説明

苺苗育成方法

【課題】 苺の親苗からのランナーを根付かせて子苗を育成する際に、作業性にすぐれかつ効率良く育成する。
【解決手段】 ジグザグに折曲した針金を組み合わせてなるネットフェンス5を、適当な高さの空中に水平方向に張架し、ネットフェンス5の編み目内に、培土を入れた栽培ポット8を嵌合保持させておくとともに、ネットフェンス5上の適箇所に苺の親苗21を植えたプランタ6を配置しておき、親苗21から伸びてきたランナー22を切断することなく栽培ポット8に導いて根付かせて、その後、ランナー22が根付いて成長したらランナー22を切断して子苗23として取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苺苗育成方法に関し、詳しくは培土を入れた栽培ポットを空中に張架されたネットフェンスの編み目に配置しておいて、親苗から伸びてきたランナーを栽培ポットに根付かせて子苗を育成する苺苗育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苺栽培では、苺苗を育成する段階での、腰をかがめての作業が大変にきついため、腰をかがめないですむように、空中で苺苗を育成する栽培方法が、特許文献1の「栽培方法」として提案されている。これは棚の上に親苗を入れたポットを置いておき、親苗から伸びてきたランナーを垂れ下がらせてから切断して、そのランナーを栽培ポットに移植して子苗を得ていた。この方法では、ランナーを切断する作業では、腰をかがめる必要がないため、作業者にやさしい栽培方法であった。
【特許文献1】特開平10−304764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述したように、棚の上に親苗を入れたポットを置いておき、伸びてきたランナーを切断する方法では、親苗から切断されたランナーが栽培ポットに移植されるため、根付および成長が遅いという欠点があった。さらに、上述した方法では、親苗を入れたポットが棚の上にただ載せられているだけで、ポットを安定させる対策が講じられていないため、ランナーの成長とともにポットの重心位置も移動してポットの安定が悪く倒れやすいという問題があった。
そこで、本発明は、ランナーを切断することなく栽培ポットに根付かせて成長を促進することができるとともに、栽培ポットも安定して保持することのできる苺苗育成方法を提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、ジグザグに折曲した針金を組み合わせてなるネットフェンスを、適当な高さの空中に水平方向に張架し、該ネットフェンスの編み目内に、培土を入れた栽培ポットを嵌合保持させておくとともに、前記ネットフェンス上の適箇所に苺の親苗を植えたプランタを配置しておき、前記親苗から伸びてきたランナーを切断することなく栽培ポットに導いて根付かせて、その後、ランナーが根付いて成長したらランナーを切断して子苗として取り出すことを特徴とする。
【0005】
また、本発明は、地面から40〜100cmの高さに梁部材を縦横に配設し、該梁部材の上にジグザグに折曲した針金を組み合わせてなるネットフェンスを敷設し、該ネットフェンスの中央部長手方向に苺の親苗を植えたプランタを1列に配置するとともに、該プランタの両脇のネットフェンスの編み目の適箇所に培土を入れた栽培ポットを嵌合保持させておき、前記親苗から伸びてきたランナーを切断することなく栽培ポットに導いて根付かせて、その後、ランナーが根付いて成長したらランナーを切断して子苗として取り出すことを特徴とする。
【0006】
ここで、前記プランタに点滴チューブを配設して苺の親苗へ灌水および補肥をするとともに、前記栽培ポット側に噴霧装置を配設して前記栽培ポットの子苗へ灌水することも可能である。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように本発明によれば、プランタ内の親苗から伸びてきたランナーを切断することなく栽培ポットに導いて根付かせて、その後、子苗が根付いて成長したらランナーを切断して子苗として取り出すため、子苗の成長が早くなる。また、子苗用の栽培ポットがネットフェンスの編み目に嵌合保持されるため安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る苺苗育成方法の設備を示す縦断面図であり、図2は図1の平面図であり、図3は図2の要部を拡大して示した図であり、図4は図3の栽培ポットを示す図である。図1および図2に示されるように、地面から40〜100cmの高さ、好ましくは50cmの高さに支柱1が適間隔で立設され、支柱1の上端には長さ150cm程度のパイプ2が溶接等により一体的に固定されている。さらに、パイプ2の上には、縦方向にパイプ3,4が載せられてパイプ2に固定されている。これら梁部材であるところのパイプ2〜4の上に、ジグザグに折曲した針金を組み合わせてなるネットフェンス5が敷設されている。中央の2本のパイプ4の上には、ネットフェンス5を介してプランタ6が縦一列に配置されている。ネットフェンス5の編み目の適箇所に、栽培ポット8が上方向から嵌入されて保持されている。なお、図1中の7は支柱1と支柱1を連結するステイである。
【0009】
ネットフェンス5は、図2および図3に示されるように、鋼線を略90度の角度で等間隔にジグザグに折曲したものを互いに編み込んだものであり、略正方形の編み目が形成される。この編み目内に、編み目の間隔と略同径のプラスチック製の栽培ポット8が嵌合されて保持される。栽培ポット8内には、苺のランナーが根付きやすい培土が入れられている。栽培ポット8は、図4に示されるように、外形は円錐形の先端を切断した形状をしており、筒部の外周が下方に行くに従い小径となるように傾斜しており、この傾斜した外周面でネットフェンス5の編み目に嵌合して保持される。
【0010】
栽培ポット8は、PP等の軟質樹脂を用いた成形品であり、底の中央部分11が斜め上方向に傾斜し、その中央部分に底部の外径の半分程度の孔12が形成されている。中央部分11の外側の水平な底部分には、4個の水抜き孔13が形成されている。また、栽培ポット8の上端部には、上端縁に連続するガイド孔14が形成されている。このガイド孔14は、親苗からのランナーを挿通して保持するためのものである。なお、栽培ポット8の底に形成された孔12は通気用として機能する。
【0011】
この栽培ポット8内に入れられる培土は、高温焼成し、粒径7mmアンダー、1.0〜3.5mmの赤玉土とパームピートを重量比3:2で混合し、Nを150mg/l、P2 O5 を610mg/l、K2 Oを130mg/l添加したものである。この培土に水を加えて適度な湿り気を持たせた状態で、栽培ポット8内に入れる。栽培ポット8には底に比較的大きな孔12が開いているが、この培土に湿り気を与えて土粒子の凝集力を増したことで、孔12から抜け落ちることはない。
【0012】
次に、図1および図2に示された設備による、苺苗育成方法について説明する。ネットフェンス5の中央のプランタ6には、適当な培土を入れて、苺の親苗を植えておく。このプランタ6には、図示しないが、点滴チュープが配設されて、生育に必要な水分、肥料が供給される。こうして、成長した親苗21からはランナー22が伸びて来る。このランナー22を、ネットフェンス5の編み目に保持されている栽培ポット8のガイド孔14の内側に挿入して、先端を栽培ポット8内の培土に挿し込んでおく。
【0013】
すると、適度な湿り気が与えられている培土に接したことで、ランナー22の先端から根が出て、子苗23となる。このとき、ランナー22は、親苗21から切断することなく、繋がったままとしておくことで、親苗21から養分が供給されて、子苗23の成長が早い。子苗23が充分に成長したら、ランナー22を切断し、栽培ポット8ごとネットフェンス5から取り出し、定植することができる。また、図示しないが、栽培ポット8が嵌合されているネットフェンス5の部分に対しては、その外側等に噴霧装置が設置されており、子苗23に対しても必要な水分等の補給がなされる。
【0014】
以上述べたように、本発明では、ネットフェンス5の編み目に、培土を入れた栽培ポット8を嵌合しておき、親苗21からのランナー22を、その栽培ポット8に導いて根付かせるようにしたものであるから、親苗21からのランナー22の数や成長度合いに応じて、ネットフェンス5上の任意の位置に、任意の数だけ栽培ポット8を設置することが可能となり、苺苗の成長に対しての対応性、柔軟性、効率にすぐれる。また、ネットフェンス5の高さを、作業者の膝の高さ程度としたため、作業性にすぐれ、作業者の腰への負担が軽減される。また、栽培ポット8に入れられる培土も、ランナーの根付きが良いため、子苗の成長が早くなる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、苺苗の育成に利用する以外には、ランナーにより増殖する蔓性植物への利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る苺苗育成方法の設備を示す縦断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示した図である。
【図4】図3の栽培ポットを示す平面図および縦断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 支柱
2 パイプ
3,4 パイプ
5 ネットフェンス
6 プランタ
7 ステイ
8 栽培ポット
11 中央部分
12 孔
13 水抜き孔
14 ガイド孔
21 親苗
22 ランナー
23 子苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグに折曲した針金を組み合わせてなるネットフェンスを、適当な高さの空中に水平方向に張架し、該ネットフェンスの編み目内に、培土を入れた栽培ポットを嵌合保持させておくとともに、前記ネットフェンス上の適箇所に苺の親苗を植えたプランタを配置しておき、前記親苗から伸びてきたランナーを切断することなく栽培ポットに導いて根付かせて、その後、ランナーが根付いて成長したらランナーを切断して子苗として取り出すことを特徴とした苺苗育成方法。
【請求項2】
地面から40〜100cmの高さに梁部材を縦横に配設し、該梁部材の上にジグザグに折曲した針金を組み合わせてなるネットフェンスを敷設し、該ネットフェンスの中央部長手方向に苺の親苗を植えたプランタを1列に配置するとともに、該プランタの両脇のネットフェンスの編み目の適箇所に培土を入れた栽培ポットを嵌合保持させておき、前記親苗から伸びてきたランナーを切断することなく栽培ポットに導いて根付かせて、その後、ランナーが根付いて成長したらランナーを切断して子苗として取り出すことを特徴とした苺苗育成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の苺苗育成方法において、
前記プランタに点滴チューブを配設して苺の親苗へ灌水および補肥をするとともに、前記栽培ポット側に噴霧装置を配設して前記栽培ポットの子苗へ灌水することを特徴とした苺苗育成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−50907(P2006−50907A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233149(P2004−233149)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(594156802)丸三産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】