説明

苛性流から残留硫黄化合物を除去するプロセス

本発明は苛性溶液から残留硫黄化合物を除去するプロセスに関する。一実施態様では、活性炭吸着剤を用いて苛性溶液から二硫化物を吸着除去し、また他の実施態様では、固体吸着剤に担持された金属フタロシアニンを用いて富苛性溶液から残留硫黄化合物を除去するために単一工程内に酸化と吸着を組み合わせる。同プロセスは、苛性溶液再生プロセスのフロースキーム内での仕上げプロセスとして特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には液状苛性流から残留硫黄化合物を除去するプロセスに関する。より詳細には、一実施態様では、活性炭吸着剤を用いて苛性流から二硫化物を吸着除去するプロセスに関する。また、他の実施態様では、固体吸着剤に担持された金属フタロシアニンを用いて苛性流から残留硫黄化合物を除去するための吸着と接触酸化の組み合わせにも関する。更に、仕上げプロセスとして苛性再生を用いた炭化水素から硫黄系汚染物質を除去するためのプロセスにも本発明は集積可能であり、これにより高価な溶剤による洗浄プロセスの必要性を最少化する。
【背景技術】
【0002】
苛性物を用いた炭化水素流からの硫黄系汚染物質、具体的にはメルカプタン、の除去はよく知られている。同様にして、これらメルカプタンを、酸素存在下で固体触媒を用い富苛性流を接触させることにより二硫化物に酸化し次いで使用済み苛性流から前記二硫化物を分離することもよく知られている。採用された酸化プロセス及び/又は分離プロセスの種類にかかわらず、使用後の苛性溶液中には残留硫黄化合物が必然的に存在することになろう。より経済的かつよりコンパクトなプロセスが緊急に必要とされている現状では、伝統的溶剤による洗浄プロセスに代るより小型でより効率的なプロセスにより硫黄で汚染された炭化水素を処理するための再使用可能な硫黄フリー苛性物を得る必要性がある。
1990年に成立した米国大気汚染防止法により、北米諸国のガソリン・プールでの10wppm未満の硫黄分濃度の規制が頂点に達した。実際的な観点からは、このことは、製油所は以前の出荷分のパイプライン壁面に「付着」した硫黄分による汚染を勘案して通常は5wppm未満の硫黄分濃度のガソリンを製造することと同法により規定される試験法の正確さが要求されることを意味する。
【0003】
同法がもたらした他の結末は米国での小規模かつ非効率的な製油所の閉鎖であり、その結果、製油所数は1980年での330以上から2007年での175未満に減少した。新規製油所は過去25年間建設されず、既存製油所の拡張と輸入により米国ガソリン需要を満たしている。
【0004】
既存の製油所は流動接触分解装置の運転の過酷度を上げてバーナー燃料量を低減し、追加的な量のオクタン価がより高いガソリンを製造すると同時にオレフィン生成量を上げている。これらのオレフィン類は、プロパン/プロピレン及びブタン/イソブタン/イソブチレンである。これらのオレフィン類は、後続のアルキル化装置の原料となる。一部の製油所は、経済的なモデル次第ではアミレン類(ペンテン)をアルキル化処理している。
【0005】
大半の製油所は、ブチレン類の混合物又はプロピレン類とブチレン類の混合物をアルキル化処理するためにHF(フッ化水素酸)又は硫酸を用いている。アルキル化はイソブチレンとオレフィンを反応させて分岐鎖パラフィンを作るプロセスである。硫黄はアルキル化プロセスにとっては有害であるので、大半の製油所は、混合オレフィン系の液化天然ガス(「LPG」)流中に存在する容易に抽出可能なメチルメルカプタン類及びエチルメルカプタン類の除去、並びに抽出がより困難なプロピルメルカプタン類の除去のために苛性処理システムを採用している。
【0006】
典型的には、苛性処理のために液−液接触器が、場合によっては繊維膜を使用した接触器が採用されている。後者の例は米国特許第3,758,404号、第3,977,829号及び第3,992,156号に開示されている。これらの特許文献の全てが本明細書内に参照されている。苛性物の節減のために、苛性物再生器がほとんど常に採用されている。LPG処理のための典型的なプロセスのフロースキームは、少なくとも一基の液−液接触器を用いる第一苛性処理工程を包含し、これにより硫黄系汚染物質、典型的にはメルカプタン、をLPG流から抽出する。これによりメルカプタン濃度の高い「消費済み」苛性溶液、すなわちいわゆる富苛性溶液、が発生する。次いでLPGを同接触器内で分離し、前記富苛性溶液を酸化処理してメルカプタンを二硫化物(典型的には二硫化物油(「DSO」)と参照される)に転化し「酸化済み」苛性溶液が発生する。次いで、重力分離器により前記酸化済み苛性溶液からDSOを分離する。場合によっては、コアレッサーとしての重力沈降装置に粒状石炭層を組み合わせて、前記酸化済み苛性溶液からのDSOの分離を促進する。DSOが除去された後、再生苛性溶液は更に処理され次いで再循環され得る。この場合、再循環流は新苛性物の補給を受け、原料LPGの処理のために液−液接触器に供される。より典型的には、未転化のメルカプタン及び残留DSOを低減して硫黄濃度を好ましくは硫黄として5重量ppm未満にまで低下するために仕上げプロセスを追加する。抽出効率の低下を招き及び下流で二硫化物を形成する可能性があるので、再生済み苛性流中の実質的なメルカプタンの存在は望ましくない。再生苛性溶液にDSOが実質的に存在すると、炭化水素−苛性溶液抽出プロセス中に炭化水素内へDSOの不本意な再入又は逆抽出を招く。
【0007】
溶剤洗浄は既知の技術であり、苛性物からの残留DSOの抽出のための仕上げ工程にしばしば採用される。しかしながら、物質移動及び平衡からの制約により、これらの溶剤洗浄装置の運転は通常は多段操作を必要とし投資/運転コストを上昇させる。更に、溶剤洗浄は、苛性物からメルカプタンを除去するには非効率的である。同様に、遠心プロセス及び膜分離プロセスもコストが高く、また硫黄分濃度を5重量ppm未満にまで低減する能力はない。
【0008】
吸着による仕上げは採用可能な他の技術である。吸着による脱硫はガソリンやディーゼル燃料のような炭化水素流からの硫黄化合物除去に適用されている。これらの例は米国特許第7,093,433号,第7,148,389号、第7,063,732号及び第5,935,422号に開示されている。しかしながら、これらの特許文献及び他の文献に開示されている吸着剤は苛性媒体に対しては非効率的である。
【0009】
従って、仕上げプロセスとして苛性流から二硫化物及びメルカプタンの両方を経済的に除去して、硫黄分濃度を20重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、最も好ましくは2重量ppmにまで低下させるために採用可能な技術の開発の必要性は残っている。
本発明のプロセスは、酸化(oxidation)及び吸着分離(absorption separation)(OAS)の単一工程により苛性溶液から二硫化物及びメルカプタンの両方を除去する。同OASプロセスは、仕上げ工程としての溶剤洗浄にとって代わり、多量のDSO除去後に使用された時、残留メルカプタンをDSOに転化し、及び、系中でメルカプタンから形成されたDSOを含む全残留DSOを除去する。更に、投資及び運転コストの最少化により、苛性溶液から残留硫黄化合物を除去するための伝統的方法に比べて本プロセスは極めて経済的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,758,404号
【特許文献2】米国特許第3,977,829号
【特許文献3】米国特許第3,992,156号
【特許文献4】米国特許第7,093,433号
【特許文献5】米国特許第7,148,389号
【特許文献6】米国特許第7,063,732号
【特許文献7】米国特許第5,935,422号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、本発明は、苛性溶液再生中に形成された酸化済み苛性溶液中に残留する硫黄化合物除去のためのプロセスに関する。一態様では、同発明は残留DSOを活性炭吸着剤に吸着することができ、それにより回収された苛性流が硫黄化合物濃度を20重量ppm(硫黄として)未満、好ましくは5重量ppm未満にまで低減する。
【0012】
メルカプタンをDSOに転化する手段としての酸化プロセスの採用はよく知られているけれども、この種のプロセスは典型的にはメルカプタン全量をDSOに転化することはできず、従って5%まで又はそれを越える量のメルカプタンが酸化反応生成物流内に残留する。本発明以前では、未転化メルカプタンは必然的に再生苛性流中に残留し、これは後続の苛性流−炭化水素抽出プロセスに悪影響を及ぼす。本発明以前に達成不能であったことは、単一の工程で残留メルカプタンをDSOに転化し、通常は富苛性流の酸化プロセスに続く分離プロセスで除去されなかったDSOを含むDSOを吸着できることであった。本発明は新規及び既存の苛性再生プロセスのフロースキームに容易に結合でき、そこでは、LPG及び他の炭化水素流からの硫黄系不純物が貧苛性流と接触する際に富苛性流が発生する。
【0013】
本明細書で使用される二硫化物油、すなわちDSO、は、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、メチルエチルジスルフィド及びより高級な二硫化物を含めた存在し得る二硫化物の混合物を包含することを意味する。同様にして、メルカプタンとの用語は全ての種類の有機硫黄化合物を包含することを意味し、この種の化合物はアルコール又はフェノールに似ているが酸素原子の代りに硫黄原子を有し、特にメルカプチドを有している。直接的に炭素原子に結合した主要基としての−SHを有する化合物を「チオール」と呼んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、苛性原料流から残留硫黄化合物を除去するプロセスを包含する、すなわち、苛性物及び硫黄化合物を含んでいる苛性原料流を仕上げ装置に導入する工程であって前記硫黄化合物が硫黄として500重量ppm未満好ましくは100重量未満ppmもっとも好ましくは50重量ppm未満を含んでいる工程;前記苛性流を吸着剤固体床に接触させる工程;前記仕上げ装置に導入された前記苛性原料流中の前記硫黄化合物の一部としての二硫化物を前記吸着剤に吸着させる工程;並びに(硫黄として)20重量ppm未満好ましくは5重量ppm未満もっとも好ましくは2ppm未満の硫黄化合物を含んでいる仕上げ済み苛性流生成物を前記仕上げ装置から取り出す工程、の組み合わせを包含する。好ましい吸着剤はDSO吸着能の高い活性炭であり、これは0.5〜1.5cc/g BJH Nの細孔容積及び、又は500〜2,000m/g BETの表面積を有し、例えば石炭、褐炭、木材、泥炭、オリーブ種、ヤシ殻などの原料から製造される。これらの活性炭として、Norit褐炭からのMRX、MeadWestvaco木材からのNucharシリーズ、Calgon炭からのCPGが例示される。活性炭は粒状又は押出により製造されたペレット状である。本発明での運転温度は約50〜約212°F、好ましくは約75〜約175°F、最も好ましくは約75〜約150°Fの範囲内にある。本プロセスは、常圧で又は苛性溶液再生プロセスでのフロースキームで典型的に使用される圧力で、運転できる。
【0015】
本発明の他の態様は、苛性原料流から残留硫黄化合物を除去するプロセスに関する、すなわち、苛性物及び硫黄化合物を含んでいる苛性原料流を仕上げ装置に導入する工程であって前記硫黄化合物は硫黄として500重量ppm未満好ましくは100ppm未満もっとも好ましくは50ppm未満を含んでいる工程;前記仕上げ装置に酸化剤を導入する工程;担持された金属フタロシアニンを含んでいる触媒床の存在下前記苛性原料流と酸化剤を混合及び接触させる工程;前記硫黄化合物の一部として存在するメルカプタンを二硫化物に転化する工程;前記メルカプタンから系内で形成された二硫化物及び前記仕上げ装置に導入された前記苛性原料流中の前記硫黄化合物の一部としての二硫化物を触媒担体に吸着させる工程;並びに、(硫黄として)20重量ppm未満好ましくは5重量ppm未満もっとも好ましくは2重量ppm未満の硫黄化合物を含んでいる仕上げ済み苛性流生成物を前記仕上げ装置から取り出す工程、の組み合わせを包含する。
【0016】
上記の目的及び他の目的は以下に述べる好ましい実施態様の詳細な説明により更に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のプロセスの可能性のある一実施態様を模式的に示している。同プロセスは、吸着のみ又は酸化と吸着を組み合わせた単一の工程で酸化処理を受けた苛性流から残留硫黄化合物を除去し、富苛性流の酸化により発生したDSOの大半を分離する。
【0018】
【図2】本発明の効果を図式的に示している。ここでは、平均86重量ppmの硫黄化合物を含有する苛性原料が仕上げられ、含有するメルカプタンが1重量ppm未満、及びDSOが2重量ppm未満となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
前述したように、本発明は、酸化中に形成したDSOの多量の分離後に酸化済み苛性流から残留硫黄化合物を除去するために設計された苛性流再生のプロセス・スキームに結合される新規なプロセスに関する。本発明の特定の一適用例は、酸化済み苛性流から残留硫黄系不純物を除去する仕上げプロセスに関する。この種の不純物は下流プロセス、特にLPGのような炭化水素の苛性溶液による処理、に対して有害である。より詳細には、本発明は、硫黄濃度が5重量ppm未満であって不純物含有の炭化水素に接触させるために再循環するに適した貧苛性溶液を得るための高価な溶剤洗浄の必要性を取り除く。
【0020】
図1は本発明の一実施態様を模式的に示しており、そこでは例えばメチル及びエチルメルカプチド等のメルカプタン化合物で汚染されたLPG原料は配管1により苛性流処理部3に供給される。苛性流処理部の具体的な設計は本発明にとっては非常に重要な事柄ではない。しかしながら、好ましい設計の例として向流構成で運転される多段接触器が挙げられ、最も好ましい例として繊維膜を用いた液−液接触器構成である。これら及びその他の接触器構成は当業者にはよく知られている。貧苛性流は配管5により接触器処理部3に供給され、そこで配管1で導入されたLPGと接触する。本発明で用いられる前記苛性流は炭化水素のスイートニング技術分野で知られているいかなるものでもよく、NaOH、KOH、Ca(OH)、NaCO、アンモニア、有機酸の抽出物及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、前記苛性流は水酸化カリ及び水酸化ナトリウムの水溶液であり、これらの濃度は、アルカリ水酸化物の重量基準で、約1〜約50%、好ましくは約3〜約25%、更により好ましくは約5〜約20%である。
【0021】
実質的に硫黄不含有のLPGは配管7により接触器部3から取り出され、例えばアルキル化ユニット等の後続のプロセスで使用される。「実質的に硫黄を含有していない」とはLPG中の全硫黄濃度は<150ppm、好ましくは<20ppm、より好ましくは<10ppmであることを意味する。接触器部3からの苛性溶液は富苛性溶液であり配管9により取り出される。富苛性流は、LPG原料から抽出除去されたメルカプチド及びその他の硫黄不純物の形のメルカプタンである。
【0022】
苛性流処理部からの富苛性流は次いで酸化器10に導入される。液−液接触器と同様に、酸化器の詳細な設計は本発明にとって非常に重要ではなく、例えば気泡酸化器、非触媒系固体充填物及び固体触媒技術のような、酸化器をどのような数で用いてもよい。好ましい酸化器は、触媒の固体床を用いたもので、その触媒は、好ましくは、コバルトのような活性金属を含有し、例えば活性炭等の固体担体に含浸されている。最も望ましい触媒の一つはARI(登録商標)−120Lのブランド名でMerichem Companyにより提供されているものである。本発明の他の実施態様では、少量の溶剤流11が前記富苛性流と共に酸化器10に導入される。この溶剤流は前記富苛性流と混合されたのちに酸化器に入ってもよく、又は独立流として酸化器内に噴射されてもよい。同溶剤は、酸化処理後の苛性溶液からのDSOの分離を下流で促進するものであればどのような軽質炭化水素でもよい。本発明では、どのような比較的軽質の炭化水素、又はそれらの混合物を用いてもよいが、好ましい溶剤を例示すると、ナフサ及びケロシンである。この種の溶剤がどのような機構により酸化済み苛性溶液からのDSOの分離を促進するかは明らかではないが、一つの理論によればこの種の溶剤は苛性流よりも遥かに高いDSO溶解性を有しており、このような溶解性の相違により抽出の推進力が提供される。より広い界面面積を有する繊維膜を有するプロセスで処理されたならばこのような効果は更に増幅される。苛性原料流に基づく溶剤の容積割合は、それが前記富苛性流と共に酸化器に噴射されるか又は独立に噴射されるかにかかわらず、下流の分離性能の上昇を促進するための最少限度を守っている限り特に重要なことではない。前述したように、溶剤の必要量はほんのわずかであり、配管9経由の前記富苛性原料に対する好ましい割合は約0.1〜約10.0容量%、より好ましくは約0.5〜約5.0容量%である。
【0023】
酸化器への前記富苛性流及び溶剤の原料の他に、空気、過酸化水素又は少なくとも1種の酸素含有ガス等の酸化剤、を配管12を通して酸化器へ導入される。酸化器に添加される酸化剤の量は、元々LPG中に存在するメルカプタン化合物の95%以上、最も好ましくは99%以上、を二硫化物化合物に酸化するに十分な量とする。酸化器運転条件の好ましい範囲は、温度が約75〜約200°F、苛性溶液の液速が10LHSVまで、しかし好ましくは約100〜約150°F及び5LHSV未満である。本発明での運転圧力は、プロセス流を液状に維持する限り非常に重要ではない。
【0024】
酸化器10からの流出物、すなわち、苛性流とDSOと(メルカプチドとしての)残留メルカプタンの混合物である酸化済み苛性流は、配管13により酸化器10から取り出されて分離器14に通され、そこで多量のDSOが前記苛性流から分離される。分離は既知のどのような技術に基づいてよく、典型的には重力沈降に基づく。
【0025】
分離器14の運転中に、回収容器内21底部に二層;苛性溶液を含む下部層23及び酸化工程中に形成した多量のDSOを含む上部層22、が形成される。前述したように、図1は他の態様のプロセスをも図示している。同態様では、少量の溶剤流が酸化器10の上流に添加され、同溶剤はDSOと共に上部層22に取り出される。もし発生したならばオフガスは配管15により回収容器21の上部から放出される。上部層22中のDSOは配管16により分離器14から取り出され、貯蔵設備又は追加処理に送られる。
【0026】
分離器14内の滞留時間は前記苛性相から最大限のDSOの取り出しを達成する観点から選択され、メルカプタンを含む全硫黄化合物の目標濃度は500重量ppm未満、より具体的には100重量ppm未満である。重力沈降器内での典型的な滞留時間は90分以上である。
【0027】
配管17により取り出される下部層の前記苛性溶液の移動速度は同層内での硫黄系不純物の濃度を500ppm以下に維持するに適切な滞留時間を確保するように調整される。ストリーム17の分離済み苛性溶液は次いで仕上げ装置24に送られ、そこで残留DSOは固体吸着剤、好ましくは活性炭、上に吸着される。前記苛性溶液がメルカプタンを含有している場合には、メルカプタンを二硫化物に転化するために同活性炭は金属触媒を担持する。これらの二硫化物は次いで固体吸着剤上に吸着される。このようなメルカプタンの転化を促進するために、酸化剤も仕上げ装置24に導入される(図中、点線20で示されている)。同装置に導入される酸化剤の量は、メルカプタンを二硫化物に転化するに必要とされる化学量論量の少なくとも1倍、好ましくは2倍に設定すべきである。前述したように、好ましい固体吸着剤は0.5〜1.5cc/g BJH Nの細孔容積、及び/又は、500〜2,000m/g BETの表面積、を有する活性炭である。金属触媒は好ましくは金属フタロシアニンであり、同金属は最も好ましくは鉄、コバルト又はそれらの混合物から選ばれ、固体吸着剤により担持される。本発明は再生プロセスを装備してもよく、これにより固体吸着剤は定期的に再生処理を受ける。当業者は、系内及びカラム外の両方で、吸着剤層の再生方法は数多く存在することを理解されよう。これらを例示すればイオン交換、溶剤逆混合、焼成、熱分解などである。どの方法を用いるかは、選択された吸着剤、触媒が存在するか否か、ならびに仕上げプロセスの全般的な経済性及び有効性によって決まる。
【0028】
本発明は、硫黄系不純物濃度が5重量ppm未満の貧苛性流を生成できる。最終純化済み苛性流は貧苛性流として容器24から取り出され、配管5によって苛性流処理部3に再循環される。
【実施例】
【0029】
本発明の驚くべきかつ予想外の性能を実証するために実験室規模の試験を実施した。直径1インチ、高さ4フィートのカラムに、コバルトフタロシアニンを事前に含浸した活性炭を充填した。平均86重量ppmの硫黄化合物を含有する原料苛性流を空気流と共に前記カラムに供給した。同空気量はメルカプタンを完全に二硫化物に転化するに必要な化学量論量の5倍を越えるものであった。同カラムを125°F、25psigに維持した。
【0030】
本発明の性能を図2に示している。前記原料苛性流が平均86重量ppmの硫黄化合物を含有し、製造苛性流は1重量ppm未満のメルカプタン及び2重量ppm未満二硫化物を含有した。全硫黄化合物は5重量ppmを実質的に下回る。
【0031】
更に驚くべきことは、この性能は少なくとも137時間にわたる連続運転期間中に一貫しており大きな破過が観察されなかったという点である。この期間中に活性炭層が吸着した硫黄化合物は自身の重量の約17%(硫黄として)に達した。
【0032】
活性炭層が最終的に飽和状態になれば、多サイクル運転使用のために新活性炭か再生活性炭を充填する必要があると思われる。いずれを採用するかは、再生の経済性/有効性次第である。
【0033】
特定の実施態様に関する上述の説明は、本発明の一般的な考え方から逸脱することなく他が現行の知識の適用によりこれら特定の実施態様を容易に変更及び/又は各種の適用に採用することを可能にするに十分に本発明の本質を記載している。従って、この種の採用及び変更は、開示された実施態様と同等の意味及び範囲内に包含されることを意味している。本明細書で使用される用語、表現法は説明のためであって本発明を制約するものではないと解されるべきである。
【0034】
開示された各種の機能を実施するための手段、材料及び工程は、本発明から逸脱することなく多くの異なった形式を取ることが可能であろう。従って、上述の記載又は後述の特許請求の範囲に見られる可能性のある、その後に機能説明が続く「〜を達成するための手段」又はどのような工程説明の言葉も、どのような構造的、物理的、化学的、電気的な要素あるいは構造、又はどのようなプロセス工程をも規定又は包含することを意味している。これらは開示されている機能を実施するために現在又は将来において存在する。これらが、正確に上述の明細書内に開示された一つ又は複数の実施態様に同等であるか否かにかかわらずである。このことは、同一の機能を実施するために他の手段や工程が採用され得ることを意味する。従って、この種の表現には、後述の特許請求の範囲に用いられる用語の範囲内において最も広義の意味が与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苛性原料流から残留硫黄化合物を除去する方法であって、
a)苛性物及び硫黄化合物を含んでいる苛性原料流を仕上げ装置に導入する工程であって、前記硫黄化合物が硫黄として500重量ppm未満を含んでいる、工程、
b)前記苛性原料流を前記仕上げ装置内の吸着剤固体床に接触させる工程、
c)前記苛性原料流中の前記硫黄化合物の一部として前記仕上げ装置に導入された二硫化物を前記吸着剤床に吸着させる工程、並びに、
d)(硫黄として)20重量ppm未満の硫黄化合物を含んでいる仕上げ済み苛性流生成物を前記仕上げ装置から取り出す工程、
の組み合わせを包含する、
方法。
【請求項2】
前記苛性原料流中の前記硫黄化合物が硫黄として100重量ppm未満を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仕上げ済み苛性流生成物中の前記硫黄化合物が硫黄として5重量ppm未満を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤が活性炭である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤の少なくとも一部が再生プロセスに供される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
苛性原料流から残留硫黄化合物を除去する方法であって、
a)苛性物及び硫黄化合物を含んでいる苛性原料流を仕上げ装置に導入する工程であって、前記硫黄化合物は硫黄として500重量ppm未満を含んでいる、工程、
b)前記仕上げ装置に酸化剤を導入する工程、
c)担持された金属フタロシアニンを含んでいる触媒床の存在下前記仕上げ装置内で前記苛性原料流と酸化剤を混合及び接触させる工程、
d)前記硫黄化合物の一部として前記苛性原料流中に存在するメルカプタンを二硫化物に転化する工程、
e)工程d)で形成した二硫化物、及び前記苛性原料流中の前記硫黄化合物の一部として前記仕上げ装置に導入された二硫化物、を触媒担体に吸着させる工程、並びに、
f)(硫黄として)20重量ppm未満の硫黄化合物を含んでいる仕上げ済み苛性流生成物を前記仕上げ装置から取り出す工程、
の組み合わせを包含する、
方法。
【請求項7】
前記苛性原料流中の硫黄化合物が硫黄として100重量ppm未満を含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記苛性原料流中の前記硫黄化合物が(メルカプチドとして)メルカプタン及び二硫化物を含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記メルカプタンが前記苛性原料流中に(硫黄として)50重量ppm未満を含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
金属フタロシアニンを含浸した活性炭固定層を有する前記仕上げ装置内で前記苛性原料流と酸化剤が接触する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が空気又は少なくとも1種の酸素含有ガスである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記金属がコバルト、鉄及びその混合物からなる群から選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記活性炭が0.5〜1.5cc/g BJH Nの細孔容積及び/又は500〜2,000m/g BETの表面積を有している、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記活性炭が木材系である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記吸着剤の少なくとも一部が再生プロセスに供される、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記仕上げ済み苛性流生成物中の硫黄化合物が硫黄として5重量ppm未満を含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
富メルカプタン苛性流を処理する方法であって、
a)メルカプタン化合物を含有する富苛性流を酸化器に供給する工程、
b)酸化剤の存在下で90%以上の転化率で前記メルカプタン化合物を二硫化物油(DSO)に酸化し、DSO及び苛性物を含む混合物並びに残留メルカプタンを形成する工程、
c)工程b)で形成された混合物を酸化器から取り出し、その混合物を分離器に導入する工程、
d)回収ゾーンで、前記混合物から、苛性相を含む下層及びDSO相を含む上層の異なる二液層を形成させることにより、前記分離器内で前記苛性物から実質的な量の前記DSOを分離する工程、
e)前記上層を抜き出すことにより前記分離器からDSO相を取り出し、及び、前記下層を抜き出すことにより前記分離機から500重量ppm未満の硫黄化合物を含有する苛性層を取り出す工程、
f)工程e)からの苛性流を原料流として仕上げ装置に導入する工程、
g)前記仕上げ装置に酸化剤を導入する工程、
h)担持された金属フタロシアニンを含む触媒床の存在下前記仕上げ装置内で前記苛性流と酸化剤を混合及び接触させる工程、
i)工程f)の苛性流中に硫黄化合物の一部として存在するメルカプタンを二硫化物に転化する工程、
j)工程i)で形成した二硫化物、及び、工程f)の苛性流中の硫黄化合物の一部として前記仕上げ装置に導入された二硫化物、を触媒担体に吸着させる工程、並びに、
k)(硫黄として)20重量ppm未満の硫黄化合物を含む仕上げ済み苛性流生成物を前記仕上げ装置から取り出す工程、
の組み合わせを包含する、
方法。
【請求項18】
前記吸着剤が再生プロセスに供される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記仕上げ装置向けの苛性原料流中の硫黄化合物が硫黄として100重量ppm未満を含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記仕上げ済み苛性流生成物中の硫黄化合物が硫黄として5重量ppm未満を含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記酸化剤が空気又は少なくとも1種の酸素含有ガスである、請求項17に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−538822(P2010−538822A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524832(P2010−524832)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/006404
【国際公開番号】WO2009/035480
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(503466820)メリケム カンパニー (5)
【Fターム(参考)】