説明

芳香族複素環をもつ光学活性アルコールの製造方法

【課題】 本発明の課題は、医薬品の合成中間体や農薬等の各種中間体として期待される光学活性アルコール化合物の製造において、芳香族炭化水素基と複素環を有する光学純度が高い光学活性アルコールを効率的に合成する方法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、光学活性アルコールの製造方法であって、芳香族炭化水素基と複素環を有するカルボニル化合物を、炭素上に不斉を有する光学活性ジホスフィン化合物およびある特定のジアミン化合物を配位子とするルテニウム錯体を含む触媒の存在下、水素源と反応させ、光学純度が高い光学活性アルコールを効率的に合成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム錯体を触媒とする光学活性アルコールの製造方法に関する。さらに詳しくは、医薬、農薬に利用される光学活性な生理活性化合物または液晶材料等の合成中間体として有用な光学活性アルコールを製造するのに有効な高効率触媒であるルテニウム錯体を触媒とする光学活性アルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然に存在する有機化合物は、光学活性体であるものが多く存在する。その中でも生理活性を有する化合物では、望ましい活性は一方の光学異性体のみが有することが多い。さらに、望ましい活性を有しない一方の光学異性体は、生体にとって有用な生理活性を有しないばかりでなく、むしろ生体に対し毒性を有する場合があることも知られている。そのため、安全な医薬品合成法として、目的化合物、または、その中間体として高い光学純度を有する光学活性化合物を合成する方法の開発が望まれている。
【0003】
光学活性アルコールは、さまざまな光学活性物質を合成するための不斉源として有用であり、例えば、抗アレルギー作用を示す医薬品の合成中間体や農薬等の各種中間体として期待される。合成法としては、一般に、1)ラセミ体を光学分割する方法、2)キラリティーを有する基質を不斉合成し、誘導化する方法、3)パン酵母などの酵素を用いて前駆体のカルボニル化合物を不斉還元する方法、4)金属錯体を利用して前駆体のカルボニル化合物を不斉水素化・不斉還元する方法などが知られている。
このうち特に不斉合成による製造は、多量の光学活性アルコールを製造する際に不可欠の技術と考えられており、多くの方法が提案されている。
【0004】
例えば、バナジウム触媒下、シアノトリメチルシラン用いたアルデヒドの不斉シアノ化反応により、光学活性シアノヒドリントリメチルシリルエーテルを合成し、次いでコバルト触媒下、シアノ基とアセチレンの[2+2+2]環化反応の2ステップを経由し、フェニルピリジニルアルコール誘導体を得る方法(非特許文献1参照)、パン酵母を利用したベンゾイルピリジン誘導体の還元方法(非特許文献2参照)、カテコールボラン存在下、オキサボロリジン触媒によるp−クロロベンゾイル−2−ピリジンの不斉還元による方法(非特許文献3参照)、ルテニウム錯体を触媒とする蟻酸/トリエチルアミン系による2−ベンゾイルピリジンの水素移動型不斉還元反応による方法(非特許文献4参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、遷移金属触媒による[2+2+2]環化反応においては、アセチレンガスを用いるなどの難点がある。また、酵素を用いる合成方法は操作が煩雑で、反応基質の種類に制約があり、得られるアルコール類の絶対配置についても特定のものに限定される。
【0006】
また、カルボニル化合物を不斉還元・不斉水素化反応することのできる種々の遷移金属触媒については、一般的に反応基質がアセトフェノン誘導体のような、芳香族基と脂肪族基を併せ持つケトン類である場合には比較的良好な結果が報告されているが、芳香族炭化水素基と複素環を有するカルボニル化合物を不斉水素化する方法は少ない。
【0007】
非特許文献5には、フェニルピリジニルメタノール誘導体の製造法として、水酸化カリウム、光学活性ジホスフィン、光学活性ジアミン配位子からなるルテニウム錯体触媒による2−ベンゾイルピリジン誘導体を不斉水素化する方法が記載されている。しかしこの方法はエナンチオ選択性が低い場合が多く、例えば、2−ベンゾイルピリジンを基質とした反応では、生成物の光学純度は最高で70%eeであり、p−クロロベンゾイル−2−ピリジンを基質とした反応でも、生成物の光学純度は最高で60%eeに止まっている。
【0008】
このほか、非特許文献6には、光学活性SKEWPHOS配位子、ピコリルアミン配位子を有するルテニウム錯体を触媒とした、2−ベンゾイルピリジン誘導体を、水素移動反応で不斉還元する方法が報告されている。しかしこの方法も、反応効率の低さやエナンチオ選択性が低く、満足する結果が得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】SYNTHESIS, 2008, 1, p. 69-74
【非特許文献2】Chem. Pharm. Bull., 1996, 44, 4, p. 853-855
【非特許文献3】Tetrahedron Letters., 1996, 37, 32, p. 5675-5678
【非特許文献4】Tetrahedron Letters., 2000, 41, p. 9277-9280
【非特許文献5】Tetrahedron, 2008, 64, p.8700-8708
【非特許文献6】Organometallics, 2005, 24, p.1660-1669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、医薬品の合成中間体や農薬等の各種中間体として期待される光学活性アルコール化合物の製造において、芳香族炭化水素基と複素環を有する光学純度が高い光学活性アルコールを効率的に合成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため、芳香族炭化水素基と複素環を有するカルボニル化合物の不斉水素化・不斉還元反応を鋭意研究する中で、炭素上に不斉を有する光学活性ジホスフィン化合物およびある特定のジアミン化合物を配位子とするルテニウム錯体を含む触媒が、芳香族炭化水素基と複素環を有するカルボニル化合物誘導体の不斉触媒として優れた性能を有することを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
一般式(1)
【化1】

(式中、
Arは環内に窒素原子、硫黄原子、または、酸素原子を少なくとも1つ含み、これらのヘテロ原子は塩を形成していてもよい5員環、6員環または7員環芳香族複素環基であり、
Arは0〜10個の各々同じでも異なってもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン基、アミノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基を有してもよい、芳香族炭化水素基である)
で表されるケトンを、不斉触媒の存在下において、水素源と反応させて、
【0013】
一般式(2)
【化2】

(式中、
ArおよびArは前記と同じ意味を示し、
*は不斉炭素の位置を示す)
で表される光学活性アルコールを製造する方法であって、
【0014】
前記不斉触媒が、一般式(3)
RuXYAB (3)
(式中、
XおよびYは互いに同一または異なっていてもよい、水素またはアニオン性基を示し、
Aは、一般式(4)
【化3】

(式中、
およびRは、互いに同一または異なっていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基であり、
およびRは互いに同一または異なっていてもよい、水素、炭素数1〜3の炭化水素基であり、
、R、RおよびRは、互いに同一または異なっていてもよい、置換基を有してもよい炭化水素基である)で表される化合物であり、
【0015】
Bは、一般式(5)、
【化4】

(式中、
は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、
10、R11は互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10とR11は、互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基の置換基を有してもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、
12、R13、R14、およびR15は、互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R12とR13、R13とR14、またはR14とR15は互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、Nを含む飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい)
で表される化合物
【0016】
または、一般式(6)
【化5】

(式中、
16、R17、およびR18は、少なくとも一つは水素原子であり、R16、R17は互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、またはR16およびR17は互いに連結してNを含む環を形成してもよく、
18は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、
19、R20は、互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R19とR20は、互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基の置換基を有してもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、
21は、互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、隣接するR21が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、mは1〜10の整数を示し、nは1〜3の整数を示す)で表される化合物である)
で表されるルテニウム錯体を含む触媒であり、水素源が水素ガスまたは水素供与性化合物であり、ただし、前記ケトンにおいて、一般式(I)中、Arがピリジル基およびArが置換されていないフェニル基であり、かつ前記不斉触媒において、一般式(4)中のR、R、RおよびRが置換されていないフェニル基であり、かつ前記水素源および溶媒が2−プロパノールである場合を除く、前記方法に関する。
【0017】
また、本発明は、一般式(4)中のR、R、RおよびRが、1個または2個のメチル基を有するアリール基である、光学活性アルコールの製造方法に関する。
さらに、本発明は、一般式(4)中のR、R、RおよびRが、キシリル基である、光学活性アルコールの製造方法に関する。
また、本発明は、一般式(2)中のArが、2−チエニル基、2−フリル基、1−トリチル−4−イミダゾイル基、2−ピラジル基、2−ピリミジニル基または2−ピリジル基であり、Arが、置換されていてもよいアリール基である、光学活性アルコールの製造方法に関する。
さらに、本発明は、Arが、2−ピリジル基であり、Arが、p−クロロフェニル基である、光学活性アルコールの製造方法に関する。
また、本発明は、水素源が水素ガスであることを特徴とする、光学活性アルコールの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、炭素上に不斉を有する光学活性ジホスフィン化合物およびある特定のジアミン化合物を配位子とする、ルテニウム錯体を含む触媒を用いて、芳香族炭化水素基と複素環を有するカルボニル化合物と水素源を反応させることにより、高活性、高収率、高選択率で芳香族複素環をもつ光学活性アルコールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、芳香族炭化水素基と複素環を有するカルボニル化合物を不斉触媒の存在下において、水素源と反応させて、光学活性アルコールを得る製造方法であり、該不斉触媒は一般式(3)で表される。
RuXYAB (3)
一般式(3)において、置換基XおよびYは、互いに同じでも異なってもよい水素またはアニオン性基を示す。該アニオン性基は、例えば、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンなどのハロゲンアニオン、アセトキシアニオン、ベンゾイルオキシアニオン、(2,6−ジヒドロキシベンゾイル)オキシアニオン、(2,5−ジヒドロキシベンゾイル)オキシアニオン、(3−アミノベンゾイル)オキシアニオン、(2,6−メトキシベンゾイル)オキシアニオン、(2,4,6−トリイソプロピルベンゾイル)オキシアニオン、1−ナフタレンカルボン酸アニオン、2−ナフタレンカルボン酸アニオン、トリフルオロアセトキシアニオン、トリフルオロメタンスルホキシアニオン、テトラヒドロボラートアニオン、テトラフルオロボラートアニオン、ヒドリドなどが挙げられる。このうち、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンなどのハロゲンアニオン、テトラヒドロボラートアニオン、テトラフルオロボラートアニオンなどが好ましい。
【0020】
そして、一般式(3)で表される不斉触媒中の光学活性ジホスフィン化合物Aは、一般式(4)で表される。
【化6】

ここで、R、Rは、同じであっても互いに異なってもよく、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基を示し、R、Rは同じであっても互いに異なってもよく、水素、炭素数1〜3の炭化水素基であり、R、R、R、およびRは、同じであっても互いに異なってもよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示す。
【0021】
ここで、RおよびRは、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0022】
例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものはメチル基、エチル基、プロピル基および置換フェニル基であり、特に好適なものはメチル基、フェニル基である。
【0023】
また、RおよびRが、炭素数1〜3の炭化水素基である脂肪族の飽和炭化水素基である場合は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が好適である。
【0024】
ここで、R、R、RおよびRは、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、あるいは置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0025】
例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものはフェニル基および置換フェニル基であり、特に好適なものはフェニル基およびメチル基、エチル基、プロピル基、またはt−ブチル基が1〜5個置換したフェニル基である。
【0026】
一般式(4)で表される光学活性ジホスフィン化合物の例としては、以下のものが挙げられる:
[1]2位、4位にジフェニルホスフィノ基を有するぺンタン誘導体としては、3位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、SKEWPHOS:2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ぺンタン、他にも2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−メチルぺンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジメチルぺンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−エチルぺンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジエチルぺンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−n−プロピルぺンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジ−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルぺンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3−n−プロピル−3−イソプロピルペンタンなどが例示される。
【0027】
[2]2位、4位にジ−4−トリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、TolSKEWPHOS:2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)ペンタン、他にも2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジメチルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジエチルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジ−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチル−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−n−プロピル−3−イソプロピルペンタンなどが例示される。
【0028】
[3]2位、4位にジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、4−t−BuSKEWPHOS:2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]ペンタン、他にも2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−メチルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジメチルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジエチルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジ−n−プロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−メチル−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチル−3−n−プロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−3−n−プロピル−3−イソプロピルペンタンなどが例示される。
【0029】
[4]2位、4位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、XylSKEWPHOS:2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)ペンタン、他にも2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジメチルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジエチルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−n−プロピルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジ−n−プロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチル−3−n−プロピルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−n−プロピルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−n−プロピル−3−イソプロピルぺンタンなどが例示される。
【0030】
[5]2位、4位にビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、3,5−diEtSKEWPHOS:2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]ペンタン、他にも2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−メチルペンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジメチルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジエチルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−n−プロピルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジ−n−プロピルペンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−メチル−3−n−プロピルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−メチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチル−3−n−プロピルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−エチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−3−n−プロピル−3−イソプロピルぺンタンなどが例示される。
【0031】
[6]1位、3位にジフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有する、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3 −ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジ−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3 −ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル −2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−n−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどが例示される。
【0032】
[7]1位、3位にジ−4−トリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジ−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−n−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどを例示する。
【0033】
[8]1位、3位にジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジ−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス[ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−n−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどを例示する。
【0034】
[9]1位、3位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジ−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノリル)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3ジフェニル−2−メチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−n−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどが例示される。
【0035】
[10]1位、3位にビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素数1〜3の1個または2個のアルキル基置換基を有するか、又はアルキル基置換基を有しない、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジ−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3ジフェニル−2−メチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−n−プロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス[ビス(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィノ]−1,3−ジフェニル−2−n−プロピル−2−イソプロピルプロパンなどが例示される。特にSKEWPHOS、TolSKEWPHOS、3,5−diEtSKEWPHOS、4−t−BuSKEWPHOS、およびXylSKEWPHOSが好適である。しかし、もちろん本発明に用いることのできる光学活性ジホスフィン化合物は、これらに何ら限定されるものではない。
【0036】
一般式(3)で表される光学活性ルテニウム錯体中、Bで表される、アミン配位子または光学活性ジアミン化合物である一般式(5)または一般式(6)においては、
【化7】

一般式(5)中、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10、R11は互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10とR11は、互いを連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基などの置換基を有してもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、R12、R13、R14およびR15は、互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R12とR13、R13とR14、またはR14とR15は互いを連結して飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、Nを含む飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい。
【0037】
ここで、Rは、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0038】
例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものは水素原子、アルキル基、フェニル基、フェニルアルキル基であり、特に好適なものは水素原子である。
【0039】
10、R11は、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0040】
例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものは水素原子、アルキル基、フェニル基、フェニルアルキル基であり、特に好適なものは全てが水素原子である。
【0041】
また、R10とR11は、互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基などの置換基を有してもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成する場合は、脂肪族、脂環族の飽和又は不飽和の炭化水素基、単環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基であってもよい。例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチルなどの炭化水素基が挙げられる。
【0042】
12〜R15は、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0043】
例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものは、水素原子、アルキル、フェニル、フェニルアルキルであり、特に好適なものは水素原子である。
【0044】
また、R12とR13、R13とR14またはR14とR15は、互いに連結して飽和または不飽和の炭化水素基を形成する場合は、N原子を含んでもよい、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、複素環基、または置換基をもつこれら炭化水素基、複素環基の各種のものであってよい。
【0045】
例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキル、ピリジンなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。
これらのうち好適なものは、アルキル、アルケニルであり、特に好適なものはアルケニルである。
以上、一般式(5)で表されるジアミン化合物は、
[1]全ての置換基が水素であるPICA: 2−ピコリルアミン、
【0046】
[2]Rに置換基を有するMePICA:2−(N−メチルアミノメチル)ピリジン、EtPICA:2−(N−エチルアミノメチル)ピリジン、n−PrPICA:2−(N−n−プロピルアミノメチル)ピリジン、i−PrPICA:2−(N−イソプロピルアミノメチル)ピリジン、n−BtPICA:2−(N−n−ブチルアミノメチル)ピリジン、t−BtPICA:2−(N−t−ブチルアミノメチル)ピリジン、PhPICA:2−(N−フェニルアミノメチル)ピリジン、BnPICA:2−(N−ベンジルアミノメチル)ピリジン、
【0047】
[3]R10、R11に置換基を有する2−(1−アミノエチル)ピリジン、2−(1−フェニルアミノメチル)ピリジン、2−(1−メチル−1−アミノエチル)ピリジン、2−(1−フェニル−1−アミノエチル)ピリジン、2−(1,1−ジフェニルアミノメチル)ピリジン、
【0048】
[4]ピリジン環上に置換基を有する3−Me−PICA: 2−(アミノメチル)−3−メチルピリジン、4−Me−PICA: 2−(アミノメチル)−4−メチルピリジン、5−Me−PICA: 2−(アミノメチル)−5−メチルピリジン、6−Me−PICA: 2−(アミノメチル)−6−メチルピリジン、3−Et−PICA: 2−(アミノメチル)−3−エチルピリジン、4−Et−PICA: 2−(アミノメチル)−4−エチルピリジン、5−Et−PICA: 2−(アミノメチル)−5−エチルピリジン、6−Et−PICA: 2−(アミノメチル)−6−エチルピリジン、3−n−Pr−PICA: 2−(アミノメチル)−3−n−プロピルピリジン、4−n−Pr −PICA: 2−(アミノメチル)−4−n−プロピルピリジン、5−n−Pr −PICA: 2−(アミノメチル)−5−n−プロピルピリジン、6−n−Pr −PICA:2−(アミノメチル)−6−n−プロピルピリジン、3−i−Pr−PICA:2−(アミノメチル)−3−i−プロピルピリジン、4−i−Pr −PICA: 2−(アミノメチル)−4−i−プロピルピリジン、5−i−Pr −PICA:2−(アミノメチル)−5−i−プロピルピリジン、6−i−Pr −PICA: 2−(アミノメチル)−6−i−プロピルピリジン、3−Ph−PICA: 2−(アミノメチル)−3−フェニルピリジン、4−Ph−PICA:2−(アミノメチル)−4−フェニルピリジン、5−Ph−PICA:2−(アミノメチル)−5−フェニルピリジン、6−Ph−PICA:2−(アミノメチル)−6−フェニルピリジン、3−Bn−PICA:2−(アミノメチル)−3−ベンジルピリジン、4−Bn−PICA:2−(アミノメチル)−4−ベンジルピリジン、5−Bn−PICA: 2−(アミノメチル)−5−ベンジルピリジン、6−Bn−PICA:2−(アミノメチル)−6−ベンジルピリジン、
【0049】
[5]Rが水素である2−キノリン誘導体であるAMQ:2−アミノメチルキノリン、
[6]Rに置換基を有する2−キノリン誘導体であるMeAMQ:2−(N−メチルアミノメチル)キノリン、EtAMQ:2−(N−エチルアミノメチル)キノリン、n−PrAMQ:2−(N−n−プロピルアミノメチル)キノリン、i−PrAMQ:2−(N−イソプロピルアミノメチル)キノリン、n−BuAMQ:2−(N−n−ブチルアミノメチル)キノリン、t−BuAMQ:2−(N−t−ブチルアミノメチル)キノリン、PhAMQ:2−(N−フェニルアミノメチル)キノリン、BnAMQ:2−(N−ベンジルアミノメチル)キノリン、
【0050】
[7]R10、R11に置換基を有する2−キノリン誘導体である2−(1−アミノエチル)キノリン、2−(1−フェニルアミノメチル)キノリン、2−(1−メチル−1−アミノエチル)キノリン、2−(1−フェニル−1−アミノエチル)キノリン、2−(1,1−ジフェニルアミノメチル)キノリン、
【0051】
[8]環状に置換基を有する2−キノリン誘導体である3−MeAMQ:2−(アミノメチル)−3−メチルキノリン、4−MeAMQ:2−(アミノメチル)−4−メチルキノリン、5−MeAMQ:2−(アミノメチル)−5−メチルキノリン、6−MeAMQ:2−(アミノメチル)−6−メチルキノリン、7−MeAMQ:2−(アミノメチル)−7−メチルキノリン、8−MeAMQ:2−(アミノメチル)−8−メチルキノリン、3−EtAMQ:2−(アミノメチル)−3−エチルキノリン、4−EtAMQ:2−(アミノメチル)−4−エチルキノリン、5−EtAMQ:2−(アミノメチル)−5−エチルキノリン、6−EtAMQ:2−(アミノメチル)−6−エチルキノリン、7−EtAMQ:2−(アミノメチル)−7−エチルキノリン、8−EtAMQ:2−(アミノメチル)−8−エチルキノリン、3−n−PrAMQ:2−(アミノメチル)−3−n−プロピルキノリン、4−n−PrAMQ:2−(アミノメチル)−4−n−プロピルキノリン、5−n−PrAMQ:2−(アミノメチル)−5−n−プロピルキノリン、6−n−PrAMQ:2−(アミノメチル)−6−n−プロピルキノリン、7−n−PrAMQ:2−(アミノメチル)−7−n−プロピルキノリン、8−n−PrAMQ:2−(アミノメチル)−8−n−プロピルキノリン、3−i−PrAMQ:2−(アミノメチル)−3−i−プロピルキノリン、4−i−PrAMQ:2−(アミノメチル)−4−i−プロピルキノリン、5−i−PrAMQ:2−(アミノメチル)−5−i−プロピルキノリン、6−i−PrAMQ:2−(アミノメチル)−6−i−プロピルキノリン、7−i−PrAMQ:2−(アミノメチル)−7−i−プロピルキノリン、8−n−PrAMQ:2−(アミノメチル)−8−i−プロピルキノリン、3−n−BuAMQ:2−(アミノメチル)−3−n−ブチルキノリン、4−n−BuAMQ:2−(アミノメチル)−4−n−ブチルキノリン、5−n−BuAMQ:2−(アミノメチル)−5−n−ブチルキノリン、6−n−BuAMQ:2−(アミノメチル)−6−n−ブチルキノリン、7−n−BuAMQ:2−(アミノメチル)−7−n−ブチルキノリン、8−n−BuAMQ:2−(アミノメチル)−8−n−ブチルキノリン、3−t−BuAMQ:2−(アミノメチル)−3−t−ブチルキノリン、4−t−BuAMQ:2−(アミノメチル)−4−t−ブチルキノリン、5−t−BuAMQ:2−(アミノメチル)−5−t−ブチルキノリン、6−t−BuAMQ:2−(アミノメチル)−6−t−ブチルキノリン、7−t−BuAMQ:2−(アミノメチル)−7−t−ブチルキノリン、8−t−BuAMQ:2−(アミノメチル)−8−t−ブチルキノリン、3−PhAMQ:2−(アミノメチル)−3−フェニルキノリン、4−PhAMQ:2−(アミノメチル)−4−フェニルキノリン、5−PhAMQ:2−(アミノメチル)−5−フェニルキノリン、6−PhAMQ:2−(アミノメチル)−6−フェニルキノリン、7−PhAMQ:2−(アミノメチル)−7−フェニルキノリン、8−PhAMQ:2−(アミノメチル)−8−フェニルキノリン、3−BnAMQ:2−(アミノメチル)−3−ベンジルキノリン、4−BnAMQ:2−(アミノメチル)−4−ベンジルキノリン、5−BnAMQ:2−(アミノメチル)−5−ベンジルキノリン、6−BnAMQ:2−(アミノメチル)−6−ベンジルキノリン、7−BnAMQ:2−(アミノメチル)−7−ベンジルキノリン、8−BnAMQ:2−(アミノメチル)−8−ベンジルキノリン、
【0052】
[9]Rが水素である1−イソキノリン誘導体であるAM−1−IQ:1−アミノメチルイソキノリン、
【0053】
[10]Rに置換基を有する1−イソキノリン誘導体であるMeAM−1−IQ:1−(N−メチルアミノメチル)イソキノリン、EtAM−1−IQ:1−(N−エチルアミノメチル)キノリン、n−PrAM−1−IQ:1−(N−n−プロピルアミノメチル)イソキノリン、i−PrAM−1−IQ:1−(N−イソプロピルアミノメチル)イソキノリン、n−BuAM−1−IQ:1−(N−n−ブチルアミノメチル)イソキノリン、t−BuAM−1−IQ:1−(N−t−ブチルアミノメチル)イソキノリン、PhAM−1−IQ:1−(N−フェニルアミノメチル)イソキノリン、BnAM−1−IQ:1−(N−ベンジルアミノメチル)イソキノリン、
【0054】
[11]R10、R11に置換基を有する1−イソキノリン誘導体である1−(1−アミノエチル)イソキノリン、1−(1−フェニルアミノメチル) イソキノリン、1−(1−メチル−1−アミノエチル)イソキノリン、1−(1−フェニル−1−アミノエチル) イソキノリン、1−(1,1−ジフェニルアミノメチル) イソキノリン
【0055】
[12]環上に置換基を有する1−イソキノリン誘導体である3−MeAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−メチルイソキノリン、4−MeAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−メチルイソキノリン、5−MeAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−メチルイソキノリン、6−MeAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−6−メチルイソキノリン、7−MeAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−メチルイソキノリン、8−MeAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−メチルイソキノリン、3−EtAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−エチルイソキノリン、4−EtA−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−エチルイソキノリン、5−EtAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−エチルイソキノリン、6−EtAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−6−エチルイソキノリン、7−EtAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−エチルイソキノリン、8−EtAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−エチルイソキノリン、3−n−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−n−プロピルイソキノリン、4−n−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−n−プロピルイソキノリン、5−n−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−n−プロピルイソキノリン、6−n−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−6−n−プロピルイソキノリン、7−n−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−n−プロピルイソキノリン、8−n−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−n−プロピルイソキノリン、3−i−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−i−プロピルイソキノリン、4−i−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−i−プロピルイソキノリン、5−i−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−i−プロピルイソキノリン、6−i−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−6−i−プロピルイソキノリン、7−i−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−i−プロピルイソキノリン、8−n−PrAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−i−プロピルイソキノリン、3−n−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−n−ブチルイソキノリン、4−n−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−n−ブチルイソキノリン、5−n−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−n−ブチルイソキノリン、6−n−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−6−n−ブチルイソキノリン、7−n−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−n−ブチルイソキノリン、8−n−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−n−ブチルイソキノリン、3−t−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−t−ブチルイソキノリン、4−t−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−t−ブチルイソキノリン、5−t−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−t−ブチルイソキノリン、6−t−BuA−1−MQ:1−(アミノメチル)−6−t−ブチルイソキノリン、7−t−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−t−ブチルイソキノリン、8−t−BuAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−t−ブチルイソキノリン、3−PhAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−フェニルイソキノリン、4−PhAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−フェニルイソキノリン、5−PhAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−フェニルイソキノリン、6−PhAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−6−フェニルイソキノリン、7−PhAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−フェニルイソキノリン、8−PhAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−フェニルイソキノリン、3−BnAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−3−ベンジルイソキノリン、4−BnAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−4−ベンジルイソキノリン、5−BnAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−5−ベンジルイソキノリン、6−BnAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−6−ベンジルイソキノリン、7−BnAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−7−ベンジルイソキノリン、8−BnAM−1−IQ:1−(アミノメチル)−8−ベンジルイソキノリン、
【0056】
[13]Rが水素である3−イソキノリン誘導体であるAM−3−IQ:3−アミノメチルイソキノリン、
【0057】
[14]Rに置換基を有する3−イソキノリン誘導体であるMeAM−3−IQ:3−(N−メチルアミノメチル)イソキノリン、EtAM−3−IQ:3−(N−エチルアミノメチル)キノリン、n−PrAM−3−IQ:3−(N−n−プロピルアミノメチル)イソキノリン、i−PrAM−3−IQ:3−(N−イソプロピルアミノメチル)イソキノリン、n−BuAM−3−IQ:3−(N−n−ブチルアミノメチル)イソキノリン、t−BuAM−3−IQ:3−(N−t−ブチルアミノメチル)イソキノリン、PhAM−3−IQ:3−(N−フェニルアミノメチル)イソキノリン、BnAM−3−IQ:3−(N−ベンジルアミノメチル)イソキノリン、
【0058】
[15]R10、R11に置換基を有する3−イソキノリン誘導体である3−(1−アミノエチル)イソキノリン、3−(1−フェニルアミノメチル)イソキノリン、3−(1−メチル−1−アミノエチル)イソキノリン、3−(1−フェニル−1−アミノエチル)イソキノリン、3−(1,1−ジフェニルアミノメチル)イソキノリン、
【0059】
[16]環上に置換基を有する3−イソキノリン誘導体である1−MeAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−メチルイソキノリン、4−MeAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−メチルイソキノリン、5−MeAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−メチルイソキノリン、6−MeAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−メチルイソキノリン、7−MeAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−7−メチルイソキノリン、8−MeAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−メチルイソキノリン、1−EtAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−エチルイソキノリン、4−EtA−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−エチルイソキノリン、5−EtAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−エチルイソキノリン、6−EtAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−エチルイソキノリン、7−EtAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−7−エチルイソキノリン、8−EtAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−エチルイソキノリン、1−n−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−n−プロピルイソキノリン、4−n−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−n−プロピルイソキノリン、5−n−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−n−プロピルイソキノリン、6−n−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−n−プロピルイソキノリン、7−n−PrA−3−MQ:3−(アミノメチル)−7−n−プロピルイソキノリン、8−n−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−n−プロピルイソキノリン、1−i−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−i−プロピルイソキノリン、4−i−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−i−プロピルイソキノリン、5−i−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−i−プロピルイソキノリン、6−i−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−i−プロピルイソキノリン、7−i−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−7−i−プロピルイソキノリン、8−n−PrAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−i−プロピルイソキノリン、1−n−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−n−ブチルイソキノリン、4−n−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−n−ブチルイソキノリン、5−n−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−n−ブチルイソキノリン、6−n−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−n−ブチルイソキノリン、7−n−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−7−n−ブチルイソキノリン、8−n−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−n−ブチルイソキノリン、1−t−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−t−ブチルイソキノリン、4−t−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−t−ブチルイソキノリン、5−t−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−t−ブチルイソキノリン、6−t−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−t−ブチルイソキノリン、7−t−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−7−t−ブチルイソキノリン、8−t−BuAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−t−ブチルイソキノリン、1−PhAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−フェニルイソキノリン、4−PhAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−フェニルイソキノリン、5−PhAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−フェニルイソキノリン、6−PhAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−フェニルイソキノリン、7−PhAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−7−フェニルイソキノリン、8−PhAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−フェニルイソキノリン、1−BnAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−1−ベンジルイソキノリン、4−BnAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−4−ベンジルイソキノリン、5−BnAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−5−ベンジルイソキノリン、6−BnAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−6−ベンジルイソキノリン、7−BnAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−7−ベンジルイソキノリン、8−BnAM−3−IQ:3−(アミノメチル)−8−ベンジルイソキノリンなどが例示される。特に、2−(アミノメチル)−6−メチルピリジン、2−ピコリルアミンが好適である。
【0060】
一般式(6)中、R16、R17、およびR18は、少なくとも一つは水素原子であり、R16、R17は互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R16およびR17は互いに連結してNを含む環を形成してもよく、R18は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R19、R20は、互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R19とR20は、互いを連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基などの置換基を有してもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、R21は、互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、隣接したR21が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、mは1〜10の整数を示し、nは1〜3の整数を示す。
【0061】
16およびR17は、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0062】
例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものは水素原子、アルキル基、フェニル基、フェニルアルキル基、環状のアルキレン基、または、アルケニレン基であり、特に好適なものは全てが水素原子である。
【0063】
また、R16とR17は、互いに連結してNを含む環を形成する場合、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0064】
例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。
これらのうち好適なものは、アルキル、アルケニルであり、特に好適なものはアルキルである。
【0065】
18は、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0066】
例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。これらのうち好適なものは水素原子、アルキル基、フェニル基、フェニルアルキル基であり、特に好適なものは水素原子である。
【0067】
19、R20は、水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0068】
例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。
【0069】
また、R19およびR20は、互いに連結してアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等の置換基を有していてもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成するものである。これらの置換基うち好適なものは水素原子、アルキル基、フェニル基、フェニルアルキル基であり、特に好適なものは水素原子である。
【0070】
21は、2−アミノメチルピロリジン、2−アミノメチルピペリジン、および2−アミノメチルホモピペリジンの環上に水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものが1〜10個置換してあってよい。
【0071】
例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。
【0072】
また、隣接したR21は、互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成する場合、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものであってよい。
【0073】
例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有するものが挙げられる。
【0074】
以上、一般式(6)で表されるジアミン化合物は、
[1]全ての置換基が水素であるAMPY:2−アミノメチルピロリジン、AMPI:2−アミノメチルピペリジン、AMHPI:2−アミノメチルホモピペリジン、
【0075】
[2]R16が水素でR17に置換基を有する2−(N−メチルアミノメチル)ピロリジン、2−(N−エチルアミノメチル)ピロリジン、2−(N−n−プロピルアミノメチル)ピロリジン、2−(N−イソプロピルアミノメチル)ピロリジン、2−(N−メチルアミノメチル)ピペリジン、2−(N−エチルアミノメチル)ピペリジン、2−(N−n−プロピルアミノメチル)ピペリジン、2−(N−イソプロピルアミノメチル)ピペリジン、
2−(N−メチルアミノメチル)ホモピペリジン、2−(N−エチルアミノメチル)ホモピペリジン、2−(N−n−プロピルアミノメチル)ホモピペリジン、2−(N−イソプロピルアミノメチル)ホモピペリジン、
【0076】
[3]R16とR17がお互いに連結して炭化水素基を形成する1−(2−ピロリジニルメチル)ピロリジン、1−(2−ピペリジニルメチル)ピロリジン、1−(2−ホモピペリジニルメチル)ピロリジン、
【0077】
[4]R16とR17が水素で R19、R20に置換基を有する2−(1−アミノエチル)ピロリジン、2−(1−フェニルアミノメチル)ピロリジン、2−(1−メチル−1−アミノエチル)ピロリジン、2−(1−フェニル−1−アミノエチル)ピロリジン、2−(1,1−ジフェニルアミノメチル)ピロリジン、2−(1−アミノエチル)ピペリジン、2−(1−フェニルアミノメチル)ピペリジン、2−(1−メチル−1−アミノエチル)ピペリジン、2−(1−フェニル−1−アミノエチル)ピペリジン、2−(1,1−ジフェニルアミノメチル)ピペリジン、2−(1−アミノエチル)ホモピペリジン、2−(1−フェニルアミノメチル)ホモピペリジン、2−(1−メチル−1−アミノエチル)ホモピペリジン、2−(1−フェニル−1−アミノエチル)ホモピペジン、2−(1,1−ジフェニルアミノメチル)ホモピペリジン、
【0078】
[5]R18に置換基を有する2−(アミノメチル)−1−メチルピロリジン、2−(アミノメチル)−1−エチルピロリジン、2−(アミノメチル)−1−n−プロピルピロリジン、2−(アミノメチル)−1−イソプロピルピロリジン、2−(アミノメチル)−1−メチルピペリジン、2−(アミノメチル)−1−エチルピペリジン、2−(アミノメチル)−1−n−プロピルピペリジン、2−(アミノメチル)−1−イソプロピルピペリジン、2−(アミノメチル)−1−メチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−1−エチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−1−n−プロピルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−1−イソプロピルホモピペリジン、
【0079】
[6]R21に置換基を有する2−(アミノメチル)−3−メチルピロリジン、2−(アミノメチル)−4−メチルピロリジン、2−(アミノメチル)−5−メチルピロリジン、2−(アミノメチル)−3−エチルピロリジン、2−(アミノメチル)−4−エチルピロリジン、2−(アミノメチル)−5−エチルピロリジン、
2−(アミノメチル)−3−n−プロピルピロリジン、2−(アミノメチル)−4−n−プロピルピロリジン、2−(アミノメチル)−5−n−プロピルピロリジン、2−(アミノメチル)−3−フェニルピロリジン、2−(アミノメチル)−4−フェニルピロリジン、2−(アミノメチル)−5−フェニルピロリジン、2−(アミノメチル)−3−メチルピペリジン、2−(アミノメチル)−4−メチルピペリジン、2−(アミノメチル)−5−メチルピペリジン、2−(アミノメチル)−6−メチルピペリジン、2−(アミノメチル)−3−エチルピペリジン、2−(アミノメチル)−4−エチルピペリジン、2−(アミノメチル)−5−エチルピペリジン、2−(アミノメチル)−6−エチルピペリジン、2−(アミノメチル)−3−n−プロピルピペリジン、2−(アミノメチル)−4−n−プロピルピペリジン、2−(アミノメチル)−5−n−プロピルピペリジン、2−(アミノメチル)−6−n−プロピルピペリジン、2−(アミノメチル)−3−フェニルピペリジン、2−(アミノメチル)−4−フェニルピペリジン、2−(アミノメチル)−5−フェニルピペリジン、2−(アミノメチル)−6−フェニルピペリジン、2−(アミノメチル)−3−メチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−4−メチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−5−メチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−6−メチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−7−メチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−3−エチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−4−エチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−5−エチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−6−エチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−7−エチルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−3−n−プロピルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−4−n−プロピルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−5−n−プロピルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−6−n−プロピルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−7−n−プロピルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−3−フェニルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−4−フェニルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−5−フェニルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−6−フェニルホモピペリジン、2−(アミノメチル)−7−フェニルホモピペリジン、
【0080】
[7]R21の隣接した置換基が連結した2−アミノメチルインドリン、1−アミノメチルイソインドリン、3−アミノメチルイソインドリン、また、置換基R16、R17、R18、R19およびR20に水素原子、脂肪族、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族もしくは芳香脂肪族の炭化水素基、または置換基をもつこれら炭化水素基の各種のものが置換した2−アミノメチルインドリン誘導体、1−アミノメチルイソインドリン誘導体、3−アミノメチルイソインドリン誘導体であってよい。例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキルなどの炭化水素基とこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などの許容される各種の置換基を有する2−アミノメチルインドリン誘導体、1−アミノメチルイソインドリン誘導体、3−アミノメチルイソインドリン誘導体が挙げられる。特に、2−アミノメチルピロリジンが好適である。
【0081】
さらに用いることのできる光学活性ジアミン化合物は、例示した2−ピコリルアミン誘導体、2−アミノメチルキノリン誘導体、1−アミノメチルイソキノリン誘導体、3−アミノメチルイソキノリン誘導体、2−アミノメチルピロリジン誘導体、2−アミノメチルピペリジン誘導体、2−アミノメチルホモピペリジン誘導体、2−アミノメチルインドリン誘導体、1−アミノメチルイソインドリン誘導体、および3−アミノメチルイソインドリン誘導体に限るものではない。
【0082】
また、本発明のルテニウム錯体を表す一般式(7)
RuXYA (7)
は下記一般式(4)で表される光学活性ジホスフィン化合物A
【化8】

を持つが、置換基X、Y、および光学活性ジホスフィン化合物は、一般式(3)と同様のもののうちから適宜に選択されたものであってよい。
【0083】
また、不斉触媒は、反応試剤である有機化合物を1ないし複数個含む場合がある。ここで、有機化合物は配位性の有機溶媒を示し、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキシルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSO、トリエチルアミンなどヘテロ原子を含む有機溶剤などが例示される。
【0084】
一般式(3)で表される不斉触媒の合成は、一般式RuXYAで表される光学活性ルテニウム錯体と、ジアミン化合物または光学活性ジアミン化合物とを反応させることにより行うことができる。一般式RuXYAで表される光学活性ルテニウム錯体の合成は、一般式(4)で表される光学活性ジホスフィン化合物と、出発物質となるルテニウム錯体を反応させることにより行うことができる。
【0085】
不斉触媒合成のための出発物質であるルテニウム錯体には、0価、1価、2価、3価およびさらに高原子価のルテニウム錯体を用いることができる。0価、および1価のルテニウム錯体を用いた場合には、最終段階までにルテニウムの酸化が必要である。2価の錯体を用いた場合には、ルテニウム錯体と光学活性ジホスフィン化合物、およびアミン化合物を順次もしくは逆の順で、または、同時に反応することで合成できる。3価、および4価以上のルテニウム錯体を出発原料に用いた場合には、最終段階までに、ルテニウムの還元が必要である。
【0086】
出発原料となるルテニウム錯体としては、塩化ルテニウム(III)水和物、臭化ルテニウム(III)水和物、沃化ルテニウム(III)水和物等の無機ルテニウム化合物、[2塩化ルテニウム(ノルボルナジエン)]多核体、[2塩化ルテニウム(シクロオクタ−1,5−ジエン)]多核体、ビス(メチルアリル)ルテニウム(シクロオクタ−1,5ジエン)等のジエンが配位したルテニウム化合物、[2塩化ルテニウム(ベンゼン)]多核体、[2塩化ルテニウム(p−シメン)]多核体、[2塩化ルテニウム(トリメチルベンゼン)]多核体、[2塩化ルテニウム(ヘキサメチルベンゼン)]多核体、等の芳香族化合物が配位したルテニウム錯体、また、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等のホスフィン化合物が配位した錯体等が用いられる。その他、光学活性ジホスフィン化合物、ジアミン化合物または光学活性ジアミン化合物と置換可能な配位子を有するルテニウム錯体であれば、特に、前記に限定されるものではない。例えば、COMPREHENSIVE ORGANOMETALLIC CHEMISTRY II 7巻 p294-296(PERGAMON)に示された、種々のルテニウム錯体を出発原料として用いることができる。
【0087】
3価のルテニウム錯体を出発原料として用いる場合には、例えば、ハロゲン化ルテニウム(III)を過剰のホスフィン化合物と反応することにより、ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を合成することができる。次いで得られたホスフィン−ルテニウムハライド錯体を、アミン化合物と反応することにより、目的とするアミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。
すなわち、RuCl(PPhをベンゼン中、エチレンジアミンと反応させて、 RuCl(PPh(en)が得られている。ただ、この方法では、反応が不均一系であり、未反応の原料が残存する傾向が見られる。一方、反応溶媒を塩化メチレン、クロロホルム等の溶媒に変更する場合には、反応を均一状態で行うことができ、操作性が向上する。
【0088】
出発原料のルテニウム錯体とホスフィン化合物との反応は、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶剤中行われ、ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。反応温度に特に制限はないが、好適には−10℃〜100℃の間で行なうことができる。
【0089】
得られた一般式RuXYAで表される錯体とアミン化合物との反応は、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶剤中行うことができる。反応温度に特に制限はないが、好適には−10℃〜100℃の間で行なうことができ、アミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。
【0090】
一方、最初から二価のルテニウム錯体を用い、これと、ホスフィン化合物、アミン化合物を順次、もしくは逆の順で、または同時に、反応する方法も用いられる。一例として、[2塩化ルテニウム(ノルボルナジエン)]多核体、[2塩化ルテニウム(シクロオクタ−1,5−ジエン)]多核体、ビス(メチルアリル)ルテニウム(シクロオクタジエン)等のジエンが配位したルテニウム化合物、または、[2塩化ルテニウム(ベンゼン)]二核体、[2塩化ルテニウム(p−シメン)]二核体、[2塩化ルテニウム(トリメチルベンゼン)]二核体、[2塩化ルテニウム(ヘキサメチルベンゼン)]二核体等の芳香族化合物が配位したルテニウム錯体、また、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等のホスフィン化合物が配位した錯体を、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶剤中、ホスフィン化合物と反応し、ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。反応温度に特に制限はないが、好適には−10℃〜100℃の間で行なうことができる。
【0091】
得られた一般式RuXYAで表される錯体とアミン化合物の反応は、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパンノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶媒中アミン化合物と反応し、アミン−ホスフィン−ルテニウム錯体を得ることができる。また、同様の条件で、[クロロルテニウム(BINAP)(ベンゼン)]クロライドなどのカチオン性ルテニウム錯体をアミン化合物と反応させて、アミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。
【0092】
また、得られたアミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を、水素化ホウ素金属塩にて水素化することにより、ルテニウムヒドリド錯体を得ることができる。例えば、アミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMA、DMF、N−メチルピロリドン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶媒中、水素化ホウ素ナトリウムや水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩と反応することで、ルテニウムヒドリド錯体を得ることができる。
【0093】
また、最初に、ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を、ホスフィン−ルテニウムヒドリド錯体に変換した後、アミン化合物と反応させて、ルテニウムヒドリド錯体を得ることもできる。これらの反応における温度は、特に制限はないが、好適には−10℃〜100℃の間で行なうことができる。
【0094】
例えば、以上のように合成できる不斉触媒を用いる場合、その使用量は基質構造、触媒構造、溶媒、および反応容器や経済性によって異なるが、反応基質に対して1/100〜1/10000000用いることができ、好ましくは1/500〜1/1000000の範囲とする。
【0095】
本発明で用いられる不斉触媒は、塩基を含んでいてもよい。
一般式(3)で表される不斉触媒の、XまたはYがヒドリドまたはテトラヒドロボラートアニオンの場合は、塩基は必ずしも必要でなく、基質と混合後、水素圧をかけ、攪拌する。これにより、一般式(1)で表される基質を水素源と反応させることができる。一般式(3)で表される不斉触媒の、XまたはYがハロゲンアニオンの場合には、塩基を添加することが好ましく、これを添加した後、基質と混合し、水素圧をかけ、攪拌する。これにより、一般式(1)で表される基質が水素源と反応し、一般式(2)で表される光学活性アルコール化合物を得ることができる。
【0096】
用いられる塩基の種類は、KOH、KCO、KOCH、KOCH(CH、KOC(CH、KC10、NaOH、NaCO、NaOCH、NaOCH(CH、NaOC (CH、NaC10、LiOH、LiOCH、LiOCH(CH、LiOC(CH等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩または4級アンモニウム塩等が用いられるがこの限りでない。添加する塩基の量に制限はないが、好ましくは塩基濃度が0.001〜0.1Mになる量であり、さらに好ましくは、0.01〜0.02Mになる量である。
【0097】
本発明の方法で用いる不斉触媒は、その構造にジホスフィンを有しているが、触媒反応の効率、および、生成物のエナンチオ選択性の観点からリン原子に結合したアリール基が、置換基アリール基であることが、好ましい。
【0098】
さらに本発明の方法は、水素源としてはとくに限定されない。例えば水素供与性化合物や水素ガスなどを用いることができる。水素供与性化合物とは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4程度の低級アルコールまたはギ酸を示し、とくにエタノール、およびエタノールと他の低級アルコールの混合系を用いるのが好ましい。
ただし、水素源として上記水素供与性化合物を使用する条件では、十分な光学純度が得られない場合があり、これは、本発明の触媒がアルコール活性化能を有することによって、生成物である光学活性アルコールを水素源とする反応が進行し、生成物のアルコールのラセミ化が進行するためと推察される。一方加圧水素条件では、水素がほぼ水素源になると考えられる。したがって、触媒反応における効率やエナンチオ選択性の観点から、水素源として水素ガスを用いるのが好ましい。
【0099】
溶媒としては、基質および触媒を可溶化するものであれば適宜なものを用いることができる。例としてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSOなどへテロ原子を含む有機溶媒を用いることができる。反応生成物がアルコール化合物であることから、アルコール系溶媒がより好適でもある。反応基質が溶媒に可溶化しにくい場合は前記溶媒から複数の種類を選択して混合溶媒として用いることができる。
【0100】
光学活性アルコール製造に使用する溶媒の量は反応基質の溶解度および経済性により判断される。例えば、2−プロパノールを用いる場合、基質濃度は、基質によっては0.1mol/L以下の低濃度から2.0mol/L程度で反応を行うことができるが、好ましくは0.5〜1.5mol/Lで用いることが望ましい。なお、水素源として水素ガスをもちいる場合は、可逆反応が起こらないため、可逆反応が起こる水素供与性化合物を用いる場合よりも基質濃度は一般的に高くすることができる。また、この場合、溶媒は、水素源としては、ほとんど用いられることがないものと推測される。
【0101】
そして、本発明の光学活性アルコール製造における水素の圧力は、経済性を考慮すると1〜100気圧とすることができ、好ましくは2〜20気圧である。
光学活性アルコール誘導体製造における反応温度は30〜100℃で行うことが好ましく、35〜40℃が特に好ましい。反応時間は反応基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なるが10〜24時間が好ましく、16〜19時間が特に好ましい。
【0102】
本発明におけるカルボニル化合物の水素化反応は、反応形式が、バッチ式においても連続式においても実施することができる。以下、実施例を示しさらに詳しく本発明について説明する。もちろん、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0103】
1.試験例1(実施例1〜8、比較例1)
反応に使用した溶媒は、乾燥、脱気したものを用いた。
各実施例における各スペクトルの測定には次の機器を用いた。また、各実施例における生成物の反応転化率、光学純度については下記条件の光速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した。なお、ベンゾイルケトン(基質)とルテニウム錯体(C)とのモル比(S/C)、塩基とルテニウム錯体とのモル比(塩基/C)、基質濃度(M)および溶媒は、表1に示したとおりとした。
H−NMR:LA400型装置(400MHz)(日本電子社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン
溶媒:重クロロホルム(CDCl
反応転化率:
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU LC−10ADvp
カラム:Mightysil RP−18 GP 150 – 4.6 (5μm) (関東化学社製)
移動相:アセトニトリル/蒸留水(濃度勾配容量比30/70(0min.)→30/70(5min.)→50/50(25min.)→50/50(40min.))
波長:216nm
温度:40℃付近の一定温度
流量:1.0mL/min.
光学純度:
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU LC−10ADvp
カラム:CHIRALPAK AD−H(0.46f×25cm)(DAICEL社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール(容量比95/5)
波長:216nm
温度:35℃付近の一定温度
流量:1.0mL/min.
【0104】
〔実施例1〕
RuBr[(S,S)−skewphos](pica)およびKOC(CHからなる不斉触媒を用いた、2−ベンゾイルピリジンの不斉水素化反応(S/C=2000の反応)
RuBr[(S,S)−skewphos](pica)(1.1mg、0.0012mmol)、2−ベンゾイルピリジン(0.44g、2.4mmol)を100mlのガラス製オートクレーブに仕込み、アルゴン置換後、エタノール(1.75ml)を添加し、別途調整した0.1M KOC(CH/エタノール溶液(480mL、0.048mmol)を添加し、脱気アルゴン置換した。30℃、水素を9気圧まで仕込み反応を開始した。反応液を16時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻し、反応液の1H−NMRにより生成物であるフェニル−2−ピリジニルメタノールの定量と高速液体クロマトグラフィーによる光学純度を求めたところ、反応転化率21.5%、88.9%eeで光学活性フェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0105】
〔実施例2〕
RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)およびKOC(CHからなる不斉触媒を用いた、2−ベンゾイルピリジンの不斉水素化反応(S/C=2000の反応)
RuBr[(S,S)−xylskewphos](PICA)(0.9mg、0.001mmol)、2−ベンゾイルピリジン(0.37g、2mmol)を100mlのガラス製オートクレーブに仕込み、アルゴン置換後、2−プロパノール(1.6ml)を添加し、別途調整した0.1M KOC(CH/エタノール溶液(420mL、0.043mmol)を添加し、30℃、水素を9気圧まで仕込み反応を開始した。反応液を16時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻し、反応液のガスクロマトグラフィーにより生成物であるフェニル−2−ピリジニルメタノールの反応転化率と光学純度を求めたところ、反応転化率98.0%、95.8%eeで光学活性フェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0106】
〔実施例3〕
RuBr[(S,S)−skewphos](pica)およびKOC(CHからなる不斉触媒を用いた、p−クロロベンゾイル−2−ピリジンの不斉水素化反応(S/C=2000の反応)
RuBr[(S,S)−skewphos](pica)(1.1mg、0.0012mmol)、p−クロロベンゾイル−2−ピリジン(0.44g、2.4mmol)を100mlのガラス製オートクレーブに仕込み、アルゴン置換後、2−プロパノール(4.8ml)を添加し、別途調整した1.0M KOC(CH/2−プロパノール溶液(96mL、0.096mmol)を添加し、脱気アルゴン置換した。40℃、水素を10気圧まで仕込み反応を開始した。反応液を19時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻し、反応液の一部を減圧濃縮し、反応液の1H−NMRにより生成物であるp−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールの定量と高速液体クロマトグラフィーによる光学純度を求めたところ、反応転化率51.4%、88.7%eeで光学活性p−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0107】
〔実施例4〕
RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)及び水酸化ナトリウムからなる不斉水素化触媒を用い、水素供与体として2−プロパノールを用いた、p−クロロベンゾイル−2−ピリジンの不斉還元反応(S/C=2000の反応)
RuBr[(S,S)−skewphos](pica)(1.1mg,0.0012mmol)、p−クロロベンゾイル−2−ピリジン(0.52g、2.4mmol)を50mlのシュレンク管に仕込み、アルゴン置換後、2−プロパノール(22.5ml)を添加し、別途調整した0.1M 水酸化ナトリウム/2−プロパノール溶液(480mL、0.048mmol)を添加し、還流で反応を開始した。1時間攪拌後、反応液の一部を減圧濃縮し、反応液の1H−NMRにより生成物であるp−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールの定量と高速液体クロマトグラフィーによる光学純度を求めたところ、反応転化率77.5%、光学活性85.3%eeで光学活性p−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0108】
〔実施例5〕
RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)およびKOC(CHからなる不斉触媒を用いた、p−クロロベンゾイル−2−ピリジンの不斉水素化反応(S/C=2000の反応)
RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)(0.9mg、0.001mmol)、p−クロロベンゾイル−2−ピリジン(0.44g、2mmol)を100mlのガラス製オートクレーブに仕込み、アルゴン置換後、2−プロパノール(4ml)を添加し、別途調整した1.0M KOC(CH/メタノール溶液(80mL、0.080mmol)を添加し、40℃、水素を10気圧まで仕込み反応を開始した。反応液を19時間攪拌後、反応圧力を常圧に戻し、反応液の高速液相クロマトグラフィーにより生成物であるp−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールの反応転化率と光学純度を求めたところ、反応転化率85.1%、92.8%eeで光学活性p−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0109】
〔実施例6〕
RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)およびKOC(CHからなる不斉触媒を用いた、p−クロロベンゾイル−2−ピリジンの不斉水素化反応(S/C=1000の反応)
基質/触媒比=1000にした以外は実施例5と同様にp−クロロベンゾイル−2−ピリジンの水素化を19時間行った。反応転化率99.5%、92.6%eeで光学活性p−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0110】
〔実施例7〕
RuBr[(S,S)−tolskewphos](pica)およびKOC(CHからなる不斉触媒を用いた、p−クロロベンゾイル−2−ピリジンの不斉水素化反応(S/C=1000の反応)
実施例6に用いたRuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)の代わりにRuBr[(S,S)−tolskewphos](pica)を触媒として用いる以外は実施例6と同様にp−クロロベンゾイル−2−ピリジンの水素化を19時間行った。反応転化率61.1%、91.6%eeで光学活性p−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0111】
〔実施例8〕
RuBr[(S,S)−xylskewphos](3−amiq)およびKOC(CHからなる不斉水素化触媒を用いた、p−クロロベンゾイル−2−ピリジンの不斉水素化反応(S/C=1000の反応)
実施例6に用いたRuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)の代わりにRuBr[(S,S)−xylskewphos](3−amiq)を触媒として用いる以外は実施例6と同様にp−クロロベンゾイル−2−ピリジンの水素化を19時間行った。反応転化率99.9%、光学活性95.5%eeでp−クロロフェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0112】
〔比較例1〕
RuBr[(S,S)−skewphos](pica)および水酸化ナトリウムからなる不斉触媒を用い、水素供与体として2−プロパノールを用いた、2−ベンゾイルピリジンの不斉還元反応(S/C=2000の反応)
RuBr[(S,S)−skewphos](pica)(1.09mg、0.0012mmol)、2−ベンゾイルピリジン(0.52g、2.4mmol)を50mlのシュレンク管に仕込み、アルゴン置換後、2−プロパノール(22.5ml)を添加し、還流下で別途調整した0.1M水酸化ナトリウム/2−プロパノール溶液(480mL、0.048mmol)を添加し、反応を開始した。1時間攪拌後、反応液の一部を減圧濃縮し、反応液の1H−NMRにより生成物であるフェニル−2−ピリジニルメタノールの定量と高速液体クロマトグラフィーによる光学純度を求めたところ、反応転化率59.0%、83.9%eeで光学活性フェニル−2−ピリジニルメタノールが生成していた。
【0113】
以上のとおり、実施例1〜8において極めて高い光学純度を有する光学活性アルコールを必要な収量で得ることができた。なお、いずれの場合も水素源として水素ガスを用いる方がより光学純度が高い光学活性アルコールを得ることができた。また、実施例1および実施例2と同じ基質を用いた比較例1では、光学純度が低いことが認められた。
【0114】
【表1】

【0115】
2.試験例2(実施例9〜16、比較例2〜11)
各実施例における生成物の反応転化率はH NMRにより、光学純度については下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した。
反応転化率;
1H NMR:LA400型装置(400 MHz)(日本電子社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン
溶媒:重クロロホルム(CDCl
光学純度;
フェニル−2−チエニルメタノール
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU LC−10ADvp
カラム:CHIRALCEL OD−H(0.46f×25cm)(DAICEL社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール(容量比98/2)
波長:254nm
温度:25℃付近の一定温度
流量:1.0mL/min
フェニル−2−フリルメタノール
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU LC−10ADvp
カラム:CHIRALPAK AD−H(0.46f×25cm)(DAICEL社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール(容量比 97/3)
波長:216nm
温度:25℃付近の一定温度
流量:1.0mL/min
フェニル−4−トリチル−1−イミダゾイルメタノール
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU LC−10ADvp
カラム:CHIRALPAK AD−H(0.46f×25cm)(DAICEL社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール(容量比 90/10)
波長:216nm
温度:25℃付近の一定温度
流量:1.0mL/min
フェニル−2−ピラジルメタノール
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU LC−10ADvp
カラム:CHIRALPAK AD−H(0.46f×25cm)(DAICEL社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール(容量比 95/5)
波長:254nm
温度:25℃付近の一定温度
流量:1.0mL/min
フェニル−2−ピリミジニルメタノール
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU LC−10ADvp
カラム:CHIRALCEL OD−H(0.46f×25cm)(DAICEL社製)
移動相:ヘキサン/2−プロパノール(容量比95/5)
波長:254nm
温度:25℃付近の一定温度
流量:1.0mL/min
【0116】
〔実施例9〜16、比較例2〜11〕
ベンゾイルケトン基をもつヘテロ環類の水素化反応
表2および表3の実施例9〜16と比較例2〜11に示す種々のヘテロ芳香環をもつベンゾイルケトンの水素化反応を行い、対応する光学活性アルコールを高収率で且つ高エナンチオ選択的に得た(下記式(8)参照)。
【化9】

【0117】
以下に、水素化反応の代表的な手法を示す。すなわち、まず、予めオーブンで60℃で乾燥した100mLのガラスオートクレーブ(マグネティックスターラーバーが入ったもの)に、ケトン基質(2.17mmol)、正確に秤量したルテニウム錯体(S,S)−3(1.155mg、1.08μmol)および固形のKOC(CHを入れ、少なくとも5分間高真空状態にした後にアルゴンを導入した。アルゴン雰囲気下、溶媒をオートクレーブに入れた。水素ボンベとオートクレーブを接続し、オートクレーブ内を0.5MPaの水素で満たし、大気圧になるまで放出する操作を10回繰り返した後に、目的とする水素圧に設定した。この反応を30℃で激しく撹拌しながら水素消費量を監視し、水素化反応を行った。反応終了後、溶媒を濃縮後、1H NMRで同定し、変換率を決定した。濃縮物をシリカゲルのショートカラムを通して精製後、キラルHPLCで分析してエナンチオマー過剰率を決定した。なお、各実施例の水素化反応は、上述した代表的な手法に準じて行い、ベンゾイルケトン(基質)とルテニウム錯体(C)とのモル比(S/C)、塩基とルテニウム錯体とのモル比(塩基/C)、基質濃度(M)および溶媒は、表2および表3に示したとおりとした。
【0118】
なお、実施例9〜16および比較例2〜13に用いたルテニウム錯体は以下式で表される錯体((S,S)−3、(S,S)−4、(S)−5および(S)(S)−6)を用いた。
【化10】

【0119】
表2および3から明らかなように、ルテニウム錯体(S,S)−3を強塩基と共に用いると、ベンゾイルケトン基をもつヘテロ環類の非対称な基質の水素化反応が進行して、対応する光学活性アルコールが得られる。
なお、実施例9および10、比較例2および3で用いた2−ベンゾイルチオフェンは、アルドリッチ・ケミカル社から購入した。実施例11および12、比較例4および5で用いた2−ベンゾイルフランは、既に報告されている方法(Tetrahedron 2007, 63, p.12917-12926)に従って合成した。実施例13および14、比較例6および7で用いたベンゾイル−4−トリチル−2−イミダゾールは、既に報告されている方法(特開2003−128656)に従って合成した。実施例15、比較例8および9で用いたベンゾイル−2−ピラジンは、既に報告されている方法に従って合成した(J.Heterocyclic Chem.,31,1041-1046)。実施例16、比較例10および11で用いたベンゾイル−2−ピリミジンは、既に報告されている方法に従って合成した(HETEROCYCLES,31,895-909)。
【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明記載の方法は、医薬、農薬に利用される光学活性な生理活性化合物または液晶材料等の合成中間体として有用な光学活性アルコールを高い光学純度で高効率に製造することができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、
Arは環内に窒素原子、硫黄原子、または、酸素原子を少なくとも1つ含み、これらのヘテロ原子は塩を形成していてもよい5員環、6員環または7員環芳香族複素環基であり、
Arは0〜10個の各々同じでも異なってもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン基、アミノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基を有してもよい、芳香族炭化水素基である)
で表されるケトンを、不斉触媒の存在下において、水素源と反応させて、一般式(2)
【化2】

(式中、
ArおよびArは前記と同じ意味を示し、
*は不斉炭素の位置を示す)
で表される光学活性アルコールを製造する方法であって、
前記不斉触媒が、一般式(3)
RuXYAB (3)
(式中、
XおよびYは互いに同一または異なっていてもよい、水素またはアニオン性基を示し、
Aは、一般式(4)
【化3】

(式中、
およびRは、互いに同一または異なっていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基であり、
およびRは互いに同一または異なっていてもよい、水素、炭素数1〜3の炭化水素基であり、
、R、RおよびRは、互いに同一または異なっていてもよい、置換基を有してもよい炭化水素基である)で表される化合物であり、
Bは、一般式(5)、
【化4】

(式中、
は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、
10、R11は互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10とR11は、互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基の置換基を有してもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、
12、R13、R14、およびR15は、互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R12とR13、R13とR14、またはR14とR15は互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、Nを含む飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい)
で表される化合物
または、一般式(6)
【化5】

(式中、
16、R17、およびR18は、少なくとも一つは水素原子であり、R16、R17は互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、またはR16およびR17は互いに連結してNを含む環を形成してもよく、
18は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、
19、R20は、互いに同一または異なっていてもよい水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R19とR20は、互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基の置換基を有してもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、
21は、互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、隣接するR21が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、mは1〜10の整数を示し、nは1〜3の整数を示す)で表される化合物である)
で表されるルテニウム錯体を含む触媒であり、水素源が水素ガスまたは水素供与性化合物であり、ただし、前記ケトンにおいて、一般式(I)中、Arがピリジル基およびArが置換されていないフェニル基であり、かつ前記不斉触媒において、一般式(4)中のR、R、RおよびRが置換されていないフェニル基であり、かつ前記水素源および溶媒が2−プロパノールである場合を除く、前記方法。
【請求項2】
一般式(4)中のR、R、RおよびRが、1個または2個のメチル基を有するアリール基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(4)中のR、R、RおよびRが、キシリル基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(2)中のArが、2−チエニル基、2−フリル基、1−トリチル−4−イミダゾイル基、2−ピラジル基、2−ピリミジニル基または2−ピリジル基であり、Arが、置換されていてもよいアリール基である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
Arが2−ピリジル基であり、Arがp−クロロフェニル基である光学活性アルコールを製造する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水素源が水素ガスであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2011−51929(P2011−51929A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201953(P2009−201953)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】