説明

茄子茶の製造方法

【課題】本発明者らは茄子の皮に含まれている薬効成分に注目し、皮の利用方法について鋭意研究を重ねた、結果、茄子の皮の部分にはナスニンが多く、強い抗酸化性を持つとされているが、茄子の皮の大半は廃棄されており、本発明者らはこうした現状を鑑み、茄子の皮の、強い薬効成分を生かした茄子茶を作ろうとするものである。
【解決手段】茄子の皮にある有効成分であるナスニンあるいはクロロゲン酸の損失を少なくするため、第一段階として茄子の皮にアスコルビン酸を浸漬させ、第二段階としてトレハロースとアスコルビン酸ソーダを添加し水分8%以下にまで乾燥することにより、薬効成分を生かした茄子茶が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茄子の漬物を製造するときに廃棄物として出る茄子の皮を利用し、茄子茶を製造しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、茄子の漬物を製造するときに出る皮は廃棄物として捨てられているのが現状であり、廃棄物を軽減する試みの中で、茄子の皮の利用方法が検討されてきている。
【0003】
茄子の皮には薬用効果のある成分が多く含まれていることが知られており、こうした薬用成分を利用した茄子の皮の利用方法が検討されているのが現状である。
【0004】
従来開示されている茄子の皮の利用方法として、特開2005−304466号に記載されているが、ナスニンの抽出に関するものであり、皮を乾燥してお茶への利用には言及していない。
【0005】
特開2000−125825号に、茄子を収穫した後に残る茎を乾燥しお茶にする茄子茶に関する記載があるが、茄子の皮に関する記載は見当たらないし、また茄子の茎を乾燥してお茶に利用するだけの記載にとどまっている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−125825
【特許文献2】特開2005−304466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは茄子の皮の含まれている薬効成分に注目し、皮の利用方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0008】
従来、茄子の漬物等を製造する時に、茄子皮の大半は廃棄されており、又茄子皮にはナスニン、クロロゲン酸等のポリフェノールを多く含み、本発明者らはこうした現状を鑑み、茄子皮の有効成分を生かした茄子茶を作ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
茄子の皮にある有効成分であるナスニンあるいはクロロゲン酸の損失を少なくするため、第一段階として茄子の皮をアスコルビン酸によりpHを4.5〜5.5に調整した液に浸漬させ、第二段階としてトレハロースとアスコルビン酸ソーダを添加し水分8%以下にまで乾燥することにより、有効成分を生かした茄子茶が出来る。
【0010】
第一段階において、アスコルビン酸でpHを4.5以下にすると液中にナスニンあるいはクロロゲン酸といったポリフェノールが流れ出し、pHを5.5以上にすると茄子皮の色がくすんだ紺色となる。
【0011】
第二段階でトレハロースとアスコルビン酸ソーダを加えることにより、茄子皮の色が茄子紺色に固定され、乾燥後も茄子紺色を保つことが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、茄子の皮にある有効成分であるナスニンあるいはクロロゲン酸といったポリフェノールを摂ることが出来、健康飲料として手軽に飲用できる。
【0013】
また、消費者が茶漉しを使用して、簡単にお茶を抽出することが出来、飲料用として手軽に利用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の茄子茶の製造方法について説明する。
【0015】
茄子皮をアスコルビン酸に1晩浸漬しその後脱水し、トレハロースとアスコルビン酸ソーダを溶解した液に浸漬し、乾燥させる。水分を8%以下にまで乾燥した後、粉砕し、篩分けし茄子茶とする。
【実施例】
【0016】
本発明を、実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0017】
茄子20kgを洗浄して汚れや異物を取り除く。次に200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌し、へたと花落ちをカットする。その後皮むき機で皮を剥ぐ。3.0kgの茄子皮を得た。
【0018】
剥いだ皮を200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で10分間殺菌し、その後水道水ですすぎ、液切りをする。更に0.02%のアスコルビン酸液5kgを添加し、pH5.0に調整した液に1晩浸漬する。
【0019】
上記の1晩浸漬した茄子皮を十分に液きりした後、水5.679kgにトレハロース300g、アスコルビン酸ナトリウム18gを混合した液に、5分間浸漬する。その後次の乾燥工程に入る。
【0020】
60℃〜70℃に調整した棚式乾燥機で、水分6%になるまで乾燥し、粉砕機で粉砕する。4メッシュパス、16メッシュオンのものを茄子茶とし、2.2%のポリフェノールを含む茄子茶の製品となる。
【比較例1】
【0021】
茄子20kgを洗浄して汚れや異物を取り除く。次に200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌し、へたと花落ちをカットする。その後皮むき機で皮を剥ぐ。3.0kgの茄子皮を得た。
【0022】
剥いだ皮を200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で10分間殺菌し、その後水道水ですすぎ、液切りをする。更に0.05%のアスコルビン酸液10kgを添加しpH3.8に調整した液に1晩浸漬する。
【0023】
上記の1晩浸漬した茄子皮を十分に液きりした後、水5.679kgにトレハロース300g、アスコルビン酸ナトリウム18gを混合した液に、5分間浸漬する。その後次の乾燥工程に入る。
【0024】
60℃〜70℃に調整した棚式乾燥機で、水分6%になるまで乾燥し、粉砕機で粉砕する。4メッシュパス、16メッシュオンのものを茄子茶とし、0.2%のポリフェノールを含む茄子茶の製品となる。
【比較例2】
【0025】
茄子20kgを洗浄して汚れや異物を取り除く。次に200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌し、へたと花落ちをカットする。その後皮むき機で皮を剥ぐ。3.0kgの茄子皮を得た。
【0026】
剥いだ皮を200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で10分間殺菌し、その後水道水ですすぎ、液切りをする。更に0.02%のアスコルビン酸液0.1kgを添加し、pH5.9に調整した液に1晩浸漬する。
【0027】
上記の1晩浸漬した茄子皮を十分に液きりした後、水5.679kgにトレハロース300g、アスコルビン酸ナトリウム18gを混合した液に、5分間浸漬する。その後次の乾燥工程に入る。
【0028】
60℃〜70℃に調整した棚式乾燥機で、水分6%になるまで乾燥し、粉砕機で粉砕する。4メッシュパス、16メッシュオンのものを茄子茶とし、2.1%のポリフェノールを含む茄子茶の製品となる。
【比較例3】
茄子20kgを洗浄して汚れや異物を取り除く。次に200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌し、へたと花落ちをカットする。その後皮むき機で皮を剥ぐ。3.0kgの茄子皮を得た。
【0029】
剥いだ皮を200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で10分間殺菌し、その後水道水ですすぎ、液切りをする。更に0.02%のアスコルビン酸液5kgを添加し、pH5.0に調整した液に1晩浸漬する。
【0030】
上記の1晩浸漬した茄子皮を十分に液きりした後、水5.679kgに5分間浸漬する。その後次の乾燥工程に入る。
【0031】
60℃〜70℃に調整した棚式乾燥機で、水分6%になるまで乾燥し、粉砕機で粉砕する。4メッシュパス、16メッシュオンのものを茄子茶とし、2.1%のポリフェノールを含む茄子茶の製品となる。
【0032】
実施例及び比較例の結果を表にした。
【0033】
【表1】

【0034】
表1からも分かるように実施例1の方が比較例1,2,3に比べ茄子皮の色が茄子紺であることが分かる。またポリフェノール含有量も実施例1の方が比較例1に比べ高いことが分かる。
【0035】
実施例1及び比較例1〜3で製造した茄子茶を、茄子茶2g、80℃のお湯100ccで2分間抽出したお茶で10名のパネラーにより官能検査を実施した。その結果を表2に示す。
【0036】
10点評価とし、10点が最高、1点が最低とした。点数は10名のパネラーの平均値を示した。
【表2】

【0037】
表2に示すとおり、実施例1は比較例1〜3に比べ、色および味の両方において好ましかった。
【産業上の可能性】
【0038】
本発明の茄子茶は、ナスニンを含むポリフェノールを多く含有する茄子の皮を主原料としており、又いままで廃棄されていた部分を使用したものであり、利用価値は極めて高いものである、体に良いとされるポリフェノールを手軽に摂取できる製品である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一段階として茄子の皮にアスコルビン酸を浸漬させ、第二段階としてトレハロースとアスコルビン酸ソーダを添加し乾燥することを特徴とする茄子茶の製造方法。
【請求項2】
第一段階としてアスコルビン酸でpHを4.5〜5.5になるように調整した液に浸漬させることを特徴とする請求項1に記載の茄子茶の製造方法。
【請求項3】
第二段階としてトレハロースを10%〜0.5%、アスコルビン酸ソーダを1%〜0.01%添加して乾燥することを特徴とする請求項1に記載の茄子茶の製造方法。

【公開番号】特開2009−240292(P2009−240292A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113149(P2008−113149)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(307045054)株式会社荒井食品 (4)
【Fターム(参考)】