苗移植機
【課題】
走作業切替時に植付クラッチを確実に入切することにより、植付クラッチの破損を防止すると共に作業の切替を円滑に行える苗移植機を提供する。
【解決手段】
苗植付装置3への動力を入切する植付クラッチ38と、植付クラッチ38を入切するクラッチピン41と、植付クラッチ38にはクラッチピン41を受ける正回転時クラッチ切り傾斜面38a及びクラッチピン41受け止め用のクラッチ爪38bを備えた苗移植機において正回転時クラッチ切傾斜面38aの正回転方向上手側には逆回転方向下手側が順次上り傾斜となる逆回転時クラッチ切傾斜面38cを設け、クラッチ爪38bにクラッチピン41が接触しても植付クラッチ38が切状態とならない場合にはクラッチピン41が逆回転時クラッチ切傾斜面38cに接触して植付クラッチ38を切状態にする構成とする。
走作業切替時に植付クラッチを確実に入切することにより、植付クラッチの破損を防止すると共に作業の切替を円滑に行える苗移植機を提供する。
【解決手段】
苗植付装置3への動力を入切する植付クラッチ38と、植付クラッチ38を入切するクラッチピン41と、植付クラッチ38にはクラッチピン41を受ける正回転時クラッチ切り傾斜面38a及びクラッチピン41受け止め用のクラッチ爪38bを備えた苗移植機において正回転時クラッチ切傾斜面38aの正回転方向上手側には逆回転方向下手側が順次上り傾斜となる逆回転時クラッチ切傾斜面38cを設け、クラッチ爪38bにクラッチピン41が接触しても植付クラッチ38が切状態とならない場合にはクラッチピン41が逆回転時クラッチ切傾斜面38cに接触して植付クラッチ38を切状態にする構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業切替時に植付クラッチを確実に入切することにより、植付クラッチの破損を防止すると共に作業の切替を円滑に行える苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苗移植機において、エンジンからの回転動力を植付クラッチを介して苗植付装置へ伝達し、植付クラッチと並列に、苗植付装置の苗植付具の重量によって植付クラッチの伝動上手側の回転よりも植付クラッチの伝動下手側の回転が先行するのを規制する規制用のクラッチを設けたものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−313622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術の苗移植機の走行車体に無段変速装置を組み込むと、苗植付装置で苗を植え付けた直後に無段変速装置を前進から後進に切り換えると植付クラッチが逆転し、苗植付装置が苗載せ台の苗取出部にロックする等の不具合が発生することがある。
【0005】
本発明は、このような不具合を解消すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、走行車体に走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(20)と、該油圧式無段変速装置(20)を操作する走行操作レバー(43)と、走行車体に設けている苗植付装置(3)の苗載せ台(29)から苗を掻き取る苗植付爪(28a)と、苗植付爪(28a)が掻き取った苗を圃場に押し出す植込み杆(28b)を備えた苗植付具(28)と、苗植付装置(3)への動力伝達を入切する植付クラッチ(38)と、該植付クラッチ(38)を入切するクラッチピン(41)と、前記植付クラッチ(38)には前記クラッチピン(41)を受ける正回転時クラッチ切り傾斜面(38a)及び該正回転クラッチ切傾斜面(38a)の正回転下手側端部にクラッチピン(41)受け止め用のクラッチ爪(38b)とを備えた苗移植機において、前記正回転時クラッチ切傾斜面(38a)の正回転方向上手側には逆回転方向下手側が順次上がり傾斜となる逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)を設け、前記クラッチ爪(38b)にクラッチピン(41)が接触しても植付クラッチ(38)が切状態とならない場合にはクラッチピン(41)が前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする苗移植機とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記苗植付具(28)が苗を圃場に植え付けた直後に前記走行操作レバー(43)を前進から後進に切り換えると、前記クラッチピン(41)が逆回転時クラッチ切り傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とする。
【0008】
請求項3の発明は、前記植付クラッチ(38)に前記クラッチ爪(38b)よりも正回転方向下手側で且つ前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)の逆回転方向下手側部位に逆回転方向下手側が上り傾斜のクラッチ切規制傾斜面(38e)を形成し、前記苗載せ台(29)の苗が送り出された直後に前記無段変速装置(20)を前進から後進に切り替えて植付クラッチ(38)を切状態にすると、前記クラッチピン(41)がクラッチ切規制傾斜面(38e)を通過するまで植付クラッチ(38)の切状態を維持する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の苗移植機とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、植付クラッチ(38)を切状態にする際、油圧式無段変速装置(20)が正回転から逆回転に切り換えられ、クラッチピン(41)がクラッチ爪(38b)に接触したにもかかわらず植付クラッチ(38)が切状態にならなかった場合でも、クラッチピン(41)が逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)に接触することにより植付クラッチ(38)が入状態のまま逆転することを防止できるので、植付クラッチ(38)や苗植付具(28)の破損が防止されて耐久性が向上する。
【0010】
また、植付クラッチ(38)や苗植付具(28)が破損しないことにより、苗の植付作業が中断されることがなく、作業能率が向上する。
請求項2の発明によると、請求項1の発明の効果に加えて、苗植付具(28)が苗を圃場に植え付けた直後に走行操作レバー(43)を前進から後進に切り換えた際、逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)にクラッチピン(41)を接触させて植付クラッチ(38)を確実に切状態にすることができるので、苗植付具(28)が逆転して苗植付爪(28a)に苗押出杆(28b)がロックすることが防止され、植付作業が中断されず作業能率が向上する。
【0011】
また、作業者が苗植付具(28)のロック状態を解除する必要が無く、作業者の労力が軽減される。
請求項3の発明によると、請求項1または請求項2の発明の効果に加えて、苗載せ台(29)の苗が送り出された直後に油圧式無段変速装置(20)を前進から後進に切り替えると、クラッチピン(41)がクラッチ切規制傾斜面(38e)を通過するまで植付クラッチ(38)の切状態を維持することができるので、苗植付具(28)の苗植付爪(28a)が泥水中に進入した状態で停止して苗植付爪(28a)に泥土や夾雑物が詰まることが防止され、苗の取り損ないによる欠株の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】乗用苗植機の全体側面図
【図2】乗用苗植機の全体平面図
【図3】苗植付装置の切断側面図
【図4】植付クラッチとクラッチピンの側面図
【図5】(A)植付クラッチの側面図(B)正面図(C)傾斜カム面を展開した図
【図6】(A)植付クラッチの回転位置を示す側面図(B)植付クラッチの回転位置を示す側面図(C)植付クラッチの回転状態を示す側面図(D)植付クラッチの回転状態を示す側面図(E)植付クラッチの回転状態を示す側面図(F)植付クラッチの回転状態を示す側面図
【図7】(A)畦クラッチレバーの斜視図(B)畦クラッチレバーの側面図
【図8】操作パネルの正面図
【図9】乗用苗植機の別実施例の全体側面図
【図10】苗載せ台の背面図
【図11】(A)苗載せ台端移動検出スイッチがオフとなる苗載せ台の側面図(B)苗載せ台端移動検出スイッチがオンとなる苗載せ台の側面図
【図12】(A)苗載せ台端移動検出センサを設けた苗載せ台の背面図(B)苗載せ台端移動検出センサを設けた苗載せ台の移動を示す背面図
【図13】(A)補助苗載せ台の苗植付作業中の斜視図(B)補助苗載せ台の苗補充中の斜視図(C)補助苗載せ台の苗補充中の側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づきこの発明の実施例について説明する。まず、図1及び図2に基づき本発明を実施する乗用苗植機の全体構成について説明する。
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付装置3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車体とし、全体を乗用苗植機に構成している。走行車体1の前側部左右両側に補助苗載せ台61,61を設けている。
【0014】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8を取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式の無段変速装置20を一体的に組み付け、エンジン12から伝達された動力を前後進切換及び無段変速するように構成している。
【0015】
該ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル9を取り付け、ステアリングハンドル9の下方部位に操作パネル10を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方には合成樹脂製のフロア11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を配設し、操縦席13の後方には施肥装置6を配設している。
【0016】
また、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース(図示省略)を左右両側に向けて延出し、その左右両側部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0017】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸(図示省略)にケース連結フレーム(図示省略)をローリング自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2,2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0018】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して無段変速装置20の入力軸に伝達され、無段変速装置20により前後進切換及び前後進の無段変速がされて、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース(図示省略)内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達されている。
【0019】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前部右側から作業動力がPTO伝動軸(図示省略)に取り出され、PTO軸(図示省略)を経て苗植付装置3及び施肥装置6に伝達されている。
【0020】
前記苗植付装置3は、複数の伝動ケース25,…と、これら伝動ケース25,…を相互に連結している駆動軸ケース(図示省略)と、この駆動軸ケース(図示省略)内の伝動横軸(図示省略)と、伝動ケース25,…に取り付けられていて所定の植付軌跡に沿って駆動される複数の苗植付具28,…と、横方向に往復移動する苗載せ台29等により構成されている。
【0021】
そして、該苗載せ台29の底部に苗送りベルト29bを設け、苗載せ台29が横往復移動装置29cで左右往復移動自在に構成し、苗載せ台29が左右両側端部に移動する毎に苗送りベルト29bを駆動し苗を後側下方に送り、前受け板29aで受けるように構成している。
【0022】
また、左右両側の伝動ケース25,25の下方には車輪跡を消す左右フロート30L,30Rを昇降調節自在に設け、また、中央部の伝動ケース25の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサ(図示省略)により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動して昇降シリンダ31を伸縮調節し、苗植付装置3を所定の植付深さに昇降調節するように構成している。
【0023】
次に、図3に基づき苗植付具28について説明する。
前記複数の伝動ケース25,…の後側部に植付伝動軸35を設け、PTO軸から植付伝動軸35に動力が伝達される。伝動ケース25,…には植付伝動軸35回りに回転するように植付伝動ケース36を回転自在に軸支し、植付伝動ケース36の両端部に苗植付具28,…をそれぞれ取り付けている。そして、植付伝動ケース36内に複数のギヤからなる植付伝動装置37を設け、植付伝動軸35から植付伝動装置37に動力を伝達している。しかして、植付伝動ケース36が所定の回転方向に所定の速度比で回転することにより、苗植付爪28a,28aの先端が閉ループ軌跡を描くように苗植付具28,28が一定姿勢のまま移動し、閉ループ軌跡の上部で苗載せ台29の前板28aの苗取出口から苗を挟持して取り出し、閉ループ軌跡の下端部で苗押出杆28bにより苗を押し出し圃場に植え付ける。
【0024】
また、図4に示すように、伝動ケース25の植付伝動軸35の伝動上手側には植付クラッチ軸39を設け、植付クラッチ38を設けている。この植付クラッチ38にバネ40を介装して左右一側に押圧し、後述する畦クラッチレバー51の入切操作によりクラッチピン41を突出、退避させて植付クラッチ38を入切するように構成している。
【0025】
該植付クラッチ38には、図5に示すように、正回転方向(図5Bの時計方向)の下手側が順次上がり傾斜となる正回転時クラッチ切り傾斜溝38aを形成し、この正回転クラッチ切り傾斜面38aの正回転方向下手側端部にクラッチピン41を受け止めるクラッチ爪38bを設けている。
【0026】
該クラッチピン41を突入してクラッチ切りにすると、クラッチピン41の先端が正回転時クラッチ切り傾斜面38aに接触しながら移動してクラッチ爪38bに当接し植付クラッチ38を停止し、苗植付具28を停止させる。
【0027】
また、植付クラッチ38の正回転時クラッチ切り傾斜面38aの正回転上手側には逆回転時クラッチ切り傾斜面38cを形成している。この逆回転時クラッチ切り傾斜面38cは逆回転方向(図5Bの反時計方向)の下手側が順次上がり傾斜となる傾斜面を形成し、逆回転時にクラッチピン41が接触すると、植付クラッチ38を切るように構成している。
【0028】
前記構成によると、無段変速装置20を正回転から逆回転に切り換え操作した場合に、クラッチピン41を切り状態にしても植付クラッチ38が切り状態にならなかった場合には、クラッチピン41が逆回転時クラッチ切り傾斜面38cに接触作動し、植付クラッチ38を切りにすることができる。
【0029】
また、苗載せ台29の前受け板29aから苗を掻き取った直後の位相で植付クラッチ38を切りにし、無段変速装置20を前進から後進に切り換えた場合にも、逆回転時クラッチ切り傾斜面38cにより苗植付具28を苗掻き取り直後の位相に保ち苗載せ台29の前受け板29a部位への移動を阻止し、苗載せ台29の苗送りアームの抵抗を軽減することができる。
【0030】
また、植付クラッチ38に正回転時クラッチ切り傾斜面38a及びクラッチ爪38bを設け、そのクラッチ爪38bの側方、及び、正回転時クラッチ切り傾斜面38aのクラッチ爪38bに近い部位の外側方に、逆転方向である反時計方向の下手側が順次上り傾斜となる逆転時停止リードカム面38dを形成している。
【0031】
前記構成によると、苗植付具28を苗載せ台29の前受け板29aを抜けた直後で植付クラッチ38を切りにし、無段変速装置20を前進から後進に切り換えた場合に、1/2〜1/3の確率で苗植付具28を苗載せ台29の前受け板29aを抜けた位相近傍で停止させることができ、苗植付具28の苗掻き取り位置での停止を防止し、空植付や苗植付具28の泥詰まりを回避し、植付作業を円滑に行なうことができる。
【0032】
従来装置では、無段変速装置20を前進から後進に切り換えたときに、苗植付具28の逆転を防止するために植付クラッチ38に正回転時クラッチ切り傾斜面38a、38bを設け、植付クラッチ38が切れるように構成していた。このような構成であると、苗の疎植栽培をする場合に、苗植付具28の回転速度を例えば1/2に減速し植付苗を前後方向に2倍の間隔にすると、植付クラッチ38が切れなくなるという不具合が発生することがあった。
【0033】
しかし、上記構成とすると、このような不具合を解決することができる。
また、植付クラッチ38に正回転時クラッチ切り傾斜面38a、クラッチ爪38bを設け、このクラッチ爪38bの更に正回転下手側で、且つ、前記逆回転時クラッチ切り傾斜面38cの逆回転方向上手側部位に、クラッチ切り状態を維持する逆回転方向下手側が上り傾斜のクラッチ切り規制傾斜面38eを設けている。
【0034】
前記構成によると、苗植付具28が苗を圃場に植え付けた直後に、植付クラッチ38を切り、無段変速装置20操作用の走行操作レバー43を前進から後進に操作した場合に、クラッチ切り規制傾斜面38eにクラッチピン41の先端を支持し、植付クラッチ38を切り状態に維持することができる。
【0035】
なお、図6は植付クラッチ38の回転位相を示すもので、図6(A)は苗植付具28が苗載せ台29の前受け板29aを抜けた位相を示し、図6(B)が植付クラッチ38を切りにしたときの苗植付具28の停止位置を示し、図6(C)が苗押出杆28bで苗を押し出した位置を示している。この位置から正回転方向下手側の105度の範囲は植付クラッチ38は自由に回転でき、この105度を越えては正回転できないように構成している。
【0036】
図6(D)が苗載せ台29の苗を苗送り装置で送り出した直後の位置を示し、図6(E)が苗載せ台29の苗を苗送り装置で送り出した直後の位置を示し、図6(F)が苗押出杆28bで苗を押し出した位置を示している。
【0037】
次に、図7に基づき畦クラッチレバー51について説明する。
機体の前側部には畦クラッチレバー51を左右方向の軸回りに回動自在に軸支し、レバーが上方へ回動すると、前記植付クラッチ38が入りとなり、前方下方へ回動すると、切りとなるように構成している。そして、この畦クラッチレバー51を長く構成している。
【0038】
前記苗載せ台29に苗を補給する際に、畦と機体前側部との間にステップ52を掛け渡し、畦クラッチレバー51を前方下方に回動させると、レバー上側端部がステップ52に接触し、レバーとステップ52との間にすき間ができないように構成している。
【0039】
該畦クラッチレバー51を前方下方に回動しクラッチ切りとした際に、ステップ52とレバー51との間にすき間が生じると、苗補給の際にオペレータが畦クラッチレバー51に足を引っ掛け、クラッチ入りとする恐れがある。しかし、前記構成によると、このような不具合を防止することができる。
【0040】
次に、図8に基づき苗載せ台29の作動構成について説明する。
苗植機で苗植作業を開始する際に、苗載せ台29を左右一側のどちらかに寄せなければならない。この操作を容易にしようとするものである。
【0041】
図8、図10に示すように、前記ハンドル9の近傍の操作パネル10に苗載せ台29を右方向または左方向に摺動移動させる苗載せ台移動ボタン55を設ける。そして、苗載せ台29の前受け板29aの左右両端部に左右の側壁55L,55Rを取り付け、該左右の側壁55L,55Rに苗載せ台29が左右どちらかの端部まで移動したことを検出する端部検出スイッチ55a,55aを夫々設ける。
【0042】
該苗載せ台移動ボタン55を操作すると、コントローラの指令により横移動装置が作動し、前記苗載せ台29が苗載せ台移動ボタン55を操作する前に移動していた側に移動する構成としている。
【0043】
上記の構成により、苗載せ台移動ボタン55を操作するだけで苗載せ台29を左右どちらか一側に移動させることができるので、植付クラッチ38を入状態にして細かく苗載せ台29を左右摺動させる必要が無く、苗載せ台29の作業開始位置を迅速且つ適確に合わせることができ、作業能率が向上する。
【0044】
また、図9に示すように、運転席13の後側方に苗載せ台移動ボタン55を設ける構成としてもよい。
上記構成では、作業者が苗載せ台29の左右移動を見るために機体後側を向いた際に押しやすい位置に苗載せ台移動ボタン55が配置されるので、作業能率が向上する。
【0045】
また、図11(A)、(B)に示すように構成してもよい。苗載せ台29が左右両端部に移動すると、苗送り装置の苗送りカム56が反時計回り方向に回動し、カウンタアーム57が時計回り方向に回動し、苗載せ台端移動検出スイッチ58をONする。
【0046】
あるいは、図12(A)、(B)のように構成してもよい。苗載せ台29の苗を受ける前受け板29aの左右両側部には例えば発光素子と受光素子を備えた光電式の苗載せ台端移動検出センサ59,59を設ける。苗載せ台29が左右両端部に移動し、発光素子からの検出光を受光素子が検出しなくなると、苗載せ台29が左右端部へ移動したと判定し、コントローラ(図示省略)に送られ、コントローラの指令で苗載せ台29の移動を停止し、苗送り装置を駆動して苗を前送りする。
【0047】
次に、図13(A)〜(C)に基づき、補助苗載せ台61,61の他の実施例について説明する。
補助苗載せ台61を、機体前側部の左右両側に立設している左右枠体61a,61aと、左右枠体61a,61aに設けている上側補助苗載せ台61b、中間補助苗載せ台61c、下側補助苗載せ台61dとで構成している。
【0048】
上側補助苗載せ台61bの前側端部に前側展開板62の端部を左右方向のピン62a回りに回動自在に軸支し、後側端部に後側展開板63の端部を左右方向のピン63a回りに回動自在に軸支している。そして、前側展開板62を後側に収納回動し、次いで、後側展開板63を前側に収納回動すると、後側展開板63の上面に苗箱64を載置できるようにしている。なお、後側展開板63の前後両端部及び外側端部に苗箱64係止用のストッパ65,…を設けている。
【0049】
前記構成によると、図13(B)、(C)に示すように、前側展開板62及び後側展開板63を前後に展開すると、前側展開板62、上側補助苗載せ台61b及び後側展開板63により、後下がり傾斜の苗送りレールを前後方向に構成することができ、苗箱64を前側から後側の苗載せ台29に楽に供給することができる。
【符号の説明】
【0050】
3 苗植付装置
20 油圧式無段変速装置
29 苗載せ台
28 苗植付具
28a 植付爪
28b 植込み杆
38 植付クラッチ
38a 正回転時クラッチ切り傾斜面
38b クラッチ爪
38c 逆回転時クラッチ切り傾斜面
38e クラッチ切り規制傾斜面
41 クラッチピン
43 走行操作レバー
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業切替時に植付クラッチを確実に入切することにより、植付クラッチの破損を防止すると共に作業の切替を円滑に行える苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苗移植機において、エンジンからの回転動力を植付クラッチを介して苗植付装置へ伝達し、植付クラッチと並列に、苗植付装置の苗植付具の重量によって植付クラッチの伝動上手側の回転よりも植付クラッチの伝動下手側の回転が先行するのを規制する規制用のクラッチを設けたものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−313622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術の苗移植機の走行車体に無段変速装置を組み込むと、苗植付装置で苗を植え付けた直後に無段変速装置を前進から後進に切り換えると植付クラッチが逆転し、苗植付装置が苗載せ台の苗取出部にロックする等の不具合が発生することがある。
【0005】
本発明は、このような不具合を解消すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、走行車体に走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(20)と、該油圧式無段変速装置(20)を操作する走行操作レバー(43)と、走行車体に設けている苗植付装置(3)の苗載せ台(29)から苗を掻き取る苗植付爪(28a)と、苗植付爪(28a)が掻き取った苗を圃場に押し出す植込み杆(28b)を備えた苗植付具(28)と、苗植付装置(3)への動力伝達を入切する植付クラッチ(38)と、該植付クラッチ(38)を入切するクラッチピン(41)と、前記植付クラッチ(38)には前記クラッチピン(41)を受ける正回転時クラッチ切り傾斜面(38a)及び該正回転クラッチ切傾斜面(38a)の正回転下手側端部にクラッチピン(41)受け止め用のクラッチ爪(38b)とを備えた苗移植機において、前記正回転時クラッチ切傾斜面(38a)の正回転方向上手側には逆回転方向下手側が順次上がり傾斜となる逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)を設け、前記クラッチ爪(38b)にクラッチピン(41)が接触しても植付クラッチ(38)が切状態とならない場合にはクラッチピン(41)が前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする苗移植機とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記苗植付具(28)が苗を圃場に植え付けた直後に前記走行操作レバー(43)を前進から後進に切り換えると、前記クラッチピン(41)が逆回転時クラッチ切り傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とする。
【0008】
請求項3の発明は、前記植付クラッチ(38)に前記クラッチ爪(38b)よりも正回転方向下手側で且つ前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)の逆回転方向下手側部位に逆回転方向下手側が上り傾斜のクラッチ切規制傾斜面(38e)を形成し、前記苗載せ台(29)の苗が送り出された直後に前記無段変速装置(20)を前進から後進に切り替えて植付クラッチ(38)を切状態にすると、前記クラッチピン(41)がクラッチ切規制傾斜面(38e)を通過するまで植付クラッチ(38)の切状態を維持する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の苗移植機とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、植付クラッチ(38)を切状態にする際、油圧式無段変速装置(20)が正回転から逆回転に切り換えられ、クラッチピン(41)がクラッチ爪(38b)に接触したにもかかわらず植付クラッチ(38)が切状態にならなかった場合でも、クラッチピン(41)が逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)に接触することにより植付クラッチ(38)が入状態のまま逆転することを防止できるので、植付クラッチ(38)や苗植付具(28)の破損が防止されて耐久性が向上する。
【0010】
また、植付クラッチ(38)や苗植付具(28)が破損しないことにより、苗の植付作業が中断されることがなく、作業能率が向上する。
請求項2の発明によると、請求項1の発明の効果に加えて、苗植付具(28)が苗を圃場に植え付けた直後に走行操作レバー(43)を前進から後進に切り換えた際、逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)にクラッチピン(41)を接触させて植付クラッチ(38)を確実に切状態にすることができるので、苗植付具(28)が逆転して苗植付爪(28a)に苗押出杆(28b)がロックすることが防止され、植付作業が中断されず作業能率が向上する。
【0011】
また、作業者が苗植付具(28)のロック状態を解除する必要が無く、作業者の労力が軽減される。
請求項3の発明によると、請求項1または請求項2の発明の効果に加えて、苗載せ台(29)の苗が送り出された直後に油圧式無段変速装置(20)を前進から後進に切り替えると、クラッチピン(41)がクラッチ切規制傾斜面(38e)を通過するまで植付クラッチ(38)の切状態を維持することができるので、苗植付具(28)の苗植付爪(28a)が泥水中に進入した状態で停止して苗植付爪(28a)に泥土や夾雑物が詰まることが防止され、苗の取り損ないによる欠株の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】乗用苗植機の全体側面図
【図2】乗用苗植機の全体平面図
【図3】苗植付装置の切断側面図
【図4】植付クラッチとクラッチピンの側面図
【図5】(A)植付クラッチの側面図(B)正面図(C)傾斜カム面を展開した図
【図6】(A)植付クラッチの回転位置を示す側面図(B)植付クラッチの回転位置を示す側面図(C)植付クラッチの回転状態を示す側面図(D)植付クラッチの回転状態を示す側面図(E)植付クラッチの回転状態を示す側面図(F)植付クラッチの回転状態を示す側面図
【図7】(A)畦クラッチレバーの斜視図(B)畦クラッチレバーの側面図
【図8】操作パネルの正面図
【図9】乗用苗植機の別実施例の全体側面図
【図10】苗載せ台の背面図
【図11】(A)苗載せ台端移動検出スイッチがオフとなる苗載せ台の側面図(B)苗載せ台端移動検出スイッチがオンとなる苗載せ台の側面図
【図12】(A)苗載せ台端移動検出センサを設けた苗載せ台の背面図(B)苗載せ台端移動検出センサを設けた苗載せ台の移動を示す背面図
【図13】(A)補助苗載せ台の苗植付作業中の斜視図(B)補助苗載せ台の苗補充中の斜視図(C)補助苗載せ台の苗補充中の側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づきこの発明の実施例について説明する。まず、図1及び図2に基づき本発明を実施する乗用苗植機の全体構成について説明する。
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付装置3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車体とし、全体を乗用苗植機に構成している。走行車体1の前側部左右両側に補助苗載せ台61,61を設けている。
【0014】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8を取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式の無段変速装置20を一体的に組み付け、エンジン12から伝達された動力を前後進切換及び無段変速するように構成している。
【0015】
該ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル9を取り付け、ステアリングハンドル9の下方部位に操作パネル10を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方には合成樹脂製のフロア11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を配設し、操縦席13の後方には施肥装置6を配設している。
【0016】
また、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース(図示省略)を左右両側に向けて延出し、その左右両側部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0017】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸(図示省略)にケース連結フレーム(図示省略)をローリング自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2,2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0018】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して無段変速装置20の入力軸に伝達され、無段変速装置20により前後進切換及び前後進の無段変速がされて、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース(図示省略)内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達されている。
【0019】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前部右側から作業動力がPTO伝動軸(図示省略)に取り出され、PTO軸(図示省略)を経て苗植付装置3及び施肥装置6に伝達されている。
【0020】
前記苗植付装置3は、複数の伝動ケース25,…と、これら伝動ケース25,…を相互に連結している駆動軸ケース(図示省略)と、この駆動軸ケース(図示省略)内の伝動横軸(図示省略)と、伝動ケース25,…に取り付けられていて所定の植付軌跡に沿って駆動される複数の苗植付具28,…と、横方向に往復移動する苗載せ台29等により構成されている。
【0021】
そして、該苗載せ台29の底部に苗送りベルト29bを設け、苗載せ台29が横往復移動装置29cで左右往復移動自在に構成し、苗載せ台29が左右両側端部に移動する毎に苗送りベルト29bを駆動し苗を後側下方に送り、前受け板29aで受けるように構成している。
【0022】
また、左右両側の伝動ケース25,25の下方には車輪跡を消す左右フロート30L,30Rを昇降調節自在に設け、また、中央部の伝動ケース25の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサ(図示省略)により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動して昇降シリンダ31を伸縮調節し、苗植付装置3を所定の植付深さに昇降調節するように構成している。
【0023】
次に、図3に基づき苗植付具28について説明する。
前記複数の伝動ケース25,…の後側部に植付伝動軸35を設け、PTO軸から植付伝動軸35に動力が伝達される。伝動ケース25,…には植付伝動軸35回りに回転するように植付伝動ケース36を回転自在に軸支し、植付伝動ケース36の両端部に苗植付具28,…をそれぞれ取り付けている。そして、植付伝動ケース36内に複数のギヤからなる植付伝動装置37を設け、植付伝動軸35から植付伝動装置37に動力を伝達している。しかして、植付伝動ケース36が所定の回転方向に所定の速度比で回転することにより、苗植付爪28a,28aの先端が閉ループ軌跡を描くように苗植付具28,28が一定姿勢のまま移動し、閉ループ軌跡の上部で苗載せ台29の前板28aの苗取出口から苗を挟持して取り出し、閉ループ軌跡の下端部で苗押出杆28bにより苗を押し出し圃場に植え付ける。
【0024】
また、図4に示すように、伝動ケース25の植付伝動軸35の伝動上手側には植付クラッチ軸39を設け、植付クラッチ38を設けている。この植付クラッチ38にバネ40を介装して左右一側に押圧し、後述する畦クラッチレバー51の入切操作によりクラッチピン41を突出、退避させて植付クラッチ38を入切するように構成している。
【0025】
該植付クラッチ38には、図5に示すように、正回転方向(図5Bの時計方向)の下手側が順次上がり傾斜となる正回転時クラッチ切り傾斜溝38aを形成し、この正回転クラッチ切り傾斜面38aの正回転方向下手側端部にクラッチピン41を受け止めるクラッチ爪38bを設けている。
【0026】
該クラッチピン41を突入してクラッチ切りにすると、クラッチピン41の先端が正回転時クラッチ切り傾斜面38aに接触しながら移動してクラッチ爪38bに当接し植付クラッチ38を停止し、苗植付具28を停止させる。
【0027】
また、植付クラッチ38の正回転時クラッチ切り傾斜面38aの正回転上手側には逆回転時クラッチ切り傾斜面38cを形成している。この逆回転時クラッチ切り傾斜面38cは逆回転方向(図5Bの反時計方向)の下手側が順次上がり傾斜となる傾斜面を形成し、逆回転時にクラッチピン41が接触すると、植付クラッチ38を切るように構成している。
【0028】
前記構成によると、無段変速装置20を正回転から逆回転に切り換え操作した場合に、クラッチピン41を切り状態にしても植付クラッチ38が切り状態にならなかった場合には、クラッチピン41が逆回転時クラッチ切り傾斜面38cに接触作動し、植付クラッチ38を切りにすることができる。
【0029】
また、苗載せ台29の前受け板29aから苗を掻き取った直後の位相で植付クラッチ38を切りにし、無段変速装置20を前進から後進に切り換えた場合にも、逆回転時クラッチ切り傾斜面38cにより苗植付具28を苗掻き取り直後の位相に保ち苗載せ台29の前受け板29a部位への移動を阻止し、苗載せ台29の苗送りアームの抵抗を軽減することができる。
【0030】
また、植付クラッチ38に正回転時クラッチ切り傾斜面38a及びクラッチ爪38bを設け、そのクラッチ爪38bの側方、及び、正回転時クラッチ切り傾斜面38aのクラッチ爪38bに近い部位の外側方に、逆転方向である反時計方向の下手側が順次上り傾斜となる逆転時停止リードカム面38dを形成している。
【0031】
前記構成によると、苗植付具28を苗載せ台29の前受け板29aを抜けた直後で植付クラッチ38を切りにし、無段変速装置20を前進から後進に切り換えた場合に、1/2〜1/3の確率で苗植付具28を苗載せ台29の前受け板29aを抜けた位相近傍で停止させることができ、苗植付具28の苗掻き取り位置での停止を防止し、空植付や苗植付具28の泥詰まりを回避し、植付作業を円滑に行なうことができる。
【0032】
従来装置では、無段変速装置20を前進から後進に切り換えたときに、苗植付具28の逆転を防止するために植付クラッチ38に正回転時クラッチ切り傾斜面38a、38bを設け、植付クラッチ38が切れるように構成していた。このような構成であると、苗の疎植栽培をする場合に、苗植付具28の回転速度を例えば1/2に減速し植付苗を前後方向に2倍の間隔にすると、植付クラッチ38が切れなくなるという不具合が発生することがあった。
【0033】
しかし、上記構成とすると、このような不具合を解決することができる。
また、植付クラッチ38に正回転時クラッチ切り傾斜面38a、クラッチ爪38bを設け、このクラッチ爪38bの更に正回転下手側で、且つ、前記逆回転時クラッチ切り傾斜面38cの逆回転方向上手側部位に、クラッチ切り状態を維持する逆回転方向下手側が上り傾斜のクラッチ切り規制傾斜面38eを設けている。
【0034】
前記構成によると、苗植付具28が苗を圃場に植え付けた直後に、植付クラッチ38を切り、無段変速装置20操作用の走行操作レバー43を前進から後進に操作した場合に、クラッチ切り規制傾斜面38eにクラッチピン41の先端を支持し、植付クラッチ38を切り状態に維持することができる。
【0035】
なお、図6は植付クラッチ38の回転位相を示すもので、図6(A)は苗植付具28が苗載せ台29の前受け板29aを抜けた位相を示し、図6(B)が植付クラッチ38を切りにしたときの苗植付具28の停止位置を示し、図6(C)が苗押出杆28bで苗を押し出した位置を示している。この位置から正回転方向下手側の105度の範囲は植付クラッチ38は自由に回転でき、この105度を越えては正回転できないように構成している。
【0036】
図6(D)が苗載せ台29の苗を苗送り装置で送り出した直後の位置を示し、図6(E)が苗載せ台29の苗を苗送り装置で送り出した直後の位置を示し、図6(F)が苗押出杆28bで苗を押し出した位置を示している。
【0037】
次に、図7に基づき畦クラッチレバー51について説明する。
機体の前側部には畦クラッチレバー51を左右方向の軸回りに回動自在に軸支し、レバーが上方へ回動すると、前記植付クラッチ38が入りとなり、前方下方へ回動すると、切りとなるように構成している。そして、この畦クラッチレバー51を長く構成している。
【0038】
前記苗載せ台29に苗を補給する際に、畦と機体前側部との間にステップ52を掛け渡し、畦クラッチレバー51を前方下方に回動させると、レバー上側端部がステップ52に接触し、レバーとステップ52との間にすき間ができないように構成している。
【0039】
該畦クラッチレバー51を前方下方に回動しクラッチ切りとした際に、ステップ52とレバー51との間にすき間が生じると、苗補給の際にオペレータが畦クラッチレバー51に足を引っ掛け、クラッチ入りとする恐れがある。しかし、前記構成によると、このような不具合を防止することができる。
【0040】
次に、図8に基づき苗載せ台29の作動構成について説明する。
苗植機で苗植作業を開始する際に、苗載せ台29を左右一側のどちらかに寄せなければならない。この操作を容易にしようとするものである。
【0041】
図8、図10に示すように、前記ハンドル9の近傍の操作パネル10に苗載せ台29を右方向または左方向に摺動移動させる苗載せ台移動ボタン55を設ける。そして、苗載せ台29の前受け板29aの左右両端部に左右の側壁55L,55Rを取り付け、該左右の側壁55L,55Rに苗載せ台29が左右どちらかの端部まで移動したことを検出する端部検出スイッチ55a,55aを夫々設ける。
【0042】
該苗載せ台移動ボタン55を操作すると、コントローラの指令により横移動装置が作動し、前記苗載せ台29が苗載せ台移動ボタン55を操作する前に移動していた側に移動する構成としている。
【0043】
上記の構成により、苗載せ台移動ボタン55を操作するだけで苗載せ台29を左右どちらか一側に移動させることができるので、植付クラッチ38を入状態にして細かく苗載せ台29を左右摺動させる必要が無く、苗載せ台29の作業開始位置を迅速且つ適確に合わせることができ、作業能率が向上する。
【0044】
また、図9に示すように、運転席13の後側方に苗載せ台移動ボタン55を設ける構成としてもよい。
上記構成では、作業者が苗載せ台29の左右移動を見るために機体後側を向いた際に押しやすい位置に苗載せ台移動ボタン55が配置されるので、作業能率が向上する。
【0045】
また、図11(A)、(B)に示すように構成してもよい。苗載せ台29が左右両端部に移動すると、苗送り装置の苗送りカム56が反時計回り方向に回動し、カウンタアーム57が時計回り方向に回動し、苗載せ台端移動検出スイッチ58をONする。
【0046】
あるいは、図12(A)、(B)のように構成してもよい。苗載せ台29の苗を受ける前受け板29aの左右両側部には例えば発光素子と受光素子を備えた光電式の苗載せ台端移動検出センサ59,59を設ける。苗載せ台29が左右両端部に移動し、発光素子からの検出光を受光素子が検出しなくなると、苗載せ台29が左右端部へ移動したと判定し、コントローラ(図示省略)に送られ、コントローラの指令で苗載せ台29の移動を停止し、苗送り装置を駆動して苗を前送りする。
【0047】
次に、図13(A)〜(C)に基づき、補助苗載せ台61,61の他の実施例について説明する。
補助苗載せ台61を、機体前側部の左右両側に立設している左右枠体61a,61aと、左右枠体61a,61aに設けている上側補助苗載せ台61b、中間補助苗載せ台61c、下側補助苗載せ台61dとで構成している。
【0048】
上側補助苗載せ台61bの前側端部に前側展開板62の端部を左右方向のピン62a回りに回動自在に軸支し、後側端部に後側展開板63の端部を左右方向のピン63a回りに回動自在に軸支している。そして、前側展開板62を後側に収納回動し、次いで、後側展開板63を前側に収納回動すると、後側展開板63の上面に苗箱64を載置できるようにしている。なお、後側展開板63の前後両端部及び外側端部に苗箱64係止用のストッパ65,…を設けている。
【0049】
前記構成によると、図13(B)、(C)に示すように、前側展開板62及び後側展開板63を前後に展開すると、前側展開板62、上側補助苗載せ台61b及び後側展開板63により、後下がり傾斜の苗送りレールを前後方向に構成することができ、苗箱64を前側から後側の苗載せ台29に楽に供給することができる。
【符号の説明】
【0050】
3 苗植付装置
20 油圧式無段変速装置
29 苗載せ台
28 苗植付具
28a 植付爪
28b 植込み杆
38 植付クラッチ
38a 正回転時クラッチ切り傾斜面
38b クラッチ爪
38c 逆回転時クラッチ切り傾斜面
38e クラッチ切り規制傾斜面
41 クラッチピン
43 走行操作レバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体に走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(20)と、該油圧式無段変速装置(20)を操作する走行操作レバー(43)と、走行車体に設けている苗植付装置(3)の苗載せ台(29)から苗を掻き取る苗植付爪(28a)と、苗植付爪(28a)が掻き取った苗を圃場に押し出す植込み杆(28b)を備えた苗植付具(28)と、苗植付装置(3)への動力伝達を入切する植付クラッチ(38)と、該植付クラッチ(38)を入切するクラッチピン(41)と、前記植付クラッチ(38)には前記クラッチピン(41)を受ける正回転時クラッチ切り傾斜面(38a)及び該正回転クラッチ切傾斜面(38a)の正回転下手側端部にクラッチピン(41)受け止め用のクラッチ爪(38b)とを備えた苗移植機において、
前記正回転時クラッチ切傾斜面(38a)の正回転方向上手側には逆回転方向下手側が順次上がり傾斜となる逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)を設け、前記クラッチ爪(38b)にクラッチピン(41)が接触しても植付クラッチ(38)が切状態とならない場合にはクラッチピン(41)が前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記苗植付具(28)が苗を圃場に植え付けた直後に前記走行操作レバー(43)を前進から後進に切り換えると、前記クラッチピン(41)が逆回転時クラッチ切り傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記植付クラッチ(38)に前記クラッチ爪(38b)よりも正回転方向下手側で且つ前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)の逆回転方向下手側部位に逆回転方向下手側が上り傾斜のクラッチ切規制傾斜面(38e)を形成し、前記苗載せ台(29)の苗が送り出された直後に前記無段変速装置(20)を前進から後進に切り替えて植付クラッチ(38)を切状態にすると、前記クラッチピン(41)がクラッチ切規制傾斜面(38e)を通過するまで植付クラッチ(38)の切状態を維持する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の苗移植機。
【請求項1】
走行車体に走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(20)と、該油圧式無段変速装置(20)を操作する走行操作レバー(43)と、走行車体に設けている苗植付装置(3)の苗載せ台(29)から苗を掻き取る苗植付爪(28a)と、苗植付爪(28a)が掻き取った苗を圃場に押し出す植込み杆(28b)を備えた苗植付具(28)と、苗植付装置(3)への動力伝達を入切する植付クラッチ(38)と、該植付クラッチ(38)を入切するクラッチピン(41)と、前記植付クラッチ(38)には前記クラッチピン(41)を受ける正回転時クラッチ切り傾斜面(38a)及び該正回転クラッチ切傾斜面(38a)の正回転下手側端部にクラッチピン(41)受け止め用のクラッチ爪(38b)とを備えた苗移植機において、
前記正回転時クラッチ切傾斜面(38a)の正回転方向上手側には逆回転方向下手側が順次上がり傾斜となる逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)を設け、前記クラッチ爪(38b)にクラッチピン(41)が接触しても植付クラッチ(38)が切状態とならない場合にはクラッチピン(41)が前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記苗植付具(28)が苗を圃場に植え付けた直後に前記走行操作レバー(43)を前進から後進に切り換えると、前記クラッチピン(41)が逆回転時クラッチ切り傾斜面(38c)に接触して植付クラッチ(38)を切状態にする構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記植付クラッチ(38)に前記クラッチ爪(38b)よりも正回転方向下手側で且つ前記逆回転時クラッチ切傾斜面(38c)の逆回転方向下手側部位に逆回転方向下手側が上り傾斜のクラッチ切規制傾斜面(38e)を形成し、前記苗載せ台(29)の苗が送り出された直後に前記無段変速装置(20)を前進から後進に切り替えて植付クラッチ(38)を切状態にすると、前記クラッチピン(41)がクラッチ切規制傾斜面(38e)を通過するまで植付クラッチ(38)の切状態を維持する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−217685(P2011−217685A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91438(P2010−91438)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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