説明

茶系飲料用抽出液の製造方法

【課題】各茶の持ち味を損なうことなく、非重合体カテキン類を高濃度で含み、かつ風味の良好な茶系飲料用抽出液の製造方法を提供すること。
【解決手段】カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL以上となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して5〜30倍量に相当する30〜60℃の抽出用水を供給して抽出液Aを採取するA工程と、カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL未満となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して40〜100倍量に相当する40〜100℃の抽出用水を供給して抽出液Bを採取するB工程と、抽出液Aと抽出液Bとを混合するC工程とを含む茶系飲料用抽出液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非重合体カテキン類を高濃度で含む茶系飲料用抽出液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、缶入り又はボトル入りの茶系飲料が大量に販売されている。これら茶系飲料は、通常、単一の茶又は複数種の茶から得られた抽出液を用いて製造されるが、苦味、渋味、香味、うま味等をバランスさせるには、単一の茶では困難であるため、複数種の茶が使用されることが多い。
【0003】
複数種の茶を用いた茶系飲料の製造方法として、例えば、ニーダー抽出機内で玉露の茶葉を40〜60℃の抽出用水を用いて2〜6分間抽出し、別のニーダー抽出機内で深蒸茶の茶葉を55〜80℃の抽出用水を用いて3〜7分間抽出し、そして得られた各茶抽出液を混合する方法(特許文献1)、甜茶の茶葉を、ニーダー抽出機内で茶葉の重量に対して40倍量以上の85〜95℃の熱水を用いて3〜12分間抽出して得られる抽出液と、緑茶の茶葉を、別のニーダー抽出機内で茶葉の重量に対して40倍量以上の60〜70℃の温水を用いて3〜10分間抽出して得られる抽出液を所定割合で混合する方法(特許文献2)、更にカラム型の抽出機に茶葉を入れて冷水又は熱水を連続的に供給しながら抽出液を排出することによって得られた茶抽出液Aと、ニーダー抽出機で浸漬攪拌抽出して得られた抽出液Bを、A液中の非重合体カテキン類重量/B液中の非重合体カテキン類重量比が所定割合になるように混合した茶抽出液を用いた茶飲料の製造方法(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−126472号公報
【特許文献2】特開2006−187253号公報
【特許文献3】特開2005−168429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来技術においては、いずれもニーダー抽出機を用いたバッチ抽出を採用するため、アロマ成分が逸脱しやすく、しかも香味と非重合体カテキン類濃度とをバランスさせた茶系飲料が得難いという問題がある。また、バッチ抽出の場合、各バッチ間において成分濃度が略均一の抽出液を得ることができるが、抽出液中の成分量をバッチ間ごとに適宜調整することは難しい。
また、複数種の茶を使用する場合、茶の種類によってうま味や香味等を最大限に引き出すための抽出条件が異なり、しかも抽出条件によって非重合体カテキン類濃度が変動し苦味渋味やエグ味が増強されるため、非重合体カテキン類を高濃度に含有し、うま味、香味、苦味、渋味、エグ味等をバランスさせた風味の良好な飲みやすい茶系飲料を得ることは容易でない。
本発明は、各茶の持ち味を損なうことなく、非重合体カテキン類を高濃度で含み、かつ風味の良好な茶系飲料用抽出液の製造方法、及び当該茶系飲料用抽出液を用いた容器詰茶系飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、性状の異なる複数種の茶を、それぞれカラム型抽出機を用いて特定条件で抽出し各抽出液を混合することで、各茶の持ち味を損なうことなく、風味と非重合体カテキン類濃度とをバランスさせた抽出液が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL以上となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して5〜30倍量に相当する30〜60℃の抽出用水を供給して抽出液Aを採取するA工程と、カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL未満となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して40〜100倍量に相当する40〜100℃の抽出用水を供給して抽出液Bを採取するB工程と、抽出液Aと抽出液Bとを混合するC工程とを含む茶系飲料用抽出液の製造方法を提供するものである。
本発明はまた、かかる製造方法により得られた茶系飲料用抽出液を、そのまま又は希釈して容器内に充填してなる容器詰茶系飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アロマ成分の逸脱を防止して、非重合体カテキン類を高濃度で含み、かつ風味の良好な茶系飲料用抽出液を簡便に製造することができる。かかる抽出液は、高い香りを有しながらも、苦渋味、エグ味が少ないことから、当該抽出液を用いることで、非重合体カテキン類を大量に摂取できる飲みやすい容器詰茶系飲料の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の茶系飲料用抽出液の製造方法は、A工程、B工程及びC工程を含むことを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0010】
(A工程)
A工程は、カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL以上となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して5〜30倍量に相当する30〜60℃の抽出用水を供給して抽出液Aを採取する工程である。
本発明においては、抽出方法としてカラム型抽出機を用いるカラム抽出を採用するが、カラム抽出とは、カラム型抽出機内に茶を充填し、これに抽出用水を通過させ抽出液を得る方法をいう。
【0011】
カラム型抽出機としては、抽出用水の供給口と、抽出液の抜き出し口とを備えるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カラム型抽出機の上方から抽出用水を供給するタイプ、下方から抽出用水を供給するタイプ、あるいは双方から抽出用水を供給可能なタイプ等が利用できる。また、カラムの設置は縦型でも横型であってもよい。具体的には、図1に示すような閉鎖型抽出カラム1を用いることができる。抽出カラム1は、抽出用水を供給するための抽出用水供給用シャワーノズル2及び抽出用水供給用バルブ3と、抽出水を抜き出すための抽出液抜き出し用バルブ4を備えており、抽出カラム1内には茶6を保持するため茶保持板5が装着されている。
茶保持板としては、茶と抽出液とを分離できるものであれば特に限定されないが、金網(メッシュ)が好ましく、フラット、円錐状、角錐状等の形状のものを用いることができる。また、金網のメッシュサイズは、実質的に仕込んだ茶と茶抽出液との分離の点から、18〜100メッシュであるのが好ましい。
【0012】
A工程で使用される茶の製茶手段、すなわち発酵度合いとしては不発酵、半発酵、発酵が挙げられる。不発酵茶としては、Camellia属、例えばC.sinensis及びC.assamica、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶から製茶された、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等の緑茶が挙げられる。半発酵茶又は発酵茶としては、Camellia属、例えばC.sinensis及びC.assamica、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶から半発酵又は発酵工程を経て製茶された、紅茶、烏龍茶、黒茶等が挙げられる。中でも、非重合体カテキン類の含有割合の高い不発酵茶が好ましい。
【0013】
本発明においては、茶葉だけなく、茎茶、棒茶、芽茶を使用することができる。茎茶としては茶の茎の部分であって通常茎茶として用いられているものが挙げられ、また棒茶としては茶葉の軸や茎の部分であって通常棒茶として用いられているものが挙げられ、更に芽茶としては未だ葉にならない柔らかい芽の部分であって通常芽茶として用いられているものが挙げられる。
また、茶葉、茎茶及び棒茶は、火入れ加工が施されていてもよい。火入れ加工の原料としては不発酵茶が好ましく、苦味抑制効果の点から、茶葉より茎茶、棒茶の方が好適に使用される。火入れは、例えば、120〜300℃、更に170〜230℃の温度で、1〜15分、更に1〜10分加熱するのが苦味抑制効果及び風味の点から好ましい。
本発明においては、単一の茶だけなく、2種以上の茶を組み合わせて使用することができる。
【0014】
A工程においては、カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL以上となる茶を使用するが、カフェイン分析値が20mg/100mL以上、特に30mg/100mL以上のものが好ましい。カフェイン分析値が15mg/100mL未満であると、風味及びカテキン類の抽出効率上好ましくない。なお、カフェイン分析値の上限は、飲料本来の外観の観点から、45mg/100mLとするのが望ましい。
ここで、本明細書において、カップテストとは茶3gを審査茶碗(容量200cc)に秤取し、茶に熱湯180mLを注ぎ、5分間静置した後、茶殻を除いた抽出液について官能検査することをいい(新茶葉業全書 改訂発行6版 昭和55年8月10日 編集 静岡県茶業会議所)、カフェイン分析値とはこのカップテストで得られた抽出液中に含まれるカフェイン量を分析したものである。そして、この分析結果に基づき、使用する茶を選択する。なお、カフェイン含有量は、非重合体カテキン類含有量と同様に後掲の実施例に記載の測定方法によって高速液体クロマトグラフにより分析することができる。
【0015】
抽出用水は水道水、蒸留水、イオン交換水等を適宜選択することができるが、味の面からイオン交換水が好ましい。また、抽出用水に、アスコルビン酸又はその塩、重曹等を添加してもよい。アスコルビン酸又はその塩の濃度は、抗酸化効果及び味の点から、0.01〜0.2質量%、更には0.02〜0.15質量%、特に0.03〜0.1質量%が好ましい。
【0016】
抽出方法としては、いわゆる循環法や1パス法等を採用することができる。ここで、本明細書において、「循環法」とは、茶から得られた抽出液をカラム型抽出機内に再度戻し、この操作を繰り返し行う抽出法をいい、一方「1パス法」とは抜き出した抽出液をカラム型抽出機内に再度戻すことなく、一度の通水により抽出する抽出法をいう。
また、通水方向としては、抽出用水をカラム型抽出機の下方から上方に通水(上昇流)しても、カラム型抽出機の上方から下方に通水(下降流)してもよいが、茶が圧密化によりカラム型抽出機内で閉塞することを防止可能な上昇流が好ましい。
【0017】
抽出倍率、すなわち(抽出用水の供給量)/(茶の合計質量)は、5〜30であるが、更には10〜30、特に15〜30が好ましい。これにより、抽出液中の非重合体カテキン濃度を高めることができる。
抽出用水の供給速度をカラム断面積で割った値、すなわちカラム型抽出機内における抽出用水の線速度は、0.9〜1.9cm/min、更には1.1〜1.7cm/min、特に1.3〜1.5cm/minが好ましい。これにより、茶が圧密となって閉塞するのを防止して効率的に抽出することができる。
抽出用水の温度は30〜60℃であるが、40〜60℃、特に50〜60℃が好ましい。30℃未満であると、抽出液の風味及びカテキン類の抽出効率上好ましくない。他方60℃を超えると、抽出液の風味上好ましくない。
滞留時間は、3.5〜6.5分、更には4.5〜6.5分、特に5.5〜6.5分が好ましい。これにより、非重合体カテキン類を高濃度で含み、風味豊かな抽出液を得ることができる。
【0018】
本発明においては、得られた抽出液の一部又は全部を抽出液Aとすることができる。例えば、抽出初期、抽出中期、抽出後期のうちのいずれかの抽出段階において採取された抽出液のみを用いてもよく、またそれらの一部又は全てを混合した抽出液を用いてもよい。また、一部の抽出段階の抽出液を廃棄し、それ以外の抽出段階において採取した抽出液を用いてもよく、例えば、風味向上の観点から、抽出初期のものを廃棄し、それ以降の抽出段階から採取した抽出液を用いてもよい。この場合、茶の合計質量に対して0.15〜3倍量、特に0.75〜2.3倍量に相当する抽出初期の抽出液を廃棄し、それ以降(抽出中期及び抽出後期)の抽出液を採取するのが好ましい。0.15倍未満では風味向上効果が不十分となる傾向にあり、他方3倍を超えるとカテキン類の抽出収率が低下する傾向にある。また、採取倍率、すなわち(抽出液の採取量)/(茶の合計質量)は、抽出倍率の80%以上、特に85%以上とするのが好ましい。
得られた抽出液Aは、活性炭や膜処理等の処理を施してもよい。
【0019】
(B工程)
B工程は、カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL未満となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して40〜100倍量に相当する40〜100℃の抽出用水を供給して抽出液Bを採取する工程である。
【0020】
B工程においてはA工程と同種の茶を使用することができるが、カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL未満となる茶を使用する。カフェイン分析値は、12mg/100mL未満、特に8mg/100mL未満のものが好ましい。カフェイン分析値が15mg/100mL以上であると、風味のバランス上好ましくない。なお、カフェイン分析値の下限は、風味の観点から、2mg/100mLとするのが望ましい。
【0021】
B工程においては、A工程と同様の抽出方法を採用することができる。
抽出条件において、抽出用水の供給量は、茶の合計質量に対して40〜100倍量であるが、50〜90倍量、特に60〜80倍量が好ましい。40倍量未満であると、風味とカテキン類の抽出効率から好ましくなく、他方100倍量を超えると、風味上好ましくない。すなわち、抽出倍率は40〜100であるが、好ましくは50〜90、特に60〜80が好ましい。これにより、風味と物性のバランスの取れた抽出液を抽出することが出来る。
抽出用水の温度は40〜100℃であるが、50〜90℃、特に55〜80℃が好ましい。40℃未満であると、風味上好ましくなく、他方80℃を超えると、使用する茶の種類によっては苦渋味が増強されるため、好ましくない。
【0022】
B工程においてもA工程と同様に、抽出液の一部又は全部を抽出液Bとすることができるが、抽出用水を供給して得られた抽出液の全部を抽出液Bとするのが好ましい。
【0023】
(C工程)
C工程は、A工程で得られた抽出液Aと、B工程で得られた抽出液Bとを混合する工程である。抽出液Aと抽出液Bとの混合割合は、目的とする茶系飲料の呈味に応じて適宜決定することができるが、抽出液Aと抽出液Bとの混合質量比(A/B)を1〜5、更には1.5〜4.5、特に2〜4とするのが、茶系飲料用抽出液中の非重合体カテキン類濃度の確保、及び風味の維持の点から好ましい。
【0024】
このようにして茶系飲料用抽出液が得られるが、茶系飲料用抽出液中の非重合体カテキン類の含有量は、0.1〜0.5質量%が好ましく、更には0.3〜0.5質量%、特に0.4〜0.5質量%であるのが好ましい。なお、このような濃度で非重合体カテキン類を含む茶系飲料用抽出液とするには、例えば、上記した割合で抽出液A及び抽出液Bを混合すればよい。ここで、非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類をあわせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0025】
上記工程により得られた茶系飲料用抽出液は、高濃度の非重合体カテキン類を含有しながらも、苦味渋味やエグ味が少なく香味が豊かで風味がよいので、そのまま、又は希釈することにより容器詰茶系飲料とすることができる。このとき、非重合体カテキン類濃度を、好ましくは0.05〜0.6質量%、より好ましくは0.07〜0.5質量%、更に好ましくは0.092〜0.4質量%、特に好ましくは0.12〜0.3質量%になるように調整するのが望ましい。この範囲にあると多量の非重合体カテキン類を摂取しやすくなる。
【0026】
また、本発明の容器詰茶飲料には、茶由来の成分にあわせて、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、苦味調製剤、品質安定剤等の添加剤を単独で又は2種以上組み合わせて配合してもよい。
【0027】
甘味料としては、例えば、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、スクラロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖が挙げられる。苦味調整剤としては、シクロデキストリンに代表される環状デキストリンが挙げられる。環状デキストリンとしては、α−、β−、γ−シクロデキストリン及び、分岐のシクロデキストリンが使用できる。酸味料としては、例えば、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。無機酸類、無機酸塩類としては、例えば、リン酸、リン酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等が挙げられ、有機酸類、有機酸塩類としては、例えば、クエン酸、コハク酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の容器詰茶系飲料には、抗酸化剤としてのアスコルビン酸又はその塩を茶の抽出後に添加することができる。容器詰茶系飲料中におけるアスコルビン酸又はその塩の濃度は、抗酸化効果及び味の点から、0.01〜0.2質量%、更には0.02〜0.15質量%、特に0.03〜0.1質量%が好ましい。
【0029】
本発明の容器詰茶飲料のpHは25℃で3〜7、更には4〜7、特に5〜7とするのが、味及び非重合体カテキン類の安定性の点で好ましい。
【0030】
本発明の容器詰茶飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合化した紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰茶飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0031】
本発明の容器詰茶飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法(例えば、UHT殺菌、レトルト殺菌)に定められた殺菌条件で製造されるが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)や、金属箔又はプラスチックフィルムにより複合化された紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用される。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【実施例】
【0032】
(非重合体カテキン類及びカフェインの測定)
抽出液又は飲料をイオン交換水で100gに希釈した後、メンブランフィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着した、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用いて、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0033】
濃度勾配条件(体積%)
時間 移動相A 移動相B
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
62分 97% 3%
【0034】
(実施例1)
緑茶(煎茶:カップテストで得られた抽出液のカフェイン分析値33.6mg/100mL)100gをカラム型抽出機内(内径97mm、高さ400mm)に入れ、55℃に加熱したイオン交換水を0.103L/minの速度でカラム下方から供給した。このとき、抽出時の高さは83mm、線速度は1.4cm/min、平均滞留時間は5.9minであった。その後、カラム下方から抽出液を抜き出しながら55℃に加熱したイオン交換水を0.107L/minの速度でカラム上方から供給した。このとき、平均滞留時間は5.9minであった。抽出液の質量が仕込み茶葉質量の1.5倍になったところから採液を開始し、15倍になったところで通液を終了し、採液タンク内の液を均一に混合して抽出液Aを得た(A工程)。
緑茶(棒茶:カフェイン分析値7.2mg/100mL)100gをカラム型抽出機内(内径97mm、高さ400mm)に入れ、75℃に加熱したイオン交換水を0.103L/minの速度でカラム下方から供給した。このとき、抽出時の高さは83mm、線速度は1.4cm/min、平均滞留時間は5.9minであった。その後、カラム下方から抽出液を抜き出しながら75℃に加熱したイオン交換水を0.103L/minの速度でカラム上方から供給した。このとき、平均滞留時間は5.9minであった。最初から採液を開始し、抽出液の質量が仕込み茶葉質量の60倍になったところで通液を終了し、採液タンク内の液を均一に混合して抽出液Bを得た(B工程)。
得られた各抽出液を質量比(抽出液A/抽出液B)4で混合し(C工程)、茶系飲料用抽出液を得た。茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.41質量%であった。次いで、茶系飲料用抽出液に、0.03質量%のアスコルビン酸を加え加水した後、殺菌処理し、常法によりPETボトルに詰め容器詰茶系飲料を得た。
【0035】
(実施例2)
A工程において抽出液を全量採液し、B工程における抽出条件を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法にて容器詰茶系飲料を得た。なお、茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.49質量%であった。
【0036】
(実施例3)
A工程において抽出液を全量採液し、B工程における抽出条件を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法にて容器詰茶系飲料を得た。なお、茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.49質量%であった。
【0037】
(実施例4)
A工程における抽出条件を表1に記載のものに変更して抽出液を全量採取し、C工程における混合質量比を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法にて容器詰茶系飲料を得た。なお、茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.38質量%であった。
【0038】
(比較例1)
55℃のイオン交換水1500g(抽出倍率15倍に相当)を入れたニーダー抽出機内に、緑茶(煎茶)100gを投入し5分間攪拌抽出して抽出液Aを得た。75℃の熱水6000g(抽出倍率60倍に相当)を入れた別のニーダー抽出機内に、緑茶(棒茶)100gを投入し5分間攪拌抽出して抽出液Bを得た。次いで、各抽出液を質量比(抽出液A/抽出液B)4で混合して茶系飲料用抽出液を得た。茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.38質量%であった。次いで、茶系飲料用抽出液を実施例1と同様の方法により処理して容器詰茶系飲料を得た。
【0039】
(比較例2)
実施例1と同様にして抽出液Aを得た。75℃の熱水6000g(抽出倍率60倍に相当)を入れたニーダー抽出機内に、緑茶(棒茶)100gを投入し5分間攪拌抽出して抽出液Bを得た。次いで、各抽出液を質量比(抽出液A/抽出液B)4で混合して茶系飲料用抽出液を得た。茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.41質量%であった。次いで、茶系飲料用抽出液を実施例1と同様の方法により処理して容器詰茶系飲料を得た。
【0040】
(比較例3)
A工程及びB工程における抽出条件を表1に記載のものに変更し、C工程における混合質量比を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法にて容器詰茶系飲料を得た。なお、茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.18質量%であった。
【0041】
(比較例4)
A工程及びB工程における抽出条件を表1に記載のものに変更し、C工程における混合質量比を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法にて容器詰茶系飲料を得た。なお、茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.39質量%であった。
【0042】
(比較例5)
A工程及びB工程で使用した茶葉、並びにA工程における抽出条件を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法にて容器詰茶系飲料を得た。なお、茶系飲料用抽出液の非重合体カテキン濃度は0.22質量%であった。
【0043】
(風味の評価)
各茶系飲料用抽出液を最終カテキン濃度が0.10質量%になるように希釈し、パネラー4名で風味を評価した。評価項目は、香り、飲用中の苦渋味、飲用後のエグ味である。
【0044】
(評価基準)
◎:非常に良好。〇:良好。△:やや不良。×:不良。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1で得られた茶系飲料用抽出液は、苦味及び渋味がなく、香りが高いものであった。また、実施例2〜4で得られた茶系飲料用抽出液は、苦味及び渋味が殆どなく、香りが高いものであった。これに対し、比較例1〜5で得られた茶系飲料用抽出液は、香りが少なく、また、比較例1〜5は苦味及び渋味があり、エグ味が残るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の製造方法に使用可能なカラム型抽出機の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1 カラム型抽出機
2 抽出用水供給用シャワーノズル
3 抽出用水供給用バルブ
4 抽出液抜き出し用バルブ
5 茶保持板
6 茶葉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL以上となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して5〜30倍量に相当する30〜60℃の抽出用水を供給して抽出液Aを採取するA工程と、
カップテストで得られる抽出液のカフェイン分析値が15mg/100mL未満となる茶の1種又は2種以上をカラム型抽出機内に仕込み、該茶の合計質量に対して40〜100倍量に相当する40〜100℃の抽出用水を供給して抽出液Bを採取するB工程と、
抽出液Aと抽出液Bとを混合するC工程とを含む茶系飲料用抽出液の製造方法。
【請求項2】
抽出液Aと抽出液Bとの混合質量比(A/B)が1〜5である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
茶系飲料用抽出液中の非重合体カテキン類の含有量が0.1〜0.5質量%である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られた茶系飲料用抽出液を、そのまま又は希釈して容器内に充填してなる、容器詰茶系飲料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−125058(P2009−125058A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306993(P2007−306993)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】