説明

苗移植機

【課題】 苗植付け挟持具により、苗を前後方向へ向けた姿勢(横向き姿勢)で植え付ける構成の苗移植機は、苗植付け挟持具が上側へ移動して土壌内から退出する退出作動時に植え付けた苗の土壌内で前後に長く埋められた蔓の部分をひっかけて持ち上げやすく、土壌内に埋めた蔓が土壌から露出したり苗の植付深さが浅くなったりして苗の植付精度が低下するおそれがある。
【解決手段】 上記構成の苗移植機において、苗植付け挟持具31の退出作動時に、苗植付け挟持具31が土壌内へ突入する突入位置と該苗植付け挟持具31が土壌内で苗の挟持を解除する挟持解除位置との間の土壌を上から押さえる押さえ具91を設け、該押さえ具91の押さえ面91cを機体の前進に伴って後側へ移動させる移動機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばかんしょ苗等の蔓状の苗を横向き姿勢で移植する苗移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
走行装置により機体を前進させながら、挟持した苗を前後方向へ向けた姿勢で土壌内へ突入させ、土壌内において前後方向へ移動した後に苗の挟持を解除し、挟持を解除した状態で上側へ移動して土壌内から退出する退出作動がなされる苗植付け挟持具により、苗を前後方向へ向けた姿勢(横向き姿勢)で植え付ける構成の苗移植機が知られている。この苗移植機は、苗植付け挟持具が土壌内において前後方向へ移動した後に苗の挟持を解除することにより、蔓の部分が土壌内で前後に長く埋められるように苗を植え付けることができる(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−236524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記背景技術の苗移植機は、苗植付け挟持具が上側へ移動して土壌内から退出する退出作動時に植え付けた苗の土壌内で前後に長く埋められた蔓の部分をひっかけて持ち上げやすく、土壌内に埋めた蔓が土壌から露出したり苗の植付深さが浅くなったりして苗の植付精度が低下するおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、苗を横向き姿勢で適正に移植できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、走行装置4により機体を前進させながら、挟持した苗を前後方向へ向けた姿勢で土壌内へ突入させ、土壌内において前後方向へ移動した後に苗の挟持を解除し、挟持を解除した状態で上側へ移動して土壌内から退出する退出作動がなされる苗植付け挟持具31により、苗を前後方向へ向けた姿勢で植え付ける構成の苗移植機において、苗植付け挟持具31の退出作動時に、苗植付け挟持具31が土壌内へ突入する突入位置と該苗植付け挟持具31が土壌内で苗の挟持を解除する挟持解除位置との間の土壌を上から押さえる押さえ具91を設け、該押さえ具91の押さえ面91cを機体の前進に伴って後側へ移動させる移動機構を設けた苗移植機とした。
【0006】
従って、上記の苗移植機は、押さえ具91により、苗植付け挟持具31の退出作動時に植え付けた苗の土壌内に埋めた蔓の部分の上方の土壌を上から押さえることができる。そして、移動機構により押さえ具91の押さえ面91cを機体の前進に伴って後側へ移動させるので、押さえ具91により土壌面を荒らさないようにして植え付けた苗の上方の土壌を適確に押さえることができる。
【発明の効果】
【0007】
よって、植え付けた苗の上方の土壌を荒らさないようにして適確に押さえることができるので、苗植付け挟持具31の退出作動時に植え付けた苗の土壌内で前後に長く埋められた蔓tの部分をひっかけて持ち上げるようなことを防止でき、苗を横向き姿勢で適正に移植できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施の一形態としての甘薯苗移植機1を以下に説明する。
苗移植機1は、走行装置4と操縦ハンドル2を備えた機体に、甘薯苗Nを搬送する苗搬送部5と、該苗搬送部5によって搬送されてきた苗Nを圃場に植付ける苗植付け装置となる苗植付け体6とを備えている。走行装置4は、図示例では、エンジン3と、該エンジン3の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7と、該後輪7の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪8とを備えたものとしている。
【0009】
エンジン3の後部には、ミッションケース9を配置し、そのミッションケース9は、その左側部からエンジン3の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン3の左側部と連結している。このケース部分にエンジン3の出力軸が入り込んでミッションケース9内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース9の左右両側部に伝動ケース10を回動自在に取り付け、この伝動ケース10の回動中心にミッションケース9から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース10内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース10内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端側側方に突出する車軸11に伝動し、後輪7が駆動回転するようになっている。
【0010】
また、伝動ケース10のミッションケース9への取付部には、上方に延びるアーム12を一体的に取り付けていて、これがミッションケース9に固定された昇降用油圧シリンダ13のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆14の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド15で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ16で連結している。
【0011】
昇降用油圧シリンダ13が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム12は後方に回動し、これに伴い伝動ケース10が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ13のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム12は前方に回動し、これに伴い伝動ケース10が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ13は、機体に対する畝上面高さを検出するセンサー17の検出結果に基づいて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう作動するよう構成しており、また、操縦ハンドル2近傍に配置した植付昇降レバー18の人為操作に
よって、機体を上昇或は下降させるよう作動する構成でもある。尚、前記植付昇降レバー18は、苗植付け体6及び苗搬送部5の駆動の入切の操作が行える。また、植付昇降レバー18の側方には、ミッションケース9内の主クラッチ(図示せず)を操作して走行装置4の走行の入切操作が可能な主クラッチレバー19を設けている。
【0012】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ16が伸縮作動すると、前記天秤杆14が、その左右中央部の昇降用油圧シリンダ13のピストンロッド先端と連結する上下軸心周りに回動して左右の伝動ケース10を互い違いに上下動させ機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ16は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0013】
前記左右前輪8は、エンジン3下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム20の左右両側部の下方に延びるアーム部分21の下端部側方に固定した車軸22に回転自在に取り付けられている。従って、左右前輪8は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。
【0014】
前記操縦ハンドル2は、ミッションケース9に前端部を固定したハンドルフレーム23の後端部に取り付けられている。ハンドルフレーム23は、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、ハンドルフレーム23の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0015】
尚、上記走行装置4は、四輪構成としたものであるが、左右一対の駆動輪のみの2輪構成でもよいし、前輪の替わりに畝上面を転動する鎮圧輪としてもよい。また、クローラー式の走行装置としてもよい。次に、苗植付け体6及び苗搬送部5について説明する。
【0016】
苗植付け体6は、その苗保持具となる苗植付け作用部6aを昇降動させる駆動部と連結し、該苗植付け体4の苗植付け作用部6a(一対の苗植付け挟持具31)が、苗搬送部5により搬送されてきた苗に作用して苗を圃場に植付ける構成としたものである。
【0017】
苗植付け体6を駆動する駆動部は、ミッションケース9内から苗植付け具駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース32に設けている。図例のように植付け伝動ケース32は、その前部がミッションケース9の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部32aと、この第一ケース部32aの上部左側部に固定され左
側方に延びる第二ケース部32bと、その第二ケース部32bの左端部に固定され後斜め下方に延びる第三ケース部32cとを有するものとしている。これら第一ケース部32aから第三ケース部32c内に苗植付け体6を駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。尚、前記第三ケース部32cは、第二ケース部32bの出力軸すなわち該第三ケース部32cの入力軸33回りに回動自在に設けられている。そして、苗植付け体6及び苗搬送部5は、走行装置4に対してこの第三ケース部32cの入力軸33回りに回動自在に設けられている。また、第一ケース部32a内に内装した伝動機構には、苗植付け体6をその昇降動最上位の位置で或はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構(図示せず)と、苗植付け体6及び苗搬送部5を作動停止させる植付クラッチ(図示せず)とを備える。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構(図示せず)によって調節され、この調節によって苗植付け体6による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0018】
そして、苗植付け体6は、その駆動部としての駆動回転する駆動アーム34と連結して駆動される。駆動アーム34は、前記第三ケース部32cの後部右側部から突出し駆動回転する駆動軸35にセットボルト34aにより外れないように取り付けられている。そして、駆動アーム34の先端部に苗植付け体6の支持リンク部36の上端部を回転自在に連結し、その支持リンク部36の下端部に揺動リンク37の前端部を回転自在に連結している。揺動リンク37の後端部は、第三ケース部32cに前部が固定されて後方に延びる支持フレーム38の後端部に設けた支持軸39で回転自在に支持している。従って、苗植付け体6は、駆動アーム34が駆動回転すると、その先端部(下端部)の苗植付け作用部6aが、図1に示すような軌跡Tを描いて運動することになる。なお、図1に示すような軌跡Tは、機体に対して苗植付け作用部6aが描く運動軌跡(静軌跡)であり、軌跡T'は、設定した作業時速度で機体が前進走行したときの圃場に対して苗植付け作用部6aが描く運動軌跡(動軌跡)である。
【0019】
図5の苗植付け体6の拡大斜視図に示すように、苗植付け体6は連結軸40回りに回動連結される一対の支持部41と該支持部41の先端部に固着した苗を挟持する一対の苗植付け挟持具31と、支持部41の連結軸40に対して前記苗植付け挟持具31とは反対側に支持部41に固着した一対の苗植付け挟持具作動アーム42とから構成されている。尚、これらの支持部41、一対の苗植付け挟持具31及び一対の苗植付け挟持具作動アーム42は、機体側面視で若干前側に傾斜して上下方向に長い構成となっている。該苗植付け挟持具作動アーム42の上端部にはそれぞれ円板42aを設け、この円板42aがカム43の側面に当接している。連結軸を支持リンク部36に取り付けており、カム43の側面に設けた突部43aが円板42aに当接することにより一対の苗植付け挟持具作動アーム42の互いの間隔が広くなってひいては一対の支持部41が互いに連結軸40回りに回動して、一対の苗植付け挟持具31の間隔が広がるようになっている。従って、カム43により、一対の苗植付け挟持具31を苗を挟持したりその挟持を解除したりする構成となっている。尚、一対の支持部41の間には引張スプリング44を設けており、この引張スプリング44により一対の苗植付け挟持具31を互いに近づく方向へ付勢している。また、苗植付け挟持具31の対向する面にディンプルを設けて苗を挟持し易くしている。
【0020】
カム43は、駆動アーム34の先端側に固着されており、駆動アーム34と一体で回転するようになっている。従って、伝動ケ−ス32cからの駆動力でカム43が回動すると、植付軌跡T(T')の上死点付近の苗植付け体6への植付供給位置Aで、カム43の突部43aが苗植付け挟持具作動アーム42に当接して一対の苗植付け挟持具31の先端部が閉じる方向に動き、植付供給位置Aにある甘薯苗Nの蔓tの下端部(植付供給位置では甘薯苗が前後方向に向いているのでその後端部)を挟持する。そして、苗植付け挟持具31により苗を挟持したままで駆動アーム34の回転により植付軌跡T(T')の下死点付近まで苗植付け体6が苗を土壌内に埋め込みながらその先端が後方へ移動するように前後姿勢を前倒れ側に変えながら作動し、前記下死点付近でカム43の突部43aが苗植付け挟持具作動アーム42から離れ、一対の支持部41の間の引張スプリング44により付勢されて一対の苗植付け挟持具31の先端部が開く方向に動き、挟持していた苗を放して土壌内に移植するようになっている。尚、後述する苗搬送部5により甘薯苗Nを前後方向に向いた姿勢で植付供給位置Aへ供給するので、苗植付け体6が甘薯苗Nをそのまま前後方向に向いた姿勢で土壌内へ移植し、甘薯苗Nの蔓tを土壌面Dに対して傾斜した姿勢で移植するようになっている。尚、苗植付け体6が後下方に延びる植付軌跡T上を作動して植え付けるので、苗が前側に傾いた状態で植え付けられることとなる。
【0021】
そして、植付軌跡T(T')の下死点付近で開いて苗の挟持を解除した一対の苗植付け挟持具31は、前倒れ姿勢から鉛直姿勢になる側に前後姿勢を変えながら作動し、前方へ移動しながら上昇して土中から抜ける退出作動を行う。従って、苗植付け挟持具31は、土壌内へ突入する突入軌跡と土壌から土壌内から退出する退出軌跡とが近くなるので、圃場の植付穴を無闇に大きくすることなく苗の植付を適正に行える。支持リンク部36には平行に筒状のスライドガイド90を一体的に固着して設けており、このスライドガイド90により、苗植付け挟持具31の退出作動時に苗植付け挟持具31が土壌内へ突入する突入位置と該苗植付け挟持具31が土壌内で苗の挟持を解除する挟持解除位置すなわち植付軌跡T(T')の下死点付近との間の土壌を上から押さえる押さえ具91が苗植付け挟持具31(苗植付け体6)に対してスライド可能に設けられている。押さえ具91は、スライドガイド90に挿入されるスライド部91aと土壌面に接触する押さえ部91bとを備えている。前記押さえ部91bは、丸棒を下側に凸となるように曲げて構成されており、下側に凸状の曲面を備え、この曲面が押さえ面91cとなる。前記スライド部91aと押さえ部91bとの連結部位には駆動体(駆動ピン)91dを設け、苗植付け挟持具31の退出作動時(上昇時)に、駆動体(駆動ピン)91dが支持フレーム38から支持されて機体側に固着された押さえ作動用カム92に下側から当接することにより、押さえ具91が下側にスライド移動により突出して上方から土壌を押さえる構成となっている。尚、押さえ具91はスライドガイド90との間に設けたスプリング93により常時上側に付勢され、駆動体(駆動ピン)91dが苗植付け挟持具31の退出作動時(上昇時)にのみ当接するように前記押さえ作動用カム92が配置されている。尚、押さえ具91の退入状態(上昇状態)では、押さえ部91bが側面視で一対の苗植付け挟持具31の上部と重複する位置で該苗植付け挟持具31間に設けた空間部に位置する。この空間部は、一対の苗植付け挟持具31の開閉状態に拘らず形成されている。そして、押さえ具91の突出時(下降時)には、開いた状態の一対の苗植付け挟持具31の先端(下端)の間を押さえ部91bが通過して下降するため、押さえ部91bにより一対の苗植付け挟持具31に近い位置で土壌を押さえることができ、苗の株元を的確に押圧できる。駆動体(駆動ピン)91dの押さえ作動用カム92への当接が外れて押さえ具91の退入(上昇)する際には、一対の苗植付け挟持具31は未だ上死点に到達せず開いた状態であるから、押さえ具91の退入(上昇)させることができる。
【0022】
尚、押さえ部91bを駆動ピン回りに下側(後側)へ回動自在に設ければ、組付誤差等により仮に退入(上昇)する押さえ具91が苗植付け挟持具31と干渉するようなことがあっても、押さえ部91bが回動して苗植付け挟持具31から退避し、押さえ部91bあるいは苗植付け挟持具31の破損や装置のメカロックを防止することができる。また、押さえ具91の退入(上昇)のタイミングを苗植付け挟持具31が植付軌跡T(T')の上死点を越えて下降しているときに設定しても、挟持される苗の大部分は苗植付け挟持具31の前側に位置するから、苗にあまり作用させずに押さえ具91を退入(上昇)させることができる。また、苗植付け挟持具31に付着する土等を落とすスクレーパを押さえ部91bに取り付ければ、押さえ具91の作動で苗植付け挟持具31に付着する土等を落とすことができる。
【0023】
また、植付軌跡T(T')における下死点から上死点までの軌跡すなわち上昇軌跡は、苗植付け挟持具31が土壌内へ突入する突入位置より後側で、苗植付け挟持具31が土壌内で苗の挟持を解除する下死点付近の挟持解除位置から前側にあり、駆動体(駆動ピン)91dが押さえ作動用カム92に当接して押さえ具91が作動するとき、苗植付け挟持具31が前記突入位置より後側で前記挟持解除位置より前側に位置する。
【0024】
よって、押さえ具 を支持リンク部36ひいては苗植付け体6と平行で該苗植付け体6に取り付けているので、押さえ具91をコンパクトに配置できる。また、押さえ作動用カム92が機体側に固定されているので、苗植付け体6が上昇するほど押さえ具91が前倒れ姿勢で斜め後下方に突出することになり、従って押さえ作動用カム92及び駆動体(駆動ピン)91dにより押さえ部91bの押さえ面91cを機体の前進に伴って後側へ移動させる移動機構が構成されている。尚、押さえ作動用カム92における駆動体91dの当接面を前側ほど下方に突出させると、苗植付け体6が斜め前上方へ移動しながら上昇するほど土壌を強く押圧することができ、土壌ひいては苗の押圧を確実に行える。また、押さえ部91bの押さえ面91cが、下側に凸状の曲面であるので、苗植付け体6が前後姿勢を変えながら上昇しても、適確に圃場面に接触して土壌を押さえることができる。
【0025】
尚、押さえ部91bを、複数の丸棒を左右並列に設けて構成し、土壌の押圧作用が確実に得られるようにしてもよい。また、駆動アーム34の先端部に該アーム34と一体で押さえ作動用カム92を取り付け、苗植付け体6の上昇時に押さえ具91が突出作動する構成としてもよい。また、押さえ作動用カム92を異なる形状のものに交換して押さえ具91の作動量、作動速度又は作動タイミングを調節できるような調節手段を設けてもよい。また、例えば揺動リンク37と連動して揺動する揺動アームを別途設け、該揺動アームに押さえ作動用カム92を取り付ける等して、苗植付け体6の作動に連動して押さえ作動用カム92を植付軌跡T(T')に対して前後に移動させる構成とし、苗植付け体6の上昇時に押さえ具91が確実に突出作動し、苗植付け体6の下降時には押さえ作動用カム92が確実に作用しないようにするとよい。これにより、押さえ作動用カム92自体の寸法や形状の自由度が増すため、押さえ具91の作動量、作動速度又は作動タイミングを所望に設定できる。
【0026】
また、上述の押さえ具91に代えて、苗植付位置近傍の圃場面に接触する回転押さえ体94を設けてもよい。そして、この回転押さえ体94を後述する鎮圧輪84の回転に連動させて強制回転させる構成とし、回転押さえ体94の押さえ面(外周面)を機体の前進に伴ってその前進速度と同じ速度で後側へ移動させる移動機構を構成している。これにより、回転押さえ体94で土壌を荒らすようなことをより確実に防止できる。尚、回転押さえ体94の押さえ面(外周面)には、土壌の押圧作用を確実に得るためにブラシが設けられている。また、前記回転押さえ体94を正面視で左右中央部の径が小さく左右両端部の径が大きい構成とし、植え付けた苗の上を通過する際に苗の蔓tが前記左右中央部に対応するようにして、回転押さえ体94で苗の蔓tにある成長点を傷めるようなことを抑制できる構成としてもよい。尚、上記のような固定式の回転押さえ体94は、植付軌跡(静軌跡)Tにおける苗植付け体6が土中から抜け出る位置の近傍で苗植付け体6と干渉しない位置に配置する必要がある。尚、回転押さえ体94の左右両側面にスクレーパを取り付け、このスクレーパが接触して苗植付け挟持具31に付着する土等を落とす構成としてもよい。また、電動ファン等の送風装置により土壌に上からエア(圧力風)を吹き付け、土壌を押圧することも考えられる。
【0027】
また、一対の苗植付け挟持具31の左右外側面に突出する突条を設け、苗植付時に土壌内で苗の蔓の通路を確実に作って蔓を案内し、苗植付け挟持具31の上昇で前記突条に載った土を前記通路に落として植え付けた苗が持ち上がるのを防止するようにするとよい。
【0028】
ところで、植付け伝動ケース32の第三ケース部32c内の伝動構成は、該第三ケース部32cの入力軸33からチェーン110を介して中継軸111へ伝動し、該中継軸111から一対の伝動ギヤ100,101を介して該ケース部32cから出力される駆動軸35へ伝動される構成となっている。また、駆動軸35から3個の伝動ギヤ101、112、113を介して第三ケース部32cの右側部から突出し駆動回転する第二駆動軸114へ伝動される構成となっている。該第二駆動軸114は、駆動軸35と左右方向で同じ位置で駆動軸35よりも若干後側で上側に配置されている。この第二駆動軸114にも苗植付け体6を駆動する駆動アーム34をセットボルト34aにより外れないように取り付けることができる。図6に示すように、第二駆動軸114に駆動アーム34を連結すると、第二駆動軸114が駆動軸35よりも後側及び上側に配置されているので、駆動軸35に駆動アーム34を連結した場合と比較して、揺動リンク37の姿勢が前後水平に近い領域で該リンク37上下方向に大きく揺動し、植付軌跡Tの前後方向に小さく上下方向に大きくなる。
【0029】
従って、駆動軸35と第二駆動軸114とに駆動ア−ム34を連結する駆動軸を変更することにより、植付軌跡Tを変更する植付軌跡変更手段が構成される。よって、食用等の甘薯を栽培するとき等、一個当たりの甘薯を大きく栽培したいときには、第二駆動軸114に駆動ア−ム34を連結して苗の植付姿勢の前傾を小さくして斜め植えにし、苗の根から実る甘薯のそれぞれが充分な養分を得られるようにする。一方、加工等の甘薯を栽培するとき等、一個当たりの甘薯の大きさが小さくても多数個の甘薯を栽培したいときには、駆動軸35に駆動ア−ム34を連結して苗の植付姿勢の前傾を大きくして船底植えにし、苗の根が多数本伸長しやすくして甘薯の個数を増やすようにする。このように、苗植付け体6による苗の植付深さや植付姿勢等の植付方法を大きく変更することができる。尚、この植付軌跡Tの変更に拘らず、苗植付け体6の上昇時に押さえ具91が適正に突出作動する構成とすることが望ましい。
【0030】
苗搬送部5は、甘薯苗Nを蔓tが前後方向に向く姿勢で収容する苗収容部となる苗収容体26を苗搬送方向Cに複数備えるとともに、該苗収容体26を機体上部側で右方向に搬送する上部横搬送り部5aと、該上部横送り部5aにより搬送されてきた苗収容体26を機体下方に搬送する下降送り部5bと、該下降送り部5bにより搬送されてきた苗収容体26を機体上方に搬送し前記上部横送り部5aの搬送始端側に戻す上昇送り部5cとを備えており、苗収容体26を単一のループ状の搬送経路に沿って搬送するようになっている。また、上部横送り部5aは、左側の前輪8及び後輪7より左側にまで突出するように構成され、左端が機体の左側の最外端となっている。また、前記上部横送り部5aの後端は、左側の前輪8及び後輪7より後側の位置に配置されている。従って、作業者は、左側の後輪7及び上部横送り部5aの後側で該上部横送り部5aへ苗を供給する。前記搬送経路は側面視で上部横送り部5aが後側に位置するように傾斜しており、苗搬送部5の後側にいる作業者の近い位置に上部横送り部5aの苗収容体26が配置され、作業者が上部横送り部5aの苗収容体26への苗供給作業を容易に行えるようにしている。尚、苗植付け体6は、前記下降送り部5bにより苗搬送部5の搬送軌跡の最下位置の植付供給位置Aへ搬送された苗収容部26の苗を圃場に植付けるようになっている。尚、前記下降送り部5bには、苗が落下しないように苗収容部26内に苗を案内する苗落下防止板45をその上部で支持部材46から支持して設けている。この苗落下防止板45は植付供給位置の苗収容体26の下方まで延長されているが、植付供給位置Aより苗収容体26の搬送方向下手側の部分には苗落下防止板45を支持する部材を設けていないので、苗植付け体6での苗植付時に苗落下防止板45を支持する部材に苗Nが干渉して苗を傷めたり植付が不適正になるのを防止される。
【0031】
苗収容体26は、前後に長い樋状の形態で、上部横送り部5aで苗Nを載せる受け面となる受け板部47と、隣接する苗収容体26とを仕切る面となる側板部48とを備え、上部横送り部5aで上方に開放部を有する形態となっている。尚、苗収容体26は、樹脂で構成され、収容する苗を傷めないようにしている。尚、苗収容体26の受け板部47は、上部横送り部5aに位置するときに後側が下位になるように傾斜しており、苗搬送部5の後側にいる作業者が上部横送り部5aの苗収容体26への苗供給作業を容易に行えるようにしている。また、苗収容体26の前後方向の略中央には、左右の側板部48の上下方向の略中央で該両側板部48を繋ぐように左右方向の苗規制ロッド115を設けている。従って、作業者が、上部横送り部5aで、この苗規制ロッド115の上側に苗Nの蔓tを載せただけで苗Nの蔓tの曲がった側が下側となり、蔓tの曲がりと同じ側に曲がる蔓tの下端が下側に曲がった状態となり、後述する所望の状態で苗収容体26へ苗を供給することができる。
【0032】
また、苗収容体26は、前後にも開放された形状であるが、後端部には苗Nの蔓tの後端部を保持するクリップ49を備えている。このクリップ49は、苗収容体26の左右方向中央位置に設けられ、該苗収容体26と一体で受け板部47から上に突出する左右一対の挟持体50,52で構成されている。尚、前記左右一対の挟持体50,52は、弾性のあるゴムで構成され、挟持する苗Nの蔓tを傷めないようにしている。左右一対の挟持体50,52のうち、左側の挟持体50は、正面視又は背面視で内部に空間を有する中空状態になっており、上面50aが他方(右側)の挟持体52側にいくにつれて低くなる若干傾斜した平面状に構成されると共に、右側の挟持体52側の側面50bが鉛直方向に向く平面の上下中央に右側の挟持体52側と反対側(左側)に屈曲して右側の挟持体52との間に若干の空間を構成する苗保持部分50cを備えた構成となっている。前記右側の挟持体52は、屈曲する一枚の板状で構成され、上端部に下にいくにつれて左側の挟持体50側に近づくように傾斜する傾斜部分52aと該傾斜部分52aの下に続く鉛直方向に向く平面状の側面52bとを備えている。作業者が上部横送り部5aでクリップ49へ苗を供給するとき、左側の挟持体50の上面50aと右側の挟持体52の傾斜部分52aとで甘薯苗Nの蔓tを左側の挟持体50の側面50bと右側の挟持体52の側面52bとの間に
供給しやすくしている。そして、作業者が苗Nを下方に押し込むことにより、右側の挟持体52が左側の挟持体50と離れる側(右側)に撓み、苗Nの蔓tが左側の挟持体50の苗保持部分50cに供給されると苗が左右一対の挟持体50,52で挟持されて固定されたこととなる。尚、右側の挟持体52は、苗Nが前記苗保持部分50cに供給されたとき、この苗保持部分50cの左右一対の挟持体50,52の間隔より苗Nの蔓tの径が大きいため、弾性のあるゴムで構成される右側の挟持体52が左側の挟持体50側に付勢され蔓tに挟持力が作用する。
【0033】
尚、下降送り部5bでの苗の搬送時に、苗が苗落下防止板45に擦られて該苗Nを傷めるおそれがある。そこで、図8に示すように、苗収容体26の側板部48にゴム製の弾性板53を取り付けることにより、下降送り部5bで該弾性板53が苗落下防止板45に当接して折り曲げられ、弾性板53により苗収容体26の開放部を覆うことができ、苗が苗落下防止板45に接触するのを防止することができる。
【0034】
そして、この苗収容体26をチェン54に複数並べて取り付け、そのチェン54を、機体上部側の左右に各前後一対づつ設けたスプロケット55,56と、機体下部側の左右に各前後一対づつ設けたスプロケット57,58とに巻きかけている。機体上部側の左右のスプロケット55,56は、支持フレーム38に固着した支持部材46で支持した軸59,60に取り付けている。機体下部側の左右のスプロケット57,58は、支持フレーム38に固着した支持プレート61で支持した軸62,63に取り付けている。そして、上部右側のスプロケット56を駆動すると、苗収容体26が設定搬送方向Cに移動するよう苗搬送部5が駆動する構成となっている。そして、苗搬送部5の駆動部64は、揺動リンク37と一体に上下揺動する連動リンク65の先端部と連動ロッド66を介して連動連結している。また、苗植付け体6の苗植付け作用部6aが苗を挟持するときから下降するまでは苗収容体26が停止して、それ以外のときに苗収容体26が移動するよう、苗搬送部5が間欠駆動するように設けている。
【0035】
苗搬送部5の駆動部64の具体的な構造は、例えば、図4に示すようなものとしている。まず、支持部材46で支持した軸60を上部右側のスプロケット56を一体回転するよう取り付けている軸67の後部と軸継手を介して連結し、この軸67に一体回転するよう取り付けた突起68a付きの従動ディスク68を取付ける。そして、この従動ディスク68の後側に駆動アーム69を軸67に回転自在に取付け、この駆動アーム69の先端部に前記連動ロッド66の上端部を回動自在に取付ける。また、駆動アーム69には、従動ディスク68の突起68aに係合する爪70を取り付けていて、この爪70は、駆動アーム69が苗搬送部5の設定搬送方向Cに作動させるようにスプロケット56を駆動回転させる方向に回動するとき(図4では駆動アーム69が上動するとき)には、従動ディスク68の突起68aに係合固定されて従動ディスク68を一体回転させる。反対方向に回動するとき(図4では駆動アーム69が下動するとき)には、従動ディスク68の突起68aに係合しても逃げて従動ディスク68を一体回転させないというように、ラチェット機構を構成している。そして、従動ディスク68を時計回り及び反時計回りの回り止めとして従動ディスク68の突起68aに係合する二つの爪71を設けている。なお、従動ディスク68を一体的に回転するように駆動アーム69が回動すると、前記ラチェット機構を構成する駆動アーム69の爪70が従動ディスク68の突起68aに係合するのに先行して、駆動アーム69と一体に設けた回り止め解除カム72が、従動ディスク68の一体回動を阻止するように回り止め作用をする爪71の先端部を従動ディスク68の突起68aと係合しない位置に移動させるようになっている。そして、駆動アーム69がそのストローク上限位置まで回動して従動ディスク68が設定角度(図4では90度)回動されると、回り止め解除カム72が前記回り止め用の爪71から外れて、該回り止め用の爪71は再び、従動ディスク68の突起68aと係合して従動ディスク68の回転が固定される。
【0036】
よって、苗植付け体6の苗植付け挾持具31が苗を挟持して下降し土壌中に植付けるときには苗収容体26が停止しているので、苗が円滑に苗収容体26から取り出されて適確に苗を圃場に植付けることができる。このように、苗植付け体6又は該苗植付け体6に連結して動作する部材と前記苗搬送部5の駆動部64を連動連結した構成としているため、この苗移植機は、苗植付け体6と苗搬送部5の駆動タイミングを容易にとることができ、しかも苗搬送部5の駆動構成を簡潔なものにできる利点がある。
【0037】
尚、下降送り部5bから前記上昇送り部5cに移行する間に機体下部側で苗収容体26を左右水平状に搬送する下部横送り部5dを設け、該下部横送り部5dに植付供給位置Aを設けている。従って、下降送り部5bから上昇送り部5cに移行する間(図示例では、下部右側スプロケット58と下部左側スプロケット357とで搬送される区間)で、下部横送り部5dにより苗収容体26が機体下部側で左右水平状に搬送され、ここで苗収容体26に収容された苗Nを苗植付け体6が圃場に植付ける。よって、組付け時のずれ等によって苗植付け体6の苗Nへの植付け作用時における苗収容体26の位置がずれても、苗植付け体6は、移動経路中最下端に移動した状態で且つ同じ姿勢の状態にある苗収容体26の苗Nを植付けられることになり、苗植付け状態の変化を極力少なくできる。
【0038】
苗搬送部5の前側には、植付け伝動ケース32の第一ケース部32aから苗載台支持フレーム81を介して苗載台82を設けている。この苗載台82上に収容箱116等に収容した状態で甘薯苗Nを載置するようになっており、作業者は苗載台82上の苗を苗搬送部5の上部横送り部5aへ供給する。
【0039】
苗搬送部5の後側には、ミッションケース9内の伝動機構を切り替えて走行装置4の走行速度を有段変速操作できる変速レバー83をミッションケース9の位置から後側に延ばして設けている。この苗移植機1は、前部に機体を走行させる走行装置4と、所定の搬送経路で苗を搬送する苗搬送部5と該苗搬送部5によって搬送されてきた苗を圃場に植付け
る苗植付け体6と後部に操縦ハンドル2とを備えているが、走行装置4から前記苗搬送部5の上部横送り部5a、下降送り部5b及び上昇送り部5cとで囲まれる空間内を通過して苗搬送部5の後側に延びる操作レバ−である変速レバー83を設けた構成となっている。すなわち、変速レバー83は、苗搬送部5の所定のループ状の搬送経路内を通過している。
【0040】
苗植付け体6の後方には、左右一対の鎮圧輪84を設けている。この鎮圧輪84は、遊転輪であり、土壌面に接地して植え付けた苗の上方乃至左右側方の土壌を鎮圧するようになっており、支持フレーム38の後端部から鎮圧輪支持フレーム85を介して設けられている。従って、この左右一対の鎮圧輪84の接地により、植付け伝動ケース32の第三ケース部32cの入力軸33回りに回動する苗植付け体6及び苗搬送部5が支持され、土壌面Dの凹凸に追従して苗植付け体6及び苗搬送部5が揺動して土壌面Dに対して所定の高さに維持されるようになっている。尚、苗植付け体6及び苗搬送部5の自重が鎮圧輪84に作用するので、鎮圧輪84により充分な鎮圧作用を得ることができる。また、図1に示すように、苗植付け体6の植付軌跡Tの上方に鎮圧輪84が配置されており、鎮圧輪84と植付けた苗Nとの位置関係が近づくので密接となり、鎮圧輪84による鎮圧を適正に維持でき鎮圧効果を良好に得ることができる。
【0041】
以上により、この甘しょ苗移植機は、左右の前輪8及び後輪7により畝をまたいだ状態で走行装置4により機体は自走し、その自走する機体の苗搬送部5の上部横送り部5aに左側の前輪8及び後輪7が通る畝の谷部を歩行するべく左側の後輪7の後方にいる作業者から甘薯苗Nが供給される。苗搬送部5は供給された苗Nを搬送し、そして、苗搬送部5によって植付供給位置Aへ搬送されてきた苗Nを苗植付け体6が圃場に植付ける。苗搬送部5は、苗収容体26を苗搬送方向Cに複数備え、この苗収容体26に甘薯苗Nがその蔓tが前後方向に向く姿勢で収容される。上部横送り部5aにより機体上部側で左右一方向に搬送される苗収容体26に作業者が苗Nを供給するわけであるが、作業者は苗Nの蔓tの下端部をクリップ49に供給し苗を苗収容体26に固定する。苗が供給された苗収容体26は、上部横送り部5aに続いて下降送り部5bにより機体下方に搬送される。該下降送り部5bにより搬送されてきた苗収容体26は、上昇送り部5cにより機体上方に搬送されて前記上部横送り部5aの搬送始端側に戻る。苗植付け体6は、その苗植付け作用部6aが駆動部によって昇降動し、下降送り部5bにより植付供給位置Aへ搬送されてきた苗収容体26に収容された苗Nの後端部に該苗収容体26の後側で作用して苗を圃場に植付ける。このとき、苗Nが苗収容体26のクリップ49に挟持され固定されているが、このクリップ49の挟持力より苗植付け体6の苗植付け挾持具31の挟持力の方が大きいため、苗植付け体6が植付軌跡Tに沿って苗を後側に移動させることにより苗Nの蔓tがク
リップ49から外れるようになっている。
【0042】
この甘薯苗を移植するとき、作業者が苗の蔓tの下端部を苗搬送部5の上部横送り部5aにある苗収容体26のクリップ49へ固定させて供給するが、曲がっている蔓tの下端が下側へ向く状態で供給すると、その苗が苗搬送部5により搬送されて植付供給位置Aで蔓tの下端が上側へ向く状態となり苗の葉が蔓に対して上側に向く。そして、苗植付け体6によりその姿勢のままで苗を土壌内に移植する。従って、苗植付け体6の苗の土壌内への搬送行程が単純であるため蔓が折れ曲がっりねじれたりしにくく移植精度が向上すると共に、傾斜させた蔓に対して葉が上側に集中的に向けられた状態で甘薯苗を移植できる。また、上下に延びる一対の苗植付け挟持具31が植付供給位置Aで前側に傾斜した状態で上側へ曲がった蔓tの下端を挟持するので、苗植付け挟持具31の向きを曲がった蔓tの下端の向きに対して垂直方向に近い状態にすることができ、植付供給位置Aで苗の位置が多少ずれても苗の挟持の確実化、安定化を図ることができ、適正な姿勢で苗を植え付けることができ、安定した苗の移植を行える。
【0043】
よって、傾斜させた蔓tに対して葉が上側に集中的に向けられた状態で甘薯苗Nを移植できるので、移植された苗の葉93は土壌の外に突出して太陽光等の光を受光することができ、根の伸長も旺盛になり良好な成育が行え甘薯の栽培を旺盛にできる。また、蔓tの特に曲がりやすい蔓の下端の向きにより蔓の軸心に対する葉93の向きを判別して移植するので、この判別が容易となり、クリップ49へ苗を供給する作業を容易に行え、作業者の苗収容体26への苗供給作業の作業能率が向上し、移植作業能率を向上させるべく苗搬送部5を高速で作動させることができ、苗搬送部5の苗搬送作業の作業能率の向上を図ることができる。
【0044】
尚、上述の甘しょ苗移植機はハンドルフレーム23の左右一方側(左側)に苗搬送部5を配置しているため、作業者が苗供給しやすいように苗搬送部5の上部横送り部5aをある程度長くすると、苗搬送部5が機体の左右一方側(左側)に突出して機体の左右幅が広くなり、ひいては機体全体の左右重量バランスを得るためには機体全体の重量を低減するにも限界がある。そこで、苗搬送部5のループ状の搬送経路内にハンドルフレーム23を貫通させ、苗搬送部5を機体の左右中央寄りに配置することにより、機体の左右幅を縮小してコンパクトに構成でき、ひいては機体全体の重量を更に低減させることができて燃費向上が図れる。
【0045】
以上は歩行型の苗移植機について詳述したが、作業者が座る座席を備える乗用型の苗移植機であってもよい。図10に示す乗用型の苗移植機は、上述の歩行型の苗移植機と同様に前輪8及び後輪7を備える走行装置4や歩行しながら把持する操縦ハンドル2を備えるものであるが、機体の左右両側に各々機体左右中央側に向く座席120を設け、該座席120に座る作業者が座席120の内側にある苗供給装置121に一株づつ苗を供給し、苗供給装置121から苗植付装置122へ苗が落下供給され、苗植付装置122で圃場に苗を植え付ける構成となっている。そして、苗植付装置122の近くの位置には、ハンドルフレーム23から支持される植付状態撮影カメラ123を設けている。この植付状態撮影カメラ123により苗植付装置122で植え付けた苗の植付状態を撮影し、撮影画像をケーブル124を介して座席120近くの画像出力装置125で出力し、座席120にいる作業者が苗供給作業を行いながら苗の植付状態(植付姿勢、植付深さ等)を容易に確認することができる。尚、前記植付状態撮影カメラ123及び画像出力装置125は、撮影機能付きあるいは画像出力機能付きの市販の携帯電話を利用すればよく、撮影用の携帯電話の撮影映像を別の画像出力用の携帯電話で出力するために予め各々の携帯電話にソフトウエアをインストールしておけばよい。尚、左右の座席120に各々作業者が着座しての二人作業のときは、二人の作業者に対応して画像出力装置125を2個設けてもよい。また、植付状態撮影カメラ123により、苗の植付に欠株が生じたことが判断できるので、欠株が生じた場合には機体の植付走行を自動的に停止させるべく自動的に主クラッチを断つ制御を行える。また、植付状態撮影カメラ123により、苗の植付位置が圃場において左右方向に位置ずれしたことが判断できるので、苗の植付位置が左右にずれた場合には左右の後輪7の駆動回転を異ならせたり前輪8を操舵可能に構成して該前輪8を操舵したりして自動的に機体の進行方向を修正する制御を行える。
【0046】
ところで、苗移植機で移植される苗は、栽培施設で栽培される。この栽培施設は各種の形態があり様々であるが、機能の高い栽培施設では、温度管理、湿度管理が可能なことはもとより、各種の肥料等を混合した養液を植物へ自動的に供給する養液供給設備を備えたものがある。図11は、複数の栽培温室(4室)へ養液を供給できる養液供給設備の一例を示すものである。前記複数の栽培温室130を管理する共通の管理室131には養液を作成するための養液作成装置132を備えている。この養液作成装置132は、2種の肥料タンク133とPH調整用の酸タンク134とを備え、これらのタンク133,134内の液剤が各々の混合用吐出ポンプ135,136の駆動により混合タンク137へ供給されて混合される。前記混合タンク137には養液の肥料濃度(EC値)を計測する肥料濃度センサ138を設けており、この肥料濃度センサ138の検出値が所望となるように前記混合用吐出ポンプ135,136を駆動制御する構成となっている。尚、混合タンク137へは別途設けた供給回路139により原水も供給できる。そして、混合タンク137で所望の肥料濃度となった養液は、温室配送用ポンプ140及び各温室への供給経路に設けた各々のバルブ141を介して各栽培温室へ配送される構成となっている。
【0047】
各々の栽培温室130には、養液作成装置132から供給された養液を一旦貯留する貯留タンク142を備え、該貯留タンク142に設けた肥料濃度センサ143で肥料濃度が確認され、栽培管理プログラムに応じて栽培床供給用ポンプ144を介して温室130内の各栽培床へ供給される。栽培床へ供給された後の排液は、各栽培床からまとめて回収され、回収用ポンプ145を介して管理室131に設けた排液再利用装置146へ送られる。
【0048】
各栽培温室130から回収された排液は、排液再利用装置146の殺菌前タンク147へまとめて回収され、殺菌前タンク147から加熱式の殺菌装置148へ供給されて殺菌処理され、殺菌後タンク149ヘ供給される。尚、殺菌前タンク147及び殺菌後タンク149には、各々肥料濃度センサ150,151を設けている。そして、殺菌後タンク149内の排液は、前記した温室配送用ポンプ140により再度栽培温室130へ供給して再利用できる構成となっている。尚、排液再利用装置146には、排液を施設外部へ排出するための排出バルブ152を設けている。この排液再利用装置146により、回収された排液を再利用できるので、排液の廃棄量を極力抑えることができ、養液のランニングコストの低減が図れると共に、河川の汚染等の環境汚染を防ぐことができる。特に、イチゴ栽培においては、排液量が給液量の50%以上となって多いため、養液のランニングコストの低減効果が大きい。
【0049】
従って、ある栽培温室130での養液の要求があると、養液作成装置132で養液を作成して対象の栽培温室の貯留タンク142へ送るようになっている。よって、複数の栽培温室において共通の養液作成装置132により養液を作成することができるので、施設全体の省スペース化及びコストダウンが図れる。従来は、各栽培温室に対応して養液作成装置を設けていたので、その分余分なスペースを要し、また設備コストも嵩んでいた。同様に、排液再利用装置146も複数の栽培温室130において共通のものとしているため、更なる施設全体の省スペース化及びコストダウンが図れる。
【0050】
また、この養液供給設備には、1度再利用された排液を2度利用しないように回収用ポンプ145及び排出バルブ152を制御する制御装置を設けている。これにより、同じ排液が複数回使用されるようなことがなく、栽培温室130へ供給される養液の肥料濃度が所望から大きく外れるようなことを防止し、良好に栽培できるようにしている。従来は、同じ排液の供給回数を全く管理しておらず、養液の肥料濃度が不適正となって栽培に悪影響を与えたり、また排液を新たな養液と混合して肥料濃度を調整しなければならず、排液の肥料濃度がばらつくために所望の肥料濃度に調整することが困難であった。また、イチゴ栽培においては、排液の肥料濃度は所望の濃度と同等(EC値:0.6乃至0.8mS/cm)になり、排液を新たな養液と混合して肥料濃度を調整することが困難であった。
また、この養液供給設備は、殺菌前タンク147の肥料濃度センサ150値に基づいて、排液の肥料濃度が極めて低い場合は殺菌前タンク147内の排液を廃棄して再利用しないように制御している。これにより、排液を循環して供給する循環方式と新規に作成した養液のみを供給するかけ流し方式との兼用ができ、特に高糖度トマトの栽培等で肥料濃度の高い養液を要する場合や排液量が少ない場合には有効である。尚、上記の殺菌前タンク147内の排液の廃棄を、手動の切替バルブ等により任意に行えるようにしてもよい。
【0051】
尚、栽培温室130における養液供給時刻を固定して定期的に養液を供給する栽培管理プログラムが設定されている場合、養液供給の所定回数おきに排液を供給して再利用するように制御すれば、所望の肥料濃度から外れた養液(排液)が集中的に栽培床へ供給されないようにでき、栽培の安定化が図れる。
【0052】
また、栽培植物に病気が発生した場合、その病気が発生した栽培温室130からの排液は、再利用せずに排出バルブ152を介して廃棄するようにしている。これにより、他の栽培温室130への病気の蔓延を防ぐことができる。
【0053】
尚、排液を養液として再度供給するばかりでなく、細霧装置又は防除ロボット等を使用して排液を植物の葉面散布に使用してもよい。これにより、排液の有効利用が図れ、ひいては排液の廃棄量を極力抑えることができて環境汚染を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】甘薯苗移植機の側面図
【図2】甘薯苗移植機の平面図
【図3】苗搬送部と苗植付け体とを示す一部省略した背面図
【図4】苗搬送部の駆動部を示す背面図
【図5】苗植付け体を示す斜視図
【図6】(a)駆動軸に駆動アームを取り付けた状態の植付軌跡Tを示す側面図、(b)第二駆動軸 に駆動アームを取り付けた状態の植付軌跡Tを示す側面図
【図7】クリップを示す斜視図
【図8】他の苗収容体を示す背面図
【図9】回転押さえ体を示す図((a)側面図、(b)正面図)
【図10】(a)乗用型の苗移植機を示す側面図、(b)植付状態撮影カメラ及び画像出力装置の一例を示す図
【図11】養液供給設備を示す図
【符号の説明】
【0055】
1:甘薯苗移植機、4:走行装置、31:苗植付け挟持具、91:押さえ具、91c:押さえ面、N:甘薯苗、t:蔓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(4)により機体を前進させながら、挟持した苗を前後方向へ向けた姿勢で土壌内へ突入させ、土壌内において前後方向へ移動した後に苗の挟持を解除し、挟持を解除した状態で上側へ移動して土壌内から退出する退出作動がなされる苗植付け挟持具(31)により、苗を前後方向へ向けた姿勢で植え付ける構成の苗移植機において、苗植付け挟持具(31)の退出作動時に、苗植付け挟持具(31)が土壌内へ突入する突入位置と該苗植付け挟持具(31)が土壌内で苗の挟持を解除する挟持解除位置との間の土壌を上から押さえる押さえ具(91)を設け、該押さえ具(91)の押さえ面(91c)を機体の前進に伴って後側へ移動させる移動機構を設けた苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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