えば、沸点が100〜200℃の芳香族炭化水素であるトルエン、キシレン、エチルベンゼン、p−ジクロロベンゼン等とすることができる。また、本発明で使用される試薬は、吸収した芳香族炭化水素の濃度の変化量と光学的特性を示す光学的パラメータの変化量との比が略一定の関係を有していれば、特には限定されないが、例えば、五酸化二ヨウ素を酸性溶液に溶解したものを挙げることができる。また、本発明でいう液状試薬とは、水溶液や溶媒に試薬が溶けたものを含む。
【0009】
上記装置において、制御手段が、所定時間内における光学的パラメータの変化量を演算し、当該変化量が基準値を超えたときに、報知を行うように構成することが好ましい。すなわち、ガスの供給量を一定にしたとき、所定時間内における光学的パラメータの変化量が基準値より大きければ、経時的に変化する芳香族炭化水素の濃度が、その時間内で基準値より大きくなったことになる。このとき、制御手段はそのことを報知するので、芳香族炭化水素の量が基準値を超えていることを容易に認識することができる。
【0010】
上記試薬では、吸収した前記芳香族炭化水素の濃度と前記光学的パラメータとの比が略一定の関係を有しているが、芳香族炭化水素の濃度が所定量を超えると、一定の関係を示さなくなることがある。そのような、一定の関係の領域を予め算出しておけば、上記領域を超えて試薬に吸収された芳香族炭化水素の濃度が高くなったことを光学的パラメータから知ることができる。そして、こうすることで、液交換に要する時間を除いて、芳香族炭化水素の濃度を正確に連続的に測定することができる。
【0011】
上記光学的パラメータは、その変化量が、芳香族炭化水素の濃度の変化量と比例関係にあるような指標であれば、特には限定されないが、例えば、試薬に所定波長の光を照射したときの吸光度とし、測定手段を吸光光度計とすることができる。これ以外にも、種々の方法があり、例えば、反射率、蛍光、色差、屈折率を光学的パラメータとし、それぞれを測定する測定手段として、反射光度計、蛍光計、色差計、CCDカメラ、屈折率計を用いることができる。
【0012】
また、本発明に係る芳香族炭化水素を含むガスの測定方法は、芳香族炭化水素を含むガスを吸収したときに光学的特性が変化し、吸収した前記芳香族炭化水素の濃度の変化量と光学的特性を示す光学的パラメータの変化量との比が略一定の関係を有する液状の試薬を準備するステップと、前記ガスを所定量ずつ前記試薬に供給し、当該試薬の光学的特性を変化させるステップと、光学的特性の変化した試薬の光学的パラメータを測定するステップと、測定された光学的パラメータから、供給されたガスに含まれる濃度を演算するステップとを備えている。
【0013】
この構成によれば、使用する試薬が、芳香族炭化水素を含むガスを吸収したときに光学的特性が変化し、吸収した前記芳香族炭化水素の濃度の変化量と光学的特性を示す光学的パラメータの変化量との比が略一定の関係を有しているため、上記比が一定である限り、連続的にガスを試薬に供給しても、測定された光学的パラメータからガスに含まれる芳香族炭化水素の濃度を導出することができる。その結果、芳香族炭化水素の濃度の経時的な変化を測定することができる。
【0014】
また、所定時間内における光学的パラメータの変化量が基準値を超えたときに、報知を行うステップをさらに備えていることが好ましい。こうすることで、芳香族炭化水素の濃度が基準値を超えたことを容易に認識することができる。
【0015】
また、吸収した芳香族炭化水素の濃度と光学的パラメータとの比が略一定の関係を示さなくなったときに、試薬の交換を行うステップをさらに備えていることが好ましい。こうして、試薬の交換を繰り返すことにより、芳香族炭化水素の濃度を正確に、しかも連続的に測定することができる。
【0016】
また、上記方法において、光学的パラメータは、例えば、試薬に所定波長の光を照射したときの吸光度とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、経時的に変化する芳香族炭化水素を含むガスの発生を連続的に、しかも簡易に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る芳香族炭化水素を含むガスの測定装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。本実施形態では、特に、対象となる空気中に含まれるトルエンの量を連続的に測定する場合について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る測定装置は、トルエンを検出する液状の試薬Mを収容する円筒状の透明な収容体1を備えている。この収容体1の上面には、トルエンを含むガスを供給するためのガス供給管11と、その排出のためのガス排出管12とが取り付けられている。ガス供給管11は、トルエンを試薬に供給するために、試薬Mの中まで延びている。また、収容体1の上面には、試薬Mを供給する試薬供給管13が設けられる一方、下面には試薬Mを排出する試薬排出管14が設けられている。
【0020】
収容体1の外周面の近傍には、波長約400nmの光を照射する照明器2が設置されており、試薬Mに対して光を照射するようになっている。そして、収容体Mにおける照明器2とは反対側の外周面近傍には、光が照射された試薬の吸光度を連続的に計測するために、吸光光度計3が配置されている。そして、この吸光光度計3は、コンピュータによって構成される制御部4に接続されている。
【0021】
次に、本実施形態で用いられる試薬Mについて説明する。ここで用いられる試薬Mは、トルエンが吸収されると発色し、トルエンの濃度の変化量と試薬の発色の度合いとの間に比例関係があるようなものであれば、特には限定されず、現実に種々の試薬が公知になっている。このような試薬としては、JIS K0804に準拠した検知管において用いられる例えば、五酸化二ヨウ素を酸性溶液に溶解させた試薬を用いることができ、発色の度合いとして吸光度を用いる。つまり、トルエンの濃度の変化量と試薬の吸光度の変化量とが比例関係にある。
【0022】
本実施形態では、この試薬を用いることとする。図2には、この試薬にトルエンを吸収させ、光を照射したときのトルエン濃度と吸光度との関係が示されている。ここでは、試薬Mに上記のように波長約400nmの光を照射したときの吸光度を用いており、この波長で光を照射すると高感度でトルエンの濃度を定量することができる。図2のグラフによれば、点A〜点Bまでは、トルエンの濃度と吸光度とがほぼ比例関係になっている。つまり、トルエンの濃度が高くなるにつれて吸光度も比例的に高くなっている。一方、原点0〜点A、点Bより高い点では、比例関係を有しておらず、トルエンの濃度が高くなっても吸光度はあまり上昇しなくなっている。本実施形態では、点A〜点Bの領域における比例関係を利用して、吸光度から試薬に吸収されたトルエンの濃度を測定する。以下、この点A〜点Bの領域を有効領域と称することとする。
【0023】
上述した制御部4には、上記グラフのデータがデータベースに保存されており、測定した吸光度の変化量からトルエンの濃度が経時的に算出されるようになっている。そして、所定時間内のトルエンの濃度が基準値を超えた場合には、その旨を表示したり、音声によって警告できるように構成されている。
【0024】
次に、上記装置によるトルエンの測定方法について図3及び図4を参照しつつ説明する。図3は測定方法のフローチャートであり、図4は吸光度と時間との関係の一例を示すグラフである。本実施形態では、試薬の有効領域を利用するので、はじめに、試薬Mが有効領域にあるように調整しておく必要がある。そこで、試薬Mがグラフの点Aの状態になるまでトルエンを試薬に添加しておく(S1)。
【0025】
続いて、ガス供給管11から一定量ずつ測定対象となるガスを供給する(S2)。このときの時間あたりのガスの供給量についても予め制御部4にインプットしておく。こうして、ガスが供給されて、吸光度が測定され、単位時間あたりの吸光度の変化量が計測されると(S3)、制御部4では、その吸光度の変化量に基づいてトルエンの濃度が算出される(S4)。ここでは、一例として図4に示すような吸光度が測定された場合について、説明する。まず、ガスの供給が始まったとき、試薬Mには既にトルエンが添加されているので、吸光度の初期値はL1である。その後、時刻T1までは、供給されたガスにトルエンが含まれていないため、吸光度は増加せず、一定のままである。そして、時刻T1を過ぎたところから吸光度が増加している。この時刻T1〜T2間では、傾斜角αで吸光度が増加している。このとき、制御部4では、吸光度の単位時間あたりの増加率を算出するとともに、単位時間あたりのガスの供給量、及び図2のグラフに基づいて、単位時間あたりのトルエン濃度の増加量を算出する(S4)。このとき算出されたトルエン濃度が基準値Xを超えていれば(S5のYES)、制御部4によりその旨が報知される(S6)。なお、図4では、時刻T3〜T4において吸光度の増加率が傾斜角βになったときに基準値Xを超えたことを示しており、後述する図5に示している。また、報知方法は、表示或いは音声による警告のいずれでもよい。
【0026】
図4によれば、時刻0〜T1,T2〜T3、及びT4〜T5では吸光度が変化していないので、供給されたガスにトルエンは含まれていない。一方、時刻T1〜T2,T3〜T4、及びT5〜T6ではグラフが傾斜しているので、ガスにトルエンが含まれていることが分かる。グラフが傾斜した場合には、上記と同様に制御部4においてトルエンの濃度が算出される。したがって、図4のグラフに示されるガスの場合、時間とトルエンの濃度と関係は、例えば図5のようになる。
【0027】
こうしてトルエン濃度の測定を続け、図4に示すように、時刻T6で吸光度がL2になったとき(S7のNO)、ここで用いられている試薬は図2で示す有効領域を超えることになるので、測定を停止し、試薬を交換する(S8)。これは、有効領域を超えると、吸光度とトルエン濃度とが比例関係を示さなくなるので、吸光度から正確なトルエン濃度を算出できなくなるからである。したがって、収容体1の試薬排出管14から試薬を排出するともに、試薬供給管13から新たな試薬を収容体1内へ供給する。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、使用する試薬Mが、トルエンを吸収したときに発色し、吸収したトルエンの濃度の変化量と吸光度の変化量との比が略一定の関係を有しているため、上記比が一定である限り、連続的にガスを試薬に供給することができ、トルエンの濃度の経時的な変化を測定することができる。すなわち、トルエンの濃度が高くなるにつれて吸光度が比例的に変化するため、測定された吸光度から試薬に含まれるトルエンの濃度を導出することができる。このとき、ガスを所定量ずつ連続的に供給しておけば、吸収されたガスに含まれるトルエンの濃度の経時的な変化を測定することができる。また、高価な装置を用いることなく、簡易にトルエンの濃度の経時的な変化を測定することができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記測定装置は、印刷機に適用することができ、印刷時に発生するトルエン等のVOCを経時的に測定することができる。その例を図6に示す。同図は、3つのグラビア印刷機P1〜P3を備えた工場において、上述した測定装置を設置した例を示している。各印刷機P1〜P3には、4つの印刷ユニットU1〜U4が設けられており、これら印刷ユニットU1〜U4には、排気を行う枝ラインA1〜A4が設けられている。また、各枝ラインA1〜A4は排気ラインBに連結されており、この排気ラインBを経た排気は工場排気として処理される。そして、上述した測定装置S1〜S4は、各印刷ユニットU1〜U4に取り付けられている。但し、ここで設けられている各測定装置S1〜S4には、制御部は取り付けられておらず、各測定装置S1〜S4とは別に制御部4が設けられている。つまり、各測定装置S1〜S4は、一つの制御部4に信号ラインEを介してそれぞれ接続されている。そして、各測定装置S1〜S4で測定された吸光度が制御部4に送信され、制御部4において集中的に各印刷ユニットU1〜U4で発生するトルエン濃度を算出している。
【0030】
以上の構成によれば、グラビア印刷機のような複数の印刷ユニットを有する多色印刷の印刷機において、各印刷ユニットU1〜U4で発生するトルエンを経時的に測定することができ、基準値を超えたときには、制御部4から報知されるので、そのことを容易に認識することができる。また、測定装置は各印刷ユニットU1〜U4に設けられているため、どの印刷ユニットで基準値を超えたトルエンが発生したかを容易に認識できる。その後は、インキの交換等でトルエンの発生源を除去することができる。
【0031】
また、上記実施形態では、試薬を収容する収容体として円筒状のものを用いているが、これに限定されるものではなく、立方体、直方体、三角フラスコタイプなど種々のものを用いることができる。
【0032】
ところで、上記実施形態では、トルエンの濃度を測定しているが、これに限定されるものではなく、測定対象は、芳香族炭化水素を含むガス、特に、沸点が100〜200℃のキシレン、エチルベンゼン、p−ジクロロベンゼン等に有効であり、沸点が50〜260℃で定義されるVOCに属する芳香族炭化水素にも適用は可能である。また、上記試薬は、トルエンの濃度の変化量と試薬の吸光度の変化量との比が略一定の関係を有していれば、特には限定されないが、上述した実施形態に示したもの以外に、後述するような種々のものを用いることができる。さらに、吸光度以外の光学的パラメータを用いることもでき、後述するような蛍光のほか、反射率、色差、屈折率等、種々のものを用いることができる。以下に例を挙げる。
【0033】
(1)トルエン等の芳香族炭化水素と反応して生成される色素の吸光度と、反応したトルエンの濃度とが比例関係を有する試薬を用いることができる。例えば、特開2005−83854号公報に記載のようなp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを用いた場合、トルエンまたはキシレンとの反応により生成した色素の吸光度を測定することで、トルエン等の濃度を測定することができる。より詳細には、生成した色素は波長455nm付近に吸光のピークを有しているが、p−ジメチルアミノベンズアルデヒドはこの波長において光をほとんど吸収しないので、生成物の色素を容易に測定することができ、これによってトルエン等の濃度を測定することができる。なお、p−ジメチルアミノベンズアルデヒドは、上記公報に記載の方法で製造することができる。
【0034】
(2)トルエン等の芳香族炭化水素と反応して生成される生成物の蛍光と、反応したトルエンの濃度とが比例関係を有する試薬を用いることができる。例えば、特開2005−187382号公報に記載のような9,10−ビス−(ジフェニル−ホスフィノチオニル)−アントラセンを用いた場合、トルエンまたはベンゼンとの反応により生成した生成物の蛍光を測定することで、トルエン等の濃度を測定することができる。より詳細には、トルエン等を上記試薬に接触させた後、蛍光ランプを照射し、蛍光計により蛍光を測定する。蛍光測定時の励起波長は、上記試薬では、例えば、420nmが好ましく、測定波長は470nmが好ましい。この方法により、トルエン及びベンゼンの蛍光のみが選択的に測定することできる。9,10−ビス−(ジフェニル−ホスフィノチオニル)−アントラセンは、上記公報に記載の方法で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る芳香族炭化水素を含むガスの測定装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】トルエンの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。
【図3】図1に示す装置におけるトルエンの測定方法を示すフローチャートである。
【図4】吸光度の経時変化を示すグラフである。
【図5】トルエンの濃度の経時変化を示すグラフである。
【図6】本発明の測定装置を適用した印刷機の概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 収容体
11 ガス供給管
3 吸光光度計(測定手段)
4 制御部(制御手段)
M 試薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素を含むガスを吸収したときに光学的特性が変化し、吸収した前記芳香族炭化水素の濃度の変化量と光学的特性を示す光学的パラメータの変化量との比が略一定の関係を有する液状の試薬と、
前記試薬を収容する収容体と、
前記ガスを前記収容体内の試薬に供給するガス供給管と、
光学的特性の変化した前記試薬の光学的パラメータを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した光学パラメータから、吸収した前記ガスに含まれる芳香族炭化水素の濃度を算出する制御手段と
を備えている、芳香族炭化水素を含むガスの測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、所定時間内における光学的パラメータの変化量が基準値を超えたときに、報知を行う、請求項1に記載の芳香族炭化水素を含むガスの測定装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記比が略一定の関係を示さなくなったときに、前記ガスの供給を停止させる、請求項1または2に記載の芳香族炭化水素を含むガスの測定装置。
【請求項4】
前記光学的パラメータは、前記試薬に所定波長の光を照射したときの前記試薬の吸光度であり、前記測定手段は吸光光度計である、請求項1から3のいずれかに記載の芳香族炭化水素を含むガスの測定装置。
【請求項5】
芳香族炭化水素を含むガスを吸収したときに光学的特性が変化し、吸収した前記芳香族炭化水素の濃度の変化量と光学的特性を示す光学的パラメータの変化量との比が略一定の関係を有する液状の試薬を準備するステップと、
前記ガスを所定量ずつ前記試薬に供給し、当該試薬の光学的特性を変化させるステップと、
光学的特性が変化した試薬の光学的パラメータを測定するステップと、
測定された光学的パラメータから、供給されたガスに含まれる芳香族炭化水素の濃度を算出するステップと
を備えている、芳香族炭化水素を含むガスの測定方法。
【請求項6】
所定時間内における前記光学的パラメータの変化量が基準値を超えたときに、報知を行うステップをさらに備えている、請求項5に記載の芳香族炭化水素を含むガスの測定方法。
【請求項7】
吸収した前記芳香族炭化水素の濃度と前記光学的パラメータとの比が略一定の関係を示さなくなったときに、前記試薬の交換を行うステップをさらに備えている、請求項5または6に記載の芳香族炭化水素を含むガスの測定方法。
【請求項8】
前記光学的パラメータは、前記試薬に所定波長の光を照射したときの前記試薬の吸光度である、請求項5から7のいずれかに記載の芳香族炭化水素を含むガスの測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−20423(P2008−20423A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194948(P2006−194948)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】