説明

苗植機

【課題】 苗植装置に装着する代掻ロータの伝動を、車体側のミッションケースのPTO軸から、この苗植装置の伝動形態と同様に連動構成するのは、連動構成が前後に長くなり煩雑である。
【解決手段】 後輪1連動の入力軸2からカウンタ軸3を介して後側部の後輪軸4へギヤ伝動するように軸装するリヤアクスルケース5に、このカウンタ軸3部の周りに上下揺動自在にしてロータ連動軸6を取出し、車体後部の苗植装置と共に上下揺動しながら、苗植フロートの滑走前部を整地する代掻ロータ9を伝動することを特徴とする苗植機の整地装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
土壌面を滑走しながら苗植付面を均平にするフロートを有した苗植装置の前側に、整地ロータを配置する苗植機において、この整地ロータの動力連動構成をとり易く、簡単化する整地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植装置のフロート前に設ける代掻ロータの動力取出は、車体前部のミッションケース部のPTO軸から、減速機構や、連動軸等を介して伝動する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平6ー125617号公報(第3頁、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
苗植装置に装着する代掻ロータの伝動を、車体側のミッションケースのPTO軸から、この苗植装置の伝動形態と同様に連動構成するのは、連動構成が前後に長くなり煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、後輪(1)連動の入力軸(2)からカウンタ軸(3)を介して後側部の後輪軸(4)へ伝動するように軸装するリヤアクスルケース(5)に、このカウンタ軸(3)部の周りに上下揺動自在にしてロータ連動軸(6)を取出し、車体後部の苗植装置(7)と共に上下揺動しながら、苗植装置(7)の前側で整地する整地ロータ(9)へ伝動する構成としたことを特徴とする苗植機の構成とする。リヤアクスルケース5の入力軸2へ伝動すると、カウンタ軸3を介して後側部の後輪軸4を駆動して走行伝動する。このカウンタ軸3の回転によってロータ連動軸6を介して整地ロータ9を駆動し、苗植装置7直前の土壌面を整地する。これら後輪1や、苗植装置7、及び整地ロータ8等は、土壌面の深さ変化等によって上下揺動するが、後輪1に対する整地ロータ8の上下揺動時は、ロータ連動軸6が、後輪軸4よりも若干前側に位置するカウンタ軸3部周りに上下揺動して、常時動力伝動状態に維持する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明は、車体後方の苗植装置7の前側の整地ロータ9を、これに接近する後輪軸4を軸装のリヤアクスルケース5のカウンタ軸3から、ロータ連動軸6を介して連動するため、このロータ連動軸6の動力取出連動構成を比較的短かくでき、簡単にすることができる。しかも、この整地ロータ9はリヤアクスルケース5に対して上下揺動するが、これらカウンタ軸3は後輪軸4よりも前側に位置しているため、ロータ連動軸6の揺動時の折れ角を小さくすることができ、的確で、円滑な伝動を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図例の基づいて、苗植機は、車体10の後方部に苗植装置7と整地ロータである代掻ロータ9を装着したものである。車体10は、シート11の下側にエンジン12を搭載し、ステップフロア13前部にステアリングハンドル14を有し、このエンジン12によって前部のミッションケース15の伝動機構を伝動して、前輪16、及び後輪1を駆動走行する乗用四輪駆動走行形態に構成している。シート11の後側には施肥装置17を搭載し、苗植付と同時に施肥作用を行うことができる。前記ミッションケース15の左右両側には、フロントアクスルケース18を設けて、前輪軸19を軸装し、後側には左右一対の後輪連動軸20、及びPTO軸21を取出している。この後輪連動軸20の後端を、後輪軸4を軸装するリヤアクスルケース5前端の入力軸2に、自在継手等を介して連結して伝動する。又、PTO軸21の後端を、前記施肥装置17や、苗植装置7等に連動する。車体10後端部のリヤフレーム22には、左右両側下部に前記リヤアクスルケース5を設け、このリヤアクスルケース5の後端部に後輪軸4を軸受けし、この外側に後輪1を取付ける。又、このリヤフレーム22上部には平行リンク形態のリフトリンク23を上下回動自在に連結して、リフトシリンダ24の伸縮によって昇降回動可能に設ける。又、このリヤフレーム22の上方に施肥装置17を搭載している。
【0007】
前記苗植装置7は、苗植フレーム26の上方に、マット状形態に育苗された苗を収容して繰出する苗タンク27を有し、後端部には、この苗タンク27から繰出るされる苗を分離保持して土壌面へ植付ける植付爪28を配置し、又、下側部には、これら苗植装置7全体を支持して土壌面を滑走しながら該植付爪28による苗植付面を均平にする苗植フロート8を設けて、多条植形態に構成している。この苗植フロート8は、多条植幅の中央部に位置するセンタフロート8Aと、この左右両側部に位置するサイドフロート8Bとから構成される。各フロート8は、苗植フレーム26に対してフロートアーム29を介して上下調節可能に支持され、このフロートアーム29の後端部の揺動軸30周り上下回動自在に支持される。特に、センタフロート8Aの揺動によって、土壌面の深さを検出して、前記リフトシリンダ24を伸縮する油圧回路の昇降制御弁を切替連動させて、苗植装置7を昇降制御して土壌面の深さ変化に拘らず、植付爪28による苗植付深さを一定に維持するように構成している。このような苗植フレーム26の中央部前端部が、前記リフトリンク23の後端のヒッチリンク31にローリング軸32を介してローリング可能に装着される。
【0008】
この苗植装置7の苗タンク27の前側に沿って、苗植フレーム26と一体の苗タンク支持フレーム33を設け、この支持フレーム33の前側に上下一対のリンクアーム34、35を介して上下揺動自在のロータ支持フレーム36を設けると共に、この上部リンクアーム37にリンクロッド38、及びスプリング39を連結し、これらロータ支持フレーム36の下端部とスプリング39の下端部にわたって代掻ロータ9を取付けて吊下支持する。この上部のリンクアーム34、37は、アーム軸42に対して一体に構成とし、このアーム軸42を支持フレーム33の上端部の横フレーム40と一体のブラケット41に対して上下回動可能に支持する。このアーム軸42の中央部には係合ピン43を有し、該ブラケット41部に設けられたレバー44のフック45によって係合することができ、このレバー44を回動することによって係合ピン43を係合してリンクアーム34、37を上側へ回動することができる。このレバー44によるフック45の係合の外しておけば、代掻ロータ9を昇降自在の状態とすることができる。
【0009】
前記代掻ロータ9は、センタフロート8Aの前側に位置するセンタロータ9Aと、サイドフロート8Bの前側に位置するサイドロータ9Bとから構成される。このセンタロータ9Aは左右後輪1の間隔部に位置して、サイドロータ9Bよりも前側に偏位して構成される。各ロータ9は、ロータ軸46にを有して、伝動ケース47、48や、前記支持フレーム36の下端部等に軸受けされる。このうちセンタロータ9Aのセンタロータ軸46Aは、左右両側部を伝動ケース48の前端部に軸受けし、このロータ軸46Aの中央部に、動力の入力軸46、及びベベルギヤ50等を収容して連動する入力伝動ケース47を有する。又、サイドロータ9Bのサイドロータ軸46Bは、内側端を前記伝動ケース48の後端部に軸受けし、これらのサイドロータ軸46Bと前記センタロータ軸46Aとの間をチエン連動する。又、このサイドロータ軸46Bの中央部を前記支持フレーム36の下端部に軸受けしている。そして、入力軸49の回転によって、これらセンタロータ軸46Aを回転すると共に、伝動ケース48のチエン等を介して、サイドロータ軸46Bを伝動回転する。又、これら各代掻ロータ9のロータ軸46に沿って、外周に代掻ラグ付のラグロータを多数配設して一体回転する形態である。
【0010】
ここにおいて、この発明に係る整地装置は、後輪1連動の入力軸2からカウンタ軸3を介して後側部の後輪軸4へギヤ伝動するように軸装するリヤアクスルケース5に、このカウンタ軸3部の周りに上下揺動自在にしてロータ連動軸6を取出し、車体後部の苗植装置7と共に上下揺動しながら、苗植フロート8の滑走前部を整地する代掻ロータ9を伝動することを特徴とする苗植機の整地装置の構成とする。
【0011】
前記リヤフレーム22の左右両側下端部に固定のブラケット51に、リヤアクスルケース5を揺動軸52周りに上下回動自在に支持する。このリヤアクスルケース5の後部上には、上下方向の案内穴53を形成したガイドプレート54を前後回動可能に枢着56して設け、この案内穴53をブラケット51のガイドピン55に嵌合させて、該リヤアクスルケース5の上下回動を案内する。これらガイドプレート54の下端部とガイドピン55との間にはダンパスプリング57を介装して、リヤアクスルケース5を車体10に対して下方へ弾発支持する。このリヤアクスルケース5は、後部外側に後輪軸4を軸装するが、この後輪軸4の前側にカウンタ軸3を軸装して、ギヤ58噛合して減速連動する。前記揺動軸52は、略このカウンタ軸3の上側部に設定している。前記後輪連動軸20から自在継手59を介して連動の入力軸2は、このカウンタ軸3の前側に軸装してベベルギヤ60を介して噛合連動する。このように、左右のリヤアクスルケース5を、この後輪軸4前側上部の揺動軸52周りに独立的に上下揺動自在に支持する形態として、後輪1を伝動するときの駆動反力によって、土壌面深くへ沈下させるように下動させて、車体10の後部を浮上支持するようになり、車体10の傾斜を水平状に維持する。
【0012】
前記後輪軸4はこのリヤアクスルケース5の外側に突出しているが、このカウンタ軸3は車体10内側に突出して、このカウンタ軸3の突出端部にロータ連動軸6の前端部をベベルギヤ61を介して連動する。このロータ連動軸6の前端部に、動力取出ギヤケース62を有し、これらベベルギヤ61を回転自在に軸受けする。又、動力取出ギヤケース62はカウンタ軸3に嵌合して、このカウンタ軸3周りに回動自在に軸受けする軸受ボス63を形成し、前記代掻ロータ9が上下揺動するときは、ロータ連動軸6がこの軸受ボス63により支持するカウンタ軸3周りに回動する。この動力取出ギヤケース62のロータ連動軸6軸受ボス6部には、前記リヤアクスルケース5と反対側にクラッチシフタ65を設けて、この軸受ボス64の左右後輪1間隔の内側から連動操作可能に設け、後輪1の回転による泥土の降りかかりを少くするように構成している。この軸受けボス64部には、前記ベベルギヤ61と連動軸6との間に嵌合連動するドッグクラッチ形態のロータクラッチ66を設け、このロータクラッチ66を該クラッチシフタ65の回動によって軸方向へ移動操作して、カウンタ軸3から代掻ロータ9への伝動を入り、切り可能に構成する。ロータ連動軸6は、自在継手67を有して、前記入力伝動ケース47の入力軸49に連結している。
【0013】
このような代掻ロータ9のロータ連動軸6の連動形態へ、入力伝動ケース47を車幅間隔の中央部のセンタラインL上に配置するため、センタロータ軸46Aの中央部に設け、又、このロータ連動軸6前端の動力取出ギヤケース62を、左右いずれか一側のリヤアクスルケース5に対して装着するため、センタラインLに対して左、右に傾斜する傾斜角Cを有して連結する。
【0014】
前記動力取出ギヤケース62は、リヤアクスルケース5の内方へ突出のカウンタ軸3上にこの内端側から嵌合させて取付ける形態としたが、このカウンタ軸3を短かく形成したものと交換可能にして、代掻ロータ9を装着する苗植機仕様において、長く突出する形態のカウンタ軸3を使用するように形成することもできる。又、このカウンタ軸3をリヤアクスルケース5から突出しない短かく形成し、動力取出ギヤケース62を取付けるとき、このギヤケース62内のギヤ軸をカウンタ軸3にカップリング嵌合等によって一体回転するように連結することができる。このとき、この動力取出ギヤケース62を取外したときは、このリヤアクスルケース5の開口取付部を閉鎖するケースキャップを取付ける。又、この動力取出ギヤケース62を取付可能に構成するリヤアクスルケース5形態では、前記ロータクラッチ60を、このアクスルケース5のカウンタ軸3上に設けることも可能である。
【0015】
前記苗植装置7の前側に昇降自在に設けられる代掻ロータ9をモータM駆動によって昇降制御することができる。図4のように、横フレーム40のブラケット41にギヤドモータMを取付けて、アーム軸42を回動するように構成し、このモータMによって代掻ロータ9を昇降する。この昇降は代掻ロータ9を作業状態に下降したり、収納状態に上昇させることが、この昇降状態を調節制御して、作業状態や、土壌深さ等の条件変化に対応させて、的確な代掻作業を行わせることができる。例えば、車速を変速する変速レバーや、車速センサ等による車速が速くなると、この代掻ロータ9を下降するように作動させて、車速による苗植装置7及び代掻ロータ9の沈浮に応じて、代掻ロータ9の作用位置を自動調節するように構成することができる。又、このような代掻ロータ9は、畝際作業時は、畝際での折返旋回時においては、耕盤の深さが大きく変化し、車速の傾斜や、沈浮も大きいため、代掻ロータ9を代掻作動させて、代掻による土壌の均平性を高めるように作業することが多いが、この場合は、前記車速センサや、ステアリングハンドル14による操向角センサ等の検出によって、この苗植機が旋回行程に入ることによって代掻ロータ9を下降して、旋回行程度が終って苗植装置7が前輪16の操向踏跡を通り過ぎるまでの、一定間隔、一定時間、乃至一定車速復帰するまでの間は、代掻作業状態におき、これを過ぎることによってモータMによって自動上昇、又は上動調整するように構成することができる。
【0016】
次に、主として図7に基づいて、前記代掻ロータ9を苗植装置7の苗植フレーム26に一体的に装着して、この苗植装置7を連動する苗植連動軸70、及びこの連動軸70から連動される連動軸71、チエン72等を介して伝動することにより、構成を簡単にする。苗植連動軸70は前記PTO軸21の後端に連結して、入力ギヤケース73のギヤ74、及びチエン75等を介して苗植フレーム26ケース内の苗植伝動機構を伝動する。従って、この入力ギヤケース73は苗植フレーム26に対して一体的構成とし、連動軸71から代掻ロータ9を分岐連動する形態にしている。
【0017】
次に、主として図8に基づいて、前記代掻ロータ9の形態を、各苗植フロート8の前側に対向する部分においてのみディスク形態のディスクロータ91とし、各フロート8間の間隔部域D位置に対向する部分はかご形態のかごロータ92として構成している。ディスクロータ91はわら屑等の夾雑物の土壌面への押込効果が高く、この夾雑物の押込直後をフロート8で均平して均平性を良くする。又、かごロータ92は土壌面を押えて均平性が比較的良好で、抵抗も軽いため、円滑な土壌面の均平を行い、植付苗条への泥押を少くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】代掻ロータ伝動機構部の平面図。
【図2】そのリヤアクスルケース取付部の平面図と、側面図。
【図3】袋掻ロータの配置平面図。
【図4】その正面図。
【図5】苗植機の側面図。
【図6】その平面図。
【図7】苗植機の別例を示す側面図と、その代掻ロータの伝動機構図。
【図8】代掻ロータ部の別例を示す配置平面図。
【符号の説明】
【0019】
1 後輪
2 入力軸
3 カウンタ軸
4 後輪軸
5 リヤアクスルケース
6 ロータ連動軸
7 苗植装置
8 苗植フロート
9 代掻ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪(1)連動の入力軸(2)からカウンタ軸(3)を介して後側部の後輪軸(4)へ伝動するように軸装するリヤアクスルケース(5)に、このカウンタ軸(3)部の周りに上下揺動自在にしてロータ連動軸(6)を取出し、車体後部の苗植装置(7)と共に上下揺動しながら、苗植装置(7)の前側で整地する整地ロータ(9)へ伝動する構成としたことを特徴とする苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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