説明

苗帽子

【課題】二股の固定串により環状鍔を簡単かつ確実に地面に止められるようにした苗帽子を提供する。
【解決手段】苗帽子1は、透光性材料からなる帽子本体2と、この帽子本体2の下端外周に形成され、苗の周囲の地面に載置される環状鍔3とを備えている。環状鍔3の所定位置には、二股の固定串の串間距離に等しい間隔を保ち、かつ、この串径より若干大きな内径をもつ串案内孔H,Hが設けられる。環状鍔3は、その板幅が前記串案内孔の周辺部にかけて拡大する拡大鍔部3a〜3dを有するとよい。また、環状鍔3の周端部の板面に、周方向に沿って連なる環状リブ5を形成するとよい。さらに、帽子本体2の下端部に、環状鍔3の内周端から立ち上がって径内側に向けて連なる環状段差部2bを設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物等の苗を保護するのに用いる苗帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜や果物等の苗に被せて霜や鳥などの害から苗を保護するようにした苗帽子が知られている。この種の苗帽子は、傘状の本体と、その本体の下端外周に延びる環状鍔とを有している。本体の頂部には通気孔が設けられており、これらの各部が透光性の樹脂材料で一体成形によって形成される。
使用時、苗に苗帽子を被せ、その環状鍔に固定用の串を突き刺して地面に止めている。このような固定串は、コの字形で二股になった形状のものが多く、これらの串の繋ぎの直線部分で環状鍔を地面に押し付けるようにしている。
なお、苗帽子に関連する先行技術としては、下記特許文献1等が開示されている。
【0003】
【特許文献1】意匠登録第479685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の苗帽子は、環状鍔の板面に串を突き刺して使用するものであるため、苗帽子の設置時に作業者の負担が大きい。特に、苗の数が多い畑では、このような突き刺し作業を繰り返すことで腕に疲労が溜まって作業効率が低下しやすくなる。
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、二股の固定串によって環状鍔を簡単かつ確実に地面に止められるようにした苗帽子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明(第1発明)の苗帽子は、
透光性を有する帽子本体と、
この帽子本体の下端外周に形成され、苗の周囲の地面に載置される環状鍔とを備え、
前記環状鍔を二股の固定串により地面に止めるようにした苗帽子であって、
前記環状鍔の所定位置に、前記固定串の串間距離に等しい間隔を保ち、かつ、この串径より若干大きな内径をもつ串案内孔を設ける構成とした。
【0007】
このような構成によれば、環状鍔に予め二股の固定串の幅と等距離の串案内孔が形成されているため、固定串の先端をこれらの孔に合わせて押し込むだけで、極めて簡単に環状鍔を地面に止めることができる。これにより、苗帽子の設置の際に、鍔の突き刺しに必要な力がいらなくなり、作業者の負担が大幅に軽減される。
【0008】
なお、前記「固定串」は、コの字形の二股の串であることが望ましいが、本発明においては、必ずしも二股に限られず、三股以上に分かれてるものであってもよい。また、固定串は、一方の串先が他方の串先よりも若干長くなっていることが望ましい。このように串先の長さに差を付けると、串案内孔の一方に長い方の串先を先に入れて、この串先を軸に回しながら、他方の串案内孔に短い方の串先を入れることができ、固定串の挿入作業がより簡単になる。
【0009】
[第2発明]
通常、苗帽子の環状鍔は、苗帽子の設置面積を小さくするために、環状鍔の幅が数mm程度の短い幅に設定されている。このような短い幅の環状鍔に前述したような串案内孔を形成すると、環状鍔の板面の強度が十分に保てないおそれがあり、また、特に孔の周辺が破れやすくなる。
【0010】
本発明(第2発明)の苗帽子は、第1発明の構成を備えるものであって、
前記環状鍔は、その板幅が前記串案内孔の周辺部にかけて拡大する拡大鍔部を有することを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、串案内孔の周りに比較的広い面積の板面(拡大鍔部)が確保されるため、孔周辺の強度が低下することなく、孔付近が破れにくくなる。また、固定串の止め状態が安定するため、苗帽子が地面から外れにくくなる。
なお、拡大鍔部の位置については、正方形の頂点方向に環状鍔が拡大するようにするとよい。このような構成によれば、複数の苗帽子を並べるときに、環状鍔の拡大しない部分を隣り合わせることで、苗帽子同士を接近して置くことができ、保管や運搬等の取り扱いが有利になる。
【0012】
[第3発明]
環状鍔の板幅を広くすると、樹脂成形上の理由によりその成形品の環状鍔が波打つように撓みやすくなる。このような波打ち形状の環状鍔では、地面との接地が不十分になって苗帽子が不安定になりやすい。
【0013】
本発明(第3発明)の苗帽子は、第1発明の構成を備えるものであって、
前記環状鍔の周端部の板面に、周方向に沿って連なる環状リブを形成したことを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、環状鍔の板面に環状リブによって張りがもたらされるため、環状鍔の板面の波打が防止され、平らな板面状態を保ちやすくなる。この結果、苗帽子を地面の上に安定して保持することが可能になる。
【0015】
[第4発明]
苗帽子の下部は、横方向から力を受けると、中央側に凹みやすく、これにつられて環状鍔も変形しやすい。作業中に不用意に苗帽子の側面を押すと、このようなことが起こりやすくなる。特に、苗帽子の設置時に環状鍔の変形が起こると、孔の位置がズレてしまうため、固定串の挿入作業が行いにくくなる。
【0016】
本発明(第4発明)の苗帽子は、第1発明の構成を備えるものであって、
前記帽子本体の下端部に、前記環状鍔の内周端から立ち上がって径内側に向けて連なる環状段差部を設けたことを特徴としている。
【0017】
本発明の構成によれば、苗帽子の下端に環状段差部が形成されるため、この段差部が苗帽子の下端の環状形状を安定させる役割を果たす。すなわち、苗帽子に横方向から力を加えても、環状段差部が突っ張って中央側へ凹むのを抑えるため、環状鍔の変形による串案内孔の位置ズレが防止され、串案内孔に固定串を挿入する作業をより快適に行うことが可能になる。
なお、前記環状段差部の側面には、縦方向(高さ方向)に延びる複数の畝部を周方向に間隔を保って設けることが望ましい。
このような畝部を形成することにより、環状段差部が上下方向の荷重に対しても十分な強度を発揮することができる。
【0018】
本発明の苗帽子は、果菜植物や花の苗の定植に使用することができる。例えば、トマト、キュウリ、ナス、カボチャ、スイカ等の苗に用いる場合、これらの苗の草丈が数十cm位になるまで苗帽子を被せておく。その他の植物の苗にも使用できるのはもちろんである。
【0019】
本発明(第1〜4発明)は、単独で適用してもよいし、これらの発明を必要に応じて組み合わせて適用してもよい。また、本発明(第1〜4発明)に本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1および図2は、本実施形態の苗帽子1を示している。本実施形態の苗帽子1は、例えばPET樹脂等の透明な樹脂材料を真空成形機にかけて形成されるものである。苗帽子1を地面に止める串には、図5に示すコ字形で二股の固定串Kが用いられる。
【0021】
図1に示すように、苗帽子11は、傘状の本体2と、その下端外周に延びる環状鍔3とを備えている。本体2の下端外周にほぼ90゜折れ曲がって環状鍔3が延びている。
【0022】
本体2は、傘部2aと環状段差部2bとからなる。傘部2aは、丸みを帯びたドーム状のもので、外周部から中央部にかけて板面が高くなっており、その中心部2cに通気孔P(図2参照)が形成される。傘部2aの縦方向には、周方向に等間隔で大畝部U1が形成される。これらの大畝部U1によって傘部2aの板面の強度が増し、上下方向の荷重に対して傘部2aが潰れにくくなっている。
【0023】
環状段差部2bは、環状鍔3の内周端から垂直に立ち上がり、径内側に折れ曲がって傘部2aの下端に連なっている。環状段差部2bの段差の高さは、傘部2aの下端を取り囲むように、環状鍔3の板面から一定の位置に保たれる。これにより、苗帽子1の下端開口部の環状形状が安定に保たれる。
【0024】
環状段差部2bの周方向の側面には、縦方向に複数の小畝部U2が形成されている。これらの小畝部U2は、周方向に複数間隔を保って連続形成される。このように環状段差部2bの側面に小畝部U2が形成されることで、環状段差部2bの上下方向の板面の強度が増している。
なお、小畝部U2は、大畝部U3と同様に縦方向に延びているが、このように各畝部の向きを縦向きに合わせることで、苗帽子の成形時の型抜きを行いやすくことができる。
【0025】
図2に示すように、環状鍔3は、その板面の直径方向に向き合う位置に串案内孔H,Hを有している。串案内孔H,Hの間隔S1(図3参照)は、固定串Kの串間距離S2(図5参照)とほぼ等しい間隔になっており、これらの孔H,Hの孔径は、固定串Kの串径より若干大きい程度になっている。
【0026】
環状鍔3を上から見ると、正方形の頂点方向に鍔の板幅が拡がるようになっており、これらの拡大鍔部3a〜3dのうち、対角線方向の拡大鍔部3aと3cに串案内孔H,Hが形成されている。これらの拡大鍔部3a,3cは、串案内孔H,Hの周辺部の板面の強度が低下するのを防ぐ。例えば、串案内孔H,Hの孔縁を固定串Kで引っ張るようなことがあっても、孔の周囲の板面が簡単には破れない。
また、環状鍔3の幅が拡大することによって環状鍔3の接地面が大きくなるため、苗帽子1が取付状態の安定感が増す。
【0027】
環状鍔3の周端部には、環状リブ5が形成される。環状リブ5は、均一な高さで環状鍔3の板面から盛り上がって、その外周端からやや内側に入った位置で全周に連なっている。環状リブ5の横断面は鉾形で、その厚みは環状鍔3の板厚にほぼ等しい。
このように環状鍔3に環状リブ5を設けることで、環状鍔3の板面に張りがもたらされる。
なお、環状リブ5と串案内孔H,Hとの位置関係については、環状リブ5の環の内側に串案内孔H,Hが入るように配置されている。苗帽子1の使用時に固定串Kが径方向の外側に引っ張られたとき、万一、環状鍔3の板面が破れたとしても、環状リブ5によって固定串Kが環状鍔3から外れるのが防止される。
【0028】
苗帽子1の使用状態を図4に示した。
苗帽子1を使用する場合、苗の上を傘部2aで覆うように、苗帽子1を被せ、この内側空間の中央に苗が来るように配置する。このような状態で環状鍔3の串案内孔H,Hに固定串Kの先端を合わせ(図5(A)参照)、地面にそのまま差し込む(図4(B)参照)。直径方向に向き合う位置で、2組の串案内孔H,Hに固定串Kを差し込むことで、苗帽子1がズレることなく地面に固定されることになる。
【0029】
このように本実施形態の苗帽子1は、環状鍔3の串案内孔H,Hに固定串Kの先端を合わせて押し込めば、環状鍔3を簡単かつ確実に地面に止めることができる。このため、苗帽子1の取付作業が極めて簡単になる。苗の数が多い場合でも、作業者の腕等にかかる負担が少なく、作業効率が大幅に向上する。
【0030】
また、図6(B)に示すように、環状リブ5が環状鍔3の板面を水平方向に真っ直ぐに保つように安定させるため、串案内孔H,Hが環状鍔3の板面と共に傾いたりすることがなくなり、串の先端の位置合わせが簡単に行える。
例えば図6(A)に示すように、環状リブ5がない場合には、環状鍔3が成形時の温度変化などの影響で端に行く程、撓みやすくなる。このような撓みは、環状鍔3が幅広になる程大きくなる。しかしながら、本実施形態では、環状リブ5によって環状鍔3の板面に張りがもたらされるために、串案内孔H,H付近の板面が撓むことなく、串案内孔H,Hと固定串Kとの位置合わせが行いやすくなる。
【0031】
さらに、本実施形態の苗帽子1は、傘部2aの下に環状段差部2bが設けられているため、苗帽子1の側面が凹みにくく、環状鍔3の位置ズレも少なくなる。例えば図7(A)に示すように、環状段差部2bがない場合、横方向から力がかかると、本体2が中央側に凹んで、それに追随して環状鍔3も内側にズレる。このような場合、凹みの量に応じて、直径方向に向き合う串案内孔H,Hの距離L0が環状鍔3と共に変化してしまう。
これに対し、本実施形態では、環状段差部2bが本体2の凹みを防止し、環状鍔3を安定した環状形状に保つため(図7(B)参照)、苗帽子1の使用時に、作業者が不用意にその側面を押したりしても、環状鍔3が変形することなく、串案内孔H,Hの距離L1がほぼ一定に保たれる。この結果、環状鍔3への串止め作業をより快適に行うことができる。
【0032】
本発明の実施形態による苗帽子1を説明したが、実施形態の構成はこれに限られることなく、種々の変更を伴うことができる。
例えば図8に示す苗帽子10は、大畝部U3の畝幅を幅広にしたものである。このような構成によれば、苗帽子1の内側に大畝部U3を通して光がより差し込みやすくなる。苗の葉数が多い場合などに苗帽子を大型サイズにするときには、このような構成が有効である。
【0033】
また、前記実施形態では、直径方向に向き合う拡大鍔部3aと3cに串案内孔H,Hをそれぞれ設けているが、これらと反対側の拡大鍔部3bと3dにも、串案内孔H,Hを設けてもよい。このように2組(合計8個)の串案内孔H,Hに固定串Kを使用すると、苗帽子1の取付けをより確実に行える。
また、環状鍔3の周方向に等間隔に串案内孔H,Hを複数設けることで、固定串Kを差す孔を選択できるようにすると、環状鍔3の串止め作業の自由度が高まる。例えば地面の柔らかい場所や固い場所に応じて串を差す位置を変えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による苗帽子を示す側面図である。
【図2】同苗帽子の平面図である。
【図3】同苗帽子の部分拡大平面図である。
【図4】同苗帽子の使用状態を示す図2のIV−IV線断面図である。
【図5】同苗帽子の使用状態を示す図2のV−V線断面図である。
【図6】同苗帽子の環状鍔の作用を説明するもので、(A)は従来例の環状鍔を示す部分拡大断面図、(B)は本実施形態の環状鍔を示す部分拡大断面図である。
【図7】同苗帽子の環状段差部の作用を説明するもので、(A)は従来例を示す部分拡大断面図、(B)は本実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態による苗帽子を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 苗帽子
2 本体(帽子本体)
2a 傘部
2b 環状段差部
2c 中心部
3 環状鍔
3a〜3d 拡大鍔部
5 環状リブ
H,H 串案内孔
K 固定串
S1 串案内孔の間隔
S2 串間距離
U1 大畝部
U2 小畝部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する帽子本体と、
この帽子本体の下端外周に形成され、苗の周囲の地面に載置される環状鍔とを備え、
前記環状鍔を二股の固定串により地面に止めるようにした苗帽子であって、
前記環状鍔の所定位置に、前記固定串の串間距離に等しい間隔を保ち、かつ、この串径より若干大きな内径をもつ串案内孔を設けたことを特徴とする苗帽子。
【請求項2】
前記環状鍔は、その板幅が前記串案内孔の周辺部にかけて拡大する拡大鍔部を有する、請求項1記載の苗帽子。
【請求項3】
前記環状鍔の周端部の板面に、周方向に沿って連なる環状リブを形成してなる、請求項1記載の苗帽子。
【請求項4】
前記帽子本体の下端部に、前記環状鍔の内周端から立ち上がって径内側に向けて連なる環状段差部を設ける、請求項1記載の苗帽子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−296366(P2006−296366A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126346(P2005−126346)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(392003225)第一ビニール株式会社 (27)
【出願人】(000237880)富川化学工業株式会社 (2)
【出願人】(593146659)明和株式会社 (4)
【Fターム(参考)】