説明

若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法

【課題】 新しい定義による相対密度を用いた細粒なシルトを含む若齢地盤の液状化抵抗に関する一連の実験結果に基づき調査対象の地盤の含水比から容易に液状化抵抗が推定できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 最小法による相対密度は調査対象の試料間隙比及び最大、最小間隙比より求められるが、その中の試料間隙比はその試料の含水比から計測して求め、最小間隙比は最小法により定義された試験により求める。この求められた調査対象の最小法による相対密度により、若齢な地盤に関する一連の実験結果の各種破壊基準をパラメータとした図表により容易に繰返し抵抗つまり液状化抵抗を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海岸埋立地のような若齢な地盤における非塑性または極めて低塑性で均質な粒径の砂からシルトの細粒な土よりなる地盤の液状化抵抗推定方法に関する。詳しくは、非排水抵抗、繰返し抵抗、すなわち液状化抵抗推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤の液状化抵抗推定方法は大きく分けて2通りある。ひとつは標準貫入試験より求められるN値やコーン貫入試験により求められるコーン貫入抵抗などのサウンディング結果に基づくもの、もう一つは地盤より不撹乱試料を採取するか、撹乱試料を採取し、地盤と同密度の供試体を作成し、液状化試験を実施するものである。
【0003】
前者は、地盤の強さをサウンディングにより求め、その結果求められるN値やコーン貫入抵抗と、液状化抵抗の関係を求めておき、種々の補正を行い地盤の液状化抵抗を求める方法である。
【0004】
後者は、地盤の液状化抵抗を乱さないようにサンプリングした試料を用い、試験室で地盤と同じ応力状態を再現し、直接的に液状化抵抗を求めようとする方法である。
【0005】
上記の両方法とも、主に砂が対象とされてきた。近年に到り、液状化が生じる地盤は砂地盤のみではなく、シルトが卓越した細粒な土よりなる地盤も液状化することが明らかになった。
【0006】
このような細粒な土の液状化抵抗推定方法は、前記した前者の方法の場合は、求められたN値などを細粒分含有率(粒径0.075mm以下の通過質量百分率)で補正することが一般的に行われていた。
【0007】
しかしながら、この補正方法は種々あり、それぞれの補正方法によって結果が異なっていた。また、N値などは拘束圧の影響を受けるので、この補正も必要であるが、この補正方法も統一されたものがなく、その補正方法により異なった結果となる問題があった。
【0008】
一方、後者の方法の場合は、排水性の高い砂であれば凍結サンプリングなどにより良質な不撹乱試料が採取可能であるが、細粒分が多い場合には凍結サンプリングを行うと、かえって試料を乱すことが明らかにされ、正確な液状化抵抗を推定することができない問題があった。
【0009】
一方、発明者らは、海岸埋立地のような若齢な地盤における非塑性または極めて低塑性で、均質な粒径の砂から細粒な土のシルトまでの「繰返し非排水せん断抵抗」すなわち「液状化抵抗」が粒径に依存しないことを明らかにした。(非特許文献1)
【0010】
非特許文献1には、その論文で新たに定義した最小法による相対密度が同じという条件や、同じN値という条件下では、液状化抵抗は粒径に依存しないことを明らかにした。尚、最小法については非特許文献1、P295(2)及び図11、12及び非特許文献2に記載されている。
【0011】
さらに、この新しい定義(最小法)による相対密度及び標準貫入試験より求められるN値と、液状化抵抗の相関が高いことを示してきた。尚、以下「繰返し非排水せん断抵抗」は省略して簡単に「繰返し抵抗」と呼ぶ。
【0012】
【非特許文献1】沼田・嶋本著「N値と相対密度を条件とした非塑性で細粒な土の液状化抵抗」土木学会論文集No.764/II―67、pp.287−305,2004
【非特許文献2】沼田他「細粒な土に対する最小間隙比定義方法の提案」第11回日本地震工学シンポジウム pp.665〜670、2002.11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述の問題に鑑みてなされたもので、前記の新しい定義による相対密度を用いた細粒なシルトを含む若齢地盤の液状化抵抗に関する一連の実験結果に基づき調査対象の地盤の含水比から容易に液状化抵抗が推定できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法は、 若齢な正規圧密状態、非塑性または極めて低塑性、均等粒径の飽和地盤で、その50%粒径0.2mm程度以下の液状化の可能性のある粒度組成を有する地盤の液状化抵抗推定方法であって、
調査対象の試料の含水比W(%)が変化しないように採取し、
次に、その試料の含水比Wから飽和度Sを100%として前記地盤の間隙比eを式(1)により求め、
e=ρ・W/(ρ・S)・・・(1)
ここで、ρ:土粒子の密度(g/cm
ρ:水の密度(g/cm
次に前記試料が多量に採取できる場合には、最大間隙比emaxは、JIS(A
1224)で定義される方法で求め、最小間隙比eminは振動を与えたり、含水
比や突固めエネルギーを変えて締固めるなどして物理的に得られる最小な間隙
比として定義される最小法で求め、
一方、前記試料が多量採取できない場合には、最大間隙比emaxはJIS(A
1224)で求め、最小間隙比eminは0.6程度と仮定し、
次に、前記いずれの場合であっても、最大、最小間隙比emax、minが定まれば、前記試料の間隙比eより最小法で定義された相対密度Drmm(%)を下記式(2)より求め、
Drmm=(emax−e)/(emax−emin)×100・・・(2)
次に、海岸埋立地のような若齢な地盤に対して相対密度Drmmと、繰返し抵抗、すなわち液状化抵抗Rとの関係を示した実験結果の一連のDrmm対R図表に基づいて、前記式(2)で求められた相対密度Drmmより前記調査対象試料を採取した地盤の液状化抵抗Rを求めることを特徴とする。
【0015】
また、前記Drmm対R図表は、前記試料の供試体の繰返し非排水三軸試験に際して、両振幅軸ひずみDA又は過剰間隙水圧比Δu/σ’(ここでのσ’は所定の有効拘束圧)が所定の値に達する繰返し回数Ncをパラメータとして作成され、
前記DA、Δu/σ’、Ncについて液状化抵抗を求められることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法によれば、従来液状化抵抗の推定が難しかったシルトのような細粒な土(例えば50%粒径0.04mm程度の地盤)の液状化抵抗を容易に求めることが可能となる。
また、N値などによる推定方法は、地盤深さによる拘束圧の補正が必要であり、その補正による誤差を生じていたがそのような補正が不要となる。
【0017】
乱れの少ない採取試料方法であるシンウォールチューブサンプリングなどの比較的簡単なサンプリング方法のみで容易に液状化抵抗の推定が可能となる。また、連続的に採取するオールコアサンプリングを用いれば、細粒な地盤部分については層ごとの液状化抵抗を容易に推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法を詳細に説明する。図1は本発明の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法の流れ図(1/2)である。図2は図1の流れ図に続く本発明の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法の流れ図(2/2)である。
【0019】
対象地盤が(1)海岸埋立地のような若齢な正規圧密状態の地盤
(2)非塑性または極めて低塑性
(3)均等粒径な土
(4)50%粒径0.2mm程度以下
(5)飽和地盤、
であって、液状化する可能性のある粒度組成の条件を満たしている地盤であれば、その地盤を調査対象とする。(ステップS−11)
【0020】
ここで、以上の(1)〜(5)の条件を満たしていない地盤は、本発明の方法の適用外とする。(ステップS−12)
【0021】
以上の条件を満たしている調査対象地盤であれば、従来の方法では、前述したような各種の方法の補正をせざるを得なかった細粒な地盤であっても、前記のような各種補正なしで、容易に液状化抵抗を推定できる方法をステップS−13以下に示す。
【0022】
ステップS−13以下に示す液状化抵抗推定方法は、前述した最小法で定義された相対密度Drmmは液状化抵抗との相関が高いことを利用した推定方法に基づいたものである。
【0023】
通常の相対密度Drは、従来では、先ず日本工業規格「砂の最小密度・最大密度試験方法」(JIS A 1224)によって、最小密度試験による試料の乾燥密度ρdmin、最大密度試験による試料の乾燥密度ρdmaxを求める。
【0024】
次に、試料の乾燥密度ρdを求め、以下に示す関係式より通常の相対密度Dr(%)が求められていた。
Dr=(emax−e)/(emax−emin)×100
=(1/ρdmin−1/ρd)/(1/ρdmin−1/ρdmax)×100
=ρdmax(ρd−ρdmin)/{ρd(ρdmax−ρdmin)}×100
【0025】
但し、e:試料の間隙比
max:最小密度試験による試料の最大間隙比
min:最大密度試験による試料の最小間隙比
【0026】
以上のようなJIS法(JIS A 1224)による最小間隙比eminは、JIS法の定めたモールド内に乾燥砂を入れて、それを横方向から打撃することで振動を与え、締固めて密になった状態と定義して求める。このようなJIS法の試験では砂のような「つぶつぶ」のものであるから締固め状態が可能なことであり、本発明の方法が対象としている0.04mm程度の細かな粒子のシルトのような土の地盤ではJIS法では最小間隙比の状態を実現することは容易でない。このため、JIS法では細かな土は調査対象から外されていた。
【0027】
そこで、非特許文献2に示されているような最小法で求めた最小間隙比を最も密になる状態の最小間隙比eminとしてそのeminの値より最小法による相対密度Drmmを求めて推定方法に用いるものである。
【0028】
詳しくは、最小法では、前記モールド内でどのように振動を与えてもよく、さらに、含水比を変化させながら何回でも突固めを行ってもよく、いずれにしても物理的な方法で最も密になる状態にする。但し、土は注意しないと突固めなどを激しく行うと土粒子そのものが破砕されてしまい土質特性が異なったものとなる可能性があるので、そのようなことがないよう最小間隙比eminを求める。尚、JIS法の適用範囲内の土の対象試験結果は、勿論、最小法による試験結果とそれらの値は一致、整合している。
【0029】
ステップS−13から始まる液状化抵抗推定方法は、以上の最小法で定義された相対密度Drmmが液状化抵抗Rに相関が高いことを利用した方法である。
【0030】
次に、条件(1)〜(5)を満たす調査対象の地盤から含水比Wが変化しないように試料を採取する。(ステップS−13)
【0031】
尚、含水比Wは、地盤の土粒子(固体部分)の質量Wと液体の質量Wの比W=W/W×100(%)である。(但し、気体質量は0とする)
【0032】
土試料の採取は、例えば「固定ピストン式シンウォールチューブサンプリング」などを用いて、比較的簡単に乱れの少ない試料を地盤から採取することができる。
【0033】
ステップS−14では、前記試料の含水比W(但し飽和度Sを100%とする。すなわち前述したように気体、つまり空気重量は0とする)からその地盤の間隙比eを下記式(1)より求める。
【0034】
e=ρ・W/(ρ・S) (1)
但し、ρ、ρはそれぞれ土粒子の密度、水の密度、Sは飽和度(ここでは100%とする)
【0035】
含水比Wは、前述したように質量比なので容易に求めることができる。
【0036】
液状化する可能性のある地盤は地下水位以下の飽和された地盤であり、しかも細粒な土であれば排水性も悪いのでシンウォールチューブサンプリングなどを用いて含水比Wが変化しないように試料を採取することは容易である。従って、その試料の含水比Wから式(1)によりその地盤の間隙比をもとめることが可能となる。
【0037】
以上のように体積の計測を行うことなく式(1)により間隙比eが求められる。
【0038】
式(1)において、含水比Wと土粒子の密度ρの計測は、特に細粒な土であれば試料が少量でも試験が可能である。さらに詳しくは以下のようになる。
【0039】
従来の方法では、繰返し抵抗Rを求めるための不撹乱試料を採取するのは容易ではないが、本発明の方法では試料が乱れていても原地盤の含水比Wさえ求めることができればよいので、式(1)により簡単に間隙比eを推定できる。
【0040】
次に、ステップS−15に移る。最小法による相対密度Drmmを求めるためには、最小法で定義する最小間隙比eminを求める必要がある。この場合かなりの量の試料が必要である。
【0041】
そこで、試料が多量に得られる場合と、多く得られない場合とでは図1に示すようにステップS−16とステップS−18とに分かれる。
【0042】
ステップS−16,18ではJIS法により最大間隙比emaxを求める。JIS A 1224で定義される方法で、最大間隙比emaxを求める際には、その地盤の試料は少量で可能である。
【0043】
次に、それぞれステップS−17、19では最小法による相対密度Drmmを算出するため最小法で最小間隙比eminを求める。
【0044】
ステップS−17での最小法の最小間隙比eを求める際には、その地盤の実験試料が十分にあることとしているので、最小法の定義による最小間隙比eminを正確に求められる。
【0045】
一方、試料が少ない場合におけるステップS−19では、少ない試料で最小法の定義による最小間隙比eを求める必要があるが、少ない試料では不正確な値となる可能性がある。
【0046】
一方、前記条件(1)〜(5)の液状化が生じるような均等な粒径で非塑性または極めて低塑性で50%粒径が0.2mm程度以下の細粒な土の最小間隙比eminは、既往の研究結果及び種々の実験結果からの経験則によりほぼemin=0.6となる場合が多いことが明らかになっている。(非特許文献1の図12、非特許文献2の図7参照)
【0047】
そこで、ステップS−19では最小間隙比emin=0.6と仮定して次のステップへ移る。
【0048】
ステップS−21で、前述のいずれのルートを経由しても、そのルートから得られた調査試料のJIS法による最大間隙比emax及び最小法による最小間隙比eminが定まれば、それらの値とその調査試料の式(1)で求めた間隙比eの値とにより相対密度Drmmを下記の式(2)により求める。
【0049】
Drmm=(emax−e)/(emax−emin)×100 (2)
【0050】
但し、式(2)の中の試料の間隙比eは式(1)より求め、その試料の最小間隙比eminは最小法により求めた値である。
【0051】
尚、前記試料の間隙比eは式(1)を用いたが、このような推定を行うためには、飽和度Srが100%であることを条件としていた。このように飽和度Srを100%と仮定したことに関してその経験則が正しい事を以下に詳しく説明する。
【0052】
図3は、模型地盤における相対密度Drmm(%)と、飽和度Sr(%)との関係を求めた実験結果を示す図である。
【0053】
竹内シルト、函館シルトなどの一連の模型地盤による実験で、各種シルト質試料の相対密度Drmmと飽和度の関係を示したものである。
【0054】
図中「水面下BS」と「水面下TH」とあるのは、それぞれ圧密後水位を下げずに「ブロックサンプリング」と「シンウォールチューブサンプリング」をした実験結果を示し、いずれも乱れの少ない土試料を採取する方法である。
【0055】
叉、「突固め」とあるのは、直径30cmの大型モールドで試料を突固め、それにより「シンウォールチューブサンプリング」を行ったものである。
【0056】
図3において「水面下TH」とあるもの、及び相対密度の低いものでは、飽和度Srが100%よりやや高く超えている。これは、乾燥密度を等方応力状態の圧密後三軸供試体より求めているので、土槽地盤の応力状態を示す圧密後静止土圧係数K状態の模型地盤より平均主応力が大きくなっているため体積が幾分小さくなり飽和度Srが100%よりやや大きくなる。
【0057】
また、飽和度Srが100%よりもやや低い実験値にあるものは、サンプリング採取時に一度水位が低下したためであると考えられる。
【0058】
以上のように、100%より若干の誤差はあるものの、試験結果で得られた飽和度Srは「突固め」によるシルト(丸印)を除きいずれも100%である。従って、飽和度Srを100%と仮定して式(1)より間隙比eを推定することは妥当であるといえる。
【0059】
再度、図2に基づきステップS−22以降の流れを説明する。ステップS−22では、若齢な地盤に対する繰返し非排水三軸供試体の圧密後の最小法による相対密度Drmmと繰返し抵抗Rとの関係を示した一連の実験結果のDrmm対R図表を予め用意する。尚、これらの図表をデータベースに記録して用意すればよい。
【0060】
ステップS−23に移り、上記Drmm対R図表は繰返し非排水三軸供試体の圧密試験に際して、両振幅ひずみDA、又は過剰間隙水圧比Δu/σ’(ここでσ’は所定の有効拘束圧)が所定の値に達する繰返し回数Ncをパラメータとして作成する。
【0061】
ステップS−22、23における、若齢な地盤に対する前記一連の繰返し非排水三軸試験(液状化試験)の実験結果の例を図4に示す。
【0062】
この図では、一連の実験により求められた最小法による圧密後相対密度Drmmと、種々の破壊基準に対する繰返し抵抗Rの関係を示す。
【0063】
ここで、その破壊基準は繰返し回数Nc2回又は20回で、繰返し非排水三軸試験における両振幅ひずみDAが1%又は5%に至るときとして、繰返し抵抗Rを示した図である。つまり、破壊する繰返し回数Ncを種々の振幅の繰返し応力を変えた「破壊基準」で試験を行ったDrmm対Rの図表である。
【0064】
尚、破壊基準は両振幅ひずみDAだけでなく、水圧上昇という観点からも定義される場合があり、その一つとして過剰間隙水圧比Δu/σ’(σ’:有効拘束圧)がある。
【0065】
図4に用いる相対密度Drmmは、前述したように細粒な土にも相対密度が適用できるように勿論最小間隙比eminを求めた最小法によって定義されたものである。
【0066】
図の試料には50%粒径が0.04〜0.28mmの範囲の均等な粒径の土が用いられているが、相対密度Drmm(%)対繰返し抵抗Rとの関係は、あるばらつきの範囲内にあり粒径にかかわらず相対密度からそれぞれの破壊基準(Nc、DA)に対する繰返し抵抗が推定可能であることが図4から判る。
【0067】
図4中には、ばらつきの平均値と上下限の関係を実線及び点線で示した。
【0068】
目的に合わせてこれらの関係を用いることで最小法による相対密度Drmmから繰返し抵抗R、すなわち液状化抵抗を推定できる。
【0069】
以上のDrmm対R図表が予め用意されれば、次に次のステップS−24へ移り調査対象の地盤に作用する地震の振動パターン或いは調査したい地盤の許容変形量や水圧破壊基準のパラメータDA又はΔu/σ’とNcを選択する。
【0070】
次に、ステップS−25に移り、式(1)に求めた調査対象土の試料の間隙比eより式(2)に求めた相対密度Drmmより、Drmm対R図表を用いて、その試料の繰返し抵抗Rを定め、液状化抵抗を推定する。
【0071】
図5は、その際に予め用意したDrmm対R図表の模式図を示す。パラメータDAは1%、2%、5%、10%、Ncは2回、5回、10回、20回を含む各破壊基準に対する最小法で定義された相対密度Drmm対液状化抵抗Rの関係を示し、液状化抵抗推定に用いる図である。
【0072】
従って、図5において各破壊基準は16通りとなる。各図表は相対密度Drmm(%)の横軸は0%から100%までを示し、液状化抵抗Rの縦軸は0から0.5までを示し、図4と同じスケールである。
【0073】
図5の16通りのDrmm対R図表は、前記の一連の実験結果より、それぞれ実験データの平均値(実線)、上限及び下限値(点線)が記載されているものである。
【0074】
ここで相対密度Drmmがわかれば、図5を用いることによりDA=1〜10%、Nc=1〜20回の範囲の破壊基準については容易に液状化抵抗Rを推定できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法の流れ図(1/2)である。
【図2】本発明の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法の流れ図(2/2)である。
【図3】模型地盤における相対密度と飽和度との関係図である。
【図4】三軸供試体の圧密後の相対密度Drmmと繰返し抵抗Rとの関係の実験結果例を示す図である。
【図5】液状化抵抗推定に用いる各破壊基準に対する最小法で定義された相対密度と液状化抵抗の関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
Dr 相対密度(%)
Drmm 最小法で定義された相対密度(%)
DA 両振幅軸ひずみ(%)
e 間隙比
max 最大間隙比
min 最小間隙比
Nc 両振幅軸ひずみが所定の値に達する繰返し回数
R 繰返し抵抗、液状化抵抗
Sr 飽和度(%)
W 含水比(%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
若齢な正規圧密状態、非塑性または極めて低塑性、均等粒径の飽和地盤で、その50%粒径0.2mm程度以下の液状化の可能性のある粒度組成を有する地盤の液状化抵抗推定方法であって、
調査対象の試料の含水比W(%)が変化しないように採取し、
次に、その試料の含水比Wから飽和度Sを100%として前記地盤の間隙比eを式(1)により求め、
e=ρ・W/(ρ・S)・・・(1)
ここで、ρ:土粒子の密度(g/cm
ρ:水の密度(g/cm
次に前記試料が多量に採取できる場合には、最大間隙比emaxは、JIS(A
1224)で定義される方法で求め、最小間隙比eminは振動を与えたり、含水
比や突固めエネルギーを変えて締固めるなどして物理的に得られる最小な間隙
比として定義される最小法で求め、
一方、前記試料が多量採取できない場合には、最大間隙比emaxはJIS(A
1224)で求め、最小間隙比eminは0.6程度と仮定し、
次に、前記いずれの場合であっても、最大、最小間隙比emax、minが定まれば、前記試料の間隙比eより最小法で定義された相対密度Drmm(%)を下記式(2)より求め、
Drmm=(emax−e)/(emax−emin)×100・・・(2)
次に、海岸埋立地のような若齢な地盤に対して相対密度Drmmと、繰返し抵抗、すなわち液状化抵抗Rとの関係を示した実験結果の一連のDrmm対R図表に基づいて、前記式(2)で求められた相対密度Drmmより前記調査対象試料を採取した地盤の液状化抵抗Rを求めることを特徴とする若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法。
【請求項2】
前記Drmm対R図表は、前記試料の供試体の繰返し非排水三軸試験に際して、両振幅軸ひずみDA又は過剰間隙水圧比Δu/σ’(ここでのσ’は所定の有効拘束圧)が所定の値に達する繰返し回数Ncをパラメータとして作成され、
前記DA、Δu/σ’、Ncについて液状化抵抗を求められることを特徴とする請求項1記載の若齢地盤に対する液状化抵抗推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−239275(P2007−239275A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61775(P2006−61775)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月7日〜9日 社団法人土木学会主催の「第60回年次学術講演会」において文書をもって発表
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】