説明

茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料

【課題】茶の独特な風味や色調を有効に利用した優れた茶風味及び色調を有し、しかも容器詰飲料として安定した品質を有する透明容器等の容器詰アルコール飲料及びその製造法を提供すること。
【解決手段】茶の抽出液に、アルコールを加えて茶風味を有するアルコール飲料を製造するに際して、平均粒子径10〜20μmの粉末茶を加えてアルコール飲料を調製することにより、茶の持つ本来の茶風味及び色調をアルコール飲料に付与することができ、アルコール臭を抑制して、アルコールとの香味が調和され、更に、保存時の褐変を防止して、優れた茶風味及び色調を有するアルコール飲料を調製することが可能である。本発明のアルコール飲料は、保存時の褐変等を防止して、茶の独特な風味や色調を保持した、優れた茶風味及び色調を有する透明容器等の容器詰アルコール飲料として調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた茶風味及び色調を有し、しかも容器詰飲料として安定した品質を有する透明容器等の容器詰アルコール飲料、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶をはじめとして、茶はわが国において嗜好飲料として古くから愛飲されてきた。近年、茶の旨味やコク味、及び適度の渋みなどの茶独特の風味を手軽に楽しめる飲用形態として、缶やプラスチック容器等の密封容器に充填された茶飲料の製品化が急速に発展し、その市場は急速に拡大しつつある。また、昨今は、茶に含まれるカテキン等の茶成分の種々の健康作用から、近年の健康ブームに相俟って、その需要の伸びは著しいものがある。
【0003】
茶には、緑茶、紅茶、ウーロン茶等、各種のものがあるが、緑茶のように、摘んだ葉をすぐに熱して酵素を失活させ、乾燥し、緑色の保持と香味の形成を行ない、発酵工程を含まない製造により仕上げる非発酵茶と、紅茶に代表されるように、発酵工程を含む製造により仕上げた発酵茶、及び、ウーロン茶のように、発酵茶の製造工程において発酵工程を途中で止めて乾燥して仕上げた半発酵茶とがある。また、茶は、通常、抽出した形で飲用に供されるが、抹茶のように粉末化した形態のものを溶解して、飲用に供するものもある。茶は、その味、香り、色彩が好まれることから飲用はもちろん、各種の加工飲食物への添加材料としても用いられている。
【0004】
抹茶は、遮光処理を施した茶葉の覆下茶を蒸したのち、冷却し、その茶葉を揉捻せずに乾燥用のてん(碾)茶機内でそのまま乾燥し、このようにして製造した乾燥葉を、小片にし、茎を除いて、更に乾燥して製造したてん(碾)茶を、臼で挽いて粉にしたものである。抹茶は、濃緑色で覆い香があり、渋味が薄くうま味が強いなどの特徴を持ち、粉末を含む抹茶は、熱湯には溶解しないビタミンEを含み、緑茶抽出物では得られない、ビタミンE源として優れているなどの特性を持つ。したがって、抹茶は、その好ましい特有の色や、風香味から、それを飲用として供するのみでなく、各種の飲食品への添加材料としても用いられている。しかしながら、抹茶は水溶液に溶解させる際に、微粒子同士がくっつき合う性質を有するため、いわゆるダマを形成しやすく分散、溶解の作業には手間がかかる。更に、抹茶の緑色色素は空気との接触による酸化や、むやみに加熱処理を行なうと、褪色しやすい性質を有することから、抹茶を配合させる飲食物への用途が制限されていた。
【0005】
一方で、アルコール飲料は古くから各種のものが知られており、ウイスキー、ブランディー、ラム、焼酎、泡盛、日本酒、ウオッカ等、それぞれのアルコール飲料独特の風味や香りが楽しまれ、好まれて飲用されてきた。これらのアルコール飲料の風味や香りに、茶類の持つ風味や香りを導入しようとする試みも従来からなされてきた。
【0006】
例えば、特開平6−237693号公報には、お茶の苦味や旨味を利用して炭酸の酸味や渋味を柔らかくした炭酸入りアルコール飲料が開示されており、具体的には、抽出したウーロン茶を加えた炭酸入りアルコール飲料が記載されている。
また、特開平10−179120〜9号公報には、発泡酒の製造工程において、茶葉を投入して、茶葉からの茶エキスの抽出を行い、お茶風味の発泡酒を製造する方法について開示されている。更に、特開平10−229868号公報には、米100%を主資材としたアルコール飲料の製造工程において、米汁(米モルト)へ茶葉若しくは茶抽出物を添加して、茶の苦味を付与したアルコール飲料の製造法について、開示されている。
【0007】
また、特開平11−103847号公報には、日本酒と抽出した日本茶を混合したアルコール飲料について、特開平11−127838号公報には、ビール様酒の製造工程において、茶を加えて煮沸し、茶の成分を抽出させて、茶の香味のあるビール様の酒を製造する方法について、特開2000−312579号公報には、お茶の葉等を飲料用のアルコール類に漬け込んだリキュール類の製造方法について、特開2001−29060号公報には、ビール製造工程において、ホップの全て又は一部を、抹茶又は抹茶エキスに替えて添加し、抹茶風味の発泡酒を製造する方法について、特開2002−209519号公報には、アルコールを含有する茶系飲料用濃縮液を作製し、この茶系飲料用濃縮液を希釈して茶系アルコール飲料を製造する方法について、特開2002−233354号公報には、日本酒と抹茶と焼酎と炭酸ソーダ水と酸化防止剤を混合させたリキュールについて、それぞれ開示されている。
【0008】
上記の茶入りアルコール飲料は、いずれも茶を抽出して、茶入りアルコール飲料の製造を行うものであるが、茶粉末を酒類に添加するものも開示されている。例えば、特開平10−4880号公報及び特開平10−179031号公報には、加工後の茶葉を、62〜88μmに粉砕して酒割り専用茶として調製し、酒類を飲用する際に、該酒割り専用茶を酒類に加えて、茶の香味及び滋味を酒類に付与する方法が、特開平11−276149号公報には、清酒又は焼酎、酒類に緑茶、抹茶、茶エキス、オリゴ糖、食物繊維、ビタミンCを混合した機能性清酒、焼酎、酒類を製造する方法が、それぞれ開示されている。
【0009】
上記のとおり、茶類の持つ風味や香りを酒類に付与するために、茶成分を酒類に添加した種々の茶入りアルコール飲料が開示されているが、従来のものは、調和された茶風味の付与が不十分であったり、また、茶の色調の保持が不十分であったりして、茶の独特な風味や色調を有効に利用した、優れた茶風味及び色調を有する茶入りアルコール飲料の調製品を提供するものではなかった。例えば、茶葉等からの抽出成分を利用する茶入りアルコール飲料では、例えば、抹茶や緑茶からのお茶成分の抽出が不十分であったりして、十分な茶風味を付与することが難しく、そのアルコール飲料は、香り、フレーバーの劣るものとなった。
【0010】
また、ビールや発泡酒のように炭酸が含まれると、炭酸が含まれることで、お茶本来の味を阻害したり、また、含有するアルコールとの香味のバランスがくずれて、お茶の香りが悪くアルコール臭が強かったりするものでもあった。更に、従来の茶葉等からの抽出成分を利用する茶入りアルコール飲料では、液色が褐変したりする問題があり、特に透明容器詰め飲料とした場合には、色調が変化して、見栄えが悪いために十分に商品価値を有するものが提供されていなかった。このように、従来、茶の独特な風味や色調を有効に利用した優れた茶風味及び色調を有し、しかも容器詰飲料として安定した品質を有する透明容器詰アルコール飲料は提供されていなかった。
【0011】
【特許文献1】特開平6−237693号公報
【特許文献2】特開平10−4880号公報
【特許文献3】特開平10−179031号公報
【特許文献4】特開平10−179120〜9号公報
【特許文献5】特開平10−229868号公報
【特許文献6】特開平11−103847号公報
【特許文献7】特開平11−127838号公報
【特許文献8】特開平11−276149号公報
【特許文献9】特開2000−312579号公報
【特許文献10】特開2001−29060号公報
【特許文献11】特開2002−209519号公報
【特許文献12】特開2002−233354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、茶の独特な風味や色調を有効に利用した優れた茶風味及び色調を有し、しかも容器詰飲料として安定した品質を有する透明容器等の容器詰アルコール飲料及びその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、茶の抽出液に、アルコールを加えて茶風味を有するアルコール飲料を製造するに際して、平均粒子径10〜20μmの粉末茶を加えてアルコール飲料を調製することにより、茶の持つ本来の茶風味及び色調をアルコール飲料に付与することができ、しかも、アルコール臭を抑制して、アルコールとの香味が調和されたアルコール飲料を調製することが可能であり、更に、保存時の褐変を防止して、優れた茶風味及び色調を有するアルコール飲料を調製することが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明のアルコール飲料は、保存等に対して安定した製品を得ることができ、しかも、保存時の褐変等を防止して、茶の独特な風味や色調を保持した、優れた茶風味及び色調を有する透明容器等の容器詰アルコール飲料として調製することができる。
【0014】
すなわち、本発明においては、茶の独特な風味や色調を保持したアルコール飲料の調製品を開発する中で、お茶本来のおいしさをいかに引き立てるかを鋭意検討した結果、茶の抽出液に、粉末茶を添加することで、茶の抽出液の香味の不足を補って、茶風味に富んだ茶入りアルコール飲料を調製できることを見い出した。しかしながら、ただ単に、茶の抽出液と粉末茶を用いるのみでは、アルコールとお茶の風味のバランスがとれず、アルコール臭が強くなりすぎて、香りに優れ、多様なフレーバーを有し、且つお茶本来の味や旨味を実感することができる調和のとれた茶入りアルコール飲料を調製することが難しかった。
【0015】
そこで、本発明者が更に検討を進めた結果、粉末茶の平均粒子径を10〜20μmに調整し、アルコール飲料に添加することによって、アルコール臭をおさえることが可能であり、お茶本来の味や旨味を有するバランスのとれたアルコール飲料を製造することが可能であることを見い出した。更に、アルコール、好ましくはウォッカを3〜6%添加することで、茶若しくは粉末茶入りアルコール飲料の褐変を防止することができることを見い出し、茶の独特な風味や色調を保持した優れた風味及び色調のアルコール飲料の調製品を製造できることを見い出した。該平均粒子径の粉末茶を用いたアルコール飲料は、抹茶のような粉末茶を用いているにも係わらず、保存等に対して安定であり、透明容器詰アルコール飲料として調製した場合には、優れた風味及び色調を持ち、しかも、保存等に対して安定した調製品を提供することができる。
【0016】
本発明において、粉末茶としては、好ましくは、粉末緑茶が用いられ、特に好ましくは、抹茶が用いられる。本発明のアルコール飲料の製造方法において、添加するアルコールとしては、茶の独特の風味及び色調を生かす観点から、好ましくはウオッカ等のスピリッツ類が用いられる。本発明のアルコール飲料の製造において、粉末茶の添加量は、アルコール飲料全量に対して、0.005〜0.1重量%であり、アルコール濃度は、3〜6容量%に調整することが望ましい。本発明のアルコール飲料の製造においては、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムのような酸化防止剤を添加して、アルコール飲料の色調の変化をより効果的に防止することができる。本発明の透明容器等の容器詰アルコール飲料の製造においては、調製したアルコール飲料を、アセプティック法により、常温、無菌状態で透明容器に充填することにより、アルコール飲料の色調をより効果的
に保持することができる。
【0017】
すなわち具体的には本発明は、(1)茶の抽出液に、平均粒子径10〜20μmの粉末茶及びアルコールを加えて調製することを特徴とする茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(2)茶の抽出液及び粉末茶が、緑茶抽出液及び粉末緑茶であることを特徴とする前記(1)記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(3)粉末緑茶が、抹茶であることを特徴とする前記(2)記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(4)粉末茶の添加量が、0.005〜0.1重量%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(5)添加するアルコールが、スピリッツ類であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載の緑茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(6)添加するアルコールが、ウォッカであることを特徴とする前記(5)記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法に関する。
【0018】
また本発明は、(7)透明容器詰アルコール飲料のアルコール濃度を、3〜6容量%に調整したことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(8)茶の抽出液に、平均粒子径10〜20μmの粉末茶及びアルコールを加え、更に、酸化防止剤を添加して調製することを特徴とする前記(1)記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(9)酸化防止剤が、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムであることを特徴とする前記(8)記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(10)調製したアルコール飲料を、アセプティック法により常温、無菌状態で透明容器に充填することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(11)容器詰アルコール飲料が、透明容器詰アルコール飲料であることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法や、(12)前記(1)〜(11)のいずれか記載の製造方法によって製造された、茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のアルコール飲料の製造方法により、茶の持つ本来の味や旨味や色調をアルコール飲料に付与することができ、しかも、アルコール臭を抑制して、アルコールとの香味が調和されたアルコール飲料を調製することが可能であり、更に、保存時の褐変を防止することが可能であることから、本発明により、優れた茶風味及び色調を有するアルコール飲料を製造することができる。本発明のアルコール飲料は、透明容器等の容器詰アルコール飲料として調製することにより、風味及び色調、かつ安定性に優れた、容器詰アルコール飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、茶の抽出液に、平均粒子径10〜20μmの粉末茶及びアルコールを加えて調製することにより、茶風味及び色調を有する透明容器等の容器詰アルコール飲料を製造する方法よりなる。茶の抽出液としては、緑茶から抽出した緑茶エキスが好ましい。ここでいう緑茶エキスは、特に限定されるものではなく、通常の緑茶エキスであれば使用することができる。茶の抽出には、各種の抽出液を用いることができるが、中でも全イオン交換水を用いるのが最も好ましい。また、抽出に際して、色調等の保持のために、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムのような酸化防止剤を添加することで、より一層の効果を発揮することができる。
【0021】
茶の抽出においては、例えば、まず、茶葉を全イオン交換した温水に添加し、次に、抽出を行なう。その後、固液分離し茶葉と抽出液を得る。なお、必要に応じて抽出液の濾過を行ってもよい。茶抽出液の調製に用いる茶の量としては、特に限定されないが、例えば、緑茶の場合は、0.1〜5.0重量%の量で用いることが好ましい。なお、緑茶エキスを用いることもできる。この抽出液には、場合により酸化防止剤をブレンドし、茶抽出液等の色調等の安定性を図ることができる。
【0022】
本発明において用いる粉末茶としては、粉末緑茶が好ましい。粉末緑茶の中で、抹茶は、本発明の目的から、特に好ましい。抹茶は、遮光処理を施した茶葉の覆下茶を蒸したのち、冷却し、その茶葉を揉捻せずに乾燥用のてん(碾)茶機内でそのまま乾燥し、このようにして製造した乾燥葉を、小片にし、茎を除いて、更に乾燥して製造したてん(碾)茶を、臼で挽いて粉にして製造されるが、その好ましい特有の色や、風香味から、本発明において用いる粉末茶として特に好ましい。本発明のアルコール飲料の製造方法において、粉末茶の添加量は、0.005〜0.1重量%であることが好ましい。
【0023】
本発明のアルコール飲料の製造方法において、粉末茶は、平均粒子径10〜20μmのものが用いられる。本発明において、該平均粒子径の粉末茶を用いることにより、茶の持つ本来の茶風味及び色調をアルコール飲料に付与することができ、しかも、アルコール臭を抑制して、アルコールとの香味が調和されたアルコール飲料を調製することが可能であり、更に、保存時の褐変を防止して、優れた茶風味及び色調を有するアルコール飲料を調製することが可能となる。本発明に用いる粉末茶の調製においては、所定の粒子径の抹茶粉末を調製するために適宜公知の粉砕機を用いることができる(特開2001−129419号公報)。製造した抹茶粉末の粒子径は、適宜、公知の粒度分布測定装置、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2000A:SHIMAZU)を用いて測定し、所定の平均粒子径の粉末抹茶を調製することができる。
【0024】
本発明のアルコール飲料の製造方法において用いられるアルコール類としては、焼酎、日本酒、ブランディー、ウイスキー、泡盛、ウオッカ等の各種を用いることができるが、茶の独特の風味及び色調を生かす観点から、好ましくはウオッカ等のスピリッツ類が用いられる。本発明のアルコール飲料のアルコール濃度は、3〜6容量%に調整することが望ましい。
【0025】
本発明のアルコール飲料の製造方法について、例示的に説明すると、全体量に対して、0.1〜5.0重量%の緑茶を用いて、全イオン交換した温水に添加し、20〜100℃で30分以下、好ましくは10分以下加熱することで抽出を行なう。その後、固液分離し茶葉と抽出液を得る。なお、必要に応じて抽出液の濾過を行ってもよい。なおここで、緑茶エキスを添加しても良い。抽出液に、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムのような酸化防止剤を、0.001〜2.0の範囲で添加する。
【0026】
この抽出液に、平均粒子径10〜20μmの抹茶を、0.001〜2.0重量%の割合で、添加する。次に、アルコール類を添加し、ブレンドする。添加するアルコールとしては、ウオッカ等のスピリッツが用いられる。なお、この場合のアルコール溶液のpHは、5.0〜7.5に調製するのがよい。また、アルコール度は4〜5が良く、エキス分は0.5以下であればよい。
【0027】
以上のようにして調製した茶入りアルコール飲料の茶由来のタンニン値は、酒石酸鉄法での測定によるタンニン値として、10〜200mg/100mlであることが好ましく、20〜80mg/100mlであることがより好ましい。この茶入りアルコール飲料を、透明容器等の容器に充填する。茶入りアルコール飲料の容器への充填には、アルコール飲料の色調をより効果的に保持するために、アセプティック法により、常温、無菌状態で充填することが好ましい。充填する容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明容器が、特に好ましい。
【0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
[アルコール臭マスキング効果確認試験]
本実施例においては次の方法により調製した「粉末茶入りアルコール飲料」を用いた:緑茶葉100gを50〜90℃、20〜40倍量の全イオン交換水で抽出し、得られた抽出液に酸化防止剤、抹茶、ウォッカを添加した。この時、使用する抹茶の平均粒子径は、10、15、20、30μmのものを使用し、それぞれ調製した。得られた調製液は、加熱殺菌処理を施しサンプルとした。
【0030】
調製したサンプル(平均粒子径の異なる抹茶を使用した)を用いて、専門パネラーによる官能評価を実施した。この際、上述の方法で調製した、抹茶を添加していないサンプルを対照として官能評価を行なった。結果、対照と比較し、抹茶を添加したサンプルはアルコール臭が低減されていることを確認した。特に平均粒子系10〜20μmの抹茶を使用したものが、アルコール臭のマスキング効果と、お茶の風味のバランスが良かった。平均粒子径30μmの抹茶は、アルコール臭の低減に効果は認められたが、抹茶粒子が大きいことによって、後味に粉っぽさが感じられた。官能評価の結果を下記表1及び表2に示す。表1には、平均粒子径の異なる抹茶の官能評価結果を示す。評価は、3段階評価で、表中、○印は、アルコール臭がかなり低減化されたという評価を、△印は、アルコール臭がやや低減化されたという評価を、×印は、アルコール臭が強いという評価を表す。
【0031】
【表1】

【0032】
表2には、平均粒子径の異なる抹茶のテクスチャーへの影響を示す。評価は、2段階評価で、表中、○印は、抹茶の粉っぽさを感じないという評価を、△印は、抹茶の粉っぽさを感じるという評価を表す。
【0033】
【表2】

【実施例2】
【0034】
[褐変防止効果確認試験]
本実施例においては、以下の方法により、調製した「粉末茶入りアルコール飲料」を用いた:緑茶100gを50〜90℃、20〜40倍量の全イオン交換水で抽出し、得られた抽出液に酸化防止剤、抹茶、ウォッカを添加し調製し粉末茶入りアルコール飲料調製液を得た。更には、前述したサンプルにウォッカを添加していない調製液を対照とした。どちらの調製液も加熱殺菌処理を施しサンプルとした。
【0035】
上記サンプルを、50℃に保存し液色の変化を目視、及び、測色計の分析値を用いてアルコール添加有無での褐変度を比較した。目視評価は、殺菌直後のアルコール無しをコントロールとし、50℃保存品の評価を行った。目視評価結果を、表3に示す。評価は、5段階評価で、5点は極めて褐変が激しいことを、4点は褐変が激しいことを、3点は中程度に褐変していることを、2点はやや褐変していることを、1点は褐変していないことを表す。
【0036】
【表3】

【0037】
測色計での分析は、分光測色計CM−3500d(ミノルタ株式会社製)を用いて、L値、a値、b値の測定を行った。分光測色計とは、特定の分光組成を持った光を物体に照射したとき、選択的に物体から透過する光を受光器で受け、物体の分光透過特性を分光測光器により求め、これらの数値から三刺激値を求めるものである。L値、a値、b値とは、それぞれ明度をL値で表し、色度をa値(+方向:赤、−方向:緑)、b値(+方向:黄色、−方向:青色)で表す。測色計でのL値、a値、b値の変化度(50℃保存区)を、表4に示す。
【0038】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶の抽出液に、平均粒子径10〜20μmの粉末茶及びアルコールを加えて調製することを特徴とする茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
茶の抽出液及び粉末茶が、緑茶抽出液及び粉末緑茶であることを特徴とする請求項1記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
粉末緑茶が、抹茶であることを特徴とする請求項2記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
粉末茶の添加量が、0.005〜0.1重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
添加するアルコールが、スピリッツ類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の緑茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
添加するアルコールが、ウォッカであることを特徴とする請求項5記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
透明容器詰アルコール飲料のアルコール濃度を、3〜6容量%に調整したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項8】
茶の抽出液に、平均粒子径10〜20μmの粉末茶及びアルコールを加え、更に、酸化防止剤を添加して調製することを特徴とする請求項1記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項9】
酸化防止剤が、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項8記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項10】
調製したアルコール飲料を、アセプティック法により常温、無菌状態で透明容器に充填することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項11】
容器詰アルコール飲料が、透明容器詰アルコール飲料であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか記載の製造方法によって製造された、茶風味及び色調を有する容器詰アルコール飲料。

【公開番号】特開2007−244310(P2007−244310A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73550(P2006−73550)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】