苗移植機
【課題】
苗植付装置を上昇させて苗植付装置を非作動にした際、苗植付装置への動力伝動を行う一方向クラッチのクラッチ「切」状態を確実に保持して、苗植付装置への動力伝動を確実に遮断する。
【解決手段】
走行車体2の後部に苗植付部52を昇降可能に装着し、苗植付部52を昇降操作する植付昇降操作具65を設けた苗移植機において、植付昇降操作具65の操作に連動して苗植付部52への駆動の入切を切り替えるクラッチ機構66を設け、植付昇降操作具65を上昇操作するとクラッチ機構66の切状態を保持する、爪クラッチ83と爪クラッチ83に接触してクラッチ機構66の入切を切り替えるクラッチピン75と植付昇降操作具65の上昇操作に連動してクラッチピン75を押圧する位置に移動する回動自在な押圧アーム72とからなる保持機構81を設け構成した。
苗植付装置を上昇させて苗植付装置を非作動にした際、苗植付装置への動力伝動を行う一方向クラッチのクラッチ「切」状態を確実に保持して、苗植付装置への動力伝動を確実に遮断する。
【解決手段】
走行車体2の後部に苗植付部52を昇降可能に装着し、苗植付部52を昇降操作する植付昇降操作具65を設けた苗移植機において、植付昇降操作具65の操作に連動して苗植付部52への駆動の入切を切り替えるクラッチ機構66を設け、植付昇降操作具65を上昇操作するとクラッチ機構66の切状態を保持する、爪クラッチ83と爪クラッチ83に接触してクラッチ機構66の入切を切り替えるクラッチピン75と植付昇降操作具65の上昇操作に連動してクラッチピン75を押圧する位置に移動する回動自在な押圧アーム72とからなる保持機構81を設け構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行車体の後部に苗植付部を昇降可能に装着し、苗植付部を非作業状態にするとエンジンフードが確実に切状態となる苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗移植機には、特許文献1に示すように、エンジンの回転動力を変速するミッションケースから苗植付部に至る動力伝動部に爪クラッチからなるエンジンフードを設け、車体を後進させるためにミッションケース内で回転動力を逆転させた場合、一方向クラッチで苗植付装置側への動力伝動を断って苗植付部の駆動を停止させる構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−143340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の如く、車体を後進する際や苗植付部を上昇させた際には、エンジンフードを切状態として苗植付部への駆動力を遮断し、苗植付部が逆転駆動されない構成としているが、圃場の凹凸などで車体が傾いていると、逆回転時であってもエンジンフードが一時的にクラッチ入り状態になり、苗植付部に駆動力が伝動されることがある。
【0005】
この苗植付部が逆転駆動されると、苗植付部に過負荷がかかり、構成部品の劣化が早まってしまうという問題がある。
【0006】
また、過付加がかかり続けた場合、苗植付部の植付機構が破損してしまい、苗の植付作業が中断されてしまう問題がある。
【0007】
本発明は、苗植付装置を上昇させて苗植付装置を非作動にした際に、エンジンフードのクラッチ切状態を確実に保持し、苗植付装置への動力伝動が行われないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0009】
請求項1記載の発明は、走行車体(2)の後部に苗植付部(52)を昇降可能に装着し、該苗植付部(52)を昇降操作する植付昇降操作具(65)を設けた苗移植機において、該植付昇降操作具(65)の操作に連動して苗植付部(52)への駆動の入切を切り替えるクラッチ機構(66)を設け、該植付昇降操作具(65)を上昇操作するとクラッチ機構(66)の切状態を保持する保持機構(81)を設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記保持機構(81)を、前記クラッチ機構(66)を構成する爪クラッチ(83)と、該爪クラッチ(83)に接触してクラッチ機構(66)の入切を切り替えるクラッチピン(75)と、前記植付昇降操作具(65)の上昇操作に連動してクラッチピン(75)を押圧する位置に移動する回動自在な押圧アーム(72)とから構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記押圧アーム(72)の前側下部にクラッチピン(75)の上端部(75a)に乗り上げてクラッチピン(75)の上方への移動を規制する後下がり傾斜姿勢の押圧傾斜面(72b)を形成し、該押圧傾斜面(72b)の後部にクラッチピン(75)の上端部(75a)を上方から押圧してクラッチ機構(66)の切状態を保持する押圧端面(72a)を機体前後方向に略直線状に形成したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、植付昇降操作具(65)を上昇操作して苗植付部(52)を上昇させると、連動してクラッチ機構(66)を切状態にして苗植付部(52)への駆動力を遮断するので、作業者が苗植付部(52)を上昇させる前にクラッチ機構(66)の切操作を行う必要が無く、作業能率が向上する。
【0013】
また、植付昇降操作具(65)を上昇操作すると保持機構(81)がクラッチ機構(66)の切状態を維持する構成としたことにより、走行車体(2)を後進させた際に苗植付部(52)に逆転駆動力がかかることを防止できるので、苗植付部(52)の構成部材に過負荷がかかることが防止され、苗植付部(52)の耐久性が向上すると共に、破損が防止される。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、クラッチ機構(66)を構成する爪クラッチ(83)にクラッチピン(75)を接触させるとクラッチ機構(66)が切状態となる構成としたことにより、苗植付部(52)に逆転駆動力がかかっているにもかかわらずクラッチ機構(66)が切状態にならなくても、クラッチピン(75)が爪クラッチ(83)に接触する位置でクラッチ機構(66)を切状態とすることができるので、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【0015】
また、植付昇降操作具(65)の上昇操作に連動してクラッチピン(75)を押圧する位置に回動自在な押圧アーム(72)が移動することにより、押圧アーム(72)に押圧されたクラッチピン(75)が爪クラッチ(83)に接触する際に上方に退避することを防止できるので、クラッチ機構(66)が確実に切状態となり、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、押圧アーム(72)の前側下部に後下がり傾斜姿勢の押圧傾斜面(72b)を形成したことにより、押圧アーム(72)はこの押圧傾斜面(72b)に沿ってクラッチピン(75)の上端面(75a)に乗り上げながら移動するため、作業者は植付昇降操作具(65)を軽い力で円滑に上昇操作することができるので、作業者の労力が軽減される。
【0017】
また、植付昇降操作具(65)を上昇操作し始めると押圧傾斜面(72a)がクラッチピン(75)の上方への移動を規制し始めることにより、クラッチピン(75)が爪クラッチ(83)に接触した際に上方に退避することを防止できるので、クラッチ機構(66)が早期に切状態となり、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【0018】
そして、押圧傾斜面(72b)の後部にクラッチ機構(66)の切状態を保持する押圧端面(72a)を機体前後方向に略直線状に形成したことにより、押圧端面(72a)とクラッチピン(75)の上端面(75a)が略平行姿勢で接触した状態でクラッチピン(75)が押圧されるので、クラッチピン(75)は接触の際に上方に退避することなく確実に爪クラッチ(83)に接触するので、確実にクラッチ機構(66)を切状態にすることができ、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】苗移植機の平面図
【図3】エンジンフード機構の要部側面図
【図4】エンジンフード機構の要部背面図
【図5】エンジンフード機構の要部拡大図
【図6】防波装置の分解斜視図
【図7】水車マーカと分流体を示す要部平面図
【図8】水車マーカを動作させるシリンダの構造を示す要部側面図
【図9】エンジンのフライホイール常時清掃構造を示す要部側面図
【図10】エンジンフードの構成を示す要部側面図
【図11】水車マーカの動作を示すブロック図
【図12】旋回時の水車マーカの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の実施の一形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
【0021】
図1及び図2は、本発明を用いた一実施例である施肥装置5を装着した施肥装置付き乗用型田植機1の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0022】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
【0023】
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
【0024】
なお、左右後輪ギヤケース18,18には、ミッションケース12の後壁から突出して左右後輪ギヤケース18,18に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
【0025】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(油圧式無段変速装置)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。なお、後述する施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
【0026】
また、ミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって苗植付装置52へ伝動される。植付伝動軸26の回転は、HST23から後述する植付クラッチ66を介して正回転が苗植付装置52側へ伝動される。
【0027】
植付昇降レバー65で苗植付装置52を植付け作業位置まで昇降リンク装置3で下げている時は、植付クラッチ66が入りで植付伝動軸26が正転して苗植付装置52が駆動している状態となり、植付昇降レバー65で苗植付装置52を非植付け作業状態まで昇降リンク装置3で上げた時は、後述する保持機構81で植付クラッチ66が切り状態を保持されて整地ロータ27が停止している状態となる。
【0028】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するステアリングハンドル34が設けられている。このフロントカバー32内には、リザーバタンク16を設け、前記HST23とパイプ19で連結して高い位置からオイルをHST23に供給するようにしている。
【0029】
なお、図10で示すように、エンジン20の前後及び左右側面、並びに上面の一部を覆うエンジンフード100を着脱自在且つ機体前後方向に回動自在に設け、該エンジンカバー100のエンジン20を覆わない部分、即ち開口部にエンジン20の上部を覆う前後幅の燃料タンク101を着脱自在に取り付ける。そして、該燃料タンク101の燃料投入口(図示せず)に干渉しない位置に取付支持台102を前後方向に回動自在に設け、該取付支持台102に座席31を配置する構成としてもよい。
【0030】
エンジンフード100は、フロントカバー32の後端部に支持されるまで回動可能な長さとする。
【0031】
上記構成によれば、エンジンフード100を機体前後方向で且つフロントカバー32の後端部に接触して支持されるまで開放可能に構成したことにより、燃料タンク101やエンジン20をメンテナンスする際の視界や作業スペースを十分に確保することができるので、メンテナンス性が向上する。
【0032】
従来構成では、エンジンフードを機体前側に回動させるとシートがハンドルに接触する位置で止まってしまい、エンジン及び燃料タンクの周囲に十分な開放空間を用意できず、作業者は狭い空間で作業をせねばならず、メンテナンス性が低く、しかも作業者に余計な労力を費やさせるという問題があった。
【0033】
なお、エンジン20のメンテナンスや周囲の掃除をする際には、燃料タンク101を外して作業を行う。
【0034】
また、従来構成に比べて、エンジンフード100の前後長さ及び上下長さを短く構成できるので、エンジンフード100をコンパクトにでき、資源の節約を図ることができる。
【0035】
また、ステアリングハンドル34の周りには、HST23を操作して走行速及び前後進を変速させるHSTレバー64、植付部の伝動入・切及び苗植付装置52を昇降させる植付昇降レバー65、苗植付装置52の作業状態と非作業状態とを切り替えるフィンガアップレバー、植付部昇降制御の感度を調節する副感度調節レバー、苗植付装置52の下降を規制する下降ロックレバー、対地昇降制御の感度を調節する感度調節ダイヤル等を設けている。
【0036】
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35を設けており、作業者が走行車体2上を移動することが可能な構成となっている。
【0037】
これにより、作業者は後述する走行車体2の前側に左右一対設ける予備苗載台38,38から苗を取り出して苗載台51に載置する作業や、走行車体2からの乗り降りを容易に行うことができる。
【0038】
該フロアステップ35の左右前部に複数の貫通孔35a…を形成したことにより、座席31に着座して走行車体2を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通すことができるので、作業者は直進しているか、旋回角度が合っているか等を目視で把握しながら操縦することができ、操縦が容易となると共に、進行方向や旋回角度が適切なものとなり、作業能率及び苗の植付精度が向上する。
【0039】
また、フロアステップ35上を歩く作業者の靴に付着した泥がこの貫通孔35a…から圃場に落下するので、圃場外の道路や移動に用いる軽トラック等に泥を運んでしまうことが防止され、泥を除去する清掃作業が省略される。
【0040】
前記フロアステップ35の後部は、リヤステップを兼ねる後輪フェンダ36となっている。また、フロアステップ35の下側で且つ左右の前輪10,10の外周面の上方に前輪フェンダ47,47を取り付けている。
【0041】
該左右の前輪フェンダ47,47を設けたことにより、左右の前輪10,10が走行時や旋回時に上方に巻き上げる泥が走行車体2、特に機体前側に配置したスプール等の油圧機器(図示省略)に付着することを防止でき、泥の付着による作動不良が防止され、作業能率が向上する。
【0042】
前記走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に配置する。
【0043】
これにより、作業者は苗載台51に載置した苗が全て圃場に植えられても、走行車体2のフロアステップ35上を移動して左右の予備苗載台38,38から苗を取り、苗載台51に苗をセットして植付作業を再開することができるので、苗の補給のたびに圃場端まで移動する必要や機体から作業者が乗り降りする必要が無くなり、作業能率が大幅に向上する。
【0044】
また、左右の予備苗載台38,38を回動させて機体の左右幅の内側に収められることにより、田植機を軽トラック等の輸送手段搭載する時や、倉庫等に格納する際に必要なスペースが小さくなり、収納性が向上する。
【0045】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。該上リンク40と左右の下リンク41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンクフレーム43が連結されている。そして、縦リンクフレーム43の下端部に苗植付装置52に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付装置52がローリング自在に連結されている。苗植付装置52のフレーム94に囲まれた位置にセンターフロート55の昇降を感知する感知部材が設けられている。
【0046】
メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付装置52がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0047】
苗植付装置52は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a…に供給すると苗送りベルト51b…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ63L,63R等を備えている。
【0048】
該左右の線引きマーカ63L,63Rは左右どちらか一側の線引きマーカ63Lが圃場面に設置して直進走行の目安となる線を引いている間、反対側の線引きマーカ63Rは圃場面よりも上方に上昇する構成であり、左右他側の線引きマーカ63Rを圃場面に降ろすと反対側の線引きマーカ63Lが圃場面よりも上方に上昇する構成であるので、進行方向にかかわらず次の条の植付作業を行う際、直進性を確保することができ、苗の植付制度が向上する。
【0049】
そして、図8に示すように、前記昇降油圧シリンダ46の後部左右に支持プレート106,106を取り付け、該左右の支持プレート106,106に往復方向に動作可能なマーカソレノイド108を備えるソレノイドボックス107をボルト等の固定部材109…を介して取り付け、該ソレノイドボックス107に左右の水車マーカ63L,63Rの張り出し状態と収納状態とを切り換える左右のワイヤー110,110を設ける。さらに、該左右のワイヤー110,110の端部を左右の水車マーカ63L,63Rに巻回あるいは引っ掛けて接続することにより、水車マーカ63L,63Rの切替機構111が構成される。
【0050】
上記構成により、水車マーカ63L,63Rが畦などに引っ掛かって過負荷がかかり、ソレノイドボックス107が歪む等の破損を被っても、ボルト等の固定部材109…を外すことによってソレノイドボックス107を簡単に取り外すことができるので、従来のように昇降油圧シリンダ46ごと交換する必要が無く、ソレノイドボックス107だけを交換すればよいので、修理にかかるコストや作業工数が低減される。
【0051】
従来は油圧昇降シリンダ46の後側下部にソレノイドボックス107を溶着していたため、ソレノイドボックス107が破損すると昇降油圧シリンダ46まで全て交換せざるを得ないという問題があった。
【0052】
なお、図11に示すように、前記ハンドル34にポテンショメータ等の角度検出手段112を設け、該角度検出手段112が一定以上のハンドル34の切角度を検出すると旋回動作が行なわれたと判断して信号を制御装置113に発信し、該制御装置113がマーカソレノイド108右方又は左方に動作させて左右の線引きマーカ63L,63Rの上昇及び下降させる構成とすると、作業者が圃場端での旋回の度に線引きマーカ63L,63Rを操作する必要が無く、作業能率が向上する。
【0053】
図12のフローチャートのS1で示すように、角度検出手段112が検出したハンドル34の切角度が一定値以下であれば、旋回動作のためにハンドル34を操作したとは認識せず直進走行を継続し、左右方向のどちらかで一定値以上の切角度が検出されると、旋回動作に移行したと判断してマーカソレノイド108を中立位置に戻し、左右の水車マーカ63L,63Rを共に上昇させて左右方向の判定S2に移行する。
【0054】
そして、ハンドル34の切角度が設定値(0度±5度程度)に戻ると、旋回前にハンドル34が右方向に切られていればマーカソレノイド108を左方向に移動させて左水車マーカ63Lを下降させ、旋回前にハンドル34が左方向に切られていればマーカソレノイド108を右方向に移動させて右水車マーカ63Rを下降させる。
【0055】
これにより、旋回動作を終了して苗の植付作業を再開すると同時に、次の植付作業を行う条に水車マーカ63Lまたは63Rで直進の目印となる直線溝を描くことができるので、植付作業を真っ直ぐに行うことができ、作業能率や植付制度が向上する。
【0056】
圃場に描いた直線溝に走行車体2の前側で且つ機体左右方向の略中央位置に設けるセンターマーカ99を合わせることにより、作業者の目視で略直線状に走行することができる。
【0057】
苗植付装置52の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられ、該センターフロート55と左右のサイドフロート56,56の前に圃場の乱れた泥土面を整地して均す整地ロータ27が取り付けられている。
【0058】
該センターフロート55と左右のサイドフロート56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、整地ロータ27で圃場面を均し、各フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が前記感知部材に設ける迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じて前記昇降油油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付装置52を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0059】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を操出装置57の繰出部61…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド62a…まで導き、施肥ガイド62a…の前側に設けた作溝体62b…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータで駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62…に吹き込まれ、施肥ホース62…内の肥料を風圧で施肥ガイド62aへ強制的に搬送するようになっている。このブロア58の空気吸引口を機体内側のエンジン20に向けて開口し、エンジン20の排気ガスを吸引するようにしている。
【0060】
操出装置57は、横長の機枠内に外周に凹溝を形成した操出軸を横架した従来の構成と同じであって、機枠の後側を構成する後壁板54が下端の枢支軸53で枢支され、後壁板54の上側を取り外し後下方へ倒して内部に残留する肥料を転げ出すようにしている。
【0061】
また、エンジン20を構成するフライホイール115の外周縁部に設ける歯部115a…に接触し、該歯部115a…の間に蓄積した砂等の異物を取り除くスクレーパ116を設け、該スクレーパ116をフライホイール115を始動させるスタータギア117と干渉しない位置に取り付ける。
【0062】
なお、スクレーパ116はゴム等の弾性体で構成すると、フライホイール115や歯部115a…が摩擦で傷付くことが防止される。
【0063】
上記構成により、フライホイール115の歯部115a…に砂等の異物が挟まったままエンジン20を始動してしまい、始動時にスタータギア117に過負荷がかかってスタータギア117が破損することを防止できるので、エンジン20が始動しなくなることが防止され、確実に作業を行え、苗の植え付けに適切な時期を逃すことが無くなり、収穫量が安定、もしくは増加する。
【0064】
また、畦クラッチ部に過負荷が加わると駆動力を逃がすトルク調整の安全クラッチを設ける構成も良い。
【0065】
図3と図4に、植付昇降レバー65と植付クラッチ66の保持機構81を示している。
【0066】
本発明の植付昇降操作具である植付昇降レバー65の基部を第一支持軸67に固着し、この第一支持軸67に前下方に向けて植付カム68を固着して、植付昇降レバー65の前後方向への回動で植付カム68が前後方向へ揺動する。
【0067】
該第一支持軸67の下方に設ける第二支持軸69には、植付カム68に向けてローラ70を軸支したローラアーム71と下方へ向けた押圧アーム72を固着し、この押圧アーム72を第一引張バネ73で機体前側方向に張力をかけて付勢している。また、該ローラアーム71の位置決めローラ70は、前記植付カム68に形成する複数の凹部74の一つに係合している。従って、植付カム68が前後に揺動すると、該位置決めローラ70と凹部74との係合位置が変化してローラアーム71が回転し、前記第二支持軸69が回転して押圧アーム72を前後に回動させる。
【0068】
そして、該押圧アーム72の下方に設けるエンジンフード66は、図5に示す如く、植付伝動軸26に固着したクラッチギヤ82に爪クラッチ83を張圧スプリング84で圧接して駆動力を伝動する構成としている。
【0069】
該エンジンフード66には、前記昇降操作レバー65を上昇方向に移動させると回動する押圧アーム72が上端面75aに接触するクラッチピン75を設け、該クラッチピン75の下端部75bがクラッチギヤ82のカム面83aに入り込むと爪クラッチ83がクラッチギヤ82から離間して駆動力が断たれる状態、即ちエンジンフード66が「切」状態となる構成としている。
【0070】
逆に、前記昇降操作レバー65を下降方向に移動させると押圧アーム72がクラッチピン75から退避し該クラッチピン75が上方へ移動し、エンジンフード66へ駆動力が伝達される「入」状態となる構成である。
【0071】
さらに、前記押圧アーム72の機体前側下部に機体前側から後側に向かって後退する押圧傾斜面72bを形成すると、昇降操作レバー65を上昇方向に操作して押圧アーム72がクラッチピン75の上方に移動する際、該押圧傾斜面72bがクラッチピン75の上端面75aに容易に乗り上げることができるので、作業者は昇降操作レバー65を軽い力で容易に操作することができるので、作業者の労力が軽減される。
【0072】
加えて、クラッチピン75がクラッチギア82及び爪クラッチ83に接触した衝撃で上方に移動しようとしても、押圧傾斜面72bがクラッチピン75の上方移動を規制するので、クラッチピン75がクラッチギア82に接触するとエンジンフード66が確実に外れるので、逆転駆動力がかかってエンジンフード66の構成部材に負荷がかかって傷むことや、エンジンフード66が壊れてしまうことが防止され、機体の耐久性が向上すると共に、植付作業が途中で中断されることがなく、作業能率が向上する。
【0073】
また、押圧アーム72の押圧傾斜面72bの機体後端部から機体前後方向に略直線状に押圧端面72aを形成することにより、昇降操作レバー65を上昇方向に大幅、あるいは最大限に移動させた際に押圧端面72aとクラッチピン75の上端面75aとが密接に接触するので、クラッチピン75が押圧アーム72に上方から押圧されてクラッチギヤ82や爪クラッチ83の回転力で上方に退避することが防止され、クラッチピン75の下端部75bがクラッチギア82や爪クラッチ83に強固に接触して確実にエンジンフード66を「切」状態にすることができるので、逆転駆動力がかかってエンジンフード66の構成部材に負荷がかかって傷むことや、エンジンフード66が壊れてしまうことが防止され、機体の耐久性が向上すると共に、植付作業が途中で中断されることがなく、作業能率が向上する。
【0074】
そして、前記クラッチピン75の上端部には第三支持軸79に枢支したピンアーム78を係合し、該ピンアーム78を第二引張バネ80と作動アーム77でクラッチピン75を上方に向かって付勢させる。
【0075】
これにより、クラッチピン75が押圧アーム72上方から押圧されない昇降操作レバー65の下降操作状態(植付作業中で且つ前進中)に、クラッチピン75がクラッチギヤ82や爪クラッチ83に接触してエンジンフード66を「切」状態にしてしまうことが防止できるので、植付作業中に苗の植付が停止してしまうことが無く、植え付け損ないの生じた部分に作業者が手作業で苗を植える作業が必要なく、作業者の労力が軽減される。
【0076】
そして、図6は、苗植付装置52の左右側部に設けるスタンドを示すものであり、植付ロータリケースから左右に張り出すガードステー85の先端取付部86にガードアーム88の基部を回動可能に嵌合している。該ガードアーム88がガードステー85の先端取付部86に嵌合して係止板89とばね90と座金91と割ピン92で止められている。
【0077】
また、前記ガードアーム88には、防波板93が固着されている。係止板89には三個所の係合凹部89aが形成され、先端取付部86のピン87と適宜の係合凹部89aを係合させてガードアーム88を下方に向けたスタンド姿勢と側方へ張り出したガード姿勢と両姿勢の中間となる作業姿勢とに固定することができるので、苗植付装置52を地面に降ろして立てた状態でメンテナンス等を行えるので作業能率がよく、また作業中に苗植付装置52が自重で下降してくることがなく、何度も苗植付装置52を持ち上げる作業が必要なくなり、作業者の労力が軽減される。
【0078】
また、作業姿勢にした場合は、左右の防波板93,93が圃場の水面に発生する波を苗植付装置52側に移動することを防止するため、圃場に植え付けた苗が波で流されてしまい、空間となってしまった部分に作業者が苗を植え直す作業が必要なくなり、作業者の労力の軽減と苗の必要量の削減が図られる。
【0079】
加えて、波と共に運ばれてくる泥を苗が被ることを防止できるので、苗が茎葉部を土中に埋めてしまい、生育不良や立ち枯れが生じにくく、収穫量が安定する。
【0080】
なお、図7で示すように、センターフロート55の前に該センタフロート55の機体左右幅よりも左右方向に長い左右の分流板120L,120Rを設け、前記左右の水車マーカ63L,63Rの移動と連動して分流板120L,120Rのどちらか一方を圃場面に向かって下降させ、他方を圃場面から上昇して退避する構成としてもよい。この連動は、左右の連動ワイヤ121L,121Rで左右の水車マーカ63L,63Rと左右の分流板120L,120Rを連結する方式とすると構造が簡単である。
【0081】
上記構成により、機体の旋回時に分流板120L又は120Rが圃場面に移動し、走行車体2の走行や整地ロータ27の回転により生じる波を未植付作業側に送る構成となるため、圃場に植え付けた苗が波で流されてしまい、空間となってしまった部分に作業者が苗を植え直す作業が必要なくなり、作業者の労力の軽減と苗の必要量の削減が図られる。
【0082】
加えて、波と共に運ばれてくる泥を苗が被ることを防止できるので、苗が茎葉部を土中に埋めてしまい、生育不良や立ち枯れが生じにくく、収穫量が安定する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本件発明は、水田圃場に水稲の苗を移植する苗移植機(田植機)や、乾田圃場に直接種籾を播く播種機(直播機)に関するものである。
【符号の説明】
【0084】
2 走行車体
52 苗植付装置(苗植付部)
65 植付昇降レバー(植付昇降操作具)
66 植付クラッチ(クラッチ機構)
72 押圧アーム
72a 押圧端面
72b 押圧傾斜面
75 クラッチピン
75a 上端面
81 保持機構
83 爪クラッチ
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行車体の後部に苗植付部を昇降可能に装着し、苗植付部を非作業状態にするとエンジンフードが確実に切状態となる苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗移植機には、特許文献1に示すように、エンジンの回転動力を変速するミッションケースから苗植付部に至る動力伝動部に爪クラッチからなるエンジンフードを設け、車体を後進させるためにミッションケース内で回転動力を逆転させた場合、一方向クラッチで苗植付装置側への動力伝動を断って苗植付部の駆動を停止させる構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−143340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の如く、車体を後進する際や苗植付部を上昇させた際には、エンジンフードを切状態として苗植付部への駆動力を遮断し、苗植付部が逆転駆動されない構成としているが、圃場の凹凸などで車体が傾いていると、逆回転時であってもエンジンフードが一時的にクラッチ入り状態になり、苗植付部に駆動力が伝動されることがある。
【0005】
この苗植付部が逆転駆動されると、苗植付部に過負荷がかかり、構成部品の劣化が早まってしまうという問題がある。
【0006】
また、過付加がかかり続けた場合、苗植付部の植付機構が破損してしまい、苗の植付作業が中断されてしまう問題がある。
【0007】
本発明は、苗植付装置を上昇させて苗植付装置を非作動にした際に、エンジンフードのクラッチ切状態を確実に保持し、苗植付装置への動力伝動が行われないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0009】
請求項1記載の発明は、走行車体(2)の後部に苗植付部(52)を昇降可能に装着し、該苗植付部(52)を昇降操作する植付昇降操作具(65)を設けた苗移植機において、該植付昇降操作具(65)の操作に連動して苗植付部(52)への駆動の入切を切り替えるクラッチ機構(66)を設け、該植付昇降操作具(65)を上昇操作するとクラッチ機構(66)の切状態を保持する保持機構(81)を設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記保持機構(81)を、前記クラッチ機構(66)を構成する爪クラッチ(83)と、該爪クラッチ(83)に接触してクラッチ機構(66)の入切を切り替えるクラッチピン(75)と、前記植付昇降操作具(65)の上昇操作に連動してクラッチピン(75)を押圧する位置に移動する回動自在な押圧アーム(72)とから構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記押圧アーム(72)の前側下部にクラッチピン(75)の上端部(75a)に乗り上げてクラッチピン(75)の上方への移動を規制する後下がり傾斜姿勢の押圧傾斜面(72b)を形成し、該押圧傾斜面(72b)の後部にクラッチピン(75)の上端部(75a)を上方から押圧してクラッチ機構(66)の切状態を保持する押圧端面(72a)を機体前後方向に略直線状に形成したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、植付昇降操作具(65)を上昇操作して苗植付部(52)を上昇させると、連動してクラッチ機構(66)を切状態にして苗植付部(52)への駆動力を遮断するので、作業者が苗植付部(52)を上昇させる前にクラッチ機構(66)の切操作を行う必要が無く、作業能率が向上する。
【0013】
また、植付昇降操作具(65)を上昇操作すると保持機構(81)がクラッチ機構(66)の切状態を維持する構成としたことにより、走行車体(2)を後進させた際に苗植付部(52)に逆転駆動力がかかることを防止できるので、苗植付部(52)の構成部材に過負荷がかかることが防止され、苗植付部(52)の耐久性が向上すると共に、破損が防止される。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、クラッチ機構(66)を構成する爪クラッチ(83)にクラッチピン(75)を接触させるとクラッチ機構(66)が切状態となる構成としたことにより、苗植付部(52)に逆転駆動力がかかっているにもかかわらずクラッチ機構(66)が切状態にならなくても、クラッチピン(75)が爪クラッチ(83)に接触する位置でクラッチ機構(66)を切状態とすることができるので、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【0015】
また、植付昇降操作具(65)の上昇操作に連動してクラッチピン(75)を押圧する位置に回動自在な押圧アーム(72)が移動することにより、押圧アーム(72)に押圧されたクラッチピン(75)が爪クラッチ(83)に接触する際に上方に退避することを防止できるので、クラッチ機構(66)が確実に切状態となり、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、押圧アーム(72)の前側下部に後下がり傾斜姿勢の押圧傾斜面(72b)を形成したことにより、押圧アーム(72)はこの押圧傾斜面(72b)に沿ってクラッチピン(75)の上端面(75a)に乗り上げながら移動するため、作業者は植付昇降操作具(65)を軽い力で円滑に上昇操作することができるので、作業者の労力が軽減される。
【0017】
また、植付昇降操作具(65)を上昇操作し始めると押圧傾斜面(72a)がクラッチピン(75)の上方への移動を規制し始めることにより、クラッチピン(75)が爪クラッチ(83)に接触した際に上方に退避することを防止できるので、クラッチ機構(66)が早期に切状態となり、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【0018】
そして、押圧傾斜面(72b)の後部にクラッチ機構(66)の切状態を保持する押圧端面(72a)を機体前後方向に略直線状に形成したことにより、押圧端面(72a)とクラッチピン(75)の上端面(75a)が略平行姿勢で接触した状態でクラッチピン(75)が押圧されるので、クラッチピン(75)は接触の際に上方に退避することなく確実に爪クラッチ(83)に接触するので、確実にクラッチ機構(66)を切状態にすることができ、苗植付部(52)に過負荷かがかかることが防止され、耐久力の低下や苗植付部(52)の破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】苗移植機の平面図
【図3】エンジンフード機構の要部側面図
【図4】エンジンフード機構の要部背面図
【図5】エンジンフード機構の要部拡大図
【図6】防波装置の分解斜視図
【図7】水車マーカと分流体を示す要部平面図
【図8】水車マーカを動作させるシリンダの構造を示す要部側面図
【図9】エンジンのフライホイール常時清掃構造を示す要部側面図
【図10】エンジンフードの構成を示す要部側面図
【図11】水車マーカの動作を示すブロック図
【図12】旋回時の水車マーカの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の実施の一形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
【0021】
図1及び図2は、本発明を用いた一実施例である施肥装置5を装着した施肥装置付き乗用型田植機1の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0022】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
【0023】
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
【0024】
なお、左右後輪ギヤケース18,18には、ミッションケース12の後壁から突出して左右後輪ギヤケース18,18に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
【0025】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(油圧式無段変速装置)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。なお、後述する施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
【0026】
また、ミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって苗植付装置52へ伝動される。植付伝動軸26の回転は、HST23から後述する植付クラッチ66を介して正回転が苗植付装置52側へ伝動される。
【0027】
植付昇降レバー65で苗植付装置52を植付け作業位置まで昇降リンク装置3で下げている時は、植付クラッチ66が入りで植付伝動軸26が正転して苗植付装置52が駆動している状態となり、植付昇降レバー65で苗植付装置52を非植付け作業状態まで昇降リンク装置3で上げた時は、後述する保持機構81で植付クラッチ66が切り状態を保持されて整地ロータ27が停止している状態となる。
【0028】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するステアリングハンドル34が設けられている。このフロントカバー32内には、リザーバタンク16を設け、前記HST23とパイプ19で連結して高い位置からオイルをHST23に供給するようにしている。
【0029】
なお、図10で示すように、エンジン20の前後及び左右側面、並びに上面の一部を覆うエンジンフード100を着脱自在且つ機体前後方向に回動自在に設け、該エンジンカバー100のエンジン20を覆わない部分、即ち開口部にエンジン20の上部を覆う前後幅の燃料タンク101を着脱自在に取り付ける。そして、該燃料タンク101の燃料投入口(図示せず)に干渉しない位置に取付支持台102を前後方向に回動自在に設け、該取付支持台102に座席31を配置する構成としてもよい。
【0030】
エンジンフード100は、フロントカバー32の後端部に支持されるまで回動可能な長さとする。
【0031】
上記構成によれば、エンジンフード100を機体前後方向で且つフロントカバー32の後端部に接触して支持されるまで開放可能に構成したことにより、燃料タンク101やエンジン20をメンテナンスする際の視界や作業スペースを十分に確保することができるので、メンテナンス性が向上する。
【0032】
従来構成では、エンジンフードを機体前側に回動させるとシートがハンドルに接触する位置で止まってしまい、エンジン及び燃料タンクの周囲に十分な開放空間を用意できず、作業者は狭い空間で作業をせねばならず、メンテナンス性が低く、しかも作業者に余計な労力を費やさせるという問題があった。
【0033】
なお、エンジン20のメンテナンスや周囲の掃除をする際には、燃料タンク101を外して作業を行う。
【0034】
また、従来構成に比べて、エンジンフード100の前後長さ及び上下長さを短く構成できるので、エンジンフード100をコンパクトにでき、資源の節約を図ることができる。
【0035】
また、ステアリングハンドル34の周りには、HST23を操作して走行速及び前後進を変速させるHSTレバー64、植付部の伝動入・切及び苗植付装置52を昇降させる植付昇降レバー65、苗植付装置52の作業状態と非作業状態とを切り替えるフィンガアップレバー、植付部昇降制御の感度を調節する副感度調節レバー、苗植付装置52の下降を規制する下降ロックレバー、対地昇降制御の感度を調節する感度調節ダイヤル等を設けている。
【0036】
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35を設けており、作業者が走行車体2上を移動することが可能な構成となっている。
【0037】
これにより、作業者は後述する走行車体2の前側に左右一対設ける予備苗載台38,38から苗を取り出して苗載台51に載置する作業や、走行車体2からの乗り降りを容易に行うことができる。
【0038】
該フロアステップ35の左右前部に複数の貫通孔35a…を形成したことにより、座席31に着座して走行車体2を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通すことができるので、作業者は直進しているか、旋回角度が合っているか等を目視で把握しながら操縦することができ、操縦が容易となると共に、進行方向や旋回角度が適切なものとなり、作業能率及び苗の植付精度が向上する。
【0039】
また、フロアステップ35上を歩く作業者の靴に付着した泥がこの貫通孔35a…から圃場に落下するので、圃場外の道路や移動に用いる軽トラック等に泥を運んでしまうことが防止され、泥を除去する清掃作業が省略される。
【0040】
前記フロアステップ35の後部は、リヤステップを兼ねる後輪フェンダ36となっている。また、フロアステップ35の下側で且つ左右の前輪10,10の外周面の上方に前輪フェンダ47,47を取り付けている。
【0041】
該左右の前輪フェンダ47,47を設けたことにより、左右の前輪10,10が走行時や旋回時に上方に巻き上げる泥が走行車体2、特に機体前側に配置したスプール等の油圧機器(図示省略)に付着することを防止でき、泥の付着による作動不良が防止され、作業能率が向上する。
【0042】
前記走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に配置する。
【0043】
これにより、作業者は苗載台51に載置した苗が全て圃場に植えられても、走行車体2のフロアステップ35上を移動して左右の予備苗載台38,38から苗を取り、苗載台51に苗をセットして植付作業を再開することができるので、苗の補給のたびに圃場端まで移動する必要や機体から作業者が乗り降りする必要が無くなり、作業能率が大幅に向上する。
【0044】
また、左右の予備苗載台38,38を回動させて機体の左右幅の内側に収められることにより、田植機を軽トラック等の輸送手段搭載する時や、倉庫等に格納する際に必要なスペースが小さくなり、収納性が向上する。
【0045】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。該上リンク40と左右の下リンク41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンクフレーム43が連結されている。そして、縦リンクフレーム43の下端部に苗植付装置52に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付装置52がローリング自在に連結されている。苗植付装置52のフレーム94に囲まれた位置にセンターフロート55の昇降を感知する感知部材が設けられている。
【0046】
メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付装置52がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0047】
苗植付装置52は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a…に供給すると苗送りベルト51b…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ63L,63R等を備えている。
【0048】
該左右の線引きマーカ63L,63Rは左右どちらか一側の線引きマーカ63Lが圃場面に設置して直進走行の目安となる線を引いている間、反対側の線引きマーカ63Rは圃場面よりも上方に上昇する構成であり、左右他側の線引きマーカ63Rを圃場面に降ろすと反対側の線引きマーカ63Lが圃場面よりも上方に上昇する構成であるので、進行方向にかかわらず次の条の植付作業を行う際、直進性を確保することができ、苗の植付制度が向上する。
【0049】
そして、図8に示すように、前記昇降油圧シリンダ46の後部左右に支持プレート106,106を取り付け、該左右の支持プレート106,106に往復方向に動作可能なマーカソレノイド108を備えるソレノイドボックス107をボルト等の固定部材109…を介して取り付け、該ソレノイドボックス107に左右の水車マーカ63L,63Rの張り出し状態と収納状態とを切り換える左右のワイヤー110,110を設ける。さらに、該左右のワイヤー110,110の端部を左右の水車マーカ63L,63Rに巻回あるいは引っ掛けて接続することにより、水車マーカ63L,63Rの切替機構111が構成される。
【0050】
上記構成により、水車マーカ63L,63Rが畦などに引っ掛かって過負荷がかかり、ソレノイドボックス107が歪む等の破損を被っても、ボルト等の固定部材109…を外すことによってソレノイドボックス107を簡単に取り外すことができるので、従来のように昇降油圧シリンダ46ごと交換する必要が無く、ソレノイドボックス107だけを交換すればよいので、修理にかかるコストや作業工数が低減される。
【0051】
従来は油圧昇降シリンダ46の後側下部にソレノイドボックス107を溶着していたため、ソレノイドボックス107が破損すると昇降油圧シリンダ46まで全て交換せざるを得ないという問題があった。
【0052】
なお、図11に示すように、前記ハンドル34にポテンショメータ等の角度検出手段112を設け、該角度検出手段112が一定以上のハンドル34の切角度を検出すると旋回動作が行なわれたと判断して信号を制御装置113に発信し、該制御装置113がマーカソレノイド108右方又は左方に動作させて左右の線引きマーカ63L,63Rの上昇及び下降させる構成とすると、作業者が圃場端での旋回の度に線引きマーカ63L,63Rを操作する必要が無く、作業能率が向上する。
【0053】
図12のフローチャートのS1で示すように、角度検出手段112が検出したハンドル34の切角度が一定値以下であれば、旋回動作のためにハンドル34を操作したとは認識せず直進走行を継続し、左右方向のどちらかで一定値以上の切角度が検出されると、旋回動作に移行したと判断してマーカソレノイド108を中立位置に戻し、左右の水車マーカ63L,63Rを共に上昇させて左右方向の判定S2に移行する。
【0054】
そして、ハンドル34の切角度が設定値(0度±5度程度)に戻ると、旋回前にハンドル34が右方向に切られていればマーカソレノイド108を左方向に移動させて左水車マーカ63Lを下降させ、旋回前にハンドル34が左方向に切られていればマーカソレノイド108を右方向に移動させて右水車マーカ63Rを下降させる。
【0055】
これにより、旋回動作を終了して苗の植付作業を再開すると同時に、次の植付作業を行う条に水車マーカ63Lまたは63Rで直進の目印となる直線溝を描くことができるので、植付作業を真っ直ぐに行うことができ、作業能率や植付制度が向上する。
【0056】
圃場に描いた直線溝に走行車体2の前側で且つ機体左右方向の略中央位置に設けるセンターマーカ99を合わせることにより、作業者の目視で略直線状に走行することができる。
【0057】
苗植付装置52の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられ、該センターフロート55と左右のサイドフロート56,56の前に圃場の乱れた泥土面を整地して均す整地ロータ27が取り付けられている。
【0058】
該センターフロート55と左右のサイドフロート56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、整地ロータ27で圃場面を均し、各フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が前記感知部材に設ける迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じて前記昇降油油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付装置52を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0059】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を操出装置57の繰出部61…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド62a…まで導き、施肥ガイド62a…の前側に設けた作溝体62b…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータで駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62…に吹き込まれ、施肥ホース62…内の肥料を風圧で施肥ガイド62aへ強制的に搬送するようになっている。このブロア58の空気吸引口を機体内側のエンジン20に向けて開口し、エンジン20の排気ガスを吸引するようにしている。
【0060】
操出装置57は、横長の機枠内に外周に凹溝を形成した操出軸を横架した従来の構成と同じであって、機枠の後側を構成する後壁板54が下端の枢支軸53で枢支され、後壁板54の上側を取り外し後下方へ倒して内部に残留する肥料を転げ出すようにしている。
【0061】
また、エンジン20を構成するフライホイール115の外周縁部に設ける歯部115a…に接触し、該歯部115a…の間に蓄積した砂等の異物を取り除くスクレーパ116を設け、該スクレーパ116をフライホイール115を始動させるスタータギア117と干渉しない位置に取り付ける。
【0062】
なお、スクレーパ116はゴム等の弾性体で構成すると、フライホイール115や歯部115a…が摩擦で傷付くことが防止される。
【0063】
上記構成により、フライホイール115の歯部115a…に砂等の異物が挟まったままエンジン20を始動してしまい、始動時にスタータギア117に過負荷がかかってスタータギア117が破損することを防止できるので、エンジン20が始動しなくなることが防止され、確実に作業を行え、苗の植え付けに適切な時期を逃すことが無くなり、収穫量が安定、もしくは増加する。
【0064】
また、畦クラッチ部に過負荷が加わると駆動力を逃がすトルク調整の安全クラッチを設ける構成も良い。
【0065】
図3と図4に、植付昇降レバー65と植付クラッチ66の保持機構81を示している。
【0066】
本発明の植付昇降操作具である植付昇降レバー65の基部を第一支持軸67に固着し、この第一支持軸67に前下方に向けて植付カム68を固着して、植付昇降レバー65の前後方向への回動で植付カム68が前後方向へ揺動する。
【0067】
該第一支持軸67の下方に設ける第二支持軸69には、植付カム68に向けてローラ70を軸支したローラアーム71と下方へ向けた押圧アーム72を固着し、この押圧アーム72を第一引張バネ73で機体前側方向に張力をかけて付勢している。また、該ローラアーム71の位置決めローラ70は、前記植付カム68に形成する複数の凹部74の一つに係合している。従って、植付カム68が前後に揺動すると、該位置決めローラ70と凹部74との係合位置が変化してローラアーム71が回転し、前記第二支持軸69が回転して押圧アーム72を前後に回動させる。
【0068】
そして、該押圧アーム72の下方に設けるエンジンフード66は、図5に示す如く、植付伝動軸26に固着したクラッチギヤ82に爪クラッチ83を張圧スプリング84で圧接して駆動力を伝動する構成としている。
【0069】
該エンジンフード66には、前記昇降操作レバー65を上昇方向に移動させると回動する押圧アーム72が上端面75aに接触するクラッチピン75を設け、該クラッチピン75の下端部75bがクラッチギヤ82のカム面83aに入り込むと爪クラッチ83がクラッチギヤ82から離間して駆動力が断たれる状態、即ちエンジンフード66が「切」状態となる構成としている。
【0070】
逆に、前記昇降操作レバー65を下降方向に移動させると押圧アーム72がクラッチピン75から退避し該クラッチピン75が上方へ移動し、エンジンフード66へ駆動力が伝達される「入」状態となる構成である。
【0071】
さらに、前記押圧アーム72の機体前側下部に機体前側から後側に向かって後退する押圧傾斜面72bを形成すると、昇降操作レバー65を上昇方向に操作して押圧アーム72がクラッチピン75の上方に移動する際、該押圧傾斜面72bがクラッチピン75の上端面75aに容易に乗り上げることができるので、作業者は昇降操作レバー65を軽い力で容易に操作することができるので、作業者の労力が軽減される。
【0072】
加えて、クラッチピン75がクラッチギア82及び爪クラッチ83に接触した衝撃で上方に移動しようとしても、押圧傾斜面72bがクラッチピン75の上方移動を規制するので、クラッチピン75がクラッチギア82に接触するとエンジンフード66が確実に外れるので、逆転駆動力がかかってエンジンフード66の構成部材に負荷がかかって傷むことや、エンジンフード66が壊れてしまうことが防止され、機体の耐久性が向上すると共に、植付作業が途中で中断されることがなく、作業能率が向上する。
【0073】
また、押圧アーム72の押圧傾斜面72bの機体後端部から機体前後方向に略直線状に押圧端面72aを形成することにより、昇降操作レバー65を上昇方向に大幅、あるいは最大限に移動させた際に押圧端面72aとクラッチピン75の上端面75aとが密接に接触するので、クラッチピン75が押圧アーム72に上方から押圧されてクラッチギヤ82や爪クラッチ83の回転力で上方に退避することが防止され、クラッチピン75の下端部75bがクラッチギア82や爪クラッチ83に強固に接触して確実にエンジンフード66を「切」状態にすることができるので、逆転駆動力がかかってエンジンフード66の構成部材に負荷がかかって傷むことや、エンジンフード66が壊れてしまうことが防止され、機体の耐久性が向上すると共に、植付作業が途中で中断されることがなく、作業能率が向上する。
【0074】
そして、前記クラッチピン75の上端部には第三支持軸79に枢支したピンアーム78を係合し、該ピンアーム78を第二引張バネ80と作動アーム77でクラッチピン75を上方に向かって付勢させる。
【0075】
これにより、クラッチピン75が押圧アーム72上方から押圧されない昇降操作レバー65の下降操作状態(植付作業中で且つ前進中)に、クラッチピン75がクラッチギヤ82や爪クラッチ83に接触してエンジンフード66を「切」状態にしてしまうことが防止できるので、植付作業中に苗の植付が停止してしまうことが無く、植え付け損ないの生じた部分に作業者が手作業で苗を植える作業が必要なく、作業者の労力が軽減される。
【0076】
そして、図6は、苗植付装置52の左右側部に設けるスタンドを示すものであり、植付ロータリケースから左右に張り出すガードステー85の先端取付部86にガードアーム88の基部を回動可能に嵌合している。該ガードアーム88がガードステー85の先端取付部86に嵌合して係止板89とばね90と座金91と割ピン92で止められている。
【0077】
また、前記ガードアーム88には、防波板93が固着されている。係止板89には三個所の係合凹部89aが形成され、先端取付部86のピン87と適宜の係合凹部89aを係合させてガードアーム88を下方に向けたスタンド姿勢と側方へ張り出したガード姿勢と両姿勢の中間となる作業姿勢とに固定することができるので、苗植付装置52を地面に降ろして立てた状態でメンテナンス等を行えるので作業能率がよく、また作業中に苗植付装置52が自重で下降してくることがなく、何度も苗植付装置52を持ち上げる作業が必要なくなり、作業者の労力が軽減される。
【0078】
また、作業姿勢にした場合は、左右の防波板93,93が圃場の水面に発生する波を苗植付装置52側に移動することを防止するため、圃場に植え付けた苗が波で流されてしまい、空間となってしまった部分に作業者が苗を植え直す作業が必要なくなり、作業者の労力の軽減と苗の必要量の削減が図られる。
【0079】
加えて、波と共に運ばれてくる泥を苗が被ることを防止できるので、苗が茎葉部を土中に埋めてしまい、生育不良や立ち枯れが生じにくく、収穫量が安定する。
【0080】
なお、図7で示すように、センターフロート55の前に該センタフロート55の機体左右幅よりも左右方向に長い左右の分流板120L,120Rを設け、前記左右の水車マーカ63L,63Rの移動と連動して分流板120L,120Rのどちらか一方を圃場面に向かって下降させ、他方を圃場面から上昇して退避する構成としてもよい。この連動は、左右の連動ワイヤ121L,121Rで左右の水車マーカ63L,63Rと左右の分流板120L,120Rを連結する方式とすると構造が簡単である。
【0081】
上記構成により、機体の旋回時に分流板120L又は120Rが圃場面に移動し、走行車体2の走行や整地ロータ27の回転により生じる波を未植付作業側に送る構成となるため、圃場に植え付けた苗が波で流されてしまい、空間となってしまった部分に作業者が苗を植え直す作業が必要なくなり、作業者の労力の軽減と苗の必要量の削減が図られる。
【0082】
加えて、波と共に運ばれてくる泥を苗が被ることを防止できるので、苗が茎葉部を土中に埋めてしまい、生育不良や立ち枯れが生じにくく、収穫量が安定する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本件発明は、水田圃場に水稲の苗を移植する苗移植機(田植機)や、乾田圃場に直接種籾を播く播種機(直播機)に関するものである。
【符号の説明】
【0084】
2 走行車体
52 苗植付装置(苗植付部)
65 植付昇降レバー(植付昇降操作具)
66 植付クラッチ(クラッチ機構)
72 押圧アーム
72a 押圧端面
72b 押圧傾斜面
75 クラッチピン
75a 上端面
81 保持機構
83 爪クラッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に苗植付部(52)を昇降可能に装着し、該苗植付部(52)を昇降操作する植付昇降操作具(65)を設けた苗移植機において、該植付昇降操作具(65)の操作に連動して苗植付部(52)への駆動の入切を切り替えるクラッチ機構(66)を設け、該植付昇降操作具(65)を上昇操作するとクラッチ機構(66)の切状態を保持する保持機構(81)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記保持機構(81)を、前記クラッチ機構(66)を構成する爪クラッチ(83)と、該爪クラッチ(83)に接触してクラッチ機構(66)の入切を切り替えるクラッチピン(75)と、前記植付昇降操作具(65)の上昇操作に連動してクラッチピン(75)を押圧する位置に移動する回動自在な押圧アーム(72)とから構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記押圧アーム(72)の前側下部にクラッチピン(75)の上端部(75a)に乗り上げてクラッチピン(75)の上方への移動を規制する後下がり傾斜姿勢の押圧傾斜面(72b)を形成し、該押圧傾斜面(72b)の後部にクラッチピン(75)の上端部(75a)を上方から押圧してクラッチ機構(66)の切状態を保持する押圧端面(72a)を機体前後方向に略直線状に形成したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項1】
走行車体(2)の後部に苗植付部(52)を昇降可能に装着し、該苗植付部(52)を昇降操作する植付昇降操作具(65)を設けた苗移植機において、該植付昇降操作具(65)の操作に連動して苗植付部(52)への駆動の入切を切り替えるクラッチ機構(66)を設け、該植付昇降操作具(65)を上昇操作するとクラッチ機構(66)の切状態を保持する保持機構(81)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記保持機構(81)を、前記クラッチ機構(66)を構成する爪クラッチ(83)と、該爪クラッチ(83)に接触してクラッチ機構(66)の入切を切り替えるクラッチピン(75)と、前記植付昇降操作具(65)の上昇操作に連動してクラッチピン(75)を押圧する位置に移動する回動自在な押圧アーム(72)とから構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記押圧アーム(72)の前側下部にクラッチピン(75)の上端部(75a)に乗り上げてクラッチピン(75)の上方への移動を規制する後下がり傾斜姿勢の押圧傾斜面(72b)を形成し、該押圧傾斜面(72b)の後部にクラッチピン(75)の上端部(75a)を上方から押圧してクラッチ機構(66)の切状態を保持する押圧端面(72a)を機体前後方向に略直線状に形成したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−193737(P2011−193737A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61019(P2010−61019)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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